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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1264049
審判番号 不服2011-27495  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-20 
確定日 2012-10-04 
事件の表示 特願2008-254892号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年4月15日出願公開、特開2010-82203号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成20年9月30日の出願であって、平成23年9月12日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月20日)たものである。
これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
なお、拒絶査定と同日付けで平成23年5月13日付け手続補正についての補正却下の決定がなされている。

第2 平成23年12月20日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の平成22年12月9日付け手続補正書に「所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、所定の移動部材を落下させる落下経路を構成し、当該落下経路または当該落下経路以外へ振り分けるように前記所定の移動部材を移動させることによって予告を演出する予告部材を備えたことを特徴とする遊技機。」とあったものを「所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、遊技の結果に関与しない所定の移動部材を左右方向に揺動させながら落下させる落下経路を構成し、遊技球が始動入賞口に入賞した場合におこなわれる大当たりの判定結果に基づいて、当該落下経路または当該落下経路以外へ振り分けるように前記所定の移動部材を移動させることによって大当たり予告を演出する予告部材を備えたことを特徴とする遊技機。」と補正するものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、所定の移動部材について、「遊技の結果に関与しない」ものであることを限定し、落下経路について、「左右方向に揺動させながら」落下させることを限定し、所定の移動部材の振り分けについて、「遊技球が始動入賞口に入賞した場合におこなわれる大当たりの判定結果に基づ」くものであることを限定し、予告部材により演出される予告が「大当たり予告」であることを限定するものであり、かつ、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-321499号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ機、アレンジボール機、雀球遊技機等の弾球遊技機に関するものである。」(下線は当審にて付与。以下同様。段落【0001】)
イ 「本発明は、このような従来の問題点に鑑み、遊技球の移動を利用して抽選結果判定手段の判定結果を演出でき、遊技者の興趣を喚起できる弾球遊技機を提供することを目的とする。」(段落【0006】)
ウ 「遊技盤3 には、図2に示すように、ガイドレール10が環状に装着されると共に、そのガイドレール10の内側の遊技領域11に特別図柄表示手段12、普通図柄表示手段13、球振り分け手段14、可変入賞手段15、普通図柄起動手段16、普通入賞手段17等の遊技部品が配置されている。
特別図柄表示手段12、普通図柄表示手段13は、1個の液晶表示手段の一部を利用して一体に構成されており、その表示領域に特別図柄表示手段12が大きく、普通図柄表示手段13が小さく設けられている。なお、特別図柄表示手段12、普通図柄表示手段13は、夫々別々に設けても良い。
特別図柄表示手段12は、1個又は複数個、例えば3個の特別図柄を変動表示可能であって、特別図柄起動手段を兼用する球振り分け手段14が遊技球の入賞等を検出することを条件に、乱数制御によって所定時間変動して停止するようになっている。なお、特別図柄には、数字図柄、アルファベット図柄、キャラクター、その他の図柄を使用可能であり、この実施形態では0?9までの10種類の数字図柄が特別図柄として使用され、その10種類の数字図柄が上から下へと順次スクロールするようになっている。
普通図柄表示手段13は1個又は複数個、例えば1個の普通図柄を変動表示可能であって、普通図柄起動手段16が遊技球を検出することを条件に、その普通図柄が乱数制御により所定時間変動して停止するようになっている。なお、この実施形態では、普通図柄にも0?9までの10種類の数字図柄が使用されている。」(段落【0009】?【0012】)
エ 「球振り分け手段14は、特別図柄起動手段及び抽選起動手段を兼用するもので、入賞口20を有する振り分けケース21内に、遊技球を振り分ける複数個、例えば第1振り分け部(最初の振り分け部)22と第2振り分け部(中間の振り分け部)23と第3振り分け部(中間の振り分け部)24と第4振り分け部(最後の振り分け部)25の4個を備え、後述の抽選結果判定手段の判定結果に従って各振り分け部22?25で遊技球を順次振り分ける振り分け機能を備えている。
振り分けケース21は、図3及び図4に示すように、遊技盤3 の前面に装着された取り付け板26と、この取り付け板26の前面側に装着され且つ遊技盤3 から前方に突出する前ケース体27と、取り付け板26の裏側下部に装着され且つ遊技盤3 の装着孔32内に嵌合する後ケース体28とを備えている。
振り分けケース21には、その前ケース体27の上部側に、遊技球の入賞口20が設けられると共に、この入賞口20の下側に第1振り分け部22、第2振り分け部23、第3振り分け部24及び第4振り分け部25が配置され、その各振り分け部22?25が第1案内通路29、第2案内通路30及び第3案内通路31を介して直列状に接続されている。なお、振り分け部22?25と案内通路29?31は、振り分けケース21内にジグザグ状に配置されている。
振り分けケース21には、遊技者が入賞口20への遊技球の入賞、各振り分け部22?25での遊技球の振り分け状況、及び各案内通路29?31を通過する遊技球を前側から目視により確認できるように、前ケース体27、取り付け板26等に透明、着色透明又はスリット等による透視部(図示省略)が夫々に対応して設けられている。なお、透視部は、少なくとも各振り分け部22?25及び/又は案内通路29?31に対応して設ければ十分である。
入賞口20は開閉式であって、開放時に遊技球が入賞するように開閉自在な左右一対の開閉爪33と、この開閉爪33を駆動するソレノイド等の開閉駆動手段(図示省略)と、開閉爪33間を経て入賞した遊技球を検出する起動スイッチ34とが設けられている。
第1振り分け部22は、遊技球を第1案内通路29側の振り分け口35と、遊技盤3の裏側への振り分け口36とに振り分けるためのものであって、第1振り分け体(回転体)37と、この第1振り分け体37を回転軸38を介して正逆転駆動する駆動モータ等の第1駆動手段39とを備え、第1振り分け体37が前ケース体27の収容凹部40内で回転軸38により回転自在に支持され、第1駆動手段39が取り付け板26の裏側に固定されている。・・・第1案内通路29は、第1振り分け部22で振り分けられた遊技球を第2振り分け部23へと案内するためのもので、左右方向に傾斜状に設けられ、その下流側に第2振り分け部23が設けられている。第2振り分け部23は、第1案内通路29からの遊技球を第2案内通路30側の振り分け口45と、裏側の振り分け口46とに夫々振り分けるためのもので、枢軸47廻りに揺動自在に枢支された第2振り分け体48と、この第2振り分け体48を枢軸47廻りに駆動するソレノイド等の第2駆動手段(図示省略)とを備えている。第2駆動手段は、取り付け板26の裏側に設けられている。・・・第2案内通路30は、第2振り分け部23で振り分けられた遊技球を第3振り分け部24へと案内するためのもので、第1案内通路29と同様に左右方向に傾斜状に設けられ、その下流側に第3振り分け部24が設けられている。第3振り分け部24は、第2振り分け部23と同様に、第2案内通路30からの遊技球を第3案内通路31側の振り分け口50と、裏側の振り分け口51とに夫々振り分けるためのもので、枢軸52廻りに揺動自在に枢支された第3振り分け体53と、この第3振り分け体53を枢軸52廻りに駆動するソレノイド等の第3駆動手段(図示省略)とを備えている。第3駆動手段は、取り付け板26の裏側に設けられている。・・・第3案内通路31は、第3振り分け部24で振り分けられた遊技球を第4振り分け部25へと案内するためのもので、左右方向に傾斜状に設けられ、その下流側に第4振り分け部25が設けられている。」(段落【0015】?【0027】)
オ 「64は乱数式の第2抽選手段で、特別判定乱数値を含む所定数、例えば0?349までの乱数値を発生し、球振り分け手段14の起動スイッチ34が遊技球の入賞を検出することを条件に、その0?349の乱数値の何れかを抽選するようになっている。
65は第2抽選結果判定手段で、第2抽選手段64の抽選結果が特別判定乱数値か否かを判定するように構成されている。66は特別図柄制御手段で、球振り分け手段14の起動スイッチ34が遊技球を検出することを条件に、特別図柄表示手段12の特別図柄を所定時間変動させる制御機能と、第2抽選結果判定手段65の判定結果に応じて特別判定結果の場合に特別図柄を特定態様で、非特別判定結果の場合に特別図柄を非特定態様で夫々停止させる制御機能と、変動中の特別図柄を所定の変動パターンで演出制御する演出制御機能とを備えている。
特別図柄の変動パターンには、例えば図6に示すように、例えばリーチを経ずに非特定態様で停止するリーチなしパターンと、特定態様の出現率が非常に低い第1リーチパターンと、特定態様の出現率が低い第2リーチパターンと、特定態様の出現率が高いスーパーリーチパターン等がある。また各リーチパターンの場合には、その変動後の停止図柄は、最終的に特定態様又は非特定態様の何れかを停止するようになっている。なお、これらの制御を特別図柄制御手段66側で行うようになっている。」(段落【0032】?【0034】)
カ 「この振り分け制御手段68は、図6に示すように遊技球を振り分けるべく各振り分け部22?25を制御する。なお、図6において、○印は特定態様の可能性がある場合の振り分けを、×印は可能性のない振り分けを夫々示している。」(段落【0040】)
キ 「球振り分け手段14の入賞口20に遊技球が入賞して、起動スイッチ34がその遊技球を検出すると、特別図柄制御手段66が特別図柄表示手段12の特別図柄を変動させると共に、第2抽選手段64が発生乱数値を抽選して、その抽選結果に基づいて第2抽選結果判定手段65が判定する。
第2抽選結果判定手段65から非特別判定結果と特別判定結果の何れかの判定結果があれば、その判定結果に従って特別図柄制御手段66が特別図柄の変動パターンを決定し、リーチなしパターン、第1リーチパターン、第2リーチパターン、スーパーリーチパターンの何れかの変動パターンで特別図柄表示手段12の特別図柄が所定時間変動する。
そして、第2抽選結果判定手段65での判定結果が非特別判定結果の場合には、特別図柄表示手段12の特別図柄が非特定態様で停止する。また第2抽選結果判定手段65での判定結果が特別判定結果の場合には、特別図柄表示手段12の変動後の停止図柄が例えば「7・7・7」等の特定態様で停止すると共に、その停止と同時又はその直後に特別遊技状態発生手段67により特別遊技状態が発生して、可変入賞手段15の開閉板18が前側に開放し、遊技者に有利な遊技状態となる。
一方、第2抽選結果判定手段65での特別判定結果又は非特別判定結果があった場合に、その判定結果に応じて特別図柄表示手段12の特別図柄がリーチなしパターン、第1リーチパターン、第2リーチパターン、スーパーリーチパターンの何れかの表示演出に応じて、振り分け制御手段68の主制御部73が各副制御部69?72に制御信号を出し、球振り分け手段14の各振り分け部22?25を制御し、各振り分け部22?25が順次遊技球を振り分けて行く。
例えば、特別図柄表示手段12の特別図柄の変動態様がリーチなしパターンの場合には、第1振り分け体37が逆転方向に回転し、球受け部41上の遊技球を振り分け凹部43内に受け入れた後、その振り分け凹部43から振り分け口36へと振り分ける。またリーチなしパターン以外の場合には第1振り分け体37が正転して、遊技球を振り分け口35、第1案内通路29を経て第2振り分け部23側へと振り分ける。」(段落【0047】?【0051】)
ク 「このように第2抽選結果判定手段65の判定結果に応じて球振り分け手段14の各振り分け部22?25で遊技球を振り分けるように構成し、その振り分け状況を遊技者が目視により確認できるようにすれば、遊技球の振り分け移動によって第2抽選結果判定手段65の抽選結果を演出できる。
従って、遊技中の遊技者は、特別図柄表示手段12の特別図柄の変動状況によって、その変動後に特別遊技状態が発生するか否かを判断できるだけでなく、実際の遊技球の移動によっても同様の判断を行うことができ、遊技者の興趣が著しく向上する。
また通常、特別図柄表示手段12の図柄変動状況又は過程が遊技者に有利な状況にある程、その変動時間が長くなっているので、複数個の振り分け部22?25を組み合わせて図柄変動の表示演出状況に応じて振り分けることにより、遊技球を次の振り分け部23?25へと振り分けて行くに従って遊技者の期待感を増大させることができる。
そして、球振り分け手段14による遊技球の振り分け後に特別図柄表示手段12の特別図柄を特定態様又は非特定態様で停止させるので、例えば特別図柄表示手段12の変動後の停止図柄が特定態様になる場合には、最終の振り分けで遊技球を特別遊技振り分け口54に振り分けることにより、あたかも特別遊技振り分け口54への遊技球の振り分けによって、特定態様になったかのような錯覚を遊技者に対して与えることができ、遊技者の興趣が更に向上する。
更に第2抽選結果判定手段65の判定結果に応じて球振り分け手段14の各振り分け部22?25で遊技球を振り分けるように構成しているが、特別遊技状態が発生するか否かは第2抽選結果判定手段65の判定結果で既に決まっており、球振り分け手段14の最終の振り分け結果とは直接関係がないので、球振り分け手段14を設けているにも拘わらず、遊技プログラム等による本来の遊技制御に影響を及ぼすこともない。
なお、この実施形態では、球振り分け手段14に最初の振り分け部である第1振り分け部22と、最後の振り分け部である第4振り分け部25との他に、中間の振り分け部である第2振り分け部23と第3振り分け部24とを設けているが、中間の振り分け部は省略しても良いし、3個以上設けても良い。」(段落【0056】?【0061】)
ケ 「【発明の効果】本発明によれば、遊技者の遊技に関連して起動する抽選手段64と、該抽選手段64での抽選結果を判定する抽選結果判定手段65と、1個又は複数個の図柄を変動表示可能な図柄表示手段12と、抽選結果判定手段65で特別判定結果があった場合に、図柄表示手段12の変動後の図柄が特定態様となるように制御する図柄制御手段66と、抽選結果判定手段65で特別判定結果があった場合に、遊技者に有利な特別遊技状態を発生する特別遊技状態発生手段67とを備えた弾球遊技機であって、遊技球を振り分ける球振り分け手段14を備え、該球振り分け手段14は、抽選結果判定手段65での判定結果に従って遊技球を振り分ける振り分け機能を備えているので、遊技球の移動を利用して抽選結果判定手段65の判定結果を演出でき、遊技者の興趣を喚起できる。」(段落【0079】)
コ 上記エの記載事項及び【図3】の図示内容によれば、案内通路29?31が、振り分けケース21内の上下方向にジグザグ状に配置されることが示されているものと認める。
サ 上記カ?キの記載事項及び【図6】の図示内容によれば、特別図柄表示手段12の変動後の停止図柄が、特別遊技状体を発生させる特定態様で停止する可能性がある場合には、振り分け口35、第1案内通路29側へと振り分けることが示されているものと認める。

上記ア?ケの記載事項、上記コ?サの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「3個の特別図柄を変動表示可能である特別図柄表示手段12が配置された弾球遊技機であって、
遊技球を振り分ける左右方向に傾斜状に設けられた案内通路29?31が、振り分けケース21内の上下方向にジグザグ状に配置され、
球振り分け手段14の起動スイッチ34が遊技球の入賞を検出することを条件に抽選を行い、第2抽選結果判定手段65での特別判定結果を含む判定結果に応じて、各振り分け部22?25が順次遊技球を振り分けを行い、第1振り分け部22では、遊技球を第1案内通路29側の振り分け口35と、遊技盤3の裏側への振り分け口36とに振り分け、
特別図柄表示手段12の変動後の停止図柄が、特別遊技状態を発生させる特定態様で停止する可能性がある場合には、振り分け口35、第1案内通路29側へと振り分け、遊技球の移動を利用することにより、抽選結果判定手段65の判定結果を演出する球振り分け手段14 を備えた弾球遊技機。」

3 対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「3個の特別図柄を変動表示可能である特別図柄表示手段12」は、表示画面を構成する特別図柄表示手段12に特別図柄の変動という演出内容を表示するものであるから、本件補正発明の「所定の演出内容を表示する表示画面」に相当し、同様に、
「弾球遊技機」は、「遊技機」に相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「遊技球を振り分ける左右方向に傾斜状に設けられた案内通路29?31が、振り分けケース21内の上下方向にジグザグ状に配置され」ることと、本件補正発明の「遊技の結果に関与しない所定の移動部材を左右方向に揺動させながら落下させる落下経路を構成」することとは、前者において「案内通路29?31」は、左右方向に傾斜状に設けられ、上下方向にジグザグ状に配置されるものであり、遊技球を順次落下させるものであるから、両者は、「所定の移動部材を左右方向に揺動させながら落下させる落下経路を構成」することで共通する。
また、刊行物に記載された発明の「振り分け手段14の起動スイッチ34が遊技球の入賞を検出することを条件に抽選を行い、第2抽選結果判定手段65での特別判定結果を含む判定結果に応じて、各振り分け部22?25が順次遊技球を振り分けを行い、第1振り分け部22では、遊技球を第1案内通路29側の振り分け口35と、遊技盤3の裏側への振り分け口36とに振り分け」ることは、「判定結果」に特別遊技状態を発生させる特別判定結果が含まれるから、「判定結果」は大当たりの判定結果といえ、また、「遊技盤3の裏側への振り分け口36」は、「第1案内通路29」以外の経路といえるから、「遊技球が始動入賞口に入賞した場合におこなわれる大当たりの判定結果に基づいて、当該落下経路または当該落下経路以外へ振り分けるように所定の移動部材を移動させること」に相当し、同様に、
「特別図柄表示手段12の変動後の停止図柄が、特別遊技状態を発生させる特定態様で停止する可能性がある場合には、振り分け口35、第1案内通路29側へと振り分け、遊技球の移動を利用することにより、抽選結果判定手段65の判定結果を演出する球振り分け手段14」は、特別図柄表示手段12の変動後の停止図柄が特定態様で停止する可能性のあることを遊技球の振り分けにより演出するもの、言い換えれば、大当たりの判定結果となることの予告を演出するものといえるから、「大当たり予告を演出する予告部材」に相当する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、所定の移動部材を左右方向に揺動させながら落下させる落下経路を構成し、遊技球が始動入賞口に入賞した場合におこなわれる大当たりの判定結果に基づいて、当該落下経路または当該落下経路以外へ振り分けるように前記所定の移動部材を移動させることによって大当たり予告を演出する予告部材を備えた遊技機。」

[相違点]
所定の移動部材が、本件補正発明では、遊技の結果に関与しないものであるのに対して、刊行物に記載された発明では、遊技球であり、遊技の結果に関与するものである点。

4 当審の判断
上記上記相違点について検討する。
遊技機の技術分野において、演出のために用いる移動部材に、遊技球以外の遊技の結果に関与しない部材を用いることは本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2004-73872号公報の段落【0058】、【図13】に示された入賞装置40の上下通路403に遊技球の代わりに投入されるプラスチック製で青色の代替球や、特開2005-103157号公報の段落【0024】、【0050】、【0059】、図面に示された保留表示装置100に保留される、遊技球の代替表示物としてのプラスチックで成る疑似球Bを参照のこと。)。
してみると、刊行物に記載された発明において、球振り分け手段14の演出に用いる所定の移動部材として、遊技の結果に関与しない所定の移動部材を用いることは当業者が容易になし得たものである。
そして、本件補正発明の奏する効果は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
よって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、遊技機に移動部材を左右方向に揺動させながら落下させる螺旋状の落下経路を具備することは、上記したように刊行物に記載された発明に示されるが、本願出願前に周知の技術事項でもある(例えば、原査定時に提示した特開平8-336637号公報段落【0013】、【図2】の螺旋形状に曲げ加工した遊技球落下干渉部材22や、特開2006-296592号公報段落【0033】、【図4】の螺旋ガイド部材170を参照。)。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「所定の演出内容を表示する表示画面を備えた遊技機であって、所定の移動部材を落下させる落下経路を構成し、当該落下経路または当該落下経路以外へ振り分けるように前記所定の移動部材を移動させることによって予告を演出する予告部材を備えたことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2[理由]2 刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比及び判断
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明において、所定の移動部材、落下経路、及び、所定の移動部材の振り分けについての限定を省くものである。
そうすると、本願発明と刊行物に記載された発明とは、前記「第2[理由]3 対比」において検討した一致点の点で一致し、相違点の点で相違する。
そして、相違点についての判断は、前記「第2[理由]4 当審の判断」において検討したとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-25 
結審通知日 2012-07-31 
審決日 2012-08-20 
出願番号 特願2008-254892(P2008-254892)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼藤 啓  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 木村 史郎
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 酒井 昭徳  

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