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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1264694
審判番号 不服2011-25421  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-25 
確定日 2012-10-09 
事件の表示 特願2006-271715「光ファイバテープ心線」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月24日出願公開、特開2007-128058〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1 手続の経緯

本願は、平成18年10月3日の出願であって、平成23年7月5日に手続補正がなされたが、同年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成23年11月25日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「単心光ファイバ心線を複数本横一列に配列し、配列された前記複数本の単心光ファイバ心線の外周に被覆材で一括被覆されることによって形成された第1の被覆層を有した一次光ファイバテープ並列ユニットを、少なくとも2枚横一列に配列し、配列された前記複数枚の一次光ファイバテープ並列ユニットの外周に被覆材で一括被覆されることによって形成された第2の被覆層を有した二次光ファイバテープ並列ユニットからなる光ファイバテープ心線であって、
前記一次光ファイバテープ並列ユニット内に並列された前記単心光ファイバ心線の横方向の共通接線から当該一次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第1の被覆層の外周面までの距離をt_(1)(mm)、前記一次光ファイバテープ並列ユニットの前記第1の被覆層の被覆材のヤング率(単位MPa)をE_(1)、前記一次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第1の被覆層の外周面から前記二次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第2の被覆層の外周面までの距離をt_(2)(mm)、前記二次光ファイバテープ並列ユニットの前記第2の被覆層の被覆材のヤング率(単位MPa)をE_(2)とした時、
前記一次光ファイバテープ並列ユニットの前記第1の被覆層の被覆材及び前記二次光ファイバテープ並列ユニットの前記第2の被覆層の被覆材は、
1≦E_(1)t_(1)≦20、
0.3≦E_(2)t_(2)≦10、および
E_(1)t_(1)>E_(2)t_(2)
の関係を満たすことを特徴とする、光ファイバテープ心線。」
(以下「本願発明」という。)

3 引用刊行物の記載

原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-90590号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

(1)「【請求項1】 2本の光ファイバ素線を第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層で被覆して一体化して2心ユニットとし、さらに前記2心ユニットの複数本を全ての光ファイバ素線が並列となるように配置して第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層で被覆して一体化してなる光ファイバテープ心線において、
前記第一の紫外線硬化樹脂及び前記第二の紫外線硬化樹脂がそれぞれ同一のオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂を硬化させて得られる引張り強度30?60MPaの紫外線硬化樹脂であることを特徴とする光ファイバテープ心線。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光ファイバテープ心線及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、互いに並列に配置された複数の光ファイバ心線が一体化された光ファイバテープ心線に関するものである。」

(3)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高い単心分離性及び強度を有しており、水中若しくは多湿雰囲気下で使用される場合であっても伝送損失の増加が十分に防止された光ファイバテープ心線、並びにその光ファイバテープ心線を効率よく且つ確実に得ることが可能な光ファイバテープ心線の製造方法を提供することを目的とする。」

(4)「【0019】図1は本発明の光ファイバテープ心線の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1において、光ファイバテープ心線1は互いに並列に配置された4本の光ファイバ素線2a?2dを備えている。一方の側の光ファイバ素線2a、2b及び他方の側の光ファイバ素線2a、2bはそれぞれ互いに接しており、互いに隣接する中間の2本の光ファイバ素線2b、2cは一定の間隔をもって離れている。そして、これらの2本ずつ(2aと2b、2cと2d)はそれぞれ紫外線硬化樹脂(第一の紫外線硬化樹脂)からなる内側一括被覆層3a、3bにより被覆されて一体化されて2心ユニット4a、4bを構成している。2心ユニット4a、4bは互いに隣接するように配置されており、これらは外側一括被覆層5で一体化されている。
【0020】ここで、内側一括被覆層3a、3bを構成する第一の紫外線硬化樹脂及び外側一括被覆層5を構成する第二の紫外線硬化樹脂は、それぞれ同一のオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂を硬化させて得られるものであり、これらの引張り強度は30?60MPaの範囲内であることが必要である。第一の紫外線硬化樹脂及び第二の紫外線硬化樹脂とがそれぞれ同一のオリゴマーを含まない紫外線硬化性樹脂を硬化させて得られるものである場合には、内側一括被覆層と外側一括被覆層との間の密着力が低下してしまい、水中若しくは多湿環境下での伝送損失の増加を十分に防止することができない。また、第一の紫外線樹脂及び第二の紫外線硬化樹脂のうちのいずれか一方でもその引張り強度が60MPaを超えると単心分離性が不十分となり、他方、30MPa未満であると光ファイバテープ心線の強度が不十分となってケーブル製造時又は敷設後の作業時等において少しの歪みに対しても光ファイバ素線が破損しやすくなる。
【0021】また、本発明にかかる第一の紫外線硬化樹脂は、前記紫外線硬化性樹脂を酸素濃度1?10容量%の雰囲気中で硬化させて得られるものであることが好ましい。紫外線硬化性樹脂を硬化させる際の雰囲気中の酸素濃度が1容量%未満であると、紫外線硬化性樹脂の硬化が過剰に進行しやすくなり、その結果、得られる第一の紫外線硬化樹脂の接着力が不十分となり内側一括被覆層と外側一括被覆層との間の密着力が低下して剥離が生じるなど強度が不十分となる傾向にある。また、紫外線硬化性樹脂としてアクリル系樹脂を用いる場合には、このように酸素濃度の低い雰囲気中で硬化を行うと嫌気性重合が起こりやすくなり、その結果、塗布装置などにおいてダイス詰まりを生じやすくなる。他方、酸素濃度が10容量%を超えると、樹脂の内・外部にわたって硬化が不十分となり、光ファイバ素線と内側一括被覆層との間の密着力が低下する傾向にある。
【0022】さらに、本発明にかかる第一の紫外線硬化樹脂及び第二の紫外線硬化樹脂のヤング率は、それぞれ400?1000MPaであることが好ましい。前記第一の紫外線硬化樹脂及び前記第二の紫外線硬化樹脂のうちのいずれか一方でもそのヤング率が400MPa未満であると、側圧等の外力を受けた場合に光ファイバ素線に応力が伝わりやすくなり伝送損失の増加が起こりやすくなる傾向にあり、特に、前記第二の紫外線硬化樹脂のヤング率が400MPa未満であるとテープ心線の表面にベタツキが生じる傾向にある。他方、紫外線硬化樹脂のヤング率が1000MPaを超えると、樹脂を硬化させる際の収縮応力が増加して光ファイバ素線に微小な曲がりが生じ、その結果、伝送損失が増加する傾向にある。
【0023】本発明において、前記第一の紫外線硬化樹脂及び前記第二の紫外線硬化樹脂の材料として用いられる各紫外線硬化性樹脂に共通して含有されるオリゴマーは、紫外線硬化性樹脂の主成分であり、通常、分子鎖の両端部に反応性基(炭素-炭素二重結合を有する炭化水素基など)を有する高分子化合物が用いられる。ここで、本発明で用いられるオリゴマーとしては、得られる紫外線硬化樹脂が上記の条件を満たす限り特に制限はないが、ウレタンアクリレート系樹脂を用いると、水中若しくは多湿環境下での伝送損失増加防止効果がより向上するとともに強度と単心分離性とをより高水準で両立することができるので好ましく、中でも、下記のオリゴマーA、B:
オリゴマーA:ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、トリレンジイソシアネート(TDI)及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の共重合体
オリゴマーB:ポリプロピレングリコール(PPG)、トリレンジイソシアネート(TDI)及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の共重合体
のうちの1種を単独で、または2種を組み合わせて用いることが特に好ましい。また、本発明において用いられるオリゴマーの分子量は、好ましくは600?4000であり、より好ましくは800?1000である。さらに、これらのオリゴマーの含有量は、紫外線硬化性樹脂全量を基準として好ましくは20?80重量%である。
【0024】本発明において使用される紫外線硬化性樹脂には、通常、上記のオリゴマーの他に希釈モノマー及び光開始剤が添加される。前記希釈モノマーとしては、具体的には、N-ビニルピロリドン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート及びこれらのうちの2種以上の混合物を用いることができ、その含有量は紫外線硬化性樹脂全量を基準として好ましくは20?80質量%である。また、前記光開始剤としては、イルガキュア184(チバスペシアリティケミカル社製)等の従来より公知のものを使用することができ、その含有量は紫外線硬化性樹脂全量を基準として好ましくは0.5?6.0重量%である。
【0025】本発明においては、上記の構成を有する紫外線硬化性樹脂の中でも、第一の紫外線硬化樹脂及び第二の紫外線硬化樹脂の材料として上記の各成分の種類及び配合量が同一の紫外線硬化性樹脂を用いることが特に好ましい。
【0026】本発明にかかる内側一括被覆層の膜厚は好ましくは5?100μmであり、より好ましくは10?80である。他方、本発明にかかる外側一括被覆層の膜厚は好ましくは5?100μmであり、より好ましくは3?20μmである。また、これらの両層の膜厚の合計は好ましくは10?150μmであり、より好ましくは15?90μmである。各層の膜厚又は両層の膜厚の合計がそれぞれ前記下限値未満であると、少しの側圧に対しても光ファイバ素線のガラスファイバが応力を受けて微小な曲がりが生じやすくなり、その結果、伝送特性が不十分となる傾向にある。他方、各層の膜厚又は両層の膜厚の合計が前記上限値を超えると、層が分断されにくくなって単心分離性が低下する傾向にある。
【0027】本発明おいて使用される光ファイバ素線としては特に制限はなく、従来より公知のものを使用することができるが、通常、ガラスファイバを樹脂からなる被覆層で被覆し、さらに樹脂からなる着色層で被覆したものが用いられる。そして、本発明においては、光ファイバ素線と内側一括被覆層との間の密着力は0.0098?0.490N/cmであることが好ましい。光ファイバ素線と内側一括被覆層との間の密着力が前記下限値未満であると、水中若しくは多湿環境下で使用する際に光ファイバ素線と内側一括被覆層との間にブリスター(水滴)が生じて伝送損失が増加する傾向にある。他方、光ファイバ素線と内側一括被覆層との間の密着力が前記上限値を超えると、単心分離性が低下する傾向にある。なお、ここでいう密着力とは、以下に示す方法で行われる180度ピール試験において測定される値[N/cm]をいう。先ず、スピンコーターを用いて光ファイバ素線の最外層(例えば、着色層)の原料をプラスチックフィルム上に膜厚約10μmとなるように塗布し、硬化させた後、さらにその上に内側一括被覆層の材料である紫外線硬化性樹脂を膜厚約75μmとなるように塗布し、窒素中にて照射光量100mJ/cm2の光照射を行い硬化させて内側一括被覆層を形成する。このようにして得られた多層フィルムの内側一括被覆層と該内側一括被覆層に隣接する層(例えば、着色層)とをピール速度200mm/minで引き剥がしたとの密着力[N/cm]が測定される。
【0028】このような構成を有する本発明の光ファイバテープ心線は十分に高い強度を有しており、製造時及び敷設後の作業時において光ファイバテープ素線が破損されにくいばかりでなく、水中若しくは多湿環境下で使用する場合であっても伝送損失の増加を十分に防止することができるものである。また、本発明の光ファイバテープ心線は十分に高い単心分離性を有しており、例えば図1において、A-A’に沿って外側一括被覆層5を分断して2心ユニット4a、4bを分離する作業、或いはB-B’に沿って内側一括被覆層3a及び外側一括被覆層5を分断して光ファイバテープ心線1から光ファイバ素線2aを分離する作業などを容易に且つ確実に行うことができる。
【0029】なお、図1には2本の2心ユニット4a、4bを備える光ファイバテープ心線を示したが、本発明においては2心ユニットの数(すなわち光ファイバテープ心線の数)に特に制限はなく、例えば、図2に示すように8本の光ファイバ素線2a?2hがそれぞれ2本ずつに分割された4本の2心ユニット4a?4dを備えるものであってもよい。」

(5)上記(4)【0019】の記載を踏まえて、図1をみると、2心ユニット4a及び4bは、光ファイバ素線2a?2dが一列になるように配置して第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層5で一体化されていることが理解できる。
なお、図1は、以下のとおりのものである。


4 引用発明

上記3(1)及び(5)によれば、引用刊行物には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「2本の光ファイバ素線を第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層で被覆して一体化して2心ユニットとし、さらに前記2心ユニットの複数本を全ての光ファイバ素線が一列に並列となるように配置して第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層で被覆して一体化してなる光ファイバテープ心線において、
前記第一の紫外線硬化樹脂及び前記第二の紫外線硬化樹脂がそれぞれ同一のオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂を硬化させて得られる引張り強度30?60MPaの紫外線硬化樹脂である光ファイバテープ心線。」
(以下「引用発明」という。)

5 対比

本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「光ファイバ素線」、「第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層」及び「第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層」は、本願発明の「単心光ファイバ心線」、「第1の被覆層」及び「第2の被覆層」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明の「(2本の光ファイバ素線を第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層で被覆して一体化した)2心ユニット」は、本願発明の「単心光ファイバ心線を複数本横一列に配列し、配列された前記複数本の単心光ファイバ心線の外周に被覆材で一括被覆されることによって形成された第1の被覆層を有した一次光ファイバテープ並列ユニット」に相当する。

(3)引用発明において、「前記2心ユニットの複数本を全ての光ファイバ素線が一列に並列となるように配置して第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層で被覆して一体化してなる」ものは、本願発明の「一次光ファイバテープ並列ユニットを、少なくとも2枚横一列に配列し、配列された前記複数枚の一次光ファイバテープ並列ユニットの外周に被覆材で一括被覆されることによって形成された第2の被覆層を有した二次光ファイバテープ並列ユニット」に相当する。

(4)以上によれば、両者は、
「単心光ファイバ心線を複数本横一列に配列し、配列された前記複数本の単心光ファイバ心線の外周に被覆材で一括被覆されることによって形成された第1の被覆層を有した一次光ファイバテープ並列ユニットを、少なくとも2枚横一列に配列し、配列された前記複数枚の一次光ファイバテープ並列ユニットの外周に被覆材で一括被覆されることによって形成された第2の被覆層を有した二次光ファイバテープ並列ユニットからなる光ファイバテープ心線」
である点で一致し、以下の点で相違する。

「本願発明は、前記一次光ファイバテープ並列ユニット内に並列された前記単心光ファイバ心線の横方向の共通接線から当該一次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第1の被覆層の外周面までの距離をt_(1)(mm)、前記一次光ファイバテープ並列ユニットの前記第1の被覆層の被覆材のヤング率(単位MPa)をE_(1)、前記一次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第1の被覆層の外周面から前記二次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第2の被覆層の外周面までの距離をt_(2)(mm)、前記二次光ファイバテープ並列ユニットの前記第2の被覆層の被覆材のヤング率(単位MPa)をE_(2)とした時、
前記一次光ファイバテープ並列ユニットの前記第1の被覆層の被覆材及び前記二次光ファイバテープ並列ユニットの前記第2の被覆層の被覆材は、
1≦E_(1)t_(1)≦20、
0.3≦E_(2)t_(2)≦10、および
E_(1)t_(1)>E_(2)t_(2)
の関係を満たすものであるのに対して、引用発明は、上記の関係を満たすものかどうか不明である点」(以下「相違点」という。)

6 判断

引用発明の第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層及び第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層について、それらの膜厚及びヤング率をどの程度とするかは、当業者が設計上適宜に決定すべき事項である。
しかるところ、上記4(4)のとおり、引用刊行物には、「本発明にかかる第一の紫外線硬化樹脂及び第二の紫外線硬化樹脂のヤング率は、それぞれ400?1000MPaであることが好ましい。」(【0022】)、「本発明にかかる内側一括被覆層の膜厚は好ましくは5?100μmであり、より好ましくは10?80(審決注:単位は「μm」であると解される。)である。他方、本発明にかかる外側一括被覆層の膜厚は好ましくは5?100μmであり、より好ましくは3?20μmである。」(【0026】)との記載がある。引用刊行物のかかる記載に基づき、例えば、引用発明において、第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層及び第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層のヤング率を600MPaとし、2心ユニットにおいて一体化された2本の光ファイバ素線の横方向の共通接線から当該2心ユニットの長辺側に位置する第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層の外周面までの距離を30μmとし、2心ユニットの長辺側に位置する第一の紫外線硬化樹脂からなる内側一括被覆層の外周面から2心ユニットの複数本を全ての光ファイバ素線が一列に並列となるように配置して第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層で被覆したものの長辺側に位置する第二の紫外線硬化樹脂からなる外側一括被覆層の外周面までの距離を8μmとすると、E_(1)t_(1)=18、E_(2)t_(2)=4.8となり、本願発明が規定する上記の関係を満たすものとなる。このことに照らせば、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の特定事項である
「前記一次光ファイバテープ並列ユニット内に並列された前記単心光ファイバ心線の横方向の共通接線から当該一次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第1の被覆層の外周面までの距離をt_(1)(mm)、前記一次光ファイバテープ並列ユニットの前記第1の被覆層の被覆材のヤング率(単位MPa)をE_(1)、前記一次光ファイバテープ並列ユニットの長辺側に位置する前記第1の被覆層の外周面から前記二次光ファイバテープ並列ユニ
ットの長辺側に位置する前記第2の被覆層の外周面までの距離をt_(2)(mm)、前記二次光ファイバテープ並列ユニットの前記第2の被覆層の被覆材のヤング率(単位MPa)をE_(2)とした時、
前記一次光ファイバテープ並列ユニットの前記第1の被覆層の被覆材及び前記二次光ファイバテープ並列ユニットの前記第2の被覆層の被覆材は、
1≦E_(1)t_(1)≦20、
0.3≦E_(2)t_(2)≦10、および
E_(1)t_(1)>E_(2)t_(2)
の関係を満たす」
ように構成することは、引用刊行物の記載に基づいて、当業者が設計上適宜なし得る程度のことである。

そして、本願明細書の記載をみても、本願発明において上記の関係を満たすようにしたことに、設計的事項の域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとは認められない。

7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用刊行物の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-06 
結審通知日 2012-08-13 
審決日 2012-08-27 
出願番号 特願2006-271715(P2006-271715)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 浩司  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 北川 創
星野 浩一
発明の名称 光ファイバテープ心線  
代理人 松下 亮  

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