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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1265082
審判番号 不服2011-19280  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-07 
確定日 2012-10-25 
事件の表示 特願2008-322275「自動二輪車」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 2日出願公開、特開2009- 68499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成11年6月17日に出願した特願平11-170746号の一部を平成20年12月18日に新たな特許出願としたものであって、平成20年12月18日付けで上申書が通知され、平成22年11月2日付けで拒絶理由が通知され、平成23年1月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月31日付けで拒絶査定がなされ、同年9月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、さらに、平成24年4月19日付けで当審において書面による審尋がなされ、それに対して、同年6月19日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成23年9月7日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年9月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成23年9月7日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年1月10日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
車幅方向に延びるクランク軸と、
軸受を介して前記クランク軸を回転自在に支持するクランクケースと、
前記クランク軸に接続された駆動プーリとこの駆動プーリにVベルトを介して接続された従動プーリとを有するVベルト式自動変速機と、
前記従動プーリを支持する従動プーリ軸と、
前記従動プーリ軸と同一軸線上であって前記従動プーリより車幅方向の中央側の位置に配設され、出力軸を有する湿式の遠心クラッチと、
回転軸を有し、前記遠心クラッチの出力軸に接続された歯車式減速機構と、
前記歯車式減速機構を介して前記遠心クラッチに接続されたエンジン出力軸と、を備え、
前記遠心クラッチの出力軸、前記歯車式減速機構の回転軸、および前記エンジン出力軸が、軸線方向から見て互いに離間するように配設され、
前記歯車式減速機構の回転軸および前記エンジン出力軸が、軸線方向から見て前記遠心クラッチと重なる位置にあるエンジンを備えた自動二輪車。
【請求項2】
前記クランクケースの側方に配置されたフートレストをさらに備えた、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
側面視において、前記エンジン出力軸の後端は前記遠心クラッチの出力軸の前端よりも後方に位置し、
前記エンジン出力軸は、前記クランクケースから突出し、チェーンを介して後輪に接続される後輪駆動用スプロケットが取り付けられた端部を有している、請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
側面視において、前記エンジン出力軸の中心は前記遠心クラッチの出力軸の中心よりも前方に位置している、請求項1?3のいずれか一つに記載の自動二輪車。」

B 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
車幅方向に延びるクランク軸と、
軸受を介して前記クランク軸を回転自在に支持するクランクケースと、
前記クランク軸に接続された駆動プーリとこの駆動プーリにVベルトを介して接続された従動プーリとを有するVベルト式自動変速機と、
前記従動プーリを支持する従動プーリ軸と、
前記従動プーリ軸と同一軸線上であって前記従動プーリより車幅方向の中央側の位置に配設され、出力軸を有する湿式の遠心クラッチと、
回転軸を有し、前記遠心クラッチの出力軸に接続された歯車式減速機構と、
前記歯車式減速機構を介して前記遠心クラッチに接続されたエンジン出力軸と、を備え、
前記遠心クラッチの出力軸、前記歯車式減速機構の回転軸、および前記エンジン出力軸が、軸線方向から見て互いに離間するように配設され、
前記歯車式減速機構の回転軸および前記エンジン出力軸が、軸線方向から見て前記遠心クラッチと重なる位置にある4サイクルエンジンを備えた自動二輪車。
【請求項2】
前記クランクケースの側方に配置されたフートレストをさらに備えた、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
側面視において、前記エンジン出力軸の後端は前記遠心クラッチの出力軸の前端よりも後方に位置し、
前記エンジン出力軸は、前記クランクケースから突出し、チェーンを介して後輪に接続される後輪駆動用スプロケットが取り付けられた端部を有している、請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
側面視において、前記エンジン出力軸の中心は前記遠心クラッチの出力軸の中心よりも前方に位置している、請求項1?3のいずれか一つに記載の自動二輪車。」(アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、「エンジン」を「4サイクルエンジン」と限定するものであるから、請求項1に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開平3-176289号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、パワーユニットの伝動ケース内の空間を有効に活用したコンパクトかつ構造が簡単な自動二輪車の動力伝達装置を提供することを目的とする。」(公報第2ページ左下欄第7ないし10行)

イ.「第2図および第3図に示すように、パワーユニットPのエンジンEは2サイクルの背面吸気ケースリードバルブ式エンジンであって、そのシリンダ7を前上方に斜めに傾斜させた状態で伝動ケースTの前部に装着されている。」(公報第4ページ左上欄第11ないし15行)

ウ.「エンジンEのシリンダ7内に摺動自在に嵌合するピストン13にコンロッドI4を介して連結されるクランク軸15は、一対のボールベアリング16,16を介して車体の左右方向に向けて伝動ケースTに支持されている。」(公報第4ページ右上欄第7ないし12行)

エ.「一方、クランクケース10から伝動ケースT内に左方向に突出するクランク軸15にはスプライン15aが形成されており、このスプライン15aの右端にはベルト式無段変速機Bのドライブプーリ25の固定側プーリ半体26がクランク軸15に嵌合して固着されている。また、クランク軸15の左端にはナツト27の締付力によってランププレート28が該クランク軸15に対して相対回転不能に固着され、その先端に設けたスライドピース28aがクランク軸15に形成したスプライン15aに対して相対回転可能かつ軸方向摺動自在に支持されたドライブプーリ25の可動側プーリ半体29の軸方向に形成した案内片29aに摺動自在に係合している。これにより、前記ランププレート28は可動側プーリ半体29の軸方向の摺動を許容しながら該可動側プーリ半体29と一体で回転する。可動側プーリ半体29とランププレート28間に形成される半径方向外側に向けてテーパする空間には遠心ウェイト30が収容されており、クランク軸15の回転速度が増加して遠心ウエイト30に作用する遠心力が増加すると、前記テーパ状の空間を半径方向外側に移動する遠心ウエイト30に押圧された可動側プーリ半体29が右側に移動して固定側プーリ半体26との間隔が接近し、両プーリ半体26,29間に挟持した断面V字状のベルト31を半径方向外側に移動させるように構成されている。」(公報第4ページ左下欄第5行ないし右下欄第14行)

オ.「エンジンEの後部において、前述のベルト式無段変速機Bと後述の歯車減速機間に挟まれて形成される空間には自動遠心クラッチ42が配設される。すなわち、減速機入力軸33の中間部には、前記クラッチインナ43の外側に位置するクラッチアウタ49がスプライン嵌合してナツト50で固着されている。第4図から明らかなように、クラッチインナ43の側壁にピン51によって枢支され、スプリング52で半径方向内側に付勢された3個のクラッチウエイト53には、クラッチアウタ49のフランジ49a内周面に対向する摩擦部材53aが装着されて発進用クラッチ54が構成されている。一方、第5図から明らかなうに(審決注:「明らかなように」の誤記であると認める。)、クラッチアウタ49の側壁にピン55によって枢支され、スプリング56で半径方向内側に付勢された2個のクラッチウエイト57には、クラッチインナ43のフランジ43a内周面に対向する摩擦部材57aが装着されてエンジンブレーキ用クラッチ58が構成されている。したがって、第3図から明らかなように、減速機入力軸33のドリブンプーリ39側に発進用クラッチ54が、その反対側にエンジンブレーキ用クラッチ58が隣接して配設される。
歯車減速機59の減速機入力軸33に一体に形成した入力ギヤ60は、伝動ケースTの前記減速機入力軸33の後下方に軸支した中間軸61にスプライン嵌合する第1中間ギヤ62に噛合し、さらにこの中間軸61に一体に形成した第2中間ギヤ63は伝動ケースTの後部上方に一対のボールベアリング64で軸支した減速機出力軸65に圧入した出力ギヤ66に噛合している。伝動ケースTから外部に突出する減速機出力軸65の端部には駆動スプロケット67が固着されており、この駆動スプロケット67は前記チェン6を介して後輪Wrの従動スプロケット5に接続している。第2図から明らかなように、前記中間軸61は減速機入力軸33の後下方に配設されるとともに、減速機出力軸65は前記中間軸61の後方であって減速機入力軸33よりも更に上方に配設されており、これにより歯車減速機59の車体前後方向の長さの短縮が図られている。」(公報第6ページ左上欄第6行ないし左下欄第12行)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしオ.及び図面から、次のことが分かる。
カ.上記(1)イ.ないしエ.並びに第1図及び第6図から、2サイクルエンジンを備えた自動二輪車は、車幅方向に延びるクランク軸15を有することが分かり、また、クランクケース10はボールベアリング16を介して前記クランク軸15を回転自在に支持することが分かる。

キ.上記(1)エ.及びオ.第1図ないし第3図から、ベルト式無段変速機は、クランク軸15に接続されたドライブプーリ25とこのドライブプーリ25に断面V字状のベルト31を介して接続されたドリブンプーリ39とを有することが分かる。

ク.上記(1)エ.及びオ.第1図ないし第3図から、減速機入力軸33を有する自動遠心クラッチ42は、ドリブンプーリ39を支持するインナスリーブ37と同一軸線上であって、ドリブンプーリ39より車幅方向の中央側の位置に配設されることが分かる。

ケ.上記(1)エ.及びオ.第1図ないし第3図から、歯車減速機59は中間軸61を有し、自動遠心クラッチ42の減速機入力軸33に接続されることが分かり、減速機出力軸65は、歯車減速機59を介して自動遠心クラッチ42に接続されることが分かる。

コ.上記(1)エ.及びオ.第1図ないし第3図から、自動遠心クラッチ42の減速機入力軸33、歯車減速機59の中間軸61、および減速機出力軸65は、軸線方向から見て互いに離間するように配設されることが分かり、また、歯車減速機59の中間軸61が、軸線方向から見て自動遠心クラッチ42と重なる位置にあることが分かる。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「車幅方向に延びるクランク軸15と、
ボールベアリング16を介して前記クランク軸15を回転自在に支持するクランクケース10と、
前記クランク軸15に接続されたドライブプーリ25とこのドライブプーリ25に断面V字状のベルト31を介して接続されたドリブンプーリ39とを有するベルト式無段変速機と、
前記ドリブンプーリ39を支持するインナスリーブ37と、
前記インナスリーブ37と同一軸線上であって前記ドリブンプーリ39より車幅方向の中央側の位置に配設され、減速機入力軸33を有する自動遠心クラッチ42と、
中間軸61を有し、前記自動遠心クラッチ42の減速機入力軸33に接続された歯車減速機59と、
前記歯車減速機59を介して前記自動遠心クラッチ42に接続された減速機出力軸65と、を備え、
前記自動遠心クラッチ42の減速機入力軸33、前記歯車減速機59の中間軸61、および前記減速機出力軸65が、軸線方向から見て互いに離間するように配設され、
前記歯車減速機59の中間軸61が、軸線方向から見て前記自動遠心クラッチ42と重なる位置にある2サイクルエンジンを備えた自動二輪車。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3-2.本件補正発明と引用文献記載の発明との対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「クランク軸15」、「ボールベアリング16」、「クランクケース10」、「ドライブプーリ25」、「V字状のベルト31」、「ドリブンプーリ39」、「ベルト式無段変速機」、「インナスリーブ37」、「減速機入力軸33」、「中間軸61」、「歯車減速機59」及び「減速機出力軸65」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「クランク軸」、「軸受」、「クランクケース」、「駆動プーリ」、「Vベルト」、「従動プーリ」、「Vベルト式自動変速機」、「従動プーリ軸」、「出力軸」、「回転軸」、「歯車式減速機構」及び「エンジン出力軸」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「自動遠心クラッチ42」は、「遠心クラッチ」という限りにおいて、本件補正発明における「湿式の遠心クラッチ」に相当し、また、引用文献記載の発明における「2サイクルエンジン」は、「エンジン」という限りにおいて、本件補正発明における「4サイクルエンジン」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、
「車幅方向に延びるクランク軸と、
軸受を介して前記クランク軸を回転自在に支持するクランクケースと、
前記クランク軸に接続された駆動プーリとこの駆動プーリにVベルトを介して接続された従動プーリとを有するVベルト式自動変速機と、
前記従動プーリを支持する従動プーリ軸と、
前記従動プーリ軸と同一軸線上であって前記従動プーリより車幅方向の中央側の位置に配設され、出力軸を有する遠心クラッチと、
回転軸を有し、前記遠心クラッチの出力軸に接続された歯車式減速機構と、
前記歯車式減速機構を介して前記遠心クラッチに接続されたエンジン出力軸と、を備え、
前記遠心クラッチの出力軸、前記歯車式減速機構の回転軸、および前記エンジン出力軸が、軸線方向から見て互いに離間するように配設され、
前記歯車式減速機構の回転軸が、軸線方向から見て前記遠心クラッチと重なる位置にあるエンジンを備えた自動二輪車。」
の点で一致し、以下の1)ないし3)の点で相違している。

1)相違点1
「遠心クラッチ」が、本件補正発明においては、「湿式の遠心クラッチ」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、湿式であるかどうかが明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

2)相違点2
「エンジン」が、本件補正発明においては、「4サイクルエンジン」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、「2サイクルエンジン」である点(以下、「相違点2」という。)。

3)相違点3
本件補正発明においては、歯車式減速機構の回転軸およびエンジン出力軸が、軸線方向から見て遠心クラッチと重なる位置にあるのに対して、引用文献記載の発明においては、 歯車減速機59(本件補正発明の「歯車式減速機構」に相当。)の中間軸61(本件補正発明の「回転軸」に相当。)が、軸線方向から見て遠心クラッチと重なる位置にあるが、減速機出力軸65(本件補正発明の「エンジン出力軸」に相当。)が、軸線方向から見て自動遠心クラッチ42[湿式の遠心クラッチ]と重なる位置にあるかどうかが明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

3-3.当審の判断
上記相違点について検討する。
1)「相違点1」について
自動二輪車の技術分野において「遠心クラッチ」として「湿式の遠心クラッチ」を採用することは周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開昭62-34887号公報の公報第3ページ右下欄第8ないし10行等参照。)である。
引用文献記載の発明において、遠心クラッチとして上記周知技術1を適用して、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

2)「相違点2」について
自動二輪車の技術分野において「エンジン」として「4サイクルエンジン」を使用することは慣用されており、「2サイクルエンジン」に代えて「4サイクルエンジン」を採用することは周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開昭64-1683号公報の公報第4ページ左下欄第3ないし7行等参照。)でもある。
引用文献記載の発明において、4サイクルエンジンを採用するにあたり上記周知技術2を適用して、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

3)「相違点3」について
引用文献には、上記3-1.(1)ア.で摘記したように動力伝達装置をコンパクトにすることを目的とすることが記載されている。
そうすると、引用文献記載の発明において、減速機出力軸65(本件補正発明の「エンジン出力軸」に相当。)を、軸線方向から見て自動遠心クラッチ42と重なる位置に配置して動力伝達装置の小型化を図るようにしてみることは当業者が通常の創作能力により適宜なし得る設計的事項にすぎない。
また、本件補正発明の発明特定事項として、乾式のエンジンクラッチ特有の構成や4サイクルエンジン特有の構成が記載されていないことを参酌すれば、引用文献記載の発明において、減速機出力軸65を、軸線方向から見て自動遠心クラッチ42とある程度重なるような位置に配置することを阻害する要因も認められない。
してみると、引用文献記載の発明において、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本件補正発明は、全体でみても、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

以上から、本件補正発明は、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成23年9月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年1月10日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平3-176289号公報)の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正発明は、前記第2.[理由]2.で検討したように、本願発明の発明特定事項を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2.[理由]3-3.に記載したとおり、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-13 
結審通知日 2012-08-21 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2008-322275(P2008-322275)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02B)
P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 出口 昌哉  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 柳田 利夫
中川 隆司
発明の名称 自動二輪車  
代理人 後藤 高志  

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