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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1263983 |
審判番号 | 不服2011-656 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-12 |
確定日 | 2012-10-01 |
事件の表示 | 特願2004-363171「サーバー、サーバーの制御プログラム、及び携帯電話機の着信メロディー・動画再生プログラム、並びにプログラム記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-174044〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年12月15日の出願であって、平成22年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年1月12日付け手続補正書の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「メモリを有し、このメモリに複数のメロディーデータ及び複数の動画データが記憶可能な携帯電話機又はパーソナルコンピュータと広域通信回線網などのネットワークを経由してアクセス可能なサーバーであって、 このサーバーは、 前記ネットワークと接続して前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータとの間で電子データの送受信を行うための通信手段と、 前記複数のメロディーデータを格納している第1のデータベースと、 前記複数の動画データを格納している第2のデータベースと、 前記メロディーデータと前記動画データとを再生するためのメロディ・動画再生プログラムと、 前記メロディーデータ及び前記動画データを携帯電話機又はパーソナルコンピュータに送出するためのプログラムを記憶した記憶手段と、 前記通信手段、前記第1のデータベース及び第2のデータベース、前記記憶手段と接続されたCPUを 含んで構成される制御手段とを備え、 前記携帯電話機又はパーソナルコンピュータからダウンロード要求信号を受信すると、これに応じて、前記制御手段は、 1)前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータからの操作により、前記記憶手段に記憶されているメロディ・動画再生プログラムを、前記携帯電話機又はパーソナルコンピュータに前記通信手段を介して送信する処理と、 2)前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータからの操作により、前記第1のデータベースに記憶されている複数のメロディーデータのうちからダウンロードさせるメロディーデータを任意に選択させて設定する処理と、 3)前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータからの操作により、前記第2のデータベースに記憶されている複数の動画データのうちから再生させる一の動画データを任意に選択させて設定する処理と、 4)前記2)及び3)の処理において選択されたメロディーデータ及び動画データであって前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータの前記メモリに1組のデータとして記憶されるメロディーデータ及び動画データを、前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータに送信する処理と を実行し、 前記2)及び3)の処理において選択されたメロディーデータ及び動画データであって前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータの前記メモリに1組のデータとして記憶されるメロディーデータ及び動画データは、前記携帯電話機又は前記パーソナルコンピュータにおいて同時に再生されるデータであることを特徴とするサーバー。」 上記1)の処理において、「前記記憶手段記憶されている」との記載は、「前記記憶手段に記憶されている」の誤記と認め、上記のとおり認定した。 3.引用例発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-23669号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、音声やデータの通信を行う携帯電話装置に関するものであり、詳しくは、音声やデータの着信時の制御に関するものである。」 ロ.「【0013】 【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の携帯電話装置では、音声着信、メール着信時に、着信メロディを再生するか、再生しないかの制御を行っているだけである。したがって、無音設定にしている場合には、着信に気づき難いという問題がある。また、多機能化の進む携帯電話装置においては、着信メロディに加えて、さらに、多様な形態で着信通知を行うことで、携帯電話利用者に対して、付加価値の高いサービスを提供することも可能である。 【0014】そこで、本発明は前記問題点に鑑み、着信メロディに替えて、もしくは、付加的に、多様な着信制御を行う携帯電話装置を提供することを目的とする。」 ハ.「【0015】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1の発明は、無線回線を利用した通信を行う携帯電話装置であって、着信を判定する判定部と、着信時、着信を知らせるための着信メロディを再生する再生手段と、着信時に表示装置上に表示させるキャラクタ画像のデータを格納する第1の記憶手段と、前記表示装置上に表示させるキャラクタ画像に所定の動作をさせる動作プログラムを格納した第2の記憶手段と、着信時、前記再生手段に前記着信メロディを再生させつつ、前記第1および第2の記憶手段から読み出したデータに基づいて、キャラクタ画像が所定の動作を行う動画像を前記表示装置上に表示させる制御手段とを備えることを特徴とする。 【0016】請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯電話装置において、前記キャラクタ画像のデータを、前記無線回線を通じてデータサーバからダウンロードし、前記第1の記憶手段に格納するデータ取得手段を備えることを特徴とする。 【0017】請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の携帯電話装置において、前記第1の記憶手段には、複数種類のキャラクタ画像のデータが格納されており、さらに、着信時に前記表示装置上に表示させるキャラクタ画像を利用者に選択させるとともに、その選択情報を設定情報として記憶する設定手段を備えることを特徴とする。 【0018】請求項4の発明は、請求項3に記載の携帯電話装置において、前記第1の記憶手段には、キャラクタ画像に対してどのような動作をさせるかを規定した複数種類の動作データが格納されており、前記設定手段は、着信時に前記表示装置上に表示させるキャラクタ画像に、いずれの動作をさせるかを利用者に選択させるとともに、その選択情報を設定情報として記憶する手段を含むことを特徴とする。 【0019】請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載の携帯電話装置において、前記第1の記憶手段には、複数種類の着信メロディのデータが格納されており、前記設定手段は、着信時に再生する着信メロディを利用者に選択させるとともに、その選択情報を設定情報として記憶する手段を含むことを特徴とする。」 ニ.「【0026】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。 【0027】{1.携帯電話装置の利用形態}図1は、本発明にかかる携帯電話装置1の利用イメージ図である。携帯電話装置1は、最寄りの基地局33aとの間で無線通信可能である。さらに、基地局33aは、有線もしくは無線の回線網34を介して相手端末の最寄りの基地局33bと通信可能である。そして、相手端末と基地局33bとの間で無線通信が行われることにより、携帯電話装置1と相手端末との間で通話が可能となる。」 ホ.「【0034】図3は、RAM17のメモリマップを示す図である。RAM17には、着信メロディのデータ171、キャラクタ画像データ172、キャラクタ画像の踊りデータ173などが格納されている。 【0035】着信メロディのデータ171は、着信時に再生する楽曲のデータであり、RAM17には、複数の着信メロディのデータ171を記憶しておくことができる。したがって、利用者は、複数の着信メロディの中から好みの着信メロディを選択して使用することが可能である。 【0036】キャラクタ画像データ172は、着信時にLCD12上に表示させるキャラクタの画像データであり、RAM17には複数のキャラクタ画像データ172を記憶しておくことができる。したがって、利用者は、複数のキャラクタの中から好みのキャラクタを選択して使用することが可能である。 【0037】キャラクタ画像の踊りデータ173は、LCD12上に表示させたキャラクタの画像に動作を加えるためのデータである。RAM17には複数のキャラクタ画像の踊りデータ173を記憶しておくことができる。したがって、利用者は、複数のキャラクタの中から好みのキャラクタを選択し、さらに、複数の踊りの中から好みの踊りを選択することによって、好みのキャラクタに好みの踊りをさせることができるのである。 【0038】図4は、フラッシュメモリ18のメモリマップを示す図である。フラッシュメモリ18には、携帯電話装置1の着信時における動作制御を行う着信制御プログラム181、着信時において携帯電話装置1がどのような動作を行うかを設定した情報を記録している設定テーブル182、電話帳データ183などが格納されている。 【0039】前述したように、利用者は、操作キー11等を用いた所定の操作を行うことにより、好きなキャラクタ画像と、好きな踊りとを選択することが可能である。そして、着信制御プログラム181は、設定テーブル182に設定されたキャラクタ画像データ172と、踊りデータ173とを読み込み、これらをパラメータとして、もしくは、実行モジュールとして実行するのである。これによって、LCD12上には、キャラクタ画像が踊る動画像が表示されるのである。 【0040】図5は、設定テーブル182の内容を示す図である。設定テーブル182には、「着信メロディの設定」、「キャラクタ・踊り設定」、「本体開閉設定」の3種類の設定情報が登録されている。 【0041】「着信メロディ設定」は、着信時に、着信メロディを再生するか否かの設定である。さらに、「着信メロディ設定」では、音声着信時とメール着信時において個別設定可能である。つまり、音声着信時に着信メロディを再生するか否かの設定、メール着信時に着信メロディを再生するか否かの設定を個別に登録しておくことができる。 【0042】さらに、「着信メロディ設定」では、電話帳設定を行うことが可能である。電話帳設定では、電話帳データ183に登録されているデータ(つまり、登録している相手)からの着信である場合にのみ、着信メロディを再生するように設定することが可能である。また、電話帳データ183に登録された相手の中で、特定の相手にのみ、着信メロディを再生するか否かの設定をすることも可能である。 【0043】「キャラクタ・踊り設定」は、着信時にLCD12に表示させるキャラクタ画像データ172の選択情報、および、キャラクタ画像を動作させる踊りデータ173の選択情報である。前述したように、RAM17には、複数のキャラクタ画像データ172、および、複数の踊りデータ173を記憶しておくことが可能であり、利用者は、この中から好みのキャラクタと好みの踊りを選択することが可能である。そして、この選択情報が設定情報として設定テーブル182に登録されるのである。 【0044】さらに、「キャラクタ・踊り設定」では、音声着信時とメール着信時において個別設定可能である。つまり、音声着信時にいずれのキャラクタ画像を表示させるか、また、そのキャラクタ画像にいずれの踊りをさせるかの設定、もしくは、メール着信時にいずれのキャラクタ画像を表示させるか、また、そのキャラクタ画像にいずれの踊りをさせるかの設定をすることが可能である。 【0045】このように、音声着信、メール着信において個別の設定が可能であるので、利用者は、LCD12に表示されたキャラクタを見ることによって、または、その踊りを見ることによって、容易に音声着信とメール着信を区別することができるのである。また、好みのキャラクタと好みの踊りを組み合わせることで、多様な着信動作を楽しむことができるのである。」 ヘ.「【0076】{4.ダウンロード}次に、着信メロディのデータ171、キャラクタ画像データ172、踊りデータ173をデータサーバ36(図1に図示)からダウンロードする場合の動作について説明する。 【0077】携帯電話装置1は、フラッシュROM18に格納されたダウンロードプログラム184(図4に図示)を実行させることにより、着信メロディのデータ172、キャラクタ画像データ172等を格納しているデータサーバ36に対してダウンロード要求を行うことが可能である。このダウンロードプログラム184がCPU10、メモリ等のハードウェア資源を利用して実行することにより実現される機能を図6中、データ取得部27として図示している。 【0078】データ取得部27がデータサーバ36に対してキャラクタ画像データ172のダウンロード要求を行うと、キャラクタ画像データ172が、回線網34を通じて基地局13まで伝送される。さらに、キャラクタ画像データ172は、基地局13から無線回線を介し、携帯電話装置1に送られ、無線部9、データ取得部27を経由してRAM17に格納される。 【0079】同様に、着信メロディのデータ171、踊りデータ173についても、データ取得部27がデータサーバ36にダウンロード要求を行うことで、ダウンロードした着信メロディのデータ171や踊りデータ173をRAM17に格納することができる。 【0080】このようにして、利用者は、ネットワーク上から、好みの着信メロディをダウンロードすることや、好みのキャラクタ画像と、そのキャラクタ画像を動作させる好みの踊りのデータを自由にダウンロードし、RAM17に格納しておくことができるのである。そして、設定テーブル182の内容を変更することにより、自由に好みの設定で着信動作を楽しむことができるのである。」 ト.「【0083】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の発明では、着信時、着信メロディを再生させつつ、表示装置上にキャラクタ画像の動画像が表示するので、着信時の動作に多様性を持たせることができる。 【0084】請求項2記載の発明では、キャラクタ画像のデータをデータサーバからダウンロードし、記憶手段に記憶するので、好みのキャラクタを容易に取得することができる。 【0085】請求項3記載の発明では、複数種類のキャラクタ画像を格納しており、利用者が任意に選択することが可能であるので、キャラクタを自由に変更して着信動作を楽しむことができる。 【0086】請求項4記載の発明では、複数種類の動作データを格納しており、利用者が任意に選択することが可能であるので、キャラクタの動作を自由に変更して着信動作を楽しむことができる。 【0087】請求項5記載の発明では、複数種類に着信メロディを格納しており、利用者が任意に選択することが可能であるので、着信メロディを自由に変更し、キャラクタ画像の合わせて着信動作を楽しむことができる。」 引用例の段落【0027】、【0076】?【0078】、図1等には、「RAM17を有する携帯電話装置1と基地局33a、33b、回線網34を介して無線通信可能なデータサーバ36」が記載されている。 引用例の段落【0076】?【0079】には、データサーバ36は、「携帯電話装置1にダウンロードする着信メロディのデータ171、キャラクタ画像データ172、踊りデータ173を格納」することが記載されている。 同じく引用例の段落【0076】?【0080】には、データサーバ36は、「携帯電話装置1から、利用者好みの着信メロディ、キャラクタ画像、そのキャラクタ画像を動作させる踊りデータをダウンロードするダウンロード要求を受信すると、前記格納された各データの中から、要求された着信メロディ、キャラクタ画像、そのキャラクタ画像を動作させる踊りデータを、前記回線網34を介して前記携帯電話装置1に送信」することが記載されている。 引用例の段落【0034】?【0037】、【0076】?【0080】には、データサーバ36から送信された各データは、「前記携帯電話装置1のRAM17に、複数の着信メロディのデータ171、複数のキャラクタ画像データ172、複数の踊りデータ173として記憶され」ることが記載されている。 引用例の段落【0017】?【0019】、【0039】?【0043】には、RAM17に記憶された各データは、「その後、利用者により、着信時に再生される着信メロディ、着信時に表示されるキャラクタ画像、該キャラクタ画像を動作させる踊りデータとして選択され、その選択情報が設定情報として設定テーブル182に記憶され」ることが記載されている。 引用例の段落【0015】、【0039】、図10等には、RAM17に記憶された各データは、「携帯電話装置1への着信があると、前記設定情報に基づきRAM17から読み出されて着信メロディとして再生されつつ、キャラクタ画像172と踊りデータ173による動画像として表示される」ことが記載されている。 したがって、引用例には、技術常識を考慮すると、 「RAM17を有する携帯電話装置1と基地局33a、33b、回線網34を介して無線通信可能なデータサーバ36であって、 このデータサーバ36は、 前記携帯電話装置1にダウンロードする着信メロディのデータ171、キャラクタ画像データ172、踊りデータ173を格納し、 前記携帯電話装置1から、利用者好みの着信メロディ、キャラクタ画像、そのキャラクタ画像を動作させる踊りデータをダウンロードするダウンロード要求を受信すると、前記格納された各データの中から、要求された着信メロディ、キャラクタ画像、そのキャラクタ画像を動作させる踊りデータを、前記回線網34を介して前記携帯電話装置1に送信し、 前記データサーバ36から送信された前記各データは、 前記携帯電話装置1のRAM17に、複数の着信メロディのデータ171、複数のキャラクタ画像データ172、複数の踊りデータ173として記憶され、 その後、利用者により、着信時に再生される着信メロディ、着信時に表示されるキャラクタ画像、該キャラクタ画像を動作させる踊りデータとして選択され、その選択情報が設定情報として設定テーブル182に記憶され、 携帯電話装置1への着信があると、前記設定情報に基づきRAM17から読み出されて着信メロディとして再生されつつ、キャラクタ画像172と踊りデータ173による動画像として表示される、 データサーバ。」 の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。 4.対比 本願発明は、サーバにアクセス可能な「携帯電話機」、「パーソナルコンピュータ」に関し、「又は」の語句によりこれを2者択一的に規定しているので、そのうち、「携帯電話機」に関し、本願発明と引用例発明とを対比する。 引用例発明の「携帯電話装置1」は、本願発明の「携帯電話機」に相当する。 引用例発明の「着信メロディのデータ171」は、本願発明の「メロディデータ」に相当する。 引用例発明の「キャラクタ画像データ172」と「踊りデータ173」とは、動画像として再生されるものであるから、本願発明の「動画データ」に相当する。 引用例発明の「データサーバ36」は、「RAM17を有する携帯電話装置1と基地局33a、33b、回線網34を介して無線通信可能」であり、前記「RAM17」、「基地局33a、33b、回線網34」は、それぞれ「メモリ」、「広域通信回線網などのネットワーク」といえ、また、「RAM17」には、「複数の着信メロディのデータ171、複数のキャラクタ画像データ172、複数の踊りデータ173」が記憶されるから、本願発明の「メモリを有し、このメモリに複数のメロディーデータ及び複数の動画データが記憶可能な携帯電話機と広域通信回線網などのネットワークを経由してアクセス可能なサーバー」と一致している。 引用例発明の「データサーバ36」は、「携帯電話装置1から・・・ダウンロード要求を受信すると、・・・要求された・・・データを、前記回線網34を介して前記携帯電話装置1に送信」するから、「前記ネットワークと接続して前記携帯電話機との間で電子データの送受信を行うための通信手段」を備える点で本願発明と一致している。 引用例発明の「データサーバ36」は、「携帯電話装置1にダウンロードする着信メロディのデータ171、キャラクタ画像データ172、踊りデータ173を格納し」ており、これらのデータを格納した手段は、「データベース」といえるから、複数のメロディーデータと複数の動画データを、それぞれ「第1のデータベース」と「第2のデータベース」とに個別に格納している点は別として「複数のメロディーデータと、前記複数の動画データを格納しているデータベース」を備える点で本願発明と一致している。 引用例発明の「データサーバ36」は、「携帯電話装置1から、利用者好みの着信メロディ、キャラクタ画像、そのキャラクタ画像を動作させる踊りデータをダウンロードするダウンロード要求を受信すると、前記格納された各データの中から、要求された着信メロディ、キャラクタ画像、そのキャラクタ画像を動作させる踊りデータを、前記回線網34を介して前記携帯電話装置1に送信」している。 上記構成において、格納手段に格納されたメロディ等の中から好みのデータをダウンロードする場合、サーバが「携帯電話機からの操作により」「任意に選択させて設定する処理」を「実行する」ことは、技術常識(必要であれば、特開2002-373276号公報の段落0013、0060?0062等参照)であって自明の処理と認められるから、引用例発明の「データサーバ36」は、「携帯電話機からダウンロード要求信号を受信すると、これに応じて、2)前記携帯電話機からの操作により、前記格納手段に記憶されている複数のメロディーデータのうちからダウンロードさせるメロディーデータを任意に選択させて設定する処理」と、「3)前記携帯電話機からの操作により、前記格納手段に記憶されている複数の動画データのうちから再生させる一の動画データを任意に選択させて設定する処理」を「実行」する点で本願発明と一致する。 また、「着信メロディとして再生されつつ、キャラクタ画像172と踊りデータ173による動画像として表示される」から、「前記2)及び3)の処理において選択されたメロディーデータ及び動画データは、前記携帯電話機において同時に再生されるデータである」点で本願発明と一致する。 したがって、本願発明と引用例発明とは、 「メモリを有し、このメモリに複数のメロディーデータ及び複数の動画データが記憶可能な携帯電話機と広域通信回線網などのネットワークを経由してアクセス可能なサーバーであって、 このサーバーは、 前記ネットワークと接続して前記携帯電話機との間で電子データの送受信を行うための通信手段と、 前記複数のメロディーデータと、前記複数の動画データを格納しているデータベースと、 を備え、 前記携帯電話機からダウンロード要求信号を受信すると、これに応じて、 2)前記携帯電話機からの操作により、前記データベースに記憶されている複数のメロディーデータのうちからダウンロードさせるメロディーデータを任意に選択させて設定する処理と、 3)前記携帯電話機からの操作により、前記データベースに記憶されている複数の動画データのうちから再生させる一の動画データを任意に選択させて設定する処理と、 4)前記2)及び3)の処理において選択されたメロディーデータ及び動画データを、前記携帯電話機に送信する処理とを実行し、 前記2)及び3)の処理において選択されたメロディーデータ及び動画データは、前記携帯電話機において同時に再生されるデータであるサーバー。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明は、データベースに関し、「前記複数のメロディーデータを格納している第1のデータベースと、前記複数の動画データを格納している第2のデータベースと」を備えているのに対して、引用例発明は、その点について明示しない点。 [相違点2] 本願発明は、サーバーが「前記メロディーデータ及び前記動画データを携帯電話機に送出するためのプログラムを記憶した記憶手段」を備えているのに対して、引用例発明は、その点について明示しない点。 [相違点3] 本願発明は、サーバーが「前記通信手段、前記第1のデータベース及び第2のデータベース、前記記憶手段と接続されたCPUを含んで構成される制御手段」を備え、1)?4)の各処理をこの制御手段で処理するのに対して、引用例発明は、その点について明示しない点。 [相違点4] 本願発明は、サーバーが「前記メロディーデータと前記動画データとを再生するためのメロディ・動画再生プログラム」を備え、制御手段が行う処理として「1)前記携帯電話機からの操作により、前記記憶手段に記憶されているメロディ・動画再生プログラムを、前記携帯電話機に前記通信手段を介して送信する処理」を備えるのに対して、引用例発明は、その点について明示しない点。 [相違点5] 携帯電話機で同時に再生されるメロディデータ及び動画データについて、本願発明では、携帯電話機のメモリに「1組みのデータとして記憶される」のに対して、引用例発明では、同時に再生されるように携帯電話機の設定情報により設定される点。 5.当審の判断 まず、相違点1について検討する。 コンテンツを格納するデータベースを構築する際、種類の異なるコンテンツを個別のデータベースに格納するように構成することは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、相違点1に係る構成を採用することは、格別のことではない。 次に、相違点2について検討する。 音楽、動画等のコンテンツを配信するサーバにおいて、プログラムによりコンテンツを送出することは通常のことであり、相違点2に係る構成を採用することは、格別のことではない。 次に、相違点3について検討する。 音楽、動画等のコンテンツを配信するサーバにおいて、配信処理のための制御手段を備えること、該制御手段を、通信手段とコンテンツを格納したデータベース等と接続されたCPUを含んで構成することは、特開2003-134257号公報(段落0033?0039、図5等参照)、特開2002-373276号公報(段落0027?0031、図3等参照)に示されているように周知事項であるから、相違点3に係る構成を採用することは、当業者にとって容易なことである。 次に、相違点4について検討する。 音楽、動画等のコンテンツを配信するサーバにおいて、ユーザ側装置からの操作により、記憶手段に記憶されているコンテンツ再生プログラムを前記ユーザ側装置に送信することは、特開2003-134257号公報(段落0039等参照)、特開2001-167011号公報(段落0075?0077等参照)、特開2004-12866号公報(段落0020等参照)に示されているように周知事項であるから、相違点4に係る構成を採用することは、当業者にとって容易なことである。 次に、相違点5について検討する。 携帯電話機でメロディと動画とを同時に再生させるために、設定情報により設定するか、メロディデータと動画データとを1組みのデータとしてメモリに記憶するかは、設計上の微差にすぎず、格別なことではない。 そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-26 |
結審通知日 | 2012-07-17 |
審決日 | 2012-07-30 |
出願番号 | 特願2004-363171(P2004-363171) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梶尾 誠哉、山口 正博 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 遠山 敬彦 |
発明の名称 | サーバー、サーバーの制御プログラム、及び携帯電話機の着信メロディー・動画再生プログラム、並びにプログラム記憶媒体 |