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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1264718 |
審判番号 | 不服2010-25857 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-16 |
確定日 | 2012-10-10 |
事件の表示 | 特願2000-581536「デバッギングのためのデータ最適化と並行したオブジェクトサイズ情報の維持」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月18日国際公開,WO00/28419,平成14年 9月10日国内公表,特表2002-529851〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
本願は,平成11年6月29日の出願であって,「デバッギングのためのデータ最適化と並行したオブジェクトサイズ情報の維持」に関するものと認める。 これに対して,平成24年1月5日付けで,本願は,その明細書と図面の記載が不備で特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由を通知したが,依然として上記の拒絶理由で指摘した不備の点は解消していない。 したがって,本願は,上記の拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 [備考] 平成24年1月5日付けで通知した拒絶理由の内容は,次のとおりである。 「この出願は,明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.本願明細書の発明の詳細な説明の記載では,以下の点により,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (1)「書込バッファ」において,「書込併合」等の「データ最適化動作」がどのように実行され,この結果,本願発明の適用前の構成において,書込バッファ16内の情報(図3,図4)がどのような状態になり,オブジェクトサイズ情報が失われることとなるのか,すなわち本願発明が前提とする「書込バッファによるデータ最適化動作」とは何か,不明である点。 詳述すれば,以下のとおり。 ア(ア)発明の詳細な説明には,「発明の背景」として,次の記載がある。 ・「書込バッファはプロセッサ指向システムに設けられることが多くなり,書込併合,書込崩壊(collapsing),および読取併合などの,データ最適化動作を行なってデータ一貫性を維持する。書込バッファ内で待ち行列に入れられる1つの候補は,書込オブジェクト値である。書込オブジェクト値に関わるデータ最適化動作の結果,書込オブジェクト値に対するオブジェクトサイズ情報が失われている。すなわち,最適化されたオブジェクト値はもはや対応のオブジェクトサイズ情報を有さない。たとえば,もし書込バッファが2つの連続したバイトサイズのオブジェクト値を併合して単一のワードサイズのオブジェクト値にすると,新しいデータオブジェクトはバイトサイズではなくワードサイズなので,書込バッファは元のオブジェクト値のオブジェクトサイズを失う。」(段落【0003】) ・「データ最適化動作の結果として失われたオブジェクトサイズは,プロセッサ指向システムのソフトウェアプログラムのデバッギングにおける制限因子であった。プロセッサ指向システムによって実行されるソフトウェアプログラムを用いて,データオブジェクトに対して書込動作が行なわれてきた。ソフトウェアプログラムがデータ最適化を用いないとき,ソフトウェアプログラムは典型的には,書込動作によって生じる書込オブジェクト値をトレーシングまたはトラッキングすることによって,デバッグされてきた。しかしながらソフトウェアプログラムのデバッギングにおける書込オブジェクト値の再構築は,書込バッファによる最適化動作の制約を受けてきた。データ最適化動作から生じる書込オブジェクト値には,最適化前の書込オブジェクト値を再構築するために必要であるオブジェクトサイズ情報が欠けていた。・・・しかしながら,データ最適化動作の結果失われているオブジェクトサイズ情報をデバッギング目的のために再獲得することについての問題は,解決されていない。」(段落【0004】) (イ)また,「発明の開示」欄には,次の記載があり,図1ないし図4が示されている。 ・「要約すると,この発明によるデバッギング環境は,書込バッファによる標的システムのデータ最適化動作と並行してオブジェクト情報を維持する。標的システム内で,システムバスはシステムメモリとマイクロコントローラとの間に結合される。書込バッファによるデータ最適化動作は,バス監視装置によってシステムバスの併合信号を監視することにより,検出される。データ最適化動作が検出されると,データ最適化動作に関連のデータ最適化属性(たとえばオブジェクト情報,データおよびアドレス)は,バス監視装置からの捕獲信号に応答するオブジェクト情報信号の形で捕獲される。データ最適化属性は,標的システムのトレースキャッシュ内,またはデバッグポートに接続される外部のトレース捕獲装備のメモリ内,またはバス監視装置のメモリ内にストアされ得る。マイクロコントローラの外部にデータ最適化属性を提供する際には,データ最適化属性を一時的にマイクロコントローラのデバッグポートのトレースピンによって保持してもよい。データ最適化属性をオブジェクト情報信号から抽出して,外部のトレース捕獲装備またはバス監視装置によって処理することができる。データ最適化属性を処理することにより,最適化前の書込オブジェクト値を再構築できる。」(段落【0005】) ・「書込バッファ16(図1,図2および図3)は,好ましくはランダムアクセススヌーピング機能を備えた書込バッファである。書込バッファ16は,書込併合,書込崩壊,および読取併合を支持する。書込併合または書込崩壊動作はWR_MERGE信号(図2)のアサートに応答して行なうことができる。読出併合動作は,RD_MERGE信号(図2)のアサートに応答して行なうことができる。書込バッファ16はランダムアクセスメモリを含む。書込アドレスのストアに加えて,ランダムアクセスメモリのアドレスランクはデバッギングの目的でビットを提供してもよい。この発明によると,オブジェクト情報(たとえばオブジェクトサイズ)を表わすビットは,ランダムアクセスメモリ内に支持されることができる。」(平成12年12月11日付け補正書,段落【0012】) ・「この発明によると,オブジェクト情報は書込バッファ16によるデータ最適化と並行して維持される。・・・データ最適化動作がステップ52において検出されると,データ最適化動作に関連するデータ最適化属性はステップ54において捕獲される。」(段落【0013】) ・「図3を参照すると,例示的なデータ最適化属性をストアする書込バッファ16の概略図を示す。データ最適化属性は一般的には,最適化前の値を再構築するために用いることができる,データ最適化動作に関連の情報を指す。開示される例示的なデータ最適化属性は,データフィールドDATAにストアされる,データ最適化動作によって生じたデータと,アドレスフィールドADDRESSにストアされる特定のデータのアドレスと,オブジェクトサイズフラグフィールドOSFにストアされる特定のデータのオブジェクトサイズとを含む。」(段落【0014】) ・「図1を参照すると,信号生成論理22は,データ最適化属性の捕獲に用いるためのオブジェクト情報信号OBIを生成する。信号生成論理22は主にオブジェクトサイズフラグフィールドOSF,データフィールドDATA,およびアドレスフィールドADDRESS(図3)の内容を組合せて,オブジェクト情報信号OBIを形成する。このようにして,オブジェクト情報を維持するために適切なデータ最適化情報を捕獲することができる。」(段落【0016】) 「データ最適化動作が起こったとき,バス監視装置BMDはマイクロコントローラCにCAPTURE信号を与えて,検出されたデータ最適化動作に関連のデータ最適化属性が捕獲されるべきことを示す。CAPTURE信号に応答して,信号生成論理22はオブジェクト情報信号OBIを生成し,トレースキャッシュ制御ブロック14はトレースキャッシュ12を準備してトレース情報信号OBIを受信する。」(段落【0018】) ・「データ最適化属性がオブジェクト情報信号OBIから抽出される。もしデータ最適化属性がマイクロコントローラCにストアされていれば,属性は抽出前にホストシステムHに提供される。・・・データ最適化デコード論理26は,書込オブジェクト値を処理するよう特別に構成される。・・・ステップ62の後,データ最適化属性はデータ最適化デコード論理26によって処理される。前進推論(forward inferring)または技術分野において既知である他の好適なアルゴリズムを用いて,デコード論理26はデータ最適化属性から元の書込オブジェクト値を再構築する。」(段落【0019】) ・「データ最適化属性を,オブジェクト情報信号OBIから抽出して,外部のトレース捕獲装備Hまたはバス監視装置BMDによって処理することができる。データ最適化属性を処理することにより,最適化前の書込オブジェクト値を再構築することができる。」(段落【0020】) イ これらの記載によれば,本願発明の目的は,書込併合等のデータ最適化動作の結果,書込オブジェクト値から,デバッギングに必要なオブジェクトサイズ情報が失われるという課題を解決するために,データ最適化動作が検出されると,オブジェクト情報信号を捕獲し,オブジェクトサイズ情報を含む最適化前の書込オブジェクト値を「再構築(再獲得)」することにあると解される。 しかしながら,発明の詳細な説明の記載を総合しても,本願発明が前提とする,書込バッファによる「データ最適化動作」とは何か,具体的には,データ最適化の過程でデータがどのように処理され,書込バッファ16内(ランダムアクセスメモリ内)の情報の状態(例えば,図3,図4)がどのように変化し,書込オブジェクト値からオブジェクトサイズ情報が失われることとなるのか,すなわち,本願発明の適用前の構成において,「データ最適化動作」によってオブジェクトサイズ情報が失われるとはどのようなことか,不明である。 (2)データ最適化動作とオブジェクト情報信号の内容との関係,及びデータ最適化デコード論理26が,オブジェクト情報信号をどのように処理することにより,最適化前の書込オブジェクト値を「再構築」できるのか,不明である点。 詳述すれば,以下のとおり。 「発明の開示」欄には,上記(1)アの記載等から,データ最適化動作を検出すると,信号生成論理22がオブジェクト情報信号を生成し,これをトレースキャッシュ12により捕獲し,データ最適化デコード論理26が,オブジェクト情報信号からデータ最適化属性を抽出し,これを処理することにより,最適化前の書込オブジェクト値を「再構築」することが記載されている。 しかしながら,発明の詳細な説明の記載では,データ最適化動作が検出された時点のオブジェクト情報信号を捕獲することにより,オブジェクト情報あるいはデータ最適化属性が維持されることとなる理由,すなわち,データ最適化動作と,信号生成論理22により生成されるオブジェクト情報信号の内容との関係が不明である。 さらに,「データ最適化デコード論理26」における処理の内容が開示されておらず,オブジェクト情報信号をどのように処理することにより,オブジェクト情報信号から,データ最適化属性を抽出し,最適化前の書込オブジェクト値(オブジェクトサイズ情報を含む)を「再構築」することができるのか不明である。 (3)データ最適化動作における「書込崩壊」,「読取併合」(段落【0003】,【0012】)の技術的意義,及び本願発明との関連が不明である点。 2.上記1と同様の理由により,「併合」(「併合信号」,「データ併合」,「併合信号線」を含む。),「オブジェクト情報信号」,及び「デコード論理」の技術的意義が明確でないため,特許請求の範囲に記載された請求項1ないし11の発明は,明確とはいえない。」 |
審理終結日 | 2012-05-09 |
結審通知日 | 2012-05-15 |
審決日 | 2012-05-28 |
出願番号 | 特願2000-581536(P2000-581536) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G06F)
P 1 8・ 537- WZ (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多胡 滋 |
特許庁審判長 |
西山 昇 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 田中 秀人 |
発明の名称 | デバッギングのためのデータ最適化と並行したオブジェクトサイズ情報の維持 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 堀井 豊 |