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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1263650
審判番号 不服2010-746  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-14 
確定日 2012-09-19 
事件の表示 特願2000-562340「単量体及び、それらから得られる網状高分子」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月10日国際公開、WO00/06533、平成14年 7月16日国内公表、特表2002-521529〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年7月26日(パリ条約による優先権主張 1998年7月25日 (GB)グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)を国際出願日とする出願であって、平成13年1月24日に特許協力条約第19条補正の翻訳文提出書及び特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書が提出され、平成18年7月19日に手続補正書が提出され、平成20年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成21年5月29日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、同年9月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年1月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年2月17日付けで前置報告がなされ、当審において平成23年9月5日付けで審尋がなされたが、回答書の提出はなかったものである。



第2.平成22年1月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成22年1月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容
平成22年1月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成21年5月29日付けの誤訳訂正書により補正された明細書における特許請求の範囲について、
「【請求項1】放射線又は電子ビームの影響下で重合可能であり、化学式(IA):
【化1】

[式中、R^(1)はCHであってR^(6)が単結合、-C(O)O-、-OC(O)-または-S(O)_(2)-であるか、あるいは、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6)は化学結合であるか、R^(1)は窒素原子であり、R^(6)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2)とR^(3)は、(CR^(7)R^(8))_(n)、あるいは、基CR^(9)R^(10)、-(CR^(7)R^(8)CR^(9)R^(10))-、または-(CR^(9)R^(10)CR^(7)R^(8))-から独立に選択され(式中、nは0、1、または2であり、R^(7)とR^(8)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択され、そして、R^(9)またはR^(10)のいずれか一方が水素であって他方がCOCH_(3)またはCOCH_(2)CNから選択される電子求引性基であるか、あるいは、R^(9)とR^(10)が一緒になってオキソ基を形成している)、そして
R^(4)とR^(5)はCHまたはCR^(11)から独立に選択され(式中、R^(11)は電子求引性基である);
X^(2)、X^(3)、Y^(2)、及びY^(3)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16)は、以下の前提:
(i)R^(1)がCHであり、R^(6)が化学結合である場合(a)R^(2)とR^(3)、または(b)R^(4)とR^(5)のうちの少なくとも1つが電子求引性基を含んでいること;
(ii)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrであり、R^(12)が水素であり、R^(6)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は(CH_(2))_(x)以外の基であり、該基においてxは7または8であるか、R^(16)は以下の基以外であること;
【化2】

(iii)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrまたはClであり、R^(12)がアルキルまたはアリルであり、R^(6)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は(CH_(2))_(x)以外の基であり、該基においてxは2から10の整数であること;
(iv)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであるかR^(4)とR^(5)の一つがCClから選択され、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)が窒素原子であり、R^(6)がカルボニル基である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)はNHCH_(2)CH_(2)OC(O)OCH_(2)CH_(2)NH-、-CH_(2)CHR^(p)-以外の基であり、該基においてR^(p)は塩素、臭素、ビスフェノール-F、10,11-ジオクチル-1,20-シコシル又は以下の基であること;
【化3】

(v)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がCH基であり、R^(6)が-OC(O)-であり、ここでO原子はR^(1)基に直接結合する場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は-CH=CH-以外の基であること;
(vi)R^(1)が窒素であり、R^(6)がスルホニルである場合、R^(16)は-Ph-O-Ph基以外の基であること;
を条件として、原子価がrの橋かけ基であって、rは2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物。
【請求項2】R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)[式中、R^(12)、R^(13)及びR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1、または2であり、そして、qは0、1、2、または3である]であり、そして、R^(6)が化学結合であることを特徴とする、請求項1による化合物。
【請求項3】式(IA)中、R^(2)とR^(3)は(CR^(7)R^(8))_(n)基であり、R^(7)、R^(8)及びnは請求項1で定義された通りのものであり、R^(4)とR^(5)はCH基であることを特徴とする、請求項2による化合物。
【請求項4】R^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)基[式中のR^(12)、Z、及びmは請求項1において定義された通りのものである]であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項による化合物。
【請求項5】Zがハロゲンであることを特徴とする、請求項4による化合物。
【請求項6】R^(1)が窒素であり、そして、R^(6)がスルホニル基であることを特徴とする、請求項1による化合物。
【請求項7】rが2から6までの整数であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項による化合物。
【請求項8】R^(16)が、任意に官能基で置換または間入された、直鎖または分子鎖のアルキル基;またはシロキサン基を包含していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項による化合物。
【請求項9】rが2であり、そして、R^(16)が副次化学式(II):
-Z^(1)-(Q^(1))_(a)-(Z^(2)-Q^(2))_(b)-Z^(3)- (II)
[式中、a及びbは0、1、または2から独立に選択され、Z^(1)、Z^(2)、及びZ^(3)は、化学結合、任意に置換された線状または分枝型のアルキルまたはアルケン鎖から独立に選択され、ここで、任意に1つもしくはそれ以上の隣接していない炭素原子がヘテロ原子またはアミド基で置換されており、Q^(1)及びQ^(2)は、任意に橋かけアルキル基を包含する任意に置換された炭素環式またはヘテロ環式の環から独立に選択される]で表される基であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項による化合物。
【請求項10】R^(16)が四または八置換非線形光学単位であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項による化合物。
【請求項11】R^(16)が任意に置換されたポルフィリンまたはフタロシアニンであることを特徴とする、請求項10による化合物。
【請求項12】化学式(VI):
【化4】

[式中のR^(17)、R^(18)、R^(19)及びR^(20)は副次化学式(II):
-Z^(1)-(Q^(1))_(a)-(Z^(2)-Q^(2))_(b)-Z^(3)- (II)
[式中、a及びbは0、1、または2から独立に選択され、Z^(1)、Z^(2)、及びZ^(3)は、化学結合、任意に置換された線状または分枝型のアルキルまたはアルケン鎖から独立に選択され、ここで、任意に1つもしくはそれ以上の隣接していない炭素原子がヘテロ原子またはアミド基で置換されており、Q^(1)及びQ^(2)は、任意に橋かけアルキル基を包含する任意に置換された炭素環式またはヘテロ環式の環から独立に選択される]の基から独立に選択され、R^(21)、R^(22)、R^(23)、及びR^(24)は以下の副次化学式(IV)の各基であり、
【化5】

[式中、X^(2)、X^(3)、Y^(2)、Y^(3)、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)及びR^(6)は請求項1において定義された通りのものである]、そして、R^(25)、R^(26)、R^(27)、及びR^(28)は、水素またはヒドロカルビル基からそれぞれ独立に選択され、大環状ヘテロ環式単位内に任意に金属イオンを包含する];
または化学式(VIA):
【化6】

[式中、R^(50)からR^(65)までは、R^(50)からR^(65)までのうちの少なくとも2つがR^(24)-R^(28)基であることを条件として、ヒドロカルビル、基OR^(68)[式中のR^(68)はヒドロカルビルである]、ハロゲン、または基R^(24)-R^(28)[式中のR^(24)及びR^(28)は以上で定義された通りのものである]から独立に選択され、そして、R^(66)とR^(67)は水素であるか、あるいは、それらが一緒になって金属イオンを包含しているかのいずれかである]で表される、請求項11による化合物。
【請求項13】ナトリウムまたはカリウム、あるいは銅から選択される金属イオンを包含していることを特徴とする、請求項12による化合物。
【請求項14】R^(16)がポリシロキサン網状高分子であり、ここで、R^(16)が原子価rの線状または分枝型のシロキサン鎖、または環状ポリシロキサン単位、あるいはそれらのホウ素相当物を包含していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項による化合物。
【請求項15】化学構造式(VII):
【化7】

[式中のR^(17)及びR^(18)は副次化学式(II):
-Z^(1)-(Q^(1))_(a)-(Z^(2)-Q^(2))_(b)-Z^(3)- (II)
[式中、a及びbは0、1、または2から独立に選択され、Z^(1)、Z^(2)、及びZ^(3)は、化学結合、任意に置換された線状または分枝型のアルキルまたはアルケン鎖から独立に選択され、ここで、任意に1つもしくはそれ以上の隣接していない炭素原子がヘテロ原子またはアミド基で置換されており、Q^(1)及びQ^(2)は、任意に橋かけアルキル基を包含する任意に置換された炭素環式またはヘテロ環式の環から独立に選択される]の基から独立に選択され、R^(21)及びR^(22)は以下の副次化学式(IV)の各基であり、
【化8】

[式中、X^(2)、X^(3)、Y^(2)、Y^(3)、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)及びR^(6)は請求項1において定義された通りのものである]、R^(28)、R^(29)、R^(30)、及びR^(31)はヒドロカルビルから選択され、そして、R^(32)またはR^(33)の各基は、ヒドロカルビルまたは化学式R^(19)-R^(23)[式中のR^(19)は前記副次化学式(II)の基から独立に選択され、R^(23)は前記副次化学式(IV)の基から選択される]で表される基から独立に選択され、そして、uは0、または、1もしくはそれ以上の整数である]で表される、請求項14による化合物。
【請求項16】化学構造式(VIII):
【化9】

[式中のR^(17)、R^(18)、R^(19)、及びR^(20)は副次化学式(II):
-Z^(1)-(Q^(1))_(a)-(Z^(2)-Q^(2))_(b)-Z^(3)- (II)
[式中、a及びbは0、1、または2から独立に選択され、Z^(1)、Z^(2)、及びZ^(3)は、化学結合、任意に置換された線状または分枝型のアルキルまたはアルケン鎖から独立に選択され、ここで、任意に1つもしくはそれ以上の隣接していない炭素原子がヘテロ原子またはアミド基で置換されており、Q^(1)及びQ^(2)は、任意に橋かけアルキル基を包含する任意に置換された炭素環式またはヘテロ環式の環から独立に選択される]の基から独立に選択され、R^(21)、R^(22)、R^(23)、及びR^(24)は以下の副次化学式(IV)の各基であり
【化10】

[式中、X^(2)、X^(3)、Y^(2)、Y^(3)、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)及びR^(6)は請求項1において定義された通りのものである];、そして、R^(28)、R^(29)、R^(30)、及びR^(31)はヒドロカルビルから選択される]で表される、請求項14による化合物。
【請求項17】化学式(IX):
【化11】

[式中のR^(17)、R^(18)、R^(19)、及びR^(20)は副次化学式(II):
-Z^(1)-(Q^(1))_(a)-(Z^(2)-Q^(2))_(b)-Z^(3)- (II)
[式中、a及びbは0、1、または2から独立に選択され、Z^(1)、Z^(2)、及びZ^(3)は、化学結合、任意に置換された線状または分枝型のアルキルまたはアルケン鎖から独立に選択され、ここで、任意に1つもしくはそれ以上の隣接していない炭素原子がヘテロ原子またはアミド基で置換されており、Q^(1)及びQ^(2)は、任意に橋かけアルキル基を包含する任意に置換された炭素環式またはヘテロ環式の環から独立に選択される]の基から独立に選択され、R^(21)、R^(22)、R^(23)、及びR^(24)は以下の副次化学式(IV)の各基である
【化12】

[式中、X^(2)、X^(3)、Y^(2)、Y^(3)、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)及びR^(6)は請求項1において定義された通りのものである]請求項1から8までのいずれか一項による化合物。
【請求項18】請求項1から17のいずれか一項による化合物を調製するための方法であって、該方法が、化学式(X):
【化13】

[式中のX^(2)、X^(3)、Y^(2)、Y^(3)、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、及びR^(5)は請求項1において定義された通りのものであり、そして、R^(35)は水素またはヒドロキシである]の化合物を、化学式(XI):
R^(16)-[R^(6)-Z^(4)]_(r) (XI)
[式中のR^(6)、R^(16)、及びrは請求項1において定義された通りのものであり、そして、Z^(4)は脱離基である]の化合物と反応させることを包含する、調製方法。
【請求項19】高分子材料を製造するための方法であって、該方法が、請求項1から17のうちの一項で定義された通りの化学式(IA)の化合物を重合させることを包含する、製造方法。
【請求項20】ポリマーの製造方法であって、該方法が、化学式(IB):
【化14】

[式中、R^(1”)はCHであってR^(6”)が化学結合、-C(O)O-または-OC(O)-または-S(O)_(2)であるか、あるいは、R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1”)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6”)は化学結合であるか、R^(1”)は窒素原子であり、R^(6”)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2”)とR^(3”)は、(CR^(7”)R^(8”))_(n”)、あるいは、基CR^(9”)R^(10”)、-(CR^(7”)R^(8”)CR^(9”)R^(10”))-、または-(CR^(9”)R^(10”)CR^(7”)R^(8”))-から独立に選択され(式中、n”は0、1、または2であり、R^(7”)とR^(8”)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択され、そして、R^(9”)またはR^(10”)のいずれか一方が水素であって他方が電子求引性基であるか、あるいは、R^(9”)とR^(10”)が一緒になって電子求引性基を形成している)、そして
R^(4”)及びR^(5”)は、C、CHまたはCR^(11”)から独立に選択され、ここで、R^(11”)は電子求引性基であり;
点線は、化学結合が存在しているか、あるいは、存在していないことを示しており、そして、X^(1”)は、X^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在していない場合には基CX^(2”)X^(3”)であって、X^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在している場合には基CX^(2”)であり、Y^(1”)は、Y^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在していない場合には基CY^(2”)Y^(3”)であって、Y^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在している場合には基CY^(2”)であり、そして、X^(2”)、X^(3”)、Y^(2”)、及びY^(3”)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16”)は、
(i)(a)R^(1”)とR^(6”)、または(b)R^(2”)とR^(3”)、もしくは(c)R^(4”)とR^(5”)のうちの少なくとも1つが電子求引性基を含んでいること;
(ii)R^(2”)とR^(3”)が両方ともCH_(2)であり、R^(4”)とR^(5”)が両方ともCHであり、R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1”)がN^(+)R^(12”)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrであり、R^(12”)が水素であり、R^(6”)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16”)は以下の基以外であること;
【化15】

(iii)R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1”)が窒素原子であり、R^(6”)がカルボニル基である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16”)はNHCH_(2)CH_(2)OC(O)OCH_(2)CH_(2)NH-、-CH_(2)CHR^(p)-以外の基であり、該基においてR^(p)は塩素、臭素、ビスフェノール-F、10,11-ジオクチル-1,20-シコシル又は以下の基であること;
【化16】

(iv)R^(2”)とR^(3”)が両方ともCH_(2)であり、R^(4”)とR^(5”)が両方ともCHであり、R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1”)がCH基であり、R^(6”)が-OC(O)-であり、ここでO原子はR^(1”)基に直接結合する場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16”)は-CH=CH-以外の基であること;
(v)R^(1”)が窒素であり、R^(6”)がスルホニルである場合、R^(16”)は-Ph-O-Ph基を含まないこと;
を条件として、原子価がr”の橋かけ基であって、r”は2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物を、化学式(IB)の化合物に重合をもたらす条件下において、放射線に晒すステップを包含する、ポリマーの製造方法。
【請求項21】共重合体を形成するために、化学式(IB)の化合物を異なる単量体単位と重合させることを特徴とする、請求項20による製造方法。
【請求項22】ポリマー複合体を形成するために、化学式(IB)の化合物を化学式(IB)のさらなる単量体単位以外の化合物と重合させることを特徴とする、請求項20による製造方法。
【請求項23】該放射線が紫外線であることを特徴とする、請求項20による製造方法。
【請求項24】光開始剤の存在下において実施されることを特徴とする、請求項23による製造方法。
【請求項25】化学式(IB)の化合物が化学的な開始剤の存在下において硬化可能であり、そして、重合が、該化合物をそのような開始剤に接触させることにより実施されることを特徴とする、請求項20による製造方法。
【請求項26】該重合が連鎖停止剤の存在により制御されることを特徴とする、請求項20から25までのいずれか一項による製造方法。
【請求項27】該連鎖停止剤が、化学式(XII):
【化17】

[式中のR^(1)はCHであってR^(6)が単結合、-C(O)O-、-OC(O)-または-S(O)_(2)-であるか、あるいは、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6)は化学結合であるか、R^(1)は窒素原子であり、R^(6)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2)とR^(3)は、(CR^(7)R^(8))_(n)、あるいは、基CR^(9)R^(10)、-(CR^(7)R^(8)CR^(9)R^(10))-、または-(CR^(9)R^(10)CR^(7)R^(8))-から独立に選択され(式中、nは0、1、または2であり、R^(7)とR^(8)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択され、そして、R^(9)またはR^(10)のいずれか一方が水素であって他方がCOCH_(3)またはCOCH_(2)CNから選択される電子求引性基であるか、あるいは、R^(9)とR^(10)が一緒になってオキソ基を形成している)、そして
R^(4)とR^(5)はCHまたはCR^(11)から独立に選択され(式中、R^(11)は電子求引性基である);
X^(2)、X^(3)、Y^(2)、及びY^(3)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16)は原子価がrの橋かけ基であって、rは2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物を包含することを特徴とする、請求項26による製造方法。
【請求項28】化学式(XIII):
【化18】

[式中、Aは化学結合であるか、あるいはCH_(2)であり、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(6)は請求項1の化学式(IA)において定義された通りのものであり、R^(16’)は化学式(IA)において定義された通りの化学式R^(16)の基であって、副次化学式(XIV):
【化19】

で表される更なる基で置換されていてもよく、そして、yは1より多くの整数であり、Aは以上で定義された通りのものである]で表される高分子化合物。
【請求項29】yが5より多くの整数であることを特徴とする、請求項28によるポリマー。
【請求項30】yが5から30の整数であることを特徴とする、請求項28によるポリマー。
【請求項31】物品にポリマーコーティングを形成する方法であって、該方法が、請求項20において定義された通りの化学式(IB)の化合物を該物品に適用し、該化合物をin situで重合させるステップを包含する、形成方法。」
との記載を
「【請求項1】ポリマーの製造方法であって、該方法が、化学式(IB’):
【化1】

[式中、R^(1”)は窒素原子であり、R^(6”)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2”)とR^(3”)は、(CR^(7”)R^(8”))_(n”)(式中、n”は0、1、または2であり、R^(7”)とR^(8”)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択される)であり、そして
R^(4”)及びR^(5”)は、CHまたはCR^(11”)から独立に選択され、ここで、R^(11”)は電子求引性基であり;
X^(1”)は基CX^(2”)X^(3”)であり、Y^(1”)は基CY^(2”)Y^(3”)であり、そして、X^(2”)、X^(3”)、Y^(2”)、及びY^(3”)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16”)は、原子価がr”の橋かけ基であって、r”は2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物を、化学式(IB’)の化合物に環化重合をもたらす条件下において、紫外線に晒すステップを包含する、ポリマーの製造方法。
【請求項2】共重合体を形成するために、化学式(IB’)の化合物を異なる単量体単位と重合させることを特徴とする、請求項1による製造方法。
【請求項3】ポリマー複合体を形成するために、化学式(IB’)の化合物を化学式(IB’)のさらなる単量体単位以外の化合物と重合させることを特徴とする、請求項1による製造方法。
【請求項4】光開始剤の存在下において実施されることを特徴とする、請求項1による製造方法。
【請求項5】化学式(IB’)の化合物が化学的な開始剤の存在下において硬化可能であり、そして、重合が、該化合物をそのような開始剤に接触させることにより実施されることを特徴とする、請求項1による製造方法。
【請求項6】該重合が連鎖停止剤の存在により制御されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項による製造方法。
【請求項7】該連鎖停止剤が、化学式(XII):
【化2】

[式中、R^(1)は窒素原子であり、R^(6)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2)とR^(3)は、(CR^(7)R^(8))_(n)(式中、nは0、1、または2であり、R^(7)とR^(8)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択される)であり、そして
R^(4)とR^(5)はCHまたはCR^(11)から独立に選択され(式中、R^(11)は電子求引性基である);
X^(2)、X^(3)、Y^(2)、及びY^(3)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16)は原子価がrの橋かけ基であって、rは2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物を包含することを特徴とする、請求項6による製造方法。
【請求項8】化学式(XIII):
【化3】

[式中、Aは化学結合であるか、あるいはCH_(2)であり、R^(1)は窒素原子であり、R^(6)はカルボニル基またはスルホニル基であり;R^(2)とR^(3)は、(CR^(7)R^(8))_(n)(式中、nは0、1、または2であり、R^(7)とR^(8)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択される)であり、そしてR^(4)とR^(5)はCHまたはCR^(11)から独立に選択され(式中、R^(11)は電子求引性基である);R^(16’)は原子価がrの橋かけ基であって、
副次化学式(XIV):
【化4】

で表される更なる基で置換されていてもよく、そして、yは1より多くの整数であり、Aは以上で定義された通りのものであり、rは2もしくはそれ以上の整数である]で表される高分子化合物。
【請求項9】yが5より多くの整数であることを特徴とする、請求項8によるポリマー。
【請求項10】yが5から30の整数であることを特徴とする、請求項8によるポリマー。」
とする補正事項からなるものである。


(2)本件補正の目的の適否について
本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
(イ)補正前の請求項1?19,23及び31を削除するとともに、それに伴い請求項に付した番号を連続番号とするために繰上げる補正事項
(ロ)補正前の請求項20における化学式(IB)(式省略)から、補正後の請求項1における化学式(IB’)(式省略)とする補正事項
(ハ)補正前の請求項20における「R^(1”)はCHであってR^(6”)が化学結合、-C(O)O-または-OC(O)-または-S(O)_(2)であるか、あるいは、R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1”)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6”)は化学結合であるか、R^(1”)は窒素原子であり、R^(6”)はカルボニル基またはスルホニル基であり」から、補正後の請求項1における「R^(1”)は窒素原子であり、R^(6”)はカルボニル基またはスルホニル基であり」とする補正事項
(ニ)補正前の請求項20における「R^(2”)とR^(3”)は、(CR^(7”)R^(8”))_(n”)、あるいは、基CR^(9”)R^(10”)、-(CR^(7”)R^(8”)CR^(9”)R^(10”))-、または-(CR^(9”)R^(10”)CR^(7”)R^(8”))-から独立に選択され(式中、n”は0、1、または2であり、R^(7”)とR^(8”)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択され、そして、R^(9”)またはR^(10”)のいずれか一方が水素であって他方が電子求引性基であるか、あるいは、R^(9”)とR^(10”)が一緒になって電子求引性基を形成している)」から、補正後の請求項1における「R^(2”)とR^(3”)は、(CR^(7”)R^(8”))_(n”)(式中、n”は0、1、または2であり、R^(7”)とR^(8”)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択される)であり」とする補正事項
(ホ)補正前の請求項20における「R^(4”)及びR^(5”)は、C、CHまたはCR^(11”)から独立に選択され、ここで、R^(11”)は電子求引性基であり」から、補正後の請求項1における「R^(4”)及びR^(5”)は、CHまたはCR^(11”)から独立に選択され、ここで、R^(11”)は電子求引性基であり」とする補正事項
(ヘ)補正前の請求項20における「点線は、化学結合が存在しているか、あるいは、存在していないことを示しており、そして、X^(1”)は、X^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在していない場合には基CX^(2”)X^(3”)であって、X^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在している場合には基CX^(2”)であり、Y^(1”)は、Y^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在していない場合には基CY^(2”)Y^(3”)であって、Y^(1”)がそこに結合されている該点線の化学結合が存在している場合には基CY^(2”)であり、そして、X^(2”)、X^(3”)、Y^(2”)、及びY^(3”)は、水素及びフッ素から独立に選択され」から、補正後の請求項1における「X^(1”)は基CX^(2”)X^(3”)であり、Y^(1”)は基CY^(2”)Y^(3”)であり、そして、X^(2”)、X^(3”)、Y^(2”)、及びY^(3”)は、水素及びフッ素から独立に選択され」とする補正事項
(ト)補正前の請求項20における「化学式(IB)の化合物に重合をもたらす条件下において」から、補正後の請求項1における「化学式(IB’)の化合物に環化重合をもたらす条件下において」とする補正事項
(チ)補正前の請求項20における「放射線に晒すステップを包含する」から、補正後の請求項1における「紫外線に晒すステップを包含する」とする補正事項
(リ)補正前の請求項20において、「(i)(a)R^(1”)とR^(6”)、または(b)R^(2”)とR^(3”)、もしくは(c)R^(4”)とR^(5”)のうちの少なくとも1つが電子求引性基を含んでいること;
(ii)R^(2”)とR^(3”)が両方ともCH_(2)であり、R^(4”)とR^(5”)が両方ともCHであり、R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1”)がN^(+)R^(12”)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrであり、R^(12”)が水素であり、R^(6”)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16”)は以下の基以外であること;
【化15】
(式省略)
(iii)R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1”)が窒素原子であり、R^(6”)がカルボニル基である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16”)はNHCH_(2)CH_(2)OC(O)OCH_(2)CH_(2)NH-、-CH_(2)CHR^(p)-以外の基であり、該基においてR^(p)は塩素、臭素、ビスフェノール-F、10,11-ジオクチル-1,20-シコシル又は以下の基であること;
【化16】
(式省略)
(iv)R^(2”)とR^(3”)が両方ともCH_(2)であり、R^(4”)とR^(5”)が両方ともCHであり、R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1”)がCH基であり、R^(6”)が-OC(O)-であり、ここでO原子はR^(1”)基に直接結合する場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16”)は-CH=CH-以外の基であること;
(v)R^(1”)が窒素であり、R^(6”)がスルホニルである場合、R^(16”)は-Ph-O-Ph基を含まないこと;
を条件として」を削除し、補正後の請求項1とする補正事項


補正事項(イ)は請求項を削除するものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

補正事項(ロ)、(ホ)及び(ヘ)は、化学式(IB)中の「化学結合が存在しているか、あるいは、存在していないことを示」すものである点線を削除し、それに伴って置換基の定義のうち「化学結合が存在している」場合についての部分を削除したものであって、択一的記載の一方を削除し化学結合が存在しない場合のみへと限定するものであるといえるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項(ハ)は、R^(1”)及びR^(6”)の定義につき「R^(1”)はCHであってR^(6”)が化学結合、-C(O)O-または-OC(O)-または-S(O)_(2)である」場合及び「R^(1”)とR^(6”)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1”)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6”)は化学結合である」場合を削除したものであって、択一的記載の一部を削除し「R^(1”)は窒素原子であり、R^(6”)はカルボニル基またはスルホニル基であ」る場合のみへと限定するものであるといえるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項(ニ)は、R^(2”)及びR^(3”)の定義につき「基CR^(9”)R^(10”)、-(CR^(7”)R^(8”)CR^(9”)R^(10”))-、または-(CR^(9”)R^(10”)CR^(7”)R^(8”))-」から独立に選択される場合を削除したものであって、択一的記載の一部を削除し「(CR^(7”)R^(8”))_(n”)」のみへと限定するものであるといえるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項(ト)は、「重合」を「環化重合」に限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項(チ)は、「放射線」を「紫外線」に限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項(リ)は、R^(16”)の定義につき、他の置換基との関係において除かれる部分等が規定されていた条件(i)?(v)を削除するものであり、これにより少なくともR^(16”)に含まれる置換基の範囲が拡張されていることは明らかであるといえ、補正前の請求項20において発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)を限定するものではない。
したがって、補正事項(リ)は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえず、さらに、補正事項(リ)は、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものにも該当しない。
よって、補正事項(リ)は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。


(3)むすび
以上のとおりであるから、補正事項(リ)を含む特許請求の範囲の補正は、請求項の削除を目的とする補正、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正、誤記の訂正を目的とする補正、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正、のいずれにも該当するものではないから、補正事項(リ)を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


(4)独立特許要件について
上記のとおり、補正事項(リ)を含む特許請求の範囲の補正は、請求項の削除を目的とする補正、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正、誤記の訂正を目的とする補正、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正、のいずれにも該当するものではないが、仮に、補正事項(リ)が特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとした場合に、本件補正後の発明が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する補正であるか否か(いわゆる独立特許要件)について、念のため以下に検討しておく。


(4)-1.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成22年1月14日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「本願補正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、上記の(1)に記載したとおりのものである。


(4)-2.引用刊行物記載の事項
<引用刊行物>
刊行物A:特開昭50-159581号公報
(平成22年2月17日付け前置報告書における引用文献1)

A1.「分子中にN,N-ジアリルアミド基を2?6個有する化合物の少なくとも一種又はそれと他のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物との混合物をラジカル重合せしめることを特徴とする熱硬化性ポリアミド樹脂の製造法。」(特許請求の範囲)

A2.「一方、同一原子にアリル基が2個結合しているジアリル化合物の該アリル基はラジカル開始剤の存在下で重合を行うと、通常のアリル化合物の如き重合を起さず、下記に示す如き環化重合を起すことが知られている。

本発明者は、この環化重合性をラジカル硬化樹脂の製造に応用すべく鋭意研究の結果、本発明に到達したものである。」(第1頁左下欄下から3行-右下欄下から9行)

A3.「本発明において用いられるN,N-ジアリルアミド基含有化合物は、該N,N-ジアリルアミド基を2?6個有するものである。即ち、一般式

で表わされる化合物である。
前記一般式(I)中のRは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基等のいずれの基でも良く、得られるポリアミド樹脂の用途、成型性、相溶性、耐熱性等を勘案して選択すれば良い。好適に用いられるN,N-ジアリルアミド基含有化合物のRとしては、例えば

| _( ) | | |
CH_(2)-CH-CH-CH_(2)等が好適に挙げられる。」(第2頁右上欄6行-左下欄下から6行)

A4.「また、特別にラジカル開始剤を使用しなくても、加熱、或は紫外線、γ-線等の高エネルギーの電磁波、電子線等の照射によつてラジカルを反応系内に発生させる事によつて、重合を進行せしめる事も出来る。」(第3頁右上欄5-9行)

A5.「実施例1
N,N,N’,N’-テトラアリルイソフタルアミド(沸点185℃/2mmHg)1gとジクミルパーオキシド20mgを試験管に秤量し、徐々に加熱し、続いて200℃で1時間加熱を続けると淡黄色の硬化樹脂が得られた。このものの赤外吸収スペクトルには、……が観測される。このことから環化重合が進行していることが解る。

実施例2
N,N,N’,N’-テトラアリルテレフタルアミド(融点104℃)1gとジクミルパーオキシド20mgを試験管に秤量し、徐々に加熱し、更に160℃で5時間加熱を続けると淡黄色の硬化樹脂を得た。……

実施例3
N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサアリルトリメシンアミド(融点89℃、ワツクス状)1gと20mgのジクミルパーオキシドを秤量し、徐々に加熱し更に200℃で2時間加熱すると淡黄色の硬化樹脂が得られた。……

実施例4
N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサアリルトリメリトアミド(油状)1gと20mgのジクミルパーオキシドを秤量し、徐々に加熱し、更に160℃で4時間加熱すると丈夫な淡黄色の硬化樹脂を得た。……
……
実施例6
N,N,N’,N’-テトラアリルセバカミド(油状物質)1g及びアゾビスイソブチロニトリル50mgを試験管に加えて徐々に加熱し、その後100℃で5時間、150℃で1時間加熱すると系は硬まり、……利用することが出来る。」(第4頁右下欄下から2行-第6頁左上欄9行)


(4)-3.引用発明
刊行物Aには、N,N-ジアリルアミド基含有化合物として一般式(I)で表わされる化合物が記載されており(摘示事項A3)、重合に関し、「紫外線」等の照射によって進行させることができること(摘示事項A4)、重合が「環化重合」であること(摘示事項A2及びA5)が記載されているから、刊行物Aには、摘示事項A1?A5からみて、
「一般式(I)

で表わされる化合物の少なくとも一種を、紫外線の照射によつてラジカルを反応系内に発生させる事によつて環化重合せしめる熱硬化性ポリアミド樹脂の製造法」の発明(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されているものと認められる。


(4)-4.対比・判断
刊行物A発明における「熱硬化性ポリアミド樹脂の製造法」、「紫外線の照射によつてラジカルを反応系内に発生させる事によつて環化重合せしめる」が、それぞれ本願補正発明における「ポリマーの製造方法」、「環化重合をもたらす条件下において、紫外線に晒すステップを包含する」に相当するものであることは明らかである。
また、刊行物A発明における一般式(I)で表わされる化合物が、本願補正発明における化学式(IB’)において、R^(1”)が窒素原子であり、R^(6”)がカルボニル基であり、R^(2”)とR^(3”)が(CR^(7”)R^(8”))_(n”)(式中、n”=1、R^(7”)とR^(8”)が水素)であり、R^(4”)及びR^(5”)がCHであり、X^(1”)が基CX^(2”)X^(3”)であり、Y^(1”)が基CY^(2”)Y^(3”)であり、X^(2”)、X^(3”)、Y^(2”)、及びY^(3”)が水素でありR^(16”)が原子価2?6の橋かけ基であり、r”が2?6であるものに相当することは明らかである。

以上の点を踏まえた上で、本願補正発明と刊行物A発明とを対比すると、両者は、
「ポリマーの製造方法であって、該方法が、化学式(IB’):
【化1】

[式中、R^(1”)は窒素原子であり、R^(6”)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2”)とR^(3”)は、(CR^(7”)R^(8”))_(n”)(式中、n”は0、1、または2であり、R^(7”)とR^(8”)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択される)であり、そして
R^(4”)及びR^(5”)は、CHまたはCR^(11”)から独立に選択され、ここで、R^(11”)は電子求引性基であり;
X^(1”)は基CX^(2”)X^(3”)であり、Y^(1”)は基CY^(2”)Y^(3”)であり、そして、X^(2”)、X^(3”)、Y^(2”)、及びY^(3”)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16”)は、原子価がr”の橋かけ基であって、r”は2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物を、化学式(IB’)の化合物に環化重合をもたらす条件下において、紫外線に晒すステップを包含する、ポリマーの製造方法」の点で一致し、相違する点はない。

よって、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


(4)-5.まとめ
以上のとおり、本件補正は、補正事項(リ)が特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当すると仮定した場合であっても、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3.本件審判請求について
(1)本願発明
平成22年1月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1?31に係る発明は、平成21年5月29日付けの誤訳訂正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?31に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】放射線又は電子ビームの影響下で重合可能であり、化学式(IA):
【化1】

[式中、R^(1)はCHであってR^(6)が単結合、-C(O)O-、-OC(O)-または-S(O)_(2)-であるか、あるいは、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6)は化学結合であるか、R^(1)は窒素原子であり、R^(6)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2)とR^(3)は、(CR^(7)R^(8))_(n)、あるいは、基CR^(9)R^(10)、-(CR^(7)R^(8)CR^(9)R^(10))-、または-(CR^(9)R^(10)CR^(7)R^(8))-から独立に選択され(式中、nは0、1、または2であり、R^(7)とR^(8)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択され、そして、R^(9)またはR^(10)のいずれか一方が水素であって他方がCOCH_(3)またはCOCH_(2)CNから選択される電子求引性基であるか、あるいは、R^(9)とR^(10)が一緒になってオキソ基を形成している)、そして
R^(4)とR^(5)はCHまたはCR^(11)から独立に選択され(式中、R^(11)は電子求引性基である);
X^(2)、X^(3)、Y^(2)、及びY^(3)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16)は、以下の前提:
(i)R^(1)がCHであり、R^(6)が化学結合である場合(a)R^(2)とR^(3)、または(b)R^(4)とR^(5)のうちの少なくとも1つが電子求引性基を含んでいること;
(ii)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrであり、R^(12)が水素であり、R^(6)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は(CH_(2))_(x)以外の基であり、該基においてxは7または8であるか、R^(16)は以下の基以外であること;
【化2】

(iii)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrまたはClであり、R^(12)がアルキルまたはアリルであり、R^(6)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は(CH_(2))_(x)以外の基であり、該基においてxは2から10の整数であること;
(iv)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであるかR^(4)とR^(5)の一つがCClから選択され、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)が窒素原子であり、R^(6)がカルボニル基である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)はNHCH_(2)CH_(2)OC(O)OCH_(2)CH_(2)NH-、-CH_(2)CHR^(p)-以外の基であり、該基においてR^(p)は塩素、臭素、ビスフェノール-F、10,11-ジオクチル-1,20-シコシル又は以下の基であること;
【化3】

(v)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がCH基であり、R^(6)が-OC(O)-であり、ここでO原子はR^(1)基に直接結合する場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は-CH=CH-以外の基であること;
(vi)R^(1)が窒素であり、R^(6)がスルホニルである場合、R^(16)は-Ph-O-Ph基以外の基であること;
を条件として、原子価がrの橋かけ基であって、rは2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物。」


(2)原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた、平成20年11月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由2は、以下のとおりである。
「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
……
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
……
(理由2、3について)
(1)
・請求項 1?9、16?19、33、35、40、43、44
・引用文献 1
・備考

引用文献1の特許請求の範囲、第3頁右上欄第4行?左下欄第7行、実施例10を特に参照。
引用文献1には、少なく2個のアリル基を含むアリルアミンの強酸塩、及び、該アリルアミンの強酸塩をラジカル開始剤存在下、重合することが記載されている。
……

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開昭50-035279号公報
(以下省略)」


(3)原査定における拒絶の理由の妥当性
(3-1)引用刊行物記載の事項
本件優先日前に頒布されたことが明らかな、引用文献1(特開昭50-35279号公報)には、以下の事項が記載されている。

1a.「少くとも2個のアリル基を含むアリルアミンの強酸塩を含んでなる組成物の重合方法であつて、前記組成物を非荷電断片のみを与える遊離ラジカル開始剤の存在で、-20と80℃の間の温度でかつ0と5の間のpHで、酸素が存在しない状態で反応させることを含んでなることを特徴とする重合方法。」(特許請求の範囲)

1b.「ジアリルモノマー及びトリアリルモノマーのようなアリル化合物の遊離ラジカル重合は、網状組織のほかに、分子内重合により環式構造を与える。」(第1頁右下欄5-7行)

1c.「〔実施例10〕
本実施例は攪拌系で三塩化チタンと過酸化水素を用いるビスジアリルアミノ-1,6-ヘキサンの重合を説明するものである。
ビス-ジアリルアミノ-1,6-ヘキサン塩酸塩の50%溶液10gと三塩化チタンの6%溶液1.7gの混合物を、N-100エチルセルロース0.5gを含有する50mlのベンゼン中に分散した。容器を窒素で浄化し、分散液を激しく攪拌しながら、80%過酸化水素溶液0.18gを徐々に加えた。
4時間後、ろ過(審決注:さんずいに戸の略字体を表記できないため「ろ過」と表記した。)してポリマーを単離し、実施例1の場合と同様に十分に洗浄した。
ポリマーの収率は75%、膨潤比は1.1、陰イオン交換容量は5.9meq/gであつた。pH滴定曲線から、半中和におけるpHは7.2であつた。また、10%中和から60%中和へのpH変化は零であつた。」(第7頁左上欄6行?右上欄3行)

(3-2)刊行物に記載された発明の認定
引用文献1の摘示事項1cの実施例10においては、「ビス-ジアリルアミノ-1,6-ヘキサン塩酸塩」を重合させポリマーを製造したことが記載されており、原料として用いられた化合物である「ビス-ジアリルアミノ-1,6-ヘキサン塩酸塩」自体についても具体的に記載されているといえるから、引用文献1には、摘示事項1cからみて、
「ビス-ジアリルアミノ-1,6-ヘキサン塩酸塩」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


(3-3)対比・判断
(3-3-1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ビス-ジアリルアミノ-1,6-ヘキサン塩酸塩」(以下、「引用発明化合物」ともいう。)が、本願発明における化学式(IA)において、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、R^(12)が水素であり、Zが原子価が1の陰イオンである塩素イオンであり、R^(6)が化学結合であり、R^(2)とR^(3)が、(CR^(7)R^(8))_(n)(式中、n=1、R^(7)とR^(8)が水素)であり、R^(4)とR^(5)がCHであり、X^(2)、X^(3)、Y^(2)、及びY^(3)が水素であり、R^(16)が原子価2の橋かけ基であり、rが2であるものに相当することは明らかである。
次に、引用発明化合物が、本願発明における条件(i)?(vi)を満たすものであるか否かにつき検討する。まず、引用発明化合物において、本願発明のR^(1)に相当する部位はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)に相当する構造を有するものであって、かつ、本願発明のR^(6)に相当する部位は化学結合であるから、R^(1)がCHである場合についてのものである条件(i)及び(v)によっては何ら排除されないことが明らかであり、同様に、R^(1)が窒素原子であってR^(6)がカルボニル基又はスルホニルである場合についてのものである条件(iv)及び(vi)によっても何ら排除されないことが明らかであるから、引用発明化合物がこれら条件(i)、(iv)、(v)及び(vi)を満たすことは明らかである。また、引用発明化合物において、本願発明のZに相当する部位は塩素イオンであるから、ZがBrである場合についてのものである条件(ii)によっては何ら排除されないことが明らかであり、更に、引用発明化合物において、本願発明のR^(12)に相当する部位は水素であるから、R^(12)がアルキル又はアリルである場合についてのものである条件(iii)によっても何ら排除されないことが明らかであるから、引用発明化合物がこれら条件(ii)及び(iii)をも満たすことは明らかである。

以上の点を踏まえた上で、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「化学式(IA):
【化1】

[式中、R^(1)はCHであってR^(6)が単結合、-C(O)O-、-OC(O)-または-S(O)_(2)-であるか、あるいは、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子求引性基を形成しており、該電子吸引性基においてR^(1)はN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)、S(O)_(p)R^(13)、BまたはP(O)_(q)R^(14)であり、R^(12)、R^(13)およびR^(14)は水素またはヒドロカルビルから独立に選択され、Zは原子価がmの陰イオンであり、pは0、1または2であり、qは0、1、2または3であり、R^(6)は化学結合であるか、R^(1)は窒素原子であり、R^(6)はカルボニル基またはスルホニル基であり;
R^(2)とR^(3)は、(CR^(7)R^(8))_(n)、あるいは、基CR^(9)R^(10)、-(CR^(7)R^(8)CR^(9)R^(10))-、または-(CR^(9)R^(10)CR^(7)R^(8))-から独立に選択され(式中、nは0、1、または2であり、R^(7)とR^(8)は水素または20までの炭素原子を含むアルキルから独立に選択され、そして、R^(9)またはR^(10)のいずれか一方が水素であって他方がCOCH_(3)またはCOCH_(2)CNから選択される電子求引性基であるか、あるいは、R^(9)とR^(10)が一緒になってオキソ基を形成している)、そして
R^(4)とR^(5)はCHまたはCR^(11)から独立に選択され(式中、R^(11)は電子求引性基である);
X^(2)、X^(3)、Y^(2)、及びY^(3)は、水素及びフッ素から独立に選択され;
R^(16)は、以下の前提:
(i)R^(1)がCHであり、R^(6)が化学結合である場合(a)R^(2)とR^(3)、または(b)R^(4)とR^(5)のうちの少なくとも1つが電子求引性基を含んでいること;
(ii)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrであり、R^(12)が水素であり、R^(6)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は(CH_(2))_(x)以外の基であり、該基においてxは7または8であるか、R^(16)は以下の基以外であること;
【化2】

(iii)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がN^(+)R^(12)(Z^(m-))_(1/m)であり、ZがBrまたはClであり、R^(12)がアルキルまたはアリルであり、R^(6)が化学結合である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は(CH_(2))_(x)以外の基であり、該基においてxは2から10の整数であること;
(iv)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであるかR^(4)とR^(5)の一つがCClから選択され、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)が窒素原子であり、R^(6)がカルボニル基である場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)はNHCH_(2)CH_(2)OC(O)OCH_(2)CH_(2)NH-、-CH_(2)CHR^(p)-以外の基であり、該基においてR^(p)は塩素、臭素、ビスフェノール-F、10,11-ジオクチル-1,20-シコシル又は以下の基であること;
【化3】

(v)R^(2)とR^(3)が両方ともCH_(2)であり、R^(4)とR^(5)が両方ともCHであり、R^(1)とR^(6)が一緒になって電子吸引性基を形成し、該電子吸引性基においてR^(1)がCH基であり、R^(6)が-OC(O)-であり、ここでO原子はR^(1)基に直接結合する場合、rは2以外であるか、rが2である場合には、R^(16)は-CH=CH-以外の基であること;
(vi)R^(1)が窒素であり、R^(6)がスルホニルである場合、R^(16)は-Ph-O-Ph基以外の基であること;
を条件として、原子価がrの橋かけ基であって、rは2もしくはそれ以上の整数である]で表される化合物。」の点で一致しているが、以下の相違点1において一応相違している。

[相違点1]
本願発明では、化合物が「放射線又は電子ビームの影響下で重合可能であり」と規定されているのに対し、引用発明ではこのような規定がなされていない点。

(3-3-2)相違点についての検討
[相違点1]について
引用発明化合物は上記(3-3-1)で述べたとおり、その化学構造において本願発明の化合物と一致するものであるから、その化学的性質についても当然に本願発明の化合物と同一であると認められる。
したがって、引用発明化合物は「放射線又は電子ビームの影響下で重合可能であり」なる規定を満たすものと認められる。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
(なお、この点につき付言しておくと、引用発明化合物のようなジアリルアミン塩構造を有する化合物が放射線照射により重合しうることは例えば特開昭51-136774号公報(平成20年11月20日付け拒絶理由通知書における引用文献2)に記載されているように周知である。)

(4)まとめ
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



第4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由2は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-18 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-08 
出願番号 特願2000-562340(P2000-562340)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
P 1 8・ 572- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 玲奈小出 直也  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 藤本 保
小野寺 務
発明の名称 単量体及び、それらから得られる網状高分子  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  

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