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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1264730 |
審判番号 | 不服2011-13158 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-21 |
確定日 | 2012-10-10 |
事件の表示 | 特願2006-539020「組込型ディスプレイを有するミラー」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日国際公開、WO2005/045481、平成19年 5月10日国内公表、特表2007-511792〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2004年11月 3日(優先権主張2003年11月11日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成23年 2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年 6月21日に拒絶査定不服審判が請求されたところ、当審において同年10月31日付けで拒絶理由が通知され、それに応答して、平成24年 4月23日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、平成24年 4月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1?8に係る発明は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)。 「 【請求項1】 観察側に第1の種類の偏光を反射する第1の面を有する観察目的の偏光ミラーであって、 前記偏光ミラーは、第2の種類の偏光を通過させるとともに、非観察側に表示装置を備え、 前記表示装置は、使用されている間、前記第2の種類の偏光を提供し、 前記偏光ミラーの表示装置は、前記非観察側に、前記第1の種類の偏光を反射する第2の面を備える、偏光ミラー。 【請求項2】 前記非観察側に色生成手段を更に有し、 前記表示装置の電気光学層と前記色生成手段との間に前記第2の面を有する、請求項1に記載の偏光ミラー。 【請求項3】 前記色生成手段はカラーフィルタを有する、請求項2に記載の偏光ミラー。 【請求項4】 前記色生成手段はカラーシーケンシャルバックライトを有する、請求項2に記載の偏光ミラー。 【請求項5】 前記色生成手段は、発光帯域のバンド幅が広くても20nmである光を発するバックライトを有する、請求項2に記載の偏光ミラー。 【請求項6】 前記偏光ミラーは、その観察側に、2つの光学状態の間で切替可能な偏光手段を有する、請求項1又は2に記載の偏光ミラー。 【請求項7】 前記切替可能な偏光手段は、その観察側において、2つの基板の間に、色素を有する液晶層を有する、請求項6に記載の偏光ミラー。 【請求項8】 前記切替可能な偏光手段は、その観察側に、1/2λリターダと偏光子とを有する、請求項6に記載の偏光ミラー。」 第3 当審が通知した拒絶の理由の概要 当審が通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。 (記載不備) 本願は、特許請求の範囲(請求項9、10)、明細書(段落【0037】)、及び図面(図5)の記載が特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (進歩性の欠如) 本願発明は、本願の優先日前に頒布された特開2001-318374号公報(以下、「刊行物1」という。)に記載された発明、及び、国際公開第2001/079923号(以下、「刊行物2」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 各刊行物の記載事項及び各刊行物に記載された発明 1.刊行物1 刊行物1には、次のア.?オ.に示すとおりの事項及び図面が記載されている。(下線は当審が付加した。以下、この審決において同様である。) ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、表示画面を鏡に切り替えることができる鏡機能付き表示装置およびこれを備えた機器、または、鏡を画像表示画面に切り替えることができる画像表示機能付き鏡およびこれを備えた機器に関する。」 イ.「【0020】第1の実施の態様の表示装置は、図1のように、順に配置された、画像表示部1000と、反射型偏光選択部材300と、透過偏光軸可変部400と、吸収型偏光選択部材500とを有している。画像表示部1000は、予め定めた方向の直線偏光成分を透過し、それと直交する方向の直線偏光成分を吸収する吸収型偏光選択部材208を含み、この吸収型偏光選択部材208は、反射型偏光選択部材300側に配置されている。本実施の形態では、画像表示部1000は、照明装置と、液晶層と、液晶層を挟む2枚の吸収型偏光選択部材とを含む。2枚の吸収型偏光選択部材のうち出射側ものが、吸収型偏光選択部材208である。液晶層に印加する電圧を明表示領域と暗表示領域とで変化させて、明表示領域からは吸収型偏光選択部材208を透過する直線偏光を出射させ、暗表示領域では吸収型偏光選択部材208で光を吸収させて、光を出射させない。これにより、画像を表示する構成である。よって、画像表示部1000から出射される画像光(明表示光)は、吸収型偏光選択部材208の透過偏光軸と一致した偏光軸を有する直線偏光である。以下、画像光の偏光軸と同じ方向の偏光軸を有する直線偏光を「第1の直線偏光」と称する。また、第1の直線偏光と偏光軸が直交する方向の直線偏光を「第2の直線偏光」と称する。 【0021】反射型偏光選択部材300は、予め定めた方向の直線偏光成分を透過し、それと直交する直線偏光成分を反射する部材である。ここでは、反射型偏光選択部材300は、第1の直線偏光成分は透過し、第2の直線偏光成分は反射する向きに配置している。 【0022】透過偏光軸可変部400は、入射した直線偏光光が透過する際にその偏光軸を変化させる状態と、偏光軸を変化させない状態とを、電気的な切り替えにより選択できる構造を有する素子である。本実施の形態では、透過偏光軸可変部400として、液晶層407と、液晶層407に電圧を印加するための透明電極403、406とを含む液晶素子を用いている。透明電極403には、電圧のオンオフを切り替える切り替えスイッチ813が接続されている。切り替えスイッチ813により、液晶層407に印加する電圧をオフにしているときには、液晶層407は、入射した直線偏光の偏光軸を変化させる状態であり、電圧をオンにすると偏光軸を変化させない状態となる。本実施の形態では、液晶層407は、液晶分子407aの長軸が、電圧オフのときに、透明電極403と透明電極406との間で連続的に90°捩じれるように構成した、いわゆるツイストネマティック(TN)型液晶である。液晶層407の配向方向は、反射型偏光選択部材300側から入射した第1の直線偏光を第2の直線偏光へ変化させる方向に定めている。一方、電圧オンの場合、液晶層407の液晶分子407aは、図2のように透明電極403、406に対して垂直に立った状態となり、入射した光の偏光軸を変化させない状態となる。 【0023】吸収型偏光選択部材500は、予め定めた方向の直線偏光成分を透過し、それと直交する方向の直線偏光成分を吸収する部材である。ここでは、吸収型偏光選択部材500は、入射した光のうち第1の直線偏光成分は吸収して、第2の直線偏光成分は透過するように配置されている。 【0024】尚、観察者は、吸収型偏光選択部材500側(図1中の紙面左側)から本表示装置を観察することになる。 【0025】つぎに、第1の実施の形態の表示装置の動作を図1および図2を用いて説明する。 【0026】本実施の形態の表示装置を画像表示状態で使用する場合には、図1のように、切り替えスイッチ813をオフにして、透過偏光軸可変部400の液晶層407の液晶分子407aが90゜捻れた状態に設定する。この状態で、画像表示部1000から所望の表示の画像光(明表示光)3001を出射させる。画像光3001は、画像表示部1000の吸収型偏光選択部材208を通過している光であるため、第1の直線偏光である。よって、画像光3001の偏光軸は、反射型偏光選択部材300の透過偏光軸と一致しており、反射型偏光選択部材300を透過して、透過偏光軸可変部400に入射する。上述のように、透過偏光軸可変部400の液晶層407はオフ状態に設定されているため、入射した第1の直線偏光の画像光3001は、液晶分子407aの捻れに沿ってその偏光軸が回転して第2の直線偏光となって出射される。第2の直線偏光となった画像光3001は、偏光軸が吸収型偏光選択部材500の透過偏光軸と一致しているため、これを透過して、観察者に観察される。 【0027】一方、画像表示状態のときに観察者側から表示装置へ入射する外光3002は非偏光であるが、吸収型偏光選択部材500を透過する際、第1の直線偏光成分は吸収され、第2の直線偏光成分のみが透過する。吸収型偏光選択部材500を透過した第2の直線偏光の外光3002は、透過偏光軸可変部400を透過する際に、第2の直線偏光から第1の直線偏光に変化する。これにより、偏光軸が反射型偏光選択部材300の透過偏光軸と一致するため、反射型偏光選択部材で反射されることなく透過して画像表示部1000に入射する。入射した第1の直線偏光の外光3002は、偏光軸が吸収型偏光選択部材208の透過偏光軸と一致しているため、吸収型偏光選択部材208を透過し、画像表示部1000の液晶層に入射する。このとき、暗表示領域に入射した光は、液晶層よりも照明装置側に配置されている吸収型偏光選択部材によって吸収される。よって、観察者側には戻ってこない。また、明表示領域に入射した光は、光源側の吸収型偏光選択部材も透過して照明装置に至る。照明装置に至った光の一部は、これにより反射されるが、反射された光は照明光と実質的に変わりなく、照明光の一部となるため、画質を劣化させる外光の反射とはならない。すなわち、本実施の形態の表示装置では、画像表示状態のときに、外光が入射しても、画質を劣化させる外光の反射はほとんどない。 【0028】このように、本実施の形態の表示装置は、画像表示状態では、画像光3001がほとんど損失することなく観察者へ向かうため明るい画像が得られる。一方、外光3002は表示装置ではほとんど反射されないので、映り込みやコントラスト比の低下等の外光の反射による画質の劣化がほとんどない。 【0029】つぎに、本実施の形態の表示装置を鏡状態に切り替えて使用する場合について説明する。この場合、図2のように、切り替えスイッチ813をオンにして、透過偏光軸可変部400の液晶層407の液晶分子407aを立たせた状態に設定する。 【0030】このとき、観察者側から本表示装置へ向かう外光3002は非偏光であるが、吸収型偏光選択部材500を透過する際、第1の直線偏光成分は吸収され、第2の直線偏光成分のみが透過し、透過偏光軸可変部400に入射する。透過偏光軸可変部400は、液晶層407の液晶分子407aが立った状態であるため、入射した外光3002は偏光状態が変化することなく第2の直線偏光のまま透過偏光軸可変部400を透過し、反射型偏光選択部材300に至る。反射型偏光選択部材300の反射偏光軸は、第2の直線偏光の偏光軸と一致しているため、外光3002は反射型偏光選択部材300によって反射される。反射型偏光選択部材300で反射した外光3002は、再び透過偏光軸可変部400に入射し、第2の直線偏光のままこれを透過して出射され、さらに吸収型偏光選択部材400も透過して観察者へ向かう。これにより、外光3002の反射像が得られ鏡状態が実現する。 【0031】この鏡状態のときに、画像表示部1000から出射される画像光(明表示光)3001は、吸収型偏光選択部材208を透過した第1の直線偏光であるため、反射型偏光選択部材300を透過して透過偏光軸可変部400に入射する。透過偏光軸可変部400はオン状態であるため、画像光3001の偏光状態は変化することなく第1の直線偏光のままこれを透過し、吸収型偏光選択部材500に入射する。第1の直線偏光は、吸収型偏光選択部材500の吸収偏光軸に一致しているため、吸収型偏光選択部材500で吸収されて観察者には観察されない。 【0032】つまり、鏡状態の場合には画像表示部材からの光は観察者に至ることがなく、一方、周囲から表示装置に入射する外光3002は理想的には非偏光の半分の光が反射型偏光選択部材300で反射して、観察者側に向かうため明るい鏡として機能する。 【0033】なお、鏡状態の場合、本実施の形態の表示装置は、国際公開番号WO99/04315の再公表公報の表示装置と比較して、光漏れを大幅に減少させることができる。国際公開番号WO99/04315では、鏡状態において反射型偏光板の反射性能に起因する暗表示部からの光漏れが問題であったが、本実施の形態の表示装置では、画像表示部1000が吸収型偏光選択部材208を備え、暗表示領域の照明光を吸収しているため、暗表示領域では反射型偏光選択部材300に光が到達しない。このため、反射型偏光選択部材300の性能の如何に関わらず、暗表示領域からの光漏れはほとんど観察されない。 【0034】また、本実施の形態の表示装置は、鏡状態のときに、透過偏光軸可変部400をオンにして、液晶分子407aを立たせる構成である。一般にネマティック型液晶は、電圧オンの液晶分子を立たせた状態の方が、電圧オフの液晶分子が捻れた状態のときよりも、斜め方向に出射させる光の偏光軸のずれは小さい。このため、本実施の形態の表示装置は、従来の技術で述べた鏡状態で電圧オフにする構成のものと比較して、鏡状態のときに画像光(明表示光)3001の斜め方向への光漏れが少ないという効果も得られる。」 ウ.「【0082】液晶層207の液晶分子の長軸の配向方向は、2枚の透明基板201、202上に形成された配向膜204,206にラビング等の配向処理を行なうことで規定されている。ここでは、透明基板201,202間で連続的に90°ねじれた状態となっている。透明基板202の背面と、透明基板201の前面にはそれぞれ偏光板209及び吸収型偏光選択部材(偏光板)208が、互いに偏光軸が直交する直線偏光を透過するように配置されている。透明基板202側及び透明基板201側の液晶分子の長軸の配向方向は、偏光板209及び吸収型偏光選択部材(偏光板)208の透過偏光軸に対して、共に平行、もしくは共に直交するように構成している。 【0083】吸収型偏光選択部材(偏光板)208および偏光板209としては、例えば延伸したポリビニルアルコールにヨウ素を吸収させることにより偏光機能を付与した膜の両面に、トリアセチルセルロースの保護層を施したものを用いることができる。なお、吸収型偏光選択部材(偏光板)208および偏光板209は、それぞれ透明基板202及び透明基板201に、アクリル系の接着剤により光学的に結合するよう接着する。」 エ.「【0217】図29を用いて、実施例5の表示装置について説明する。本実施例5は、実施例1との共通部分が多いため(例えば図8参照)、実施例1と同様な部材には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。 【0218】本表示装置は、実施例1で説明した表示装置において、照明装置100として赤色、緑色、青色の3原色を時分割に照射可能なものを用い、画像表示部1000から観察者側の吸収型偏光選択部材(偏光板)208を取り除いたものである。従って、反射型偏光選択部材300と透過偏光軸可変部400と吸収型偏光選択部材500からなる鏡機能部を取り除いた場合、本実施例の液晶表示パネル200は鮮明な画像を表示することができない。 【0219】本実施例の液晶表示パネル200は、実施例1の液晶表示パネル200において、吸収型偏光選択部材(偏光板)208を取り除いたほかに、カラーフィルタを無くし、フィールド順次カラー表示方式に対応できるように液晶の応答が高速化可能なものとした。 【0220】フィールド順次カラー表示方式は例えば特開平5-19257号公報、特開平11-52354号公報などに技術の詳細が記載されている。本方式は3原色の照明光を時分割で液晶表示パネルに照射し、それに同期させて液晶を駆動することによりカラー画像の表示を実現するものである。すなわち、液晶表示パネルは1フレームの表示を行うために、3原色に対応した3つのサブフレームを順次表示する必要があるため液晶がより高速に応答する必要がある。フィールド順次カラー表示方式に対応するように液晶の応答を速くするには、例えばTNモードを用いる場合は上記ウェーブガイドの条件を満足するために複屈折Δnの大きな液晶を用い、液晶層207の厚さを2μm程度と薄く構成すれば良い。 【0221】尚、本実施例では以下、TNモードの場合を説明するが、フィールド順次カラー表示方式に対応した応答特性が得られる構成であれば、本発明の液晶表示パネルは上記構成に限定されるものではない。 【0222】照明装置100は透明媒体からなる導光体193と、導光体193の端面に配置した赤色、緑色、青色の3原色の光を出射する光源190と、導光体193の裏面に配置した偏光維持反射シート192と、導光体193の前面に配置した偏光維持拡散部191とから構成される。 【0223】赤色、緑色、青色の3原色の光を出射する光源190としては3原色のそれぞれの色光を発光する3つのチップを一体化したLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。このようなLEDは日亜化学工業株式会社から発売されている。」 オ.「【0241】一方、暗表示領域を通過する光3101は第2の直線偏光光のまま反射型偏光選択部材300に入射するため、反射型偏光選択部材300で反射して観察者には至らない。反射型偏光選択部材300で反射した光3101は再び第2の直線偏光光のまま液晶層207及び偏光板209を透過して照明装置100に戻る。この際、照明装置100を構成する偏光維持拡散部、導光体、及び偏光維持反射シート192は液晶表示素子200側から戻る光の偏光状態を略維持したまま、透過、或いは反射する。このため照明装置100で反射して液晶表示パネル200に向かう光3101は概ね第2の直線偏光光となっているため偏光板209でほとんど吸収されることなく液晶層207に入射する。液晶層207に入射した光3101のうち、明表示領域に入射した光は今度は第2の直線偏光光から第1の直線偏光光に変化して反射型偏光選択部材300を透過して、観察者へ向かい画像光として有効利用できる。」 図1、図2、図10、図29はそれぞれ次のとおりである。 【図1】 【図2】 【図10】 【図29】 上記摘記事項ア.?オ.及び図示内容を含む刊行物1全体の記載からは、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「観察側に第2の直線偏光を反射する反射型偏光選択部材(300)を有する観察目的の鏡であって、 前記鏡は、第1の直線偏光を通過させるとともに、非観察側に画像表示部(1000)を備え、 前記画像表示部(1000)は、使用されている間、前記第1の直線偏光を提供し、 前記鏡の画像表示部(1000)は、前記非観察側に、吸収型偏光選択部材(209)を備える、 鏡。」 2.刊行物2 刊行物2には、次のカ.?ク.に示すとおりの事項及び図面が記載されている。 カ.「An embodiment of conventional transflective display 300 is illustrated in FIG.3. The display 300 has an absorbing polarizer film 302, an LCD 304, and a transflective layer 306. The transflective layer may be, for example, a reflecting polarizer that has high reflectivity for light in one polarization state and high transmission for light in the orthogonal polarization state. A backlight source 308 is positioned below the transflective film 306.」(第7ページ第8行?第14行) (参考訳;刊行物2の日本語ファミリ公報である特表2004-511811号公報の段落【0020】は次のとおり。) 「従来の半透過ディスプレイ300の実施形態が、図3に示されている。ディスプレイ300は、吸収偏光子フィルム302、LCD304および半透過層306を有する。半透過層は、たとえば、1つの偏光状態における光の場合には高い反射率を有し、直交する偏光状態における光の場合には高い透過率を有することができる。バックライト源308は、半透過フィルム306の下に配置される。」 キ.「First we consider ambient light incident on the polarizer film 302. Light ray 310 having a polarization orthogonal to the pass polarization state of the absorbing polarizer 302 is absorbed in the polarizer film 302. Light 312 having a polarization that is transmitted by the absorbing polarizer 302 is transmitted through the LCD 304 without having its polarization rotated. The ray 312 is transmitted through the transflective film 306. Another ray 314 is transmitted through the absorbing polarizer 302 and the LCD 304. The polarization of ray 314 is rotated by the LCD 304, and therefore is strongly reflected by the transflective film 306, as ray 316, which the users views as image light.」(第7ページ第15行?第24行) (参考訳;刊行物2の日本語ファミリ公報である特表2004-511811号公報の段落【0021】は次のとおり。) 「第一に、偏光子フィルム302に入射される周辺光を考える。吸収偏光子302の通過偏光状態に直交する偏光を有する光線310は、偏光子フィルム302に吸収される。吸収偏光子302によって透過される偏光を有する光312は、回転偏光を有することなく、LCD304によって透過される。光線312は、半透過フィルム306によって透過される。別の光線314は、吸収偏光子302およびLCD304によって透過される。光線314の偏光は、LCD304によって回転されるため、光線316として半透過フィルム306によって強く反射され、利用者は画像光としてそれを見る。」 ク.「When operating under backlit conditions, the display 300 reverses the image as compared to when operating under ambient light. When backlit, ray 318 is transmitted through the transflective film 306, and its polarization is rotated by LCD 304, before it is absorbed in the absorbing polarizer 302. Ray 320 is transmitted through the transflective layer 306, through the LCD without polarization rotation, and is transmitted through the absorbing polarizer 302. Backlit ray 322 is originally reflected by the transflector layer 306, but may be passed through the transflector after having its polarization randomized through recycling between the transflector layer 306 and the backlight source 308. The polarization of ray 322 is not rotated on transmission through the LCD 304, and therefore transmitted through the absorbing polarizer 302. Ray 324 is originally reflected by the transflector layer 306, but is recycled until its polarization allows transmission. The polarization of ray 324 is rotated by the LCD 304, and so is absorbed in the absorbing polarizer 302.」(第7ページ第25行?第8ページ第8行) (参考訳;刊行物2の日本語ファミリ公報である特表2004-511811号公報の段落【0022】は次のとおり。) 「バックライト状態の下で作動する場合には、ディスプレイ300は、周辺光の下で作動している場合に比べて、画像を反転する。バックライトの場合には、光線318は、半透過フィルム306によって透過され、その偏光が吸収偏光子302に吸収される前に、LCD304によって回転される。光線320は、半透過層306によって透過され、偏光回転を生じることなくLCDによって透過され、吸収偏光子302によって透過される。バックライト光線322は初めは半透過体層306によって反射されるが、その偏光が半透過体層306とバックライト源308との間で再循環することによって不規則になった後、半透過体によって通過されてもよい。光線322の偏光は、LCD304による透過において回転されないため、吸収偏光子302によって透過される。光線324は、半透過体層306によって初めは反射されるが、その偏光が透過されることができるまで再循環される。光線324の偏光はLCD304によって回転されるため、吸収偏光子302において吸収される。」 図3は次のとおりである。 上記摘記事項カ.?ク.および図示内容から見て、刊行物2には、LCD(液晶ディスプレイ)において、LCDとバックライト光源との間に、一つの偏光状態における光の場合には高い反射率を有し、直交する偏光状態における光の場合には高い透過率を有する半透過(体)層(半透過フィルム)を設け、バックライト光線のうち一つの偏光状態における光は初めは半透過(体)層によって反射されるが、その偏光が半透過(体)層とバックライト光源との間で再循環することによって偏光が不規則になった後、半透過(体)層によって透過されること(以下「刊行物2の技術的事項」という。)が記載されている。 第5 拒絶理由についての当審の判断 1.本願発明1と引用発明との対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「鏡」は本願発明1の「偏光ミラー」に相当し、以下同様に、「第1の直線偏光」は「第2の種類の偏光」に、「第2の直線偏光」は「第1の種類の偏光」に、「反射型偏光選択部材」は「第1の面」に、「画像表示部」は「表示装置」に、それぞれ相当する。 そこで、本願発明1の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 [一致点] 「観察側に第1の種類の偏光を反射する第1の面を有する観察目的の偏光ミラーであって、 前記偏光ミラーは、第2の種類の偏光を通過させるとともに、非観察側に表示装置を備え、 前記表示装置は、使用されている間、前記第2の種類の偏光を提供する、偏光ミラー。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願発明1は、「前記偏光ミラーの表示装置は、前記非観察側に、前記第1の種類の偏光を反射する第2の面を備える」のに対し、引用発明においては、鏡の画像表示部は非観察側に吸収型偏光選択部材を備えるものの、該吸収型偏光選択部材は第2の直線偏光(本願発明1の「第1の種類の偏光」に相当)を反射するものとは認められず、該吸収型偏光選択部材の他に第2の直線偏光を反射する面を備えているとも認められない点。 2.相違点についての判断 上記相違点について検討する。 刊行物2の図3およびその説明(特に、上記第4 2.の摘記事項キ.の下線部参照。)から、刊行物2の技術的事項(上記第4 2.参照。)における半透過(体)層は、LCDが使用されている間に提供する偏光と直交する偏光を反射するもの(すなわち、本願発明1の「第1の種類の偏光を反射する第2の面」に相当するもの)であり、かつ、LCDとバックライト光源との間にある(すなわち、「表示装置」の「非観察側」にある)ことは明らかである。そして、刊行物2の技術的事項がバックライト光線の利用効率を向上させ、LCDの表示を明るくすることに寄与することも当業者には明らかである。 ところで、引用発明は、表示画面を鏡に切り替えることができる鏡機能付き表示装置およびこれを備えた機器、または、鏡を画像表示画面に切り替えることができる画像表示機能付き鏡およびこれを備えた機器の発明であり(上記第4 1.の摘記事項ア.参照。)、該表示装置は、バックライト付きの液晶表示パネルである。バックライト付きの液晶表示パネルの技術分野においては、少なくとも本願優先日の時点において、画像表示をより明るくするという一般的課題があったところ、当該課題は引用発明にも内在することは明らかである。そして、刊行物2の半透過(体)層は上記のとおり当該課題を解決する手段を提供するものであるから、当業者が当該課題を解決するために引用発明に対して上記刊行物2の技術的事項を採用しようと試みる動機が存在する。すなわち、画像表示をより明るくするという課題を解決するために、引用発明の画像表示部の照明装置との間に配置された吸収型偏光選択部材を、画像表示部が使用されている間に提供する偏光と直交する偏光を反射する半透過(体)層に置換することは通常の設計上の選択肢である、と当業者は認識すると考えられる。 してみれば、引用発明に相違点に関する本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことというほかない。 なお、バックライト付きの液晶表示パネルにおいては、少なくとも本願優先日の時点において、画像表示をより明るくするという一般的課題があったことを示す証拠として、刊行物2に記載されたような、反射偏光板(半透過フィルム、偏光ビームスプリッタ、偏光ミラーも同じ)を用いてバックライト光をリサイクルして画像表示の明るさを向上させる技術は、他にも、例えば、特開平10-96915号公報(特許請求の範囲等)、特開2000-147502号公報(【0033】、【0034】、図6等)、特開2002-169155号公報(【0064】、図3等)等、多数の文献に記載されて周知となっていた事実を挙げることができる。 請求人は、上記意見書において、『しかしながら、本願発明の構成を得るために、引用例2(当審注;刊行物2に同じ。以下同様。)におけるような「半透過性反射板」を利用しようと着想する理由は全く想定され得ないし、仮に利用したとしても、本願発明は全く得られない。なぜなら、引用例2に記載の「半透過性反射板」のような機能を発揮する構成は、本願発明に一切存在する必要がないものであるからである。引用例2に記載の「半透過性反射板」はあくまで、バックライト光源から到来するひとつの偏光状態における光をまず反射させてバックライト光源へと戻し、バックライト光源との間で再循環させることにより、偏光を不規則にさせ、当該不規則になった偏光を今度は通過させる、という機能を発揮するものである。このように機能する半透過性反射板は、本願発明の動作及び構造上、本質的に存在する必要がないものであり、本願発明の構成を得るために引用例1(当審注;刊行物1に同じ。以下同様。)の構成に追加しようとする動機が全く考えられない。』などと主張する。 しかしながら、引用発明に刊行物2の技術的事項を採用しようとする動機が存在することは上記のとおりであるから、上記請求人の主張は採用することができない。 また、請求人は、上記意見書において、『また、極めて当然ながら、引用例1の発明に対して斯かる「半透過性反射板」を適用したとしても、本願発明は全く得られない。』などとも主張するが、上記のとおり、刊行物2の技術的事項における半透過(体)層は、本願発明1の「第1の種類の偏光を反射する第2の面」に相当するから、引用発明に刊行物2の技術的事項を適用すれば、引用発明は、本願の請求項1の記載事項により特定される発明となる。また、実施例レベルで見ても、例えば、刊行物1の図29の実施例の偏光板209を刊行物2の図3の半透過(体)層306に置きかえれば本願図5の実施例とまったく同様の構成が得られるのであるから、上記主張が誤りであることは明らかである。 よって、上記請求人の主張も採用することはできない。 さらに、請求人は、上記意見書において、「このように、引用例1及び2には、課題の共通性、作用・機能の共通性、本願発明の技術的思想の開示がないので、本願発明の進歩性を否定する根拠となる動機づけとなり得るものが存在せず、従って本願発明はこれら引用例から当業者が容易に想到し得るものではないと思料する。」などとも主張する。 しかしながら、刊行物1に記載された技術も刊行物2に記載された技術もバックライト付きの液晶表示パネル又はLCDを用いた画像表示装置又はディスプレイに関するものであるから技術分野の共通性があり、したがって、作用・機能の共通性もあり、また、上記のとおり、課題の共通性もあるのであるから、上記請求人の主張も採用することはできない。 4.小括 したがって、本願発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第6 まとめ 以上のとおり、当審が通知した上記拒絶の理由は妥当なものであって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、当審が通知した上記拒絶の理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-11 |
結審通知日 | 2012-05-15 |
審決日 | 2012-05-29 |
出願番号 | 特願2006-539020(P2006-539020) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 理弘 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
金高 敏康 住田 秀弘 |
発明の名称 | 組込型ディスプレイを有するミラー |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 津軽 進 |