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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1264133 |
審判番号 | 不服2011-16389 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-07-29 |
確定日 | 2012-10-03 |
事件の表示 | 特願2006-551182「層状物品の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月11日国際公開、WO2005/072934、平成19年 7月19日国内公表、特表2007-519544〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年1月14日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年1月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 理由1 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 基板シートを熱成形して造形基板とし、この造形基板は該造形基板を通して真空を引くのに十分なボイド率を有する繊維強化プラスチック材料であり、かつ、該ボイド率が造形基板の全体積に基づいて5体積%以上であり、 該造形基板を通して真空を引き、 フィルム層を該造形基板の表面に引きつけて層状物品を形成する 工程を含む層状物品の形成方法。」 2.刊行物等から認定される技術事項 (1)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内で頒布された刊行物である特公昭48-38783号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1a)「本発明は車両用内装板の製造方法に関するもので、曲面及び凹凸面の成形を自由に行うことを目的とする。 又軽量にして衝撃強度・耐熱性・防音効果の優れた内装板を安価に量産することを目的とする。」(第1ページ第1欄第17?21行) (1b)「本発明は上記の諸欠点を解決する車両用内装板の製造方法に係り、第1図の如く合成樹脂を含浸させて賦形性を与えた通気性のフエルト状シートAを作り、これを熱プレスして所望の形状に成形し、硬化後その外表面に、クツシヨン材Cを裏装した熱可塑性合成樹脂シートBを真空成形により被覆して接着し、一体にすることを要旨とする。 本発明は上記の如く、合成樹脂を含浸させて賦形性を与えたフエルト状シートAを所望の形状に成形し、その成形物の通気性を利用して、真空成形によりクツシヨン材Cを裏装した熱可塑性合成樹脂シートBと一体にするものである」(第1ページ第2欄第1?12行) (1c)「(1) フエルト状成形物Aの製造工程 厚さ10mm・1m^(2)の粗麻のフエルト状シートにフエノール樹脂(商品名・WP-71・群栄化学製)100gを水400gに溶かした溶液500gを含浸させる。次いで上記シートを曲面を有する熱プレス成形型に移して成形し、厚さ3mmの成形物を得た。尚フエルト状シートとしては上記のものの他粗毛・紙・綿等の雑繊維をフエルト化して用いることができる。」(第1ページ第2欄第32行?第2ページ第3欄第3行) (1d)「(2) 熱可塑性合成樹脂シートBにクツシヨン材Cを接着する工程 ・・・(略)・・・クツシヨン材Cを裏装した熱可塑性合成樹脂シートBを作成した。」(第2ページ第3欄第4行?第4欄第1行) (1e)「次いで(1)のフエルト状成形物Aを図示の如く熱プレス型と同型の雄型モールド3にはめて、成形物Aの表面に接着剤(例えば商品名・セメダイン545N)をスプレーした。(2)のシートBをおさえ枠7でおさえ雄型モールド3上を覆つた後140℃で真空成形ラミネートを行つて製品を得た。 尚フエルト状シートに含浸させる合成樹脂は液状・粉末の熱硬化性、熱可塑性のいずれも使用することができる。」(第2ページ第4欄第2?10行) (1f)「1 合成樹脂を含浸させて賦形性を与えた通気性のフエルト状シートを作る工程、これを熱プレス成形型により所望の形状に成形硬化させる工程、合成樹脂クツシヨン材を熱可塑性合成樹脂シート表皮の裏面に形成する工程、前記成形品を真空成形型にセツトする工程、前記クツシヨン材を裏装した表皮を加熱しながら成形品の通気性を利用して真空成形により成形品に被覆して一体に接着する工程の結合からなる車両用内装板の製造方法。」(公告後の補正に基づいて補正された特許請求の範囲) (2)周知文献の記載事項 本願の優先権主張の日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平1-228824号公報(以下、「周知文献1」という。)、特開平8-309898号公報(以下、「周知文献2」という。)及び特開平3-86728号公報(以下、「周知文献3」という。)には、それぞれ、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.周知文献1(特開平1-228824号公報) ・「〔産業上の利用分野〕 本発明は剛性基体に材料を粘着又は結合する方法およびそれにより製造された物品に関し、とくに真空成形技術を用いて布が熱可塑性基体に粘着される成形方法および成形物品に関する。」(第3ページ左上欄第7?11行) ・「〔課題を解決するための手段〕 多孔質の海綿状の裏張りの布織物を熱可塑性基体に接着し且つ基体およびこれに接着される布織物に平たんではない輪郭を付与する真空成形方法を採用するものである。多孔性の、海綿状の裏張りされた布織物が雌型上にゆるく配置される。基体はたわむに十分なだけ加熱される。たわんだ基体は、該基体が有効型周囲で布織物と接触するように雌型上に配置される。雌型を通して付与される真空は多孔性の海綿状裏張りの布織物を通して伝達され、たわんだ基体を型内に吸引する。この吸引によって加熱された基体と、海綿状の裏張りの布織物とが接触し且つ接着する。」(第4ページ右上欄第17行?左下欄第9行) ・「布50と海綿体52は真空を加えることにより生ずる負圧が布50及び海綿体52を通して伝達され、効力を発輝できるのに十分に流動多孔性のものでなければならない。」(第5ページ右上欄第1?4行) ・「本発明の方法に基づき、ヘッドライナ、ダッシュボード及び航空機の客室板のような車両関連の内装用ボデー部品を含め、別の物品の成形も可能である。」(第7ページ左上欄第11?14行) イ.周知文献2(特開平8-309898号公報) ・「【請求項1】強化繊維を含有していてもよい樹脂成形体からなる基材の少なくとも一部に、50容量%以上の空隙率を有する抄造法繊維強化熱可塑性樹脂成形体からなる吸音部材が積層一体化されてなることを特徴とする吸音部品。」(請求項1) ・「【0023】以上、本発明の吸音部品を製造するための代表的な製造例について述べたが、この方法以外にも、例えば、吸音部材に相当する凹部を設けた真空型に、吸音部材である抄造法繊維強化熱可塑性樹脂成形体あるいは予熱して膨張した抄造法繊維強化熱可塑性樹脂シートを載置し、その後基材となる予熱した熱可塑性樹脂シートを供給し、真空または圧空成形することによって、基材を形成せしめると同時に吸音部材を積層一体化することにより所望の吸音部品を製造することもできる。」(段落【0023】) ウ.周知文献3(特開平3-86728号公報) ・「発明の技術分野 本発明は、ポリアミド/ポリプロピレンアロイ・コアーとポリオレフィン発泡体との接着方法に関し、」(第4ページ右上欄第5?8行) ・「本発明において用いられる繊維状強化剤(C)としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、金属被覆ガラス繊維、セラミックス繊維、ウオラストナイト、炭素繊維、金属炭化物繊維、金属酸化物繊維、ホイスカー、アラミド繊維、硬化フェノール樹脂繊維等が挙げられ、単独または2種以上の組合せで用いられるが、特にガラス繊維が好ましい。・・・(略)・・・ 本発明で用いられるポリアミド/ポリプロピレンアロイは、変性ポリプロピレン(A)が40?55重量%、ポリアミド(B)が60?45重量%、および(A)+(B)の合計量100重量部に対し、繊維状強化剤(C)20?200重量部とから構成される。上記成分(A)、(B)および(C)を上記のような割合で配合すると、高剛性および180℃以上の高熱変形温度(ASTM D 648、荷重18.6kg/cm^(2))を有するとともに、耐ガソリン性および成形加工性に優れたポリアミド/ポリプロピレンアロイが得られる。」(第8ページ右上欄第9行?左下欄第11行) ・「次に、本発明に係る第1の接着方法における第2工程として、第3図に示すように、前工程で表面1aにプライマー処理が施されたポリアミド/ポリプロピレンアロイ・コアーの裏面1bが、凸型金型4と接するように、このポリアミド/ポリプロピレンアロイ・コアー1を凸型金型4にセットする。 最後に、本発明に係る第1の接着方法における第3工程として、第4図に示すように、表皮材2とポリプロピレン発泡体3とからなる2層シートを、該2層シートのポリプロピレン発泡体3が前記ポリアミド/ポリプロピレンアロイ・コアー1と向かい合わせになるように、前記凸型金型4にセットして真空成形する。」(第11ページ右下欄第19行?第12ページ左上欄第12行) (3)引用刊行物1記載の発明 上記1の記載事項(1f)(以下、「摘記1f」という。(1a)?(1e)についても同様。)における、「合成樹脂を含浸させて賦形性を与えた通気性のフエルト状シートを作る工程、これを熱プレス成形型により所望の形状に成形硬化させる工程」によって得られたものは、具体的には、摘記1cで「熱プレス成形型に移して成形し、厚さ3mmの成形物を得た。」とされている「フエルト状成形物A」である。 摘記1fにおける「合成樹脂クツシヨン材」及び「熱可塑性合成樹脂シート表皮」は、具体的には、それぞれ摘記1dにおける「クツシヨン材C」及び「熱可塑性合成樹脂シートB」のことである。 摘記1eによると、「フエルト状成形物Aを図示の如く熱プレス型と同型の雄型モールド3にはめて」との工程(摘記1fにおける「成形品を真空成形型にセツトする工程」に対応。)の後に、「成形物A」(フエルト状成形物A)の表面に接着剤をスプレーすることが記載されている。 これらの点及び摘記1fに基づいて整理すると、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「合成樹脂を含浸させた通気性のフエルト状シートを作る工程、 これを熱プレス成形型により成形硬化させてフエルト状成形物とする工程、 クツシヨン材を熱可塑性合成樹脂シートの裏面に形成する工程、 前記フエルト状成形物を真空成形型にセットする工程、 前記フエルト状成形物の表面に接着剤をスプレーする工程、 クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シートを加熱しながらフエルト状成形物の通気性を利用して真空成形によりフエルト状成形物に被覆して一体に接着する工程、 を含む車両用内装板の形成方法。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「熱プレス成形」は、本願発明の「熱成形」に相当する。 (2)引用発明の「フエルト状成形物」は、「表皮」(摘記1f)となる「熱可塑性合成樹脂シート」の反対側すなわち裏側に配置されるものであり、また、熱プレス成形型による成形硬化すなわち造形がなされるものであるから、本願発明の「造形基板」に相当する。 (3)本願発明の「基板シート」は、熱成形されることにより「造形基板」となるものであるところ、引用発明の「合成樹脂を含浸させた通気性のフエルト状シート」は、熱プレス成形されることにより「フエルト状成形物」となるものであるから、本願発明における「基板シート」に相当する。 (4)本願発明の「フィルム層」は、本願明細書の段落【0010】によれば、「基板のための表面層として機能し、・・・(略)・・・複数の層を含むことができ」るものであるところ、引用発明の「クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シート」は、表面側に位置するシート状の態様のものであるから、本願発明の「フィルム層」に相当する。 (5)引用発明の「車両用内装板」は、「フエルト状成形物」と「クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シート」とが接着されることにより積層構造になっているから、本願発明の「層状物品」に相当する。 (6)引用発明においては、「フエルト状成形物」に被覆して一体に接着される「クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シート」は、接着剤が表面にスプレーされた「フエルト状成形物」を通して引かれる真空の作用を受けることにより、「フエルト状成形物」の表面に引きつけられるものであり、特に、接着剤が介在することにより、熱可塑性合成樹脂シートに対する真空の作用が滅失しているものではない。 また、本願発明は、造形基板とフィルム層との間に接着剤が介在することを排除したものではない。 したがって、引用発明における「クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シートを加熱しながらフエルト状成形物の通気性を利用して真空成形によりフエルト状成形物に被覆して一体に接着する」との事項は、本願発明における「該造形基板を通して真空を引き、フィルム層を該造形基板の表面に引きつけて層状物品を形成する」との事項に相当する。 (7)引用発明の「フエルト状成形物」(上記(2)で示したように本願発明の「造形基板」に相当。)は、上記(3)で示したように「合成樹脂を含浸させた通気性のフエルト状シート」から得られるものであるから、繊維であるフェルトとプラスチック材料である合成樹脂とから構成されている。 そして、フェルトと合成樹脂とを組合せた複合材料は、合成樹脂のみからなるものと比べれば、変形等に対しては破壊されにくくなっていると評価できるから、当該「フエルト状成形物」における「フェルト」は強化の機能も担っていると解せる。 したがって、当該「フエルト状成形物」は、繊維強化プラスチック材料であるといえる。 よって、両者は、次の点で一致する。 <一致点> 基板シートを熱成形して造形基板とし、この造形基板は繊維強化プラスチック材料であり、 該造形基板を通して真空を引き、 フィルム層を該造形基板の表面に引きつけて層状物品を形成する 工程を含む層状物品の形成方法。 そして、両者は、次の点(相違点1)で相違する。 <相違点1> 本願発明は、造形基板は該造形基板を通して真空を引くのに十分なボイド率を有し、該ボイド率が造形基板の全体積に基づいて5体積%以上であるのに対して、引用発明は、ボイド率に関して不明である点。 4.相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 (1)本願発明において、「ボイド率が造形基板の全体積に基づいて5体積%以上である」と特定したことの技術的意味は、本願発明の発明特定事項自体にあらわれているように、「造形基板を通して真空を引くのに十分」とすることにある。また、ボイド率の5体積%という下限値については、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、その臨界的意義等の格別の技術的意義を見いだすことができない。 (2)一方、引用発明では、「フエルト状成形物」の通気性を利用して真空成形しており、上記3.(6)で示したように、「フエルト状成形物」に被覆される「クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シート」は、「フエルト状成形物」を通して引かれる真空の作用を受けることにより、「フエルト状成形物」の表面に引きつけられている。したがって、引用発明における「フエルト状成形物」は、「クツシヨン材を裏装した熱可塑性合成樹脂シート」を真空の作用により十分に引きつけることが可能な程度のボイド率を有しているといえる。 このことは、一方の部材の通気性を利用して、これと他方の部材とを、真空成形により一体化するものにおいて、その通気性の程度として、真空により生じる負圧がその内部を通して伝達され効力が発揮できる程度に、十分に流動多孔性である必要があることが、周知文献1に記載されていることからも、裏付けられる。 (3)また、一般に、ボイド率が高いほど、通気性は高くなるが強度は低くなり、逆に、ボイド率が低いほど、通気性は低くなるが強度は高くなるものであり、これは、技術的常識に属する事項である。したがって、引用発明において、「フエルト状成形物」のボイド率の程度は、必要とされる通気性の程度や強度等の各種の実施化条件に応じて、当業者が決定する事項というべきである。 そして、例えば、周知文献2では、「50容量%以上の空隙率」とされており、引用発明におけるボイド率の具体的な数値として、通気性のある部材のボイド率の「5体積%以上」を採用することには、当業者にとっての格別の創意工夫を見いだすことはできない。 (4)以上のことから、引用発明において、真空引きの効力を十分に発揮する程度の通気性を確保するために、ボイド率を造形基板の全体積に基づいて5体積%以上の値とすること、すなわち上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 また、本願発明を全体としてみても、本願発明により奏されるとされる効果は、引用発明からみて格別なものとはいえない。 5.小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 理由2 1.本願発明 本願発明の認定については、上記「第2 1.」で示したとおりである。 2.刊行物等から認定される技術事項 引用刊行物1の記載事項、周知文献1?3の記載事項、及び引用刊行物1記載の発明(引用発明)の認定については、上記「第2 2.」の(1)?(3)で示したとおりである。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 上記「第2 3.」の(1)?(6)で示した事項については、このとおりである。 上記「第2 3.」の(7)では、「「フエルト状成形物」は、繊維強化プラスチック材料であるといえる。」と認定したが、一般に「繊維強化プラスチック材料」には様々な種類があり、本願明細書の段落【0019】で示しているようなガラス繊維等を用いたものも含まれる。 そこで、以下、本願発明のうち、「繊維強化プラスチック材料」として、フエルト状成形物以外の、ガラス繊維等を用いたものについて検討する。 本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 基板シートを熱成形して造形基板とし、 該造形基板を通して真空を引き、 フィルム層を該造形基板の表面に引きつけて層状物品を形成する 工程を含む層状物品の形成方法。 そして、両者は、上記「第2 3.」で示した相違点1に加えて、次の点(相違点2)でも相違することになる。 <相違点2> 造形基板は、本願発明では、ガラス繊維等を用いた繊維強化プラスチック材料であるのに対して、引用発明はフエルト状成形物である点。 4.相違点についての判断 上記相違点1及び2について検討する。 (1)相違点1については、上記「第2 4.」で検討したとおりである。 (2)相違点2について検討するに、一方の部材の通気性を利用して、これと他方の部材とを、真空成形により一体化するものにおいて、通気性を有する一方の部材として、ガラス繊維等を用いた繊維強化プラスチック材料を用いることは、周知文献2及び周知文献3に記載されているように、本願の優先権主張の日前において、周知の技術である。 そして、引用発明では、「衝撃強度」(摘記1a)の付与も技術的課題としていることから、本願発明の「造形基板」に相当する「フエルト状成形物」について、周知の技術を考慮し、より強度に優れたガラス繊維等を用いた繊維強化プラスチック材料を用いることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 また、本願発明を全体としてみても、本願発明により奏されるとされる効果は、引用発明及び周知の技術からみて格別なものとはいえない。 5.小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 本願発明は、上記理由1のとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、上記理由2のとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-04-25 |
結審通知日 | 2012-05-08 |
審決日 | 2012-05-22 |
出願番号 | 特願2006-551182(P2006-551182) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田口 昌浩 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
田村 耕作 加藤 友也 |
発明の名称 | 層状物品の形成方法 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 緒方 雅昭 |
復代理人 | 岡 晴子 |
代理人 | 石橋 政幸 |