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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1264844
審判番号 不服2011-23394  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-31 
確定日 2012-10-18 
事件の表示 特願2007- 8977「光学フィルム用樹脂組成物およびこれからなる光学フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日出願公開,特開2008-176021〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は,平成19年1月18日に出願されたものであって,平成23年7月8日付けで手続補正がなされたが,平成23年7月26日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年10月31日に本件拒絶査定不服審判が請求され,当審において,平成24年5月10日付けで拒絶理由が通知され,それに応答して同年7月10日に意見書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は,平成23年7月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものと認められるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「少なくとも1種類以上の光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子16?50重量%とポリマー(A)40?83重量%と可塑剤(B)1?10重量%からなる光学フィルム用樹脂組成物であって,光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子が炭酸ストロンチウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,炭酸コバルト,炭酸マンガンからなる群から選ばれるものであり,該粒子の短軸径と長軸径の比が1.5以上で,また該粒子長軸方向の平均寸法が50nm以上400nm未満であり,ポリマー(A)がポリカーボネート,ポリアリレート,ポリエーテルスルフォン,環状ポリオレフィン,マレイミド系共重合体からなる群から選ばれるものであり,可塑剤(B)がフタル酸エステルおよび重縮合体,アジピン酸などの脂肪酸エステルおよび重縮合体,スチレン系ポリマー,アクリル系ポリマーからなる群から選ばれるものであり,ガラス転移温度が可塑剤(B)及びポリマー(A)よりも高い温度を示すことを特徴とする光学フィルム用樹脂組成物。」


第3 当審が通知した拒絶理由の概要
当審が通知した拒絶理由は,本願発明は,本願出願前に頒布された特開2006-251644号公報(以下「引用例」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。


第4 引用例
(1)引用例の記載
当審が通知した拒絶理由において引用した前記引用例には,次の記載がある。

記載事項ア
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように,2枚以上のポリマーフィルムを積層することにより,位相差が広い領域でλ/4またはλ/2を達成することが出来ることは知られている。しかしこの場合には,2枚以上のフィルムの角度,位相差を厳密に調整しながら積層する必要がある。これに対して,本発明者らは以前より1枚のポリマーフィルムからなるλ/4板または,λ/2板を提案している。しかし,位相差が広い波長領域でλ/4またはλ/2が達成されているフィルムで耐候性に優れて,かつリターデーション変化が生じ難い実用されているフィルムはほとんど無い。
【0010】
本発明の目的は,1枚のポリマーフィルムを用いて,耐候性に優れ,より位相差が広い波長領域で,λ/4またはλ/2等の広帯域性を有する位相差フィルムを達成することにある(λ/4,λ/2に限定する必要はなく,3/4λ,2/5λ等でもよい)。
【0011】
また本発明の他の目的は,広帯域性を容易に制御できる位相差フィルムを提供することにある。」

記載事項イ
「【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は,上記課題を解決するために位相差フィルム用の高分子材料等を鋭意検討した。そして,合成高分子に対して,光の波長より小さいサイズからなる光学異方性を有する無機化合物を添加し,またその複合材料を延伸等の技術により配向させることで得られる高分子配向フィルムからなる単層の位相差フィルムとすることで,透明性が良好で,かつ単層(1枚)で位相差が広い波長領域でλ/4板等の広帯域性に優れる位相差フィルムが得られることを見いだし,本発明を完成するに至った。
・・・(中略)・・・
【0014】
本発明者は,鋭意研究の結果,ポリマーフィルムに添加する複合材料を探索することにより,広い波長領域においてλ/4またはλ/2等の広帯域性を有する位相差フィルムを製造することに成功した。1枚のポリマーフィルムで構成される位相差フィルムの波長分散は,ポリマーを構成するモノマーの光学異方性に起因するため,短波長もしくは長波長領域において理想とするλ/4を取りうることが出来ず色抜けを生じていた。しかし,光学異方性を有する無機化合物を,合成高分子に対して添加することにより位相差における波長分散のコントロールが可能となり,より広帯域性を有する1枚の位相差フィルムにすることが出来る。これにより,液晶表示装置において,従来2枚以上の位相差フィルムを使用していたものに対して,1枚の位相差フィルムを用いることが可能となり,1枚の位相差フィルムで2枚以上の位相差フィルムと同等の色彩表示を行うことが出来るようになった。これにより,2枚以上のポリマーフィルムを用いる際の角度の厳密な調整,貼り合せ工程が不要となった。また,液晶が有する位相差波長分散に対して,液晶が有する位相差の影響による色彩変化を低減することの出来る位相差フィルムでの波長分散をコントロールすることが可能となった。本発明の位相差フィルムは,1枚で広い波長領域でλ/4またはλ/2等の広帯域性を達成できる。」

記載事項ウ
「【発明の効果】
【0015】
本発明により,短波長ほど位相差が小さい位相差フィルムを容易に得ることが可能となった。合成高分子中に存在する無機化合物の光学異方性や形状を選択することにより,位相差の波長分散特性を容易に制御しうるものである。そのような位相差波長分散性を有し且つ位相差を4分の1波長にした位相差フィルムは,偏光フィルムと組み合わされて優れた反射防止特性を有する円偏光フィルムを提供できる。また,反射型液晶表示装置,反透過反射型液晶表示装置,透過型液晶表示装置等に用いて画質の向上に寄与することが出来るという効果を有する。」

記載事項エ
「【0020】
本発明における高分子配向フィルムの配向とは,高分子鎖が主として特定の方向に並んだ状態を示す。高分子フィルムの配向は,通常フィルムの延伸等によって生じる。本発明では,高分子鎖が配向すると,フィルムに含有される光学異方性を有する無機化合物も配向する。かかる無機化合物の配向は,主として高分子の主鎖の配向方向に依存し,高分子主鎖に略平行,または略垂直に配向する場合,もしくはそれ以外の場合となる。本発明においては,該無機化合物のフィルム中での配向は,高分子の主鎖の分子骨格によって主に配向が制御され,単に合成高分子材料に添加しただけでは該無機化合物の配向方向はランダムであるが,延伸することにより高分子の主鎖と該無機化合物において相互の立体障害の影響を生じさせることができ,該無機化合物の配向方向を制御することが可能となる。」

記載事項オ
「【0022】
本発明における光学異方性を有する無機化合物の定義を以下に示す。
〔光学異方性を有する無機化合物〕
光学異方性とは,朝倉書店 高分子辞典初版p219によれば,屈折率および光学吸収などの光学量が方向依存性を有することであるが,本発明では屈折率の方向依存性が大きい材料が特に好ましい。例えば,ある方向と,この方向と直交する方向との屈折率の差が0.01以上であるような材料が好適であり,さらに好ましくは0.05以上,最も好ましいのは0.10以上がよい。光学異方性を有する無機化合物に関しては,結晶性の透明性を有する化合物であり,ポリマーと混合した状態で使用し,光の波長以下の粒子径(光学散乱が起こらない粒子径,特に400nmの波長領域より小さいサイズ)において,ポリマーフィルムに分散させた状態にて使用されるのが好ましい。
【0023】
無機化合物としては,例えば酸化金属,窒化金属,炭化金属,ハロゲン化金属,フェライト,金属水酸化物,金属塩類(金属炭酸塩,金属硫酸塩,金属ケイ酸塩等)等の粉末を用いることが可能であり,とりわけ,無色透明であり,光学異方性を有する無機化合物であって,かつ無機化合物の形状が,長径に対する短径の比が少なくとも3/4以下であることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0026】
光学異方性を有する無機化合物の含有量としては,フィルムを形成している合成高分子を基準として0.01?30重量%の範囲にあることが好ましく,0.05?25重量%の範囲で使用されることがさらに好ましく,0.1?20重量%の範囲の量がもっとも好ましい。
【0027】
光学異方性を有する無機化合物の形状としては,最大粒径として光の波長以下の粒子径サイズでないと,光学散乱が起こるために位相差フィルムとしてクロスニコルに配置された偏光板の間に挟んで使用して所望の特性を発現することが出来ない。このため,可視光である400?700,好ましくは780nmの波長領域より小さいサイズが必要となり,400nm以下であることが好ましく,1?400nmの範囲にあることがより好ましく,5?400nmの範囲にあることがさらにより好ましく,5?350nmの範囲にあることがさらにより好ましく,5?300nmの範囲にあることがもっとも好ましい。
【0028】
光学異方性を有する無機化合物の形状に関しては,その粒子が光学異方性を有さなければならないため,楕円体や柱状などの形状として異方性の形状を有するものが好ましく,その程度は,その長径に対する短径の比が3/4以下であり,好ましくは2/3以下であり,1/2以下であることがより好ましい。形状に関しては,該無機化合物が合成高分子の配向に対して,規則的に配向される効果が必要になるために,球状や正多角形のような等方性を有する粒子では,高分子の配向に対する無機化合物粒子の配向規則性が制御されないため,本発明においては使用することが出来ない。
【0029】
なお,本発明においては2種類以上の光学異方性を有する無機化合物を併用してもよい。また,フィルム中に耐熱安定剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤,透明核剤,永久帯電防止剤,蛍光増白剤等のポリマー改質剤を同時に含有されていても良い。」

記載事項カ
「【0030】
〔合成高分子〕
本発明の位相差フィルムにおける合成高分子としては透明性に優れた配向フィルムを形成できるものであればよく,具体例としては,・・・(中略)・・・ポリプロピレンなどのポリオレフィン類,・・・(中略)・・・ポリカーボネート類,・・・(中略)・・・ポリアリレート,ポリエーテルスルホン,・・・(中略)・・・脂環式ポリオレフィン類(例えばジシクロペンタジエン系ポリオレフィンやノルボルネン系ポリオレフィンなどの環状オレフィンの開環(共)重合体,その水素添加(共)重合体,環状オレフィンと不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体など),・・・(中略)・・・等の熱可塑性ポリマーを挙げることができる。この中でも,好ましい光学特性を有するものとしては,ポリカーボネート,並びに脂環式ポリオレフィン系重合体を挙げることができる。これらはブレンド高分子からなるものでも,共重合体からなるもの,また共重合体とブレンド高分子の混合体のいずれでも構わない。
・・・(中略)・・・
【0032】
また,合成高分子は,位相差フィルムとして加工,またフィルムとして取り扱うために,十分耐えうる機械特性を有さなければならないために,重量平均分子量は8000?500000であることが好ましく,10000?400000がさらに好ましく,12000?300000が最も好ましい。また,合成高分子からなる位相差フィルムが,ある程度の耐環境性を有さなければならないため,合成高分子のガラス転移温度は100℃以上300℃以下が好ましく,110℃以上280℃以下がさらに好ましく,120℃以上260℃以下が最も好ましい。
【0033】
合成高分子は,位相差フィルムとして用いるため,光学的に透明性に優れていることがよく,100μmのフィルムに加工した際に,その光学特性が全光線透過率75%以上ヘイズ3%以下が好ましく,全光線透過率80%以上ヘイズ2%以下がさらに好ましく,全光線透過率85%以上ヘイズ1%以下が最も好ましい。」

記載事項キ
「【0034】
〔ポリマーフィルムの製造法〕
本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。位相差フィルムの製造は,無機化合物を含有する合成高分子フィルムの作成工程と,該無機化合物及び高分子フィルムを面方向に配向させる延伸工程により高分子配向フィルムを得る工程よりなる。高分子フィルムの作成方法には,既存のいずれの作成方法を用いてもよい。例えば,溶剤に溶かしキャストする溶剤キャスト法,固体状態で混練してダイなどから押し出しフィルムにする押し出し成型法,固体状態で混練した後カレンダーロールでフィルムにするカレンダー法,プレスなどでフィルムにするプレス成型法などが挙げられる。これらの中でも,特に高分子配向フィルム中に光学異方性化合物を均一に分散させるべく高分子と該化合物との均一混合が必須となるために,合成高分子と該無機化合物を溶剤または溶融状態で混合する溶剤キャスト法または押出成型法が好ましい。この中でも,膜厚精度に優れている溶剤キャスト法がさらに好ましい。」

記載事項ク
「【0037】
上記高分子配向フィルムからなる本発明の位相差フィルムの厚さとしては,10?200μmである。
かかるフィルムの中には,延伸性を向上させる目的で,公知の可塑剤であるジメチルフタレート,ジブチルフタレート等のフタル酸エステル,トリブチルフォスフェート等のリン酸エステル,脂肪族2塩基エステル,グリセリン誘導体,グリコール誘導体等を含有しても良く,またこれらに限定するものではない。」

記載事項ケ
「【0057】
[実施例2]
合成高分子として帝人バイエルポリスティック(株)ポリカーボネート樹脂(商品名ST-3000,ガラス転移温度150℃)を用い,光学異方性を有する無機化合物として,針状結晶である炭酸ストロンチウム(SrCO3,長さ200nm,幅20nm,粒子の短径/長径=20/200=1/10(≦3/4),nz(:長さ方向の屈折率)1.5230,幅方向の屈折率nx=1.6662,ny=1.6680)を用い,それぞれ85:15(重量%)の比率で塩化メチレンに溶解させて樹脂濃度換算で18重量%のドープ溶液を作成した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し,ついで得られたフィルムを温度155℃で,1.5倍で幅自由1軸延伸し,80μmの位相差フィルムを得た。
【0058】
このフィルムは,測定波長において短波長ほど位相差が小さくなることを確認した。尚,R(450)/R(550)=0.85であり,全光線透過率90%,ヘイズ0.6%であった。」

(2)引用例に記載された発明
前記記載事項ア?ケを含む引用例の全記載からは,当該引用例に,実施例2におけるキャストフィルムに関して,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 合成高分子と光学異方性を有する無機化合物とからなり,これを温度155℃で1.5倍で幅自由1軸延伸することによって80μmの高分子配向フィルムからなる単層の位相差フィルムが得られるキャストフィルムであって,
合成高分子として,ポリカーボネート樹脂(帝人バイエルポリスティック(株)製,商品名ST-3000,ガラス転移温度150℃)を用い,
光学異方性を有する無機化合物として,針状結晶である炭酸ストロンチウム(SrCO3,長さ200nm,幅20nm,粒子の短径/長径=20/200=1/10(≦3/4),nz(:長さ方向の屈折率)1.5230,幅方向の屈折率nx=1.6662,ny=1.6680)を用い,
それぞれ85:15(重量%)の比率で塩化メチレンに溶解させて樹脂濃度換算で18重量%のドープ溶液を作成し,このドープ溶液を用いて溶剤キャスト法により作製した
位相差フィルム用のキャストフィルム。」


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「光学異方性を有する無機化合物」としての「針状結晶である炭酸ストロンチウム」は,本願発明の「光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子」のうちの光学異方性を有する針状の粒子に相当しており,また,引用発明の「合成高分子」は,本願発明の「ポリマー(A)」に相当する。
また,引用発明の「炭酸ストロンチウム」及び「ポリカーボネート樹脂」は,それぞれ,本願発明の「光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子」及び「ポリマー(A)」のそれぞれの材質の選択肢の一つに該当し,かつ,引用発明の炭酸ストロンチウムの針状結晶の長さ200nm及び幅20nmは,本願発明の「粒子の短軸径と長軸径の比が1.5以上」という構成要件及び「粒子長軸方向の平均寸法が50nm以上400nm未満」という構成要件のどちらをも満たす値である。
さらに,本願発明の「光学フィルム用樹脂組成物」とは,本願明細書の
「【0055】
実施例1
ポリマー(A)として延伸によって正の複屈折性を示すポリカーボネート(帝人化成製,商品名パンライト,ガラス転移温度141℃,位相差の波長依存性がRe(450/550)=1.17)75重量%,可塑剤(B)としてフタル酸ジエチルヘキシル5重量%および負の複屈折性を示す針状または紡錘状の粒子として炭酸ストロンチウム粒子・・・(中略)・・・20重量%からなる混合物を,ポリマー(A)および可塑剤(B)が可溶性を示す塩化メチレン溶媒中25重量%となるように攪拌装置を用いて溶解・分散させた溶液をポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に製膜した後に,160℃にて乾燥しフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物(光学フィルム)を得た。得られた光学フィルム用樹脂組成物のTgは157℃であった。
【0056】
得られた光学フィルムを二軸延伸装置(井元製作所製,型式16A1)を用いて自由幅一軸延伸モードにおいて,160℃にて1.5倍に延伸して光学フィルムを得た。得られた光学フィルム外観は良好であった。」
という記載や,
「【0076】
実施例6
実施例1において得られた光学フィルム用樹脂組成物を粉砕し,幅200mm,スリットギャップ0.15mmを有するTダイを設置したスクリュー径φ20mm,圧縮比3.5の単軸押出し機(東洋精機株式会社製,商品名ラボプラストミル)を用いて押出し機シリンダー温度プロファイルとして原料供給口からダイまでの温度がそれぞれ150℃;160;170℃;170℃にて押出し,水冷ロールにて冷却しながら溶融押出し光学フィルムを得た。得られた溶融押出し光学フィルムを用いて実施例1と同様の条件で延伸加工して光学フィルムを得た。」
という記載等からみて,溶液キャスト法によってフィルム状に作製したものであって,これを延伸加工することによって光学フィルムが得られるフィルム状の樹脂組成物を包含する概念であると解され,かつ,本願明細書の【0002】の「位相差フィルムなどの光学フィルム」という記載等からみて,位相差フィルムは光学フィルムの一態様であると認められるところ,引用発明の「位相差フィルム用のキャストフィルム」は,溶剤キャスト法(溶液キャスト法に該当する。)により作製したものであって,これを延伸加工することによって位相差フィルムが得られるのであるから,本願発明の「光学フィルム用樹脂組成物」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明は,
「光学異方性を有する針状の粒子とポリマー(A)とを含む光学フィルム用樹脂組成物であって,光学異方性を有する針状の粒子が炭酸ストロンチウムであり,該粒子の短軸径と長軸径の比が1.5以上で,また該粒子長軸方向の平均寸法が50nm以上400nm未満であり,ポリマー(A)がポリカーボネートである光学フィルム用樹脂組成物。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:光学フィルム用樹脂組成物の成分及びその配合量に関して,本願発明では,光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子が16?50重量%,ポリマー(A)が40?83重量%,フタル酸エステルおよび重縮合体,アジピン酸などの脂肪酸エステルおよび重縮合体,スチレン系ポリマー,アクリル系ポリマーからなる群から選ばれる可塑剤(B)が1?10重量%であるのに対して,引用発明では,光学異方性を有する無機化合物である炭酸ストロンチウムの針状結晶(光学異方性を有する針状の粒子)が15重量%,合成高分子であるポリカーボネート樹脂(ポリマー(A))が85重量%であって,可塑剤は配合されていない点。

相違点2:光学フィルム用樹脂組成物のガラス転移温度について,本願発明では可塑剤(B)及びポリマー(A)よりも高い温度であるのに対して,引用発明では合成高分子であるポリカーボネート樹脂(ポリマー(A))のガラス転移温度150℃との大小関係は明らかでなく,かつ,引用発明には可塑剤が配合されていないことから,引用発明のガラス転移温度と可塑剤のガラス転移温度との大小関係を特定することはできない点。


第6 判断
1.相違点1についての判断
(1)無機微粒子の配合割合及び可塑剤の配合について
ポリマーに無機微粒子を大量に配合すると,粘性が増大して成形等の扱いが困難になることは,本願明細書の【0011】?【0012】に従来から知られていたことが記載されているように,また,例えば,当審が通知した拒絶理由において例示した特開昭60-84364号公報(2頁右上欄2行?左下欄12行等参照。)等にも記載されているように,当業者における技術常識(以下「第1の技術常識」という。)である。

当該第1の技術常識を踏まえると,引用発明は,ポリカーボネート樹脂85重量%と,無機微粒子である炭酸ストロンチウムの針状結晶15重量%を配合したものであって,これを一軸延伸して位相差フィルムを作製することができるのであるから,その粘性は,位相差フィルムを作製する際の一軸延伸加工に支障が生じるほどに高い値ではないものと推察される。

一方,引用例の【0026】には,「光学異方性を有する無機化合物の含有量としては,フィルムを形成している合成高分子を基準として0.01?30重量%の範囲にあることが好ましく,0.05?25重量%の範囲で使用されることがさらに好ましく,0.1?20重量%の範囲の量がもっとも好ましい。」と記載されているのだから(記載事項オ),当該【0026】の教示に従って,所望の波長分散性を得るために(記載事項イの【0014】),引用発明における炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合比を0.01?30重量%という数値範囲の中で適宜調整することは,当該引用例の記載に接した当業者にとって,通常の創作能力の発揮でしかない。
しかるに,当該数値範囲の中で,引用発明の15重量%よりも相当に大きな値(以下,単に「大きな値」という。本願発明の数値範囲は16?50重量%であるから,当該「大きな値」は,本願発明の数値範囲内の値となる。),例えば,18重量%ないし30重量%に調整した場合には,キャストフィルムの粘性が増大して,位相差フィルムを作製する際の一軸延伸加工が困難になる恐れがあることは,前記第1の技術常識を熟知する当業者が容易に予測できることであって,しかも,引用例の【0037】には,「かかるフィルムの中には,延伸性を向上させる目的で,公知の可塑剤であるジメチルフタレート,ジブチルフタレート等のフタル酸エステル,トリブチルフォスフェート等のリン酸エステル,脂肪族2塩基エステル,グリセリン誘導体,グリコール誘導体等を含有しても良く,またこれらに限定するものではない。」と記載されているのだから(記載事項ク),炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合量を前記「大きな値」に変更した際に,当該【0037】の教示に従って,可塑剤を適宜量配合することによって,キャストフィルムを軟らかくし一軸延伸を容易にしようとすることは,当業者にとってごく自然な発想であるというほかない。
したがって,引用発明において,炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合比を前記「大きな値」に変更するとともに,可塑剤を適宜量配合することは,第1の技術常識を熟知する当業者が,引用例自体の記載に基づいて,容易に想到し得たことである。

(2)可塑剤の配合比について
前記(1)において述べた炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合量の調整に伴う可塑剤の配合の際に,当該可塑剤をどの程度の量配合すればよいのかについて,引用例自体には手がかりとなる記載がないものの,あまりにも少量しか配合しない場合は,キャストフィルムを軟らかくし一軸延伸を容易にするという効果を得られなくなり,逆にあまりにも大量に配合した場合には,キャストフィルムが軟らかくなりすぎて,一軸延伸による炭酸ストロンチウムの針状結晶の配向(記載事項エや記載事項オの【0028】)自体が困難となることは当業者にとって明らかな事項であるから,可塑剤の配合比については,これらの事情を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる設計事項というべきである。
しかも,例えば,当審が通知した拒絶理由において例示した特開2006-317733号公報(特に,【0077】?【0078】や【0214】の表1中の光学フィルムNo.B3等を参照。以下,「周知例1」という。)や国際公開第2006/118038号(特に,[0093]?[0094]や[0265]の表1中の光学フィルム-A No.7等を参照。以下,「周知例2」という。)等の記載からみて,無機微粒子である針状炭酸ストロンチウムを比較的大量に含有するポリマーに配合する可塑剤の配合比として,本願発明の1?10重量%という数値範囲は,従来ごく普通に設定される数値(各成分の配合量を組成物に対する質量%に換算すると,周知例1の光学フィルムNo.B3の針状炭酸ストロンチウム配合比は16.0質量%,可塑剤配合比は6.7質量%であり,周知例2の光学フィルム-A No.7の針状炭酸ストロンチウム配合比は16.5質量%,可塑剤配合比は7.5質量%である。)であると認められるから,可塑剤の配合比として,本願発明の1?10重量%という数値範囲を見出すことに格別の困難性が存在するとは認められないし,また,本願明細書には,可塑剤の配合比の数値範囲の意義について,「可塑剤量が1重量%未満の場合および10重量%を超えて配合した場合には延伸加工が困難となる。」(【0031】)と説明されているだけであって,当該記載によれば,本願発明の1?10重量%という数値範囲に設定することによって,延伸加工性を容易にすることを超える格別顕著な効果や異質な効果が生じるわけでもない。
したがって,引用発明において,可塑剤を配合比を1?10重量%という数値範囲とすることは,前記(1)で述べた可塑剤を配合するという構成の変更に伴って,当業者が適宜決定すれば足りる設計事項である。

(3)可塑剤の材質について
引用例の【0037】に例示された可塑剤の材質のうち,最初に例示されている「ジメチルフタレート,ジブチルフタレート等のフタル酸エステル」は,本願発明の可塑剤の材質の選択肢のうちの一つである。
また,本願発明の可塑剤の材質の他の選択肢についても,前記周知例1(【0077】等参照。)や,前記周知例2([0093]等参照。)のほか,特開平11-38229号公報(【0029】等参照。当審が通知した拒絶理由において,後述する第2の技術常識を示すための周知例として例示した刊行物。以下「周知例3」という。)等に記載されているように,本願出願前に,可塑剤として周知の材質である。
したがって,引用発明において,可塑剤の材質として,これら周知の材質のうちのいずれかを選択することは,前記(1)で述べた可塑剤を配合するという構成の変更に伴って,当業者が適宜決定すれば足りる設計事項である。

(4)各成分の配合比について
前記(1)及び(2)で述べた構成の変更,例えば,炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合比をポリカーボネート樹脂を基準として18重量%ないし30重量%といった「大きな値」に設定し,可塑剤を1?10重量%という数値範囲内の配合比で配合するよう変更した引用発明におけるポリカーボネート樹脂の配合量は,100重量%から炭酸ストロンチウムの針状結晶及び可塑剤の配合比を減算した値となるのだから,40?83重量%という本願発明の数値範囲内の値となる。

(5)相違点1についての判断のまとめ
以上のとおりであるから,引用発明において,相違点1に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

2.相違点2についての判断
ポリマーに無機微粒子を配合するとガラス転移温度が上昇し,可塑剤を配合するとガラス転移温度が低下することは,例えば,当審が通知した拒絶理由において例示した「井上清博 外5名,“塩素化ポリエチレン/N,N’ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド系有機ハイブリッドの制振挙動”,繊維学会誌(報文),社団法人繊維学会,平成12年,Vol.56,No.9,p.39-44」に「ポリマーの添加剤として可塑剤がよく使われている.可塑剤はポリマーの融点やガラス転移点を低下させ,剛直なポリマーを軟らかくするものであり,その機構はポリマーの自由体積の増加によるものであると考えられている.これとは逆に,カーボンの粒子や炭酸カルシウムの粒子など無機の充填剤はポリマーの自由体積を減少させガラス転移温度を上昇させる作用がある.」(40頁左欄10?16行。https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/56/9/56_9_443/_pdfを参照。)と記載されているように,また,当審が通知した拒絶理由において例示した特開2003-73122号公報の【0032】?【0035】及び【0037】に,ガラス転移温度Tgが95℃のポリカーボネート樹脂に二酸化チタン微粒子を分散した複合材料組成物のガラス転移温度Tgが112℃となることが記載されているように,さらには,当審が通知した拒絶理由において例示した前記周知例3の【0034】に,「可塑剤を含有する組成物を混練するとガラス転移点Tgや溶融温度も低下する」と記載されていることから明らかなように,当業者における技術常識(以下「第2の技術常識」という。)である。

引用例の記載からは,引用発明のキャストフィルムにおけるガラス転移温度の数値を具体的に特定することはできないものの,当該第2の技術常識を踏まえると,ガラス転移温度を上昇させる無機微粒子である炭酸ストロンチウムの針状結晶のみを配合し,ガラス転移温度を低下させる可塑剤は配合していないのだから,引用発明のキャストフィルムにおけるガラス転移温度が,引用発明のポリマー成分であるポリカーボネート樹脂自体のガラス転移温度150℃より高いことは明らかである。

しかるに,前記1.で述べた構成の変更を行った引用発明においては,炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合比の増加によって,ガラス転移温度が上昇する効果が生じ,可塑剤の配合によって,ガラス転移温度が低下する効果が生じるのであって,両者の効果が相殺されることとなるから,最終的なガラス転移温度が,構成の変更を行っていない引用発明のガラス転移温度程度であって,ポリカーボネート樹脂自体のガラス転移温度150℃より高い蓋然性はきわめて高いと考えられる。

また,仮に,そうとまで断定できないとした場合でも,引用例の【0032】には,「また,合成高分子からなる位相差フィルムが,ある程度の耐環境性を有さなければならないため,合成高分子のガラス転移温度は100℃以上300℃以下が好ましく,110℃以上280℃以下がさらに好ましく,120℃以上260℃以下が最も好ましい。」と記載されていて(記載事項カ),位相差フィルムの耐環境性という観点から,位相差フィルムのガラス転移温度として,ある程度高い温度を確保すべきであることが示されているのだから,前記第2の技術常識を熟知する当業者は,前記構成の変更後の引用発明のガラス転移温度が,耐環境性という観点から問題のないものと考えられる変更前の引用発明のガラス転移温度程度を確保できるように,可塑剤の配合比を,前記(2)で述べた一軸延伸が容易となるような数値範囲の中でできるだけ小さな値に設定するのが自然であって,一軸延伸が容易となるような数値範囲内の値であるからといって,構成の変更後の引用発明のガラス転移温度がポリカーボネート樹脂自体のガラス転移温度150℃を下回るほどにまで,大量に可塑剤を配合しようとはしないはずである。

さらに,可塑剤のガラス転移温度が,これを配合するポリマーのガラス転移温度よりも低いことは明らかだから,ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に設定した前記構成の変更後のガラス転移温度は,当該構成の変更により配合することとなる可塑剤のガラス転移温度よりも高い温度である。

したがって,引用発明において,そのガラス転移温度を,可塑剤及びポリカーボネート樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に設定すること,すなわち,相違点2に関する本願発明の構成を採用することは,本願明細書に,光学フィルム用樹脂組成物のガラス転移温度を可塑剤(B)及びポリマー(A)よりも高い温度にすることの技術的意義が一切記載されていないことをも考慮すれば,当業者が容易に想到し得たことというほかない。

3.発明の効果について
本願明細書の【0047】に記載された「本発明の光学フィルム用樹脂組成物は,光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子を高濃度に配合し,成形加工性を改良したものであり,これを容易に加工することで得られる光学フィルムは液晶ディスプレイの補償フィルムや有機ELディスプレイなどの反射防止フィルムなどに有用である。」という本願発明の効果は,引用例の記載に基づいて,当業者が容易に予測できる範囲のものである。

4.請求人の主張について
請求人は,平成24年7月10日付け意見書において,引用発明において用いられているポリカーボネート樹脂に対する可塑剤の添加について,
「可塑剤の添加は,・・・(中略)・・・位相差の発現性を大きく損なうものである。
さらに,可塑剤の使用は位相差の安定性や透明性が悪くなる傾向にある。実際,通常のポリカードネート(審決注:「ポリカーボネート」の誤記)や,環状ポリオレフィンなどの位相差フィルムには可塑剤は用いられていない。これは前述の位相差の発現性や安定性の低下,可塑剤により樹脂が柔らかくなることによる延伸加工性の悪化などによる。一方,可塑剤はポリ塩化ビニルやセルロースでは,一般に使用されている。これはポリ塩化ビニルやセルロースの微結晶により可塑剤を添加しても加工性が維持できるためと考えられる。」
などと主張する。
可塑剤をあまりにも大量に添加すると,位相差の発現性や安定性が低下したり,延伸加工性が悪化したりすることは,請求人が主張するとおりであろうが,そのことは,単に,可塑剤を用いる必要がない場合には可塑剤を添加しないことが好ましく,また,可塑剤を用いる必要がある場合でも,その添加量をできるだけ少量にしたほうが好ましいということを意味するにすぎないのであって,ポリカーボネート樹脂に可塑剤を添加することが技術的にみてあり得ないということを意味するわけではない。
通常,ポリカーボネート樹脂の位相差フィルムに可塑剤は用いられていないという請求人の主張が,仮に事実であるとしても,それは,単に,通常のポリカーボネート樹脂が,成形や延伸等の扱いに支障が生じるほど粘性が高くはないため,可塑剤を用いる必要がないからと解されるのであって,前述したように,引用発明における炭酸ストロンチウムの針状結晶の配合比を「大きな値」に変更する場合には,キャストフィルムの粘性が高くなって一軸延伸加工に支障を生じる恐れがあるのだから,これに可塑剤を添加することには,強い動機付けが存在する。
なお,位相差フィルム等に用いるポリカーボネート樹脂であっても可塑剤を添加することができることは,例えば,特開2003-231141号公報(特に,【0001】,【0129】?【0140】,【0150】等を参照。)に,位相差フィルムの製造方法に関する発明の実施例として,ガラス転移温度Tgが約220℃のポリカーボネート系樹脂20質量部に,可塑剤であるトリフェニルフォスフェート0.4質量部(溶剤を除外した樹脂組成物における質量%は,約1.9質量%である。)を添加した樹脂組成物を,位相差フィルムの材質として用いる例が記載されており,また,特開平10-123320号公報(特に,【0001】,【0029】?【0030】等を参照。)に,位相差板及びその製造方法に関する発明の実施例として,ポリカーボネート樹脂100重量部に,可塑剤であるフタル酸ジエチル3重量部(樹脂組成物における重量%は,約2.9重量%である。)を添加した樹脂組成物を,位相差板の材質として用いる例が記載されていること等からも裏付けられる。
よって,引用発明に可塑剤を添加することは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,請求人は,前記意見書において,
「 本発明では,高濃度のナノ粒子による高分子鎖の拘束効果により,可塑剤を配合しても耐熱性が向上し,かつ延伸加工性が維持されているものと推測している。さらには得られた延伸フィルムの位相差の安定性も非常に良好となっている。
このような高濃度の針状または紡錘状ナノ粒子および可塑剤が配合された樹脂組成物のこのような効果はこれまで知られておらず,十分な進歩性を有しているものと考えられる。」
などと主張するが,請求人が主張する「耐熱性の向上」,「延伸加工性」,「位相差の安定性」という効果は,引用例のガラス転移温度や可塑剤についての記載(記載事項カの【0032】,記載事項クの【0037】等)及び前記各技術常識に基づいて,当業者が容易に予測できる程度のものである。
また,無機微粒子の形状については,「針状または紡錘状」なのか,あるいは「球状」なのかによって,確かに粘度上昇効果やガラス転移温度上昇効果の程度に差は生じるであろうが,形状に関わりなく,無機微粒子をポリマーに配合することによって粘度上昇効果やガラス転移温度上昇効果が生じること自体は,当業者の間でよく知られた物理現象なのであるから(第1及び第2の技術常識),無機微粒子の形状の違いによる前記各効果の程度の差をもって,当業者の予測の範囲を超えるとすることはできない。(配合する無機微粒子の形状の違いによって生じる樹脂組成物のガラス転移温度や粘性の違いは,当業者が各成分の配合比を調整して,所望の値に設定すればよいだけのことである。)
よって,当該請求人の主張は採用できない。

5.本願発明の進歩性についてのまとめ
前記1.?4.のとおりであって,引用発明において,相違点1及び2に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことであり,また,本願発明の効果も,当業者が容易に予測できる範囲のものである。
よって,本願発明は,進歩性を有していない。


第7 むすび
以上のとおりであって,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした,当審が通知した拒絶理由に誤りはない。
したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,当審が通知した拒絶理由によって,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-31 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-27 
出願番号 特願2007-8977(P2007-8977)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹村 真一郎  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 立澤 正樹
清水 康司
発明の名称 光学フィルム用樹脂組成物およびこれからなる光学フィルム  

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