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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 B65B |
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管理番号 | 1264534 |
審判番号 | 無効2010-800116 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-07-09 |
確定日 | 2012-09-24 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4334115号「ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置」の特許無効審判事件についてされた平成23年1月25日付け審決に対し、知的高等裁判所において審決取消の決定(平成23年6月27日、平成23年(行ケ)第10078号)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 全文訂正明細書のとおりの訂正を認める。 特許第4334115号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件特許第4334115号は、平成12年7月10日に出願され、平成21年7月3日に設定登録がなされたものである。 また、本件無効審判請求後、一次審決までの手続の経緯は、以下のとおりである。 無効審判請求 :平成22年 7月 9日 答弁書提出 :平成22年 9月27日 証拠申出書(請求人) :平成22年11月 1日 口頭審理陳述要領書提出(請求人) :平成22年12月17日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人) :平成22年12月28日 証拠申出書(請求人) :平成23年 1月 5日 口頭審理 :平成23年 1月14日 一次審決 :平成23年 1月25日 (2)これに対し、平成23年3月4日に、被請求人から、上記一次審決の取り消しを求め、知的財産高等裁判所に訴えが提起され、平成23年6月1日に訂正審判(訂正2011-390069号、その後、特許法第134条の3第4項の規定によりみなし取下げ)が請求され、知的財産高等裁判所において、特許法第181条第2項の規定により、「特許庁が無効2010-800116号事件について平成23年1月25日にした審決を取り消す。」との決定(平成23年(行ケ)第10078号、平成23年6月27日決定)がされ確定した。そして、訂正請求後の手続の経緯は、以下のとおりである。 訂正請求 :平成23年 7月 8日 訂正拒絶理由通知 :平成23年 7月14日 職権審理結果通知 :平成23年 7月14日 意見書提出(請求人) :平成23年 8月18日 弁駁書提出(請求人) :平成23年 8月18日 意見書提出(被請求人) :平成23年 8月18日 答弁書提出(被請求人) :平成23年 9月30日 2.訂正請求 2-1.訂正の内容 平成23年7月8日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許第4334115号に係る願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、以下の(1)?(3)のとおりに訂正するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとし、且つ生産能力を3000本/h±300本/hとしたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」 を以下のように訂正する。 「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとし、液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき、且つ生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)としたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の 「請求項1に記載のゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを108mmとし、前記搬送装置による間欠搬送の1サイクル中における移動/停止の分割割合を140°?160゜/220°?200゜としたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」 を以下のように訂正する。 「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとし、且つ生産能力を3000本/h±300本/hとしたゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを108mmとし、前記搬送装置による間欠搬送の1サイクル中における移動/停止の分割割合を140°?160°/220°?200°としたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」 (3)訂正事項3 本件特許明細書の段落【0007】を以下のように訂正する。 「【課題を解決するための手段】 本発明者等は上記した液揺れを防止すべく鋭意検討の結果、紙容器の移動時の加速度、減速度が液揺れに多大な影響を与えており、その加速度、減速度が或る限界に達すると、共振現象を含んだ液揺れが生じることで、振幅が急激に大きくなり、しかも、その限界点が、1サイクル中の移動/停止の分割割合を150゜/210°とし、生産能力を3000本/hとした時の加速度、減速度の最大値よりも少し低い位置にあり、紙容器を間欠搬送する際の1サイクルでの移動距離(搬送ピッチ)を短縮することで、加速度、減速度の最大値を下げて液揺れを抑制できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明のゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置は、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能な充填シール装置において、キャリアチェーンによる紙容器の搬送ピッチを115?105mmに設定し、且つ生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)とするという構成としたものである。この構成により、紙容器の搬送距離が従来の1ピッチ127mmに比べて、かなり小さくなっており、このため、間欠搬送の1サイクル中の移動/停止の分割割合を150°/210゜ とした場合における加速度、減速度が、従来の1ピッチ127mmに比べてかなり小さくなって、液揺れが急激に拡大する限界点を下回り、従って、液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき、生産能力3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)というような能力アップを図ることができる。ここで、上記した「胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能な充填シール装置」とは、胴部サイズが85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器のみ(例えば、85mm角の紙容器のみ、95mm角の紙容器のみ)を取り扱う充填シール装置はもちろん、上記範囲内の複数サイズの紙容器(例えば、85mm角と95mm角の紙容器)を取り扱う兼用充填シール装置、及び上記範囲内を含む複数サイズの紙容器(例えば、50、60、70、85、95mm角等の紙容器)を取り扱う兼用充填シール装置を含むことを意味しており、従って、これらの充填シール装置はいずれも本発明の範囲内となる。」 2-2.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1のうち、「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」を付加する訂正事項(以下、「訂正事項1a」という。)は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件訂正前の請求項1に係る発明においても有するとされていた効果(本件特許明細書の段落【0016】【発明の効果】に記載されている。)にすぎず、発明特定事項を何ら限定するものではないが、特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものでもない。 また、訂正事項1のうち、「生産能力を3000本/h±300本/hとし」を「生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)とし」とする訂正事項(以下、「訂正事項1b」という。)について検討すると、本件訂正後の「生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)」とは、「先行技術に示された生産能力を除くためのもので、いわゆる除くクレームに相当すると」の「訂正の原因」を考慮すれば、生産能力を「3000本/h」を超えて「3300本/h」までとすることを意味することは明らかである。よって、上記訂正事項1bは、本件訂正前の生産能力「3000本/h±300本/h」のうち3000本/h以下の生産能力を除外し、生産能力の範囲を減縮していることより、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、被請求人が平成23年8月18日付け意見書において主張するように、訂正事項1a及び訂正事項1bからなる訂正事項1は、全体としては、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 なお、被請求人は、平成23年8月18日付け意見書において、上記「訂正事項1a」及び「訂正事項1b」は、一体不可分の関係であると主張しているが、「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」ることと「3000本/h以下の生産能力を除外する」こととは、何ら関連性はなく、被請求人の一体不可分の関係であるとの主張には根拠がない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許無効審判の請求されていない請求項2において、引用する請求項1を上記訂正事項1により訂正したことに伴い、本件訂正前の請求項1の記載事項を追加し、独立請求項とする訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、上記訂正事項1及び2に伴い特許請求の範囲と整合しなくなった特許明細書の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、いずれの訂正事項も、本件訂正後の事項が願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書各号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件特許発明 本件特許第4334115号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとし、液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき、且つ生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)としたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」 4.請求人の主張及び証拠方法 請求人は、「第4334115号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、無効理由の概要は以下の(1)?(4)であると主張している。 (1)本件特許発明は、本件出願前に公知・公用となったU-H25A型機/U-IH25A型機に係る発明、及び、本件出願前に公知・公用となったEPU3000-M型機に係る発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明の特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)本件特許発明は、本件出願前に公知・公用となったEPU3000-M型機に係る発明、本件出願前に頒布された甲第23?25号証に記載された発明、本件出願前に公知・公用となったU-H25A型機/U-IH25A型機に係る発明、及び、本件特許の出願前に公知・公用となったUP-J20S型機に係る発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明の特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (3)本件特許発明は、「生産能力3300本/h」において、本件明細書の発明の詳細な説明にその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、特許法第36条第4項及び同条第6項第1号の規定の要件を満たしておらず、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (4)本件特許発明に関しては、特許を受けようとする発明が明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号の規定の要件を満たしておらず、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 また、請求人は、証拠方法として、以下の甲第1号証ないし甲第54号証を提出している。 [証拠方法] 甲第1号証:「月刊デーエフサロン」、No.251号、1999年3月25日発行、第84-85頁 甲第2号証:「月刊デーエフサロン」、No.247号、1998年10月25日発行、第30-35頁 甲第3号証:「月刊デーエフサロン」、No.235号、1997年9月25日発行、第12-15頁 甲第4号証:「日本食糧新聞」、1997年9月3日発行、第11頁 甲第5号証:「四国化工機株式会社・技術部・設計2課 ’97.8.21」の押印がされた納入先をジャパンパックとするU-H25A(403号機)の「仕様書」 甲第6号証:「機器受注伝票」(受注年月日:1997年03月31日) 甲第7号証:「四国化工機株式会社・技術部・設計2課 ’97.8.04」の押印がされた納入先をエロパック社とするUIH25A(403号機)の「仕様書」 甲第8号証:1997年8月18日付け「連絡書」 甲第9号証:組立図用の「部品リスト」(作成日;2000年4月7日) 甲第10号証:「組立図」(ICAD作図; 1997年2月7日) 甲第11号証:「加工部品リスト」(作成日;1997年4月4日) 甲第12号証:「部品図」(ICAD作図;1997年9月1日) 甲第13号証:「仕入明細」 甲第14号証:「商業送り状(COMMERCIAL INVOICE)」 甲第15号証:「船荷証券(BILL OF LADING)」 甲第16号証:「包装技術」1999年9月号、50?53頁、「液体紙容器角寸切替型高速充填機の開発」、平成11年(1999年)9月1日発行、社団法人 日本包装技術協会 甲第17号証:「(株)トッパンエンジニアリング・設計部 ’99.8.06」の押印がされた清州桜酒造株式会社宛の「EPU3000-M 60/70/85/95 充填シール機 取扱説明書」 甲第18号証:凸版印刷株式会社作成の設計図面 甲第19号証:EPU3000-M型機の「部分組図表」(1998年4月16日検図) 甲第20号証:凸版印刷株式会社宛の清洲櫻醸造の「発注書・検収書」 甲第21号証:実開昭62-185204号のマイクロフィルム 甲第22号証:特開2000-62109号公報 甲第23号証:特開平8-34402号公報 甲第24号証:特開平10-316222号公報 甲第25号証:特表平10-506082号公報 甲第26号証:株式会社三共製作所「SANDEXカム総合力タログ」、第A2、A3、A44-49、A54-57頁 甲第27号証:株式会社ディー・エヌ・ケーの「ホームページ」 甲第28号証:「月刊デーエフサロン」、N0.156号、1990年2月25日発行、第64-65頁 甲第29号証:「四国化工機株式会社・設計部 3.8.27」の押印がされた注文先を大日本印刷株式会社とするUP-J20Sの「仕様書」 甲第30号証:「JISハンドブック2009 7機械要素」の2038?2043頁、日本規格協会、2009年1月発行 甲第31号証:平成21年4月21日(発送日)付け「拒絶理由通知」(起案日は平成21年4月14日付け) 甲第32号証:平成21年6月2日付け「意見書」 甲第33号証:エロパック社からの「回答書」 甲第33-2号証:甲第33号証の日本語訳 甲第34号証:「清洲櫻醸造からの回答書」 甲第35号証:「凸版印刷の陳述書」 甲第36号証:「見積書」 甲第37号証:「 発注書兼製作依頼書」 甲第38号証:「厚木エンジニアリング(株)・設計部 ’99.4.06」の押印がされたメルシャン株式会社宛の「液体充填シール機 EPU3000-M型 仕様書」 甲第39号証:凸版印刷株式会社内で作成された「仕入商品機械販売稟議書」 甲第40号証:「見積書」 甲第41号証:「注文書控」 甲第42号証:「検収確認書」 甲第43号証:メルシャンからの「回答書」 甲第44号証:平成14年(行ケ)第213号審決取消請求事件の判決文 甲第45号証:「特許法概説〔第12版〕」、1997年12月20日発行、株式会社有斐閣、第77頁 甲第46号証:「陳述書」(U-H25A型機/U-IH25A型機の生産能カアップに関する技術説明書) 甲第47号証:「陳述書」(充填シール装置の生産能力に関する技術説明書) 甲第48号証:「陳述書」(停止時間及び3300本/hにおける最大加速度に関する技術説明書) 甲第49号証:牧野洋著「自動機械機構学」、発行所 日刊工業新聞社、1991年9月10日初版14刷発行、第8頁 甲第50号証:「月刊デーエフサロン」、N0.336号、2010年3月25日発行、第76-77頁 甲第51号証:CO-RO Food社からの「回答書」 甲第51-2号証:甲第51号証の日本語訳 甲第52号証:本件特許公報 甲第53号証:広辞苑(第五版、株式会社岩波書店、1998年発行)2362頁 甲第54号証:本件公開公報 なお、当事者間に甲第1ないし52号証の成立に争いはない。また、甲第53及び54号証は、平成23年8月18日付け弁駁書に添付されたものである。 5.被請求人の主張の概要 一方、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、以下のとおり、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。 U-H25A型機/U-IH25A型機及びEPU3000-M型機は、本件特許出願前に公然知られた発明、あるいは公然実施された発明ではない。 また、U-H25A型機/U-IH25A型機及び本EPU3000-M型機が、本件特許出願前に公然知られた発明、あるいは公然実施された発明である場合でも、 本件特許発明は、U-H25A型機/U-IH25A型機に係る発明、EPU3000-M型機に係る発明、UPJ20S型機に係る発明及び甲第23?25号証に記載された発明に記載された発明から当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明に該当しない。 さらに、本件特許発明に係る明細書及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項及び同条第6項第1号、あるいは、同条第6項第2号の規定の要件を満たしている。 そして、被請求人は、証拠方法として、以下の乙第1ないし8号証を提出している。 [証拠方法] 乙第1号証:米国特許第5488812号明細書 乙第2号証:特開平6-298226号公報 乙第3号証:知財高裁平成17年6月6日判決(平成17年(行ケ)10729号審決取消請求事件) 乙第4号証:知財高裁平成19年1月30日判決(平成18年(行ケ)10138号審決取消請求事件) 乙第5号証:「特許・実用新案審査基準第III部第I節」第1?6頁 乙第6号証:「特許・実用新案審査基準第II部第2章」第1?2頁 乙第7号証:「特許法概説〔第12版〕」株式会社有斐閣、1997年12月20日発行、第76、77頁 乙第8号証:平成17年3月28日、東京高等裁判所判決(平成16年(行ケ)第427号審決取消請求事件) なお、当事者間に乙第1ないし4号証の成立に争いはない。また、乙第5?7号証は平成23年7月8日付け訂正請求書に、乙第8号証は平成23年8月18日付け意見書にそれぞれ添付されたものである。 6.甲各号証の記載事項 甲第1、3-12、14-20、23-25、33、34及び46号証には、以下の各事項が記載されている。 [甲第1号証] 「製作メーカー別の「ホット充填包装機」機種構成一覧〔2〕」中に、以下の機種構成(第85頁)。 「製作メーカー 厚木エンジニアリング 供給方式 カートンブランクス(クチセン付き) 充填機名 EPU-3000M 容量 60・70・85・95角 充填能力(毎時) 3,000コ (ゲーブル) /容器形状 本体の価格 1億円 容器メーカー 凸版印刷」 [甲第3号証] 『「JAPAN PACK'97」回顧特集〔2〕/関係出展企業のシステム紹介』と題して、 (a) 「関係出展企業7社の出品システム ・・・ 【四国化工機】 (1)口栓付大型ゲーブル紙容器無菌充填機 「U-H25A型」 ・・・」(第12頁左欄)及び「U-H25A型機」の写真(第12頁) (b)「四国化工機の「新鋭システム」紹介 「JAPAN PACK'97」に出品・出展された同社の“新鋭システム”を以下に紹介したい。 【Pure-Pak U-H25 Aseptic】 『「【Pure-Pak U-H25無菌充填システム】」は、新しい大型ピュアパックカートン用の無菌充填機である。・・・ ・・・ 【システムの特徴】 (1)・・・ (2)一列のシステム・・・同機は中速(毎時2500個・Max2520個)の1列型機で・・・)』(第14頁左欄) [甲第4号証] 「紙容器充填機を初出品 口栓付ゲーブルトップU-H25A」と題して、 「四国化工機(株)・・・は、「口栓付大型紙容器ゲーブルトップ無菌充填機・U-H25A」をメーン出品する。同社が「ジャパンパック」で紙容器充填機を出品するのは初めてのことで、ブースには提携先の日本製紙の技術者が常駐する。紙容器充填機の出品は、乳業が主体だった顧客に加え清涼飲料業界にも今後販路を広めたいという狙いがある。「U-H25A」は、業界で初めての口栓が付いた二lのゲーブルトップ紙容器成型充填機であること。・・・充填能力は2500本/時だが、高能力化も可能。」及び「紙容器ゲーブルトップ無菌充填機」の写真。 [甲第5号証] (a)「仕様書図面目録」として 「No.名称 図面番号 ・・・ 4.総組立図 PL01A00A01BA 5.配置図(1) PL01B00A01BA 6.カートン図 B-4-0850850400-1583」 (b)「一般仕様 1)能力 MAX 2520カートン/時 (充填物により変わることがあり、ロングテストの後決定される) 2)カートンサイズ 750ml, 1000ml, 1500ml, 2000mlより2000mlを含む3種類を選択。 3)カートンスタイル アルミホイールカートン,2lスタイル,・・・エロパック図面 No.51010753 ・・・」(1頁) (c)「四国化工機株式会社」、名称「総組立図」、部品コード「PL01A00A01BA」とされた下記のCAD製作図。 上記図面に「111.2(1P)」の寸法記載。 (d)「SKDRW.No. B-4-0850850400-1583」、「ELOPAK CORPORATE OFFICE」、「51010753」等が右下に記載された下記の「カートンの展開面」。 上記図面に「85.0」の寸法記載。 [甲第6号証] 「機器受注伝票」であって、 ・「受注NO:641102」 ・「受注年月日:1997年03月31日」 ・「納入先:(149112)ELOPAK」 ・品名/品名コード「U-IH25A #403/U-L25A」 ・備考「ジャパンパック(’97.9/9-13)出展機.(出展後にエロパックヘ売却予定。)」 [甲第7号証] 上記甲第5号証と共通した「一般仕様」、「総組立図」及び「カートンの展開面」。 また、表紙に「工事NO.641102」。 [甲第8号証] ’97.8.18付けの「連絡書」であって、 ・発信元「東京支社 営企室 向井」 ・宛先「設2 西照統括課長殿、松田殿」 ・件名「ジャパンパック’97出展 U-IH25A 銘板の件」 ・「8月11日打合せのとおり、ジャパンパックに出展するU-IH25Aを名称変更し、「U-H25A」にします。出展する充填機の銘板をU-H25Aに変更して下さい。」 [甲第9号証] (a)「部品リスト」であって、 ・納入先名「ELOPAK A/S」 ・作成日「00-4-7」 ・受注No.「641102」 ・機種コード「U-L25A」(1?6頁) (b)「整理番号 部品コード 部品名 ・・・ 233 PL23C00A01AB コンベアホルダー」(3頁) [甲第10号証] 「’97.2,07」の印が左下に付された「四国化工機株式会社」、名称「コンベアホルダー」、部品コード「PL23C00A01AB 」とされたCAD製作図。 上記図面に「111.125」の寸法記載及び「初期伸びを含むとp111.2」の記載。 [甲第11号証] 「部品リスト(加工部品)」であって、 ・納入先名「ELOPAK A/S」 ・作成日「97-4-4」 ・受注No.「641102」 ・機種コード「U-L25A」 ・「整理番号 部品コード 部品名 ・・・ PL23C 003 PL23C00301AA コンベアチェーン」 [甲第12号証] 「’97.9.01」の印が左下に付された「四国化工機株式会社」、名称「コンベアーチェーン」、部品コード「PL23C00301AA 」とされたCAD製作図。 上記図面に「31.75」の寸法記載。 [甲第14号証] 「COMMERCIAL INVOICE(商業送り状)」であって、 ・会社名「CHUGAI BOYEKI CO.,LTD.」 ・Place & Date「TOKYO APR.22,1998」 ・for account and risks of「ELOPAK SYSTEMS AG」 ・Description of Goods「PAPER CARTON FORMING FILLING AND SEALING MACHINE(紙カートン形成、充填及びシーリング機械)」 ・MODEL「U-IH25」 ・M/C No.「403」 [甲第15号証] 「BILL OF LADING(船荷証券)」であって、 ・Shipper/Exporter「CHUGAI BOYEKI CO.,LTD., TOKYO」 ・Consignee「ELOPAK SYSTEMS AG」 ・Description of Packages and Goods「PAPER CARTON FORMING, FILLING AND SEALING MACHINE(紙カートン形成、充填及びシーリング機械)」 ・MODEL「U-IH25」 ・M/C No.「403」 ・Date at「TOKYO, JAPAN APR.21,1998」 [甲第16号証] 「液体紙容器角寸切替え型高速充填機の開発」と題し、 (a)「1.開発の歩み 当社の角寸兼用機の開発は、図1に示すように、時間生産能力1,500パックのロータリータイプの四角(容器底角寸法95,85,70,60mm角)兼用機をはじめとし,その後,時間能力2,000パック,直線タイプの3,000パック/hrの充填機を開発し,市場に導入してきた。」(第51頁左欄) (b)図1に「ゲーベルトップ」、「EPU3000-M(3000本/時)4角兼用機」の記載(第51頁) [甲第17号証] (a)「2)機械の仕様 1.機種 EPU3000-M60/70/85/95 充填シール機 2.能力 3000パック/時(容量によって変わります) 3.充填量 □60・・・ ・・・ □85 720ml、900ml、1000ml [能力3000パック/時] 1500ml、1800ml、2000ml」(第3-2頁) [甲第18号証] 「凸版印刷株式会社」と右下に記載された以下のCAD製作図。 上記図面に「127P×24=3048」の寸法記載及び右下に「16-51-A-0A-0」の記載。 [甲第19号証] (a)「部分組図表」であって、 ・検図「98.04.16」 ・機名「EPU3000-M」 ・名称「キャリア」 ・図番「16-51-C」 ・「附番 図番 名称 1 16-51-A-0A-0 キャリア 全体図及びNo.2-No.3用チェーンガイド配置図」 [甲第20号証] (a)平成11年2月10日付け「発注書」であって ・発注者「清洲櫻醸造株式會社」 ・宛先「凸版印刷株式会社」 ・「品名 EPU3000-M型充填ライン」 ・・・ 搬入予定 平成11年8月中 仕様 レイアウト図 LM-0792-10に基づく」 (b)機器の配置図面であって、 ・図番「LM-0792-10」 ・納入先「清洲桜醸造株式会社、凸版印刷株式会社関西支社 ・日付「11年2月4日」 ・名称「EP-PAK 充填設備」 (c)平成11年9月24日付け「検収書」であって ・宛先「凸版印刷株式会社」 ・品名「EPU3000-M型充填ライン」 ・搬入年月日「平成11年8月2日」 ・納入先「清洲桜醸造株式会社」 ・署名「清洲櫻醸造株式會社 代表取締役 柴山藤藏」 [甲第23号証] (a)「【発明が解決しようとする課題】上記の製造装置におけるシール部では、通常、シーラーの熱板により蓋材を1回又は2回熱シールした後、クーラーの冷却板により1回プレスを行うようにしている。そして、装置全体を出来るだけコンパクトにし、且つリテーナの搬送時における液揺れを極力なくすために、間欠搬送のピッチを短くとっているが、シーラーの駆動部であるエアシリンダはこのピッチに比べて大きいことから、2回シールの場合には各シーラーの間に空きステーションを設けているのが現状である。・・・」(【0003】) (b)「仮に、空きステーションを作らないようにして、大口径のエアシリンダを駆動部とするシーラーを配置しようとすると、リテーナの間欠搬送のピッチを大きくする必要がある。このようにピッチを大きくすると、間欠搬送時にカップ容器Cの内容物が液揺れにより零れる恐れがあるとともに、装置全体の大型化につながるという問題がでてくる。・・・」(【0021】) [甲第24号証] (a)「処理量増大の要求は、パッケージング機械に与えられる要求を増大している。本願発明者はパッケージング機械の処理量の一つの限界がその各種ステーション間で容器を搬送するのに使用されるコンベヤ装置の制御にあると認識している。容器を搬送するのに要する時間は、搬送される充填済み容器で経験される液体の擾乱程度にしたがってしばしば制限される。」(【0004】) (b)「・・・動作制御装置は試験動作プロファイルを実行するようにプログラムされる。特定の動作プロファイルの移動部分の変数は続く試験時に変更され、割り出しサイクルの必要とされる休止時間を一定に維持しつつ高速走行するようになされる。選択的に、最速で達成された移動時間が一定に保持され、休止時間が変化されて許容できる性能を与える休止時間範囲を決定するようになされる。これらの試験サイクルは、許容できる擾乱を生じる最短移動時間が明白となるまで実行される。特定動作プロファイルに関する最適変数が決定された後、他の動作プロファイルを使用して試験サイクルが実行される。実際的な範囲の可能とされる動作プロファイルが完了するまで、広い範囲で動作プロファイルの形式が試験される。」(【0053】) [甲第25号証] 「パッケージング機により充填されて密封されるべき容器はパッケージング機を通して一つの処理部から次の処理部まで割り出される。割出し速度が高速であることがパッケージング機全体の処理能力には貢献するが、特に、充填されているが密封されていない容器が数々の処理部間を搬送される間に『はねかえり』が起こるため、割出し速度は制限される。容器のはねかえりは割出し運動における突然の開始および停止により生じる。はねかえりのために容器の中身がカートン頂部の密封領域へはね、後に続く密封動作を完全に行うことができなくなってしまう。さらに容器の中身がパッケージング機の内部にはねてしまうため、例えば頻繁に清掃したりメンテナンスしたりする必要性が発生するため、パッケージング機の性能が低下する。」(第9頁9?18行) [甲第33号証] 2010年12月10日付けのエロパック社知的財産部部長 Christine Orhagenによる四国化工機株式会社機械生産技術本部技術二部部長 久米聡への「回答書」であって、 「1.エロパック社は、四国化工機株式会社よりU-IH25Aを購入し、1999年9月にCO-RO Foodに設置しました。 2.エロパック社は、U-IH25A機の購入前及び購入後に、U-IH25Aの仕様書を確認しました。したがって、エロパック社は、U-IH25Aのコンベア間欠送りピッチが111.2mmであることを認識していました。 3.当時、エロパック社は、U-IH25Aの111.2mmのコンベア間欠送りピッチについて秘密保持義務を有していたとは認識しておりませんでした。さらに、エロパック社は、ある充填シール機を購入した後に、そのような装置のコンベア間欠送りピッチを秘密保持義務の対象にすべきとの慣習や業界常識などはなかったと理解していました。 4.エロパック社は、U-IH25AをCO-RO Foodに設置したときに、コンベア間欠送りピッチについての秘密保持義務を、CO-RO Foodに課しませんでした。」 [甲第34号証] 平成22年12月7日付けの清洲櫻醸造株式会社製品部課長 小島功による凸版印刷株式会社知的財産部部長 八角淳二への「回答書」であって、 「1.弊社は、凸版印刷株式会社からEPU3000-M型機を購入し、平成11年9月24日に検収いたしました。当時、私は、責任者として、同機の検収に立ち会いました。 2.弊社は、EPU3000-M型機を購入後、凸版印刷株式会社の技術員立会いの下、充填スピード等の条件設定を行い、同機を用いて、85mm角のゲーベルトップ型紙容器の製品を3000本/hで実際に生産いたしました。また、同機については、導入後、定常的にメンテナンスを行っています。 3.当時、EPU3000-M型機の仕様について、弊社が秘密保持義務を有しているとは認識しておりませんでした。また、この種の充填シール装置を購入した後、その装置の仕様を秘密保持の対象とすべきという慣習や業界常識などはなかったと理解しております。」 [甲第46号証] 平成22年12月16日付けの四国化工機株式会社機械生産技術本部技術2部設計1課主任技師 松田勝による「陳述書(U-H25A型機/U-IH25A型機の生産能力アップに関する技術説明書)」であって、 「U-H25A型機/U-IH25A型機(以下、単に「U-IH25A型機」と表示します。)の生産能力を2520本/hから、少なくとも2900本/hに能力アップすることが容易であったことを以下に説明いたします。 1.U-IH25A型機の生産能力を2520本/hより高くすることを制限していた仕様 U-IH25A型機の生産能力を2520本/hより高くすることを制限していた仕様として、主に2つの仕様が挙げられます。1つは、果肉入り充填物に対応する仕様であること、もう1つは、無菌充填仕様であることです。 (1)果肉入り充填物に対応する仕様 ・・・バネ式チャッキ弁方式のノズルを用いていることは、U-IH25A型機の生産能力を2520本/hより高くすることを制限している主な要因の1つです。 (2)無菌充填仕様 ・・・U-IH25A型機は、充填物の充填を無菌チャンバー内で行う無菌充填仕様が採用されており、充填部でのカートン容器のツマリ等のトラブルの頻度を可能な限り低下させる目的で、充填時における容器の押し上げを行わない方式が採用されています。・・・ このように、充填時に容器の押し上げを行わない方式を採用していることは、U-IH25A型機の生産能力を2520本/hより高くすることを制限している主な要因の1つです。 2. U-IH25A型機の生産能力アップが可能であることについて。 上記1.で述べたように、U-IH25A型機は、果肉入り充填物に対応する仕様であるため、バネ式チャッキ弁方式の充填ノズルを採用しており、また、無菌充填仕様であるため、充填時に容器の押し上げを行なわない方式を採用しているために、生産能力が2520本/hに留まっています。しかし、充填物として清酒を主として想定した場合など、固形物を含む充填物への対応が不要であれば、高速充填に最も適したメッシュノズルを使用することができます。また、清酒の中では通常、菌が繁殖しないため、清酒用の充填シール装置は通常無菌充填仕様ではありません。したがって、充填物として清酒を主として想定した場合は、メッシュノズルを採用した上で、さらに、充填時に容器の押し上げを行う方式を採用するのがむしろ一般的だといえます。・・・ このように、U-IH25A型機の充填ノズルをメッシュノズルに代え、また、充填時の容器の押し上げを行う方式に変更すれば、2520本/hの生産能力を、少なくとも2900本/hに能カアップすることは容易でした。・・・」 7.当審の判断 7-1.「U-H25A型機」及び「EPU3000-M型機」の公然実施について ・「U-H25A型機」は、 甲第3-5号証より、1997年に開催された「JAPAN PACK’97」へ、販売のために出品・展示されたものと認められ、 甲第6、7、14、15及び33号証より、その後、名称を「U-IH25A型機」として(「JAPAN PACK’97」の際に名称を「U-H25A型機」としたことは甲第8号証に記載。)、1998年にエロパック社へ輸出販売されたものと認められる(「U-IH25A型機」は、「U-H25A型機」と同一の物と認められることより、以下「U-H25A型機」の名称を用いる。)。 上記「JAPAN PACK’97」での展示は、その展示状況より不特定多数の来場者に対して同機の仕様等を知りうる状態で行われたものと認められる。 また、エロパック社へ輸出販売された際にも、甲第33号証よりエロパック社に対して同機の仕様等についての守秘義務等を課したものでもない。 よって、「U-H25A型機」は、本件特許出願前に公然と譲渡のための展示及び譲渡されていたもの、すなわち公然実施されていたものと認められる。 ・「EPU3000-M型機」は、 甲第17、20及び34号証により、平成11年に清洲櫻醸造株式会社へ販売されたものと認められる。 また、清洲櫻醸造株式会社へ販売された際に、甲第34号証より清洲櫻醸造株式会社に対して同機の仕様等についての守秘義務等を課したものでもない。 よって、「EPU3000-M型機」は、本件特許出願前に公然と譲渡されていたもの、すなわち公然実施されていたものと認められる。 なお、被請求人は、答弁書において『生産能力を特定した発明が「公然実施された発明」であるためには、その生産能力を有する充填シール装置の発明が技術的に理解される状況又は技術的に理解されるおそれのある状況、すなわち、その発明に係る生産能力をどのようにして実現するか技術的に理解される状況又は技術的に理解されるおそれのある状況で実施される必要がある。』(第10頁下から3行?第11頁3行)と主張しているが、公然実施された発明における「生産能力」を特定するには、その「生産能力」が実施されていることを認識できれば足りるものであり、そのための実現手段についてまで認識する必要があるとする理由はない。 7-2.公用発明 ・「U-H25A型機」は、 甲第3、5及び7号証より、胴部サイズが85mm角のゲーブル紙容器に対して生産能力が2520本/hであり、 また、甲5、7、9-12号証より、搬送装置の搬送ピッチが111.2mmであるものと認められる。 よって、「U-H25A型機」は、以下の事項を備えているものと認められる。(この事項により特定される発明を、以下「公用発明1」という。) 「胴部サイズが85mm角のゲーブル紙容器に対して、搬送装置の搬送ピッチを111.2mmとし、且つ生産能力2520本/hとした口栓付大型ゲーブル紙容器無菌充填機。」 ・「EPU3000-M型機」は、 甲第1、16及び17号証より、胴部サイズが85mm角のゲーベルトップ型紙容器に対して生産能力が3000本/hであり、 また、甲17-19号証より、搬送装置の搬送ピッチが127mmであるものと認められる。 よって、「EPU3000-M型機」は、以下の事項を備えているものと認められる。(この事項により特定される発明を、以下「公用発明2」という。) 「胴部サイズが85mm角のゲーベルトップ液体紙容器に対して、搬送装置の搬送ピッチを127mmとし、且つ生産能力を3000本/hとした充填シール機。」 7-3.無効理由(1)について 本件特許発明と公用発明1とを比較すると、 公用発明1の「ゲーブル紙容器」及び「口栓付大型ゲーブル紙容器無菌充填機」は、それぞれ本件特許発明の「ゲーベルトップ型紙容器」及び「ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置」に相当し、 また、本件特許発明での「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え」ている構成は、かかる構成がゲーブル紙容器を用いるこの種の充填機の当然の構成であることより、公用発明1においても備えている構成であるものと認められる。 よって、両者は、 「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとしたゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」で一致し、以下の各点で相違する。 相違点1-1;本件特許発明では、「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」るとしているのに対し、公用発明1では、そのような限定がない点。 相違点1-2;本件特許発明では、生産能力を、3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)としたのに対し、公用発明1では、2520本/hとしている点。 そこで、上記各相違点を検討すると、 先ず、ゲーブル紙容器無菌充填機において、液揺れによりシール不良が起きると製造される製品が不良品となることより、そのようなシール不良を防止することは当然の事項であり、また、公用発明1は、製品として実際に販売されていることを考慮すれば、公用発明1においても、実用的に問題のない程度に「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」ているものと認められる。 次に、本件特許発明において、生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)とすることは、上記「2-2.訂正の適否(1)訂正事項1について」において言及したように、生産能力を「3000本/h」を超えて「3300本/h」までとすることを意味する。 一方、充填機において、生産能力を向上させることは、通常求められる技術課題であること、また、生産能力を3000本/hすることは、搬送装置の搬送ピッチが127mmの公用発明2でも達成されているように、当時の技術水準において格別高い生産能力とはいえない。 ここで、公用発明2は、公用発明1より搬送ピッチが大きく、生産能力が高いので、紙容器の間欠搬送において、公用発明1より、加速度、減速度が大きく、液揺れが大きくなることが想定されるが、公用発明2は、3000本/hの生産能力においも、公用発明1と同様に、実用的に問題のない程度に「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」ているものと認められる。 そして、本件特許発明では、3000本/hは除かれているものの、3000本/hに生産能力としての臨界的な意義もなく、また、3000本/hを超えるようになすことに技術的な困難性も認められない。さらに、無菌充填などの制約を除くことによっても生産能力を向上させることができるものとも認められることより、 公用発明1において、「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止」しつつ、生産能力を向上させ、上記相違点1-1及び相違点1-2の本件特許発明ようになすことは、当業者が容易になし得たものである。 よって、本件特許発明は、公用発明1に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。 7-4.無効理由(2)について 本件特許発明と公用発明2とを比較すると、 公用発明1の「ゲーベルトップ液体紙容器」及び「充填シール機」は、それぞれ本件特許発明の「ゲーベルトップ型紙容器」及び「充填シール装置」に相当し、 また、本件特許発明での「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え」ている構成は、かかる構成がゲーベルトップ液体紙容器を用いるこの種の充填シール機の当然の構成であることより、公用発明2においても備えている構成であるものと認められる。 よって、両者は、 「上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。」で一致し、以下の各点で相違する。 相違点2-1;本件特許発明では、「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」るとしているのに対し、公用発明2では、そのような限定がない点。 相違点2-2;本件特許発明では、搬送装置の搬送ピッチを、115?105mmとしたのに対し、公用発明2では、127mmである点。 相違点2-3;本件特許発明では、生産能力を、3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)としたのに対し、公用発明2では、3000本/hとしている点。 そこで、上記各相違点を検討すると、 ・相違点2-1及び相違点2-2について 先ず、上記「無効理由(1)について」で言及したように、公用発明2においても、実用的に問題のない程度に「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき」ているものと認められる。 次に、各種装置のコンパクト化は、一般的な技術課題であり、特に充填シール機のような大きな設置面積の必要な装置においては特に求められる技術課題であると認められ、また、充填シール機において搬送ピッチを小さくすることにより該充填シール機をコンパクト化できることは、当業者が容易に想到しうる事項である。さらに、公用発明1においては、112mmの搬送ピッチを採用されていることから、公用発明2においても搬送ピッチを115?105mmの範囲に変更することに格別な困難性は認められない。 また、搬送ピッチを短くすれば、紙容器の間欠搬送において、加速度、減速度が小さくなり、液揺れが小さくなることが想定されることより、 公用発明2において、「液揺れを小さく抑えてシール不良を防止」しつつ、充填シール機をコンパクト化するために、上記相違点2-1及び相違点2-2の本件特許発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。 ・相違点2-3について 本件特許発明では、3000本/hは除かれているものの、3000本/hに生産能力としての臨界的な意義はなく、本件特許発明での3000本/hに限りなく近い生産能力の下限値と公用発明2での生産能力の3000本/hとは、技術的にみて実質的に差はなく、上記相違点2-3は、実質的な相違とは認められない。 よって、本件特許発明は、公用発明2に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。 8.むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明は、本件特許出願前に公然実施をされた公用発明1または公用発明2に基づいて当業者が容易に発明し得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、他の無効理由を検討するまでもなく、本件特許発明の特許は、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担するものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとし、液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき、且つ生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)としたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。 【請求項2】上端を開口した多数の紙容器を垂直状態に且つ一定の搬送ピッチで保持し、該紙容器を前記搬送ピッチずつ間欠搬送する搬送装置と、その搬送装置による紙容器の走行経路に配置され、停止中の紙容器に対して、液体充填、頂部くせ折り、頂部シール等の処理を施す処理装置を備え、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを115?105mmとし、且つ生産能力を3000本/h±300本/hとしたゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、前記搬送装置の搬送ピッチを108mmとし、前記搬送装置による間欠搬送の1サイクル中における移動/停止の分割割合を140°?160°/220°?200°としたことを特徴とするゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、上端を開口した紙容器を所定経路に沿って間欠的に搬送し、その紙容器に対して清酒、合成酒、焼酎、ジュース、牛乳等の液体を充填し、頂部をゲーベルトップ型に成形してシールするという一連の動作を行う、ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、ゲーベルトップ型紙容器が清酒、合成酒、焼酎、ジュース、牛乳等の液体の包装容器として広く使用されている。このゲーベルトップ型紙容器への液体充填を行う装置は、底部を組み立て、頂部を開放した形態の紙容器を直立状態で保持する2本組或いは4本組の爪を多数組、一定ピッチで取り付けたキャリアチェーンと、そのキャリアチェーンを一定ピッチずつ間欠的に走行させる駆動装置を有する搬送装置を備えており、更にそのキャリアチェーンによって間欠的に搬送される紙容器の走行経路で且つ紙容器の停止位置に、紙容器頂部くせ折り装置、紙容器殺菌装置、紙容器乾燥装置、液体充填装置、紙容器頂部くせ折り装置、紙容器頂部加熱装置、紙容器頂部シール装置等を備えている。そして、上端を開放した紙容器をキャリアチェーンで一定ピッチずつ間欠搬送して行く間に、停止中の紙容器に対して、頂部くせ折り、殺菌、乾燥、液体充填、頂部くせ折り、頂部加熱、頂部シール(トッププレス)等を行い、内容物を充填しシールしたゲーベルトップ型紙容器を製造していた。 【0003】 この種のゲーベルトップ型紙容器充填シール装置において、キャリアチェーンには、多数の駒をつないで無端状としたローラチェーンが用いられており、その全長は駒のピッチ(通常、31.75mmが多用されている)の倍数となっている。また、それに取り付ける2本組或いは4本組の爪のピッチ(その爪で搬送される紙容器のピッチ、以下搬送ピッチという)は、無端状のキャリアチェーンの全周に渡って一定とする必要があり、そのためには、搬送ピッチを駒のピッチの偶数倍に設定することが設計、製作上、好ましい。このため、85mm角或いは95mm角のゲーベルトップ型紙容器を処理する装置に対しては、127mmピッチ(=31.75mm×4倍)が一般的であった。また、従来の装置における生産能力としては、通常、1系列当たり1000本/h程度であり、高速のものでも2000本/hが限度であった。紙容器の間欠搬送を行うためのキャリアチェーンの駆動は、一般にインデックスカムを用いて行っており、そのインデックスカムの1回転中(間欠搬送の1サイクル中)におけるチェーンの移動/停止の分割割合は120°/240°に設定されており、従って、生産能力2000本/hでは、紙容器の間欠搬送の1サイクルの周期は1.8秒、移動時間は0.6秒、停止時間は1.2秒であった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 最近、この種のゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置においても、更に生産能力の向上が求められており、本発明者等も3000本/hに速度アップした。ところが、生産能力をアップしたところ、充填工程において液体を充填した紙容器が次の位置へ移動、停止する際の液揺れが激しくなり、液が跳ねて紙容器頂部のシール面に接触しシール不良を生じるとか、極端な場合には外部に飛び出すといった現象が生じた。この液揺れを防止するには、紙容器の間欠搬送の1サイクルにおける移動時間を増加させることが有効であると考えられるが、1サイクル内における紙容器停止時間として、液体充填、くせ折り等の作業を行うための必要最低時間(概ね、0.7秒程度)は確保しなければならず、このため移動時間を長くするとしても、0.5秒程度が限度である。すなわち、3000本/hの生産能力では、紙容器の間欠搬送の1サイクルの周期は1.2秒であり、停止時間として0.7秒を確保するには、移動時間は0.5秒が限度となり、間欠搬送の1サイクル中におけるの移動/停止の分割割合は、150°/210°程度となる。 【0005】 ところが、このように移動/停止の分割割合を150°/210°とし、従来よりも移動時間の割合を大きくしても、依然として液揺れが激しく生じ、液が紙容器頂部のシール面に接触してシール不良を生じることが多発し、実用上、3000本/hの生産はできなかった。 【0006】 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、胴部サイズが85mm角或いは95mm角等のゲーベルトップ型紙容器を対象とする充填シール装置において、液揺れを抑えてシール不良を防止しながら、3000本/h程度の生産を可能とすることを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明者等は上記した液揺れを防止すべく鋭意検討の結果、紙容器の移動時の加速度、減速度が液揺れに多大な影響を与えており、その加速度、減速度が或る限界に達すると、共振現象を含んだ液揺れが生じることで、振幅が急激に大きくなり、しかも、その限界点が、1サイクル中の移動/停止の分割割合を150°/210°とし、生産能力を3000本/hとした時の加速度、減速度の最大値よりも少し低い位置にあり、紙容器を間欠搬送する際の1サイクルでの移動距離(搬送ピッチ)を短縮することで、加速度、減速度の最大値を下げて液揺れを抑制できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明のゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置は、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能な充填シール装置において、キャリアチェーンによる紙容器の搬送ピッチを115?105mmに設定し、且つ生産能力を3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)とするという構成としたものである。この構成により、紙容器の搬送距離が従来の1ピッチ127mmに比べて、かなり小さくなっており、このため、間欠搬送の1サイクル中の移動/停止の分割割合を150°/210°とした場合における加速度、減速度が、従来の1ピッチ127mmに比べてかなり小さくなって、液揺れが急激に拡大する限界点を下回り、従って、液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき、生産能力3000本/h+300本/h(ただし、3000本/hを除く。)というような能力アップを図ることができる。ここで、上記した「胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能な充填シール装置」とは、胴部サイズが85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器のみ(例えば、85mm角の紙容器のみ、95mm角の紙容器のみ)を取り扱う充填シール装置はもちろん、上記範囲内の複数サイズの紙容器(例えば、85mm角と95mm角の紙容器)を取り扱う兼用充填シール装置、及び上記範囲内を含む複数サイズの紙容器(例えば、50、60、70、85、95mm角等の紙容器)を取り扱う兼用充填シール装置を含むことを意味しており、従って、これらの充填シール装置はいずれも本発明の範囲内となる。 【0008】 【発明の実施の形態】 以下、図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置を備えた紙容器組立充填封緘装置を示す概略側面図であり、10は、筒状に胴貼りし且つ扁平に折り畳んだ状態の紙容器1を、筒状に起こし、それに注出口を取り付けて下流に供給する紙容器供給装置、20は紙容器供給装置10から供給された紙容器の底部を組み立てて下流に供給する紙容器底部組立装置、30は、紙容器底部組立装置20から供給される紙容器を受け取る位置に配置された、本発明の一実施の形態に係るゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置である。 【0009】 この実施の形態に係る充填シール装置30は、紙容器底部組立装置20から供給された紙容器1を直立状態に保持して一定ピッチずつ間欠搬送する搬送装置31(図2参照)と、その搬送装置による紙容器1の搬送経路に沿って、紙容器の停止位置に配置された頂部一次くせ折り装置32、殺菌剤噴霧装置33、乾燥装置34、冷却装置35、充填ノズル38を有する充填装置37、頂部二次くせ折り装置39、ヒータ40、頂部折り畳み加圧装置41等の処理装置を備えており、紙容器1が搬送装置によって直立状態で1ピッチずつ間欠移動する間に、紙容器1に対して、頂部一次くせ折り、殺菌剤噴霧、殺菌剤乾燥、紙容器冷却、液体充填、頂部二次くせ折り、頂部のシール面加熱、頂部折り畳み加圧等の諸処理が施され、内容物を充填し、頂部をシールしたゲーベルトップ型紙容器が製造され、系外に排出される。これらの各装置は従来公知のものであるので、詳細な説明は省略する。なお、本発明の適用対象となるゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置は、図1に示す諸処理装置を備えたものに限らず、少なくとも充填装置、頂部くせ折り装置、シール装置を備えたものであればよく、例えば、図1の充填シール装置において、殺菌処理関係の装置を省略するとか、この充填シール装置内で紙容器1に対する注出口取付を行うように変更してもよい。 【0010】 図2は紙容器1を間欠搬送する搬送装置31を示す概略平面図である。この搬送装置31は一対の無端状のキャリアチェーン45、45と、そのキャリアチェーン45を掛けたチェーンホィール46と、駆動装置47等を備えており、キャリアチェーン45、45には、紙容器1の4隅を保持するように爪48が取り付けられている。この爪48のキャリアチェーン45に対する取付位置は、保持した紙容器1のピッチ即ち搬送ピッチpが、キャリアチェーン45の全長に渡って一定となるように定められ、且つ、その搬送ピッチpの値は115?105mmの範囲内の値に、好ましくは、108mmに、即ち、従来の装置における127mmよりもかなり短い値に設定されている。 【0011】 ここで、搬送ピッチpを115mm?105mmに設定した理由は以下の通りである。キャリアチェーン45による紙容器1の搬送ピッチpを短縮すると、紙容器1を1ピッチ移動させる際の移動距離が短くなり、移動に割り当てる時間を一定とすると、従来の搬送ピッチ127mmの場合に比べて加速度及び減速度の最大値が小さくなって紙容器1に加わる衝撃が小さくなる。そして本発明者等が確認したところ、紙容器1の間欠搬送の1サイクルの周期を1.2秒(生産能力3000本/h)とし、1サイクル内における移動/停止の分割割合を150°/210°とした場合において、紙容器1の搬送ピッチpを約115mm以下とすることで紙容器内の液揺れを良好に抑制してシール不良を防止できることが判明した。従って、液揺れ防止の点からは搬送ピッチpは115mm以下とすることが好ましい。一方、この搬送ピッチpをあまり小さくすると、胴部サイズが85?95mm角の紙容器1に対して充填、くせ折り等の各種の操作を加えるための装置の配置が困難となり、この点からは105mm以上が好ましい。これらの点から、本発明では搬送ピッチpを115mm?105mmの範囲内に設定したものであり、液揺れの抑制と装置の配置のやり易さを考慮すると、搬送ピッチpを108mm程度に設定することが好ましい。 【0012】 搬送ピッチpとして108mmを採用した場合、無端状のキャリアチェーン45の全周にこの搬送ピッチpで爪48を取り付ける必要がある。前記したように、無端状のキャリアチェーンに一定の搬送ピッチpで爪48を取り付ける場合、キャリアチェーンの駒ピッチの偶数倍とすることが設計、製作上好ましい。このため、搬送ピッチpとして108mmを採用した場合、キャリアチェーン45の駒ピッチとして、27mm(=108mm÷4)を採用することが好ましい。 【0013】 キャリアチェーン45を駆動する駆動装置47は、キャリアチェーン45を搬送ピッチpずつ間欠駆動するものであり、従来のインデックスカムを用いたものでもよいし、サーボモータを用いて間欠駆動する構成としたものでもよい。インデックスカムの間欠動作の曲線は、従来用いられている変形正弦を基本としたものを、そのまま用いても良いし、加速度、減速度を一層小さくするような曲線を用いても良い。間欠動作の1サイクルにおける移動/停止の分割割合は150°/210°を基本とするが、搬送ピッチp、生産能力、紙容器や充填液体の物性等に応じて±20°程度の範囲内で適宜増減可能である。例えば、搬送ピッチpを108mmとした場合は、±10°程度の増減は可能であり、従って、分割割合は、140°?160°/220?200°とすればよい。サーボモータを用いる場合には、制御ソフトによって、インデックスカムを用いた場合と同様な特性曲線が得られるように制御すればよい。 【0014】 本発明に係るゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置の生産能力は、当然従来の2000本/hよりも大幅に増加させるものであり、激しい液揺れが生じない範囲で極力多く設定すればよく、具体的には3000本/h±300本/hとすることが好ましい。 【0015】 以上のように、本発明では、キャリアチェーンによる紙容器の搬送ピッチpを115?105mm程度に設定したことにより、紙容器の間欠移動における加速度、減速度を、従来の1ピッチ127mmの場合に比べてかなり小さくできる。具体的に説明すると、図3は、紙容器を1ピッチ移動させる時のインデックスカムの1回転(360°)に対する紙容器1の変位(移動量)並びに加速度を、搬送ピッチp=127mm及び108mmについて求めた結果を示すグラフである。図3から良く分かるように、搬送ピッチpが127mmの場合には、加速度及び減速度の最大値が約2500mm/s2であるが、搬送ピッチpを108mmに減少させたことにより紙容器の移動量が小さくなり、それによって加速度及び減速度の最大値が約2050mm/s2に減少している。本発明者等が確認したところ、加速度及び減速度の最大値が約2500mm/s2よりも少し低い位置に、液揺れが急激に拡大する限界点があり、搬送ピッチpを108mmとすることで、加速度及び減速度の最大値をこの限界点よりも低い値とすることができ、これによって液揺れを抑制してシール不良を防止できた。 【0016】 【発明の効果】 以上に説明したように、本発明は、胴部サイズが少なくとも85mm角?95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において、キャリアチェーンによる紙容器の搬送ピッチを115?105mmに設定したことにより、紙容器の間欠搬送時における加速度、減速度の最大値を、従来の1ピッチ127mmの場合に比べてかなり小さく、液揺れが急激に拡大する限界点以下とすることができ、従って、液揺れを小さく抑えてシール不良を防止でき、生産能力3000本/hというような能力アップを図ることができるという効果を有している。また、この能力アップのための対策としては、単に紙容器の搬送ピッチを短縮するのみであるので、設備費の増加をあまり必要としないという効果も有している。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施の形態に係るゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置を備えた紙容器組立充填封緘装置を示す概略側面図 【図2】図1に示すゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置に設けている搬送装置の概略平面図 【図3】紙容器を1ピッチ移動させる時のインデックスカムの1回転に対する紙容器の変位並びに加速度を示すグラフ 【符号の説明】 1 ・・・紙容器 10・・・紙容器供給装置 20・・・紙容器底部組立装置 30・・・ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置 31・・・搬送装置 32・・・頂部一次くせ折り装置 33・・・殺菌剤噴霧装置 34・・・乾燥装置 35・・・冷却装置 37・・・充填装置 38・・・充填ノズル 39・・・頂部二次くせ折り装置 40・・・ヒータ 41・・・頂部折り畳み加圧装置 45・・・キャリアチェーン 46・・・チェーンホィール 47・・・駆動装置 48・・・爪 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2011-10-07 |
結審通知日 | 2011-10-13 |
審決日 | 2011-10-25 |
出願番号 | 特願2000-209017(P2000-209017) |
審決分類 |
P
1
123・
121-
ZA
(B65B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 真 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
栗林 敏彦 熊倉 強 |
登録日 | 2009-07-03 |
登録番号 | 特許第4334115号(P4334115) |
発明の名称 | ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置 |
代理人 | 高津 一也 |
代理人 | 高津 一也 |
代理人 | 櫻井 彰人 |
代理人 | 櫻井 彰人 |
代理人 | 金山 聡 |
代理人 | 金山 聡 |
代理人 | 堀内 真 |
代理人 | 廣田 雅紀 |
代理人 | 廣田 雅紀 |
代理人 | 堀内 真 |