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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D |
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管理番号 | 1265045 |
審判番号 | 不服2009-19093 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-10-07 |
確定日 | 2012-10-25 |
事件の表示 | 特願2001-108103「洗浄剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月18日出願公開、特開2002-302697〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年4月6日の出願であって、平成21年4月16日付けの拒絶理由通知に対し、平成21年6月15日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成21年7月10日付けの拒絶査定に対し、平成21年10月7日付けで審判請求がなされ、平成24年3月12日付けの拒絶理由通知に対し、平成24年5月14日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?2に係る発明は、平成24年5月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「(A)黒砂糖エキスと、 (B)(B1)及び(B2) (B1)ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンから選ばれる不揮発性のシロキサン化合物、 (B2)カチオン化セルロース誘導体及びジメチルジアリルアンモニウムクロライド誘導体から選ばれるカチオン性ポリマー からなる群より選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする洗浄剤組成物。」 第3 審判合議体による拒絶の理由 平成24年3月12日付けの拒絶理由通知に示した拒絶の理由は、理由1として『この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物A?Eに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』との理由を含むものであって、 具体的には『植物抽出物や着色剤を配合してなる洗浄剤組成物に、カチオン性ポリマー(商品名「マーコート550」又は商品名「ポリマーJR400」として普通に流通しているもの。)若しくはシロキサン化合物(ジメチルポリシロキサン)を適切な量で配合して、泡質のクリーミィさ、洗浄時の感触、洗浄後の皮膚・毛髪の滑らかさ等のコンディショニング効果に優れ、しかも洗浄後の皮膚や毛髪への残留感等もなく、起泡性、洗浄性に優れ、同時に洗浄時の感触、洗浄後の滑らかさ、しなやかさに優れ、乾燥後のべたつきのないコンディショニング効果に優れたものにしてみることは、刊行物B?Dに記載されるように、当業者にとって周知慣用の常套手段になっていたものと認められるから、刊行物Aに記載された発明に、刊行物B?Dに記載された周知慣用の常套手段を組み合わせて、洗浄剤組成物の泡立ちや泡質を改良し、洗浄時及び乾燥後の感触を良好にするという作用効果を得ることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。』という旨の指摘をしたものである。 第4 当審の判断 1.引用刊行物及びその記載事項 (1)刊行物A 平成24年3月12日付けの拒絶理由通知において「刊行物A」として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開平7-277942号公報」には、次の記載がある。 摘記A1:段落0014及び0026 「また、この発明においては前記コガネバナ(Scutellaria baicalensis GEORGI)の粉砕物及び/又はその抽出物とともに粗黒糖から抽出された色素成分も必須成分として使用される。ここで、色素成分とは、ショ糖の未精製品(黒砂糖)から得られる黒色色素成分(例えばコクトオリゴ(商品名、(株)大阪薬品研究所製)のことを指す。… (2)粗黒糖から抽出した色素成分の調製…サンプル(F)沖縄産黒砂糖5kgを水25リットルに溶解し、…甘みの全くない褐色の粉末色素成分15gを得た。」 摘記A2:段落0028 「(実施例4) 薬用ボディシャンプー 重量% コガネバナ粉砕物 0.06 〔サンプル(C)にて得られたバイカレインと オーゴニン7-O-グルクロニドとの1:1混合物〕 粗糖色素成分〔サンプル(F)〕 0.05 ラウリル硫酸ナトリウム 10.0 ラウリルスルホコハク酸ナトリウム 20.0 ラウリルジエタノールアミド 4.0 加水分解コラーゲン 1.0 ジステアリン酸エチレングリコール 1.0 エデト酸四ナトリウム四水塩 0.1 アラントイン 0.01 塩化リゾチーム 0.01 香 料 適 量 精製水 残 部 100.0 」 (2)刊行物B 平成24年3月12日付けの拒絶理由通知において「刊行物B」として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開平9-40996号公報」には、次の記載がある。 摘記B1:段落0002?0003 「近年、シャンプーの性能は単なる洗浄性のみではなく、毛髪の損傷がないこと、すすぎ時の指通りの良いことや仕上がった髪の感触の良いこと等のコンディショニング効果が非常に重要なポイントとなっている。このため、コンディショニング剤としてカチオン化セルロース等のカチオンポリマーを含有した組成物が広く使用されている。これらのカチオンポリマーは、界面活性剤と複合体を形成し、すすぎ時にこの複合体が毛髪上に沈着して高いコンディショニング効果を発揮するものである。しかしながら、それらの効果が十分に発揮される量を添加した場合には乾燥する過程で不快なべとつきを生じ、乾燥するにつれてカチオンポリマーのコンプレックスが固化し、ごわつき等が生じるといった問題がある。… 従って、本発明の目的は、起泡性、洗浄性に優れ、同時に洗浄時の感触、洗浄後の滑らかさ、しなやかさに優れ、乾燥後のべたつきのないコンディショニング効果に優れた洗浄剤組成物を提供することにある。」 摘記B2:段落0039及び0055 「これらの成分(A)は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。また本発明の洗浄剤組成物中への成分(A)の配合量は特に制限されるものではないが、0.01?5重量%(以下、特に断わらない限り「%」で示す。)、特に0.05?2.0%が好ましい。この範囲内であると、泡質のクリーミィさ、洗浄時の感触、洗浄後の皮膚・毛髪の滑らかさ等のコンディショニング効果に優れ、しかも洗浄後の皮膚や毛髪への残留感等もなく、感触上好ましい。… また、その他洗浄剤組成物中に通常使用される成分、例えば…動植物抽出物又はその誘導体;…色素、…などを、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合することができる。」 摘記B3:段落0058及び0068 「実施例1、比較例1 表1?表8に示す組成の洗浄剤組成物(pH7)を調整し、各々について起泡量、泡質、毛髪の感触について評価を行った。… 【表4】 成分 本発明品…16 … ポリオキシエチレン(4.5)アルキル(C12/C14=75 1 /25)エーテル酢酸マグネシウム塩 … ポリオキシエチレン(2)ラウリルアミドエーテル酢酸マグネシ 8 ウム塩 N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-(2-ヒドロ 1 キシエチル)エチレンジアミントリエタノールアミン塩 … カチオンポリマー*2 0.3 … 硫酸マグネシウム 0.3 … イオン交換水 残量 評価 起泡量 ◎ 泡質 ◎ シャンプー泡立て時の感触 ◎ すすぎ時の感触 ◎ 毛髪乾燥後の感触 ◎ … 2)ジメチルジアリルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとの共重合物(マーコート550,メルク社製)」 (3)刊行物C 平成24年3月12日付けの拒絶理由通知において「刊行物C」として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開平7-215828号公報」には、次の記載がある。 摘記C1:請求項1 「(A)シリカ粒子又は溶剤不溶性シリコーン樹脂、(B)水溶性シリコーン誘導体、及び(C)ジメチルポリシロキサンの混合物を界面活性剤水溶液中に分散せしめたことを特徴とする洗浄剤組成物。」 摘記C2:段落0003及び0007?0008 「毛髪化粧料は、連続使用した場合に毛髪に高粘度シリコーンが付着、蓄積し、べたつき感や思い油性感が生じてしまい、しかも髪のまとまりも悪化するという問題がある。… シリコーン及びシリカ粒子…を界面活性剤中に配合した場合は、それらが有する消泡作用のため(…)、洗浄剤として満足できるような泡立ちが得られないという問題がある。… 本発明の目的は、上記した種々の問題を解決し、界面活性剤中にシリコーン成分が安定に分散され、泡立ちがよく、乾燥後のべたつき感がなく、使用感及びコンディショニング効果に優れた洗浄剤組成物を提供することにある。」 摘記C3:段落0041 「かくして得られる本発明洗浄剤組成物は、ヘアシャンプー、ボディシャンプー等に使用するのが好ましい。」 摘記C4:段落0048 「実施例2…下記組成の洗浄剤組成物を製造した。… (成分) (重量%)… ジメチルポリシロキサン(粘度100,000cs) 2.0 カチオン化セルロース(ポリマーJR400) 0.4 保存料、着色剤、香料 充分量 」 (4)刊行物D 平成24年3月12日付けの拒絶理由通知において「刊行物D」として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開平6-80559号公報」には、次の記載がある。 摘記D1:請求項1 「水不溶性高分子粉体と水不溶性不揮発性シリコーンとの混合物を界面活性剤水溶液中に分散せしめた洗浄剤組成物。」 摘記D2:段落0005及び0080 「毛髪化粧料は連用により毛髪に高粘度シリコーンが蓄積し、べたつき感や重い油性感が生じてしまい、しかも髪のまとまりが悪化するという欠点があった。… かくして得られる本発明洗浄剤組成物は、ヘアシャンプー、ホディシャンプー等に使用するのが好ましい。」 摘記D3:段落0122及び0125 「(本発明品15)… (3)ジメチルポリシロキサン(10,000cs) 2.0% (4)メチルフェニルポリシロキサン(100cs) 0.5% (5)ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウムクロライド/アクリル アミド共重合体(…マーコート550) 0.5% (6)保存料、着色剤、香料 充分量 … 本発明の洗浄剤組成物はシリコーンを含みながらも長期間安定で、しかも、べたつきがなくコンディショニング効果に優れたものである。」 (5)引用文献8 平成21年4月16日付けの拒絶理由通知において「引用文献8」として引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開平10-121090号公報」には、次の記載がある。 摘記8a:段落0029及び0031 「本発明の洗浄剤組成物の(D)成分であるカチオン化ポリマーとしては、…塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、カチオン化セルロースが好ましい。… これら(D)成分の配合量は洗浄剤組成物中の0.01?5.0重量%が適当であり、好ましくは0.05?3.0重量%である。0.01重量未満では泡の持続性が悪く、5.0重量%を超えるとすすぎ性が劣る。」 摘記8b:段落0049 「実施例51 [ボディシャンプー] 重量% (1)ラウリルリンゴ酸アミドトリエタノールアミン 10.0 (2)ミリスチルリンゴ酸アミドトリエタノールアミン 10.0 (3)カヤクリルレジン 0.1 (4)プロピレングリコール 10.0 (5)ソルビトール 3.0 (6)エチレンジアミンテトラアセテート 0.15 (7)香料 0.2 (8)精製水 バランス 上記配合組成に従い、加熱水に上記(1)?(6)成分を溶解し、冷却後、上記(7)成分を添加し、ボディシャンプー組成物を調製した。得られたボディシャンプー組成物で身体を洗浄したところ、泡のクリーミィ性、及び泡の持ちに優れ、かつすすぎ時から乾燥時までさっぱりとして肌の滑りが良く、使用感に優れていた。」 2.刊行物Aに記載された発明 摘記A1の「粗黒糖から抽出した色素成分の調製…サンプル(F)」との記載、及び摘記A2の「(実施例4)薬用ボディシャンプー…粗糖色素成分〔サンプル(F)〕0.05…加水分解コラーゲン1.0」との記載からみて、刊行物Aには、 『(A)粗黒糖から抽出した粗糖色素成分と、(B)加水分解コラーゲンとを含有する薬用ボディーシャンプー。』という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「(A)粗黒糖から抽出した粗糖色素成分」は、摘記A1の「色素成分とは、ショ糖の未精製品(黒砂糖)から得られる黒色色素成分(例えばコクトオリゴ(商品名、(株)大阪薬品研究所製)のことを指す。」との記載、及び本願明細書の段落0006の「望ましいエキスとして市販されているものとしては大阪薬品研究所社製の「コクトオリゴ」等がある。」との記載からみて、本願発明の「(A)黒砂糖エキス」に相当し、 引用発明の「薬用ボディーシャンプー」は、本願明細書の段落0019の「本発明の洗浄剤組成物は、ボディシャンプー、…ヘアシャンプー等の身体用として好ましく適用することができ」との記載からみて、本願発明の「洗浄剤組成物」に相当するから、 両者は、『(A)黒砂糖エキスを含有する洗浄剤組成物。』というものである点において一致し、 成分(B)が、本願発明においては「(B1)及び(B2) (B1)ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンから選ばれる不揮発性のシロキサン化合物、(B2)カチオン化セルロース誘導体及びジメチルジアリルアンモニウムクロライド誘導体から選ばれるカチオン性ポリマー からなる群より選ばれる1種又は2種以上」であるのに対して、引用発明においては「加水分解コラーゲン」という「ペプチド誘導体」である点〔「加水分解コラーゲン」が成分(B)に含まれることは本願明細書の段落0012?0013の「本発明で使用される成分(B)のペプチド誘導体としては…蛋白質加水分解物等が挙げられ、…タンパク質としては、例えば、コラーゲン」との記載から明らかである。〕、においてのみ相違する。 4.判断 上記相違点について検討する。 摘記B1の「乾燥するにつれてカチオンポリマーのコンプレックスが固化し、ごわつき等が生じるといった問題がある。…従って、本発明の目的は、起泡性、洗浄性に優れ、同時に洗浄時の感触、洗浄後の滑らかさ、しなやかさに優れ、乾燥後のべたつきのないコンディショニング効果に優れた洗浄剤組成物を提供することにある。」との記載、摘記B2の「洗浄剤組成物中への成分(A)の配合量は…特に0.05?2.0%が好ましい。この範囲内であると、泡質のクリーミィさ、洗浄時の感触、洗浄後の皮膚・毛髪の滑らかさ等のコンディショニング効果に優れ、しかも洗浄後の皮膚や毛髪への残留感等もなく、感触上好ましい。…また、その他洗浄剤組成物中に…動植物抽出物…色素…などを…配合することができる。」との記載、及び摘記B3の『本発明品16』の「マーコート550」との記載を参酌するに、 刊行物Bには、動植物抽出物や色素を配合した洗浄剤組成物に「マーコート550」などのカチオンポリマーを0.05?2.0重量%の範囲内で配合することにより「泡質のクリーミィさ、洗浄時の感触、洗浄後の皮膚・毛髪の滑らかさ等のコンディショニング効果に優れ、しかも洗浄後の皮膚や毛髪への残留感等もなく、感触上好ましい」という効果が得られ、「乾燥するにつれてカチオンポリマーのコンプレックスが固化し、ごわつき等が生じるといった問題」を解決し、「起泡性、洗浄性に優れ、同時に洗浄時の感触、洗浄後の滑らかさ、しなやかさに優れ、乾燥後のべたつきのないコンディショニング効果に優れた洗浄剤組成物を提供すること」が可能になることが記載されているものと認められる。 また、摘記C4の「実施例2…下記組成の洗浄剤組成物を製造した。…ジメチルポリシロキサン(粘度100,000cs)…カチオン化セルロース(ポリマーJR400)」との記載、摘記C3の「本発明洗浄剤組成物は…ボディシャンプー等に使用する」との記載、及び摘記C2の「泡立ちがよく、乾燥後のべたつき感がなく、使用感及びコンディショニング効果に優れた洗浄剤組成物を提供する」との記載を参酌するに、 刊行物Cには、ボディシャンプー等の洗浄剤組成物において、ジメチルポリシロキサン(粘度100,000cs)やカチオン化セルロース(ポリマーJR400)を配合することによって、泡立ちがよくなる等の効果の改善が得られることが記載されているものと認められる。 そして、摘記D3の「(本発明品15)…ジメチルポリシロキサン(10,000cs)…ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体(…マーコート550)…本発明の洗浄剤組成物はシリコーンを含みながらも長期間安定で、しかも、べたつきがなくコンディショニング効果に優れたものである。」との記載、及び摘記D2の「連用により…高粘度シリコーンが蓄積し、べたつき感や重い油性感が生じてしま…う欠点があった。…本発明洗浄剤組成物は…ホディシャンプー等に使用するのが好ましい。」との記載を参酌するに、 刊行物Dには、ボディシャンプー等の洗浄剤組成物において、ジメチルポリシロキサン(10,000cs)や、ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体(マーコート550)を配合することによって、連用によるべたつき感の解消などの効果が得られることが記載されているものと認められる。 加えて、摘記8aの「本発明の洗浄剤組成物の(D)成分であるカチオン化ポリマーとしては、…塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、カチオン化セルロースが好ましい。…これら(D)成分の配合量は…0.01重量未満では泡の持続性が悪く、5.0重量%を超えるとすすぎ性が劣る。」との記載、及び摘記8bの「実施例51 [ボディシャンプー]…(3)カヤクリルレジン 0.1…得られたボディシャンプー組成物で身体を洗浄したところ、泡のクリーミィ性、及び泡の持ちに優れ、かつすすぎ時から乾燥時までさっぱりとして肌の滑りが良く、使用感に優れていた。」との記載を参酌するに、 引用文献8には、ボディシャンプー等の洗浄剤組成物において、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(カヤクリルレジン)や、カチオン化セルロースを配合することによって、泡のクリーミィ性などの効果の改善が得られることが記載されているものと認められる。 してみると、ボディシャンプー等の洗浄剤組成物に、ジメチルポリシロキサン等の不揮発性のシロキサン化合物、若しくは、カチオン化セルロース誘導体(例えば商品名「ポリマーJR400」として普通に流通している「カチオン化セルロース」など。)又はジメチルジアリルアンモニウムクロライド誘導体(例えば商品名「マーコート550」として普通に流通している「塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体」など。)を適切な量で配合して、泡立ち等の効果に優れたものにしてみることは、刊行物B?D(及び引用文献8)に記載されるように、本願出願時の技術水準において当業者にとって「通常の知識の範囲内」の技術常識になっていたものと認められる。 したがって、引用発明の「薬用ボディシャンプー」の組成に、刊行物B?D(及び引用文献8)に記載された「ボディシャンプー」等の洗浄剤組成物に使用される「ジメチルポリシロキサン」や「ジメチルジアリルアンモニウムクロライド誘導体」等の周知慣用の成分を更に配合して、洗浄剤組成物の泡立ちを良好にする等の作用効果を得るように設計変更することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。 次に、本願発明の作用効果について検討するに、引用発明は、成分(B)として「加水分解コラーゲン」というペプチド誘導体を配合しているものであるから、本願明細書の段落0044に記載されている「泡立ち、泡質が良好で、すすぎ時のつっぱり感やきしみ感がなく、長期間の連用によってもべたつき感、ごわつき感が生じない洗浄剤組成物を提供することができる。」という効果をそもそも発揮し得ているものと認められるから、本願発明に格別予想外の新規な効果があるとは認められない。 そして、刊行物B?D(及び引用文献8)に記載されるように、洗浄剤組成物に「ジメチルポリシロキサン」や「ジメチルジアリルアンモニウムクロライド誘導体」等の周知慣用の成分を適切な量で更に配合すれば「泡立ち」などの使用感が良好になる等の効果が得られることも、本願出願時の技術水準において普通に知られていたから、本願発明に格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物A?Dに記載された発明に基づいて、当業者(その発明の属する技術の分野における「通常の知識」を有する者)が容易に発明をすることができたものである。 5.請求人の主張について 平成24年5月14日付けの意見書においては、『(3-3)前述のように、刊行物Aに記載された発明は、皮膚外用剤についての発明であり、皮膚に対する安全性が極めて高く、アトピー性皮膚炎やじんましん、ニキビ、吹き出物等の皮膚疾患の症状緩和や増悪の抑制、美肌を目的とするものです。一方、刊行物B?Dに記載された発明は、洗浄剤組成物についての発明であり、洗浄剤としての、起泡性、洗浄性に優れ、同時に洗浄時の感触、洗浄後の滑らかさ、しなやかさに優れ、乾燥後のべたつきのないコンディショニング効果に優れるといった効果を目的とするものです。従って、刊行物Aの発明と、刊行物B?Dの発明は、その目的が共通するものではなく、刊行物Aの発明において、刊行物B?Dの発明を参酌する動機付けはありません。拒絶理由通知において、「従来の洗浄剤組成物の泡立ちや泡質を改良し、洗浄時及び乾燥後の感触を良好にするという課題が当該技術分野において普遍的に存在するので、刊行物Aの薬用ボディシャンプーに刊行物B?Dに記載された周知技術を組み合わせることに阻害要因は認められない」と指摘されています。しかしながら、上述のように、刊行物Aに刊行物B?Dを組み合わせる積極的な動機付けはないので、本願発明が容易に想到し得るとはいえないものであります。』との主張がなされている。 しかしながら、引用発明(刊行物Aに記載された「実施例4」の「薬用ボディシャンプー」の具体例)は「ボディシャンプー」という洗浄剤組成物に関するものであるから、刊行物C及びDなどに記載された「ボディシャンプー」という洗浄剤組成物における周知の『自明な課題』ないし『一般的な課題』は、当業者において当然予測できる程度の事項であると認められる。 してみると、引用発明(刊行物Aに記載された発明)に刊行物C及びDなどに記載された周知技術を組み合わせることは、当業者において当然予測できる程度の動機付けがあるものと認められる。 したがって、上記意見書の請求人の主張は採用できない。 6.むすび 以上総括するに、本願発明は、刊行物A?Dに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-14 |
結審通知日 | 2012-08-21 |
審決日 | 2012-09-11 |
出願番号 | 特願2001-108103(P2001-108103) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C11D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂井 哲也 |
特許庁審判長 |
井上 雅博 |
特許庁審判官 |
木村 敏康 小出 直也 |
発明の名称 | 洗浄剤組成物 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 高野 登志雄 |