• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1264577
審判番号 不服2011-7046  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-04 
確定日 2012-10-11 
事件の表示 特願2008- 8633「画像形成方法及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日出願公開、特開2008-112188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年4月11日に出願した特願2000-109052号の一部を平成20年1月18日に新たな特許出願としたものであって、平成22年12月1日付けで手続補正がなされ、同年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年4月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成24年5月10日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月12日付けで手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審拒絶理由についての意見書を平成24年7月12日付けで提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年4月4日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載の事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1の記載において、「該静電潜像担持体」の記載の前に「静電潜像担持体」の記載はなく、「該静電潜像担持体」の直前の記載において「静電潜像担持体」といえるものは「電子写真感光体」であるから、「該静電潜像担持体」の記載は「該電子写真感光体」の明らかな誤記と認められるので、請求項1に係る発明は、平成24年7月12日付け手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項において上記明らかな誤記を訂正した次のものであると認める。

「少なくとも感光体、トナー、定着装置、及び露光装置を備えたブラック現像部がカラー現像部より後方に位置するフルカラータンデム方式画像形成装置を用い、電子写真感光体上にトナー像を形成する現像工程と、該電子写真感光体上のトナー像を、電圧が印加されている転写部材を記録材に接触させながら該記録材上へ転写する転写工程と、転写されたトナー像を定着装置で記録材上に定着して定着画像を得る定着工程とを少なくとも有する画像形成方法において、前記定着工程において使用する定着装置が、固定支持された加熱体と、該加熱体に対向配置され、且つ定着フィルムを介して該加熱体に圧接する加圧部材とを有し、該トナー像が該定着フィルムと接するよう、該記録材を該定着フィルムと該加圧部材との間に位置させるものであり、該トナーが乳化重合凝集法により製造されたものであり、トナーのバインダー樹脂が、少なくともスチレンとアルキル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有し、バインダー樹脂のガラス転移点温度が70℃以下であり、バインダー樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定した最大ピーク分子量がポリスチレン換算で1万?12万であることを特徴とする画像形成方法。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項

(1)当審拒絶理由で引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-38678号公報(以下「引用例1」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項40】 外部より帯電部材に電圧を印加し、静電荷像担持体に帯電を行う帯電工程と、帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成する工程と、静電荷像をトナー担持体上のトナーにより現像してトナー像を静電荷像担持体上に形成する現像工程と、静電荷像担持体上のトナー像を転写材へ転写する転写工程と、転写材上のトナー像を加熱加圧定着する定着工程とを有する画像形成方法であり、
トナーは、結着樹脂、着色剤及びワックスを少なくとも含有しているトナー粒子を有し、
(I)結着樹脂はビニル重合体成分とポリエステル成分とを含み;
(II)結着樹脂は、40?99重量%の成分A,0?20重量%成分B及び0?60重量%の成分Cを含み、成分Bと成分Cとの合計量が1?60重量%であり、成分Aは、結着樹脂のテトラヒドロフラン(THF)の可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおける分子量100万未満の低分子量成分及び中分子量成分を示し、成分Bは結着樹脂のTHFの可溶成分のGPCのクロマトグラムにおける分子量100万以上の高分子量成分を示し、成分Cは結着樹脂のTHFの不溶成分を示し;
(III)結着樹脂のTHFの可溶成分のGPCのクロマトグラムにおいて、メインピークが分子量3,000?5万の領域にあり;
(IV)トナー粒子の形状係数SF-1が100?160であり、トナー粒子の形状係数SF-2が100?140であることを特徴とする画像形成方法。」

イ 「【請求項48】 該加熱加圧定着工程が、オフセット防止用液体の供給がない、或いは、定着器用クリーナーを有していない加熱加圧定着装置により、トナー画像を転写材に加熱加圧定着する請求項40乃至47のいずれかの画像形成方法。
【請求項49】 該加熱加圧定着工程が、固定支持された加熱体と、該加熱体に対向圧接し、且つ、フィルムを介して該加熱体に密着させる加圧部材により、トナー画像を転写材に加熱加圧定着する請求項40乃至48のいずれかの画像形成方法。」

ウ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真、静電印刷の如き画像形成方法において、静電荷像を現像する為のトナー、及び、該トナーを用いた画像形成方法に関するものである。特に、トナーで形成された顕画像を転写材に加熱定着する定着方式に供される静電荷像現像用トナー、及び、該トナーを用いた画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42-23910号公報及び特公昭43-24748号公報等に記載されている如く多数の方法で知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像をトナーを用いて現像し、中間転写体を介して、又は、介さずに、紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧、加熱加圧或いは溶剤蒸気などにより定着し複写物又はプリントを得るものである。そして感光体上に転写せずに残った未転写トナーは種々の方法でクリーニングされ、上述の工程が繰り返される。
【0003】一般的なフルカラー画像を形成する方法の一例について説明する。感光体ドラムの感光体(静電荷像担持体)を一次帯電器によって均一に帯電し、原稿のマゼンタ画像信号にて変調されたレーザー光により画像露光を行い、感光ドラム上に静電荷像を形成し、マゼンタトナーを保有するマゼンタ現像器により該静電荷像の現像を行い、マゼンタトナー画像を形成する。次に搬送されてきた転写材に転写帯電器によって前記の感光ドラムに現像されたマゼンタトナー画像を直接的、或いは間接的手段を用い転写する。
【0004】一方、前記の静電荷像の現像を行った後の感光体ドラムは、除電用帯電器により除電し、クリーニング手段によってクリーニングを行った後、再び一次帯電器によって帯電し、同様にシアントナー画像の形成及び前記のマゼンタトナー画像を転写した転写材へのシアントナー画像の転写を行い、さらにイエロー色,ブラック色と順次同様に行って、4色のトナー画像を転写材に転写する。該4色のトナー画像を有する転写材を定着ローラにより熱及び圧力の作用で定着することによりフルカラー画像を形成する。
【0005】近年このような装置は、単なるオリジナル原稿を複写する為の事務処理用複写機というだけでなく、コンピュータの出力としてのレーザービームプリンター(LBP)、或いは個人向けのパーソナルコピー(PC)という分野で使われ始めている。
【0006】このようなLBPやPCの分野以外にも、ファックスへも使われつつある。
【0007】その為、小型化、軽量化そして高速化、高画質化、高信頼性が厳しく追及されてきており、機械は種々の点でよりシンプルな要素で構成されるようになってきている。その結果、トナーに要求される性能はより高度になってきている。近年多様な複写のニーズに伴ない、カラー複写に対する需要も急増しており、オリジナルカラー画像をより忠実に複写するため、更に一層の高画質化、高解像度が望まれている。さらに、両面のオリジナルカラー原稿の複写に対する要求も高まってきている。
【0008】これらの観点より、該カラーの画像形成方法に使用されるトナーは、トナーを加熱加圧した際の溶融性及び混色性が良いことが必要である。そのため、軟化点が低く、且つ溶融粘度が低く、所定の温度で溶融粘度が急激に低下するトナー(シャープメルト性の高いトナー)を使用することが好ましい。
【0009】斯かるトナーを使用することにより、複写物の色再現範囲を広め、原稿像に忠実なカラーコピーを得ることができる。
【0010】しかしながら、このようなシャープメルト性の高いカラートナーは、一般に定着ローラーとの親和性が高く、定着時に定着ローラーにオフセットし易い傾向にある。
【0011】特にカラー画像形成装置における定着装置の場合、転写材上にマゼンタ,シアン,イエロー,ブラックと複数層のトナー層が形成されるため、トナー層厚の増大から特にオフセットが発生しやすい傾向にある。
【0012】従来、定着ローラー表面にトナーを付着させない目的で、例えばローラー表面をシリコーンゴムや弗素系樹脂などのトナーに対して離型性に優れた材料で被覆し、さらにその表面にオフセット防止、及び、ローラー表面の疲労を防止する為にシリコーンオイル,フッ素オイルの如き離型性の高い液体の薄膜でローラー表面を被覆することが行われている。しかしながら、この方法はトナーのオフセットを防止する点では極めて有効であるが、オフセット防止用液体を供給する為の装置が必要な為、定着装置が複雑になるという問題点を有している。このオイル塗布が定着ローラーを構成している層間のはく離を起こし結果的に定着ローラーの短寿命化を促進するという弊害がある。
【0013】そこで、シリコーンオイルの供給装置を用いないで、かわりにトナー粒子中から加熱加圧時にオフセット防止液体を供給しようという考えから、トナー粒子中に低分子量ポリエチレン,低分子量ポリプロピレンの如き離型剤を添加する方法が提案されている。
【0014】トナー粒子中に離型剤としてワックスを含有させることは特公昭52-3304号公報、特公昭52-3305号公報、特公昭57-52574号公報が開示されている。
【0015】また、特開平3-50559号公報、特開平2-79860号公報、特開平1-109359号公報、特開昭62-14166号公報、特開昭61-273554号公報、特開昭61-94062号公報、特開昭61-138259号公報、特開昭60-252361号公報、特開昭60-252360号公報、特開昭60-217366号公報にトナー粒子中にワックスを含有させることが開示されている。
【0016】ワックスは、トナーの低温時や高温時の耐オフセット性の向上や、低温時の定着性の向上のために用いられている。反面、耐ブロッキング性を低下させたり、トナーの帯電性が不均一になりやすい。
【0017】トナーの低温定着性や耐高温オフセット性の向上、さらに耐ブロッキング性の向上を目的として、トナーのバインダー樹脂の改良に関わる提案がおこなわれている。例えば、特開平4-250462号公報には、結晶性ポリエステルとスチレン-ブタジエン系共重合体とのブロック又はグラフト共重合体をバインダー樹脂として含有するトナーが開示されており、特開平4-86828号公報には、不飽和ポリエステルと多官能ビニルモノマーを0.01?5.0重量%含むビニルモノマーとを重合して得られる樹脂をバインダー樹脂として含有するトナーが開示されている。
【0018】しかし、前者の場合、実施例ではグラフト前のスチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量が73万と分子量が非常に大きいため、グラフト後のポリマーをバインダー樹脂として使用すると、低温定着性が不充分である。
【0019】後者の場合も得られる樹脂のピーク分子量が5万を超えており、高温オフセットに関してはある程度の効果が認められるものの、低温定着性に関してはさらに改善が必要である。
【0020】従来よりトナーはいわゆる粉砕法により製造されてきたが、懸濁重合法によるトナーも提案されている(特公昭36-10231号公報)。この懸濁重合法においては重合性単量体および着色剤(更に必要に応じて重合開始剤,架橋剤,荷電制御剤,その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物と調製した後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌機を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。
【0021】懸濁重合法によるトナーの帯電特性を改良する目的で、特開昭56-116043号公報には、カーボンブラック等を含むビニル単量体組成物に、反応性ポリエステルを単量体100重量部に対して10?50重量部加えてトナーを製造する方法が開示されている。しかし、使用している不飽和ポリエステルは重量平均分子量が17万と非常に大きく、また、不飽和ポリエステルの使用量が多いため、THF不溶分と分子量100万以上の成分との合計量は60重量%を超えていると解され、低温定着性が不充分である。
【0022】懸濁重合法では、水の如き極性の大なる分散媒体中で単量体組成物の液滴を生成せしめるため、単量体組成物に含まれる極性基を有する成分は水相との界面である表層部に存在し易く、非極性の成分は内部に存在するいわゆるコア/シェル構造を形成することができる。
【0023】特開平7-120965号公報には、この懸濁重合法によりトナー粒子の外殻を、非晶質ポリエステルを主成分とする樹脂で被覆したトナーが開示されている。該公報では、80?120℃におけるtanδが1.0?20.0の範囲内にある非晶質ポリエステルをスチレン等を含む単量体組成物に溶解し、単量体を重合させる際に同時に非晶質ポリエステルの外殻は形成されている。該公報に従えば比較的定着性の良好なトナーを得ることができるが、前記tanδが1.0?20.0の非晶質ポリエステルの単量体への溶解性は必ずしも良好ではなく、トナー粒子間にバラツキの少ないトナーを製造することがむずかしい。
【0024】重合法によるトナーは、離型剤であるワックス成分の内包化により、低温定着性、耐ブロッキング性と耐高温オフセット性という相反する性能を両立することが可能となり、かつ定着ローラーにオイルの如き離型剤を塗布することなく、高温オフセットを防止することが可能となる。
【0025】先にも述べたように、近年は両面のオリジナル原稿の複写あるいは片面のオリジナル原稿の両面化に対するユーザーの需要は大きく、そのためにもより高画質、高信頼性のある両面画像が求められている。
【0026】従来のカラー両面に対する技術において様々な弊害がある中で、最重要課題の一つに、1面を定着した後に発生する紙カールがある。この紙カールが大きいと、定着画像の搬送性は劣り、高画質、高信頼性のある画像が得られない。これに対して、トナーに要求される性能としては、たとえば、転写材へのトナーの転写量を少ない状態において、いかに、画像濃度、色再現性等を満足した高画質な画像を得られるかである。これには、トナー自身の着色力の向上が必要となる。また、両面において、2度定着器を通過する画像が生じることから、耐高温オフセット性の更なる向上も必要とされている。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点を解消した静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0028】本発明の目的は、定着性と耐オフセット性を向上し、尚且つ、高品質な画像を長期にわたって安定して提供し、感光体やトナー担持体又は現像剤担持体、更には中間転写体に悪影響を及ぼさない電子写真プロセスに高度に適用を可能とする静電荷像現像用トナー、及び該トナーを用いた画像形成方法を提供するものである。」

エ 「【0035】バインダー樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。具体的なGPCの測定方法としては、バインダー樹脂又はバインダー樹脂を含有するトナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液をポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液を調製し、測定装置として例えばウォーターズ社製150Cを用いて測定する。この時、サンプル溶液は、バインダー樹脂基準で0.05?0.6wt%となる様に調整し、サンプル溶液の注入量は50?200μlとする。カラム構成は例えば昭和電工製A-801、802、803、804、805、806、807を連結し標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定し得る。」

オ 「【0063】本発明においては、バインダー樹脂のTHF可溶分は、GPCの分子量分布において、分子量3,000?50,000の領域にメインピークを有している。より好ましくは、分子量3,000?40,000、最も好ましくは10,000?30,000の領域にメインピークを有することが低温定着性、多数枚耐久性の点でより好適である。分子量が3,000よりも小さいと高温オフセットやブロッキングを生じることがあり、分子量が50,000よりも大きいと低温定着が低下する。」

カ 「【0101】本発明のトナーを製造する方法としては、樹脂,低軟化点物質からなる離型剤(ワックス),着色剤,荷電制御剤等を加圧ニーダーやエクストルーダー又はメディア分散機を用い均一に分散せしめた後、機械的又はジェット気流下でターゲットに衝突させ、所望のトナー粒径に微粉砕化せしめた後(必要により、トナー粒子の平滑化及び球形化の工程を付加)、更に分級工程を経て粒度分布をシャープにせしめトナーにする粉砕方法によるトナーの製造方法の他に、特公昭56-13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用い溶融混合物を空気中に霧化し球状トナーを得る方法や、特公昭36-10231号公報、特開昭59-53856号公報、特開昭59-61842号公報に述べられている懸濁重合方法を用いて直接トナーを生成する方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナーを生成する分散重合方法又は水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合方法等を用いトナーを製造することが可能である。」

キ 「【0115】次に本発明のトナーが適用される画像形成方法を添付図面を参照しながら以下に説明する。
【0116】図3に示す装置システムにおいて、現像器4-1、4-2、4-3、4-4に、それぞれシアントナーを有する現像剤、マゼンタトナーを有する現像剤、イエロートナーを有する現像剤及びブラックトナーを有する現像剤が導入され、磁気ブラシ現像方式又は非磁性一成分方式によって静電荷像担持体(例えば感光体ドラム)1に形成された静電荷像を現像し、各色トナー像が感光体ドラム1上に形成される。」

ク 「【0125】本発明のトナーは一成分現像にも好適に用いることが出来る。静電荷像担持体上に形成された静電像を現像する装置の一例を示すが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0126】図5において、25は静電荷像担持体(感光体ドラム)であり、潜像形成は電子写真プロセス手段又は静電記録手段により形成される。24はトナー担持体(現像スリーブ)であり、アルミニウムあるいはステンレス等からなる非磁性スリーブからなる。
【0127】現像スリーブ24の略右半周面はトナー容器21内のトナー溜りに常時接触していて、その現像スリーブ面近傍のトナーが現像スリーブ面にスリーブ内の磁気発生手段の磁力で及び/又は静電気力により付着保持される。」

ケ 「【0168】次いで転写材6上のトナー画像は加熱加圧定着手段によって定着される。加熱加圧定着手段としては、ハロゲンヒーター等の発熱体を内蔵した加熱ローラーとこれと押圧力をもって圧接された弾性体の加圧ローラーを基本構成とする熱ロール方式や、フィルムを介してヒーターにより加熱定着する方式(図6,7(審決注:「図4,5」は「図6,7」の明らかな誤記なので訂正して摘記した。))が挙げられるが、本発明のトナーは定着性と耐オフセット性に優れるので上記の如き加熱加圧定着手段と良好なマッチングを示す。」

コ 「【0219】図3に示す画像形成装置の現像装置を図5に示すものに交換し、トナー担持体面の移動速度が静電潜像担持体面の移動速度に対し、3.0倍となるように設定し、トナー(A)と比較用トナー(G)の各々を逐次補給しながら単色での間歇モード(すなわち、1枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の現像装置の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)により前記実施例と同様に評価を行った。
【0220】ここで用いたトナー担持体の表面粗度Raは1.5で、トナー規制ブレードは、リン青銅ベース板にウレタンゴムを接着し、トナー担持体との当接面をナイロンによりコートしたものを用いた。また、加熱定着装置Hには図6及び図7に示した定着装置を用い、加熱体31の検温素子31dの表面温度は130℃、加熱体21-シリコンゴムの発泡体を下層に有するスポンジ加圧ローラー33間の総圧は8kg、加圧ローラーとフィルムのニップは6mmとし、定着フィルム32には、転写材との接触面にPTEF(高分子量タイプ)に導電性物質を分散させた低抵抗の離型層を有する厚さ60μmの耐熱性ポリイミドフィルムを使用した。以上の評価結果を表6に示す。」

サ 表1(【0192】参照。)の記載から、トナー粒子(A)ないし(F)の結着樹脂のTHF可溶分の分子量のメインピークは1.3万ないし4.5万であることが見てとれる。

シ 表4(【0207】参照。)の記載から、トナー粒子(A)ないし(F)について、最低定着温度は120℃ないし150℃であり、耐高温オフセット温度は180℃ないし220℃であって、最低定着温度と耐高温オフセット温度との温度差は40℃ないし90℃となることが見てとれる。

ス 図3及び図8の記載から、転写帯電器は、搬送されてきた転写材の裏面に接触して、現像されたトナー画像を直接的、或いは間接的手段を用い転写する転写ローラーであって、電圧が印加されていることが見てとれる。

セ 上記アないしスからみて、引用例1には、
「外部より帯電部材に電圧を印加し、感光体に帯電を行う帯電工程と、帯電された感光体に画像露光手段により静電荷像を形成する工程と、静電荷像をトナー担持体上のトナーにより現像してトナー像を感光体上に形成する現像工程と、中間転写体を介して、又は、介さずに、感光体上のトナー像を紙の如き転写材へ転写する転写工程と、トナー画像を転写した後、転写材上のトナー像を加熱加圧定着する定着工程とを有し、電子写真法で複写物又はプリントを得る画像形成方法であって、
感光体ドラムと、該感光体ドラムを均一に帯電する一次帯電器と、均一に帯電した感光体ドラムに静電荷像を形成する画像露光手段と、該静電荷像の現像を行いトナー画像を形成する現像器と、搬送されてきた転写材に現像されたトナー画像を直接的、或いは間接的手段を用い転写する、電圧が印加されている転写ローラーからなる転写帯電器と、転写された4色のトナー画像を有する転写材を熱及び圧力の作用で定着する加熱加圧定着装置とを有するカラー画像形成装置を用い、マゼンタトナー画像の形成及び転写材への転写を行い、同様にシアントナー画像の形成及び前記のマゼンタトナー画像を転写した転写材へのシアントナー画像の転写を行い、さらにイエロー色、ブラック色と順次同様に行って、4色のトナー画像を転写材に転写し、該4色のトナー画像を有する転写材を加熱加圧定着装置により熱及び圧力の作用で定着することによりフルカラー画像を形成する方法において、
カラーの画像形成方法に使用されるトナーは、トナーを加熱加圧した際の溶融性及び混色性が良いことが必要であるため、軟化点が低く、且つ溶融粘度が低く、所定の温度で溶融粘度が急激に低下するトナー(シャープメルト性の高いトナー)を使用することが好ましいところ、このようなシャープメルト性の高いカラートナーは、一般に定着ローラーとの親和性が高く、定着時に定着ローラーにオフセットし易い傾向にあり、特に、転写材上にマゼンタ,シアン,イエロー,ブラックと複数層のトナー層を形成しトナー層厚が増大してオフセットが発生しやすい傾向にあるカラー画像形成装置における定着装置の場合、従来から、トナー粒子中に離型剤としてトナーの低温時や高温時の耐オフセット性の向上や低温時の定着性の向上のためのワックスを含有させていたが、この場合、耐ブロッキング性を低下させたりトナーの帯電性が不均一になりやすかったので、トナーの低温定着性や耐高温オフセット性の向上、さらに耐ブロッキング性の向上を目的として、トナーに、結晶性ポリエステルとスチレン-ブタジエン系共重合体とのブロック又はグラフト共重合体をバインダー樹脂として含有することも行われていたが、この場合の従来のものは、グラフト前のスチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量が73万と分子量が非常に大きいため、グラフト後のポリマーをバインダー樹脂として使用すると、低温定着性が不充分であり、トナーに、不飽和ポリエステルと多官能ビニルモノマーを0.01?5.0重量%含むビニルモノマーとを重合して得られる樹脂をバインダー樹脂として含有することも行われていたが、この場合の従来のものも、得られる樹脂のピーク分子量が5万を超えており、高温オフセットに関してはある程度の効果が認められるものの、低温定着性に関してはさらに改善が必要であるといった問題点があったので、これらの問題点を解消するために、
前記トナーを、結着樹脂、着色剤及びワックスを少なくとも含有するトナー粒子であって、水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合方法を用いて製造することが可能であるトナー粒子を有し、前記結着樹脂のTHFの可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い測定される分子量のメインピークが、3,000よりも小さいと高温オフセットやブロッキングを生じることがあり、50,000よりも大きいと低温定着性が低下するので、この分子量のメインピークを3,000?5万の領域内として、定着性と耐オフセット性を向上し、高品質な画像を長期にわたって安定して提供できるようにし、感光体やトナー担持体に悪影響を及ぼさないようにした、フルカラー画像を形成する方法であって、
前記トナーの実施例としては、その結着樹脂のTHF可溶分の分子量のメインピークは1.3万ないし4.5万であり、その最低定着温度は120℃ないし150℃であり、その耐高温オフセット温度は180℃ないし220℃であって、最低定着温度と耐高温オフセット温度との温度差が40℃ないし90℃となるものであり、
前記加熱加圧定着装置を、固定支持された加熱体と、該加熱体に対向圧接し、且つ、フィルムを介して該加熱体に密着させる加圧部材により、トナー画像を転写材に加熱加圧定着するものとした、
フルカラー画像を形成する方法。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)当審拒絶理由で引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-133423号公報(以下「引用例2」という。)」には次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、帯電性をはじめとする諸特性に優れ、電子写真法等による画像形成の際に好適に用いられる静電荷像現像用トナーを効率的に製造する方法、該方法により製造される静電荷像現像用トナー、並びに、該静電荷像現像用トナーを用いた静電荷像現像剤及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真法等のように、静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在各種の分野で広く利用されている。前記電子写真法においては、帯電工程、露光工程等を経て感光体上に静電荷像を形成し、トナー粒子を含有する現像剤を用いて前記静電荷像を現像し、転写工程、定着工程等を経て前記静電荷像が可視化される。
【0003】ところで、前記現像剤には、トナー粒子及びキャリア粒子を含有してなる二成分系現像剤と、磁性トナー粒子又は非磁性トナー粒子を含有してなる一成分系現像剤とが知られている。前記現像剤におけるトナー粒子は、通常、混練粉砕法により製造される。この混練粉砕法は、熱可塑性樹脂等を顔料、帯電制御剤、ワックスなどの離型剤等と共に溶融混練し、冷却後にこの溶融混練物を微粉砕し、これを分級して所望のトナー粒子を製造する方法である。なお、前記混練粉砕法により製造されたトナー粒子には、流動性やクリーニング性等を改善する目的で、さらに必要に応じてその表面にさらに無機及び/又は有機の微粒子が添加されたりする。
【0004】前記混練粉砕製法により製造されるトナー粒子の場合、通常、その形状は不定型であり、その表面組成は均一でない。使用材料の粉砕性や粉砕工程の条件により、トナー粒子の形状や表面組成は微妙に変化するものの、意図的にこれらを所望の程度に制御することは困難である。また、特に粉砕性の高い材料を用いて前記混練粉砕法により製造されたトナー粒子の場合、現像機内での種々の剪断力等の機械力等により、さらに微粉化されたり、その形状が変化されたりすることがしばしば起こる。その結果、前記二成分系現像剤においては、微粉化されたトナー粒子がキャリア表面へ固着して前記現像剤の帯電劣化が加速されたり、前記1成分系現像剤においては、粒度分布が拡大し、微粉化されたトナー粒子が飛散したり、トナー形状の変化に伴い現像性が低下し、画質の劣化が生じたりするという問題が生ずる。
【0005】トナー粒子の形状が不定型である場合、流動性助剤を添加しても流動性が十分でなく、使用中に剪断力等の機械力により、前記流動性助剤の微粒子がトナー粒子における凹部へ移動してその内部への埋没し、経時的に流動性が低下したり、現像性、転写性、クリーニング性等が悪化したりするという問題がある。また、このようなトナーをクリーニング処理により回収して再び現像機に戻して再利用すると、画質の劣化が生じ易いという問題がある。これらの問題を防ぐため、さらに流動性助剤の量を増加することも考えられるが、この場合、感光体上への黒点の発生や流動性助剤の粒子飛散を招くという問題が生ずる。
【0006】一方、ワックスなどの離型剤を内添してなるトナーの場合、熱可塑性樹脂との組み合せによっては、トナー粒子の表面に前記離型剤が露出することがある。特に高分子量成分により弾性が付与されたやや粉砕されにくい樹脂と、ポリエチレンのような脆いワックスとを組み合せてなるトナーの場合、トナー粒子の表面にポリエチレンの露出が多く見られる。このようなトナーは、定着時の離型性や感光体上からの未転写トナーのクリーニングには有利であるものの、トナー粒子の表面のポリエチレンが、現像機内での剪断力等の機械力により、トナー粒子から脱離し容易に現像ロールや感光体やキャリア等に移行するため、これらの汚染が生じ易くなり、現像剤としての信頼性が低下するという問題がある。
【0007】このような事情の下、近年、粒子の形状及び表面組成を意図的に制御したトナーを製造する手段として、特開昭63-282752号公報や特開平6-250439号公報において、乳化重合凝集法が提案されている。前記乳化重合凝集法は、乳化重合により樹脂分散液を作成し、一方、溶媒に着色剤を分散させた着色剤分散液を作成し、これらを混合してトナー粒径に相当する凝集粒子を形成した後、加熱することによって融合し、トナー粒子を得る方法である。この乳化重合凝集法によると、加熱温度条件を選択することにより、トナー形状を不定形から球形まで任意に制御することができる。
【0008】しかし、この乳化重合凝集法の場合、均一な混合状態にある凝集粒子を融合するので、トナーにおける内部から表面にかけての組成が均一になり、意図的にトナーの粒子表面の構造及び組成を制御することは困難である。特に凝集粒子が離型剤を含有する場合は、融合した後のトナー粒子の表面に離型剤が存在し、フィルミングが発生したり、流動性付与のために用いた外添剤がトナーの内部へ埋没してしまうことがある。
【0009】電子写真プロセスにおいて、様々な機械的ストレス下でトナーの性能を安定に維持・発揮させるには、トナー粒子表面に離型剤が露出するのを抑制したり、トナー粒子の表面硬度を高めたり、トナー粒子表面の平滑性をより高めたりすることが必要となる。なお、前記離型剤は、トナー粒子表面に露出すると種々の問題を招き得るが、定着時におけるトナーの性能を考慮すると、トナー粒子の表面近傍に存在することが望ましい。
【0010】近年、高画質化への要求が高まり、特にカラー画像形成では、高精細な画像を実現するため、トナーの小径化傾向が顕著である。しかし、従来のトナーの粒度分布のままでは、単に小径化を図っても、前記粒度分布における微粉側のトナーの存在により、キャリアや感光体の汚染やトナー飛散の問題が著しくなり、高画質と高信頼性とを同時に実現することは困難である。高画質と高信頼性とを同時に実現するためには、トナーの粒度分布をシャープ化し、かつ小粒径化することが必要になる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、トナー粒子の表面から内部に至る構造及び組成を制御することにより、
1 帯電性、現像性、転写性、定着性、クリーニング性等の諸特性、特に帯電性に優れた静電荷像現像用トナー及び該静電荷像現像用トナーを用いた静電荷像現像剤を提供することを目的とする。
2 環境条件に影響を受けず前記諸性能、特に帯電性を安定に維持・発揮することができ、信頼性の高い静電荷像現像用トナー及び該静電荷像現像用トナーを用いた静電荷像現像剤を提供することを目的とする。
3 転写効率が高く、トナー消費量が少なく、しかも寿命の長い2成分系の静電荷像現像剤に好適な静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
4 前記諸特性に優れた静電荷像現像用トナーを容易にかつ簡便に製造し得る静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
5 高画質で信頼性の高いフルカラー画像を容易にかつ簡便に形成することのできる画像形成方法を提供することを目的とする。
6 クリーニング機構を有しない、いわゆるクリーナーレスシステムにおいて高画質を得ることができる画像形成方法を提供することを目的とする。
7 クリーナーから回収されたトナーを再使用する、いわゆるトナーリサイクルシステムにおいても適性が高く、高画質を得ることができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、(1) 少なくとも樹脂粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製する工程、前記凝集粒子分散液中に、樹脂微粒子を分散させてなる樹脂微粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に前記樹脂微粒子を付着させて付着粒子を形成する工程、及び、前記付着粒子を加熱し融合してトナー粒子を形成する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、前記トナー粒子中の樹脂のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法による分子量分布が少なくとも2つの極大又は肩を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【0013】(2) 樹脂微粒子中の樹脂の分子量が、凝集粒子中の樹脂の分子量よりも小さい前記(1)に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(3) 凝集粒子が、着色剤を含む前記(1)又は(2)に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(4) 凝集粒子が、離型剤を含む前記(1)から(3)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(5) トナー粒子中の樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が、少なくとも10である前記(1)から(4)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(6) 樹脂粒子の平均粒径が大きくとも1μmである前記(1)から(5)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(7) 樹脂微粒子の平均粒径が大きくとも1μmである前記(1)から(6)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(8) 樹脂微粒子の体積が、トナー粒子の体積の50%以下である前記(1)から(7)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(9) 2つの極大又は肩の内、低分子側の極大又は肩を形成する樹脂のガラス転移点が、高分子側の極大又は肩を形成する樹脂のガラス転移点よりも少なくとも3℃高い前記(1)から(8)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(10) 付着粒子を形成する工程を複数回行う前記(1)から(9)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(11) 付着粒子を形成する工程の後であってトナー粒子を形成する工程の前に、凝集粒子を、樹脂粒子中の樹脂のガラス転移点以下の温度で加熱する前記(1)から(10)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【0014】(12) 前記(1)から(11)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法により製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
(13) 画像解析によるトナー形状係数平均値(周囲長の二乗/投影面積)が105?140である前記(12)に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0015】(14) キャリアとトナーとを含有する静電荷像現像剤において、前記トナーが前記(12)又は(13)に記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする静電荷像現像剤である。
【0016】(15) 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程、現像剤担持体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程、及び前記トナー画像を転写体上に転写する転写工程を含む画像形成方法において、前記現像剤層が、前記(12)又は(13)に記載の静電荷像現像用トナーを含有することを特徴とする画像形成方法である。」

イ 「【0050】前記ゲル・パーミエーション・クロマトグラフは、市販の装置を用いて公知のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法に従って実施することができる。前記ゲル・パーミエーション・クロマトグラフにおいては、一般にポリスチレン基準カラム、テトラヒドロフランを用いて行われる。」

ウ 「【0085】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<第1工程>
--分散液(1)の調製--
スチレン・・・・・・・・・・・・・・・360g
nブチルアクリレート・・・・・・・・・ 40g
アクリル酸・・・・・・・・・・・・・・ 8g
ドデカンチオール・・・・・・・・・・・ 16g
四臭化炭素・・・・・・・・・・・・・・ 3g
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(花王(株)製:エマルゲン840)9g及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10gをイオン交換水500gに溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水100gを投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が160nm、ガラス転移点が59℃、重量平均分子量(Mw)が16,200、分子量分布(Mw/Mn)が3.20である樹脂粒子を分散させてなる分散液(1)を調製した。
【0086】--分散液(2)の調製--
スチレン・・・・・・・・・・・・・・・280g
nブチルアクリレート・・・・・・・・・120g
アクリル酸・・・・・・・・・・・・・・ 8g
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(花王(株)製:エマルゲン840)9g及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)12gをイオン交換水500gに溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム2gを溶解したイオン交換水100gを投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続し、平均粒径が95nm、ガラス転移点が54℃、重量平均分子量(Mw)が700,000、分子量分布(Mw/Mn)が10.5である樹脂粒子を分散させてなる分散液(2)を調製した。
【0087】--着色剤分散液(1)の調製--
カーボンブラック・・・・・・・・・・・ 50g(キャボット社製:リーガル300)
非イオン性界面活性剤・・・・・・・・・ 5g(三洋化成(株)製:ノニポール400)
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・200g
以上を混合し、溶解し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)を用いて10分間分散し、平均粒径が250nmである着色剤(カーボンブラック)を分散させてなる着色剤分散液(1)を調製した。
【0088】--離型剤分散液(1)の調製--
パラフィンワックス・・・・・・・・・・ 50g(日本精蝋(株)製:HNP0190、融点85℃)
カチオン性界面活性剤・・・・・・・・・ 5g(花王(株)製:サニゾールB50)
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・200g
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が550nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(1)を調製した。
【0089】--凝集粒子の調製--
分散液(1)・・・・・・・・・・・・120g
分散液(2)・・・・・・・・・・・・ 70g
着色剤分散液(1)・・・・・・・・・ 30g
離型剤分散液(1)・・・・・・・・・ 40g
カチオン性界面活性剤・・・・・・・・1.5g
(花王(株)製:サニゾールB50)
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。50℃で30分間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約5.5μmである凝集粒子(体積:85cm^(3))が形成されていることが確認された。
【0090】<第2工程>
--付着粒子の調製--
ここに、樹脂微粒子分散液としての分散液(1)を緩やかに50g追加した。なお、前記樹脂微粒子分散液としての分散液(1)に含まれる樹脂微粒子の体積は20cm^(3)であった。そして、加熱用オイルバスの温度を50℃で1時間保持した。光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約6.0μmである付着粒子が形成されていることが確認された。
【0091】<第3工程>その後、ここにアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)5gを溶解した水溶液25g(アニオン性界面活性剤20%)を追加した後、前記ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら、110℃まで加熱し、2時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、熱風乾燥機を用いて乾燥させることにより、静電荷像現像用トナーを得た。
【0092】<評価>得られた静電荷像現像用トナーにつき、コールターカウンターを用いてその平均粒径を測定してみると、6.2μmであった。また、体積粒度分布の指標である体積GSDを測定してみると、1.22であった。この静電荷像現像用トナーにおける分子量分布をゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法分子量分布測定機(東ソー社製、HLC8120)を用いて測定したところ、重量平均分子量が15,000と60万との2箇所に極大点がみられ、全体の分子量分布Mw/Mnは36.0であった。また、電子顕微鏡にてその表面状態を観察すると、静電荷像現像用トナーの表面へのワックス状物の露出は僅かであり、遊離しているワックス状物は僅かにしか観られなかった。光学顕微鏡から入力したトナー拡大画像を画像解析装置トナー形状係数平均値(周囲長2乗/投影面積、サンプリングトナー数約200)を測定してみたところ、128.5であった。この静電荷像現像用トナーを45℃で24時間放置したところ、ブロッキングの発生は全く観られなかった。
【0093】次に、この静電荷像現像用トナー100重量部に対し、0.8重量部の疎水性シリカ(TS720、キャボット社製)を加え、サンプルミルにてブレンドした。こうした静電荷像現像用トナーを、ポリメチルメタクリレート(総研化学社製)を1%コートした平均粒径が50μmであるフェライトキャリアに対しトナー濃度が5重量%となるようにガラス瓶に秤量し、Vブレンダーにて混合して静電荷像現像剤を作製した。前記静電荷像現像用トナーにつき、富士ゼロックス(株)製V500改造機で堅牢性試験機でウエス摺擦により定着評価を行ったところ、132℃のヒートロール温度で十分な定着性を示し、オフセットは235℃までその発生は観られなかった。前記静電荷像現像剤を用いて、連続走行試験を行ったところ、コピー1万枚後においても画像が安定し、感光体へのフィルミングの発生も観られなかった。また、連続走行試験中の感光体から転写紙上へのトナー転写効率も93?96%という高い値を示した。」

エ 上記アないしウからみて、引用例2には、
「電子写真法等による画像形成の際に好適に用いられる静電荷像現像用トナーを効率的に製造する方法により製造される静電荷像現像用トナーにおいて、
混練粉砕製法により製造されるトナー粒子の場合、二成分系現像剤においては、微粉化されたトナー粒子がキャリア表面へ固着して前記現像剤の帯電劣化が加速するという問題が生じ、1成分系現像剤においては、粒度分布が拡大し、微粉化されたトナー粒子が飛散したり、トナー形状の変化に伴い現像性が低下し、画質の劣化が生じたりするという問題が生じ、経時的に流動性が低下したり、現像性、転写性、クリーニング性等が悪化したりするという問題があり、トナー粒子の表面のポリエチレンが、現像ロールや感光体やキャリア等に移行し、これらの汚染が生じ易くなり、現像剤としての信頼性が低下するという問題があるというような事情の下、
近年、粒子の形状及び表面組成を意図的に制御したトナーを製造する手段として、乳化重合により樹脂分散液を作成し、一方、溶媒に着色剤を分散させた着色剤分散液を作成し、これらを混合してトナー粒径に相当する凝集粒子を形成した後、加熱することによって融合し、トナー粒子を得る乳化重合凝集法が提案され、この乳化重合凝集法により、加熱温度条件を選択することにより、トナー形状を不定形から球形まで任意に制御することができるようになったが、この乳化重合凝集法の場合、均一な混合状態にある凝集粒子を融合するので、トナーにおける内部から表面にかけての組成が均一になり、意図的にトナーの粒子表面の構造及び組成を制御することが困難であり、特に凝集粒子が離型剤を含有する場合は、融合した後のトナー粒子の表面に離型剤が存在し、フィルミングが発生したり、流動性付与のために用いた外添剤がトナーの内部へ埋没してしまうことがあったので、
トナー粒子の表面から内部に至る構造及び組成を制御することにより、従来における諸問題を解決し、帯電性、現像性、転写性、定着性、クリーニング性等の諸特性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することを目的として、
少なくとも樹脂粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製する工程、前記凝集粒子分散液中に、樹脂微粒子を分散させてなる樹脂微粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に前記樹脂微粒子を付着させて付着粒子を形成する工程、及び、前記付着粒子を加熱し融合してトナー粒子を形成する工程を含む方法で製造した静電荷像現像用トナーであって、前記トナー粒子中の樹脂のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法による分子量分布がポリスチレン基準で少なくとも2つの極大を有した静電荷像現像用トナーであって、
スチレン360g、nブチルアクリレート40g、アクリル酸8g、ドデカンチオール16g、四臭化炭素3gを混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤9g及びアニオン性界面活性剤10gをイオン交換水500gに溶解したものに分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水100gを投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続して、平均粒径が160nm、ガラス転移点が59℃、重量平均分子量(Mw)が16,200、分子量分布(Mw/Mn)が3.20である樹脂粒子を分散させてなる分散液(1)を調製し、スチレン280g、nブチルアクリレート120g、アクリル酸8gを混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤9g及びアニオン性界面活性剤12gをイオン交換水500gに溶解したものに分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム2gを溶解したイオン交換水100gを投入し、窒素置換を行った後、攪拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続し、平均粒径が95nm、ガラス転移点が54℃、重量平均分子量(Mw)が700,000、分子量分布(Mw/Mn)が10.5である樹脂粒子を分散させてなる分散液(2)を調製し、平均粒径が250nmである着色剤を分散させてなる着色剤分散液(1)を調製し、平均粒径が550nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(1)を調製し、次に、分散液(1)120g、分散液(2)70g、着色剤分散液(1)30g、離型剤分散液(1)40g、カチオン性界面活性剤1.5g、を混合し、分散した後、攪拌しながら48℃まで加熱し、50℃で30分間保持して、平均粒径が約5.5μmである凝集粒子を形成し、樹脂微粒子分散液としての分散液(1)を緩やかに50g追加し、50℃で1時間保持して平均粒径が約6.0μmである付着粒子を形成し、その後、ここにアニオン性界面活性剤5gを溶解した水溶液25gを追加した後密閉し、攪拌を継続しながら、110℃まで加熱し、2時間保持して、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、熱風乾燥機を用いて乾燥させることにより得た静電荷像現像用トナーであって、
平均粒径が6.2μmであり、
分子量分布をゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法分子量分布測定機を用いて測定したところ、重量平均分子量がポリスチレン基準で15,000と60万との2箇所に極大点がみられ、
45℃で24時間放置してもブロッキングの発生は全く観られず、
132℃のヒートロール温度で十分な定着性を示し、オフセットは235℃までその発生は観られない、
静電荷像現像用トナー。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(3)当審拒絶理由で引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-327335号公報(以下「引用例3」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0185】図1にて説明した画像形成装置の変形例を図20に示す。
【0186】本例は、像形成体を4組並列に配置して、Y、M、C、Kのトナー像を形成し、順次転写してゆくタンデムカラー画像形成装置によるカラー画像形成例である。
【0187】図20によれば、感光体ドラム10(像形成体)、スコロトロン帯電器11(帯電手段)、露光光学系12(画像書込手段)、現像器13(現像手段)及びクリーニング装置19(像形成体クリーニング手段)よりなるY,M,C及びKのトナー像形成ユニット200を設け、Y,M,C及びKのトナー像形成ユニット200により形成したトナー像を第1の転写手段としての転写器14cにより順次転写(1次転写)して中間転写体である中間転写ベルト14a上に裏面画像となる重ね合わせカラートナー像を形成した後、転写ベルト14a上に転写材である記録紙Pを供給し、さらに記録紙P及び裏面画像と同期して、Y,M,C及びKのトナー像形成ユニット200により順次表面画像となるトナー像を再度形成し、第2の転写手段としての転写器14cにより記録紙Pの表面に順次転写(2次転写)した後、中間転写ベルト14a上の裏面トナー像を第3の転写手段である裏面転写器14gにより記録紙Pの裏面に転写(3次転写)して記録紙P上に表裏のカラートナー像を形成し、両面画像を得るようにするものである。
【0188】両面にカラートナー像が形成された記録紙Pは、中間転写ベルト14aの曲率部KTの曲率と、中間転写ベルト14aの端部に必要に応じて設けられる転写材分離手段としての紙分離AC除電器14hによる除電作用と、中間転写ベルト14aと所定の間隔を空けて搬送部160に設けられる分離部材である分離爪210とにより、中間転写ベルト14aから分離され、搬送部160に設けられた拍車部材である拍車162、さらに進入ガイド板169等により安定して転写材搬送面(中間転写ベルト14aの曲率部KTと定着装置17のニップ部Tへの転写材の入り口部(進入部)とを結ぶ面)PL1上を通して定着手段としての定着装置17へと搬送され、上側のフィルム状回転部材である熱定着フィルム17aと下側のフィルム状回転部材である熱定着フィルム17bとの間のニップ部Tで熱と圧力とを加えられることにより記録紙P上の表裏のトナー像が定着された後、機外へ排出される。
【0189】上記の定着手段としては、図5にて説明したと同一の構造、機能、性能の定着装置17を用いたものであり、これにより前記図6ないし図8にて説明した、両面画像形成時や表面のみの片面画像形成時や裏面のみの片面画像形成時の定着装置17の温度制御が行われる。また、本例の画像形成装置においても、図9ないし図13にて説明したと同様な構造、機能、性能の定着手段が用いられる。さらに本例の画像形成装置における各定着手段の上下のフィルム状回転部材のフィルム部材のニップ部Tの分離部における好ましい形状と配置とは、図14及び図15にて説明したと同様であり、また、上下のフィルム状回転部材のフィルム部材のニップ部Tの進入部における好ましい配置は、図16にて説明したと同様のものであり、図17及び図18にて説明したと同様なループ形成が取られるものである。」

イ 上記アからみて、引用例3には、
「熱定着フィルムとの間のニップ部で熱と圧力とを加えられることにより記録紙上のトナー像を定着する定着装置を備えた画像形成装置であって、像形成体を4組並列に配置して、Y、M、C、Kのトナー像を形成し、順次転写してゆくタンデム方式のカラー画像形成装置。」(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「『感光体』である『感光体ドラム』」、「トナー」、「加熱加圧定着装置」、「画像露光手段」、「現像器」、「カラー画像形成装置」、「トナー像」、「現像工程」、「『転写部材』である『電圧が印加されている転写ローラーからなる転写帯電器』」、「紙の如き転写材」、「転写工程」、「定着装置」、「『複写物又はプリントを得る』、『フルカラー画像を形成する』」、「定着工程」、「画像形成方法」、「固定支持された加熱体」、「フィルム」、「加圧部材」、「加熱体に対向圧接し、且つ、フィルムを介して該加熱体に密着させる加圧部材」、「結着樹脂」、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)」及び「『メインピーク』の『分子量』」は、それぞれ、本願発明の「『感光体』、『電子写真感光体』」、「トナー」、「定着装置」、「露光装置」、「現像部」、「『フルカラー』方式『画像形成装置』」、「トナー像」、「現像工程」、「『電子写真感光体上のトナー像』を、『記録材に接触させながら該記録材上へ転写』する『電圧が印加されている転写部材』」、「記録材」、「転写工程」、「定着装置」、「定着画像を得る」、「定着工程」、「画像形成方法」、「固定支持された加熱体」、「定着フィルム」、「加圧部材」、「加熱体に対向配置され、且つ定着フィルムを介して該加熱体に圧接する加圧部材」、「バインダー樹脂」、「ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー」及び「最大ピーク分子量」に相当する。

(2)引用発明1の「定着装置(加熱加圧定着装置)」は、固定支持された加熱体と、該加熱体に対向圧接し、且つ、フィルムを介して該加熱体に密着させる加圧部材により、トナー画像を転写材に加熱加圧定着するものであるから、上記(1)に照らせば、本願発明の「定着装置」と、「固定支持された加熱体と、該加熱体に対向配置され、且つ定着フィルムを介して該加熱体に圧接する加圧部材とを有し、該トナー像が該定着フィルムと接するよう、該記録材を該定着フィルムと該加圧部材との間に位置させるもの」である点で一致するといえる。

(3)引用発明1において、「バインダー樹脂(結着樹脂)」の分子量は、「ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC))」により標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い測定されるから、ポリスチレン換算であって、そのメインピークは、実施例としては1.3万ないし4.5万である。したがって、引用発明1の「バインダー樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定した最大ピーク分子量」の範囲と本願発明の「バインダー樹脂ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定した最大ピーク分子量」の範囲とは「ポリスチレン換算で1.3万ないし4.5万」の範囲で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明1とは、
「少なくとも感光体、トナー、定着装置、及び露光装置を備えたフルカラー方式画像形成装置を用い、電子写真感光体上にトナー像を形成する現像工程と、該電子写真感光体上のトナー像を、電圧が印加されている転写部材を記録材に接触させながら該記録材上へ転写する転写工程と、転写されたトナー像を定着装置で記録材上に定着して定着画像を得る定着工程とを少なくとも有する画像形成方法において、前記定着工程において使用する定着装置が、固定支持された加熱体と、該加熱体に対向配置され、且つ定着フィルムを介して該加熱体に圧接する加圧部材とを有し、該トナー像が該定着フィルムと接するよう、該記録材を該定着フィルムと該加圧部材との間に位置させるものであり、該トナーのバインダー樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定した最大ピーク分子量がポリスチレン換算で1.3万ないし4.5万である画像形成方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記トナーが、本願発明では「乳化重合凝集法」により製造されたものであり、そのバインダー樹脂が、「少なくともスチレンとアルキル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有」し、そのバインダー樹脂のガラス転移点温度が「70℃以下」のものであるのに対して、引用発明1ではそのようなものではない点。

相違点2:
前記フルカラー方式画像形成装置が、本願発明では「ブラック現像部がカラー現像部より後方に位置するフルカラータンデム方式」のものであるのに対して、引用発明1では、3色のカラートナー画像の形成及び転写材への転写を順次行い、同様にブラックトナー画像の形成及び前記の3色のカラートナー画像を順次転写した転写材へのブラックトナー画像の転写を行って、4色のトナー画像を転写材に転写し、該4色のトナー画像を有する転写材を加熱加圧定着装置により熱及び圧力の作用で定着することによりフルカラー画像を形成することができるものではあるが、「ブラック現像部がカラー現像部より後方に位置するフルカラータンデム方式」のものかどうかは不明である点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
ア 引用例2には、上記3(2)のとおり、引用発明2(上記3(2)エ参照。)が記載されている。
イ 引用発明2の静電荷像現像用トナーにおいて、トナー粒子中の樹脂のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法による分子量分布は、ポリスチレン基準で少なくとも2つの極大を有しており、その2つの極大点の値は15,000と60万であるところ、分散液(1)の樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)が16,200であり、分散液(2)の樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)が700,000であり、分散液(1)及び分散液(2)のそれぞれの混合量は、120g及び70gであり、さらに分散液(1)を50g追加していることからみて、トナー粒子中の樹脂のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法による分子量分布におけるメインピークのポリスチレン基準での分子量の値は15,000の方であるといえる。
ウ 引用発明2の静電荷像現像用トナーは、45℃で24時間放置してもブロッキングの発生は全く観られず、132℃のヒートロール温度で十分な定着性を示し、オフセットは235℃までその発生は観られない性能のものである。
エ 引用発明1のフルカラー画像を形成する方法は、トナーの低温定着性や耐高温オフセット性の向上、さらに耐ブロッキング性の向上を目的とした従来のトナーは、得られる樹脂のピーク分子量が5万を超えており、低温定着性に関してはさらに改善が必要であるといった問題点があったので、これらの問題点を解消するために、トナーの結着樹脂のTHFの可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い測定される分子量のメインピークが、3,000よりも小さいと高温オフセットやブロッキングを生じることがあり、50,000よりも大きいと低温定着性が低下するので、この分子量のメインピークを3,000?5万の領域内としたトナーを用いた方法であって、使用するトナーは、最低定着温度が120℃ないし150℃であり、耐高温オフセット温度が180℃ないし220℃であって、最低定着温度と耐高温オフセット温度との温度差が40℃ないし90℃となる性能のものである。
しかるところ、上記イ及びウに照らせば、引用発明2の静電荷像現像用トナーの性能は、引用発明1で使用するトナーの性能と比較して、低温定着性や耐高温オフセット性の点で優れているといえ、耐ブロッキング性についても同等か同等以上の性能であるといえるから、引用発明1において、トナーを、低温定着性、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性を総合した性能の点でさらに性能が優れている引用発明2のトナーとなすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことである。
オ 引用発明2の静電荷像現像用トナーも、引用発明2における従来の乳化重合凝集法と同様の方法、すなわち、乳化重合により樹脂分散液(1)及び(2)を作成し、溶媒に着色剤を分散させた着色剤分散液(1)を作成し、これらを混合して平均粒径が約5.5μmである凝集粒子を形成した後、110℃まで加熱してできた反応生成物をろ過・洗浄・乾燥して、平均粒径が6.2μmのトナー粒子を得る方法で製造したものであるから、乳化重合凝集法で製造したものといえる。
カ 引用発明2の静電荷像現像用トナーは、スチレン360g、nブチルアクリレート40g、アクリル酸8g、ドデカンチオール16g、四臭化炭素3gを混合し、溶解したものを乳化重合して調製した、ガラス転移点が59℃である樹脂粒子を分散させてなる分散液(1)120g、スチレン280g、nブチルアクリレート120g、アクリル酸8gを混合し、溶解したものを乳化重合して調製した、ガラス転移点が54℃である樹脂粒子を分散させてなる分散液(2)70g、着色剤分散液(1)30g、離型剤分散液(1)40g、カチオン性界面活性剤1.5gを混合し、さらに分散液(1)を50g追加して製造したものであるから、そのバインダー樹脂は、少なくともスチレンとアルキル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有したものであるといえ、かつ、ガラス転移点温度が70℃以下のものであるといえる。
キ 上記アないしカからして、引用発明1において、トナーを、引用発明2のトナーとなすこと、すなわち、引用発明1において、トナーを、乳化重合凝集法により製造されたものであり、かつ、そのバインダー樹脂が、少なくともスチレンとアルキル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有し、ガラス転移点温度が70℃以下のものであるトナーとなすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことである。
したがって、引用発明1において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

(2)相違点2について
ア 感光体上にトナー像を形成する現像工程と、該感光体上のトナー像を、転写ローラーを記録材に接触させながら該記録材上へ転写する転写工程と、転写されたトナー像を定着装置で記録材上に定着して定着画像を得る定着工程とを有する画像形成方法に用いる画像形成装置として、感光体と、該感光体を帯電する一次帯電器と、均一に帯電した感光体に静電荷像を形成する画像露光手段と、該静電荷像の現像を行いトナー画像を形成する現像器と、搬送されてきた転写材に現像されたトナー画像を直接転写する転写ローラーと、転写された4色のトナー画像を有する転写材を定着する定着装置とを備え、ブラック現像部がカラー現像部より転写材搬送方向下流側に位置するフルカラータンデム方式画像形成装置は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開平11-73037号公報(【0011】、【0015】、図1及び図2参照。)、特開平11-24368号公報(図1及び図5参照。)、特開平10-48906号公報(【0016】及び図1に注目。)、特開平9-277608号公報(【0026】及び図1参照。)、特開平9-230659号公報(図1参照。)、特開平9-80876号公報(【0013】、【0014】及び図2参照。))。
イ 引用例3には、上記3(3)のとおり、引用発明3(上記3(3)イ参照。)が記載されている。
ウ 引用発明1のフルカラー画像を形成する方法で用いるカラー画像形成装置は、感光体と、該感光体を帯電する一次帯電器と、均一に帯電した感光体に静電荷像を形成する画像露光手段と、該静電荷像の現像を行いトナー画像を形成する現像器と、搬送されてきた転写材に現像されたトナー画像を直接的、或いは間接的手段を用い転写する転写ローラーと、転写された4色のトナー画像を有する転写材を定着する定着装置とを有するものであり、3色のカラートナー画像の形成及び転写材への転写を順次行い、同様にブラックトナー画像の形成及び前記の3色のカラートナー画像を順次転写した転写材へのブラックトナー画像の転写を行って、4色のトナー画像を転写材に転写し、該4色のトナー画像を有する転写材をフィルムを介して加熱体に密着させ定着する加熱加圧定着装置により熱及び圧力の作用で定着することによりフルカラー画像を形成することができるものではあるところ、周知技術のフルカラータンデム方式画像形成装置でも3色のカラートナー画像の形成及び転写材への転写を順次行い、同様にブラックトナー画像の形成及び前記の3色のカラートナー画像を順次転写した転写材へのブラックトナー画像の転写を行って、4色のトナー画像を転写材に転写し、該4色のトナー画像を有する転写材を加熱加圧定着装置により熱及び圧力の作用で定着することによりフルカラー画像を形成することができることは当業者に自明であり、4色のトナー画像を有する転写材をフィルムを介して加熱体に密着させ定着する加熱加圧定着装置を備えた画像形成装置を、像形成体を4組並列に配置して、3色カラー及びブラックのトナー像を形成し、順次転写してゆくタンデム方式のカラー画像形成装置とすることに阻害要因がないことが引用発明3からみて明らかであるから、引用発明1において、フルカラー方式画像形成装置を、ブラック現像部がカラー現像部より後方に位置するフルカラータンデム方式のものにすること、すなわち、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用発明3及び周知技術に基づいて容易に想到することはできた程度のことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、引用発明2の奏する効果、引用発明3の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、上記5のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-31 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-27 
出願番号 特願2008-8633(P2008-8633)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 清水 康司
立澤 正樹
発明の名称 画像形成方法及び画像形成装置  
代理人 伊藤 佐保子  
代理人 齋藤 房幸  
代理人 川田 秀美  
代理人 津国 肇  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ