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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1264822 |
審判番号 | 不服2011-7932 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-14 |
確定日 | 2012-10-17 |
事件の表示 | 特願2006-533980「単一位相流体インプリント・リソグラフィ法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月14日国際公開、WO2005/033797、平成19年 4月19日国内公表、特表2007-509769〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2004年9月24日(優先権主張2003年10月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年11月1日付けで手続補正がなされたが、同年12月1日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成23年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成23年9月6日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年12月12日に回答書が提出された。 第2 平成23年4月14日付けの手続補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年4月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の請求項に記載された発明 平成23年4月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。 「基板に付着された粘性液体層に閉じ込められるガスを減少させるための方法であって、 この方法は、 前記粘性液体中のガスの輸送を増加させるために、前記粘性液体に近接した前記ガスの組成を変更するステップを含み、 さらに、この変更するステップが、該粘性液体中のガスの可溶性または拡散性を増加するステップであって前記粘性液体に近接する大気にヘリウムを導入するステップを含むことを特徴とする方法。」 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.先願発明 本願の優先日前の特許出願(以下「先願」という。)であって、本願の優先日後に出願公開がされ、その特許出願に係る発明をした者と本願の発明者が同一ではなく、本願の出願の時において、その出願人が本願出願人と同一でもない特願2002-231139号(特開2004-71934号公報参照)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は100μ以下、特には200nm以下の微細パタンーンの製造方法およびこれに使用する転写材料に関する。」 (b)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 以上の従来技術の問題点を解決すべく、半導体製造プロセス、光学素子、高密度記録等の微細なパターンをスタンピング成形するための優れた転写材料および製造方法を提供することにある。」 (c)「【0016】 【発明の実施の形態】 本発明でのスタンピング成型は上記従来技術ですでに開示されている、ナノインプリント法などである。例えば通常、転写の元パターンとなるモールドを転写材料に押し付けることでパターンを成形する。簡易断面図(図1)に示すように元型であるモールド1は必要なパターンの凹凸が逆になったパターンが作製されている。転写基板2は転写材料3、基材4よりなる。 【0017】 必要に応じて加熱されたモールドを必要に応じて加熱した転写基板2(転写材料3、基材4よりなる)に押しつけ(図2)、パターンを転写した後、加熱硬化または光硬化等にて転写材料3を硬化させ、必要に応じてモールド1および転写基板2を冷却してモールドを分離することによりパターンが作製された転写材料を作製することができる。(図3) ・・・」 (d)「・・・ スタンピング成形は通常、転写材料が軟化した状態でおこなわれる。加熱が必要な場合通常50℃?300℃である。UV硬化の樹脂を使用する場合は50℃以下でおこなわれる場合もある。 【0020】 スタンピング後の離型を良くするために、モールドまたは転写基板に離型材を事前に塗布しても良い。 【0021】 材料劣化の低減、材料中の気泡除去などの必要に応じて真空中、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴンなど)中で実施される。」 これらの記載事項及び図面を含む先願明細書等全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、先願明細書等には、以下の発明が記載されている。 「転写の元パターンとなるモールド(1)を、軟化した状態の転写材料(3)、基材(4)よりなる転写基板(2)に押し付け、パターンを転写した後、光硬化にて転写材料を硬化させ、モールドを分離することにより微細なパターンを製造する方法であって、転写材料としてUV硬化の樹脂を使用し、材料劣化の低減、材料中の気泡除去などのためにヘリウム雰囲気中で、50℃以下でおこなう方法。」(以下「先願発明」という。) 3.対比 補正発明と先願発明を比較する。 (あ)先願発明の「基材」、「軟化した状態の転写材料」及び「材料中の気泡除去のため」は、それぞれ補正発明の「基板」、「粘性液体層」及び「粘性液体層に閉じ込められるガスを減少させるため」に相当する。 (い)先願発明では、一連の方法がヘリウム雰囲気中で行われるから、軟化した状態の転写材料(補正発明の「粘性液体」に相当)はヘリウムに取り囲まれている(近接している)。 そして、補正発明や先願発明が属するインプリント・リソグラフィの分野において、パターン形成工程の前後に、基板の載置や取り出し等の前後工程が入ることは、よく知られた技術常識であり、しかも、これらの前後工程が大気中で行われることも、当業者の技術常識である。 してみると、先願発明が、転写基板のまわりにヘリウムを導入し、大気をヘリウムと置換(変更)する工程を有することは明らかである。 すなわち、本願発明と先願発明は「粘性液体に近接した前記ガスの組成を変更するステップを含み、さらに、この変更するステップが、前記粘性液体に近接する大気にヘリウムを導入するステップを含む」点で共通する。 したがって、両者は、 「基板に付着された粘性液体層に閉じ込められるガスを減少させるための方法であって、 この方法は、 前記粘性液体に近接した前記ガスの組成を変更するステップを含み、 さらに、この変更するステップが、前記粘性液体に近接する大気にヘリウムを導入するステップを含むことを特徴とする方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) ガスの組成を変更するステップが、補正発明では「粘性液体中のガスの輸送を増加させるため」の「粘性液体中のガスの可溶性または拡散性を増加するステップ」であるのに対して、先願発明では、何のためのどのようなステップであるのか不明な点。 4.判断 上記相違点について検討する。 本願明細書の段落【0020】の「実施形態の1つにおいて、大気78は、領域77のインプリンティング材料36aを通り抜ける大気に含まれるガスの輸送が、空気に関連した輸送に対して増大するようにつくられる。輸送という用語は、インプリンティング材料36aを通り抜けるガスの伝播を促進する任意のメカニズム、例えば、溶解性の向上、拡散の増大、透過性の向上等を生じることになるものと定義される。」の記載(下線は当審で付与、以下同じ)に基けば、上記相違点に係る事項は、結局「粘性液体中のガスの可溶性または拡散性を増加させる」ために「粘性液体中のガスの輸送を増加させる」こと、すなわち「粘性液体に近接するヘリウムの導入を増加する」ことにほかならない。 ここで、補正発明における「ヘリウムの導入の増加」が何と比べて増加するのかは必ずしも明確ではないものの、本願明細書の段落【0020】の「流体供給システム70とデータのやりとりをするプロセッサ25の制御下において、アパーチャ104a、106aを介して、インプリンティング材料36aを導入し、大気78をインプリンティング材料36aで飽和させることが可能である。これは、インプリント・プロセス中にインプリンティング層34に閉じ込められた空気のようなガスを完全に除去するとはいかないまでも、その量を減少させることが明らかになった。これは、インプリンティング層34に存在する空気が望ましくないボイドを生じることが分っているので、有益である。あるいはまた、大気78を二酸化炭素及び/又はヘリウムで飽和させると、図5に示すインプリンティング層34に空気が閉じ込められないようにするとまではいかないまでも、その量が大幅に減少し、その結果、望ましくないボイドの形成をなくすとはいかないにせよ、減少させるということが判明した。」の記載を参酌すれば、上記相違点に係る事項は、「少なくともガスの組成を変更する前に比べて粘性液体に近接するヘリウムの導入を増加する」ステップであると解するのが妥当である。 一方、先願発明はガスの(大気からヘリウムへの)組成変更後は、一連の工程がヘリウム雰囲気中で行われるのであるから、ガスの組成を変更するステップが「少なくともガスの組成を変更する前に比べて粘性液体に近接するヘリウムの導入を増加する」ステップであることは明らかである。 してみると、上記相違点に係る事項は先願発明も有する事項である。 したがって、上記相違点は実質的には相違点ではなく、補正発明は先願発明と同一である。 5.小括 よって、補正発明は、先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、請求人が回答書(前記「第1 手続の経緯」参照)に添付した補正案の内容を参酌しても、上記判断に変わりはない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成23年4月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成22年11月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「基板に付着した粘性液体層に存在するガスを減少させるための方法であって、この方法は、 前記粘性液体中のガスの輸送を増加させるために、前記粘性液体に近接した前記ガスの組成を変更するステップを含み、 さらに、この変更するステップが、該粘性液体中のガスの可溶性または拡散性を増加するステップを含むことを特徴とする方法。」(以下「本願発明」という。) 2.先願発明 先願、先願明細書等及び先願発明は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、少なくとも、ガスの組成を変更するステップを限定する「前記粘性液体に近接する大気にヘリウムを導入するステップ」という事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を含む補正発明が、上記のとおり、先願発明と同一なのであるから、同様の理由により、本願発明と先願発明とは同一である。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-16 |
結審通知日 | 2012-05-22 |
審決日 | 2012-06-04 |
出願番号 | 特願2006-533980(P2006-533980) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B29C)
P 1 8・ 161- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 秋田 将行 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
樋口 信宏 森林 克郎 |
発明の名称 | 単一位相流体インプリント・リソグラフィ法 |
代理人 | 黒川 弘朗 |
代理人 | 山川 政樹 |
代理人 | 黒川 弘朗 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 山川 政樹 |