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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1263683
審判番号 不服2011-7334  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-07 
確定日 2012-09-19 
事件の表示 特願2005-217532「再起動時のNOx排出量を制御するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 37964〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年7月27日(パリ条約による優先権主張2004年7月27日、米国)の出願であって、平成21年10月19日付けで拒絶理由が通知され、平成22年2月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月5日付けで再度拒絶理由が通知され、同年6月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月7日付けで拒絶査定がなされ、平成23年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付で明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。
さらに、平成23年10月24日付けで当審により書面による審尋がなされ、それに対して、平成24年1月20日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成23年4月7日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年4月7日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
平成23年4月7日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年2月15日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
内燃機関の再起動中の窒素酸化物の排出を制御するためのシステムであって、
触媒コンバーター上流の位置において排気酸素の第1レベルを判定する第1センサー、
上記触媒コンバーターのミッド・ベッド位置において排気酸素の第2レベルを判定する第2センサー、及び、
第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、エンジン再起動を所定期間遅らせる処理、並びに選択された期間、再起動回数を所定回数に制限する処理のうちの少なくとも一つの処理を開始する制御器 、を含むシステム。(審決注:以下、「第○レベル」、「第○センサー」及び「第○排気酸素レベル」における○に用いられる算用数字は、審決中では全角で表記している。)
【請求項2】
NOx排出量を削減する上記少なくとも一つの処理に加えて、エンジンにより圧送される酸素量を最小化する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
圧送される酸素量の上記最小化を、停止中にスロットルを閉じることにより行う、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
NOx 排出量を削減する上記少なくとも一つの処理に加えて、触媒コンバーターを修整するためにエンジン再起動状態の間リッチ燃料供給を行なう、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
上記第1及び第2の排気酸素レベルの少なくとも一つが、ヒーター付排気酸素センサーを用いて判定される、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
上記第1及び第2の排気酸素レベルの少なくとも一つが、ユニバーサル排気酸素センサーを用いて判定される、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
上記触媒コンバーターが三元触媒コンバーターである、請求項1から6のいずれかに記
載のシステム。」

B 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
内燃機関の再起動中の窒素酸化物の排出を制御するためのシステムであって、
触媒コンバーター上流の位置において排気酸素の第1レベルを判定する第1センサー、
上記触媒コンバーターのミッド・ベッド位置において排気酸素の第2レベルを判定する第2センサー、及び、
第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、選択された期間、エンジン再起動回数を所定回数に制限する処理を開始する制御器、
を含むシステム。
【請求項2】
NOx排出量を削減する上記処理に加えて、エンジンにより圧送される酸素量を最小化する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
圧送される酸素量の上記最小化を、停止中にスロットルを閉じることにより行う、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
NOx 排出量を削減する上記処理に加えて、触媒コンバーターを修整するためにエンジン再起動状態の間リッチ燃料供給を行なう、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
上記第1及び第2の排気酸素レベルの少なくとも一つが、ヒーター付排気酸素センサーを用いて判定される、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
上記第1及び第2の排気酸素レベルの少なくとも一つが、ユニバーサル排気酸素センサーを用いて判定される、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
上記触媒コンバーターが三元触媒コンバーターである、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。」(審決注:アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正後の請求項1については、本件補正前における「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、エンジン再起動を所定期間遅らせる処理、並びに選択された期間、再起動回数を所定回数に制限する処理のうちの少なくとも一つの処理を開始する制御器」という発明特定事項を、「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、選択された期間、エンジン再起動回数を所定回数に制限する処理を開始する制御器」という発明特定事項とするものである。
したがって、この補正は、制御器が開始する処理に関して、選択的に記載された「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」及び「選択された期間、(エンジン)再起動回数を所定回数に制限する処理」という処理の中の一つである、「選択された期間、エンジン再起動回数を所定回数に制限する処理」という処理に限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、次に検討する。

3.独立特許要件
本件補正によっても依然として、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲並びに図面の記載が以下の点で不明りょうであるから、本願は特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであって、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-1.特許請求の範囲の請求項1に対して(特許法第36条第6項第2号)
特許を受けようとする発明が、以下の点で明確であるとはいえない。

3-1-1.審判請求書における主張
請求人は審判請求書において、特許を受けようとする発明が、特許法第36条第6項第2号の要件の充足性に関して以下のような主張をしている。
「請求項1に記載されている「NOx排出量を削減する」ことと「再起動回数を所定回数に制限する処理」との関係について説明致します。
当初明細書の段落0002に記載していますように、エンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車では、走行中に頻繁にエンジン停止と再起動の動作を実行するのが普通です。また、段落0004に記載していますように、エンジンのみを駆動源とする通常の自動車においても、燃料節約のために走行中にエンジンの停止と再起動の動作を実行します(例えば、減速燃料カット)。
走行中のエンジンの停止に伴って、エンジンから空気が排気システムに圧送されて触媒の酸素吸蔵能力が飽和又は殆ど飽和したときには、エンジンが再起動されたときの触媒によるNOx変換能力が低くなります。このことは、当初明細書の段落0003に記載したとおりです。すなわち、走行中にエンジンの停止と再起動とが繰り返されると、そのたびに、排気システムからのNOx排出量が増加し、その結果、エンジンを停止させることなく走行する場合に比べて、NOx排出量が多くなります。
そこで、エンジンの再起動回数を制限します。再起動回数を制限するということは、要するに走行中にエンジンを停止させる回数を減らす、例えば、ハイブリッド自動車ではエンジン駆動の割合を増大させる、通常の自動車では減速燃料カットを制限する、ということになります。エンジンをできるだけ停止させないようにして自動車を走行させますから、それだけ、NOx排出量が削減されることになります。」

3-1-2.当審の判断
まず、特許請求の範囲の請求項1における「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、選択された期間、エンジン再起動回数を所定回数に制限する処理を開始する制御器」という記載について検討する。
「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるとき」とは、特許請求の範囲の請求項1の「触媒コンバーター上流の位置において排気酸素の第1レベルを判定する第1センサー、上記触媒コンバーターのミッド・ベッド位置において排気酸素の第2レベルを判定する第2センサー」の記載からみて、「触媒コンバーター上流の位置の第1センサーにおいて判定された第1排気酸素レベルと触媒コンバーターのミッド・ベッド位置においての第2センサーにおいて判定された第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるとき」と解される。
このことは、発明の詳細な説明の段落【0016】の「エンジン停止及び再起動中、エンジンにより空気が排気システム中に吸引される。排気システムの触媒は、空気から酸素を吸着する。吸着された酸素は、触媒の酸素吸蔵能力を飽和させるのに充分な量である場合が多い。酸素吸蔵能力を飽和させた又は殆ど飽和させた三元触媒は、NOx変換能力が低く(つまりリーン空燃比(air-fuel ratio: AFR)への移行を緩衝する能力が低い)、そしていわゆるNOxの通り抜け(breakthrough)が起こる。燃焼を再開するとき(つまり、エンジンを再起動するとき)、その吸蔵レベルが飽和レベルから低下するまで、エンジンからのNOx排出量は触媒コンバーターにより効率的に削減又は消失することはない。」という記載からみて、触媒コンバータが酸素を吸着するため、第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えることを意味し、この第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えた状態が、触媒コンバータが飽和した状態ではなく、また、発明の詳細な説明を参酌しても第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えることをもって、その後触媒コンバータが急速に飽和するとは解せない。
そうすると、第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときは、触媒コンバータは窒素酸化物(NOx)の変換能力を持っているといえ、窒素酸化物(NOx)が排出されることはない。
してみると、「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減する」ことの技術的意義が不明であり、「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減する」という記載が明確なものとはいえない。
そして、第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減することが明確でない以上、第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、選択された期間、エンジン再起動回数を所定回数に制限する処理を開始することも明確でなく、その結果として、「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、選択された期間、エンジン再起動回数を所定回数に制限する処理を開始する」ことも明確でない。

次に、「NOx排出量を削減する」ことと「再起動回数を所定回数に制限する処理」の関係について検討する。
請求人は、審判請求書において、「再起動回数を制限するということは、要するに走行中にエンジンを停止させる回数を減らす」との主張をしているが、明細書の段落【0003】の「しかしながら、ユーザー(例えば車両のドライバー)が、電気モーターが提供できるよりも大きな動力を望むとき、又はバッテリーが消耗してきたとき、必要とされる余分な動力を供給するために、エンジンを再起動するのが一般的である。エンジンの停止及び再起動中、エンジンにより排気システムへ空気が圧送される。」という記載、また、明細書中には「走行中にエンジンを停止させる回数を減らす」旨の記載がないことを考慮すると、「再起動」ということは、車両は走行中か、あるいは、停止中であって、内燃機関(エンジン)は、非作動(燃焼を行っていない)のものを再び起動(燃焼)させることであると解することが自然である。
そして、特許請求の範囲の記載は、車両が走行中であって内燃機関(エンジン)が作動中(燃焼を行っている)であることを前提としているものでもない。
よって、「再起動回数を制限するということは、要するに走行中にエンジンを停止させる回数を減らす」との主張は採用することができないから、「NOx排出量を削減する」ことと「再起動回数を所定回数に制限する処理」することの関係は依然として不明りょうである。

以上のことから、特許を受けようとする発明が、依然として明確であるとはいえない。

3-2.発明の詳細な説明に対して(特許法第36条第4項第1号)
発明の詳細な説明が以下の点で、本件補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

3-2-1. 本件補正後の発明の詳細な説明の段落【0028】
平成23年4月7日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、発明の詳細な説明の段落【0028】に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年6月2日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A「【0028】
触媒110が、排気104中に圧送された酸素の大部分を酸素吸蔵能力が飽和することなしに吸着したとき、センサー122は概略的に、低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも低くなる)。しかしながら、触媒110が酸素で飽和したとき、酸素は概略的に触媒110を通り抜け、ミッド・ベッド・センサー122中にリーン読み取り値を発生する(つまり、信号S_MBが第3所定レベルを越えることがある)。」
(審決注:以下、「第○所定レベル」における○に用いられる算用数字は、審決中では全角で表記している。)

B「【0028】
触媒110が、排気104中に圧送された酸素の大部分を酸素吸蔵能力が飽和することなしに吸着したとき、センサー122は概略的に、低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも高くなる)。しかしながら、触媒110が酸素で飽和したとき、酸素は概略的に触媒110を通り抜け、ミッド・ベッド・センサー122中にリーン読み取り値を発生する(つまり、信号S_MBが第1所定レベルを越えることがある)。」
(審決注:アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)

3-2-2. 審判請求書における主張
請求人は審判請求書において、段落【0028】の補正に関して以下のような主張をしている。
「明細書を次のように補正しております。
・・・(中略)・・・
(4) 段落0028第1文末尾の「低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも低くなる)」の「低くなる」を「高くなる」に補正致しました。
原査定の説示Cで指摘されていますように、段落0028の当初の記載は、段落0027「リーン応答を殆ど又は全く表示しない。つまり、信号S_MBは、第3所定レベルよりも低いことがあり、」と矛盾する明らかな誤記であるため、これを訂正したものです。
(5) 段落0028第2文の「触媒110が酸素で飽和したとき、……リーン読み取り値を発生する(信号S_MBが第3所定レベルを越えることがある)。」を「触媒110が酸素で飽和したとき、……リーン読み取り値を発生する(信号S_MBが第1所定レベルを越えることがある)。」に補正致しました。
段落0028の第1文によれば、「低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも高くなる)」ということですから、段落0028第2文の当初記載は、段落0028第1文の記載に矛盾する明らかな誤記です。そして、触媒110が酸素で飽和したときに「信号S_MBが第3所定レベルを越える」のでなければ、第3所定レベルよりも高い第1所定レベルを越えるであろうことが明らかです。よって、上記のように補正致しました。
・・・(中略)・・・
以上により、上記説示Cの問題は解消し、発明の詳細な説明は特許法第36条第4項第1号に適合するものになったと思料致します。」

3-2-3.当審の判断
請求人のこの補正された段落【0028】に対する主張に従うと、段落【0028】においては、「第1所定レベル」を越えるときのリーン値により触媒が飽和していると判断していることとなる。
一方、段落【0031】においては、「別の例において、システム100を、ミッド・ベッド酸素センサー122と組み合わせて触媒下流酸素センサー(若しくは下流酸素センサー)124を用いて、実装することが出来る。ミッド・ベッド酸素センサー122が排気がリーンであることを示す信号S_MBを発信し(つまり、信号S_MBが第3レベルを越えている)、下流酸素センサー124が排気がリーンであることを表示していない(つまり信号S_Pが第3所定レベルを越えていない)とき、TWC110内の第1触媒はほぼ飽和しているが、TWC110内の後方触媒はほぼ飽和しておらず、NOx浄化性能は許容範囲内であり、制御器106による救済動作が開始そして制御されることはない。」とあるように、第3所定レベルを越えるときのリーン値により触媒が飽和していると判断していることとなる。
そうすると、「第1所定レベル」と「第3所定レベル」のそれぞれ位置づけが明確でなく、それぞれがどのような閾値を意味しているか依然として不明である。
よって、発明の詳細な説明が、本件補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

なお、請求人は、審尋の回答書において、「当初明細書の[0026]末尾の記載「(つまり、信号S_Uは、第1所定レベルよりも高い第2所定レベルを越えることがある)」の「高い」は「低い」の誤記であ」る旨の主張をしているが、当初明細書の段落【0026】の「適切な排気NOx浄化性能をもたらすには、わずかにリッチな排気が望ましいのが、普通である。わずかにリッチな排気はセンサー120により検出され、信号S_Uを通じて表示される(つまり、信号S_Uは、第1所定レベルよりも高い第2所定レベルを越えることがある)。」という記載を、請求人の主張のように訂正してみると「適切な排気NOx浄化性能をもたらすには、わずかにリッチな排気が望ましいのが、普通である。わずかにリッチな排気はセンサー120により検出され、信号S_Uを通じて表示される(つまり、信号S_Uは、第1所定レベルよりも低い第2所定レベルを越えることがある)。」となる。そうすると、第2所定レベルを越えるものが適切な排気NOx浄化性能をもたらすわずかにリッチな排気ということになり、これは、当初明細書の段落【0028】の「触媒110が、排気104中に圧送された酸素の大部分を酸素吸蔵能力が飽和することなしに吸着したとき、センサー122は概略的に、低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも低くなる)。しかしながら、触媒110が酸素で飽和したとき、酸素は概略的に触媒110を通り抜け、ミッド・ベッド・センサー122中にリーン読み取り値を発生する(つまり、信号S_MBが第3所定レベルを越えることがある)。」における第3所定レベルを越えたものがリーンの排気であるものとする記載の整合性がとれない。したがって、仮に請求人の主張のように当初明細書の【0026】の記載に誤記があるとしても、「第1所定レベル」、「第2所定レベル」、「第3所定レベル」の位置づけが明確でない。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりない従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願
1.審理の対象
平成23年4月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、審理の対象は、平成22年6月2日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書及び平成22年2月15日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面であり、特許請求の範囲の請求項1ないし7は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりのものである。

2.原審
2-1.拒絶理由
原審における、平成22年3月15日付けの拒絶理由通知書には、本願の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載について、以下のとおりの拒絶の理由(以下、「拒絶理由」という。)が通知されている。

「・・・(前略)・・・
理 由

この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



本願発明の技術的意味が不明である。本願発明は、明細書を参照するに(段落0016、0017等)、三元触媒の酸素吸蔵能力が飽和したときに、NOx浄化性能の低下を防止するために、酸素吸蔵量を低減させる処理を行うものと認められるが、請求項1に記載される如く「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、エンジン再起動を所定期間遅らせる処理、並びに選択された期間、再起動回数を所定回数に制限する処理のうちの少なくとも一つの処理を開始する」ことで、上記本願発明の課題を解決しているのか不明である。かかる特定事項に関し、発明の詳細な説明の記載を参照しても、特に段落0025以降に記載される「第1所定レベル」、「第2所定レベル」、「第3所定レベル」がどのようなしきい値を意味しているか不明確であり、これら「所定レベルよりも高い」、「所定レベルよりも低い」、「所定レベルを超える」といった記載が、空燃比としてはどのような状態(リーンなのかリッチなのか)を意味しているのか理解できず、触媒状態も不明であるため、明確に本願発明を理解できない。
また、本願発明において、「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるとき」を、三元触媒の酸素吸蔵量が飽和したときと解したとしても、通常触媒飽和状態では、触媒上流の空燃比と触媒下流の空燃比は略一致するものであり(例えば特開2003-166414号の図4,5、段落0060、0061、特開2004-116295号の段落0018、0019等参照。)、何故本願発明の如く制御を行っているのか理解できない。

よって、請求項1?7に係る発明及び発明の詳細な説明の記載は不明確であり、両者の対応関係も不明確である。
・・・(後略)・・・」

2-2.拒絶査定
上記拒絶理由通知書に対して提出された平成22年6月2日付けの意見書及び手続補正書に対して、平成22年12月7日付けで以下の拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。

「・・・(前略)・・・
この出願については、・・・(中略)・・・平成22年 3月 5日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
請求項1に記載されている「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」は、発明の詳細な説明に記載されていない。
また、本願明細書の【発明を実施するための最良の形態】で説明されているように、酸素吸蔵能力を飽和させた又は殆ど飽和させた三元触媒は、NOx変換能力が低く、その吸蔵レベルが飽和レベルから低下するまで、エンジンからのNOx排出量は触媒コンバーターにより効率的に削減又は消失することはない(【0016】参照)ことから、請求項1に記載されている「NOx排出量を削減する」ことと「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」「再起動回数を所定回数に制限する処理」との関係が不明である。
さらに、明細書中の第1?第3所定レベルがどのようなしきい値を意味しているのか依然として不明である。
(出願人は意見書において、「(低)第3所定レベル→第1所定レベル→第2所定レベル(高)になります。」「レベルが高くなるほどリーン度が高くなること、第2所定レベルを越えた状態はわずかにリッチの状態であり、第2所定レベルを大きく越えると、リーン状態になることがわかります。」と主張しているが、明細書の【0028】における「低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも低くなる)」との記載と矛盾している。)

よって、請求項1及びこれを引用する請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、これらの請求項に係る発明は明確でない。さらに、この出願の発明の詳細な説明は、当業者がこれらの請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
・・・(後略)・・・」

3.当審の判断
原査定に対して提出された平成23年4月7日付けの手続補正書は上記のとおり却下されている。
3-1.平成22年2月15日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正前の請求項1」という。)に対して
3-1-1.(特許法第36条第6項第1号)
原査定における「請求項1に記載されている「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」は、発明の詳細な説明に記載されていない。」という事項について検討する。
本件補正前の請求項1は、第2.[理由]1.Aに記載したとおりであるが、エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」は、発明の詳細な説明に記載されていないことは明らかであって、「請求項1に記載されている「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」は、発明の詳細な説明に記載されていない。」とする原査定は妥当である。

3-1-2.(特許法第36条第6項第2号)
拒絶理由における「請求項1に記載される如く「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるときに、NOx排出量を削減するために、エンジン再起動を所定期間遅らせる処理、並びに選択された期間、再起動回数を所定回数に制限する処理のうちの少なくとも一つの処理を開始する」ことで、上記本願発明の課題を解決しているのか不明である。」及び「本願発明において、「第1排気酸素レベルと第2排気酸素レベルとの差が所定量を越えるとき」を、三元触媒の酸素吸蔵量が飽和したときと解したとしても、通常触媒飽和状態では、触媒上流の空燃比と触媒下流の空燃比は略一致するものであり(例えば特開2003-166414号の図4,5、段落0060、0061、特開2004-116295号の段落0018、0019等参照。)、何故本願発明の如く制御を行っているのか理解できない。」並びに原査定における「本願明細書の【発明を実施するための最良の形態】で説明されているように、酸素吸蔵能力を飽和させた又は殆ど飽和させた三元触媒は、NOx変換能力が低く、その吸蔵レベルが飽和レベルから低下するまで、エンジンからのNOx排出量は触媒コンバーターにより効率的に削減又は消失することはない(【0016】参照)ことから、請求項1に記載されている「NOx排出量を削減する」ことと「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」「再起動回数を所定回数に制限する処理」との関係が不明である。」という事項について検討する。
本件補正前の請求項1に係る発明は、本件補正発明に、選択的に記載される事項として「エンジン再起動を所定期間遅らせる処理」という事項を加えたものであるから、本件補正発明の発明特定事項を全て含むものである。
そして、本件補正発明の明確性の検討は、前記第2.3-1.で述べたとおり上記拒絶理由及び原査定に沿ってなされ、本件補正発明が明確であるとはいえないものとされたものであるから、本件補正前の請求項1に対する特許を受けようとする発明が明確でないとした拒絶理由及び原査定は妥当である。

3-2.発明の詳細な説明に対して
拒絶理由における「かかる特定事項に関し、発明の詳細な説明の記載を参照しても、特に段落0025以降に記載される「第1所定レベル」、「第2所定レベル」、「第3所定レベル」がどのようなしきい値を意味しているか不明確であり、これら「所定レベルよりも高い」、「所定レベルよりも低い」、「所定レベルを超える」といった記載が、空燃比としてはどのような状態(リーンなのかリッチなのか)を意味しているのか理解できず、触媒状態も不明であるため、明確に本願発明を理解できない。」及び原査定における「さらに、明細書中の第1?第3所定レベルがどのようなしきい値を意味しているのか依然として不明である。(出願人は意見書において、「(低)第3所定レベル→第1所定レベル→第2所定レベル(高)になります。」「レベルが高くなるほどリーン度が高くなること、第2所定レベルを越えた状態はわずかにリッチの状態であり、第2所定レベルを大きく越えると、リーン状態になることがわかります。」と主張しているが、明細書の【0028】における「低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも低くなる)」との記載と矛盾している。)」という事項について検討する。
平成23年4月7日付けの手続補正は却下されているので平成22年6月2日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書を検討すると、その段落【0026】には、
「適切な排気NOx浄化性能をもたらすには、わずかにリッチな排気が望ましいのが、普通である。わずかにリッチな排気はセンサー120により検出され、信号S_Uを通じて表示される(つまり、信号S_Uは、第1所定レベルよりも高い第2所定レベルを越えることがある)。」と記載され、この記載から第1所定レベルより高い第2所定レベルが、リッチな排気を検出することが分かる。
また、同段落【0027】には、「一例において、システム100がエンジン外酸素センサー120と関連してミッド・ベッド酸素センサー122を用いて実装されるとき、センサー122(つまり信号S_MB)は概略的には、エンジン外センサー120(つまり信号S_U)と比較して、リーン応答を殆ど又は全く表示しない。つまり、信号S_MBは、第3所定レベルよりも低いことがあり、そして第3所定レベルは概略的に、第1所定レベル及び第2所定レベルよりも低い。」と記載され、この記載から第1所定レベルより低い第3所定レベルより低い場合は、リーン応答を殆ど又は全く表示しない、すなわち、リッチな排気を検出することが分かる。
さらに、同段落【0028】には、「触媒110が、排気104中に圧送された酸素の大部分を酸素吸蔵能力が飽和することなしに吸着したとき、センサー122は概略的に、低レベルのリーン応答を示すことになる(つまり信号S_MBが第3所定レベルよりも低くなる)。しかしながら、触媒110が酸素で飽和したとき、酸素は概略的に触媒110を通り抜け、ミッド・ベッド・センサー122中にリーン読み取り値を発生する(つまり、信号S_MBが第3所定レベルを越えることがある)。」との記載され、この記載から第3所定レベルより高いレベルが、リーンな排気を検出することが分かる。
そうすると、第3所定レベルより低い場合には、リッチな排気を検出していることは分かるが、第3所定レベルより高い場合は、リーンな排気やリッチな排気を検出していることになり、第3所定レベルがどのような閾値を意味しているかが不明である。
したがって、発明の詳細な説明が、依然として本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないとした拒絶理由及び原査定は妥当である。

以上により、本件出願は、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

4.むすび
したがって、本件出願は、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、及び、特許を受けようとする発明が明確でなく、並びに、発明の詳細の説明が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-11 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-08 
出願番号 特願2005-217532(P2005-217532)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (F02D)
P 1 8・ 537- Z (F02D)
P 1 8・ 575- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 啓小川 恭司  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 川口 真一
中川 隆司
発明の名称 再起動時のNOx排出量を制御するシステム  
代理人 河部 大輔  
代理人 川北 憲司  
代理人 二宮 克也  
代理人 嶋田 高久  
代理人 福本 康二  
代理人 竹内 宏  
代理人 間脇 八蔵  
代理人 原田 智雄  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 前田 弘  
代理人 関 啓  
代理人 岡澤 祥平  
代理人 岩下 嗣也  
代理人 前田 亮  
代理人 松永 裕吉  
代理人 今江 克実  
代理人 竹内 祐二  
代理人 長谷川 雅典  
代理人 杉浦 靖也  

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