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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1264704 |
審判番号 | 不服2010-5943 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-17 |
確定日 | 2012-10-10 |
事件の表示 | 特願2006-270926「デジタルコンテンツに対するオンラインコミュニティサービスの提供システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月26日出願公開、特開2007-109226〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年10月2日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2005年10月11日、韓国)の出願であって、平成21年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月17日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審において、平成23年10月24日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年1月24日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年1月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「デジタル再生装置を含むオンラインコミュニティサービス提供クライアントにおいて、 ユーザが前記デジタル再生装置を利用して再生したデジタルコンテンツの再生情報を収集し、 前記収集された再生情報に基づくユーザの好み情報を含むデータフレームを生成し、 前記生成されたデータフレームを伝送し、前記好み情報に対応するオンラインコミュニティサービスを受信するオンラインコミュニティサービス提供クライアント。」 第3 引用例 1.引用例1 当審の拒絶理由通知において引用された、特開2004-62812号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 a.「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、インターネットなどの広域的な通信媒体を介した情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、メディア・コンテンツ毎に密接に関係した情報提供サービスを行なう情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。 【0002】 さらに詳しくは、本発明は、同じメディア・コンテンツに関心のあるユーザ間で通信媒体を介した共有体験を実現する情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、元のメディア・コンテンツに好適に連携した共有体験を実現する情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。」 b.「【0011】 また、単に情報配信の手段として利用するだけでなく、インターネットのような広域的ネットワークを介して、遠隔に散在する不特定多数のユーザ間で情報の共有化を図り、いわゆる仮想的な共有空間を実現することができる。例えば、オンラインの電子掲示板(BBS:Bulletin Board System)やチャットなど、実世界の事物に関する各種の情報や仮想世界での情報の交換などを行なうサービスが既にインターネット上に存在している。(掲示板は非同期のシステムであり、チャットは同期のシステムである。) 【0012】 これら情報提供サービスを利用するためには、通常、ユーザが自分の興味に関連する掲示板などを、その名前や検索サービスなどによって探し出して、新規の情報を閲覧したりあるいは自ら書き込んだりして情報を提供することができる。すなわち、ユーザ自身がコミュニティにおいて主導的な役割を果たす。また、同じ話題に興味があるもの同士が出会う大きなきっかけを与えることができ、情報交換サービスの利用をさらに促進することができる。 【0013】 ところが、従来の情報交換サービスにおいて、自分と興味が同じ人と出会うためには、ユーザが自ら積極的に探しに行かなければならない。また、本当の自分の興味となるテーマが選択肢として準備されていない場合も多い。」 c.「【0016】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、メディア・コンテンツ毎に密接に関係した情報提供サービスを行なうことができる、優れた情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。 【0017】 本発明のさらなる目的は、同じメディア・コンテンツに関心のあるユーザ間で通信媒体を介した共有体験を実現することができる、優れた情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。」 d.「【0043】 A.システム構成 図1には、本発明の実施に供されるネットワーク・コンピューティング・システム1の構成を模式的に示している。ネットワーク・コンピューティング・システム1には、無数のコンピュータ・システムが接続されている。これらコンピュータ・システムは、世界中に散在しており、一部のコンピュータは各種の資源サービスを有償又は無償で提供する「サーバ」として稼動し、他の一部はサーバに対して資源サービスを要求する「クライアント」として稼動している。 ・・・(中略)・・・ 【0046】 任意のサービス・プロバイダ(ISP)経由でIP接続された一般ユーザのコンピュータ(PC)100は、例えばWWWブラウザのようなクライアント・アプリケーションを導入することで、インターネット10上でクライアントとして稼動することができる。」 e.「【0066】 B.メディア・コンテンツと連携した共有空間提供サービス 既に述べたように、ネットワーク1上で稼動しているサーバ25のうち少なくとも1つは、音楽や映画などのメディア・コンテンツに対してユーザがアクティブに関わることができる新しいエンターテインメントを実現する共有空間提供サイトを運営している。すなわち、この共有空間提供サーバは、CDなどのメディアやMP3などの圧縮データ形式でダウンロードされる音楽、あるいはDVDなどのメディアやストリーミング配信により得られる映画などの映像を再生しているクライアントに対して、同じメディア・コンテンツを利用するユーザ同士で新しい共有経験を実現する空間を提供する。共有空間提供サーバが行なう各サービス内容について、以下に詳解する。」 f.「【0096】 B-2.コミュニケーション 共有空間提供サーバによって実現される共通の興味対象を持つ者同士の出会いの仕組みをベースとして、音楽や映画など同じコンテンツに興味を持ったもの同士で掲示板やチャットなどを利用して、同期及び非同期でのコミュニケーションが可能になる。同期のコミュニケーション中の視聴の際、部位IDを利用する場合(この曲のこの部分だけを聴かせる)、送り手がその部分を指定する。また、非同期のコミュニケーションの際には、My Favorite(後述)のように、お気に入りライブラリを相手が閲覧して、視聴を試みる場合は、受けて側がその部分(再生希望部分)を指定する。また、IP電話などを利用して、楽曲中の特定のフレーズを試聴させることが可能である。この場合、テキストベースではなく、音声コミュニケーションを実現することができる。 【0097】 図9には、音楽や映画など同じコンテンツに興味を持ったもの同士で掲示板やチャットなどを利用するための仕組みを模式的に示している。 【0098】 クライアントは、CDやDVDなどの記録メディアを媒介にして、音楽や映像などのコンテンツを取得して、これを再生することができる。また、ネットワーク上のサーバからMP3ファイル又はMPEG2ファイルなどの形式で配信される音楽や映像などのコンテンツを取得して、これを再生することができる。 【0099】 そして、クライアントは、その再生中のコンテンツ本体から取り出すことができる一意の識別情報(楽曲IDなどのコンテンツID)を自動的に抽出して、これをクライアント自身の端末IDとともにサーバに通知する。 【0100】 ここで、コンテンツIDは、コンテンツの所定位置からあらかじめ定められた間隔で抽出される複数のサンプリング点において複数の周波数成分毎に得たパワー・スペクトルからなる特徴ベクトルを利用して生成することができる。このようなIDの生成方法によれば、元の楽曲ファイルに変更を加えることなくコンテンツ本体から識別情報を得ることができ、また、ファイルの圧縮方式(MP3、ATRACなど)に依存せずに識別情報を得ることができるので、共通の識別情報として広い範囲でコンテンツの検索に利用することができる。 【0101】 サーバ側では、コンテンツを再生する各クライアントからコンテンツIDと端末IDの組からなる通知を受けて、これをリアルタイム情報として管理する。また、サーバは、端末IDと該当ユーザの住所情報からなるユーザ情報データベースを管理しており、同時視聴ユーザの所在を地図上にマッピングして、同時視聴ユーザの人数(人数ゲージ)とともに各クライアントにフィードバックする。 【0102】 したがって、クライアント側では、日本地図や世界地図の表示画面上で音楽や映像など同じコンテンツに接している人の所在を確認することができる。クライアント・ユーザの立場で言えば、同じ時に同じ曲を聴いている人に引き合わせてもらえる。なかなか出会えない、近くにいても知らない、共通の興味、価値観の持ち主と出会うことができる。すなわち、「この曲の良さを語れる人と出会えた!」という喜びを享受することができる。 【0103】 図10には、コンテンツを再生中のクライアント装置上での表示画面の構成例を示している。同図に示す例では、現在再生中のコンテンツに関する属性情報(アーティスト名、楽曲名、演奏時間など)とともに、日本地図上で音楽や映像など同じコンテンツに接している人の分布が表示されている。この地図表示上では、同じ曲を聴いている人の所在地にマークが付されている。このマークをクリックすると、チャットやインスタント・メッセージなどの機能が起動する。また、同時視聴ユーザの人数(人数ゲージ)が併せて表示されている。人数ゲージが所定値(図示の例では50人)に到達すると、同時視聴する各ユーザにイベントが提供される(後述)。 【0104】 このとき、現実世界において同じコンテンツを楽しんでいるユーザに対して、チャットや掲示板などの仮想世界におけるコミュニケーションが用意される。同期又は非同期のコミュニケーションによりユーザ間で情報交換が行なわれる結果として、商品の購買意欲が喚起されることもある。また、共通の興味、価値観の持ち主の間で一緒に盛り上がり、イベント性を持つことになる(図11を参照のこと)。 【0105】 同じコンテンツを楽しんでいるユーザが同期でコミュニケーションを行なう場合、共通の興味対象を持つ者同士(同じIDを持つコンテンツを再生している者同士、すなわち、違う場所で同じ時に同じ音楽を聴き又は同じ映画を観ている者同)が、仮想共有空間で引き合わされる。具体的には、興味が同じ人の存在が画面上で表示されており(図10を参照のこと)、コミュニケーション希望者にはチャット(n×n)を仕掛けることができる。 【0106】 図12には、同じコンテンツを楽しんでいるユーザ同士をチャットなどの仮想共有空間に引き込んでコミュニケーションへ導くための画面構成例を示している。 【0107】 同図に示す例では、現在再生中のコンテンツに関する属性情報(アーティスト名、楽曲名、演奏時間など)とともに、日本地図上で音楽や映像など同じコンテンツに接している人の分布が表示されている。この地図表示上では、同じ曲を聴いている人の所在地にマークが付されている。このマークは、チャットなどのコミュニケーションの希望の有無を区別して表示されており、コミュニケーションを希望するユーザのマークをクリックすると、チャット又はその他の同期コミュニケーション機能が起動する。また、既にチャットをしている者同士のメッセージがダイナミック(motion graphic)に表示される。既にチャットをしている者同士のメッセージがダイナミック(motion graphic)に表示されるのは、(地図に現在同じコンテンツを視聴している人の存在が表示されなくても、そのステップを飛ばして)、直接、音楽や映画を見ていてコミュニケーションモードになると、会話がダイナミックに見えてくるという想定である。 【0108】 また、同じコンテンツを楽しんでいるユーザが非同期でコミュニケーションを行なう場合、コメントの対象部分を指定しないメッセージに関して、視聴しているその対象となるコンテンツ(音楽や映像)毎に、掲示板を作成して、メッセージを提示することができる。また、次から同じコンテンツにアクセスした人には、それに関する掲示板が自動的に提示され、コメントを随時追加することが可能である。」 g.「【0256】 また、本発明によれば、興味の似ている人を自ら探し回ったり検索したりしなくても、そのときの自分の興味そのものであるコンテンツを視聴するだけで、自動的に同じコンテンツを楽しんでいる人同士が出会うことができる。」 前記a.?g.によると、引用例1には次の事項が記載されているといえる。 ・前記d.の「【0043】 ・・・(中略)・・・ネットワーク・コンピューティング・システム1には、無数のコンピュータ・システムが接続されている。これらコンピュータ・システムは、世界中に散在しており、一部のコンピュータは各種の資源サービスを有償又は無償で提供する「サーバ」として稼動し、他の一部はサーバに対して資源サービスを要求する「クライアント」として稼動している。」の記載、 前記d.の「【0046】 任意のサービス・プロバイダ(ISP)経由でIP接続された一般ユーザのコンピュータ(PC)100は、例えばWWWブラウザのようなクライアント・アプリケーションを導入することで、インターネット10上でクライアントとして稼動することができる。」の記載によれば、 クライアントは、ネットワークに接続されたユーザのコンピュータである。 ・前記e.の「【0066】 B.メディア・コンテンツと連携した共有空間提供サービス 既に述べたように、ネットワーク1上で稼動しているサーバ25のうち少なくとも1つは、音楽や映画などのメディア・コンテンツに対してユーザがアクティブに関わることができる新しいエンターテインメントを実現する共有空間提供サイトを運営している。すなわち、この共有空間提供サーバは、CDなどのメディアやMP3などの圧縮データ形式でダウンロードされる音楽、あるいはDVDなどのメディアやストリーミング配信により得られる映画などの映像を再生しているクライアントに対して、同じメディア・コンテンツを利用するユーザ同士で新しい共有経験を実現する空間を提供する。」の記載、 前記f.の「【0096】 B-2.コミュニケーション 共有空間提供サーバによって実現される共通の興味対象を持つ者同士の出会いの仕組みをベースとして、音楽や映画など同じコンテンツに興味を持ったもの同士で掲示板やチャットなどを利用して、同期及び非同期でのコミュニケーションが可能になる。」の記載、 前記f.の「【0104】 このとき、現実世界において同じコンテンツを楽しんでいるユーザに対して、チャットや掲示板などの仮想世界におけるコミュニケーションが用意される。」の記載、 前記f.の「【0105】 同じコンテンツを楽しんでいるユーザが同期でコミュニケーションを行なう場合、共通の興味対象を持つ者同士(同じIDを持つコンテンツを再生している者同士、すなわち、違う場所で同じ時に同じ音楽を聴き又は同じ映画を観ている者同)が、仮想共有空間で引き合わされる。」の記載によれば、 ネットワークに接続された共有空間提供サーバは、クライアントに対して、同じコンテンツに興味を持ったユーザ同士でコミュニケーションを行う仮想共有空間を提供する。 換言すれば、クライアントは、ネットワークに接続された共有空間提供サーバから、同じコンテンツに興味を持ったユーザ同士でコミュニケーションを行う仮想共有空間の提供を受ける。 ・前記f.の「【0098】 クライアントは、CDやDVDなどの記録メディアを媒介にして、音楽や映像などのコンテンツを取得して、これを再生することができる。また、ネットワーク上のサーバからMP3ファイル又はMPEG2ファイルなどの形式で配信される音楽や映像などのコンテンツを取得して、これを再生することができる。 【0099】 そして、クライアントは、その再生中のコンテンツ本体から取り出すことができる一意の識別情報(楽曲IDなどのコンテンツID)を自動的に抽出して、これをクライアント自身の端末IDとともにサーバに通知する。」の記載によれば、 クライアントは、CDやDVDの音楽や映像、あるいは、MP3ファイル、MPEG2ファイルの形式の音楽や映像のコンテンツを取得して再生し、 その再生中の前記コンテンツ本体からコンテンツIDを自動的に抽出して、当該コンテンツIDとクライアント自身の端末IDとを共有空間提供サーバに通知する。 ・前記f.の「【0100】 ここで、コンテンツIDは、コンテンツの所定位置からあらかじめ定められた間隔で抽出される複数のサンプリング点において複数の周波数成分毎に得たパワー・スペクトルからなる特徴ベクトルを利用して生成することができる。」の記載によれば、 コンテンツIDは、コンテンツの所定位置からあらかじめ定められた間隔で抽出される複数のサンプリング点において複数の周波数成分毎に得たパワー・スペクトルからなる特徴ベクトルを利用して生成される。 ・前記e.の「【0066】 B.メディア・コンテンツと連携した共有空間提供サービス 既に述べたように、ネットワーク1上で稼動しているサーバ25のうち少なくとも1つは、音楽や映画などのメディア・コンテンツに対してユーザがアクティブに関わることができる新しいエンターテインメントを実現する共有空間提供サイトを運営している。すなわち、この共有空間提供サーバは、CDなどのメディアやMP3などの圧縮データ形式でダウンロードされる音楽、あるいはDVDなどのメディアやストリーミング配信により得られる映画などの映像を再生しているクライアントに対して、同じメディア・コンテンツを利用するユーザ同士で新しい共有経験を実現する空間を提供する。共有空間提供サーバが行なう各サービス内容について、以下に詳解する。」の記載、 前記f.の「【0096】 B-2.コミュニケーション 共有空間提供サーバによって実現される共通の興味対象を持つ者同士の出会いの仕組みをベースとして、音楽や映画など同じコンテンツに興味を持ったもの同士で掲示板やチャットなどを利用して、同期及び非同期でのコミュニケーションが可能になる。」の記載、 前記f.の「【0105】 同じコンテンツを楽しんでいるユーザが同期でコミュニケーションを行なう場合、共通の興味対象を持つ者同士(同じIDを持つコンテンツを再生している者同士、すなわち、違う場所で同じ時に同じ音楽を聴き又は同じ映画を観ている者同)が、仮想共有空間で引き合わされる。具体的には、興味が同じ人の存在が画面上で表示されており(図10を参照のこと)、コミュニケーション希望者にはチャット(n×n)を仕掛けることができる。」の記載によれば、 共有空間提供サーバは、同じ時に同じIDを持つコンテンツを再生しているユーザ同士でコミュニケーションを行うチャットのサービスを提供する。 換言すれば、クライアントは、共有空間提供サーバから、同じ時に同じIDを持つコンテンツを再生しているユーザ同士でコミュニケーションを行うチャットのサービスの提供を受ける。 ・前記e.の「【0066】 B.メディア・コンテンツと連携した共有空間提供サービス 既に述べたように、ネットワーク1上で稼動しているサーバ25のうち少なくとも1つは、音楽や映画などのメディア・コンテンツに対してユーザがアクティブに関わることができる新しいエンターテインメントを実現する共有空間提供サイトを運営している。すなわち、この共有空間提供サーバは、CDなどのメディアやMP3などの圧縮データ形式でダウンロードされる音楽、あるいはDVDなどのメディアやストリーミング配信により得られる映画などの映像を再生しているクライアントに対して、同じメディア・コンテンツを利用するユーザ同士で新しい共有経験を実現する空間を提供する。共有空間提供サーバが行なう各サービス内容について、以下に詳解する。」の記載、 前記f.の「【0096】 B-2.コミュニケーション 共有空間提供サーバによって実現される共通の興味対象を持つ者同士の出会いの仕組みをベースとして、音楽や映画など同じコンテンツに興味を持ったもの同士で掲示板やチャットなどを利用して、同期及び非同期でのコミュニケーションが可能になる。」の記載、 前記f.の「【0108】 また、同じコンテンツを楽しんでいるユーザが非同期でコミュニケーションを行なう場合、コメントの対象部分を指定しないメッセージに関して、視聴しているその対象となるコンテンツ(音楽や映像)毎に、掲示板を作成して、メッセージを提示することができる。また、次から同じコンテンツにアクセスした人には、それに関する掲示板が自動的に提示され、コメントを随時追加することが可能である。」の記載によれば、 共有空間提供サーバは、コンテンツ毎に掲示板を作成して、クライアントに、再生しているコンテンツに関する掲示板のサービスを提供する。 換言すれば、クライアントは、共有空間提供サーバから、コンテンツ毎に作成された掲示板であって、クライアントにおいて再生しているコンテンツに関する掲示板のサービスの提供を受ける。 ・前記f.の「【0104】・・・(中略)・・・チャットや掲示板などの仮想世界」の記載、 前記f.の「【0106】・・・(中略)・・・チャットなどの仮想共有空間」の記載によれば、 チャットや掲示板は、仮想共有空間である。 したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「ネットワークに接続されたユーザのコンピュータであり、前記ネットワークに接続された共有空間提供サーバから、同じコンテンツに興味を持ったユーザ同士でコミュニケーションを行う仮想共有空間の提供を受けるクライアントにおいて、 CDやDVDの音楽や映像、あるいは、MP3ファイル、MPEG2ファイルの形式の音楽や映像のコンテンツを取得して再生し、 その再生中の前記コンテンツ本体からコンテンツIDを自動的に抽出して、当該コンテンツIDとクライアント自身の端末IDとを前記共有空間提供サーバに通知し、 ここで、前記コンテンツIDは、コンテンツの所定位置からあらかじめ定められた間隔で抽出される複数のサンプリング点において複数の周波数成分毎に得たパワー・スペクトルからなる特徴ベクトルを利用して生成され、 前記共有空間提供サーバから、同じ時に同じIDを持つコンテンツを再生しているユーザ同士でコミュニケーションを行うチャットのサービスの提供を受け、 また、前記共有空間提供サーバから、コンテンツ毎に作成された掲示板であって、再生している前記コンテンツに関する掲示板のサービスの提供を受け、 前記掲示板や前記チャットは、前記仮想共有空間である、 クライアント。」 2.引用例2 当審の拒絶理由通知において引用された、特開2003-255958号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 h.「【0006】従って本発明は各人の嗜好に合った音楽情報を各人に容易に提供し、各人に最も適した楽曲を提供することを目的とする。」 i.「【0009】・・・(中略)・・・このシステムは事業者側の装置100とパソコン等により構成されるユーザ側の装置120がインターネット等の通信ネットワーク110を介して接続されている。」 j.「【0014】ユーザ側の装置120は制御部121、ネットワーク処理部122、データ記憶部(HDD)123、LCD124、CDドライブ125、PD(ポータブルディバイス)インターフェース126、UI処理部127を含む。」 k.「【0020】・・・(中略)・・・利用履歴テーブル132は図2に示すように、曲ID、再生回数、C/O、C/Iの項目を含む。」 l.「【0021】ユーザがデータ記憶部123に記録された楽曲の再生をUI処理部127を介して指示すると、制御部121はデータ記憶部123に記録された曲オブジェクトを読み出し、音声再生部119を使って再生する。このようにデータ記憶部123に記録された曲オブジェクトの再生が行われると(ST4でYESの場合)、制御部121は利用履歴テーブル132における再生された楽曲に対応する再生回数に1を加算することにより利用履歴テーブル132を更新する(ST5)。 【0022】ユーザがCD140の再生をUI処理部127を介して指示すると、制御部121はCDドライブ125を使ってCD140に記録された曲オブジェクトを読み出し、音声再生部119により再生する。このようにCD140を再生すると(ST6)でYESの場合)、制御部121は利用履歴テーブル132の曲IDの欄に、再生された楽曲の曲IDを記録し、再生回数の欄に1を加算することにより利用履歴テーブルを更新する(ST8)。」 m.「【0026】制御部121はステップST3、ST5、ST7、ST9のように、利用履歴テーブル132が更新された後、所定時間後あるいは定期的に利用履歴テーブル132の内容を事業者側に送信する(ST10)。」 n.「0028】通信ネットワーク110を介して受信側装置120から利用履歴テーブル132を受信すると(ステップST21でYESの場合)、事業者側の制御部105は、受信した利用履歴テーブル132に基づいて、ユーザの音楽的趣向に最も適合する新譜を含む音楽情報をデータ記憶部102から検索し、該音楽情報をユーザに送信する(ST22)。」 前記h.?n.によれば、引用例2には、次の事項が記載されている。 <引用例2の記載事項> 「事業者側の装置100と通信ネットワーク110を介して接続されているユーザ側の装置120において、 ユーザが、データ記憶部123に記録された楽曲の再生を指示して、その曲の再生が行われると、利用履歴テーブル132における再生された楽曲の曲IDに対応する再生回数に1を加算して、利用履歴テーブル132を更新し、 ユーザが、CD140の再生を指示すると、利用履歴テーブル132の曲IDの欄に、再生された楽曲の曲IDを記録し、再生回数の欄に1を加算して、利用履歴テーブルを更新し、 前記利用履歴テーブル132が更新された後、所定時間後あるいは定期的に利用履歴テーブル132の内容を事業者側に送信し、 事業者側の装置から、前記利用履歴テーブル132に基づいた、ユーザの音楽的趣向に最も適合する新譜を含む音楽情報を受信するユーザ側の装置120。」 第4 対比 次に、本願発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明の「チャットサービス」や「掲示板のサービス」は、本願発明の「オンラインコミュニティサービス」に相当する。 引用発明のクライアントは、上記サービスをユーザに提供するから、「オンラインコミュニティサービス提供クライアント」といえる。 引用発明の「CDやDVDの音楽や映像、あるいは、MP3ファイル、MPEG2ファイルの形式の音楽や映像のコンテンツ」は、本願発明の「デジタルコンテンツ」に相当する。 引用発明の「クライアント」は、上記コンテンツを取得して再生するから、「デジタル再生装置」を含むといえる。 したがって、引用発明のクライアントは、本願発明の「デジタル再生装置を含むオンラインコミュニティサービス提供クライアント」に相当する。 ・引用発明の「コンテンツID」は、再生されたコンテンツから抽出されたIDであるから、本願発明の「ユーザが前記デジタル再生装置を利用して再生したデジタルコンテンツの再生情報」に相当する。 引用発明は、「コンテンツID」を抽出するものの、複数の「コンテンツID」を集めてはない。すなわち、引用発明は、再生情報を取得するといえるものの、「収集」するとはいえない。 したがって、引用発明の「その再生中の前記コンテンツ本体からコンテンツIDを自動的に抽出して」と、本願発明の「ユーザが前記デジタル再生装置を利用して再生したデジタルコンテンツの再生情報を収集し」は、ともに「ユーザが前記デジタル再生装置を利用して再生したデジタルコンテンツの再生情報を取得し」の点で共通する。 ・引用発明において、クライアントから共有空間提供サーバに通知されるコンテンツIDは再生情報であり、この再生情報はユーザの興味対象であるコンテンツを特定するものである。したがって、引用発明の「コンテンツID」は、「再生情報に基づくユーザの好み情報」といえる。 したがって、引用発明の「当該コンテンツIDとクライアント自身の端末IDとを前記共有空間提供サーバに通知し」と、 本願発明の「前記収集された再生情報に基づくユーザの好み情報を含むデータフレームを生成し、前記生成されたデータフレームを伝送し、」は、 ともに、「前記取得された再生情報に基づくユーザの好み情報を伝送し、」の点で共通する。 ・引用発明において、クライアントが、共有空間提供サーバから、「チャットのサービス」、「掲示板のサービス」の提供を受けることは、本願発明の「オンラインコミュニティサービスを受信する」ことに相当する。 また、チャットは、「同じ時に同じIDを持つコンテンツを再生しているユーザ同士でコミュニケーションを行うチャット」であるから、このチャットのサービスは、「コンテンツID」すなわち「再生情報に基づくユーザの好み情報」に対応するオンラインコミュニティサービスである。 また、クライアントに提供される掲示板は、「再生している前記コンテンツに関する掲示板」であるから、この掲示板のサービスは、「コンテンツID」すなわち「再生情報に基づくユーザの好み情報」に対応するオンラインコミュニティサービスである。 したがって、引用発明の、 「前記共有空間提供サーバから、同じ時に同じIDを持つコンテンツを再生しているユーザ同士でコミュニケーションを行うチャットのサービスの提供を受け、 また、前記共有空間提供サーバから、コンテンツ毎に作成された掲示板であって、再生している前記コンテンツに関する掲示板のサービスの提供を受け」は、 本願発明の「前記好み情報に対応するオンラインコミュニティサービスを受信する」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。 <一致点> 「デジタル再生装置を含むオンラインコミュニティサービス提供クライアントにおいて、 ユーザが前記デジタル再生装置を利用して再生したデジタルコンテンツの再生情報を取得し、 前記取得された再生情報に基づくユーザの好み情報を伝送し、前記好み情報に対応するオンラインコミュニティサービスを受信するオンラインコミュニティサービス提供クライアント。」 そして、本願発明と引用発明は、次の点で相違する。 <相違点1> 本願発明は、再生情報を「収集」するのに対し、引用発明は、再生中のコンテンツ本体からコンテンツIDを「抽出」するものの、複数のコンテンツIDを集めてはおらず、したがって、再生情報を「収集」していない点。 <相違点2> 本願発明は、「好み情報を含むデータフレームを生成し、前記生成されたデータフレームを伝送」するのに対し、引用発明は、コンテンツIDすなわち好み情報をクライアントから共有空間提供サーバへ伝送する際に、コンテンツIDを含むデータフレームを生成しておらず、生成されたデータフレームを伝送していない点。 第5 判断 <相違点1>について 引用例1には、「従来の技術」として、次の事項が記載されている。 「【0011】・・・(中略)・・・オンラインの電子掲示板(BBS:Bulletin Board System)やチャットなど、実世界の事物に関する各種の情報や仮想世界での情報の交換などを行なうサービスが既にインターネット上に存在している。」(前記b.参照) 「【0012】 これら情報提供サービスを利用するためには、通常、ユーザが自分の興味に関連する掲示板などを、その名前や検索サービスなどによって探し出して、新規の情報を閲覧したりあるいは自ら書き込んだりして情報を提供することができる。」(前記b.参照) 「【0013】 ところが、従来の情報交換サービスにおいて、自分と興味が同じ人と出会うためには、ユーザが自ら積極的に探しに行かなければならない。また、本当の自分の興味となるテーマが選択肢として準備されていない場合も多い。」(前記b.参照) また、引用例1には、「発明が解決しようとする課題」として、次の事項が記載されている。 「【0017】 本発明のさらなる目的は、同じメディア・コンテンツに関心のあるユーザ間で通信媒体を介した共有体験を実現することができる、優れた情報提供システム及び情報提供方法、情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。」(前記c.参照) また、引用例1には、「発明の効果」として、次の事項が記載されている。 「【0256】 また、本発明によれば、興味の似ている人を自ら探し回ったり検索したりしなくても、そのときの自分の興味そのものであるコンテンツを視聴するだけで、自動的に同じコンテンツを楽しんでいる人同士が出会うことができる。」(前記g.参照) これらの記載によれば、引用発明が解決しようとする課題、目的は、ユーザが自分の興味に関連する掲示板やチャットなどの情報提供サービスを探し出さなくても、自分の興味そのものであるコンテンツを視聴するだけで、自動的に、そのコンテンツに関する情報提供サービスをユーザに提供し、同じコンテンツに関心のあるユーザ同士が出会えるようにすることである。 そして、引用発明は、ユーザの興味の対象であるコンテンツを、再生中のコンテンツから抽出されたコンテンツIDから、すなわち、1つの再生情報から特定している。 一方、引用例2には、ユーザ側の装置において、ユーザの指示により楽曲を再生すると、再生された楽曲の曲IDに対応する再生回数に1を加算して、利用履歴テーブルを更新し、その更新の後に利用履歴テーブルを事業者側の装置に送信し、事業者側の装置から、その利用履歴テーブルに基づいた、ユーザの音楽的趣向に適合する音楽情報を受信することが記載されている。 この利用履歴テーブルの情報は、ユーザの音楽的趣向を特定するために用いられ、複数の再生情報を収集した情報である。 そして、再生中のコンテンツに関する1つの再生情報のみからユーザの興味を特定するのに代えて、利用履歴テーブルの情報のように、収集された複数の再生情報からユーザの興味を特定し、ユーザの興味に関連した情報提供サービスを提供することも格別困難ではない。 してみると、引用発明において、再生中のコンテンツ本体から抽出されたコンテンツIDに代えて、引用例2に記載された利用履歴テーブルを適用し、複数の再生情報を「収集」して、上記相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。 <相違点2>について ネットワークを介してデータを伝送する際に、伝送するデータを含むデータフレームを生成して、生成されたデータフレームを伝送することは、周知例を挙げるまでもなく、デジタル通信の技術分野において周知の通信技術である。 してみると、引用発明において、クライアントと共有空間提供サーバとの間の通信に、上記のような周知の通信技術を用いて、上記相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用例1及び引用例2の記載事項、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1及び引用例2の記載事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-10 |
結審通知日 | 2012-05-15 |
審決日 | 2012-05-28 |
出願番号 | 特願2006-270926(P2006-270926) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青柳 光代 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 松尾 俊介 |
発明の名称 | デジタルコンテンツに対するオンラインコミュニティサービスの提供システム及び方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |