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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1264128
審判番号 不服2011-6683  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-30 
確定日 2012-10-03 
事件の表示 特願2009-17875「超高圧水銀ランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年8月12日出願公開、特開2010-177014〕について次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1-本願に関する手続の経緯概要】
本願に関する手続は、概略次のとおりである。
特許出願 :平成21年 1月29日
審査請求 :平成22年 2月22日
拒絶理由通知 :平成22年11月 2日発送(同年10月25日起案)
意見書・補正書:平成22年12月21日
拒絶査定 :平成23年 1月25日送達(同年同月17日起案)
審判請求 :平成23年 3月30日
補正書 :平成23年 3月30日
審尋 :平成23年11月22日発送(同年同月15日起案)
回答書提出 :平成23年12月21日
以下、平成23年3月30日付けの補正書による補正を本件補正という。

【2-本件補正の補正却下の決定、及びその理由】
(2-1-本件補正前の特許請求の範囲)
本件補正前の特許請求の範囲は、平成22年12月21日付け補正書により補正されたとおりの次のものである。
「【請求項1】
0.2mg/mm^(3 )以上の水銀が封入された発光部と前記発光部の両端のそれぞれに連続する封止部とで構成される発光管と、前記発光部内に対向して配置されると共に前記それぞれの封止部に電極軸部が保持された一対の電極と、前記封止部のそれぞれに埋設されて前記それぞれの電極軸部に電気的に接続された金属箔と、を備える超高圧水銀ランプにおいて、前記金属箔は、前記電極軸部を包み込むようにして前記電極軸部に固定された被覆部と、前記被覆部に連続して前記電極軸部に接続されることなく同一の幅のまま管軸方向外方に向けて伸びる延在部と、前記延在部に連続する本体部と、を有することを特徴とする超高圧水銀ランプ。
【請求項2】
前記被覆部が筒状であることを特徴とする請求項1記載の超高圧水銀ランプ。
【請求項3】
前記延在部と前記本体部との間には、前記被覆部と逆方向に向かうにつれて次第に幅が広がるように形成された漸増幅部を有することを特徴とする請求項1記載の超高圧水銀ランプ。」

(2-2-本件補正後の特許請求の範囲)
本件補正後の特許請求の範囲は、平成23年3月30日付けの補正書により補正されたとおりの次のものである。
「【請求項1】
0.2mg/mm^(3 )以上の水銀が封入された発光部と前記発光部の両端のそれぞれに連続する封止部とで構成される発光管と、前記発光部内に対向して配置されると共に前記それぞれの封止部に電極軸部が保持された一対の電極と、前記封止部のそれぞれに埋設されて前記それぞれの電極軸部に電気的に接続された金属箔と、を備える超高圧水銀ランプにおいて、
前記金属箔は、前記電極軸部を包み込むようにして前記電極軸部に固定された被覆部と、前記被覆部に連続するとともに前記電極軸部に接続されることなく同一の幅のまま電極軸部の外径よりも長い距離だけ管軸方向外方に向けて伸びる延在部と、前記延在部に連続する本体部と、を有することを特徴とする超高圧水銀ランプ。
【請求項2】
前記被覆部が筒状であることを特徴とする請求項1記載の超高圧水銀ランプ。
【請求項3】
前記延在部と前記本体部との間には、前記被覆部と逆方向に向かうにつれて次第に幅が広がるように形成された漸増幅部を有することを特徴とする請求項1記載の超高圧水銀ランプ。」

(2-3-本件補正の適否についての判断)
特許請求の範囲の補正に関しては、主として本件補正により本件補正前請求項1の「管軸方向外方に向けて伸びる延在部」について「電極軸部の外径よりも長い距離だけ」の限定事項が付加されたものと認められる。

本件審判請求人は、審判請求書において、本件補正の根拠として本願明細書の段落【0027】【0035】を挙げ、特に【0035】の記載「・・・延在部32:樋形状、投影幅0.5mm、全長1.4mm・・・電極軸部21:φ0.4mm」に示された延在部32の全長1.4mmと電極軸部21の外径0.4mmとの関係から、本件補正の「電極軸部の外径よりも長い距離だけ」が読み取れる旨主張する。また、本件審判請求人は、審判請求書において、本件補正による「前記被覆部に連続するとともに前記電極軸部に接続されることなく同一の幅のまま電極軸部の外径よりも長い距離だけ管軸方向外方に向けて伸びる延在部」の存在によって、本願明細書の段落【0033】に記載された金属箔30の本体部34と封止部13の石英ガラスとの剥離を防止する効果が期待ができる旨主張している。

しかし、本願明細書の段落【0033】の記載で、延在部32の有無によって、上記の金属箔30の本体部34と封止部13の石英ガラスとの剥離を防止する効果が左右されることは把握されるものの、延在部32が「電極軸部の外径よりも長い距離だけ」管軸方向外方に向けて伸びることによって、その剥離防止効果が達成されるとの理論的根拠も見出せず、また延在部32の寸法とそれに起因する上記剥離防止効果との関係を裏付ける実験結果が開示されているわけでもない。
上記本願明細書の段落【0035】に記載された延在部32の全長1.4mmと電極軸部21の外径0.4mmとの関係は、上記本願明細書の段落【0033】に記載された剥離防止効果が達成された一例を示すものに止まっている。即ち、この記載によれば、上記本願明細書の段落【0035】に記載された条件で、延在部32が電極軸部21の外径よりも(1.4mm/0.4mm)3.5倍だけ長い距離だけ管軸方向外方に向けて伸びている場合には、上記の剥離防止効果が期待できるとは認められるものの、上記本件補正箇所に技術的意義を持たせて補正の根拠とするためには、延在部32の全長と電極軸部21の外径との比が1前後で、上記の剥離防止効果の有無が決定されることを客観的に示すものでなければならないが、上記本願明細書の段落【0035】の記載では十分とは言えない。
さらに、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、上記本件補正箇所について具体的あるいは直接的な記載があるとは認められず、また当初明細書等の記載を総合しても、上記本件補正箇所について間接的な記載あるいは示唆があるとも認められない。
そうすると、本件補正は、当業者によって、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとは言えない。

(2-4-本件補正の補正却下の結論)
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3-原査定の拒絶の理由概要】
原査定の拒絶の理由の概要は、本願各請求項に記載された発明は、いずれも、本願の出願日である平成21年1月29日より前に日本国内で頒布された刊行物である特開2007-280823号公報(以下、刊行物1という)に記載された発明及び同じく特開2008-71718号公報(以下、刊行物2という)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

【4-本願発明の容易想到性についての判断】
平成23年3月30日付けの手続補正は、上記【2-本件補正の補正却下の決定、及びその理由】に説示したように却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成22年12月21日付け補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されたとおりのものであり、上記【2-本件補正の補正却下の決定、及びその理由】の(2-1-本件補正前の特許請求の範囲)に記載されている。
以下、その請求項1に係る発明を、本願発明という。

(4-1-刊行物1に記載された事項)
刊行物1には【図1】?【図5】等と共に、次のことが記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯時の水銀蒸気圧が150気圧以上となるショートアーク型超高圧放電ランプに関し、特に、液晶ディスプレイ装置やDMD(デジタルミラーデバイス)を使ったDLP(デジタルライトプロセッサ)などのプロジェクター装置のバックライトとして使うショートアーク型超高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
投射型のプロジェクター装置は、矩形状のスクリーンに対して、均一にしかも十分な演色性をもって画像を照明させることが要求され、このため、光源としては、水銀や金属ハロゲン化物を封入したメタルハライドランプが使われている。また、このようなメタルハライドランプも、最近では、より一層の小型化、点光源化が進み、また電極間距離の極めて小さいものが実用化されている。
【0003】
このような背景のもと、最近では、メタルハライドランプに代わって、今までにない高い水銀蒸気圧、例えば150気圧以上を持つランプが提案されている。これは、水銀蒸気圧をより高くすることで、アークの広がりを抑える(絞り込む)とともに、より一層の光出力の向上を図るというものである。
【0004】
ところで、このような放電ランプは、発光管内の圧力が点灯時に極めて高くなるので発光部の両側に延在する封止部においては、当該封止部を構成する石英ガラスと電極および給電用の金属箔を十分かつ強固に密着させる必要がある。密着性が悪いと封入ガスが抜けたり、あるいはクラック発生の原因になるからである。
このため、封止部の封止工程では、例えば、2000℃もの高温で石英ガラスを加熱して、その状態において、厚肉の石英ガラスを徐々に収縮させて封止部の密着性を上げていた。
【0005】
封止部に埋設される金属箔は、モリブデン製の金属箔であって、その形状は一例を挙げると、幅1.5mm、長さ10mm、厚み20μmである。
そして、この金属箔は、リボン状の長い一枚ものの金属箔を軸に巻きつけ、この1枚ものの金属箔を引き出しながら、封止部に埋設される形状の長さ、例えば金属箔の長さが10mmになるように、切断して加工するものである。
この切断工程おいて、金属箔には刃物によって切断されるのでバリが形成され、このバリがある状態で、厚肉の石英ガラスを徐々に収縮させて封止部を構成している石英ガラスと金属箔が密着した場合に、石英ガラスに微小なクラックが発生し、このクラックは、ごく小さいものではあるが、ランプ点灯中において点灯時の超高圧状態ではクラックの成長を招き、これが原因となり放電ランプの破損を導くものであった。
【0006】
このようなクラックの発生を防止するために、切断加工された際にできる金属箔のバリを取り除くために、硫酸、燐酸、過酸化水素水などを用て金属箔を電解研磨する方法が知られている。
このような技術は、特開204-227970号(当審注:特開2004-227970号の誤記と認める)に記載されている。
【特許文献1】特開204-227970号(当審注:特開2004-227970号の誤記と認める)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属箔を電解研磨すると以下のような問題があった。
(1)
金属箔のバリは、切断された金属箔の端部に発生し、金属箔の端部を電解研磨すると、この電解研磨による浸食部分が過剰に浸食される場合があり、金属箔の厚みが薄くなりすぎてしまい、この浸食部分の電気抵抗値が大きくなる。
この場合、ランプ点灯中に、金属箔の浸食部分の温度が異常に高くなり、金属箔が溶断してしまいランプが不点灯になるという問題があった。
【0008】
(2)
電解研磨では、電解研磨された金属箔を、そのままランプの封止部に用いることができず、金属箔の表面に付着した電解研磨液を中和処理する工程、この工程に続き、洗浄・乾燥工程が必要となり、作業性がよくないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、作業性がよく簡単な方法により、確実に金属箔のバリを取り除くことができ、点灯中に、封止部に埋設された金属箔が溶断することがなく、しかも、極めて高い水銀蒸気圧で点灯しても封止部が破損することない構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のショートアーク型超高圧放電ランプは、0.15mg/mm^(3 )以上の水銀を封入した発光部とその両側に延在する封止部とからなるガラスバルブ内に、一端に金属箔が接続された一対の電極が対向配置され、前記金属箔および電極の一部が封止部で封止されたショートアーク型超高圧放電ランプにおいて、前記金属箔は、機械研磨によりバリ取りされていることを特徴とするショートアーク型超高圧放電ランプ。
【0011】
請求項2に記載のショートアーク型超高圧放電ランプは、請求項1に記載のショートアーク型超高圧放電ランプであって、特に、前記金属箔は、前記電極と接続されていない部分の縁辺が、機械研磨によりバリ取りされていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のショートアーク型超高圧放電ランプは、請求項1に記載のショートアーク型超高圧放電ランプであって、特に、前記金属箔は、前記電極側が金属箔の幅が狭い小幅部と、当該小幅部に続く金属箔の幅が広い幅広部を有し、前記電極は前記金属箔の小幅部においてのみ接合されており、前記金属箔の小幅部の電極と接続されていない部分の幅方向の縁辺が、機械研磨によりバリ取りされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のショートアーク型超高圧放電ランプによれば、封止部に埋設される金属箔のバリ取りに、機械研磨を採用することにより、作業性を向上させることができる。
また、機械研磨によって金属箔のバリを取り除いても、金属箔が過剰に薄くならないので、点灯中に、封止部に埋設された金属箔が溶断することがない。
さらには、金属箔は、電極と接続されていない部分の縁辺が、機械研磨によりバリ取りされているので、金属箔と封止部を構成するガラスが密着しても、ガラスにクラックが発生することを防止でき、極めて高い水銀蒸気圧で点灯しても封止部が破損することないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のショートアーク型超高圧放電ランプを、図1を用いて説明する。
図1は、本発明のショートアーク型高圧放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう)の全体構成を示す。
放電ランプは、大略球形の発光部2と、この発光部2の両側に延在するように封止部3を有するガラスバルブ1内に、陰極4と陽極5が互いに対向するよう配置している。また、封止部3には、モリブデンよりなる金属箔6が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。金属箔6の一端は陰極4あるいは陽極5が接続されており、金属箔6の他端は外部リード7が接続されている。
なお、陰極4、陽極5は、金属箔6と接合する棒状部分と区別して表現する場合もあるが、本発明では、特段のことわりがない限り、棒状部分まで含めて称することとする。
【0015】
発光部2には、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。
水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360?780nmという放射光を得るためのもので、0.15mg/mm^(3 )以上封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時150気圧以上で極めて高い蒸気圧となる。
また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧200気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクター装置に適した光源を実現することができる。
【0016】
希ガスは、例えば、アルゴンガスが約13kPa封入され、点灯始動性を改善する。
ハロゲンは、沃素、臭素、塩素などが水銀その他の金属との化合物の形態で封入する。ハロゲンの封入量は、例えば、10^(-6)?10^(-2)μmol/mm^(3 )の範囲から選択できるものであって、その機能はハロゲンサイクルを利用した長寿命化であるが、本発明の放電ランプのように極めて小型で高い内圧を有するものは、このようなハロゲンを封入することは放電容器の破損、失透の防止という作用があると考えられる。
【0017】
このような放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の外径は直径6.0?15.0mmの範囲から選ばれて例えば9.5mm、電極間距離は0.5?2.0mmの範囲から選ばれて例えば1.5mm、発光管内容積は40?200mm^(3 )の範囲から選ばれて例えば75mm^(3 )である。
点灯条件は、例えば、管壁負荷1.5W/mm^(2 )、定格電圧80V、定格電力150Wである。
そして、放電ランプは、プロジェクター装置やオーバーヘッドプロジェクターのようなプレゼンテーション用機器に搭載され、演色性の良い放射光を提供する。
・・・
【0025】
図4は、本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの封止部に埋設される他の金属箔の説明図である。
(a)は電極5と金属箔6を接合する前の両者の形態を示し、(b)は電極5と金属箔6を接合した後の状態を示す。(c)は(b)におけるA-Aの断面図を示すものであり、金属箔6の縁辺61が位置するところの断面図である。(d)は(b)におけるB-Bの断面図を示すものであり、電極が接続されていない部分の断面図である。なお、電極5は陽極であっても陰極であってもかまわない。
【0026】
金属箔6は、モリブデン製であり、金属箔の幅が狭い小幅部6aと、金属箔の幅が広い幅広部6bを有し、小幅部6aは幅が広がりながら幅広部6bにつながっている。
この金属箔6は、金属箔の全長は8.0?30.0mmの範囲から選ばれて例えば10.0mmであり、幅方向は1.0?4.0mmの範囲から選ばれて例えば1.5mmである。金属箔の厚みは、10?40μmの範囲から選ばれて例えば20μmである。
小幅部の幅L1は、0.3?1.0mmの範囲から選ばれて、例えば0.5mmであり、長さL2は1.0?3.5mmの範囲から選ばれて、例えば3.0mmである。
また、電極5は、電極径は外径0.3?1.0mmの範囲から選ばれ、例えば0.5mmである。
なお、金属箔6は、図中点線で示す部分で折り曲げられており、断面形状がΩ状になっている。
【0027】
この金属箔6は、図5に示すように、リボン状の長い一枚ものの金属箔を軸に巻きつけ、この1枚ものの金属箔を引き出しながら、図5中(a)で示す箔形状整形工程において、一定幅例えば1.5mmを有する金属箔の一部を切断して小幅6aを整形する。
この時、図中点線で示すX部分の切断辺にバリが生じるものである。
【0028】
次に、箔形状整形工程を終えて流れてきた1枚ものの箔を図5中(b)で示すバリ取り工程において、図3で示したバリ取りローラ間に挿入することにより、図中X部分の切断辺のバリを機械研磨によって取り除くものである。
【0029】
さらに、バリ取り工程を終えて流れてきた1枚ものの箔を図5中(c)で示す箔切断工程において、1つの箔になるように切断するものである。
【0030】
つまり、図4に戻り説明すると、切断加工した状態では、金属箔6の長さ方向の縁辺61、62の一部にバリが存在するものである。
しかしながら、図4中、金属箔6の小幅部6aの幅方向の縁辺6a1は、機械研磨されてバリが存在しない状態になっている。
なお、金属箔の幅広部の幅方向の縁辺63、64は、もともとバリは存在せず、金属箔の切断工程においても、刃物によって切断される辺ではないので、切断工程後も縁辺63、64にはバリが存在しないものである。
【0031】
そして、図4(b)に示すように、電極5は、長さLで示す1.5mm金属箔6の小幅部6aにおいてのみ接触した状態でスポット溶接等によって接続されており、金属箔6の縁辺61と電極5が交差した状態で、図4(c)に示すように、封止部3を構成する厚肉の石英ガラス30を徐々に収縮させて金属箔6及び電極5を封止するものである。
【0032】
図4(c)に示すように、電極5と接続されている部分の金属箔6の縁辺61はバリが存在するが、封止工程終了後、電極5が冷却していく過程で電極5と石英ガラス30との膨張係数の違いにより、縁辺61と石英ガラス30との間に微小な隙間が必然的に発生するものであり、縁辺61にバリが存在しても、封止構造に悪影響を及ぼすものではない。
なお、電極5と接続される金属箔6の小幅部6aは、電極5の外周に沿うように湾曲した状態になっている。
【0033】
図4(d)に示すように、電極5と接続されていない金属箔6の小幅部6aの幅方向の縁辺6a1は、機械研磨によりバリ取りされているため、縁辺6a1と石英ガラス30が十分かつ強固に密着し、しかも、縁辺6a1近傍の石英ガラス30にクラックが発生することがない。
つまり、電極5の周辺、および、電極5と接続されている部分の金属箔6の縁辺61の周辺には石英ガラス30との間で微小な隙間が形成され密着されていないが、電極5と接続されていない部分の金属箔6の小幅部6aの幅方向の縁辺6a1は、石英ガラス30と十分かつ強固に密着し、しかも、縁辺6a1にはバリが存在していないので、縁辺6a1近傍の石英ガラス30にはクラックが発生せず、発光部内が極めて高い水銀蒸気圧となっても封止部が破損することがないものである。
【0034】
なお、金属箔の長さ方向の縁辺62の一部にもバリが存在するものであるが、縁辺62には発光部とは反対側に位置しているために、この縁辺62近傍の石英ガラスにクラックが発生しても、封止部が破損する要因にはならないものである。
【0035】
さらに、機械研磨によって、金属箔のバリを取り除くことができ、電解研磨で発生していた浸食部分の金属箔が薄くなり電気抵抗値が変わるという問題が発生せず、金属箔の厚みを均一にでき、ランプ点灯中に、金属箔が溶断することがない。
【0036】
また、金属箔を機械研磨するだけでよく、従来、電解研磨工程では、電解研磨工程後に中和処理する工程や洗浄・乾燥工程が必要であったが、これらの工程が不要になり、極めて作業性が向上するものである。
【0037】
なお、本実施例では、金属箔のバリを取るために、バリ取りローラを用いたが、バリ取りローラ以外に、圧縮ローラでバリを圧縮させてもよく、ハンマーでバリを叩いて圧縮させてもよい。
また、バリ取りローラを用いた場合は、金属箔上にヤスリ傷や、引掻き傷が発生し、バリ取りローラを用いたことがわかる。
さらに、圧縮ローラやハンマーを用いた場合は、圧縮した痕跡が金属箔上に発生し、圧縮ローラやハンマーを用いたことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの説明図である。
・・・
【図4】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの他の構造の金属箔と電極を示す。
【図5】図4に示す金属箔の製造工程説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ガラスバルブ
2 発光部
3 封止部
4 陰極
5 陽極
6 金属箔
61 縁辺
62 縁辺
63 縁辺
64 縁辺
6a 小幅部
6b 幅広部
6a1 小幅部の幅方向の縁辺」

(4-2-刊行物1に記載された技術的事項の認定)
《技術的事項1》
刊行物1の記載「【0015】発光部2には、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360?780nmという放射光を得るためのもので、0.15mg/mm^(3 )以上封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時150気圧以上で極めて高い蒸気圧となる。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧200気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクター装置に適した光源を実現することができる。」から、次の技術的事項が読み取れる。
《0.15mg/mm^(3 )以上の水銀が封入された発光部2》

《技術的事項2》
刊行物1の記載「【0014】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプを、図1を用いて説明する。図1は、本発明のショートアーク型高圧放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう)の全体構成を示す。放電ランプは、大略球形の発光部2と、この発光部2の両側に延在するように封止部3を有するガラスバルブ1内に、陰極4と陽極5が互いに対向するよう配置している。また、封止部3には、モリブデンよりなる金属箔6が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。金属箔6の一端は陰極4あるいは陽極5が接続されており、金属箔6の他端は外部リード7が接続されている。なお、陰極4、陽極5は、金属箔6と接合する棒状部分と区別して表現する場合もあるが、本発明では、特段のことわりがない限り、棒状部分まで含めて称することとする。」から、次の技術的事項が読み取れる。
《発光部2の両側に延在するように封止部3を有するガラスバルブ1》

《技術的事項3》
刊行物1の段落【0014】及び記載「【0025】図4は、本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの封止部に埋設される他の金属箔の説明図である。(a)は電極5と金属箔6を接合する前の両者の形態を示し、(b)は電極5と金属箔6を接合した後の状態を示す。(c)は(b)におけるA-Aの断面図を示すものであり、金属箔6の縁辺61が位置するところの断面図である。(d)は(b)におけるB-Bの断面図を示すものであり、電極が接続されていない部分の断面図である。なお、電極5は陽極であっても陰極であってもかまわない。・・・【0031】そして、図4(b)に示すように、電極5は、長さLで示す1.5mm金属箔6の小幅部6aにおいてのみ接触した状態でスポット溶接等によって接続されており、金属箔6の縁辺61と電極5が交差した状態で、図4(c)に示すように、封止部3を構成する厚肉の石英ガラス30を徐々に収縮させて金属箔6及び電極5を封止するものである。」等を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
《発光部2内に互いに対向して配置され、発光部2の両側に延在する封止部3に陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分が石英ガラス30により封止された陰極4、陽極5》

《技術的事項4》
刊行物1の段落【0014】【0025】【0031】等を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
《発光部2の両側に延在する封止部3に石英ガラス30により封止され、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分が長さLで示す1.5mm金属箔6の小幅部6aにおいてのみ接触した状態でスポット溶接等によって接続された金属箔6》

《技術的事項5》
刊行物1の段落【0014】【0015】【0025】等を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
《水銀が封入されたショートアーク型超高圧放電ランプ》

《技術的事項6》
刊行物1の段落【0014】【0025】、記載「【0026】金属箔6は、モリブデン製であり、金属箔の幅が狭い小幅部6aと、金属箔の幅が広い幅広部6bを有し、小幅部6aは幅が広がりながら幅広部6bにつながっている。この金属箔6は、金属箔の全長は8.0?30.0mmの範囲から選ばれて例えば10.0mmであり、幅方向は1.0?4.0mmの範囲から選ばれて例えば1.5mmである。金属箔の厚みは、10?40μmの範囲から選ばれて例えば20μmである。小幅部の幅L1は、0.3?1.0mmの範囲から選ばれて、例えば0.5mmであり、長さL2は1.0?3.5mmの範囲から選ばれて、例えば3.0mmである。また、電極5は、電極径は外径0.3?1.0mmの範囲から選ばれ、例えば0.5mmである。なお、金属箔6は、図中点線で示す部分で折り曲げられており、断面形状がΩ状になっている。」、段落【0031】、記載「【0032】・・・なお、電極5と接続される金属箔6の小幅部6aは、電極5の外周に沿うように湾曲した状態になっている。」、及び【図4】等を総合すると、次の技術的事項が読み取れる。
《金属箔6は、
陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分を長さLで示す1.5mm金属箔6の小幅部6aにおいてのみ接触した状態でスポット溶接等によって接続されるように、図4(a)(b)で点線で示す部分で折り曲げられて断面形状がΩ状になって陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分の外周に沿うように湾曲した状態になっている小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部と、
小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部に連続し、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分に接続されることなく、幅が広がりながら幅広部6bにつながっている図4(d)の縁辺6a1を有する、小幅部6aの図4(a)(b)で、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分の外径(0.5mm)よりも長い距離(長さL2(3.0mm)-長さL(1.5mm)=1.5mm)だけ、ガラスバルブ1の軸方向外方に向けて伸びて幅広部6bにつながる部分と、
この部分に連続する幅広部6bと、
を有すること》

(4-3-刊行物1に記載された発明の認定)
上記《技術的事項1》?《技術的事項6》を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
「0.15mg/mm^(3 )以上の水銀が封入された発光部2と、
発光部2の両側に延在するように封止部3を有するガラスバルブ1と、
発光部2内に互いに対向して配置され、発光部2の両側に延在する封止部3に陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分が石英ガラス30により封止された陰極4、陽極5と、
発光部2の両側に延在する封止部3に石英ガラス30により封止され、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分が長さLで示す1.5mm金属箔6の小幅部6aにおいてのみ接触した状態でスポット溶接等によって接続された金属箔6と、
を備える水銀が封入されたショートアーク型超高圧放電ランプにおいて、
金属箔6は、
陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分を長さLで示す1.5mm金属箔6の小幅部6aにおいてのみ接触した状態でスポット溶接等によって接続されるように、図4(a)(b)で点線で示す部分で折り曲げられて断面形状がΩ状になって陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分の外周に沿うように湾曲した状態になっている小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部と、
小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部に連続し、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分に接続されることなく、幅が広がりながら幅広部6bにつながっている図4(d)の縁辺6a1を有する、小幅部6aの図4(a)(b)で、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分の外径(0.5mm)よりも長い距離(長さL2(3.0mm)-長さL(1.5mm)=1.5mm)だけ、ガラスバルブ1の軸方向外方に向けて伸びて幅広部6bにつながる部分と、
この部分に連続する幅広部6bとを有する、
水銀が封入されたショートアーク型超高圧放電ランプ。」

(4-4-本願発明と引用発明1との対比)
(比較1)
最初に、本願発明と引用発明1との、主要構成要素について比較すると、以下のとおりである。
引用発明1の「発光部2」は、本願発明の「発光部」に相当する。
引用発明1の「封止部3」は、本願発明の「封止部」に相当する。
引用発明1の「ガラスバルブ1」は、本願発明の「発光管」に相当する。
引用発明1の「陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分」は、本願発明の「電極軸部」に相当する。
引用発明1の「陰極4、陽極5」は、本願発明の「一対の電極」に相当する。
引用発明1の「金属箔6」は、本願発明の「金属箔」に相当する。
引用発明1の「水銀が封入されたショートアーク型超高圧放電ランプ」は、本願発明の「超高圧水銀ランプ」に相当する。

(比較2)
次に、引用発明1の「金属箔6」と本願発明の「金属箔」との、細部構成要素について比較すると、以下のとおりである。
引用発明1の「小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部」は、本願発明の「被覆部」と、電極軸部の固定部である点で共通する。
引用発明1の「小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部に連続し、・・・ガラスバルブ1の軸方向外方に向けて伸びて幅広部6bにつながる部分」は、本願発明の「延在部」と、電極軸部の固定部と金属箔本体部とを連続させるものである点で共通する。
引用発明1の「幅広部6b」は、本願発明の「本体部」に相当する。

(総合比較)
上記(比較1)及び(比較2)を総合し、発明特定事項の単なる表現上の差異にとらわれず、技術上の実質的意義を重視すると、引用発明1と本願発明とは以下の点で一致し、以下の3点で相違する。

(一致点)
「水銀が封入された発光部と前記発光部の両端のそれぞれに連続する封止部とで構成される発光管と、
前記発光部内に対向して配置されると共に前記それぞれの封止部に電極軸部が保持された一対の電極と、
前記封止部のそれぞれに埋設されて前記それぞれの電極軸部に電気的に接続された金属箔と、
を備える超高圧水銀ランプにおいて、
前記金属箔は、
前記電極軸部に固定された固定部と、
前記固定部に連続して前記電極軸部に接続されることなく管軸方向外方に向けて伸びる延在部と、
前記延在部に連続する本体部と、を有することを特徴とする
超高圧水銀ランプ。」

(相違点1)
発光部の水銀封入量に関し、本願発明では「0.2mg/mm^(3)以上」であるのに対し、引用発明1では「0.15mg/mm^(3 )以上」である点。

(相違点2)
金属箔の電極軸部の固定部に関し、本願発明では「前記電極軸部を包み込むようにして前記電極軸部に固定された被覆部」と特定されているように、電極軸部全部を覆う被覆部であるのに対し、引用発明1では電極軸部の一部ないし半部と接触する接合部であって、電極軸部全部を覆う被覆部ではない点。

(相違点3)
金属箔の延在部に関し、本願発明では「同一の幅のまま管軸方向外方に向けて伸びる」と特定されているように、延在部の幅が一定であるのに対し、引用発明1では「幅が広がりながら幅広部6bにつながっている・・・」と特定されているように、延在部の幅が一定の箇所が存在するのかどうか不明である点。

(4-5-相違点についての判断)
(相違点1について)
引用発明1が属する技術分野である、水銀が封入されたショートアーク型超高圧放電ランプ等については、発光部の水銀封入量を0.2mg/mm^(3)以上とすることは、当業者にとって想定内であって、単なる設計事項にすぎない。
発光部の水銀封入量を0.15mg/mm^(3 )以上にすることは、刊行物1に記載されているし、例えば、発光部の水銀封入量を0.35mg/mm^(3 )にすることは、本願原査定の拒絶理由通知に引用された国際公開第2009/011117号の[0011]に記載されていることからしても、特別の数値例ではないと言える。

(相違点2について)
刊行物1の【背景技術】の欄に「【0004】ところで、このような放電ランプは、発光管内の圧力が点灯時に極めて高くなるので発光部の両側に延在する封止部においては、当該封止部を構成する石英ガラスと電極および給電用の金属箔を十分かつ強固に密着させる必要がある。密着性が悪いと封入ガスが抜けたり、あるいはクラック発生の原因になるからである。」と記載されているように、引用発明1の解決すべき課題の一つは、封止部における石英ガラスと電極および給電用の金属箔との密着性の向上である。

引用発明1と同一の技術分野である水銀が封入された高圧放電ランプを開示するものとして、刊行物2が挙げられる。
刊行物2の【背景技術】の欄に「【0002】プロジェクター、リアプロテレビ等に使用される高圧放電ランプは、周知のように点灯時に極めて高い水銀蒸気圧が発光空間内に加わるため、放電ランプを構成する封体ガラスには、耐熱性、耐圧性を考慮して、軟化点が高く且つ高硬質である例えば石英ガラスが使用される。一方、電極及びこれを保持する電極棒は主として例えばタングステンが使用され、電極を、封体ガラスの発光空間を形成する発光部内に所定位置させ、電極棒を埋設した状態で封体ガラスの端部を溶融封着し、封止部を形成するものである。【0003】処が、金属で最も熱膨張係数が低いとされるタングステンであっても、その係数は44×10^(-7)であり、熱膨張係数が低い石英ガラスの熱膨張係数の5?7×10^(-7)と比較すると極端な差がある。従って、上記のように石英ガラス製の封体ガラスの封止部を、電極棒を貫通させた状態で溶融封着する構成であると、特に発光時の高温、或いはその冷却により応力が発生し、タングステン製の電極棒近傍の封止部分に於ける石英ガラスにクラックが生じて、気密性が損なわれる不都合があった。【0004】この問題をできるだけ回避するべく封止部内に金属箔を配し、電極棒の端部をこの金属箔に電気的に接続する手段が採られている。ここでの金属箔として代表的なものはモリブデン箔であり、モリブデンもまたその熱膨張係数が約50×10^(-7)と高いが、箔としての厚みを15ミクロンから30ミクロンと極めて薄くすることにより、石英ガラスの熱膨張係数と極端に差があっても応力が吸収され、溶着封止してもクラックが生じることがないとされている。しかしながら、電極棒と封止部とは依然として接触している状態であるので、この部分でのクラックの問題は解決されていない。」と記載されているように、刊行物2においても引用発明1と同様の封止部における石英ガラスと電極棒との密着性の向上を、解決すべき課題の一つとして示している。
そして、刊行物2には【課題を解決するための手段】の欄に「【0013】上記課題を解決するため、本発明の高圧放電ランプは、内部を発光空間とした発光部の両端に封止部を一体成形した封体ガラスの前記した封止部内に金属箔を埋設し、先端を前記した発光空間に位置させた電極棒の基端を前記した金属箔に接続した高圧放電ランプであって、前記した封止部内に於ける電極棒部分を金属箔部分で完全被覆することを特徴とする構成である。」と記載されている。
よって、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
「水銀が封入された高圧放電ランプにおいて、封止部における石英ガラスと電極棒との密着性を向上させるために、封止部内に於ける電極棒部分を金属箔部分で完全被覆すること。」

そうすると、引用発明1と引用発明2とで、技術分野及び解決すべき課題が一致するから、引用発明1の接合部に引用発明2を適用して、電極軸部全部を覆う被覆部とすることは、当業者が容易に成し得ることである。

(相違点3について)
引用発明1の「小幅部6aの図4(b)で長さLとして示される接合部に連続し、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分に接続されることなく、幅が広がりながら幅広部6bにつながっている図4(d)の縁辺6a1を有する、小幅部6aの図4(a)(b)で、陰極4、陽極5の金属箔6と接合する棒状部分の外径(0.5mm)よりも長い距離(長さL2(3.0mm)-長さL(1.5mm)=1.5mm)だけ、ガラスバルブ1の軸方向外方に向けて伸びて幅広部6bにつながる部分」について、刊行物1の記載に基づいて考察する。
刊行物1の【発明の詳細な説明】の記載からでは、引用発明1の「・・・ガラスバルブ1の軸方向外方に向けて伸びて幅広部6bにつながる部分」が幅一定の箇所を含むかどうか把握できない。刊行物1の【図4】(b)のB-B部では、この図面で見る限り、小幅部の幅L1のままであるように把握できる。しかし、刊行物1の【図4】(d)のB-B断面図では、この図面で見る限り、B-B部が小幅部の幅方向縁辺6a1で示されるだけ幅が広がっているように把握できる。結局、刊行物1の記載では、引用発明1の「・・・幅広部6bにつながる部分」の幅一定の箇所が存在するのかどうか不明で、その幅を一定にする設計が容易であると判断可能な決定的根拠とは成り得ない。

そこで、刊行物1が特許文献であることに鑑み、刊行物1に係る出願の出願日である平成18年4月10日より前の、当該技術分野に関する技術常識を考慮する。例えば、平成16年10月21日に公開された刊行物である特開2004-296178号(本願原査定の拒絶理由通知に引用された国際公開第2009/011117号の[0009]に特許文献5として挙げられている)には、次のことが記載されている。
「・・・
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、点灯時の水銀蒸気圧が150気圧以上となるショートアーク型超高圧放電ランプに関し、特に、液晶ディスプレイ装置やDMD(デジタルミラーデバイス)を使ったDLP(デジタルライトプロセッサ)などのプロジェクター装置のバックライトとして使うショートアーク型超高圧放電ランプに関する。
・・・
【0007】
しかしながら、このような構造により、電極の熱膨張を緩和させたとしても、現実には、電極6、7やコイル部材10の周辺にクラックが発生していた。
このクラックは、非常に微小なものではあるが、発光部2の水銀蒸気圧が150気圧という場合には、時として、封止部3の破損につながる場合がある。また、近年、200気圧、さらには300気圧という非常に高い水銀蒸気圧が要求されており、このような高い水銀蒸気圧においては、ランプ点灯中に、クラックの成長が促進され、結果として、封止部3の破損が起こる問題があった。
つまり、クラックの存在は、最初は微少なものであったとしても、高い水銀蒸気圧を伴うランプ点灯において、次第に大きく成長してしまうわけである。
これは50?100気圧程度の点灯時蒸気圧を有する水銀ランプにおいては、決して存在しない新規な技術的課題であるといえる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、極めて高い水銀蒸気圧で点灯する超高圧水銀ランプにおいて、十分に高い耐圧力性を有する構造を提供することである。
・・・
【発明の実施の形態】
図1に本発明のショートアーク型高圧放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう)の全体構成を示す。
放電ランプ1は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された大略球形の発光部2を有し、この発光部2内には、陰極6と陽極7が互いに対向するよう配置している。また、発光部2の両端部から伸びるよう各々封止部3が形成され、これらの封止部3には、通常モリブデンよりなる導電用金属箔8が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。金属箔8の一端は陰極6あるいは陽極6が接合しており、金属箔8の他端は外部リード9が接合している。
なお、陰極6、陽極7は、金属箔と接合する棒状部分と区別して表現する場合もあるが、本発明では、特段のことわりがない限り、棒状部分まで含めて称することとする。
・・・
【0013】
このような放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の外径はφ6.0?15.0mmの範囲から選ばれて例えば9.5mm、電極間距離は0.5?2.0mmの範囲から選ばれて例えば1.5mm、発光管内容積は40?200mm^(3 )の範囲から選ばれて例えば75mm^(3 )である。点灯条件は、例えば、管壁負荷1.5W/mm2、定格電圧80V、定格電力150Wである。
そして、放電ランプは、プロジェクター装置やオーバーヘッドプロジェクターのようなプレゼンテーション用機器に搭載され、演色性の良い放射光を提供する。
【0014】
図2は、本発明の放電ランプの電極と金属箔の説明用拡大図を示す。
(a)は電極7と金属箔8を接合する前の両者の形態を示し、(b)は電極7と金属箔を接合した後の状態を示す。(c)は(b)におけるA-A’の断面図を示す。なお、電極7は陽極であっても陰極であってもかまわず、図においては、発光部側を省略して表現している。
(a)(b)に示すように、金属箔8は小幅部8aと幅広部8bより構成される。電極7は金属箔の小幅部(小幅化部分)8aにおいてのみ接合されており、電極7の先端は幅広部8bまでは伸びていない。
このように、金属箔の電極側を小幅化することで、(c)に示すように、空隙Xをより小さくできる。なお、図においては、空隙Xを誇張して表現しているが、実質的にはもっと小さくなり、また、実害のない程度にまで小さくできることもあって、この場合は実質的に空隙は発生していないとみなすこともできる。
なお、幅広部8bは、電流供給量の確保や製造工程における強度の関係で必要となる。
【0015】
ここで、小幅部8aの幅8a1は、図においては、電極7の外径より僅かに大きくなっているが、電極7の外径と同一であってもかまわないし、電極7の外径より小さくなっていてもかまわない。
さらに、接合後の小幅部の形状は、(c)に示すように平坦形状であってもよいし、後述するように電極の周囲を巻きつくように形成してもかまわない。この場合は空隙Xの発生をより防止できる。
【0016】
数値例を挙げると、金属箔の全長は8.0?30.0mmの範囲から選ばれて例えば11.0mmであり、幅方向は1.0?4.0mmの範囲から選ばれて例えば1.5mmである。電極径はφ0.3?1.0mmの範囲から選ばれ、例えばφ1.0mmである。また、金属箔の厚みは、10?40μmの範囲から選ばれて例えば20μmである。
小幅部の幅8a1は、0.3?1.0mmの範囲から選ばれて、例えば0.7mmであり、長さ8a2は1.0?3.5mmの範囲から選ばれて、例えば1.5mmである。
電極が小幅部で接触している長さ8a3は、0.5?2.5mmの範囲から選ばれて、例えば1.5mmである。
【0017】
図3は電極7が小幅部8aでのみ接合することの作用効果を説明する図面であり、(a)は電極が小幅部でのみ接合している構造を示し、(b)は電極の先端が幅広部まで伸びる構造を比較のために示している。
(b)に示す構造から説明すると、電極と金属箔の接合では小幅部を設けていても、前記のように両者の間に空隙が発生することがある。特に、電極7の先端は、電極の幅(数値で示すとφ0.3?1.0mm程度)だけ金属箔表面から段差を生じさせることになり、この段差が空隙Xとなりやすい。
この場合に、(b)に示すように、電極7の先端が小幅部8aを超えて幅広部8bまで伸びていると、空隙は最初は小さいものであったとしても、ランプの点灯に伴い、幅広部8bの側縁まで貝殻状に広がってしまう。空隙が幅広部の大きさまで広がると封止部の強度は低下していまい、結果として、クラックの発生を導くことになる。
【0018】
一方、(a)に示す構造は、電極7が小幅部8aでのみ接合(接触)しており、すなわち、電極7の先端が幅広部8bまで伸びていない。この場合に発生した空隙は、図において記号Cで示すように貝殻状に成長したとしても、その成長は小幅部8aの側縁において停止し、結果として、それ以上の成長を防止できる。つまり、小幅部8aにおいて微小な空隙が発生したとしても、その後の成長は小幅部の幅の範囲内に抑えることができるというわけである。
なお、このことは電極7の伸びる方向への空隙の成長についても同様のことが言えて、上記側縁において空隙の成長が停止すると、同時に停止することが確認されている。
【0019】
なお、電極7の先端と幅広部までの距離は、少なくとも電極の外径値以上とすることが好ましい。
【0020】
このように本発明は、金属箔の先端を小幅化する構成を採用することで、電極との接合部に生じる空隙そのものを防止、あるいは発生したとしても小さくすることができる。
そして、電極が小幅部でのみ接合する構成を採用することで、仮に空隙が発生したとしても、その後の成長を停止することができる。
・・・」

上記の特開2004-296178号の特に段落【0015】?【0019】の記載から、刊行物1に係る出願の出願日である平成18年4月10日より前の、当該技術分野に関する技術常識として次のもの(以下、「当該技術分野に関する技術常識」という)が認定できる。
「水銀が封入されたショートアーク型超高圧放電ランプの電極と金属箔との設計に関し、
電極が金属箔の小幅部のみで接合されて、電極の先端と金属箔の幅広部までの電極が接合されない金属箔の小幅部の距離を少なくとも電極の外径値以上とし、金属箔の小幅部の幅を一定とすること。」

上記当該技術分野に関する技術常識を考慮すると、引用発明1において、延在部の幅を一定にすることは、当業者が容易に成し得たことであると言える。

(4-6-本願発明の作用効果を加味した検討)
本願発明における電極の変形に起因する金属箔の溶断防止の作用効果も、引用発明1及び引用発明2(特に、封止部内に於ける電極棒部分を金属箔部分で完全被覆すること)から、当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。
よって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-7-むすび)
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願発明が特許を受けることができないものであるから、その他の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

【5-予備的検討】
本件審判請求人は、審尋に対する回答書で知財高裁判決平成18年(行ケ)第10563号を引用しつつ、本件補正は新規事項を追加するものでもなく、また新たな技術的事項を導入するものものでもなく、刊行物1に記載された引用発明1との差異を明確化するためのものである旨主張している。
なお、上記判決は、明細書等の補正に関して、次のことを判示している。
『・・・「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の意義について・・・以上によると、平成6年改正前の特許法は、補正について「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」しなければならないと定めることにより、出願当初から発明の開示が十分に行われるようにして、迅速な権利付与を担保し、発明の開示が不十分にしかされていない出願と出願当初から発明の開示が十分にされている出願との間の取扱いの公平性を確保するととともに、出願時に開示された発明の範囲を前提として行動した第三者が不測の不利益を被ることのないようにし、・・・このような特許法の趣旨を踏まえると、平成6年改正前の特許法17条2項にいう「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」との文言については、次のように解するべきである。すなわち、「明細書又は図面に記載した事項」とは、技術的思想の高度の創作である発明について、特許権による独占を得る前提として、第三者に対して開示されるものであるから、ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ、「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。・・・』

ところで、本件補正は、本願原査定の拒絶理由通知に引用された国際公開第2009/011117号の段落[0009]に特許文献5として示される特開2004-296178号公報の記載「【0019】なお、電極7の先端と幅広部までの距離は、少なくとも電極の外径値以上とすることが好ましい。」に基づいているとも推測される。
というのは、本願出願人と上記特許文献5として示される特開2004-296178号公報に係る出願の出願人とが同一であるからである。

そこで、本願明細書の【0027】及び【0035】を本件補正の根拠として、仮定的に本件補正が新規事項を追加するものでもなく、また新たな技術的事項を導入するものものでもなく、刊行物1に記載された引用発明1との差異を明確化するためのものであると認めた上で、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、本願補正発明という)についての容易想到性について、審尋に対する回答書で引用された知財高裁判決平成20年(行ケ)第10096号の次の判示を念頭に置いて判断する。
『特許法29条2項が定める要件の充足性、すなわち、当業者が、先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたか否かは、先行技術から出発して、出願に係る発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断される。ところで、出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は、当該発明が目的とした課題を解決するためのものであるから、容易想到性の有無を客観的に判断するためには、当該発明の特徴点を的確に把握すること、すなわち、当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。そして、容易想到性の判断の過程においては、事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが、そのためには、当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要となる。さらに、当該発明が容易想到であると判断するためには、先行技術の内容の検討に当たっても、当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である。』

(本願補正発明の容易想到性についての判断)
本願補正発明と引用発明1との一致点は、上記【4-本願発明の容易想到性についての判断】の(4-4-本願発明と引用発明1との対比)の(一致点)に記載したとおりである。

また、本願補正発明と引用発明1との相違点は、上記【4-本願発明の容易想到性についての判断】の(4-4-本願発明と引用発明1との対比)の(相違点1)?(相違点2)に加えて、次の点が相違している。

(相違点3´)
金属箔の延在部に関し、本願補正発明では「同一の幅のまま電極軸部の外径よりも長い距離だけ管軸方向外方に向けて伸びる」と特定されているように、延在部の幅が一定で、電極軸部の外径よりも長い距離だけ管軸方向外方に向けて伸びているのに対し、引用発明1では「幅が広がりながら幅広部6bにつながっている・・・」と特定されているように、延在部の幅が一定の箇所が存在するのかどうか不明で、さらに「棒状部分の外径(0.5mm)よりも長い距離(・・・=1.5mm)だけ、ガラスバルブ1の軸方向外方に向けて伸びて幅広部6bにつながる部分」と特定されているように、延在部の管軸方向外方に向けて伸びている長さが電極軸部の3倍程度である点。

(相違点1)及び(相違点2)については、上記【4-本願発明の容易想到性についての判断】で既述のとおり当業者が容易に成し得ることである。 そこで、(相違点3´)について、当審の判断を以下説示する。

(相違点3´)の延在部の幅を一定にすることについては、上記【4-本願発明の容易想到性についての判断】の(相違点3について)で既述のとおり当業者が容易に成し得ることである。
また、(相違点3´)の延在部の管軸方向外方に向けて伸びている長さを電極軸部の外径より長い距離にすることについては、上記【4-本願発明の容易想到性についての判断】の(相違点3について)で認定した当該技術分野に関する技術常識から、やはり当業者が容易に成し得ることである。
結局、(相違点3´)は、全体として見ても当業者が容易に成し得ることである。

さらに、本願補正発明の作用効果についても、引用発明1、引用発明2及び当該技術分野に関する技術常識から見て当業者の想定内で格別のものとは言えない。
よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び当該技術分野に関する技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、原査定の本願発明についての容易想到性の理由と同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2012-07-24 
結審通知日 2012-07-31 
審決日 2012-08-13 
出願番号 特願2009-17875(P2009-17875)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
P 1 8・ 561- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 剛  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
小林 紀史
発明の名称 超高圧水銀ランプ  
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