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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1264846
審判番号 不服2011-24221  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2012-10-18 
事件の表示 特願2005-127607「定着方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-338807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成17年4月26日(優先権主張 平成16年4月26日)の出願であって、平成22年10月12日及び平成23年4月4日付けで手続補正がなされ、平成23年8月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年11月9日付けで拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年3月7日付けの審尋に対して、同年5月14日付けで回答書を提出している。

第2 平成23年11月9日付け手続補正の却下の決定

〔補正の却下の決定の結論〕
平成23年11月9日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成23年11月9日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、本件補正前の請求項1に、
「記録媒体上に形成された未定着トナー像を、定着手段により加熱加圧定着する定着方法において、前記記録媒体の搬送方向に直列に配列した少なくとも2台以上の定着器を通過することによって未定着トナー像の定着が行われるものであり、
該未定着トナー像を形成するトナーが離型剤を含有するトナーであり、
前記記録媒体が第一の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT1、第二の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT2、前記記録媒体の第一の定着器突出から第二の定着器突入までの間の記録媒体上温度の最小値をtとし、前記トナーのフローテスター軟化温度をTs、流出開始温度をTfbとした場合、下記式(1)及び式(2)を満足することを特徴とする定着方法。
T1>Tfb 式(1)
T2>t>Ts 式(2) 」とあったものを、

「記録媒体上に形成された未定着トナー像を、定着手段により加熱加圧定着する定着方法において、前記記録媒体の搬送方向に直列に配列した少なくとも2台以上の定着器を通過することによって未定着トナー像の定着が行われるものであり、
該未定着トナー像を形成するトナーが離型剤を含有するトナーであり、
前記記録媒体が第一の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT1、
第二の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT2、
前記記録媒体の第一の定着器突出から第二の定着器突入までの間の記録媒体上温度の最小値をtとし、
フローテスターを用いて、トナー1cm^(3)を試料とし、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm^(2)でダイの細孔から押し出すようにして測定される前記トナーのフローテスター軟化温度をTs、および、流出開始温度をTfbとしたとき、
下記式(1)乃至式(3)を満足することを特徴とする定着方法。
T1>Tfb 式(1)
T2>t>Ts 式(2)
Tfb>Ts 式(3)」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)上記(1)の本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「トナーのフローテスター軟化温度Ts」及び「流出開始温度Tfb」の測定について「フローテスターを用いて、トナー1cm^(3)を試料とし、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm^(2)でダイの細孔から押し出すようにして測定される」との限定を付加するとともに、両者の関係が「Tfb>Ts」であるとの限定を式(3)として付加し、「した場合」を「したとき」として表現を変えるものである。

2 本件補正の目的
上記1(2)の本件補正後の請求項1に係る本件補正は、全体として、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-24466号公報(以下「引用例」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記録材の両面に定着トナー像を形成する定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】用紙等の記録材の両面にトナー像を定着させる構成として、第1の構成としては、記録材の片面(表面)にトナー像を転写させた後、この未定着状態のトナー像を保持した記録材を定着装置に通して、先ず記録材の片面にトナー像を定着させ、次に、この記録材を反転させた上で、記録材の他方の面(裏面)にトナー像を転写させ、この未定着状態のトナー像を保持した記録材を定着装置に通して、記録材の他方の面にトナー像を定着させることにより記録材の両面に定着トナー像を得るようにしたもの、第2の構成としては、記録材の片面(表面)にトナー像を転写させた後、この未定着状態のトナー像を保持したままの状態で記録材の他方の面(裏面)にもトナー像を転写させ、両面に未定着状態のトナー像を保持した記録材を定着装置に通して、1回の定着工程で両面同時にトナー像定着を行えるようにしたものが知られている。
【0003】ここで、第1の構成の場合には、記録材が1枚ずつ独立した枚葉紙であれば表面定着後の用紙をスイッチバック機構等の反転装置によって表裏反転させた後、表面印刷に使われた印写部および定着部に用紙を再び送り込むことが可能であるが、記録材が長尺に連続した、いわゆる連続紙と呼ばれる形態の用紙である場合には、表面印刷に使われた印写部および定着部に用紙を再び送り込むことができないので、結果として表面定着用の定着装置と、裏面定着用の定着装置の2つが必要であることになり、装置コストが高くなってしまうという問題がある。これに対し、第2の構成の場合であれば1つの定着装置で足り、装置コストの低減化を図れる。
【0004】第2の構成としては、例えば図4に示す様な構成が採られている。図において両面に未定着状態のトナー像1を保持した用紙2は、紙面に対し非接触で設けられた予熱板(プレヒータ)12により加熱され、次にプレヒータ12の後段に設けられた一対の加熱ローラ13,14により挟持搬送されて、トナー像1は用紙2の各面に定着される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4に示した定着装置の構成において、用紙への熱供給量の確保の仕方としては、大型プレヒータを使用したり、プレヒータと用紙の距離を狭くするなどしてプレヒータの構成を改善することが考えられるが、大型プレヒータを用いることは高コスト化を招いてしまう。また、プレヒータと用紙の距離を狭くする場合には、搬送中の用紙のたるみ等に起因するばたつき等を考慮すると、あまり接近させることはできず、技術的に困難である。そこで、この種の定着装置の構成においては、加熱ローラの温度や加圧力を高めることにより目的とする用紙への熱供給量を確保するのが一般的であった。
【0006】ところが、近年では印刷装置の印刷速度の高速化に伴い、加熱ローラの温度や加圧力を高めることだけでは用紙への熱供給が追いつかず、これを無視して加熱ローラの温度や加圧力を高めた場合には、加熱ローラ表面の磨耗、劣化速度が上昇し、加熱ローラの寿命を著しく低下させてしまうという問題があった。
【0007】従って、本発明の目的は、加熱ローラの負担を軽減し、加熱ローラの長寿命化を図ることができるとともに、良好な高速両面定着を実現することが可能な定着装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、互いに圧接可能に支持された加熱ローラ対を有し、両面に未定着状態のトナー像を保持した長尺状の記録材を前記加熱ローラ対の圧接部で挟持搬送しながら前記トナー像を記録材に定着させる定着装置において、記録材搬送方向に沿って前後の関係をもって配置される二対の加熱ローラを設けるとともに、少なくとも搬送される記録材に対し最初に定着を行う第1の加熱ローラ対を芯金上にゴム層を設けてなる加熱ローラ対として設けることにより達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0010】(実施例1)図1に示す様に、加熱ローラ3と加熱ローラ4は圧接可能に設けられ第1の加熱ローラ対を構成している。また、第1の加熱ローラ対3,4に対し用紙搬送方向下流側には、圧接可能に設けられた加熱ローラ6と加熱ローラ7によって構成された第2の加熱ローラ対が設けられている。
【0011】第1の加熱ローラ対3,4ならびに第2の加熱ローラ対6,7は、芯金3a,4a,6a,7a上にシリコンゴム等の材料からなるゴム層3b,4b,6b,7bを設けてなる、いわゆるソフトローラとして構成されている。
【0012】また、第1の加熱ローラ対3,4における定着温度を、第2の加熱ローラ対6,7における定着温度よりも低い温度に設定している。
【0013】さらに、第1の加熱ローラ対3,4と第2の加熱ローラ対6,7との間には、記録材2に対し揺動自在に支持され、記録材2のたるみを吸収するバッファプレート5が設けられている。ここで記録材2のたるみは、ソフトローラ3,4およびソフトローラ6,7の熱膨張に起因する用紙搬送速度の差を吸収する働きも有する。
【0014】上記の構成において、両面に未定着状態のトナー像1を保持した連続紙2は、先ずソフトローラ3,4で定着され、次にソフトローラ6,7で定着されてトナー像1は用紙2の各面に定着される。
【0015】(実施例2)図2に本発明の第2実施例を示す。図2の構成において図1の構成と異なる点は、第2の加熱ローラ対としてハードローラ構成を採用している点にある。
【0016】加熱ローラ8と加熱ローラ9は芯金8a,9a上にシリコンゴム等の材料からなるゴム層8b,9bを設けてなるソフトローラとして構成されている。これに対し第2の加熱ローラ対を構成する加熱ローラ10と加熱ローラ11は、芯金10a,11a上にテフロン系材料からなる樹脂層10b,11bを設けてなるハードローラとして構成されている。
【0017】なお、他の構成については図1の構成の場合と同様である。上記の構成において、両面に未定着状態のトナー像1を保持した連続紙2は、先ずソフトローラ8,9で定着され、次にハードローラ10,11で定着されてトナー像1は用紙2の各面に定着される。
【0018】図3に加熱ローラの種類と加熱加圧定着後のトナー像の光沢度の関係を示す。ここで、目的や対象とする印刷物によっては光沢度が多い方が良好な印刷品質であるとする場合もあるが、本発明では光沢度が少ない方が良好な印刷品質であるものとしている。なお、図3においては、上述した実施例1および実施例2の構成に加え、比較例1および比較例2を追加している。ここで、比較例1では第1の加熱ローラ対をハードローラとして構成し、第2の加熱ローラ対をソフトローラとして構成している。また、比較例2では第1の加熱ローラ対および第2の加熱ローラ対をいずれもハードローラとして構成している。
【0019】図3から明らかなように本発明の実施例1の定着装置により加熱加圧定着されたトナー像の光沢度は非常に少なく、良好な印刷品質を確保することができた。また、実施例2の定着装置により加熱加圧定着されたトナー像の光沢度についても実施例1よりは多い傾向を示したが、比較例1や比較例2に比べ極めて少ない値を示し、実質上、実施例1と同等の印刷品質を確保することができた。
【0020】また、従来技術の定着装置ではプレヒータが非接触であったため、プレヒータから用紙への熱供給量を大きくするためにはソフトローラの温度や加圧力を高めることが必要であったが、本発明の定着装置によれば記録材搬送方向に沿って前後の関係をもって配置された二対の加熱ローラで用紙に加熱加圧作用を付与しながら挟持搬送するので、各加熱ローラ対の定着温度を従来構成に対し低温に設定されていながら同等ないしそれ以上の熱量を用紙へ供給可能となり、両面定着の高速化を図ることができる。
【0021】また、実施例2の構成の場合には、ソフトローラとハードローラとを組み合わせることにより、ハードローラよりも寿命が短いとされているソフトローラの交換数が実施例1の構成よりも少なくすることができるので、ソフトローラに費やされるコストの低減化を図れるという実用上の効果を有する。
【0022】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明によれば、加熱ローラの負担を軽減し、加熱ローラの長寿命化を図ることができるとともに、良好な高速両面定着を実現することが可能な定着装置を提供することができる。」

イ 上記アの記載から、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「互いに圧接可能に支持された加熱ローラ対を有した定着装置を用い、両面に未定着状態のトナー像を保持した長尺状の用紙を前記加熱ローラ対の圧接部で挟持搬送しながら前記トナー像を用紙に加熱加圧定着する定着方法において、
従来、両面に未定着状態のトナー像を保持した用紙を、紙面に対し非接触で設けられた予熱板(プレヒータ)により加熱し、次にプレヒータの後段に設けられた一対の加熱ローラにより挟持搬送して、両面に未定着状態のトナー像を保持した用紙を定着装置に通して、1回の定着工程で両面同時にトナー像定着を行う方法では、大型プレヒータを使用したり、プレヒータと用紙との距離を狭くするなどしてプレヒータの構成を改善して用紙への熱供給量を確保すると、大型プレヒータは高コスト化を招いてしまい、搬送中の用紙のたるみ等に起因するばたつき等を考慮すると、プレヒータと用紙との距離をあまり接近させることはできず技術的に困難であり、加熱ローラの温度や加圧力を高めることにより熱供給量を確保するにも、近年では印刷装置の印刷速度が高速化し、これに伴い加熱ローラの温度や加圧力を高めることだけでは用紙への熱供給が追いつかず、また、加熱ローラの温度や加圧力を高め過ぎると、加熱ローラ表面の磨耗、劣化速度が上昇し、加熱ローラの寿命を著しく低下させてしまうという問題があったので、
加熱ローラの負担を軽減し、加熱ローラの長寿命化を図ることができるとともに、良好な高速両面定着を実現することが可能な定着方法を提供することを目的として、
第1加熱ローラと第2加熱ローラを圧接可能に設けて構成した第1の加熱ローラ対を、搬送される用紙に対し最初に定着を行うように配設し、第1の加熱ローラ対に対し用紙搬送方向下流側に、圧接可能に設けられた第3加熱ローラと第4加熱ローラによって構成された第2の加熱ローラ対を設けて、用紙搬送方向に沿って前後に二対の加熱ローラを設け、
第1の加熱ローラ対における定着温度を、第2の加熱ローラ対における定着温度よりも低い温度に設定し、
両面に未定着状態のトナー像を保持した用紙を、先ず第1の加熱ローラ対で定着し、次に第2の加熱ローラ対で定着することにより、トナー像を用紙の各面に加熱加圧定着するようにして、
各加熱ローラ対の定着温度を従来構成に対し低温に設定しながら同等ないしそれ以上の熱量を用紙へ供給可能とし、両面定着の高速化を図りながら、加熱ローラの負担を軽減し、加熱ローラの長寿命化を図ることができるとともに、良好な高速両面定着を可能にした定着方法。」

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「用紙」、「定着装置」、「加熱加圧定着」、「用紙搬送方向」、「加熱ローラ対」、「二対の加熱ローラ」、「トナー」、「未定着状態のトナー像」及び「定着方法」は、それぞれ、本願補正発明の「記録媒体」、「定着手段」、「加熱加圧定着」、「記録媒体の搬送方向」、「定着器」、「『2台』の『定着器』」、「トナー」、「未定着トナー像」及び「定着方法」に相当する。

(2)引用発明の「定着方法」は、互いに圧接可能に支持された「定着器(加熱ローラ対)」を有した「定着手段(定着装置)」を用い、両面に「未定着トナー像(未定着状態のトナー像)」を保持した長尺状の「記録媒体(用紙)」を前記「定着器」の圧接部で挟持搬送しながら「未定着トナー像」を用紙に「加熱加圧定着」するものであるから、本願補正発明の「定着方法」と、「記録媒体上に形成された未定着トナー像を、定着手段により加熱加圧定着する」点で一致する。

(3)引用発明の「定着方法」は、「記録媒体の搬送方向(用紙搬送方向)」に沿って前後に「2台の定着器(二対の加熱ローラ)」を設け、両面に「未定着トナー像(未定着状態のトナー像)」を保持した「記録媒体(用紙)」を、先ず第1の「定着器(加熱ローラ対)」で定着し、次に第2の「定着器」で定着することにより、トナー像を「記録媒体」の各面に「加熱加圧定着」するものであるから、本願補正発明の「定着方法」と、「記録媒体の搬送方向に直列に配列した少なくとも2台以上の定着器を通過することによって未定着トナー像の定着が行われるものであ」る点で一致する。

(4)引用発明において、「記録媒体(用紙)」が第1の「定着器(加熱ローラ対)を通過する際の「記録媒体」上温度の最大値をT1、第2の「定着器」を通過する際の「記録媒体」上温度の最大値をT2、前記「記録媒体」の第1の「定着器」突出から第2の「定着器」突入までの間の「記録媒体」上温度の最小値をtとし、フローテスターを用いて、「トナー」1cm^(3)を試料とし、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm^(2)でダイの細孔から押し出すようにして測定される前記「トナー」のフローテスター軟化温度をTs、および、流出開始温度をTfbとしたとき、次のア及びイのことがいえ、かつ、フローテスター軟化温度をTs、および、流出開始温度をTfbとしたときTfb>Tsの関係となることは当業者にとって明らかなことである(原査定で引用された特開平10-293494号公報の図5参照。)から、
引用発明は、本願補正発明の「前記記録媒体が第一の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT1、第二の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT2、前記記録媒体の第一の定着器突出から第二の定着器突入までの間の記録媒体上温度の最小値をtとし、フローテスターを用いて、トナー1cm^(3)を試料とし、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm^(2)でダイの細孔から押し出すようにして測定される前記トナーのフローテスター軟化温度をTs、および、流出開始温度をTfbとしたとき、T1>Tfb 式(1)、T2>t>Ts 式(2)、及び、Tfb>Ts 式(3)を満足する」との事項を有している。
ア 引用発明の「定着方法」では、第1の「定着器」における定着温度を、第2の「定着器」における定着温度よりも低い温度に設定すること、本願明細書には「前記記録媒体上温度とは、記録媒体(坪量157(g/m^(2))コート紙)の表面(被加熱面)に高速応答性熱電対(SE80117(先端部線径50μm)、安立計器株式会社製、)を、記録媒体が最初に定着器に突入する端部より50mm下流の位置に貼付し、2以上の定着器を連続的に通過させ、記録した温度である。」(段落【0030】。)と記載されていることからみて、第1の「定着器」を通過する際の「記録媒体」上温度(記録媒体の被加熱面に貼付した高速応答性熱電対による測定温度)の最大値T1は、第2の「定着器」を通過する際の「記録媒体」上温度の最大値T2よりも低くなること、及び、「記録媒体」上温度は、第1の「定着器」に突出してT1まで上昇し、第1の「定着器」から脱出すると低下を始め、第2の「定着器」に突入するとT2まで上昇することが、当業者に自明である。
これらのことからみて、引用発明において、前記「記録媒体」の第1の「定着器」突出から第2の「定着器」突入までの間の「記録媒体」上温度の最小値tはT2より低くなるといえるから、引用発明の「定着方法」は本願補正発明の「T2>t」を満たす。
イ 引用発明の「定着方法」は、両面に「未定着トナー像(未定着状態のトナー像)を保持した「記録媒体」を、先ず第1の「定着器」で定着し、次に第2の「定着器」で定着することにより、トナー像を「記録媒体」の各面に「加熱加圧定着」するようにして、各「定着器」の定着温度を従来構成に対し低温に設定しながら同等ないしそれ以上の熱量を「記録媒体」へ供給可能とし、両面定着の高速化を図りながら、加熱ローラの負担を軽減し、加熱ローラの長寿命化を図ることができるとともに、良好な高速両面定着を可能にしたものであるところ、T1がTfb以下の場合は、両面に「未定着トナー像」を保持した「記録媒体」を、先ず第1の「定着器」で定着することは難しいことは当業者に自明であり(本願明細書の段落【0033】参照。)、tがTs以下になってしまうと、次に第2の「定着器」で定着することが難しいことも当業者に自明であり(本願明細書の段落【0035】参照。)、第1の「定着器」から脱出して低下を始めた「記録媒体」上温度がTs以下になってしまうほど、「記録媒体」の搬送速度が遅かったり、第1及び第2の「定着器」の間が開いていたりすると、良好な高速両面定着は不可能であることも当業者に自明である。
したがって、引用発明において、T1はTfbより高く、かつ、tはTsより高いといえるから、引用発明の「定着方法」は本願補正発明の「T1>Tfb」及び「t>Ts」を満たす。

(5)上記(1)ないし(4)からして、本願補正発明と引用発明とは、
「記録媒体上に形成された未定着トナー像を、定着手段により加熱加圧定着する定着方法において、前記記録媒体の搬送方向に直列に配列した少なくとも2台以上の定着器を通過することによって未定着トナー像の定着が行われるものであり、
該未定着トナー像を形成するトナーが、
前記記録媒体が第一の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT1、
第二の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT2、
前記記録媒体の第一の定着器突出から第二の定着器突入までの間の記録媒体上温度の最小値をtとし、
フローテスターを用いて、トナー1cm^(3)を試料とし、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm^(2)でダイの細孔から押し出すようにして測定される前記トナーのフローテスター軟化温度をTs、および、流出開始温度をTfbとしたとき、
下記式(1)乃至式(3)を満足することを特徴とする定着方法。
T1>Tfb 式(1)
T2>t>Ts 式(2)
Tfb>Ts 式(3)」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
前記トナーが、本願補正発明では「離型剤を含有する」のに対し、引用発明では、離型剤を含有するかどうかが明らかでない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)離型剤を含有させたトナーは、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術」という。例.上記特開平10-293494号公報(【請求項3】参照。)、特開2002-189310号公報(【請求項1】参照。))。

(2)上記(1)からみて、引用発明において、トナーを離型剤を含有させたトナーとなすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(3)仮に、上記4(4)において、引用発明が、本願補正発明の「前記記録媒体が第一の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT1、第二の定着器を通過する際の記録媒体上温度の最大値をT2、前記記録媒体の第一の定着器突出から第二の定着器突入までの間の記録媒体上温度の最小値をtとし、フローテスターを用いて、トナー1cm^(3)を試料とし、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm^(2)でダイの細孔から押し出すようにして測定される前記トナーのフローテスター軟化温度をTs、および、流出開始温度をTfbとしたとき、T1>Tfb 式(1)、T2>t>Ts 式(2)、及び、Tfb>Ts 式(3)を満足する」との事項を有していると言い切れなかったとしても、そのことによる引用発明と本願補正発明との相違点は、上記4(4)の理由と同様の理由で、当業者が適宜なし得た程度のことである。

(4)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小活
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成22年10月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月4日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕2」で述べたとおり、本願発明を特定するために必要な事項について限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-20 
結審通知日 2012-08-21 
審決日 2012-09-03 
出願番号 特願2005-127607(P2005-127607)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 537- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 定着方法  
代理人 丹羽 武司  
代理人 世良 和信  
代理人 川口 嘉之  
代理人 中村 剛  
代理人 坂井 浩一郎  
代理人 和久田 純一  
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