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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部無効 発明同一  H01L
管理番号 1264530
審判番号 無効2011-800122  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-08 
確定日 2012-09-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4120502号発明「集光光学系、光源ユニット、照明光学装置および露光装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第4120502号(請求項の数10、以下「本件特許」等という。)は、平成15年7月14日に特許出願された特願2003-196194号に係るものであって、その請求項1?10に係る発明(以下「本件特許発明1?10」という。)について、平成20年5月9日に特許の設定登録がなされた。
これに対して、平成23年7月8日に、本件無効審判請求人(以下「請求人」という。)により本件無効審判〔無効2011-800122号〕が請求され、本件無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)により指定期間内の平成23年10月3日付けで訂正請求書及び審判事件答弁書が提出された。
その後、請求人から平成24年1月5日に審判事件弁駁書が提出され、同年3月23日に請求人より、同年3月27日に被請求人より、それぞれ、口頭審理陳述要領書が提出され、同年4月3日に口頭審理が行われた。

第2 訂正の請求について

1.訂正の請求の内容

被請求人の平成23年10月3日付けの訂正請求は、本件の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付した特許請求の範囲及び明細書(以下「訂正明細書」という。)のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであり、その内容は以下のとおりである。

訂正事項1
本件の特許請求の範囲の請求項1の記載を
「EUV光の光源ユニットであって、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された該補助集光ミラーとを備えることを特徴とする光源ユニット。」
と訂正する。

訂正事項2
同、請求項3の記載を
「前記補助集光ミラーは、球心位置が異なる複数のミラーから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光源ユニット。」
と訂正する。

訂正事項3
同、請求項5の記載を
「回転楕円面の反射面を有する集光ミラーと、該集光ミラーの第1の焦点に球心を有する球面からなる補助集光ミラーとを備え、プラズマ光源から出るEUVのパルス光を集光する集光光学系において、
該補助集光ミラーの半径をRとし、該プラズマ光源のパルス光の持続時間をtとし、光速をcとするとき、R>(t×c)/2を満足することを特徴とする集光光学系。」
と訂正する。

訂正事項4
本件特許明細書の段落【0018】の記載を
「請求項1記載のEUV光の光源ユニットは、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点(楕円の焦点)に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された該補助集光ミラーとを備えることを特徴とする。」
と訂正する。

訂正事項5
同、段落【0024】の記載を
「また、請求項5記載の集光光学系は、回転楕円面の反射面を有する集光ミラーと、該集光ミラーの第1の焦点に球心を有する球面からなる補助集光ミラーとを備え、プラズマ光源から出るEUVのパルス光を集光する集光光学系において、該補助集光ミラーの半径をRとし、プラズマ光源のパルス光の持続時間をtとし、光速をcとするとき、R>(t×c)/2を満足することを特徴とする。」
と訂正する。

2.訂正の適否

訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された発明特定事項である「プラズマ光源の位置からずらされて配置された補助集光ミラーの球心」の位置について、「前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう」な位置であるとの限定を付加するものである。当該訂正事項は、訂正前の請求項1に係る発明における、補助集光ミラーの球心の位置を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、当該訂正事項は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2を引用していたものを、請求項2のみを引用する発明に限定するものである。
したがって、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、当該訂正事項は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5に記載された発明特定事項である「プラズマ光源から出るパルス光」について、「EUV光のパルス光」であるとの限定を付加するものである。当該訂正事項は、訂正前の請求項5に係る発明におけるパルス光の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、当該訂正事項は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は、訂正事項1及び3により請求項1及び5の記載が訂正されたのに伴って、本件特許明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、当該訂正事項は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。また、当該訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないのは明らかである。

3.むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、並びに、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、結論のとおり訂正を認める。

第3 本件訂正発明

上記のとおり本件訂正が認められたため、本件特許に係る発明は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された、以下のとおりのものと認める(以下「本件訂正発明1?10」という。)。

【請求項1】EUV光の光源ユニットであって、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された該補助集光ミラーとを備えることを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】前記補助集光ミラーの球心位置が、該集光ミラーの第1の焦点を通り光軸に垂直な平面内にあって、光軸から該プラズマ光源の半径以上ずらされていることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】前記補助集光ミラーは、球心位置が異なる複数のミラーから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光源ユニット。
【請求項4】前記補助集光ミラーは、少なくとも4つのミラーから構成されていることを特徴とする請求項3に記載の光源ユニット。
【請求項5】回転楕円面の反射面を有する集光ミラーと、該集光ミラーの第1の焦点に球心を有する球面からなる補助集光ミラーとを備え、プラズマ光源から出るEUVのパルス光を集光する集光光学系において、
該補助集光ミラーの半径をRとし、該プラズマ光源のパルス光の持続時間をtとし、光速をcとするとき、R>(t×c)/2を満足することを特徴とする集光光学系。
【請求項6】前記補助集光ミラーの半径が30cm以上に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の集光光学系。
【請求項7】請求項5又は請求項6記載の集光ミラーの前記第1の焦点に、EUV光を放出する前記プラズマ光源が置かれたことを特徴とする光源ユニット。
【請求項8】前記集光ミラーは前記プラズマ光源に近い部分ミラーと遠い部分ミラーに分割されており、前記プラズマ光源に近い部分ミラーのみを取り外し交換できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4又は請求項7のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項9】請求項1乃至4又は請求項7,8のいずれか1項に記載の光源ユニットと、該光源ユニットからのEUV光をマスクへ導くための照明光学系とを備えていることを特徴とする照明光学装置。
【請求項10】所定のパターンが形成された反射型のマスクを照明するための照明光学装置と、
前記照明光学装置によって照明されるべき被照射面にマスクを保持するマスクステージと、
ウエハを保持するウエハステージと、前記マスクに形成された所定パターンを前記感光性基板に所定の縮小比でもって投影する投影光学系と、
前記マスクに形成された所定パターンを前記ウエハに投影する際に、前記投影光学系に対して前記マスクステージと前記ウエハステージとを前記縮小比に応じ
た速度で同期して相対的に移動させる駆動装置とを備える露光装置において、
前記照明光学装置として、請求項9に記載の照明光学装置を有することを特徴とする露光装置。

第4 当事者の主張

1.請求人の主張、及び提出した証拠

請求人の主張した無効理由及び提出した証拠は以下のとおりである。

無効理由1
本件特許発明1及び9は、本件の特許出願の日前の他の特許出願であって本件特許出願後に出願公開された甲第1号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきである。

無効理由2
本件特許発明1及び9は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定された発明であり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきである。

無効理由3
本件特許発明1は、甲第2号証に記載の発明を出発点として、(1)甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明、(2)甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明又は(3)甲第2号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきである。
(4)本件特許発明2?4及び8?10は、甲第2号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきである。

無効理由4
本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し無効とされるべきである。

無効理由5
本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し無効とされるべきである。

無効理由6
本件特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し無効とされるべきである。

上記の無効理由は、本件訂正によっても解消されていない。

証拠方法
甲第1号証:特願2004-12084号(特開2004-333475号)の公開公報

甲第2号証:米国特許第6,285,743号明細書(及びその抄訳)

甲第3号証:Panasonic プロジェクターカタログ DLP方式プロジェクター TH-D9610J TH-D9510J TH-D8600J TH-D8500J 2003年7月

甲第4号証:特開平6-118379号公報

甲第5号証:特開2003-198010号公報

甲第6号証:米国特許第4,305,099号明細書(及びその抄訳)

甲第7号証:米国特許第4,151,584号明細書(及びその抄訳)

甲第8号証:特開平11-312638号公報

甲第9号証:特開2000-89000号公報

2.被請求人の主張

これに対して、被請求人は、請求人の主張にはいずれも理由がない旨主張している。

第5 無効理由についての当審の判断

1.無効理由1について

(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、次の事項が記載されている。

(a1)「【請求項10】
極紫外(EUV)光線を発生させる極紫外(EUV)光線源において、
標的領域に向けられる標的材料の流れを発生させる装置と、
標的領域に向けられ、標的材料と相互作用してEUV光線を発生させるレーザビームを生じさせるレーザ源と、
EUV光線を集め且つ、EUV光線を集光位置に向ける光学コレクタであって、主要反射器を有し、標的領域が該主要反射器の焦点であり、主要反射器の外端縁の周りに配置された環状反射器と、焦点と集光位置との間に配置された中央反射器とを有する前記光学コレクタと、を備え、
標的領域にて発生されたEUV光線が主要反射器によって反射され且つ、集光位置に向けられ、
環状反射器が、主要反射器によって反射されなかった光を標的領域から反射し、環状反射器によって反射された光が中央反射器から反射され且つ、集光領域に向けられるようにした、極紫外(EUV)光線源。」
(a2)「【0001】
本発明は、全体として、光源用の光学コレクタ、より具体的には、発生されたレーザプラズマ極紫外線(EUV)光線を高比率にて集めるEUV光線源用の高効率の光学コレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
極小電子集積回路は、典型的に、当該技術分野の当業者に周知のフォトリソグラフィ工程によって基板上にパターン化され、この工程において、回路要素は、マスクを通って伝播する光ビームによって画成される。・・・フォトリソグラフィ光源の現在の傾向は、極紫外線(EUV)すなわち軟らかいX線波長の光を発生させるシステムを開発することである。」
(a3)「【0005】
図1は、圧力下にて、キセノンのような適宜な標的材料を保存する標的材料の保存チャンバ14を有するノズル12を備える、上記に論じた型式のEUV光線源10の平面図である。標的材料を液体状態に極低温冷却する熱交換器又は凝縮器がチャンバ14内に設けられている。液体標的材料は、ノズル12の狭小な喉部分又は毛管16を通じて強制的に供給されて、圧力下にてフィラメント又は流れ18として標的領域20に向け真空プロセスチャンバ26内に放出される。液体の標的材料は、真空環境内にて急速に凍結し標的材料が標的領域20に向けて伝播するとき、標的材料の固体フィラメントを形成する。真空環境は、標的材料の蒸気圧力と組み合わさって、流れ18が移動する距離及びその他の要因に依存して、凍結した標的材料が最終的に分解して凍結した標的の破片となるようにする。
【0006】
レーザ源24からのレーザビーム22は、プロセスチャンバ26内にて標的領域20に向けられて標的材料フィラメントを蒸発させる。レーザビーム22からの熱によって標的材料はEUV光線32を放射するプラズマ30を発生させる。EUV光線32は、光学コレクタ34によって集められ且つ、パターン化される回路(図示せず)に向けられ又はEUV光線32を使用するその他の装置に向けられる。光学コレクタ34は、楕円形のような、光線32を集め且つ導く目的に適した任意の形状を有するものとすることができる。この型式のものにおいて、レーザビーム22は、図示するように、光学コレクタ34の開口36を通って伝播する。その他の型式のものはその他の形態を採用することができる。」
(a4)「【0016】
図3は、本発明の1つの実施の形態による、上記に論じたEUV光線源10にて使用可能な光学コレクタ70の断面平面図である。該光学コレクタ70は、中央開口74を有する楕円形の皿形反射器72を有しており、該中央開口74を通って上記に論じたように、レーザビームが標的領域76に伝播する。EUV光線78は、上記に論じたように、標的領域76にて発生され、皿形反射器72の内面80から反射され且つ集光位置82に向けられる。この実施の形態において、標的領域76は楕円形反射器72の1つの焦点にあり、集光位置82は楕円形反射器72の他方の焦点にある。・・・
【0017】
上記に論じたように、反射器72の外端縁84から反射された光線78の外側線86、88は、その円錐体の外側の光が使用不能である、円錐体の外面を画成する。皿形反射器72をより大きく形成するならば、線86、88によって画成された円錐体は、線78の一部分がEUV光線78を使用してシステムの角度付き受け入れ部の外側となるより大型の円錐体を画成するであろう。本発明によれば、環状の線形切頭反射器のような、環状反射器90は、さもなければ失われる可能性のあるEUV光線78を集め且つ反射し得るよう反射器72の外端縁84に隣接する位置に設けられる。このため、反射器72によって反射されないであろう光線78の線92は、環状反射器90によって反射される。
【0018】
通常、反射器90によって反射された線92は、線86、88によって画成された円錐体の外側にある。しかし、本発明によれば、例えば、動力作動式アクシコン反射器のような、中央反射器94が、標的領域76と集光位置82の間に設けられて反射器90によって反射された線92の方向を変更する。明らかであるように、環状反射器90から反射された線92は、反射器94によって方向変更され、線86、88によって画成された円錐体内にあるようにする。この実施の形態において、反射器90、94は、2つの回転面であり、ここで、線92は反射器90の内面から反射され且つ、反射器94の外面から反射される。
【0019】
反射器90の内面及び反射器94の外面は、EUV光線源用の適宜な被覆材にて被覆される。1つの実施の形態において、反射器90、94上の被覆は、通常は、Si/Mo多層である、反射器72の内面80の被覆と同一である。
【0020】
図4は、本発明の別の実施の形態による、光線源10内で同様に使用されることができる、光学コレクタ70と同様である光学コレクタ102の断面平面図であり、ここで、同様の要素は同一の参照番号で示してある。この実施の形態において、環状反射器90は、図示するように、湾曲形態を有する環状反射器104と置換されている。また、中央反射器94は、線形アクシコン反射器10にて、又は、動力作動部を有する切頭反射器にて置換されている。この実施の形態において、通常、失われるであろう線は、反射器104、106によって集められ且つ方向変更される。」
(a5)図4には、標的領域76からのEUV光線が環状反射器104によって標的領域76とは異なる方向に反射されるようすが記載されている。

上記甲第1号証の記載事項及び添付図面に記載された事項並びに当業者の技術常識を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「レーザ源からのレーザビームの熱で発生したプラズマによってEUV光線を放射するプラズマ光源と、
EUV光線が発生される標的領域が1つの焦点にあり、集光位置が他方の焦点にある楕円形反射器を有しており、
標的領域からのEUV光線を標的領域とは異なる方向に反射する、湾曲形態を有する環状反射器を有する、極紫外(EUV)光線源。」(以下、これを「甲1先願発明」という。)

(2)対比
本件訂正発明1と甲1先願発明を比較する。
(あ)甲1先願発明の「レーザ源からのレーザビームの熱で発生したプラズマによってEUV光線を放射するプラズマ光源」、
「EUV光線が発生される標的領域が1つの焦点にあり、集光位置が他方の焦点にある楕円形反射器」及び
「極紫外(EUV)光線源」は、それぞれ、
本件訂正発明1の「EUV光を放出するプラズマ光源」、
「回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラー」及び
「光源ユニット」に相当する。
(い)また、甲1先願発明の「環状反射器」は、「標的領域からのEUV光線を標的領域とは異なる方向に反射する」ことから「反射したEUV光がプラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう」な配置であることは明らかである。
したがって甲1先願発明の「環状反射器」と、本件訂正発明1の「補助集光ミラー」は、ともに「曲面の反射面を有し、反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避ける位置に配置された補助集光ミラー」である点で一致する。

してみれば、両者は、
「EUV光の光源ユニットであって、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
曲面の反射面を有し、反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避ける位置に配置された該補助集光ミラーとを備える光源ユニット。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:補助集光ミラーが、本件訂正発明1では「球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された」のに対して、甲1先願発明では、反射面が曲面ではあるものの、球面かどうかは明らかでなく、プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射する構成ではない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
本件訂正発明1は、プラズマ光源から発散するEUV光の一部を補助集光ミラーで集光ミラーに向けて反射することを前提とし、その場合に反射された光がプラズマ光源を通過するとプラズマによって吸収されることを避けることを目的とするものである。(本件訂正明細書段落【0007】?【0016】参照)。
これに対して、甲1先願発明は、プラズマ光源から発散するEUV光を集光ミラーに向けて反射することは前提とせず、補助集光ミラーで反射した光は集光位置に導くことにより、高効率を達成するものである(上記摘記事項(a4)参照)。
すなわち、両発明はその前提が異なり、解決しようとする課題も異なる。
してみると、上記相違点を課題解決のための具体的手段における微差であるとすることは出来ない。
したがって、本件訂正発明1と甲1先願発明は同一ではない。
また、本件訂正発明9は、本件訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、同様の理由により甲1先願発明と同一ではない。

(4)小括
よって、請求人の主張する無効理由1によっては、本件特許を無効とすることはできない。

2.無効理由2について

(1)甲第2号証に記載された発明
本件の特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。なお、訳は請求人及び被請求人の提出したものによる。

(b1)「The present invention relates to soft X-ray generation, and more particularly, to a method and apparatus for generating soft X-rays for semiconductor manufacturing.
」(第1欄14?16行)
(訳)「本発明は、軟X線の発生に関連するものであり、特に、半導体製造用の軟X線の発生方法及び装置に関するものである。」
(b2)「In a conventional process, a pattern from a mask is reduced, projected and transferred onto a silicon wafer using visible or ultraviolet light during the manufacturing of semiconductor integrated circuits.」(第1欄18?21行)
(訳)「従来法では、半導体集積回路の製造の際、マスクからのパターンを可視光又は紫外光を用いて、シリコンウエハ上に縮小投影して転写した。」
(b3)「Thus, the use of soft X-rays with wavelengths shorter than the wavelengths of ultraviolet light, i.e., wavelengths of about 13 nm or about 11 nm, is becoming necessary to achieve required pattern resolution.」(第1欄26?29行)
(訳)「かくして、紫外光よりもさらに波長の短い、すなわち波長約13nmあるいは約11nmの軟X線の使用が、要求されるパターン解像度を達成するのに必要となっている。」
(b4)「A laser plasma X-ray source (LPX) may be used to produce soft X-rays with a wavelength of about 13 nm or about 11 nm.」(第1欄30?32行)
(訳)「波長約13nmあるいは約11nmの軟X線を発生させるのに、レーザープラズマX線源(LPX)を使用しうる。」
(b5)「The position at which the plasma 533 is generated is located at a focal point of a parabolic mirror 534・・・」(第8欄10?11行)
(訳)「プラズマ533が発生する位置は、放物面鏡534の焦点位置にある。」
(b6)「FIG. 17 shows a soft X-ray generating apparatus of another embodiment of the present invention.」(第12欄54?55行)
(訳)「FIG.17は、本発明の他の実施形態による軟X線発生装置を示している。」
(b7)「The recovery of the excess krypton gas using liquid nitrogen traps, and the reflection of the soft X-rays radiated from the plasma 1703 into parallel beams 1705 using a parabolic mirror 1704 that has a multi-layer reflecting film on its surface are the same as in the previous embodiment.」(第12欄63?67行)
(訳)「液体窒素トラップを用いて過剰のクリプトンガスを回収する点、及び、表面に多層反射膜を有する回転放物面鏡1704を用いて、プラズマ1703から輻射された軟X線を、平行光束1705として反射する点は、前出の実施形態と同様である。」
(b8)「In this embodiment, a substantially hemispherical reflective mirror 1713 coated with a multi-layer reflective film is used in place of the soft X-ray filter 1510 of the previous embodiment. The center of the reflective mirror 1713 is located near the position of generation of plasma 1703.」(第13欄1?5行)
(訳)「本実施形態では、前出の実施形態における軟X線フィルタ1510に代えて、多層反射膜で被覆された略半球型の反射鏡1713が用いられる。反射鏡1713の中心は、プラズマ1703の発生位置付近に配置されている。」
(b9)「 The reflective mirror 1713 also reflects the soft X-rays back to or near the position of plasma generation.」(第13欄8?10行)
(訳)「この反射鏡1713はまた、該軟X線を、プラズマ発生位置又はその付近に反射する。」
(b10)「When the soft X-rays are reflected back to the point of plasma generation, the plasma 1703 is reheated. A higher temperature is maintained, resulting in an increase in the quantity of soft X-rays emitted from the plasma 1703.」(第13欄11?14行)
(訳)「軟X線がプラズマ発生の点に反射されると、プラズマ1703は再加熱される。高温が保たれ、プラズマ1703から出射される軟X線の量が増加する。」
(b11)「When the soft X-rays are reflected back to the point of plasma generation, a portion of the soft X-rays will travel in a direction such that they are subsequently reflected from the parabolic mirror 1704, thereby forming parallel beams 1705 of soft X-rays.」(第13欄15?19行)
(訳)「上記軟X線がプラズマ発生位置に反射されて戻ると、該軟X線の一部は次いで回転放物面鏡1704によって反射され、もって平行光束1705を形成するような方向に進行することになる。」
(b12)「In the above embodiments, a parabolic mirror is used to generate parallel beams, however, an ellipsoidal mirror may also be used to form converging or diverging soft X-ray beams.」(第14欄8?11行)
(訳)「上記実施形態では、平行光束を発生させるために放物面鏡が使用されているが、回転楕円面の反射鏡を使用して軟X線を集光あるいは発散させてもよい。」

上記甲第2号証の記載事項及び添付図面に記載された事項並びに当業者の技術常識を総合すると、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「波長約13nmあるいは約11nmの軟X線を発生させるのに、レーザープラズマX線源(LPX)を使用しうる軟X線の発生装置であって、
プラズマが発生する位置がその焦点位置にある回転楕円面の反射鏡と、
その中心がプラズマの発生位置付近に配置されている略半球型の反射鏡を有し、
略半球型の反射鏡は軟X線を、プラズマ発生位置又はその付近に反射し、
軟X線がプラズマ発生の点に反射されると、プラズマは再加熱されて高温が保たれ、プラズマから出射される軟X線の量が増加し、
軟X線がプラズマ発生位置に反射されて戻ると、軟X線の一部は次いで回転楕円面の反射鏡によって反射されて軟X線を集光させる、軟X線の発生装置。」(以下、これを「甲2発明」という。)

(2)甲2発明との対比
本件訂正発明1と、甲2発明を対比する。
(あ)「波長約13nmあるいは約11nmの軟X線」はEUV光であるから、甲2発明の「レーザープラズマX線源(LPX)」は、本件訂正発明1の「EUV光を放出するプラズマ光源」に相当する。
(い)同様に、「プラズマが発生する位置がその焦点位置にある回転楕円面の反射鏡」は、「回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラー」に相当する。
(う)甲2発明において「軟X線がプラズマ発生位置に反射されて戻ると、軟X線の一部は次いで回転楕円面の反射鏡によって反射され」ることは、本件訂正発明1において「プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射」することに相当するから、甲2発明の「略半球型の反射鏡」と本件訂正発明1の「補助集光ミラー」は、ともに、「球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射する補助集光ミラー」である点で一致する。
(え)また、甲2発明の「軟X線の発生装置」は、本件訂正発明1の「EUV光の光源ユニット」に相当する。

してみれば、両者は、
「EUV光の光源ユニットであって、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射する補助集光ミラーとを備える光源ユニット。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:補助集光ミラーが、本件訂正発明1では「反射したEUV光がプラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された」のに対して、甲2発明では、軟X線の一部は回転楕円面の反射鏡によって反射されるものの、その球心をプラズマ光源の位置からずらして配置するかどうか不明な点。

(3)判断
甲2発明が「軟X線がプラズマ発生の点に反射されると、プラズマは再加熱されて高温が保たれ、プラズマから出射される軟X線の量が増加」するという構成を有することから、少なくとも、略半球型の反射鏡の中心がプラズマの発生位置に配置されることは甲2発明において必須の事項であり、甲2発明において「略半球型の反射鏡の中心がプラズマの発生位置付近に配置されている」ことの「プラズマの発生位置付近」とは、略半球型の反射鏡によって反射された軟X線は、一部はプラズマ発生の点に反射され、残りは回転楕円面の反射鏡に向かって反射されることに対応するものであることは明らかである。
このことは、甲2発明は、略半球型の反射鏡の球心をプラズマ光源の位置からずらして配置することを排除するものである。
してみると、本件訂正発明1と甲2発明は同一ではない。
また、本件訂正発明9は、本件訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、同様の理由により甲1発明と同一ではない。
なお、請求人は、甲第2号証には、i)反射鏡がプラズマからの光をプラズマ発生位置に反射する場合、及び、ii)反射鏡がプラズマからの光をプラズマ発生位置の近傍に発射する場合の、異なる2つの態様が記載されている旨主張している(口頭審理陳述要領書参照)。しかしながら、イ)甲第2号証には、態様が異なることを直接的に記載又は示唆する記載が認められないこと、及び、ロ)甲2発明は単一の実施例から認定されるものであること、等を考慮すれば、請求人の上記主張は採用することができない。

(4)小括
よって、請求人の主張する無効理由2によっては、本件特許を無効とすることはできない。

3.無効理由3について

その(1)
(イ)甲第4号証に記載された発明

本件の特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。
(c1)「【請求項1】光軸に沿って反射鏡、発光源および被投写体を配置し、前記発光源から出力した光を前記反射鏡で反射して前記被投写体に照射するようにした投写用光源装置において、前記反射鏡の開口端の外周側にほぼリング状の補助反射鏡を設け、この補助反射鏡は、前記発光源から前記被投写体側に出力して前記被投写体外を照射する光を、前記反射鏡を介して前記被投写体に照射する形状に形成され、前記発光源から出力した光が直接前記反射鏡で反射して前記被投写体に照射する第1の照射光と、前記発光源から出力した光が前記補助反射鏡を介してから前記反射鏡で反射して前記被投写体に照射する第2の照射光とのうち、一方が前記光軸と平行な光より若干内側に集光し、他方が前記光軸と平行になるか、または前記光軸と平行な光より若干外側に発散するかのいずれかとなるように、前記反射鏡および補助反射鏡を形成してなることを特徴とする投写用光源装置。
【請求項2】反射鏡を放物面鏡で形成し、補助反射鏡をリング状の球面鏡で形成し、前記反射鏡の焦点を発光源の発光中心から前記反射鏡側に若干ずれた位置に配置し、前記補助反射鏡の球面中心を、前記反射鏡の焦点と前記発光源の発光中心との中点の位置と、前記中点から前記反射鏡側に若干ずれた位置とのいずれか一方に配置してなる請求項1記載の投写用光源装置。」
(c2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発光源から出力した光を反射鏡で反射して被投写体(例えば液晶ライトバルブ)に照射することによって、被投写体の映像をスクリーンなどに投写する投写装置(例えば液晶プロジェクタ)に用いられる光源装置の改良に関する
ものである。」
(c3)「【0007】しかしながら、図6に示した提案例では、反射鏡50の焦点を発光源10の発光中心11から反射鏡50側に若干ずれた位置に配置するとともに、補助反射鏡56の球面中心を発光源10の発光中心11の位置に一致させることによって、発光源10から反射鏡50側に出力した光が反射鏡50で反射して液晶ライトバルブ26に照射する光51、51の輝度分布(すなわち第1の照射光の輝度分布)と、発光源10から液晶ライトバルブ26側に出力した光が補助反射鏡56で反射し、反射鏡50で反射して液晶ライトバルブ26に照射する斜線部53の光の輝度分布(すなわち第2の照射光の輝度分布)とが一致していたので、液晶ライトバルブ26の照射面の光量分布が図7に示したようになり、周辺光量比が低下するという若干の問題点があった、
【0008】すなわち、中央部の輝度Kcに対する周辺部の輝度Khの割合である周辺光量比((Kh/Kc)×100)が低くなる(例えば10%以下になる)という問題点があった。周辺光量比が低下するとともに光の利用率の低下を招くという若干の問題点もあった。本発明は上述の問題点に鑑みなされたもので、光の利用率を向上させることができ、しかも、周辺光量比を改善させることのできる投写用光源装置を提供することを目的とするものである。」
(c4)「【0010】
【作用】発光源から反射鏡側に出力した光は、反射鏡で反射し第1の照射光として被投写体に照射する。発光源から被投写体側に出力した光のうち直接被投写体を照射しない光は、リング状の補助反射鏡で反射して一旦反射鏡側に戻り、ついで反射鏡で反射し第2の照射光として被投写体に照射する。このとき、第1、第2照射光の一方が光軸と平行な光より若干内側に集光し(収束し)、他方が光軸と平行な光か、または光軸と平行な光より若干外側に発散するように、反射鏡および補助反射鏡が形成されているので、第1、第2照射光が一致していた提案例に比べて、被投写体の照射面の中央部に照射する光の輝度が緩和され、かつ被投写体の照射面の周辺部に照射する光の輝度が強くなり、結果として周辺光量比が大きくなる。」
(c5)「【0019】前記実施例では、補助反射鏡の球面中心Oを、発光源の発光中心11と反射鏡の焦点Fの中点Mより若干反射鏡側にずらした位置に配置して、第2照射光63、63を光軸13と平行な光より若干外側に発散させるようにしたが、本発明はこれに限るものでなく、補助反射鏡の球面中心Oを、発光源の発光中心11と反射鏡の焦点Fの中点Mの位置に配置して、第2照射光63、63を光軸13と平行な光としてもよい。
【0020】前記実施例では、発光源から出力した光が直接反射鏡で反射して被投写体に照射する第1照射光と、発光源から出力した光が補助反射鏡を介してから反射鏡で反射して被投写体に照射する第2照射光について、第1照射光を光軸と平行な光より若干内側に集光させ、第2照射光を光軸と平行にするか、または光軸と平行な光より若干外側に発散させるようにしたが、本発明はこれに限るものでなく、第1、第2照射光の一方を光軸と平行な光より若干内側に集光させ、他方を光軸と平行にさせるか、または光軸と平行な光より若干外側に発散させるものであればよい。
【0021】例えば、図3に示すように、第1照射光を光軸と平行な光と平行または若干外側に発散させ、第2照射光を光軸と平行な光より若干内側に集光させるようにしてもよい。すなわち、放物面鏡で形成された反射鏡60aは、その焦点Faを発光源10aの発光中心11aから液晶ライトバルブ26側に若干ずれた位置に配置し、補助反射鏡66aの球面中心Oaを、反射鏡60aの焦点Faと発光源10aの発光中心11aとの中点Maから液晶ライトバルブ26側に若干ずれた位置に配置して、実線矢印で示すように、第1照射光61a、61aを光軸13と平行な光より若干外側に発散させ、点線矢印で示すように、第2照射光63a、63aを光軸13と平行な光より若干内側に集光させるようにしてもよい。
【0022】なお、図3において、反射鏡60aの焦点Faを発光源10aの発光中心11aの位置に配置して第1照射光61a、61aを光軸13と平行な光としてもよい。この場合、補助反射鏡66aは、その球面中心Oaを発光源10aの発光中心11aより液晶ライトバルブ26側に若干ずれた位置に配置して、第2照射光63a、63aを光軸13と平行な光より若干内側に集光させる。また、図3において、15a、15aは発光源10aの電極を表わす。」
(c6)「【0023】前記実施例では、反射鏡を放物面鏡で形成し、補助反射鏡を球面鏡で形成したが、本発明はこれに限るものでなく、発光源から出力した光が直接反射鏡で反射して被投写体に照射する第1照射光と、発光源から出力した光が補助反射鏡を介してから反射鏡で反射して被投写体に照射する第2照射光とのうち、一方が光軸と平行な光より若干内側に集光し、他方が光軸と平行になるか、または光軸と平行な光より若干外側に発散するかのいずれかとなるように、形成されたものであればよい。
【0024】例えば、反射鏡を楕円放物面鏡(反射面を光軸に垂直な平面で断面したときの端面形状が楕円となるもの)や光軸方向に離心率の大きい楕円面鏡で形成し、補助反射面をリング状の楕円面鏡で形成するようにしてもよい。つぎに、補助反射面をリング状の楕円面鏡で形成する場合について考察する。すなわち、図4に示すように、中心Ob、長軸A、短軸B、第1、第2焦点F1、F2の楕円Dの長軸Aを光軸13に一致させるとともに、光軸13の回りに回転させて回転楕円面を形成し、この回転楕円面の一部をリング状に切り取った形状の反射面をもつ補助反射鏡66bを形成する。
【0025】そして、第1焦点F1の位置に発光源の発光中心を一致させ、第2焦点F2の位置に放物面鏡に形成された反射鏡10bの焦点を一致させて配置すると、発光源から出力した光70は、実線矢印で示すように、補助反射鏡66bで反射し、ついで第2焦点F2を通って反射鏡10bに入力するので、反射鏡10bで反射して被投写体側に照射する照射光73は、光軸13に平行な光となる。
【0026】このため、第2焦点F2を反射鏡10bの焦点より反射鏡10b側に若干ずらした位置に配置した場合には、照射光73は光軸13に平行な光より若干外側に発散し、逆に第2焦点F2を反射鏡10bの焦点より被投写体側に若干ずらした位置に配置した場合には、照射光73は光軸13に平行な光より若干内側に集光する。このような性質を利用して第1、第2照射光の一方を光軸と平行な光より若干内側に集光させ、他方を光軸と平行にさせるか、または光軸と平行な光より若干外側に発散させるようにすればよい。」

上記甲第4号証の記載事項及び添付図面に記載された事項並びに当業者の技術常識を総合すると、甲第4号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「光軸に沿って反射鏡、発光源および被投写体を配置し、前記発光源から出力した光を前記反射鏡で反射して前記被投写体に照射するようにした投写用光源装置において、前記反射鏡の開口端の外周側にほぼリング状の補助反射鏡を設け、この補助反射鏡は、前記発光源から前記被投写体側に出力して前記被投写体外を照射する光を、前記反射鏡を介して前記被投写体に照射する形状に形成され、前記発光源から出力した光が直接前記反射鏡で反射して前記被投写体に照射する第1の照射光と、前記発光源から出力した光が前記補助反射鏡を介してから前記反射鏡で反射して前記被投写体に照射する第2の照射光とのうち、
反射鏡の焦点を発光源の発光中心の位置に配置して第1照射光とし、補助反射鏡は、その球面中心を発光源の発光中心より前記被投写体側に若干ずれた位置に配置して、
一方が前記光軸と平行な光より若干内側に集光し、他方が前記光軸と平行になるか、または前記光軸と平行な光より若干外側に発散するかのいずれかとなるように、前記反射鏡および補助反射鏡を形成してなる投写用光源装置。」(以下、これを「甲4発明」という。)

(ロ)対比・判断
本件訂正発明1と甲2発明の一致点・相違点は、上記「2.無効理由2について」の「(2)」に記載したとおりである。

請求人の主張する無効理由3は、いずれも、甲第2号証に記載の発明を出発点とした主張である(口頭審理調書参照)から、甲2発明に甲4発明を適用することにより、上記相違点に係る構成を充足できるか否かについて検討する。

甲4発明は「一方が前記光軸と平行な光より若干内側に集光し、他方が前記光軸と平行になるか、または前記光軸と平行な光より若干外側に発散するかのいずれかとなるように」することを前提とし、そのために「反射鏡の焦点を発光源の発光中心の位置に配置して第1照射光とし、補助反射鏡は、その球面中心を発光源の発光中心より前記被投写体側に若干ずれた位置に配置し」たものである。
すなわち、甲4発明において、「一方が前記光軸と平行な光より若干内側に集光し、他方が前記光軸と平行になるか、または前記光軸と平行な光より若干外側に発散するかのいずれかとなるように」することは必須のものであることがわかる。このことは、甲第4号証の各記載(上記摘記事項(C6)の段落【0023】等参照)からも明らかである。
これに対して、甲2発明は「プラズマ光源から出射されたEUV光を集光する」ことを前提とするものであって、略半球型の反射鏡(補助集光ミラー)によって反射されたEUV光も、回転楕円面の反射鏡(集光ミラー)を介して集光するものである。
このことを考慮すれば、甲4発明の反射鏡と補助反射鏡をそのまま甲2発明に適用することはできず、結局上記相違点に係る構成を充足することはできない。
くわえて、上記「2.無効理由2について」の「(3)」に記載したとおり、甲2発明は、略半球型の反射鏡の球心をプラズマ光源の位置からずらして配置することを排除するものであるから、たとえ甲4発明が「略半球型の反射鏡の球心をプラズマ光源の位置からずらして配置する」という構成を有するものであっても、甲2発明に甲4発明を適用することには、阻害要因があるといわざるを得ない。

(ハ)結論
してみると、本件訂正発明1は甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることは出来ない。

その(2)
(イ)甲第6号証に記載された発明

本件の特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。なお、訳は請求人の提出したものによる。

(d1)「This invention relates to improvements in light collection systems providing light beams for projectors, such as light valve projectors.」(第1欄5?8行)
(訳)「本発明は、光弁プロジェクタなどのプロジェクタ用の光束を提供する集光システムの改良に関する。」
(d2)「 Lamp 50 may typically be a high pressure xenon lamp with a 1,000 watt rating as provided by Conrad Hanovia or Optical Radiation Corp.」(第6欄1?4行)
(訳)「ランプ50は通常、コンラッド・ハノヴィア社あるいはオプティカル・ラディエーション社から供給されているような定格1,000ワットの高圧キセノンランプである。」
(d3)「With reference to FIGS. 3 and 4, it will be seen that ellipsoidal reflector 60 is formed as a full, uninterrupted surface of revolution and has a central opening 60a to slip over lamp 50.」(第6欄16?19行)
(訳)「第3図及び4を参照して、楕円反射鏡60は、完全で連続した回転楕円面として形成され、ランプ50を覆うための中央開口部60を有するものであることが理解される。」
(d4)「The compound reflector also includes a spherical reflector 64. As seen in FIGS. 2, 5 and 6, reflector 64 is formed as a full, uninterrupeted surface of revolution and includes a spherical reflecting surface forward of the arc gap 53 and positioned to collect light not collected by ellipsoidal reflector 60 and reflect this light back through gap 53 to ellipsoidal reflector 60.」(第6欄31?37行)
(訳)「複合反射器はまた、球面反射鏡64を含む。図2、5及び6に示されているように、反射鏡64は、完全で連続した回転面として形成され、アークギャップ53の直前にある球面の反射面を含み、楕円面を有する反射鏡60によって集光されなかった光を集光し、この光をギャップ53を通過させて楕円反射鏡60へ戻すように、配置されている。」
(d5)「Referring to FIG. 11, which shows an enlarged schematic view of the gap 53 between anode 51 and cathode 52 of arc lamp 50, it will be seen that the plasma or hottest part 93 of the arc 92 is concentrated adjacent cathode 52; the gap is approximately 4 mm. long, and the hottest part of the arc 93 is located 0.5 mm. to 1 mm. from the cathode end of the gap. Because the lamp is most brilliant at the plasma 93 of arc 92, the adjacent focus 94 of the ellipsoidal reflector is centered here. 」(第7欄1?9行)
(訳)「アークランプ50のアノード51とカソード52との間にあるギャップ53の拡大概略図を示す図11を参照して、プラズマあるいはアーク92の最も高温の部分93は、カソード52に隣接した位置に集中され、ギャップの長さは約4mmであり、アーク92の最も高温の部分93はギャップのカソード末端から0.5mm?1mmの位置に配置されていると理解される。ランプはアーク92のプラズマの位置において最も明るいことから、楕円反射鏡60の隣接する焦点94はここを中心とする。」
(d6)「However, the inventors have observed that the plasma 93 of the arc is not fully transparent. When spherical reflector 64 is positioned to reflect light from arc 92 back through the plasma of the arc, there is an 80 percent transmission loss. This loss is avoided, according to the invention, by positioning spherical reflector 64 with its center of curvature 96 displaced from focus 94 within arc 92 to a position closer to anode 51 which is relatively free of the arc.」(第7欄10?18行)
(訳)「しかしながら、本発明者らは、アークのプラズマ93は完全に透過性ではないことを見出した。球面の反射面を有する反射鏡64を、アーク92からの光がアークのプラズマを通過して戻るように配置すると、80%の透過損失が生じる。本発明によれば、球面の反射面を有する反射鏡64を、その曲率96の中心をアーク92内の焦点94からずらして、比較的アークの無いアノード51付近に配置することにより、この損失が回避される。」

上記甲第6号証の記載事項及び添付図面に記載された事項並びに当業者の技術常識を総合すると、甲第6号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「プラズマを用いたアークランプと、
アークランプの光を集光する楕円反射鏡と、
楕円反射鏡によって集光されなかった光を集光し、この光をアークギャップを通過させて楕円反射鏡へ戻すように配置されている球面反射鏡を有し、
球面反射鏡を、その曲率の中心をアーク内の焦点からずらして、比較的アークのないアノード付近に配置した、集光システム。」(以下、これを「甲6発明」という。)

(ロ)対比・判断
本件訂正発明1と甲2発明の一致点・相違点は、上記「2.無効理由2について」の「(2)」に記載したとおりである。

請求人の主張する無効理由3は、上記のとおり、いずれも、甲第2号証に記載の発明を出発点とした主張であるから、甲2発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点に係る構成を充足できるか否かについて検討する。

甲6発明は「アークのプラズマが完全に透過性でないことにより、光がアークのプラズマを通過すると透過損失を生じる」という知見(上記摘記事項(d6)参照)に基き、楕円反射鏡によって集光されなかった光を楕円反射鏡へ戻す際に、その光がアークのプラズマを通過しないように、球面反射鏡の曲率の中心をアーク内の焦点からずらしたものである。
つまり、甲6発明はプラズマ光源として、所定のギャップを有する電極間にアーク放電を発生させる(上記摘記事項(d5)参照)ものを前提としたものである。
これに対して、甲2発明のプラズマ光源は、EUV光を放出するプラズマ光源を前提としたものであって、そのような光源はよく知られたとおり(訂正明細書段落【0046】参照)レーザー光をターゲットに集光させる等の方法によりプラズマを発生させるものである。
すなわち、甲2発明と甲6発明のプラズマ光源は、その発生原理が異なり、それに伴って、両者のプラズマ光源の有する技術的意味が異なる。
そうであるから、甲6発明のアークのプラズマに関する技術をそのまま甲2発明に用いることは出来ない。
また、甲2発明には、甲6発明が前提とする上記のような知見に基づく課題は存在せず、甲6発明の楕円反射鏡と球面反射鏡を甲2発明に適用する動機付けが存在しない。
したがって、甲6発明によって上記相違点に係る構成を充足することは出来ない。
くわえて、上記「2.無効理由2について」の「(3)」に記載したとおり、甲2発明は、略半球型の反射鏡の球心をプラズマ光源の位置からずらして配置することを排除するものであるから、たとえ甲6発明が「球面反射鏡を、その曲率の中心をアーク内の焦点からずらして配置した」という構成を有するものであっても、甲2発明に甲6発明を適用することには、阻害要因があるといわざるを得ない。

(ハ)結論
してみると、本件訂正発明1は甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることは出来ない。

その(3)
(イ)甲第7号証に記載された発明

本件の特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。なお、訳は請求人の提出したものによる。

(e1)「The invention is in the field of light collecting reflectors for use with sources of light, the reflectors being adapted to direct light from a light source as a directional light beam.」(第1欄6?9行)
(訳)「本発明は、光源とともに使用するための集光反射器、光源からの光を指向性光束として方向付けするように構成された反射器の技術分野に属する。」
(e2)「The most common reflectors in use today, particularly in the stage lighting and projection fields, utilize a reflecting surface which is a portion of an ellipse.」(第1欄13?15行)
(訳)「今日最も一般的に、特にステージライトやプロジェクタ分野で使用される反射器は、楕円形の一部である反射表面を利用している。」
(e3)「It was a principal objective of the invention to provide a light collecting reflector which produces an improved, substantially uniform, light distribution over the cross-section of a projected light beam, to provide a light collecting reflector with improved light collection efficiency, and to achieve these objectives with a reflector economical enough to replace the standard ellipsoidal reflector in a majority of applications..」(第1欄45?52行)
(訳)「本発明の主たる目的は、改善された、実質的に均一な光分布を、投写される光束の断面に渡って生成する集光反射器を提供し、集光効率の改善された集光反射器を提供し、主要な用途において標準的な楕円反射器を代替するに十分な経済性を備える反射器をもって、これらの目的を達成することにあった。」
(e4)「FIG. 1 is a schematic representation of a section of a preferred stage spotlight incorporating the light-collecting reflector of the invention and showing the light source and its associated supporting socket in elevation.」(第2欄22?25行)
(訳)「図1は、本発明による集光反射器を導入した好ましいステージ用スポットライトの断面概略図であって、光源と、上昇した状態での関連するその支持ソケットとを示している。」
(e5)「The main reflector 12 has a central reflecting surface 12a which is parabolic in shape and an outer reflecting surface 12b peripherally surrounding the central reflecting surface and ellipsoidal in shape.」(第2欄60?63行)
(訳)「主反射鏡12は、放物線状の中央反射面12aと、この中央反射面の周囲を取り囲む楕円形状の外側反射面12bとを備えている。」
(e6)「The ideal light source for a system of this type is a point source located at the focus of the ellipse.」(第4欄1?2行)
(訳)「この種のシステムに理想的な光源は、楕円の焦点に置かれた点光源である。」
(e7)「While the pure ellipsoidal reflector tends to produce a light beam which is much brighter at its center than at other parts thereof, the reflector of the present invention gives a fairly uniform distribution of light intensity over the entire light beam.」(第4欄55?59行)
(訳)「純粋な楕円形の反射器は、他の部分に比べてその中心においてはるかに明るい光束を生成する傾向があるが、本発明による反射器は、光束の全体に渡って比較的均一な光の強度分布を与える。」
(e8)「The secondary reflector 13 has a composite arcuate reflecting surface 13a, in that it is made up of an infinite number of arcs, as at 13b and 13c, each having a radius emanating from a center, as at 13b' and 13c', located on a circle having its center on the central axis of the main reflector 12. Thus, the arcs 13b and 13c have radii 31 and 32, respectively.」(第4欄67行?第5欄5行)
(訳)「二次反射鏡13は、複合弧状反射面13aを有し、その中心が主反射鏡12の中心軸上にある円上に配置された中心13b’、13c’などから各々半径31、32を有する弧13b、13cなど無数の弧からなる。かくして、弧13b及び13cは、それぞれ半径31及び32を有する。」
(e9)「It is preferred that the reflected light not pass through the foci, or through a point on the central axis along the length of the filament as would happen if the secondary reflector were a portion of a sphere with its center being on the central axis along the length of the filament, because such light, when reflected, returns to the filament of the light source and tends to cause localized heating of parts of the filament, shortening filament life. With the center for each arc being away from the foci and away from the central axis, the additional heating of the filament is minimized while still maintaining a high degree of collection efficiency.」(第5欄8?20行)
(訳)「補助反射鏡13が球面の一部であって、その球心が光源のフィラメントの長さ方向の中心軸上にある場合に起きうるように、補助反射鏡13で反射された光は焦点あるいはフィラメントの長さ方向の中心軸を通過することになるようにしないのが好ましく、その理由は、光が、そのように反射されると、光源のフィラメントへ戻り、フィラメントの当該部分が局所的に加熱される原因となる傾向があり、フィラメントの寿命を縮めてしまうからである。上記弧の中心が焦点及び中心軸からずらされていれば、フィラメントのさらなる加熱を最小限にする一方、高い集光効率を維持することができる。」

上記甲第7号証の記載事項及び添付図面に記載された事項並びに当業者の技術常識を総合すると、甲第7号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「フィラメントを有する光源と、
放物線状の中央反射面とこの中央反射面の周囲を取り囲む楕円形状の外側反射面とを備えている主反射鏡と、
球面の一部である補助反射鏡を有し、
補助反射鏡の球心が、補助反射鏡で反射された光が焦点あるいはフィラメントの長さ方向の中心軸を通過しないように、焦点及び中心軸からずらされている、ライト。」(以下、これを「甲7発明」という。)

(ロ)対比・判断
本件訂正発明1と甲2発明の一致点・相違点は、上記「2.無効理由2について」の「(2)」に記載したとおりである。

請求人の主張する無効理由3は、上記のとおり、いずれも、甲第2号証に記載の発明を出発点とした主張であるから、甲2発明に甲7発明を適用することにより、上記相違点に係る構成を充足できるか否かについて検討する。

甲7発明は「補助反射鏡で反射された光が焦点あるいはフィラメントの長さ方向の中心軸を通過するように反射されると、フィラメントの当該部分が局所的に加熱され、フィラメントの寿命を縮めてしまう」という知見(上記摘記事項(e9)参照)に基き、補助反射鏡の球心を、焦点及び中心軸からずらして配置するものである。
すなわち、甲7発明は光源としフィラメントを有する光源を用いることを前提とした発明である。
これに対して、甲2発明は、EUV光を放出するプラズマ光源を前提としたものであるから、フィラメントを有する光源を前提とする甲7発明をそのまま甲2発明に適用することはできない。
さらに、甲2発明には、甲7発明が前提とする上記のような知見に基づく課題は存在せず、甲7発明を甲2発明に適用する動機付けが存在しない。
したがって、甲7発明によって上記相違点に係る構成を充足することはできない。
くわえて、上記「2.無効理由2について」の「(3)」に記載したとおり、甲2発明光源の加熱を促進するためのものであるのに対して、甲7発明は光源の加熱を避けるためのものであるから、甲2発明に甲7発明を適用することには、阻害要因があるといわざるを得ない。

(ハ)結論
してみると、本件訂正発明1は甲第2号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることは出来ない。

その(4)本件訂正発明2?4及び8?10について
本件訂正発明2?4及び8?10は、いずれも本件訂正発明1を直接又は間接に引用する発明である。
そして、上記のとおり、本件訂正発明1は甲第2号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2?4及び8?10も、同様の理由により、甲第2号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることは出来ない。

小括
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由3によっては、本件特許を無効とすることはできない。

4.無効理由4について
請求人の主張する無効理由4は、要するに、訂正後の請求項1の「該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された」の記載に関連して、補助集光ミラーの球心が、プラズマ光源の位置からどの程度ずらされているかについて、その程度が不明確であるから、本件訂正発明1は明確でない、というものである(審判事件弁駁書参照)。
これについて検討する。
本件訂正発明1は、「プラズマから発生した光は、そのプラズマによる吸収が大きい」(訂正明細書段落【0013】参照)という知見に基き、補助集光ミラーで反射されたEUV光がプラズマに吸収されないように(同【0016】)、補助集光ミラーの球心の位置をずらしたものである。
装置の構造や大きさ等の条件によってその大きさが異なるとしても、プラズマ光源が所定の大きさを有することは当業者にとって自明の事項である。そして、本件訂正発明1において、補助集光ミラーで反射されたEUV光が、その所定の大きさを有するプラズマ光源領域を避ける構成であることは、上記知見及び本件訂正発明1の目的に鑑みて明らかである。
訂正後の請求項1の「該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された」の記載は、まさにその構成を記載したものであって、プラズマ光源の大きさは、具体的な装置の構造や大きさ等の条件に基いて当業者が装置ごとに特定できるものであるから、当業者であれば、補助集光ミラーの球心を、プラズマ光源の位置からどの程度ずらすかは、明確に特定できる。
してみると、本件訂正発明1は明確である。
よって、請求人の主張する無効理由4によっては、本件特許を無効とすることはできない。

5.無効理由5について
請求人の主張する無効理由5は、要するに、訂正後の請求項5の「R>(t×c)/2」について、tがどのような長さであっても、Rがどのような大きさになったとしても上記式を満足する場合には必ず課題を解決しうるのか、本件出願時の技術常識に照らしても明らかでないから、本件訂正発明5は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない、というものである(審判請求書参照)。
これについて検討する。
訂正明細書の段落【0025】には、以下の記載がある。
「【0025】
請求項5記載の集光光学系によれば、前記第1の焦点の位置にプラズマ光源を置くと、該プラズマ光源から該補助集光ミラーまでの往復距離が、該プラズマ光源のパルス光の持続時間(t)と光速(c)の積からなる距離(t×c)よりも長くなるので該補助集光ミラー2で反射したEUV光が該プラズマ光源の位置へ戻ってきたときには、既にプラズマは消滅して、EUV光がプラズマによって吸収されることはない。」
当該記載は、本件出願時の技術常識に照らして妥当な程度のものであれば、tがどのような長さであっても、またRがどのような大きさでも、上記式を満足する場合には補助集光ミラーで反射したEUV光がプラズマ光源の位置へ戻ってきたときには、既にプラズマは消滅していることとなり、EUV光がプラズマによって吸収されることはないことを示している。
すなわち、tがどのような長さであっても、Rがどのような大きさになったとしても上記式を満足する場合には必ず課題を解決しうることが、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されている。
してみると、本件訂正発明5は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、請求人の主張する無効理由5によっては、本件特許を無効とすることはできない。

6.無効理由6について
請求人の主張する無効理由6は、要するに、
(1)本件訂正発明1の「反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された該補助集光ミラー」に関して、訂正明細書には、EUV光がプラズマによって吸収されることを避けることができたか否かの判断手法も、基準も記載されていないから、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない(審判事件弁駁書参照)。
(2)本件訂正発明5の「該プラズマ光源のパルス光の持続時間をtとし」に関して、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない(口頭審理調書参照)。
というものである。
これらについて検討する。
(1)プラズマ光源が所定の大きさを有することは、当業者にとって自明の事項であることは、上記「4.無効理由4について」で述べたとおりである。そして、当業者であれば、プラズマ光源の大きさを特定できることも上記のとおりである。してみれば、当業者であれば、「反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避ける」ために補助集光ミラーの球心を、プラズマ光源の位置からどの程度ずらすかを容易に見いだすことができる。
くわえて、訂正明細書の発明の詳細な説明(段落【0034】?【0036】参照)には、本件訂正発明1に対応する実施例1として「プラズマ光源のサイズ(直径)約500μm」のものに対して「補助集光ミラーの球心をプラズマ光源の位置よりも光軸に対して垂直方向に±0.25mmだけ各々ずれるよう傾けて配置」したものが開示されている。
これらのことから、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
(2)上記「5.無効理由5について」で述べたとおり、本件出願時の技術常識に照らして妥当な程度のものであれば、tがどのような長さであっても、またRがどのような大きさでも、本件訂正発明5は実施可能である。
くわえて、訂正明細書の発明の詳細な説明段落【0042参照)には、本件訂正発明5に対応する実施例2として「プラズマ光源のパルス光の持続時間tを2nsとした」ものが開示されている。
これらのことから、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
よって、請求人の主張する無効理由6によっては、本件特許を無効とすることはできない。

第6 むすび

以上のとおり、請求人の主張した無効理由及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。


よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
集光光学系、光源ユニット、照明光学装置および露光装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、集光光学系、照明光学装置および露光装置に関する。さらに詳細には、本発明は、5?50nm程度の波長を有するEUV光(極端紫外線)を用いて半導体素子などのマイクロデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造するのに使用される露光装置に好適な集光光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造用の露光装置は、マスク上に形成された回路パターンを投影光学系を介してレジストが塗布されたウエハ等の感光性基板上に投影転写する。
【0003】
この種の露光装置では、転写すべき回路パターンの微細化に伴って解像力の一層の向上が要求されており、露光光としてより短波長の光を用いるようになっている。近年、次世代装置として、5?50nm程度の波長を有するEUV(Extreme UltraViolet)光を用いる露光装置(以下、「EUVL(Extreme UltraViolet Lithography:極紫外リソグラフィ)露光装置」という)が提案されている。
【0004】
現在、EUV光を供給する光源として、以下に示す3つのタイプの光源が提案されている。
(1)SR(シンクロトロン放射光)を供給する光源
(2)レーザ光をターゲット上に集光し、ターゲットをプラズマ化してEUV光を得るLPP(Laser Produced Plasma)光源
(3)ターゲット物質からなる電極、あるいは電極間にターゲット物質が存在する状態で電極間に電圧を印加し、ターゲット材料をプラズマ化してEUV光を得るDPP(Discharge Produced Plasma)光源。
【0005】
以下、DPP光源およびLPP光源を「プラズマ光源」と総称する。
【0006】
EUV光はプラズマ光源から等方的に放出される。即ち、プラズマ光源は点光源と見なすことが出来る。プラズマ光源のサイズ(直径)は、50から500μmの程度である。
【0007】
図8に従来の集光光学系の一例を示す。集光ミラー2は、回転楕円面形状の反射面を有しており、その楕円面の第1の焦点(以下、第1の焦点という)にプラズマ光源1を配置すると、集光ミラー2で反射したEUV光は楕円面の第2の焦点(以下、第2の焦点という)に集光されて光源像3を形成する。集光ミラー2の第2の焦点を通り光軸に垂直な平面(以下、第2焦点面という)には、集光されずにEUV光源1から直接入射してくる光束を遮蔽するための絞り7が配置される。この絞り7の下流に照明光学系が配置される。
【0008】
上述の図8に示すような集光光学系では、プラズマ光源1から下流(図8では右側)へ進む光束の大半は集光ミラー2で集光することが出来ず無駄になってしまう。
このような下流へ進む光束も集光できるようにするためには、図9に示すような集光光学系が考えられる。
【0009】
プラズマ光源1から等方的に発散するEUV光の一部は、図8に示す従来の集光ミラーと同様に回転楕円面形状の反射面を有する集光ミラー2により集光されて第2焦点面に光源像3を形成する。一方EUV光の別の一部は、プラズマ光源1の位置を中心とする球面形状の反射面を有する補助集光ミラー4で反射されプラズマ光源1と同一の位置に一旦集光される。その後、集光ミラー2で反射されて光源像3と同一の位置に結像される。
【0010】
即ち、光源像3の位置には、プラズマ光源1の集光ミラー2による実像と、補助集光ミラー4と集光ミラー2を組み合わせた光学系による実像とが重畳されて形成される。
【0011】
この集光光学系では、プラズマ光源1から発散する光束を、より大きな立体角の範囲で光源像3へ導くことが出来るので、照明光学系へ導かれる光量が増加する。このような考え方にもとづく集光光学系は、プロジェクターの集光光学系などに既に実用化されている
(例えば、非特許文献1参照。)。
【0012】
【非特許文献1】
Panasonic DLP方式プロジェクター ライティアTH-D9610J商品情報[平成15年5月26日検索]、インターネット<http://panasonic.biz/projector/lightia/d9610/kido.html>
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
EUV光源として使用されるプラズマは、一般にEUV光を強く吸収する。プラズマ中から特定の波長のEUV光が発生するのは、原子に固有のエネルギー準位間を電子が遷移することによる。低いエネルギー準位へ遷移するときに光を発生し、逆に高いエネルギー準位へ遷移するするときに同じ波長の光を吸収する。従って、プラズマから発生した光は、本質的に、そのプラズマによる吸収が大きい。
【0014】
したがって、図9の集光光学系をそのままEUV露光装置へ適用することは出来ない。
【0015】
図9の集光光学系において、補助集光ミラー4で反射してEUV光源1位置へ戻ってきたEUV光は、プラズマにより吸収されてしまうので、実際には光源3位置まで到達することが出来ないからである。従って、集光されるEUV光の総量は増加しない。
【0016】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、補助集光ミラーで反射されたEUV光がプラズマにより吸収されないように集光光学系を構成して、集光されるEUV光の総和を増加させ、この集光光学系をEUV露光装置に適用して、スループットの大幅な向上を図ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は以下の手段を用いる。
【0018】
請求項1記載の集光光学系は、EUV光の光源ユニットであって、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点(楕円の焦点)に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された該補助集光ミラーとを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項1記載の光源ユニットによれば、該補助集光ミラーの球心が該プラズマ光源の位置とずらされているので、該補助集光ミラーにより形成される該プラズマ光源の像は該プラズマ光源位置には形成されない。したがって、該補助集光ミラーで反射されたEUV光がプラズマにより吸収されるのを避けることができる。
【0020】
また、請求項2記載の集光光学系は、前記補助集光ミラーの球心位置が、該集光ミラーの第1の焦点を通り光軸(楕円の軸と一致する)に垂直な平面(楕円鏡の第1焦点面と記す)内にあって、光軸から該プラズマ光源の半径以上ずらされていることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【0021】
請求項2記載の集光光学系によれば、該補助集光ミラーの球心が該プラズマ光源の半径以上ずらされているので、該補助集光ミラーにより形成される該プラズマ光源の像位置が半径以上ずれて該プラズマ光源位置には形成されない。したがって、該補助集光ミラーで反射されたEUV光がプラズマにより吸収されるのをより確実に避けることができる。
【0022】
また、請求項3記載の光源ユニットは、前記補助集光ミラーが、球心位置が異なる複数のミラーから構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項3記載の光源ユニットによれば、前記補助集光ミラーが、球心位置が異なる複数のミラーにより構成されていることにより後述のオプティカルインテグレータの入射面に形成される光源像の数が増加するので、照明光学系を通過した後のマスク面上での照度均一性が向上する。
【0024】
また、請求項5記載の集光光学系は、回転楕円面の反射面を有する集光ミラーと、該集光ミラーの第1の焦点に球心を有する球面からなる補助集光ミラーとを備え、プラズマ光源から出るEUVのパルス光を集光する集光光学系において、該補助集光ミラーの半径をRとし、該プラズマ光源の前記パルス光の持続時間をtとし、光速をcとするとき、R>(t×c)/2を満足することを特徴とする。
【0025】
請求項5記載の集光光学系によれば、前記第1の焦点の位置にプラズマ光源を置くと、該プラズマ光源から該補助集光ミラーまでの往復距離が、該プラズマ光源のパルス光の持続時間(t)と光速(c)の積からなる距離(t×c)よりも長くなるので該補助集光ミラー2で反射したEUV光が該プラズマ光源の位置へ戻ってきたときには、既にプラズマは消滅して、EUV光がプラズマによって吸収されることはない。
【0026】
また、請求項7記載の光源ユニットは、請求項5又は請求項6記載の集光光学系の前記第1の焦点に、EUV光を放出する前記プラズマ光源が置かれたことを特徴とする。
【0027】
請求項7記載の光源ユニットによれば、前記光源から該補助集光ミラーまでの往復距離が、該プラズマ光源のパルス光の持続時間(t)と光速(c)の積からなる距離(t×c)よりも長くなるので該補助集光ミラー2で反射したEUV光が該プラズマ光源の位置へ戻ってきたときには、既にプラズマは消滅して、EUV光がプラズマによって吸収されることはなく光量損失を良好に抑えてEUV光を集光させることができる。
【0028】
また、請求項8記載の光源ユニットは、前記集光ミラーが前記プラズマ光源に近い部分ミラーと遠い部分ミラーに分割されており、前記プラズマ光源に近い部分ミラーのみを取り外し交換できるように構成されていることを特徴とする。
【0029】
請求項8記載の光源ユニットによれば、反射面がプラズマ光源からの放射熱の影響およびEUV光の照射熱の影響を受けて、損傷の激しい部分ミラーだけを取り外して、容易に交換できる。
【0030】
また、請求項9記載の照明光学装置は、請求項1乃至4又は請求項7,8のいずれか1項に記載の光源ユニットと、該光源ユニットからのEUV光をマスクへ導くための照明光学系とを備えていることを特徴とする。
【0031】
請求項9記載の照明光学装置によれば、該光源ユニットからのEUV光を実質的に光量損失することなく供給でき、オプティカルインテグレータを用いて良好な照明条件のもとで所定のパターンが形成されたマスクを照明することができる。
【0032】
また、請求項10記載の露光装置は、所定のパターンが形成された反射型のマスクを照明するための照明光学装置と、前記照明光学装置によって照明されるべき被照射面に配置されたマスクを保持するマスクステージと、ウエハを保持するウエハステージと、前記マスクに形成された所定パターンを前記感光性基板に所定の縮小比でもって投影する投影光学系と、前記マスクに形成された所定パターンを前記ウエハに投影する際に、前記投影光学系に対して前記マスクステージと前記ウエハステージとを前記縮小比に応じた速度で同期して相対的に移動させる駆動装置とを備える露光装置において、前記照明光学装置として、請求項9に記載の照明光学装置を有することを特徴とする露光装置を提供する。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0034】
【実施例1】
図1に本発明の実施例である光源ユニットを示す。
【0035】
プラズマ光源1は回転楕円面形状の反射面を有する集光ミラー2の第1の焦点(楕円の焦点)に配置される。補助集光ミラー4a,4bは、その球心Ca,Cbがプラズマ光源1の位置よりも光軸0Aに対して垂直方向に±0.25mmだけ各々ずれるよう傾けて配置されている。プラズマ光源1から出射したEUV光の一部は、集光ミラー2で反射されて、楕円の第2焦点面上に光源像3を形成する。
【0036】
プラズマ光源1から出射したEUV光の他の一部は、補助集光ミラー4a,4bで反射されて、光軸0Aに対して垂直方向に±0.50mmだけ各々プラズマ光源1からずれた位置に光源像5a,5bを形成する。プラズマ光源1のサイズ(直径)は約500μmなので、光源像5a,5bはプラズマ位置と重なることは無く、プラズマによる吸収を避けることが出来る。光源像5a,5bは、集光ミラー2により反射されて、楕円の第2焦点面上に光源像6a,6bを形成する。楕円の第2焦点面には迷光を除去するための絞り7が設けられており、光源像3,6a,6bはこの絞り7に設けられた開口上に並置して形成される。絞り7の下流には照明光学系(後述)が設けられており、光源像3,6a,6bから発散する光束がそこへ導入される。絞り7は、光源ユニットと照明光学系等の配置された部分との間で差動排気を行うための真空隔壁を兼ねることが出来る。
【0037】
一般に、露光装置の照明光学系においては、ケーラー照明を行うために、光源から発散する光束を分割して複数の光源像を形成するためのオプティカルインテグレータが使用される。オプティカルインテグレータを使用することによりマスク上に照射される照明光の強度分布を均一にすることができる。
【0038】
本発明による光源ユニットの集光光学系では、集光光学系によって複数の光源像3,6a,6bが形成されるので、これをオプティカルインテグレータの機能の一部として使用することが出来る。
【0039】
図1では横から見た図を示したが、実際には図2(a)に示すように、補助集光ミラー4a?4dは四分割されており、焦点面には図2(b)に示すように5つの光源像3,6a?6dが形成される。オプティカルインテグレータの入射面に形成される光源像の数が増加するので、オプティカルインテグレータ出射面での照度均一性が向上する。
【0040】
図3(a)に示すように、補助集光ミラー4a?4hを八分割しても良い。この場合は、焦点面には図3(b)に示すように、9つの光源像3,6a?6hが形成される。なお、補助集光ミラーの分割方法は、上記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
集光ミラー2は、図4に示すよう、プラズマに近い位置の部分ミラー2aとプラズマから遠い位置の部分ミラー2bの二つに分割することもできる。特に、反射面がプラズマ光源1からの放射熱の影響およびEUV光の照射熱の影響を受けて、損傷の激しい部分ミラー2aだけを取り外して交換する必要が予想されるため、容易に交換可能な構成であることが望ましい。
【0042】
【実施例2】
図5に本発明の実施例である光源ユニットを示す。図5を参照すると、プラズマ光源1では、レーザ光源LSから発した光(非EUV光)がレンズ12および集光ミラー2の貫通孔を介して集光する。プラズマ光源1は回転楕円面形状の反射面を有する集光ミラー2の第1の焦点に配置される。この位置を中心とする球面形状の反射面を有する補助集光ミラー4が配置される。プラズマ光源1から出射したEUV光の一部は、集光ミラー2で反射されて、楕円の第2焦点面上に光源像3を形成する。プラズマ光源1から出射したEUV光の他の一部は、補助集光ミラー4で反射されて、プラズマ光源1と同一の位置に光源像3を形成する。プラズマ光源1から補助集光ミラー2までの距離は40cmとした。プラズマ光源にはレーザープラズマ光源(LPP)を使用し、プラズマ光源のパルス光の持続時間は2nsとした。プラズマ光源1から出射したEUV光は、補助集光ミラー2で反射してプラズマ光源1の位置に戻ってくるまでに80cmの距離を進行しなければならないので、そのためには2.7nsの時間を必要とする。プラズマ光源のパルス光の持続時間は2nsなので、パルスの最初に発生した光であっても、補助集光ミラー2で反射してプラズマ光源1の位置へ戻ってきたときには、既にプラズマは消滅している。従って、EUV光がプラズマによって吸収されることはない。この光源像から進行していく光束は、集光ミラー2で反射されて、楕円の第2焦点面上に光源像3を形成する。即ち、光源像3の位置には、プラズマ光源1の集光ミラー2による実像と、補助集光ミラー4と集光ミラー2を組み合わせた光学系による実像が、同一の位置に異なる時刻に形成される。楕円の焦点面には迷光を除去するための絞り7が設けられており、光源像3はこの絞り7に設けられた開口上形成される。絞りの下流には照明光学系(不図示)が設けられており、光源像3から発散する光束がそこへ導入される。絞り7は、光源部と照明光学系等の配置された部分との間で差動排気を行うための真空隔壁を兼ねることが出来る。
【0043】
【実施例3】
図6に、本発明の第1の実施例である光源ユニットと、本出願人らによるロッド型オプティカルインテグレータ(特願2000-068114号)を用いた照明光学系とを用いたEUV露光装置の実施例を示す。
【0044】
図6は、本実施形態にかかる第1の投影露光装置の概略構成を示す図であり、投影露光装置は、大きく分けて光源ユニットLU、照明光学系IU、および投影光学系PLから構成される。これらは、真空状態でチャンバ内に置かれるか、少なくとも使用波長に対して吸収が少ない気体(ヘリウム等)で満たされてチャンバ内に置かれる。
【0045】
図6を参照すると、プラズマ光源1では、レーザ光源LSから発した光(非EUV光)がレンズ12および集光ミラー2の貫通孔を介して気体ターゲット13上に集光する。
【0046】
なお、レーザ光源LSは、直接レーザ光(非EUV光)が集光ミラー2の第2の焦点CP下流の照明光学系IUへ入射しないように光軸0Aに対して僅かに傾けて配置されるのが望ましい。ここで、例えばキセノン(Xe)からなる高圧ガスがガスノズル14より噴射されたガスが気体ターゲット13を形成する。気体ターゲット13は、集光されたレーザ光によりエネルギーを得てプラズマ化し、EUV光を発する。なお、気体ターゲット13は、集光ミラー2の第1の焦点に位置決めされている。したがって、プラズマ光源1から出射されたEUV光は、集光ミラー2の第2の焦点CPに集光される。一方、発光を終えたガスは回収手段11を介して吸引されて外部へ導かれる。また補助集光ミラー4は2つのミラーからなり、その球心がプラズマ光源1の位置よりも光軸0Aに対して垂直方向に各々±0.25mmだけずれるよう傾けて配置されている。
【0047】
照明光学系IUは、オプティカルインテグレータ10と凹面鏡M2及び凸面鏡M3で構成される結像系とから構成される。オプティカルインテグレータ10は、その入射端面10Fが集光ミラー2の第2の焦点CPの近傍に位置するように配置されており、オプティカルインテグレータ10の内壁面で反射して通過した光は出射端面10Bから射出される。
【0048】
オプティカルインテグレータ10の出射端面10Bから射出された光は、凹面鏡M2で反射され、凸面鏡M3で反射され、さらに凹面鏡M2で反射されて、反射型のマスクRを照明する。マスクRのデバイスパターン面とオプティカルインテグレータ10の出射端面10Bとは共役の関係となるようにする。図2を使って説明したように出射端面10Bがその面内が均一性良く照明されているため、マスクR面上も均一に照明される。
【0049】
投影光学系PLは、マスクR側から順に、凹面鏡M4、凸面鏡M5、凹面鏡M6及び凹面鏡M7から構成される。凹面鏡M4、凹面鏡M6及び凹面鏡M7は非球面形状に形成されている。例えばこの構成は、特開平9-251097号に開示されている。
【0050】
反射型のマスクRを反射した光は、投影光学系PLを経由してレジストが塗布されたウエハWにデバイスパターンを形成する。マスクRの照明領域は、マスクのデバイスパターンの領域よりも狭いので、図6において矢印で示されるように、マスクRとウエハWとを同期スキャンして、デバイスパターン全体を露光する。デバイスパターン全体が露光した後、次の露光領域にウエハをステップさせる。この動作を繰り返し、つまりステップアンドスキャン方式により、ウエハ全体に複数のデバイスパターンを形成する。
【0051】
なお、本実施例ではロッド型のオプティカルインテグレータを用いた例を示したが、特開平11-312638号公報に記載されているように、反射型のオプティカルインテグレータを用いることもできる。図7を参照しながら反射型のオプティカルインテグレータを用いたEUV露光装置の一例を説明する。
【0052】
本実施形態にかかる光源ユニットは、実施例3の図6に示す光源ユニットと同一構成であるので、重複する部分の説明は省略する。集光ミラー2の第2の焦点CPに集光したEUV光は、コリメータミラー15を介して一対のフライアイミラー16aおよび16bからなるインテグレータ16に導かれる。一対のフライアイミラー16aおよび16bとして、たとえば特開平11-312638号公報において本出願人が開示したフライアイミラーを用いることができる。なお、フライアイミラーのさらに詳細な構成および作用については、たとえば特開平11-312638号公報における関連の記載を参照することができる。
【0053】
こうして、第2フライアイミラー16bの反射面の近傍、すなわちオプティカルインテグレータ16の射出面の近傍には、所定の形状を有する実質的な面光源が形成される。実質的な面光源からの光は、平面反射鏡17により偏向された後、視野絞り(不図示)を介して、マスクR上に細長い円弧状の照明領域を形成する。照明されたマスクRのパターンからの光は、投影光学系PLを介して、ウェハW上にマスクパターンの像を形成する。
【0054】
投影光学系PLは、マスクR側から順に、6枚のミラーで構成している。例えば、この構成は特開平11-312638号公報に開示されている。
【0055】
なお、上述の実施形態では、集光光学系としてプラズマ光源1は回転楕円面形状の反射面を有する集光ミラー2の第1の焦点(楕円の焦点)に配置され、補助集光ミラー4a,4bは、その球心がプラズマ光源1の位置よりも光軸0Aに対して垂直方向に±0.25mmだけ各々ずれるよう傾けて配置されている。
【0056】
しかしながら、これに限定されることなく、集光光学系は、回転楕円面の反射面を有する集光ミラーと、該集光ミラーの第1の焦点に球心を有する球面からなる補助集光ミラーとを備える集光光学系において、該補助集光ミラーの半径をRとし、プラズマ光源のパルス光の持続時間をtとし、光速をcとするとき、R>(t×c)/2を満足するように配置することもできる。
【0057】
また、上述の実施形態では、プラズマ光源としてLPPタイプの光源を用いているが、これに限らず、DPPタイプの光源を用いることもできる。
【0058】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、補助集光ミラーの球心位置をプラズマ光源位置より僅かにずらすことにより、補助集光ミラーで反射されたEUV光がプラズマにより吸収されなくなる。これにより、従来よりずっと多くのEUV光を効率よく集光可能となる。また、このように集光効率が大幅に増加した光源ユニットを露光装置に適用することにより、スループットの大幅な向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、本発明では、プラズマ光源から補助集光ミラーまでの往復距離を、プラズマ光源のパルス光の持続時間と光速の積からなる距離よりも長くすることにより、プラズマ光源から出たEUV光が補助集光ミラーで反射して戻ってくるまでに、プラズマを消滅させて、補助集光ミラーで反射されたEUV光がプラズマにより吸収されなくなる。これにより、従来よりずっと多くのEUV光を効率よく集光可能となる。また、このように集光効率が大幅に増加した光源ユニットを露光装置に適用することにより、スループットの大幅な向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である集光光学系を示す図である。
【図2】補助集光ミラーの一例を示す図である。
【図3】補助集光ミラーの一例を示す図である。
【図4】本発明による集光ミラーを示す図である。
【図5】本発明による補助集光ミラーを用いた集光光学系を示す図である。
【図6】本発明による集光光学系を用いたEUV露光装置の一例を示す図である。
【図7】本発明による集光光学系を用いたEUV露光装置の一例を示す図である。
【図8】従来の集光光学系を示す図である。
【図9】従来の補助集光ミラーを用いた集光光学系を示す図である。
【主要部分の符号の説明】
1 ……プラズマ光源
2 ……集光ミラー
3 ……光源像
4 ……補助集光ミラー
10……オプティカルインテグレータ
11……回収手段
12……レンズ
13……気体ターゲット
LS……レーザー光源
LU……光源ユニット
IU……照明光学系
PL……投影光学系
R ……マスク
W ……ウエハ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】EUV光の光源ユニットであって、
EUV光を放出するプラズマ光源と、
回転楕円面の反射面を有し、その第1の焦点に該プラズマ光源が置かれた集光ミラーと、
球面の反射面を有し、前記プラズマ光源から出射されたEUV光の一部を前記集光ミラーに向けて反射し、該反射したEUV光が前記プラズマ光源のプラズマによって吸収されることを避けるよう、球心が該プラズマ光源の位置からずらされて配置された該補助集光ミラーとを備えることを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】前記補助集光ミラーの球心位置が、該集光ミラーの第1の焦点を通り光軸に垂直な平面内にあって、光軸から該プラズマ光源の半径以上ずらされていることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】前記補助集光ミラーは、球心位置が異なる複数のミラーから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光源ユニット。
【請求項4】前記補助集光ミラーは、少なくとも4つのミラーから構成されていることを特徴とする請求項3に記載の光源ユニット。
【請求項5】回転楕円面の反射面を有する集光ミラーと、該集光ミラーの第1の焦点に球心を有する球面からなる補助集光ミラーとを備え、プラズマ光源から出るEUVのパルス光を集光する集光光学系において、
該補助集光ミラーの半径をRとし、該プラズマ光源の前記パルス光の持続時間をtとし、光速をcとするとき、R>(t×c)/2を満足することを特徴とする集光光学系。
【請求項6】前記補助集光ミラーの半径が30cm以上に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の集光光学系。
【請求項7】請求項5又は請求項6記載の集光ミラーの前記第1の焦点に、EUV光を放出する前記プラズマ光源が置かれたことを特徴とする光源ユニット。
【請求項8】前記集光ミラーは前記プラズマ光源に近い部分ミラーと遠い部分ミラーに分割されており、前記プラズマ光源に近い部分ミラーのみを取り外し交換できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4又は請求項7のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項9】請求項1乃至4又は請求項7,8のいずれか1項に記載の光源ユニットと、該光源ユニットからのEUV光をマスクへ導くための照明光学系とを備えていることを特徴とする照明光学装置。
【請求項10】所定のパターンが形成された反射型のマスクを照明するための照明光学装置と、
前記照明光学装置によって照明されるべき被照射面にマスクを保持するマスクステージと、
ウエハを保持するウエハステージと、前記マスクに形成された所定パターンを前記感光性基板に所定の縮小比でもって投影する投影光学系と、
前記マスクに形成された所定パターンを前記ウエハに投影する際に、前記投影光学系に対して前記マスクステージと前記ウエハステージとを前記縮小比に応じた速度で同期して相対的に移動させる駆動装置とを備える露光装置において、
前記照明光学装置として、請求項9に記載の照明光学装置を有することを特徴とする露光装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2003-196194(P2003-196194)
審決分類 P 1 113・ 536- YA (H01L)
P 1 113・ 121- YA (H01L)
P 1 113・ 161- YA (H01L)
P 1 113・ 113- YA (H01L)
P 1 113・ 537- YA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 吉川 陽吾
村田 尚英
登録日 2008-05-09 
登録番号 特許第4120502号(P4120502)
発明の名称 集光光学系、光源ユニット、照明光学装置および露光装置  
代理人 須田 洋之  
代理人 黒木 義樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 阿部 寛  
代理人 辻居 幸一  
代理人 阿部 寛  
代理人 上杉 浩  
代理人 谷口 信行  
代理人 西島 孝喜  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 池田 正人  
代理人 黒木 義樹  
代理人 池田 正人  
代理人 城戸 博兒  
代理人 柏岡 潤二  
代理人 吉田 和彦  
代理人 柏岡 潤二  
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