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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H04Q
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H04W
管理番号 1264527
審判番号 訂正2012-390097  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2012-07-31 
確定日 2012-09-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3525258号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3525258号の明細書を本件審判請求書に添付の訂正明細書のとおりに訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

特許第3525258号は,平成6年8月31日(優先権主張 1993年8月31日 オランダ)を国際出願日とし,コニンクリジケ ピーティーティー ネーダーランド エヌ ブィーにより出願がなされた特願平7-507942号(国際公開WO95/7010,特表平9-502064号)(以下「本件特許出願」という。)であって,平成11年7月23日付けで出願人名称をコニンクリジケ ケーピーエヌ エヌブィー(新名称)に変更する名称変更届の提出がなされ,平成16年2月27日に本件特許出願の特許請求の範囲の請求項1乃至12に係る発明について,特許権の設定の登録(平成16年5月10日特許掲載公報発行)がなされたものである。
そして,平成24年7月31日に訂正審判の請求がなされたものである。


第2 請求の趣旨及び訂正の内容

1.請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は,特許第3525258号の明細書を本件審判請求書に添付の訂正明細書のとおりに訂正することを認める,との審決を求めるものである。

2.訂正の内容
請求人が求める訂正の内容は次のとおりである。
なお,以下において,特許権の設定の登録のときにおける,願書に添付された明細書を「本件特許明細書」,また本件審判請求書に添付された訂正明細書を「本件訂正明細書」という。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に「通信領域(A)は、ある区域(C)の他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり、」(特許第3525258号公報第1頁第5行?第8行)とあるのを「通信領域(A)は、ある区域(C)で他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり、」と訂正する。

(2)訂正事項b
明細書第2頁第3欄第29行から第32行における「通信領域は、ある区域の他の通信領域と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域において、移動ステーションに複数の通信領域が使用可能であり、」を「通信領域は、ある区域で他の通信領域と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域において、移動ステーションに複数の通信領域が使用可能であり、」と訂正する。

(3)訂正事項c
明細書第2頁第4欄第33行から第34行における「例えば、雑音比にたいし比較的低い信号を有する廉価を接続を提供する領域がある。」を「例えば、雑音比にたいし比較的低い信号を有する廉価な接続を提供する領域がある。」と訂正する。

(4)訂正事項d
明細書第3頁第5欄第1行から第3行における「上記の公報は、移動ステーションが2つの箇所に登録し呼び出しを受ける領域のリストの使用を開示していなし、」を「上記の公報は、移動ステーションが2つの箇所に登録し呼び出しを受ける領域のリストの使用を開示していないし、」と訂正する。

(5)訂正事項e
明細書第3頁第6欄第29行から第30行における「問題の優先リストの感覚で「最良」出あるかどうかがチェックできる。」を「問題の優先リストの感覚で「最良」であるかどうかがチェックできる。」と訂正する。

(6)訂正事項f
明細書第4頁第8欄第12行から第13行における「移動ステーションMと3の領域D1,D2,D3間の情報交換は、」を「移動ステーションMと3つの領域D1,D2,D3間の情報交換は、」と訂正する。

(7)訂正事項g
明細書第4頁第8欄第46行から第48行における「図2にように、図3の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。」を「図2のように、図3の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。」と訂正する。


(当審注 1.上記(1)乃至(7)における下線は請求人が付与。2.上記(2)乃至(7)において,「明細書」が特許第3525258号公報に掲載された明細書であることは明白であるから,請求人による該公報記載箇所を示すかっこ書は省略。)


第3 当審の判断

1.訂正の目的
(1)訂正事項aについて
ア 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載(下線は当審が付与。)は次のとおりである。
「【請求項1】移動ステーション(1)と、通信ネットワークを有する通信領域(A)と、少なくとも1つの通信ステーションとからなる、移動通信システムであって、通信領域(A)は、ある区域(C)の他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり、優先リストにもとずいて、使用可能な通信領域を選択するように構成されている、移動通信方式において、
前記方式は、電話通信、ファクシミル、音声メール、コンピューター用データ転送を含む複数の異なるサービスを提供し、各使用者毎に、且つ各サービス毎に個別の前記優先リストが設けられていることを特徴とする移動通信方式。」

イ 上記摘記アの請求項1における「通信領域(A)は、ある区域(C)の他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり」との記載中「ある区域の他の通信領域」とは,「ある区域」の範囲内の通信領域である「他の通信領域」と解することができる。そうすると,「ある区域(C)」の範囲内には「通信領域(B)」が存在するところと存在しないところがあり得ることとなって,そのような区域が「ある区域(C)」ということになる。
これを前提に訂正の目的を検討する。
(ア) 請求項1には,「オーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり」との記載がある。この記載によれば,「ある区域(C)」において「複数の通信領域(A,B)」が使用可能である。
しかし,上記の前提では,「ある区域(C)」の範囲内に,「通信領域(B)」が存在しない範囲が生じ,当該範囲においては,「通信領域(B)」が使用不可能となり,上記請求項1の記載とに矛盾が生じる。
(イ) 明細書には,「図1は第1通信領域Aと第2通信領域Bとを例として模式的に示す。各領域はここで、(移動)通信ネットワークにより包囲される区域に相当する。描かれた2つの通信領域がオーバーラップする区域はCで示されている。通信領域Aには矢印で示すように、領域B方向に移動する移動ステーション1が位置している。各領域AとBには、通信ステーション(固定ベースステーション)と他のネットワーク要素が位置し、これらは図面を明瞭にするため図1には示されていない。
図示の状態で、移動ステーション1と領域A間の通信が可能となる。移動ステーションが区域Cに(したがって、区域Bにも)進入するや否や、領域Aまたは領域Bのいずれかとの通信が可能となる。移動ステーション1がそのコースを追い区域Cを離れると、領域Bとの通信が排他的に可能となる。移動ステーション1との通信リンクを維持しなければならなければ、領域Aとの通信は区域Cを離れたとき絶たれるが、領域Bとの通信は設定されねばならない。」(特許掲載公報第4ページ第7欄第25?43行)との記載(なお,この記載は,本件審判の請求時まで,補正又は訂正はなされてない。)がある。
上記の記載における「オーバーラップする区域」が請求項1記載の「ある区域」に対応する。そして,「第1通信領域A」及び「第2通信領域B」のいずれか一方が請求項1記載の「通信領域(A)」に,また他方が同「通信領域(B)」に対応することは明らかであるが,この通信領域の対応を一に特定することはできない。
しかし,「第1通信領域A」が「通信領域(A)」に対応し「第2通信領域B」が「通信領域(B)」に対応する場合であっても,逆に「第1通信領域A」が「通信領域(B)」に対応し「第2通信領域B」が「通信領域(A)」に対応する場合であっても,上記の前提では,「オーバーラップする区域」の範囲内に,「第1通信領域A」又は「第2通信領域B」が存在しないこととなり,明細書の「2つの通信領域がオーバーラップする区域はCで示されている。」との記載と明らかに矛盾する。
そして,願書に添付された明細書又は図面には,上記の前提と矛盾しない発明が成立し得ることことを示す記載を発見しない。
また,請求項1における「通信領域(A)は、ある区域(C)の他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり、」との記載が,訂正事項aのように「通信領域(A)は、ある区域(C)で他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり、」を意味していると解すれば,上記(ア),(イ)の矛盾は解消する。
よって,訂正事項aは,誤記の訂正に相当し,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項bについて
上記訂正事項aと同様に「通信領域は、ある区域の他の通信領域と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域において、移動ステーションに複数の通信領域が使用可能であり、」との記載を「通信領域は、ある区域で他の通信領域と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域において、移動ステーションに複数の通信領域が使用可能であり、」と訂正しようとするものである。
よって,上記(1)と同様に,訂正事項bは,誤記の訂正に相当し,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

(3)訂正事項cについて
本件特許明細書には,次の記載(下線は当審が付与。)がある。
「特定の領域に登録されている使用者には、いくつかのサービスが提供される。このようなサービスには、真の電話通信(簡単な電話通信)、ファクシミル、音声メール、コンピューター用データ転送等がある。特定の使用者により使用される種々のサービスはすべて同じ領域を経てなされるが、異なるサービスには異なる領域を使用するのが有利である、例えば、雑音比にたいし比較的低い信号を有する廉価を接続を提供する領域がある。使用者は比較的低コストのためこのような音声送信を好むが、ファクシミル用として、高率ではあるが雑音比にたいし高い信号を有する接続がえられる他の領域を好むことがある。しかし、周知の方式にはこのような優先区別はない。」(特許掲載公報第2ページ第4欄第7?9行)(なお,この記載は,本件審判の請求時まで,補正又は訂正はなされてない。)
上記の記載によれば,「例えば、雑音比にたいし比較的低い信号を有する廉価を接続を提供する領域がある。」の記載,特に「廉価を」が誤記であることは明らかであり,訂正事項cのように「廉価な」とする訂正,すなわち上記の本件特許明細書の記載を「例えば、雑音比にたいし比較的低い信号を有する廉価な接続を提供する領域がある。」とする訂正は,誤記の訂正に相当することは明白である。
よって,訂正事項cは,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

(4)訂正事項dについて
本件特許明細書における「上記の公報は、移動ステーションが2つの箇所に登録し呼び出しを受ける領域のリストの使用を開示していなし、」の記載,特に「開示していなし」が誤記であることは明らかであり,訂正事項dのように「開示していないし」とする訂正,すなわち上記の本件特許明細書の記載を「上記の公報は、移動ステーションが2つの箇所に登録し呼び出しを受ける領域のリストの使用を開示していないし、」とする訂正は,誤記の訂正に相当することは明白である。
よって,訂正事項dは,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

(5)訂正事項eについて
本件特許明細書における「問題の優先リストの感覚で「最良」出あるかどうかがチェックできる。」の記載,特に「「最良」出あるか」が誤記であることは明らかであり,訂正事項eのように「「最良」であるか」とする訂正,すなわち上記の本件特許明細書の記載を「問題の優先リストの感覚で「最良」であるかどうかがチェックできる。」とする訂正は,誤記の訂正に相当することは明白である。
よって,訂正事項eは,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

(6)訂正事項fについて
ア 本件特許明細書には,次の記載(下線は当審が付与。)がある。
(ア) 「図2は、優先リストが移動ステーションにあれば、移動ステーションがどのように選択を行うかを模式的に示す。移動ステーションMと3の領域D1,D2,D3間の情報交換は、ここでは、交換信号を表す矢印で示し、矢印の方向は信号が送信される方向に相当する。ここで、連続するイベントは上から下に(垂直時間軸)連続的に示されている。図2の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。図2の移動ステーションMは図1の移動ステーション1に相当する。」(特許掲載公報第4ページ第8欄第10?18行)

(イ) 「次に図3は、優先リストがネットワークにあれば、移動ステーションがどのように選択を行うかを模式的に示す。図2のように、移動ステーションMと3つの領域D1,D2,D3との領域交換は交換信号を表す矢印で示され、矢印の方向は信号が送信される方向に相当し、(図示せざる)時間軸は垂直に延びている。」(同欄第41?46行)

(なお,上記(ア)及び(イ)の記載は,本件審判の請求時まで,補正又は訂正はなされてない。)

イ 上記(ア)の記載によれば,「情報交換」が,「移動ステーションM」と「3の領域」,すなわち,明細書又は図面において「3」で示される「領域」との間で行われるものとも解される。
そこで,これを前提に訂正の目的を検討する。
上記のようにいずれかの「領域」を「3」として示す記載は,願書に最初に添付された明細書又は図面にも,また,本件審判の請求の時,願書に添付された明細書又は図面にも見あたらない。
そうすると,「移動ステーションMと3の領域D1,D2,D3間の情報交換は、」との記載,特に「3の領域D1,D2,D3」が誤記であることは明らかである。
そして,「3の領域D1,D2,D3間」との記載,及び上記(イ)における「図2のように、移動ステーションMと3つの領域D1,D2,D3との領域交換は交換信号を表す矢印で示され」との記載を参酌すると,上記(ア)における移動ステーションMと3の領域D1,D2,D3間の情報交換は、」との記載は,訂正事項fのように「移動ステーションMと3つの領域D1,D2,D3間の情報交換は、」を意味しているものと解するのが自然である。
よって,訂正事項fは,誤記の訂正に相当し,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

(7)訂正事項gについて
本件特許明細書における「図2にように、図3の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。」の記載,特に「図2にように、」が誤記であることは明らかであり,訂正事項gのように「図2のように、」とする訂正,すなわち上記の本件特許明細書の記載を「図2のように、図3の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。」とする訂正は,誤記の訂正に相当することは明白である。
よって,訂正事項gは,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。

2.新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(特許法126条5項及び6項について)

上記1.で検討したところから明らかなように,訂正事項aないしgはいずれも,願書に添付された明細書に記載された事項の意味内容に変更を生じさせるものではなく,そして,願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,訂正事項aないしgはいずれも,特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たしている。

3.独立特許要件(特許法126条7項について)
上記のとおり,訂正事項aないしgに係る訂正は,誤記の訂正を目的とするものであるから,訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで,上記要件について検討するに,訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された発明に対して,特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって,訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は,特許法第126条第7項に規定する要件を満たしている。


第4 むすび

以上のとおり,本件訂正審判の請求に係る訂正は,いずれも特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当し,かつ,同条第5項ないし第7項に規定する要件を満たしている。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
使用可能領域を選択する移動通信方式
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】移動ステーション(1)と、通信ネットワークを有する通信領域(A)と、少なくとも1つの通信ステーションとからなる、移動通信システムであって、通信領域(A)は、ある区域(C)で他の通信領域(B)と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域(C)において、移動ステーション(1)に複数の通信領域(A,B)が使用可能であり、優先リストにもとずいて、使用可能な通信領域を選択するように構成されている、移動通信方式において、前記方式は、電話通信、ファクシミル、音声メール、コンピューター用データ転送を含む複数の異なるサービスを提供し、各使用者毎に、且つ各サービス毎に個別の前記優先リストが設けられていることを特徴とする移動通信方式。
【請求項2】前記ネットワークに少なくとも1つの優先リストが格納されることを特徴とする請求項1の方式。
【請求項3】前記移動ステーションに少なくとも1つの優先リストが格納されることを特徴とする請求項1の方式。
【請求項4】前記移動ステーションは優先リストを入力しおよび/または修正できるように構成されていることを特徴とする請求項1の方式。
【請求項5】前記優先リストが格納されたカードにより、優先リストを入力し、および/または修正できるように構成されていることを特徴とする請求項4の方式。
【請求項6】なされた選択を定期的にチェックするように構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかの方式。
【請求項7】相対優先リストの修正により、なされた選択をチェックするように構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかの方式。
【請求項8】前記移動ステーション(1)は、送受信用の送受信手段と、少なくとも一つの優先リストを格納する格納手段と、少なくとも一つの優先リストに基づき通信領域(A、B)を選択するための選択手段とを備え、前記送受信手段は、機能的に同一な通信手段を有する少なくとも二つの通信領域において、複数の異なるサービスのサポートが可能なように構成され、前記格納手段は、各使用者毎に、且つ各サービス毎の個別の優先リストを格納するように構成したことを特徴とする請求項1から5のいずれかの方式。
【請求項9】前記移動ステーションは、優先リストを入力する入力手段、および/または修正する手段を備えることを特徴とする請求項8の方式。
【請求項10】前記入力手段は、前記優先リストが格納されるカードを受け入れるように構成したことを特徴とする請求項9の方式。
【請求項11】前記移動ステーションは、なされた選択を定期的にチェックするように構成したことを特徴とする請求項8の方式。
【請求項12】前記移動ステーションは、優先リストの各修正により、なされた選択をチェックするように構成したことを特徴とする請求項8の方式。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、移動ステーションと、少なくとも1つの通信ステーションを有する通信領域とからなる、移動通信システムであって、通信領域は、ある区域で他の通信領域と少なくとも一部でオーバーラップする結果、前記区域において、移動ステーションに複数の通信領域が使用可能であり、この方式は優先リストにもとずいて、使用可能な通信領域を選択するように配置されている。移動通信方式に関する。この種の方式は、たとえば、GSM Recommendation 02.11「1」から周知である。
移動通信方式において、特定の通信領域内で、移動ステーションと前記通信領域の1つ以上の通信ステーションとの間に通信リンクを設定できる。このような通信領域(以下、領域という)は、この明細書では、国、地域または、例えば、単なる工場サイトである。通信領域の範囲はその領域にある通信ステーションの範囲により決まる。前記通信ステーションはいわゆるベースステーションよりなるが、たとえば、衛星により構成されてもよい。この明細書において、ベースステーションなる用語は最も一般的な感覚で、すなわち、衛星その他通信手段を含み一般の通信ステーションを意味して使用される。
領域内で、そこに登録されている使用者にとって、その領域の通信ステーションを経て移動通信は可能である。そうすることで、一方で、移動ステーションは接続を設定するためにベースステーションを呼び出すことができ、他方、ベースステーションはそこに登録されている問題の領域に位置する移動ステーションを呼び出すことができる。従って、この明細書において、登録とは、領域を移動ステーションに到達させて通信を設定する通知(真の登録)だけでなく、かつまた移動ステーションにおける領域の使用可能を記録し、移動ステーションの領域への到達よりなる。従って、移動ステーションと領域間の通信は登録が行なわれた場合のみに設定される。
実際には、種々の領域は全体又は一部が一致し、従ってオーバーラップする。従って、国の国境近くの地域では、種々の国の領域は一定のオーバーラップを示し、工場サイトの比較的小さい通信領域は問題の国の通信領域内に全体が入ることができる。以下でさらに詳細に説明するように、通信領域がオーバーラップすれば、多数の問題はそれら自身で、既存の移動通信方式よりみて明らかにする。
移動ステーションの移動の結果、異なる領域は連続的に使用可能となる。オーバーラップ内で、殆んどの場合、移動ステーションは、オーバーラップ領域のどの領域とも通信できる。移動ステーションがオーバーラップ区域に入ると直ちに登録される領域は、移動ステーションにとってまた問題の特定のサービスにとって任意領域になる必要がない。しかし、殆どの周知の方式は、移動ステーションが領域を離れなければ、一定の領域における既存登録を変える選択を考えない。これが多くの場合、望ましくないことは明らかである。
特定の領域に登録されている使用者には、いくつかのサービスが提供される。このようなサービスには、真の電話通信(簡単な電話通信)、ファクシミル、音声メール、コンピューター用データ転送等がある。特定の使用者により使用される種々のサービスはすべて同じ領域を経てなされるが、異なるサービスには異なる領域を使用するのが有利である、例えば、雑音比にたいし比較的低い信号を有する廉価な接続を提供する領域がある。使用者は比較的低コストのためこのような音声送信を好むが、ファクシミル用として、高率ではあるが雑音比にたいし高い信号を有する接続がえられる他の領域を好むことがある。しかし、周知の方式にはこのような優先区別はない。
国際特許出願WO-A-9316549は、移動ステーションがセルラシステム等、オーバーラップ範囲を有する無線電話方式とコードレス方式を切り替える通信方式を開示している。優先制度を使用して使用可能方式を選択する。しかし、この周知の方式は異なるサービスを識別しない。また、多領域の同時登録は行われない。
欧州特許出願EP-A-0526764は、複数個の通信メディアを有する通信方式で単一加入者にたいする単一アクセス番号の使用を開示している。この目的のため、登録装置は、問題の加入者にアクセスしようとするときに連続的に使用される、それぞれのメディアに相当する、複数個のアクセス番号を保持している。上記の公報は、移動ステーションが2つの箇所に登録し呼び出しを受ける領域のリストの使用を開示していないし、また異なるサービスの識別も開示していない。
発明の要約
本発明の目的は、従来技術の上記および他の欠点を解消し、サービスの性質を考慮しながら複数個の使用可能な領域から選択できる、移動ステーション方式を提供することにある。本発明の他の目的は、いつでもサービスおよび問題の移動ステーションの使用者にとってもっとも適する通信領域が選べるような移動ステーション方式を提供することにある。この目的のため本発明による方式は、複数個のサービスを行い、さらに各使用者に、行われるサービスごとに別個の優先リストが提供される。
優先リストにもとずき使用可能な通信領域が選ばれて問題の優先リストから、移動ステーションおよびこの移動ステーションが提供する特定のサービスよりみてどの通信領域が好ましいかを結論できるので、いつでも「最良」の通信領域を定め、これを接続を設定するために選択できる。方式自身で、すなわち、「自動的」に選択が行えるので、使用者は選択に注意を払わなくてもよく、いつでも使用者の特定のサービスを提供する「最良」の通信領域が選択される。
方式に、サービス毎の単一優先リストを備えることはできるが、本発明による方式は、好ましくは、行われる各サービスにたいする複数個の優先リストを使用するように配置されている。異なる使用者はそれぞれ、それ自身の優先リストを有する。従って、各使用者および各サービスにたいする別個の優先リスト、すなわち、各使用者-サービスにたいする別個の優先リストを管理できる。一時に一つのサービスしか行われない場合には、本発明による方式はそれぞれ使用者に各個優先リストを便宜に提供する。
本発明の第1実施例において、優先リストは方式の(一定)ネットワーク、例えば、交換に保持される。これにより、移動ステーションはさらに簡単に従ってより廉価に構成でき、さらに中央に格納される優先リストは、ネットワークの修正の場合には、簡単な仕方で中央に最新に保持できるという、利点を享受する。
第2実施例において、優先リストは移動ステーションに格納される。従って、少なくとも1つの優先リストは問題の移動ステーションにたいし直接得られる。1つの移動ステーション(端末)について複数個の使用者がいる場合には、その移動ステーションに複数個の優先リストがあることが有利である。
優先リストおよび(または)使用可能な領域を、移動ステーションで、たとえば、LCDスクリーン等適当な表示スクリーンで可視させることができる。さらに、使用者に、表示された計数にもとずき、その優先リストを一時的又は永久的に修正させることができる。この目的のため、移動ステーションにはキーボード等適当な入力手段を備える。優先リストをまだ備えていない場合には、このような優先リストの修正によりその入力を示唆させる。
好ましくは、本発明による方式は、優先リストが格納されているカードにより優先リストを修正(および/または入力)するように配置される。この目的に適する形式のカードは、磁気カードまたは、いわゆるチップカード(「スマートカード」)である。このようなカードによって、使用者は、簡単かつ迅速に、どの優先を使用しようとするつもりなのかを移動ステーションに知らせる。従って、移動ステーションに使用者の権限をチェックする手段を備えて、どの使用者がステーションを利用する権利があるかをチェックするのが有利である。この場合、使用者によるアクセスが許されない使用者の優先リストに領域がある場合に入力優先リストを移動ステーションにより調整でき、または1つ以上の入力優先を無視できる。また、このような権限のチェックは、その領域のネットワーク、たとえば、交換に備えている。
好ましくは、本発明による方式は、領域識別メッセージ(「領域識別子」)にもとづき通信領域の使用可能性を決定するように構成される。種々の領域により送信されるメッセージにより、移動ステーションに、領域を識別し、この識別にもとずき、問題の領域の使用可能性を設定させることができる。その結果特定の領域を離れるとき、優先リストにもとずく他の使用可能な領域を選択できる。本発明による方式は、選択モードを定期的にチェックするように構成されるのが好ましい。これにより、選択された領域がなほ、問題の優先リストの感覚で「最良」であるかどうかがチェックできる。従って、たとえば、優先リストは修正され、または移動使用者は、他の「より良い」領域が使用できる区域に移動する。この後者の場合、他の領域を選ぶべきである。
本発明による方式に適用される移動ステーションは送受信手段と、ステーションで行われるサービス用優先リストを記録する手段と、優先リストにもとずき領域を選択する手段とを備える。優先リストがネットワークに格納される場合は、優先リスト記録手段は省略してもよい。好ましくは、このような移動ステーションは優先リストを入力及び(又は)修正する手段を備え、この手段は優先リストが格納されているカードを受け付けるよう配置されるのが有利である。
なお、本発明は、(排他的に)移動通信を行う方式に限定されない。本発明は固定(端末)ステーションが2つ以上の通信領域のオーバーラップ区域に位置する通信方式に使用されてもよい。領域の選択はそれぞれ領域の使用可能性に左右されて、もし通信領域の1つ(のネットワーク)が不能であれば、不能領域の後に好ましい他の領域が選ばれるようになっている。領域の選択も問題のステーションにより通信する種々使用者のそれぞれ優先に左右される。従って、移動ステーションも(固定)ステーション、端末または装置として解釈できる。従って、本発明は、無線通信方式、すなわち、ベースステーションと端末ステーション間の通信を無線で行う方式に適用できるだけでなく、かつまた”固定”通信方式にも適用できる。
文献
「1」GSM Recommendation 02.11,ETSI、1992年11月
「2」WO-A-93 16549
「3」EP-A-0 526764
「4」DE-A-4 118993
「5」Gaskell,P.S:“Developing Technologies for personal communication networks″、Electronics and Communication Enginnering Journal,Vol.4No.2,ロンドン、1992年4月。
これら文献はここにこの明細書に組み入れる。
図面の簡単な説明
図1は2つの一部オーバーラップした通信領域を模式的に示す。
図2は移動ステーションと複数個の領域間の情報交換を模式的に示す。
図3も同様に移動ステーションと複数個の領域間の情報交換を模式的に示す。
発明の詳細な説明
図1は第1通信領域Aと第2通信領域Bとを例として模式的に示す。各領域はここで、(移動)通信ネットワークにより包囲される区域に相当する。描かれた2つの通信領域がオーバーラップする区域はCで示されている。通信領域Aには矢印で示すように、領域B方向に移動する移動ステーション1が位置している。各領域AとBには、通信ステーション(固定ベースステーション)と他のネットワーク要素が位置し、これらは図面を明瞭にするため図1には示されていない。
図示の状態で、移動ステーション1と領域A間の通信が可能となる。移動ステーションが区域Cに(したがって、区域Bにも)進入するや否や、領域Aまたは領域Bのいずれかとの通信が可能となる。移動ステーション1がそのコースを追い区域Cを離れると、領域Bとの通信が排他的に可能となる。移動ステーション1との通信リンクを維持しなければならなければ、領域Aとの通信は区域Cを離れたとき絶たれるが、領域Bとの通信は設定されねばならない。
上記のように、区域Cにおいて、領域Aまたは領域Bのいずれかとの通信が可能である。既存の移動通信方式では、一時に前記領域の1つでのみ登録が許される。従って、他の領域での登録を不可能にして一方の領域での登録を選ばねばならない。多くの場合、領域の1つは特定の使用者(または特定のステーション)にとって好ましい。図示の領域AとBが、たとえば、2つの国の国家移動ネットワークの領域を表せば、(移動)使用者にとって自分のホーム領域を選ぶのが有利であるのはその領域における他の使用者への接続を期待するからである。また別に、使用者は、たとえば、最低費用の領域を好む。使用者が区域Cにいる限り適当な選択、すなわち、使用可能な領域AとBからの適当な選択により、接続の費用を減じたり、または高品質接続等他の利益を得る。本発明による方式により各使用者および各サービスのためこのような選択がなされる。
図2は、優先リストが移動ステーションにあれば、移動ステーションがどのように選択を行うかを模式的に示す。移動ステーションMと3つの領域D1,D2,D3間の情報交換は、ここでは、交換信号を表す矢印で示し、矢印の方向は信号が送信される方向に相当する。ここで、連続するイベントは上から下に(垂直時間軸)連続的に示されている。図2の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。図2の移動ステーションMは図1の移動ステーション1に相当する。
時間t1で、移動ステーションMは領域D1とD2から信号を受信する。これら受信信号にもとずいて、どの領域にアクセス可能かを決定する。アクセス可能な領域の前記決定は実際には、たとえば、図2に示していない他の時間で何回も繰り返すことができる。時間t2で、両領域D1、D2からまた領域D3から信号を受信する。変化が生じたら、ステーションMは、(そこに格納された)優先リストにもとずいて、そのステーションに関連する使用者-サービス一対の登録等そのステーションの登録にとって、他の領域に転送される必要があるかどうかをチェックする。必要であれば、ステーションは、いわゆる領域更新を求める。時間t3で、この目的のための信号は、移動ステーションMにより、図示例では最高の優先を有する領域D3に送信される。領域更新は、その時点でなおアクセス可能であれば、新たな領域(D3)を経て、また以前の領域(D1および/またはD2)を経て送られる。領域更新信号を(時間t3で)受信した後、所要の作用、以前と新たな領域間の情報の交換等が時間t4で問題のネットワークで行われ(点で示す)、領域更新が許されるかどうかをチェックする。これらの作用が完了したら、移動ステーションMに、時間t5で、領域更新の受領が知らされる。
次に図3は、優先リストがネットワークにあれば、移動ステーションがどのように選択を行うかを模式的に示す。図2のように、移動ステーションMと3つの領域D1,D2,D3との領域交換は交換信号を表す矢印で示され、矢印の方向は信号が送信される方向に相当し、(図示せざる)時間軸は垂直に延びている。図2のように、図3の領域D1とD2は、たとえば、図1の領域AとBに相当する。図3の移動ステーションMは図1の移動ステーション1に相当する。
図示例では、移動ステーション(の使用者-サービス一対)は領域D2に登録される。時間t1で、また(図示せざる)その後の時間で、移動ステーションMは、どの領域が移動ステーションMに到達するかを示す信号を領域D2のネットワーク、言い換えれば、その時どの領域が潜在的に使用可能かを示す信号を問題の移動ステーションに送信する。時間t2で、ネットワークは、(そこに格納された)優先リストおよび受信信号にもとずいて、移動ステーションMの使用者または使用者-サービス一対がなお最も好ましい領域に登録されているかどうかをチェックする。この作用は点により図3に略示されている。使用者(または使用者-サービス一対)が最も好ましい領域に登録されていないことが分かれば、ネットワークは時間t3で、登録は他の領域、例示領域D3に転送される。図2の場合に類似して、時間t4で領域更新信号を受信後、新旧領域間の情報交換等所要作用が時間t5で問題のネットワークで行われ(点で示す)領域更新が許されるかどうか等をチェックする。これら作用が完了すると、移動ステーションMは時間t6で領域更新の受け入れが知らされる。
とりわけ上記から分かるように、選択された領域における、移動ステーションまたはその移動ステーションに関連する使用者を登録する目的で使用可能で好ましくは最適な通信領域の選択が行われることにより領域更新を行う。言い換えれば、優先リストを使用して、領域更新を、少なくとも可能ならば、行う。
選択に使用される優先リストは、たとえば、費用、サービスの提供、およびそれぞれネットワークの信頼性に関する優先度にもとずいて作成される。優先リストは多くの異なる方法で設計されても良い。優先リストは、たとえば、逐次順次および/またはマークが相対優先度を示す、単一領域計数よりなるが、優先リストをカテゴリおよび/またはグループに細分するのが有利である。
本発明は上記実施例に限定されないこと、および本発明の精神と範囲から逸脱しないで多くの拡大および変型が可能であることは当業者により理解される。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-09-07 
出願番号 特願平7-507942
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H04W)
P 1 41・ 852- Y (H04Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 小曳 満昭
近藤 聡
登録日 2004-02-27 
登録番号 特許第3525258号(P3525258)
発明の名称 使用可能領域を選択する移動通信方式  
代理人 今井 浩人  
代理人 今井 浩人  
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