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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1264048
審判番号 不服2011-27230  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-16 
確定日 2012-10-04 
事件の表示 特願2006-195631号「コネクタ構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年2月7日出願公開、特開2008-27611号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成18年7月18日の出願であって、平成23年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、平成24年5月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月13日付けで手続補正がされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成24年7月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「コネクタを構成すると共に、板状にされ、基板にはんだ付けによって固定されて前記基板に前記コネクタが装着される固定部材と、
前記コネクタを構成すると共に、組付溝が形成され、前記組付溝に前記固定部材が挿入により組み付けられて固定されるケースと、
前記固定部材の前記ケースへの組付幅方向両端部のみに前記固定部材の前記ケースへの組付方向に沿って設けられると共に、前記固定部材に対し垂直に突出され、前記固定部材が前記ケースに組み付けられる際に、前記ケースに前記組付方向に沿って設けられた規制溝の一対の側面に前記組付方向における同一位置において接触されることで、前記規制溝に沿って案内されて、前記組付方向に対する前記固定部材の傾きが規制され、かつ、前記基板にはんだ付けによって固定されると共に、前記規制溝の前記組付幅方向寸法の拡大部分に当該はんだが収容される規制部と、
を備えたコネクタ構造。」

2.平成24年5月10日付けで通知した拒絶の理由の概要
理由1.及び2. 省略
理由3.本件出願の請求項1?3に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないとし、引用出願として特願2005-253942号(特開2007-66810号公報参照)が引用された。

2.先願明細書等
上記引用出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、図1?7とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
絶縁材料からなるハウジングと導電材料からなる補強タブとを備え、該補強タブには、前記ハウジングをプリント基板上に実装した場合に該ハウジングの側面に当接する当接面を有するタブ本体が設けられ、該タブ本体から前記プリント基板側に向けて延設された接合部が前記プリント基板上に半田付け処理されるコネクタにおいて、
前記ハウジング及びタブ本体のうち少なくとも一方には、前記ハウジングの側面のうち前記タブ本体の当接面と対向する対向面の一部を前記タブ本体の当接面と非当接状態にするための非当接部が形成されたコネクタ。
【請求項2】
前記非当接部は、前記タブ本体に形成された肉盗み部である請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記肉盗み部は、貫通孔である請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記肉盗み部は、前記タブ本体において前記接合部の直上位置に形成されている請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記補強タブは、一枚の金属板から形成されており、前記接合部は、前記ハウジングの前記対向面に沿って延びる第1の接触面と、該第1の接触面の両端部のうち少なくとも一方の端部から前記ハウジングの前記対向面と交差する方向に向けて延びる第2の接触面とを有する請求項1?請求項4のうち何れか一項に記載のコネクタ。」(特許請求の範囲)
(2)「図1に示すように、本実施形態のコネクタ10は、絶縁材料(例えば合成樹脂)からなるハウジング11と、該ハウジング11をプリント基板15上に実装した際にその実装状態を補強するための複数(本実施形態では2つ)の補強タブ12とを備えている。これら各補強タブ12は、図2に示すように、ハウジング11の側面(詳しくは左面20a及び右面21a)に当接する当接面13aを有するタブ本体13と、該タブ本体13の下端から下方側に延設された複数(本実施形態では2つ)の接合部14とをそれぞれ備えている。そして、これら各接合部14がハウジング11の下方に配置されたプリント基板15に半田付け処理されることにより、該プリント基板15上の予め設定された所定位置(例えば、プリント基板15の縁部)にコネクタ10が実装されるようになっている。
・・・(中略)・・・
また、ハウジング11の左壁20及び右壁21には、前記タブ本体13の前後方向における両端部22を圧入状態で係止するための第1係止部23と、前記タブ本体13の前後方向における中央部を挿入状態で係止するための第2係止部24とがそれぞれ形成されている。そのため、各補強タブ12(特に、前記タブ本体13の中央部)が外側に倒れこんでしまうことを抑制できる。
次に、前記各補強タブ12について図3(a)(b)に基づき以下説明する。
図3(a)(b)に示すように、前記各補強タブ12は、一枚の金属板から加工形成されており、それらの各タブ本体13は平面視略矩形状をなしている。また、各タブ本体13における両端部22の上側には、互いに離間する方向(前後方向)に向けて突設された凸部22aがそれぞれ形成されている。また、上述したように、タブ本体13の下端には、2つの接合部14が前記タブ本体13の中央部(第2係止部24に対応する部位)を前後方向に挟んだ状態で並設されている。そして、これら各接合部14は、前記コネクタ10がプリント基板15上に載置された場合、それぞれの接触面(下面)25がプリント基板15に接触(当接)するようになっている。
また、前記各接合部14は、図3(b)に示すように、平面視略コ字状をなすように、それぞれの前後方向における両端部が曲げ加工されている。そのため、各接合部14の接触面25は、前記左壁20の左面20a(又は右壁21の右面21a)に沿って延びる第1の接触面25aと、該第1の接触面25aの両端部から前記左面20a(又は右面21a)と略直交する方向であって且つ左方(又は右方)に向けて延びる第2の接触面25bとをそれぞれ備えている。」(段落【0017】?【0021】)
(3)「本実施形態では、第1の接触面25aだけではなく第2の接触面25bも形成されているため、接合部14とプリント基板15との接触面積が、従来の場合(第1の接触面しか形成されていない場合)に比して広くなる。したがって、各補強タブ12による補強強度をより向上させることができる。」(段落【0030】)
(4)図3には、2つの接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分が、タブ本体13の両端部より内側にあって、接合部14の両端部の上下方向全体にわたって曲げ形成されていることや、
2つの接合部14の前後方向における内側の端部で左右方向外側へ突出する部分があること、
補強タブ12の2つの接合部14の下面が接触面25となっていることが図示される。
また、図1及び2には、第1係止部23が、ハウジング11の左右壁20,21の左右外方に、タブ本体13を挟んで、前方及び後方に分かれて設けられ、その前後の第1係止部23の間には上下にわたる溝が形成されていること、
その溝の前後方向の内壁に、2つの接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分が接すること、
その溝の中央にある第2係止部24の前後方向の外壁に、2つの接合部14の前後方向における内側の端部で左右方向外側へ突出する部分が接すること、
第2係止部24と左右壁20,21の左右面20a,21aと間にタブ本体13が入っていることが図示される。
図1には、タブ本体13の凸部22aの下辺に面する部分はハウジング11の第1係止部23と二重の線で別体のように図示され、
そこから前後方向の内側で第1係止部23の垂直の部分までは第1係止部23とタブ本体13が一重の線で区別するように図示され、
第1係止部23及び第2係止部24は、その下端でかつ接合部14の下端の両端近くでは、接合部14の下端の両端から離れるように、前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝が広がるように形成される様子が図示される。
(5)上記(4)で摘示した「第1係止部23が、ハウジング11の左右壁20,21の左右外方に、タブ本体13を挟んで、前方及び後方に分かれて設けられ」ること、
「タブ本体13の凸部22aの下辺に面する部分はハウジング11の第1係止部23と二重の線で別体のように図示され、そこから前後方向の内側で第1係止部23の垂直の部分までは第1係止部23とタブ本体13が一重の線で区別するように図示され」ていること、
補強タブ12の「2つの接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分が、タブ本体13の両端部より内側にあ」って、「溝の前後方向の内壁に、」「接すること」や、
また、上記(2)で摘示した「ハウジング11の左壁20及び右壁21には、前記タブ本体13の前後方向における両端部22を圧入状態で係止するための第1係止部23」とのことからみて、
前後に別れて設けられる第1係止部23と、ハウジング11の左右壁20,21との間に、タブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝が設けられていることは明らかである。そして、上記(2)で摘示した「タブ本体13における両端部22の上側には、互いに離間する方向(前後方向)に向けて突設された凸部22aがそれぞれ形成されている」ことや上記(4)で摘示した「その前後の第1係止部23の間には上下にわたる溝が形成されていること」も合わせみると、補強タブ12は、タブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝に、上方から下方に向けて圧入されるものである。
そうすると、2つの接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分は「溝の前後方向の内壁に、」「接する」ものであって、かつ上記(2)で摘示したとおり2つの接合部14は「タブ本体13の下端に」「前後方向に挟んだ状態で並設されてい」て「2つの接合部の左右方向外側へ突出する部分」も同じく上下方向において同じ位置であるので、補強タブ12を下方に向けて圧入するときにも「2つの接合部の左右方向外側へ突出する部分」は上下方向の同じ位置で「溝の前後方向の内壁に」接するものといえる。
したがって、上記(2)?(3)の記載事項、(4)の図示内容並びに(5)の検討した事項を総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「コネクタ10に備わり、一枚の金属板からなり、プリント基板15上に半田付け処理されることにより、コネクタ10が実装される補強タブ12と、
コネクタ10に備わり、タブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝を有し、このタブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝に、補強タブ12のタブ本体13の前後方向における両端部22を圧入して半田付け処理されて、実装されるコネクタ10に備わるハウジング11と、
補強タブ12の2つの接合部14の前後方向における外側の端部で上下方向全体にわたって左右方向外側へ突出する部分が曲げ加工で形成され、
補強タブ12を、ハウジング11のタブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝に、下方に向けて圧入する際に、前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝の前後方向の内壁に上下方向の同じ位置で接し、
かつ、その下面が接触面25となってプリント基板15に半田付け処理される、
2つの接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分とを備え、
第1係止部23及び第2係止部24は、その下端でかつ接合部14の下端の両端近くでは、接合部14の下端の両端から離れるように、前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝が広がるように形成され、
前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝の中央部に、補強タブ12のタブ本体13の中央部が外側に倒れこんでしまうことを抑制できるように、タブ本体13の前後方向における中央部を挿入状態で係止するための第2係止部24が形成され、補強タブ12の2つの接合部14は、タブ本体13の前記第2係止部24に対応する部位である中央部を前後方向に挟んだ状態で下端に並設され、2つの接合部14の前後方向内側の端部にも左右方向外側へ突出する部分を曲げ加工で形成している、
コネクタ10の構造。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
後者の「プリント基板15」は、その機能・構成からみて、前者の「基板」に相当し、以下同様に、
後者の「プリント基板15上に半田付け処理されることにより、コネクタ10が実装される補強タブ12」は前者の「基板にはんだ付けによって固定されて前記基板に前記コネクタが装着される固定部材」に、
後者の「一枚の金属板からな」る態様は前者の「板状にされ」る態様に、
後者の「タブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝」は前者の「組付溝」に、
後者の「このタブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝に、補強タブ12のタブ本体13の前後方向における両端部22を圧入して半田付け処理されて、実装されるコネクタ10に備わるハウジング11」は前者の「組付溝に前記固定部材が挿入により組み付けられて固定されるケース」に、
後者の「補強タブ12を、ハウジング11のタブ本体13の前後方向における両端部22を圧入する溝に、下方に向けて圧入する際」は前者の「固定部材が前記ケースに組み付けられる際」に、
後者の「その下面が接触面25となってプリント基板15に半田付け処理される」ことは前者の「基板にはんだ付けによって固定される」ことに、
後者の「2つの接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分」は前者の「規制部」に、
後者の「コネクタ10の構造」は前者の「コネクタ構造」にそれぞれ相当する。
また、後者は「補強タブ12を、」「下方に向けて圧入する」ものであるから、後者の「補強タブ12の2つの接合部14の前後方向における外側の端部で上下方向全体にわたって左右方向外側へ突出する部分が曲げ加工で形成され」る態様は前者の「固定部材の前記ケースへの組付幅方向両端部」「に前記固定部材の前記ケースへの組付方向に沿って設けられると共に、前記固定部材に対し垂直に突出され」る態様に相当し、後者の「前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝の前後方向の内壁に上下方向の同じ位置で接」する態様は前者の「ケースに前記組付方向に沿って設けられた規制溝の一対の側面に前記組付方向における同一位置において接触される」態様に相当する。
さらに、後者の「第1係止部23及び第2係止部24は、その下端でかつ接合部14の下端の両端近くでは、接合部14の下端の両端から離れるように、前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝が広がるように形成され」ることは、前者の「規制溝の前記組付幅方向寸法の拡大部分」に相当し、ともに、規制溝の前記組付幅方向寸法の拡大部分を規制部に接して設ける点で共通する。
そうすると、両者は、
「コネクタを構成すると共に、板状にされ、基板にはんだ付けによって固定されて前記基板に前記コネクタが装着される固定部材と、
前記コネクタを構成すると共に、組付溝が形成され、前記組付溝に前記固定部材が挿入により組み付けられて固定されるケースと、
前記固定部材の前記ケースへの組付幅方向両端部に前記固定部材の前記ケースへの組付方向に沿って設けられると共に、前記固定部材に対し垂直に突出され、前記固定部材が前記ケースに組み付けられる際に、前記ケースに前記組付方向に沿って設けられた規制溝の一対の側面に前記組付方向における同一位置において接触され、かつ、前記基板にはんだ付けによって固定されると共に、前記規制溝の前記組付幅方向寸法の拡大部分を隣接して設けた規制部と、
を備えたコネクタ構造。」である点で一致し、以下の点で一応相違しているものと認められる。

相違点A:規制部の数に関して、本願発明が「固定部材の前記ケースへの組付幅方向両端部のみ」に設けられるのに対して、引用発明は「前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝の中央部に、補強タブ12のタブ本体13の中央部が外側に倒れこんでしまうことを抑制できるように、タブ本体13の前後方向における中央部を挿入状態で係止するための第2係止部24が形成され、補強タブ12の2つの接合部14は、タブ本体13の前記第2係止部24に対応する部位である中央部を前後方向に挟んだ状態で下端に並設され、2つの接合部14の前後方向内側の端部にも左右方向外側へ突出する部分を曲げ加工で形成している」点。
相違点B:「固定部材が前記ケースに組み付けられる際」に規制部が「ケースに前記組付方向に沿って設けられた規制溝の一対の側面に前記組付方向における同一位置において接触される」ことに関して、本願発明がそのことで「規制溝に沿って案内されて、前記組付方向に対する前記固定部材の傾きが規制され」る作用をなすことに対して、引用発明はそのような作用をなすか否か明確でない点。
相違点C:規制部に隣接して設けられる「規制溝の前記組付幅方向寸法の拡大部分」に関して、本願発明が「はんだが収容される」ものであるのに対して、引用発明は「下面が接触面25となってプリント基板15に半田付け処理される」もののそのようなものか否か不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
引用発明は、「補強タブ12のタブ本体13の中央部が外側に倒れこんでしまうことを抑制できるように、」「前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝の中央部に、」「タブ本体13の前後方向における中央部を挿入状態で係止するための第2係止部24が形成され」るものである。そして「補強タブ12の2つの接合部14は、タブ本体13の前記第2係止部24に対応する部位である中央部を前後方向に挟んだ状態で下端に並設され」ているように、この第2係止部24が、前後の第1係止部23の間の上下にわたる溝の中央部にあることで、タブ本体13の下端に設けられる接合部14について、圧入方向で第2係止部24を避けるように並設状態で設けられているものといえる。
引用発明も本願発明と同様に補強タブ12のタブ本体13の前後方向における両端部22をハウジング11の溝に圧入するものであり、例えば、特開2003-163520号公報、特開2000-113926号公報、特開2005-166491号公報等に示されるように補強タブ12の両端のみを溝により保持し、引用発明のような中央部に第2係止部を有さず接合部が1つのコネクタが周知であって、当業者であれば、上記中央部が外側に倒れこんでしまうことを抑制する第2係止部24は、その補強タブ12の材質や厚みによる強度やそのコネクタの前後方向の長さにより、必ずしも必要としないものと理解される。
さらにいえば、上記2.(1)で摘示した先願明細書等の特許請求の範囲の各請求項にも、第2係止部24やこれを避けるように接合部を2つに分けることは記載されておらず、単にタブ本体から接合部が延設されるのみであり、並設する2つの接合部とすること、さらにはその前後方向内側の端部にも左右方向外側へ突出する部分を形成することを、発明に不可欠な事項としていない。
加えて請求項5をみても、前後方向であるハウジングの対向面に沿って延びる第1の接触面25aに左右方向である交差する方向に延びる第2の接触面25bを設けて、プリント基板15との接触面積を広くするのみであって、接合部を並設する2つのものとし、その前後方向内側の端部にも左右方向外側へ突出する部分を形成することまでは発明に不可欠な事項としていない。
したがって、中央部に第2係止部を有さず接合部が1つのコネクタが周知であることを勘案すると、引用発明における第2係止部24を除き、接合部を1つとし、左右方向外側へ突出する部分をその接合部の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分のみとすることは、コネクタを設計する際に当業者が適宜なす程度の単なる設計上の選択的事項であるといえる。そして、そのことによる格別の効果もないことから、相違点Aに関して、引用発明と本願発明は実質的に相違するとはいえない。

(2)相違点Bについて
「固定部材が前記ケースに組み付けられる際」に規制部が「ケースに前記組付方向に沿って設けられた規制溝の一対の側面に前記組付方向における同一位置において接触される」ことに関して、その構成は引用発明も本願発明と同様であり、さらにその固定部材の組み付け方向についても、引用発明は「補強タブ12を、」「下方に向けて圧入する」ものであって、相違しない。
そうすると、構成も操作も同じ引用発明は、当然、本願発明と同様の作用をなすといえ、相違点Bについて、引用発明は本願発明と実質的に相違しない。

(3)相違点Cについて
規制部に隣接して設けられる「規制溝の前記組付幅方向寸法の拡大部分」に関しても引用発明は本願発明と同様の構成であり、引用発明の「接合部14の前後方向における外側の端部で左右方向外側へ突出する部分」は「下面が接触面25となってプリント基板15に半田付け処理される」のであって、本願発明の規制部42がプリント配線板46のランド48にはんだ付けされることと同様であるから、引用発明においてはんだ付けされるときには、本願発明と同様に、隣接する拡大部分にはんだが収容されるといえる。
そうすると、相違点Cについても引用発明は本願発明と実質的に相違しない。

また、上記相違点A?Cを合わせ考えても、引用発明が本願発明と実質的に相違するとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-06 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-21 
出願番号 特願2006-195631(P2006-195631)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長浜 義憲
平上 悦司
発明の名称 コネクタ構造  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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