• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1264570
審判番号 不服2011-1613  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-24 
確定日 2012-10-11 
事件の表示 特願2009-233323「通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 11490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年4月20日を国際出願日とする出願である特願2007-514383号の一部を平成21年10月7日に新たな出願としたものであって、平成22年5月6日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し平成22年7月16日に手続補正がなされたが、平成22年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月24日に審判請求がなされるとともに同日付で手続補正がなされたが、当審において平成24年4月10日付けで平成23年1月24日付けの手続補正に対し補正の却下の決定がなされるとともに同日付で拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成24年6月15日付けで手続補正がなされるとともに、同日付けで意見書の提出がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年6月15日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
移動局と基地局との間でデータを送信すべき無線リソースが前記基地局から前記移動局へ通知された場合に、通知された前記無線リソースを用いて前記移動局と前記基地局との間で前記データを送信する通信方法であって、
前記データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号を用いて、いずれの処理を識別する識別符号を用いたかが前記移動局により判別可能なように、前記無線リソースを前記基地局から前記移動局へ 通知することを特徴とする通信方法。」

3.当審の拒絶理由
当審において平成24年4月10日付けで通知した拒絶理由の(理由1)の概要は、以下のとおりである。

『(理由1)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。

1.理由1について
(請求項1)
・請求項1記載の「無線リソース」は、出願当初の明細書、特許請求の範囲または図面に記載されていなかった技術用語であり、発明の詳細な説明のどの構成を示す技術用語なのか明確でない。
もし、「無線リソース」が、各基地局の「干渉量」を示しているのだとしたら、それは「リソース」と言う技術概念には含まれないものである。
(この点において、平成22年7月16日付け手続補正書による補正には、新規事項追加の疑義がある。)
たとえ「干渉量」が「無線リソース」の範疇に属するのだとしたとしても、「干渉量」のみに言及した明細書の記載から「無線リソース」という技術概念にまで、拡張ないし一般化することができるとは認められない。

・発明の詳細な説明における「識別符号」は、E-AGCHに載せられる各情報を区別するために用いられるものである。そして、段落【0032】に「異なるIDのADを送信することで、本来送信する絶対Grantのほかに基地局の干渉量を送信することができる」との記載があるように、識別符号により「干渉量」の送信を可能としている。
一方、発明の詳細な説明における「処理」は、図11に記載されるような各識別符号(ID)の処理(各ID1?3における処理、例えばID2ではST1104b?ST1107bの各処理)のことのみを示しており、識別符号により区別されて送信されてきた「干渉量」等を移動局でどのように処理するのかの「データの通信に関する」「処理」を指してはいないし、そのような記載もしくは示唆もない。なお、識別符号により区別されて送信されてきた「干渉量」を「干渉ビット管理部に引き渡す」ことについての記載があるが、「処理」という用語は用いられていないし、「データの通信に関する」「処理」を示すものとも認められない。

以上のように、発明の詳細な説明における「識別符号」は、補正後の発明における「データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号」のようなものではないから本件の請求項1には、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない事項が記載されている。』

4.当審の判断
上記拒絶理由通知の(理由1)に対し、審判請求人(出願人)は、以下の内容の意見書を提出した。

『補正後の発明が特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を十分に満たしているものであるのは以下に述べる通りであります。

(2-1)請求項1記載の「無線リソース」が明確である点について
まず、「無線リソース」の用語につきましては、出願当初の明細書の段落番号[0005]および[0015]において記載しております。
次に、出願当初の明細書の実施の形態2の段落番号[0031]において、「無線リソース」の具体例の一つとして「AG」を次の通り説明しております。
「AGは、10ms単位で複数ビット送信される絶対的なレートを示すチャネルであり、E-AGCH(E-DCH Absolute Grant Channel)に乗せられる」
従って、「無線リソース」の用語を請求項1において使用することに何ら不明確な点はなく、また、概念を拡張・一般化するものではありません。

(2-2)「識別符号」が「データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号」である点について
審判官殿が指摘されております段落番号[0032]において、次のように記載しております。
「処理内容によって異なるIDが設けられている」
「ID1?ID3に対応した処理が実行される」
「IDに割り当てられているCRC(Cyclic Redundancy Check)を乗算する」
「複数のIDの処理をすることによって、移動局内でも異なる情報を受け取ることができる」
従って、発明の詳細な説明においては、「処理」の具体例の一つとして「CRCを乗算する」ことを記載しており、これは通信相手から送られてきたデータを適正に受信するための処理であって、これはとりもなおさず「データの通信に関する」「処理」であります。また、発明の詳細な説明において、「識別符号」の具体例として「ID1?ID3」を記載しております。上記の引用箇所に有りますように、各IDにはCRCが割り当てられておりますので、「CRCを乗算する」処理は、識別符号により区別されております。
このように、発明の詳細な説明における「識別符号」は、補正後の発明における「データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号」に他なりません。

以上の次第でありますので、「無線リソース」および「識別符号」に関する補正につきましては、特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を十分に満たしているものであると確信致します。』

そこで、まず、「無線リソース」に関し検討する。
審判請求人は、上記のとおり、「無線リソース」について、出願当初の明細書の段落番号【0005】および【0015】に記載があるとしているので、当該段落番号【0005】をみるに、「そこで、上り方向の無線リソースの有効利用と高速な無線リソース割り当てを実現するべく、リリース6においてE-DCH(Enhanced DCH)技術の導入が検討されている。E-DCH技術は、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)と呼ばれることもある。」という記載があり、また、当該段落番号【0015】をみるに、「基地局101は移動局の送信電力を制御したり、スケジューリングなどを行い、移動局への無線リソースの割り当て処理を行う。」という記載がある。
これらの記載から、E-DCH技術が無線リソース割り当てに係る技術であること、及び、『送信電力』の制御や『スケジューリング』により無線リソースの割り当てが行われることについては、出願当初の明細書に開示されていたと認めることができる。
そして、審判請求人は、出願当初の明細書の実施の形態2の段落番号【0031】の「AGは、10ms単位で複数ビット送信される絶対的なレートを示すチャネルであり、E-AGCH(E-DCH Absolute Grant Channel)に乗せられる」の記載から「AG」が「無線リソース」の具体例の一つだとしている。
ここで、この段落番号【0031】の記載からE-AGCHがE-DCHに関連するチャネルであり、そして、上記のとおりE-DCH技術が無線リソース割り当てに係る技術であることから、審判請求人の主張の通りAGが「無線リソース」の1つの具体例であるとしても、当該「AG」については、段落【0031】に「絶対的なレート」を示すと記載されているのみである。
したがって、審判請求人が示す上記記載も含め発明の詳細な説明及び図面の記載を総合的に判断するに、本願発明の「無線リソース」は、送信電力、スケジューリング、レートに関するものである。

上記のとおり、審判請求人の意見を考慮しても、本願発明の「無線リソース」に各基地局の「干渉量」が含まれるのか否かについては、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面において記載も示唆もなく、また、技術常識として「干渉量」は「無線リソース」と言う技術概念には含まれないものである以上、本願発明の「無線リソース」には、各基地局の「干渉量」は含まれないと解釈するほかない。
そのように解釈するならば、本願発明において、基地局から移動局に通知される「干渉量」を含まない「無線リソース」が通知され、前記データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号を用いて、いずれの処理を識別する識別符号を用いたかが前記移動局により判別可能なように、前記「干渉量」を含まない「無線リソース」を前記基地局から前記移動局へ通知するという構成については、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

次に、「識別符号」が「データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号」である点について検討する。
審判請求人は、上記のとおり、「処理」の具体例の一つとして「CRCを乗算する」ことを記載しているとし、「これは通信相手から送られてきたデータを適正に受信するための処理であって、これはとりもなおさず「データの通信に関する」「処理」であります。」としている。
しかしながら、「CRCを乗算する」という「処理」は、基地局から送られてきた「識別符号」を識別する「処理」であって、「データの通信に関する」「処理」であるとは認められない。これは、「データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号」の「処理」を「CRCを乗算する処理」に置き換えて解釈すると、技術的意味が不明となることからも明らかである。
したがって、本願発明の「データの通信に関する複数の処理をそれぞれ識別する識別符号」は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-08 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-27 
出願番号 特願2009-233323(P2009-233323)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之橘 均憲  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 神谷 健一
竹井 文雄
発明の名称 通信方法  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ