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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1264606
審判番号 不服2012-1716  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-30 
確定日 2012-10-12 
事件の表示 特願2006-146273「偏光子保護フィルム、偏光板、および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日出願公開、特開2007-316366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本件の経緯
本願は、平成18年5月26日の出願であって、平成23年7月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月9日に手続補正がなされ、同年10月24日付けて拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年1月30日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。


2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年9月9日付け手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次ののものと認める。

「ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む透明樹脂層の少なくとも片面に、厚みが0.5?2.5μmであるセルロース系樹脂層を有する、偏光子保護フィルム。」


3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-96960号公報(以下「引用例」という。)」には以下の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。)。

(1)「【0001】
本発明は、光学用保護フィルム、光学フィルム、光学シートなどの光学用途に好適な、ラクトン環含有重合体を主成分として含む光学用面状熱可塑性樹脂成形体に関する。」

(2)「【0015】
ラクトン環含有重合体は、一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、特に限定されないが、ラクトン環含有重合体の製造方法として後に説明するような、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2a)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。」

(3)「【0059】
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、ASTM-D-882-61Tに基づいて測定した引張弾性率が0.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは1GPa以上、さらに好ましくは2GPa以上である。上限は特に限定されないが、通常は20GPa以下が好ましい。0.5GPa未満の場合には、十分な機械的強度を発現できなくなるおそれがあるため好ましくない。
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体には、目的に応じて、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー性等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体に各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層した積層体であってもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。」

(4)「【0066】
〔光学用保護フィルム〕
本発明にかかる前記光学用面状熱可塑性樹脂成形体の一つの好ましい形態は、光学用保護フィルム(以下、本発明の光学用保護フィルムと称することがある)である。
本発明の光学用保護フィルムは、透明光学部品を保護するフィルムであれば特に限定されないが、好ましい具体例としては、液晶表示装置用の偏光板の保護フィルムである。また、位相差フィルムを兼ねた光学用保護フィルムとすることもできる。
本発明の光学用保護フィルムは、未延伸フィルムであっても良いし、延伸フィルムであっても良い。」

(5)「【0100】
〔実施例5〕
実施例1で得られたフィルム(1B)をポリビニルアルコールからなる偏光膜の両面に貼り合わせて偏光板(P1)を得た。この偏光板(P1)をクロスニコルで重ね合わせて、光の抜けを観察したところ、重なった部分の光り抜け(輝点)は観察されなかった。
なお、偏光板の概略図を図1に示した。」

(6) 上記(1)ないし(5)からみて、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ラクトン環構造と(メタ)アクリル酸エステルとを重合して構築される構造を有する光学用面状熱可塑性樹脂成形体に易接着層を積層塗工し、偏光膜の両面に貼り合わせて偏光板を得るのに用いられる偏光板の保護フィルム。」


4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用発明の「ラクトン環構造と(メタ)アクリル酸エステルとを重合して構築される構造を有する光学用面状熱可塑性樹脂成形体」、「偏光膜」及び「偏光板の保護フィルム」は、それぞれ、本願発明の「ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む透明樹脂層」、「偏光子」及び「偏光子保護フィルム」に相当する。

(2) 本願明細書の【0016】の記載によれば、本願発明の「セルロース系樹脂層」は、偏光子と透明樹脂層との接着性を向上させるために設けたものであり、一方、引用発明の「易接着層」は、その名称からみて、偏光膜(偏光子)接着する面と光学用面状熱可塑性樹脂成形体(透明樹脂層)の接着する面との接着性を向上させるために積層塗工したものと認められるから、引用発明の偏光板の保護フィルム(偏光子保護フィルム)と本願発明の偏光子保護フィルムとは、「透明樹脂層の少なくとも片面に接着性を向上させるための層を有する」点で共通する。

(3) 上記(1)及び(2)から、本願発明と引用発明とは、
「ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む透明樹脂層の少なくとも片面に接着性を向上させるための層を有する偏光子保護フィルム。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
前記接着性を向上させるための層が、本願発明では「厚みが0.5?2.5μmであるセルロース系樹脂層」であるのに対して、引用発明では、その材料及び厚さが明らかでない点。

5 判断
上記[相違点]について検討する。
(1) 透明樹脂フィルムの一方の側に易接着層を設けた偏光板用保護フィルムであって、透明樹脂フィルムとしてアクリルフィルムを採用し、易接着層の材料としてセルロース系樹脂を用いたものは、本願の出願前に周知であり(以下「周知技術1」という。例.特開平9-113728号公報(【0001】、【0021】、【0044】及び【0045】参照。「親水性セルローズ誘導体」が「セルロース系樹脂」に相当する。)、特開平9-203810号公報(【0001】、【0032】、【0185】及び【0186】参照。「セルロースメチルエーテル」が「セルロース系樹脂」に相当する。)、特開2003-131034号公報(【0040】、【0041】、【0048】及び【0069】参照。「ポリアクリレート樹脂またはポリメタクリレート樹脂を用いた偏光子保護フィルム」が「透明樹脂フィルムとしてアクリルフィルムを採用した偏光板用保護フィルム」に相当し、「セルロース誘導体」が「セルロース系樹脂」に相当する。)、特開2004-37880号公報(【0024】及び【0032】参照。「アクリル系ポリマーで形成した透明保護層」が「アクリルフィルム」に相当し、「セルロース系材料」が「セルロース系樹脂」に相当する。)、特開2002-303724号公報(【0021】、【0064】及び【0069】参照。「樹脂組成としてポリアクリレート樹脂またはポリメタクリレート樹脂を用いた高分子フィルム」が「アクリルフィルム」に相当し、「セルロースエステル層」が「セルロース系樹脂を用いた易接着層」に相当する。))、該周知技術1において前記易接着層の厚さが1μm程度のものも、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.上記特開2003-131034号公報(【0049】及び【0069】参照。)、上記特開2002-303724号公報(【0086】参照。))。

(2) 引用発明の光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、(メタ)アクリル酸エステルを含むからアクリルフィルムであるといえるところ、上記(1)からみて、引用発明において、アクリルフィルムである光学用面状熱可塑性樹脂成形体に積層塗工した易接着層の材料を、周知技術1及び2と同様に、セルロース系樹脂とするとともに、その厚みを周知技術2のように1μm程度とすることは、当業者が周知技術1及び2に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(3) 引用発明において、上記(2)のとおりにすると、引用発明の「接着性を向上させるための層(易接着層)」は、「厚みが1μm程度であるセルロース系樹脂層」となり、かつ、「1μm程度」が「0.5?2.5μm」の範囲内であることが明らかであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、上記(2)からみて、当業者が周知技術1及び2に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(4) 本願発明の効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術1及び2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(5) まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-09 
結審通知日 2012-08-15 
審決日 2012-08-28 
出願番号 特願2006-146273(P2006-146273)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 理弘  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 清水 康司
金高 敏康
発明の名称 偏光子保護フィルム、偏光板、および画像表示装置  
代理人 籾井 孝文  
代理人 籾井 孝文  

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