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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1263751
審判番号 不服2011-99  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-04 
確定日 2012-09-26 
事件の表示 特願2006-299305「有機電界発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日出願公開、特開2008- 77027〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)11月2日(パリ条約による優先権主張 2006年9月20日 大韓民国)の出願(特願2006-299305号)であって、平成21年3月5日付けで拒絶理由が通知され、同年6月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年7月28日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年11月19日付けで意見書が提出され、平成22年8月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の請求項5に係る発明
本願の請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年6月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおり、請求項1を引用した形式で次のように特定されるものである。

「【請求項1】
有機電界発光素子が形成された第1基板、該第1基板に対向して配置された第2基板、及び該第1基板と該第2基板との間に形成された封止材を含む表示パネルと、
前記表示パネルが収容されるベゼルと、
前記ベゼルの側壁と前記表示パネルとの間に介在されたモールドフレームとを含み、
前記ベゼルは、下面の縁から延びた3つの側壁を含み、該下面と該側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義され、
前記モールドフレームは、前記ベゼルの3つの側壁に対応してコ字状に形成されることを特徴とする有機電界発光表示装置。」
「【請求項5】
前記側壁が前記表示パネルの3つの側面に対応することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光表示装置。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-202550号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示パネルと照明光源であるバックライトを背面に設置して金属フレームに一体的に収納した液晶表示装置に係り、特に有効表示領域を拡大し、薄型・軽量化と共にバックライトの照明光を有効利用して輝度を向上させた液晶表示装置に関する。」

「【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、金属フレームの内側に弾性力のある薄肉樹脂材を一体化して樹脂スペーサとし、当該樹脂スペーサの弾性力を利用して液晶表示パネルを固定した。また、樹脂スペーサを高反射率の樹脂材料として、導光板からの光を有効利用することで輝度低下を回避した。
【0010】このような構成としたことにより、液晶表示装置全体の薄型・軽量化と共に金属フレームから液晶表示パネルや導光板に伝達される外部衝撃が緩和される。また、樹脂スペーサの形状あるいは物理特性を設定することによって液晶表示パネルの脱出が防止される。さらに、樹脂スペーサを高反射率の樹脂材料で成型したことで導光板からの光を有効利用して輝度低下を回避した。本発明による液晶表示装置の代表的な構成を記述すれば以下の通りである。」

「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明による液晶表示装置の第1実施例の説明図であり、同図(a)は液晶表示パネル側から見た平面図、同(b)は同(a)のA-A線に沿った断面図、同(C)は同(a)のB-B線に沿った断面図である。図1において、参照符号1は金属フレーム、2は樹脂スペーサの第1部分、3は樹脂スペーサの第2部分、4は樹脂スペーサの第3部分、5は液晶表示パネル(以下、単に液晶パネルとも言う)、6はバックライトを構成する導光板である。なお、バックライトは導光板の端縁に光源を配置して構成されるが、ここでは光源の図示は省略した
【0021】金属フレーム1は液晶表示装置の最終外形を形成する筐体であり、一対の長辺と短辺の一方と短辺の他方の一部に樹脂スペーサを固定し、短辺の他方の中央領域にフレキシブル回路基板を配置するための開口を設けている。樹脂スペーサは液晶表示パネル5を固定する第1部分2と導光板6を固定する第2部分3からなる。第2部分3は導光板6の一決めと固定の機能を有し、圧接部3a,3b,3c,3dを有している。圧接部3a、3bはX方向で導光板6に圧接し、圧接部3c、3dはY方向で導光板6に圧接する。樹脂スペーサの第1部分2は突起2a,2bを有し、突起2aは金属フレーム1の平行する長辺の一方(図1(a)の左辺)側で当該金属フレーム1の内壁に一端が固定されて液晶表示パネル5方向(X方向)に突出する。」

「【0037】図4は本発明による液晶表示装置の第4実施例の説明図であり、同図(a)は液晶表示パネル側から見た平面図、同(b)は同(a)のC-C線に沿った断面図を示す。本実施例でも、金属フレーム1の内壁面にわたって樹脂スペーサ2が溶着あるいは射出成型で固定されている。この樹脂スペーサ2は高反射率の樹脂材料で成型され、主として導光板6の光漏れによる輝度低下を抑制するために設けられるが、液晶表示パネル5や導光板6を外部衝撃から保護する機能もある。
【0038】バックライトを構成する導光板6の平行する二辺(ここでは、短辺)のそれぞれには爪7a、7bを有する。本実施例の爪は各短辺に二つ宛有する。この爪は導光板に一体形成されるが、別個の部品として接着してもよい。一方、樹脂スペーサ2には上記爪7a、7bに対応した位置に爪受2e,2fが形成されており、この爪受2e,2fに導光板6の爪7a、7bを嵌合させることで導光板6を所定の位置に固定する。液晶表示パネル5は両面粘着テープ8で導光板6に固定される。
【0039】なお、図4の上側に示したように、金属フレーム1の樹脂スペーサ2の爪受に対応する位置にも爪受け1bを設けることで、導光板6の固定をさらに強固にすることもできる。また、本実施例における導光板6の固定構造を前記図1乃至図3の実施例に適用してもよく、さらに、液晶表示パネル5の固定保持構造を前記図1乃至図3の実施例と同様の構造とすることもできる。
【0040】本実施例は、前記の各実施例に比べて、構成がより簡素化されたことにより、液晶表示装置全体の薄型・軽量化が容易であり、導光板からの光の有効利用も行えることで輝度低下が回避される。また、金属フレームから導光板に伝達される外部衝撃は樹脂スペーサによって吸収または緩和され、導光板に両面粘着テープで固定した液晶表示パネルのダメージも低減することができる。」

「【図4】



2 引用例1に記載された発明の認定
【図4】から、金属フレーム1は、下面における一対の長辺と短辺の一方と短辺の他方の一部のそれぞれから延びる側壁を有することが見て取れる。上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、
「液晶表示パネル5を金属フレーム1に収納した液晶表示装置に係り、
金属フレーム1は液晶表示装置の最終外形を形成する筐体であり、下面における一対の長辺と短辺の一方と短辺の他方の一部のそれぞれから延びる側壁を有し、短辺の他方の中央領域にフレキシブル回路基板を配置するための開口を設けており、
金属フレーム1の内壁面にわたって樹脂スペーサ2が溶着あるいは射出成型で固定され、この樹脂スペーサ2は液晶表示パネル5を外部衝撃から保護する機能もある液晶表示装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-146174号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、平板表示装置に係り、より詳細には、偏光板と基板との間に静電気の発生を防止するための静電気防止手段を備えた有機電界発光表示装置に関する。」

「【0034】
図4は、本発明の他の実施形態による有機電界発光表示装置300を示す分離斜視図である。
【0035】
図4を参照すれば、本発明の他の実施形態に係る平板表示装置である有機電界発光表示装置300も、一実施形態と同様に平板表示パネルとしての有機ELパネル320と、前記有機ELパネル320を支持するためのブラケット310と、前記有機ELパネル320に入射される外光を遮断するための偏光部材330とを備える。
【0036】
前記ブラケット310は、一実施形態と同様に前記EL表示パネル320を支持するためのものであって、有機ELパネル320に対応する大きさを有する板体よりなり、一側隔壁が開いた構造を有する。
【0037】
また、前記偏光部材330も一実施形態と同様に、外部から入射される外光が前記有機ELパネル320の封止手段325に入射されることを防止するためのものであって、偏光板を使用するか、または封止手段325に偏光物質膜をコーティングすることができる。
【0038】
前記有機ELパネル320は、一実施形態と同様に、図3に示されたような断面構造を有する。すなわち、前記有機ELパネル320は、画像表示部201を備える下部基板321と、前記下部基板321をシーラント227により封止するための封止手段、例えば、上部基板325とを備える。」

「【図4】



第4 本願発明と引用発明の対比
1 ここで、本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「液晶表示パネル5」と、本願発明の「有機電界発光素子が形成された第1基板、該第1基板に対向して配置された第2基板、及び該第1基板と該第2基板との間に形成された封止材を含む表示パネル」とは、「表示パネル」である点で一致している。

(2)引用発明の「液晶表示パネル5」を「収納」した「金属フレーム1」が、本願発明の「前記表示パネルが収容されるベゼル」に相当する。

(3)引用発明の「金属フレーム1の内壁面にわたって」「固定され」、「液晶表示パネル5を外部衝撃から保護する機能もある」「樹脂スペーサ2」が、本願発明の「前記ベゼルの側壁と前記表示パネルとの間に介在されたモールドフレーム」に相当する。

(4)引用発明の「下面における一対の長辺と短辺の一方(と短辺の他方の一部)のそれぞれから延びる側壁を有」することが、本願発明の「下面の縁から延びた3つの側壁を含」むことに相当するから、引用発明の「金属フレーム1は液晶表示装置の最終外形を形成する筐体であり、下面における一対の長辺と短辺の一方と短辺の他方の一部のそれぞれから延びる側壁を有」することが、本願発明の「前記ベゼルは、下面の縁から延びた3つの側壁を含み、該下面と該側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義され」ることに相当する。

(5)引用発明の「金属フレーム1の内壁面にわたって樹脂スペーサ2が溶着あるいは射出成型で固定され」ることと、本願発明の「前記モールドフレームは、前記ベゼルの3つの側壁に対応してコ字状に形成される」こととは「前記モールドフレームは、前記ベゼルの3つの側壁に対応して形成される」点で一致する。

(6)引用発明において「金属フレーム1は液晶表示装置の最終外形を形成する筐体であり、下面における一対の長辺と短辺の一方と短辺の他方の一部のそれぞれから延びる側壁を有」することから、引用発明の「金属フレーム1」は、表示パネルの3つの側面に対応する側壁を有するものである。よって、引用発明の「液晶表示パネル5を金属フレーム1に収納」すること、及び、「金属フレーム1は液晶表示装置の最終外形を形成する筐体であり、下面における一対の長辺と短辺の一方と短辺の他方の一部のそれぞれから延びる側壁を有」することが、本願発明の「前記側壁が前記表示パネルの3つの側面に対応する」ことに相当する。

(7)引用発明の「液晶表示装置」と、本願発明の「有機電界発光表示装置」とは、「表示装置」である点で一致する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明とは、
「表示パネルと、
前記表示パネルが収容されるベゼルと、
前記ベゼルの側壁と前記表示パネルとの間に介在されたモールドフレームとを含み、
前記ベゼルは、下面の縁から延びた3つの側壁を含み、該下面と該側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義され、
前記モールドフレームは、前記ベゼルの3つの側壁に対応して形成される表示装置。」であって、
「前記側壁が前記表示パネルの3つの側面に対応する表示装置。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1
表示パネルが、本願発明においては「有機電界発光素子が形成された第1基板、該第1基板に対向して配置された第2基板、及び該第1基板と該第2基板との間に形成された封止材を含む表示パネル」であるのに対し、引用発明においては「液晶表示パネル」であり、本願発明は「有機電界発光表示装置」についての発明であるのに対して、引用発明が「液晶表示装置」についての発明である点。

(2)相違点2
ベゼル(引用発明においては金属フレーム)の側壁に対応して形成されたモールドフレーム(引用発明においては樹脂スペーサ)が、本願発明においては(3つの側壁に対応して)「コ字状に形成される」のに対して、引用発明においてはその点の特定がない点。

第5 当審の判断
1 相違点の検討
(1)相違点1について
液晶表示装置(液晶表示パネル)と有機電界発光表示装置(有機電界発光表示パネル)とは、ともに薄型の表示装置(表示パネル)であって、その駆動回路等にも共通点が多く、相互に技術を適用し合うことが多々行われているのであるから、液晶表示パネルを収容する筐体の構造を有機電界発光表示装置に適用することに格別の困難性は認められない。
なお、有機電界発光表示パネルとして「有機電界発光素子が形成された第1基板、該第1基板に対向して配置された第2基板、及び該第1基板と該第2基板との間に形成された封止材を含む表示パネル」とすることは、例を挙げるまでもなく周知の技術である。
よって、有機電界発光表示装置における、外部の衝撃から保護するという自明の課題を解決するために、引用発明における筐体に、周知技術の表示パネルを収容するようにして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることに格別の困難性は認められない。

(2)相違点2について
有機電界発光表示装置において、有機電界発光表示パネルを収納する筐体として、一側壁があいた形態のもの、すなわち、表示パネルの3つの側面のみに対応する側壁を備えたものが引用例2に記載されている。
上記(1)において、引用発明における筐体に、有機電界発光表示を収容するようにした際に、必要に応じて、筐体として、引用例2に記載された筐体の形態を採用することは、当業者が適宜なし得ることであり、そしてその際の、樹脂スペーサ(本願発明のモールドフレームに相当)は、当然に「下面における一対の長辺と短辺の一方と」のみに対応したもの、すなわち、コ字状に形成されることになる。
すなわち、引用発明において引用例2に記載された筐体の形態を採用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

2 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 結言
以上のとおり、本願発明(本願の請求項5に係る発明)は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-18 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-14 
出願番号 特願2006-299305(P2006-299305)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆渡邊 吉喜  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 北川 清伸
吉川 陽吾
発明の名称 有機電界発光表示装置  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 佐伯 義文  

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