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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1265179
審判番号 不服2010-10314  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-14 
確定日 2012-10-26 
事件の表示 特願2005-175640「磁気トンネル接合素子およびその形成方法,磁気メモリ構造ならびにトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月 5日出願公開,特開2006- 5356〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年6月15日(パリ条約に基づく優先権主張 2004年6月15日,アメリカ合衆国)の出願であって,平成21年4月28日付けで拒絶理由が通知され,これに対して同年8月7日に手続補正されたが,平成22年1月12日付けで拒絶査定がされ,それに対して同年5月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,手続補正がされ,その後,平成23年9月16日付けで審尋がされ,平成24年1月20日に回答がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年5月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成22年5月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?44を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?39と補正し,それにともなって発明の詳細な説明を補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。

(1)補正前
「 【請求項1】
スピン偏極した磁化自由層と,
前記磁化自由層の側から順に積層されたα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層とを含むキャップ層と
を備えたことを特徴とする磁気トンネル接合素子。
【請求項2】
前記キャップ層は,前記磁化自由層と前記酸素吸着層との間に内部拡散バリア層をさらに有するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項3】
前記磁化自由層は,鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)からなり,2.0nm以上5.0nm以下の厚みを有している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項4】
さらに,前記磁化自由層における前記キャップ層と反対側に,
ニッケルクロム合金(NiCr)からなるシード層と,マンガン白金合金(MnPt)からなる反強磁性ピンニング層と,シンセティックピンド層と,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなるトンネルバリア層とを順に備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項5】
前記シンセティックピンド層は,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.3nmの厚みをなす下部コバルト鉄合金層と,
ルテニウム(Ru)からなり0.75nmの厚みをなす結合層と,
鉄含有率が25原子パーセント(at%)以上50原子パーセント(at%)以下であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.0nmの厚みをなす上部コバルト鉄合金層と
を順に有するものである
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項6】
前記トンネルバリア層は,前記シンセティックピンド層の上に0.5nm以上1.2nm以下の厚みをなすように形成されたアルミニウム膜をその場で酸化処理したものである ことを特徴とする請求項4に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項7】
前記内部拡散バリア層は,ルテニウム(Ru)からなり,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項8】
前記酸素吸着層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項9】
前記金属層は,10.0nm以上25.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項10】
前記内部拡散バリア層の厚みに応じて全体の磁歪定数が変化することを特徴とする請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項11】
基体上に,下部導電層と,磁気トンネル接合素子と,上部導電層とを順に備えた磁気メモリ構造であって,
前記磁気トンネル接合素子が,前記下部導電層の側から順に第1シード層と,反強磁性ピンニング層と,ピンド層と,トンネルバリア層と,スピン偏極した磁化自由層と,第1キャップ層とを有し,
前記第1キャップ層が,前記磁化自由層の側から順に積層されたα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層とを含む
ことを特徴とする磁気メモリ構造。
【請求項12】
前記第1キャップ層は,前記磁化自由層と前記酸素吸着層との間に内部拡散バリア層をさらに有するものである
ことを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ構造。
【請求項13】
前記下部導電層は,
タンタル(Ta)またはニッケルクロム合金(NiCr)からなる第2シード層と,
ルテニウム(Ru)または銅(Cu)からなる電極層と,
タンタル(Ta)からなる第2キャップ層と
を有するものである
ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項14】
前記第1シード層はニッケルクロム合金(NiCr)からなり,前記反強磁性ピンニング層はマンガン白金合金(MnPt)からなり,前記ピンド層はシンセティック構造を有する
ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項15】
前記トンネルバリア層は,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなり,1.1nm以上1.5nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項16】
前記磁化自由層は,鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)からなる
ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項17】
前記内部拡散バリア層は,ルテニウム(Ru)からなり,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項18】
前記酸素吸着層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項19】
前記金属層は,10.0nm以上25.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の磁気メモリ構造。
【請求項20】
基体上に,下部シールド層と,スピン偏極した磁化自由層およびキャップ層を有する磁気トンネル接合素子と,上部シールド層とを順に備え,
前記キャップ層が,前記磁化自由層の側から順に積層されたα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層とを含む
ことを特徴とするトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項21】
前記キャップ層は,前記磁化自由層と前記酸素吸着層との間に内部拡散バリア層をさらに有するものである
ことを特徴とする請求項20に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項22】
さらに,前記磁化自由層における前記キャップ層と反対側に,
ニッケルクロム合金(NiCr)からなるシード層と,マンガン白金合金(MnPt)からなる反強磁性ピンニング層と,シンセティックピンド層と,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなるトンネルバリア層とを順に備えた
ことを特徴とする請求項20または請求項21に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項23】
前記シンセティックピンド層は,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.3nmの厚みをなす下部コバルト鉄合金層と,
ルテニウム(Ru)からなり0.75nmの厚みをなす結合層と,
鉄含有率が25原子パーセント(at%)以上50原子パーセント(at%)以下であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.0nmの厚みをなす上部コバルト鉄合金層と
を順に有するものである
ことを特徴とする請求項22に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項24】
前記下部シールド層は,ニッケル鉄合金からなることを特徴とする請求項20または請求項21に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項25】
前記磁化自由層は,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,0.5nm以上1.0nm以下の厚みをなすコバルト鉄合金層と,
鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)からなり,3.0nm以上4.0nm以下の厚みをなすニッケル鉄合金層と
が積層された2層構造を有する
ことを特徴とする請求項20または請求項21に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項26】
前記内部拡散バリア層は,ルテニウム(Ru)からなり,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項21に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項27】
前記酸素吸着層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項20または請求項21に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項28】
前記金属層は,10.0nm以上20.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項20または請求項21に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項29】
基体上に,シード層と,反強磁性ピンニング層と,ピンド層と,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなるトンネルバリア層とを順に形成する工程と,
前記トンネルバリア層の上に,スピン偏極した磁化自由層を形成する工程と,
前記磁化自由層の上に,α相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層と,ルテニウム(Ru)からなる金属層とを順に形成することによりキャップ層を形成する工程と
を含むことを特徴とする磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項30】
前記キャップ層を形成する工程において,前記磁化自由層と前記酸素吸着層との間に内部拡散バリア層をさらに形成する
ことを特徴とする請求項29に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項31】
前記基体として,磁気メモリ構造における下部導電層を用いることを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項32】
前記基体として,トンネル磁気抵抗効果型再生ヘッドにおける下部シールド層を用いることを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項33】
さらに,前記キャップ層の上に上部導電層を形成することを特徴とする請求項31に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項34】
さらに,前記キャップ層の上に上部シールド層を形成することを特徴とする請求項32に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項35】
ニッケルクロム合金(NiCr)を用いて前記シード層を形成し,
マンガン白金合金(MnPt)を用いて前記反強磁性ピンニング層を形成し,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなる下部コバルト合金層と,ルテニウム(Ru)からなる結合層と,鉄含有率が25原子パーセント(at%)以上50原子パーセント(at%)以下であるコバルト鉄合金(CoFe)からなる上部コバルト鉄合金層とを順に積層することによりシンセティック構造をなす前記ピンド層を形成する
ことを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項36】
0.8nm以上1.0nm以下の厚みをなすようにアルミニウム膜を形成したのち,このアルミニウム膜に対してラジカル酸化処理を行うことにより前記トンネルバリア層を形成する
ことを特徴とする請求項31に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項37】
0.5nm以上0.6nm以下の厚みをなすようにアルミニウム膜を形成したのち,このアルミニウム膜に対して自然酸化処理を行うことにより前記トンネルバリア層を形成する
ことを特徴とする請求項32に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項38】
17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下の鉄含有率であるニッケル鉄合金(NiFe)を用いて,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすように前記磁化自由層を形成する
ことを特徴とする請求項31に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項39】
10原子パーセント(at%)の鉄含有率であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり0.5nm以上1.0nm以下の厚みをなすコバルト鉄合金層と,17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下の鉄含有率であるニッケル鉄合金(NiFe)からなり,3.0nm以上4.0nm以下の厚みをなすニッケル鉄合金層とを積層することにより前記磁化自由層を形成する
ことを特徴とする請求項32に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項40】
ルテニウム(Ru)を用いて,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすように前記内部拡散バリア層を形成する
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項41】
2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすように前記酸素吸着層を形成することを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項42】
10.0nm以上25.0nm以下の厚みをなすように前記金属層を形成することを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項43】
スパッタリング用チャンバと酸化用チャンバとを備えた超高真空スパッタリング装置において,一回のポンプダウン操作ののちに全ての層を順次形成する
ことを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項44】
前記基体として,最上面にアモルファスのタンタル層を有するものを用いることにより,その上に形成される前記シード層,反強磁性ピンニング層,ピンド層,トンネルバリア層および磁化自由層における平滑かつ緻密な結晶成長の促進を図るようにする
ことを特徴とする請求項29または請求項30に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。」

(2)補正後
「 【請求項1】
鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層と,
前記磁化自由層の側から順に積層されたルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造のキャップ層と
を備えたことを特徴とする磁気トンネル接合素子。
【請求項2】
前記磁化自由層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項3】
さらに,前記磁化自由層における前記キャップ層と反対側に,
ニッケルクロム合金(NiCr)からなるシード層と,マンガン白金合金(MnPt)からなる反強磁性ピンニング層と,シンセティックピンド層と,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなるトンネルバリア層とを順に備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項4】
前記シンセティックピンド層は,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.3nmの厚みをなす下部コバルト鉄合金層と,
ルテニウム(Ru)からなり0.75nmの厚みをなす結合層と,
鉄含有率が25原子パーセント(at%)以上50原子パーセント(at%)以下であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.0nmの厚みをなす上部コバルト鉄合金層と
を順に有するものである
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項5】
前記トンネルバリア層は,前記シンセティックピンド層の上に0.5nm以上1.2nm以下の厚みをなすように形成されたアルミニウム膜をその場で酸化処理したものである
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項6】
前記内部拡散バリア層は,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項7】
前記酸素吸着層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項8】
前記金属層は,10.0nm以上25.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項9】
前記内部拡散バリア層の厚みに応じて全体の磁歪定数が変化することを特徴とする請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項10】
基体上に,下部導電層と,磁気トンネル接合素子と,上部導電層とを順に備えた磁気メモリ構造であって,
前記磁気トンネル接合素子が,前記下部導電層の側から順に第1シード層と,反強磁性ピンニング層と,ピンド層と,トンネルバリア層と,鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層と,第1キャップ層とを有し,
前記第1キャップ層が,前記磁化自由層の側から順に積層されたルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造である
ことを特徴とする磁気メモリ構造。
【請求項11】
前記下部導電層は,
タンタル(Ta)またはニッケルクロム合金(NiCr)からなる第2シード層と,
ルテニウム(Ru)または銅(Cu)からなる電極層と,
タンタル(Ta)からなる第2キャップ層と
を有するものである
ことを特徴とする請求項10に記載の磁気メモリ構造。
【請求項12】
前記第1シード層はニッケルクロム合金(NiCr)からなり,前記反強磁性ピンニング層はマンガン白金合金(MnPt)からなり,前記ピンド層はシンセティック構造を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の磁気メモリ構造。
【請求項13】
前記トンネルバリア層は,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなり,1.1nm以上1.5nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項10に記載の磁気メモリ構造。
【請求項14】
前記内部拡散バリア層は,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項10に記載の磁気メモリ構造。
【請求項15】
前記酸素吸着層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項10に記載の磁気メモリ構造。
【請求項16】
前記金属層は,10.0nm以上25.0nm以下の厚みをなすものであることを特徴とする請求項10に記載の磁気メモリ構造。
【請求項17】
基体上に,下部シールド層と,鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層およびキャップ層を有する磁気トンネル接合素子と,上部シールド層とを順に備え,
前記キャップ層が,前記磁化自由層の側から順に積層されたルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造である
ことを特徴とするトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項18】
さらに,前記磁化自由層における前記キャップ層と反対側に,
ニッケルクロム合金(NiCr)からなるシード層と,マンガン白金合金(MnPt)からなる反強磁性ピンニング層と,シンセティックピンド層と,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなるトンネルバリア層とを順に備えた
ことを特徴とする請求項17に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項19】
前記シンセティックピンド層は,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.3nmの厚みをなす下部コバルト鉄合金層と,
ルテニウム(Ru)からなり0.75nmの厚みをなす結合層と,
鉄含有率が25原子パーセント(at%)以上50原子パーセント(at%)以下であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,2.0nmの厚みをなす上部コバルト鉄合金層と
を順に有するものである
ことを特徴とする請求項18に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項20】
前記下部シールド層は,ニッケル鉄合金からなることを特徴とする請求項17に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項21】
前記磁化自由層は,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり,0.5nm以上1.0nm以下の厚みをなすコバルト鉄合金層と,
鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)からなり,3.0nm以上4.0nm以下の厚みをなすニッケル鉄合金層と
が積層された2層構造を有する
ことを特徴とする請求項17に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項22】
前記内部拡散バリア層は,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項17に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項23】
前記酸素吸着層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項17に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項24】
前記金属層は,10.0nm以上20.0nm以下の厚みをなすものである
ことを特徴とする請求項17に記載のトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド。
【請求項25】
基体上に,シード層と,反強磁性ピンニング層と,ピンド層と,酸化アルミニウム(AlO_(X))からなるトンネルバリア層とを順に形成する工程と,
前記トンネルバリア層の上に,17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下の鉄含有率であるニッケル鉄合金(NiFe)を用いてスピン偏極した磁化自由層を形成する工程と,
前記磁化自由層の上に,ルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造のキャップ層を形成する工程と
を含むことを特徴とする磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項26】
前記基体として,磁気メモリ構造における下部導電層を用いることを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項27】
前記基体として,トンネル磁気抵抗効果型再生ヘッドにおける下部シールド層を用いることを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項28】
さらに,前記キャップ層の上に上部導電層を形成することを特徴とする請求項26に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項29】
さらに,前記キャップ層の上に上部シールド層を形成することを特徴とする請求項27に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項30】
ニッケルクロム合金(NiCr)を用いて前記シード層を形成し,
マンガン白金合金(MnPt)を用いて前記反強磁性ピンニング層を形成し,
鉄含有率が10原子パーセント(at%)であるコバルト鉄合金(CoFe)からなる下部コバルト合金層と,ルテニウム(Ru)からなる結合層と,鉄含有率が25原子パーセント(at%)以上50原子パーセント(at%)以下であるコバルト鉄合金(CoFe)からなる上部コバルト鉄合金層とを順に積層することによりシンセティック構造をなす前記ピンド層を形成する
ことを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項31】
0.8nm以上1.0nm以下の厚みをなすようにアルミニウム膜を形成したのち,このアルミニウム膜に対してラジカル酸化処理を行うことにより前記トンネルバリア層を形成する
ことを特徴とする請求項26に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項32】
0.5nm以上0.6nm以下の厚みをなすようにアルミニウム膜を形成したのち,このアルミニウム膜に対して自然酸化処理を行うことにより前記トンネルバリア層を形成する
ことを特徴とする請求項27に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項33】
2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすように前記磁化自由層を形成する
ことを特徴とする請求項26に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項34】
10原子パーセント(at%)の鉄含有率であるコバルト鉄合金(CoFe)からなり0.5nm以上1.0nm以下の厚みをなすコバルト鉄合金層と,17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下の鉄含有率であるニッケル鉄合金(NiFe)からなり,3.0nm以上4.0nm以下の厚みをなすニッケル鉄合金層とを積層することにより前記磁化自由層を形成する
ことを特徴とする請求項27に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項35】
1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなすように前記内部拡散バリア層を形成する
ことを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項36】
2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなすように前記酸素吸着層を形成することを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項37】
10.0nm以上25.0nm以下の厚みをなすように前記金属層を形成することを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項38】
スパッタリング用チャンバと酸化用チャンバとを備えた超高真空スパッタリング装置において,一回のポンプダウン操作ののちに全ての層を順次形成する
ことを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。
【請求項39】
前記基体として,最上面にアモルファスのタンタル層を有するものを用いることにより,その上に形成される前記シード層,反強磁性ピンニング層,ピンド層,トンネルバリア層および磁化自由層における平滑かつ緻密な結晶成長の促進を図るようにする
ことを特徴とする請求項25に記載の磁気トンネル接合素子の形成方法。」

2 補正事項の整理
本件補正のうち,特許請求の範囲についての補正事項を整理すると,以下のとおりである。

(1) 補正事項1
ア 補正事項1-a
補正前の請求項1,11,20の「スピン偏極した磁化自由層」を,補正後の請求項1,10,17の「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層」と補正すること。

イ 補正事項1-b
補正前の請求項29の「スピン偏極した磁化自由層」を,補正後の請求項25の「17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下の鉄含有率であるニッケル鉄合金(NiFe)を用いてスピン偏極した磁化自由層」と補正すること。

(2) 補正事項2
ア 補正事項2-a
補正前の請求項1の「積層されたα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層とを含むキャップ層」を,補正後の請求項1の「積層されたルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造のキャップ層」と補正すること。

イ 補正事項2-b
補正前の請求項11,20の「積層されたα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層とを含むキャップ層とを含む」を,補正後の請求項10,17の「積層されたルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造である」と補正すること。

ウ 補正事項2-c
補正前の請求項29の「α相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層と,ルテニウム(Ru)からなる金属層とを順に形成することによりキャップ層」を,補正後の請求項25の「ルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造のキャップ層」と補正すること。

(3) 補正事項3
ア 補正事項3-a
補正前の請求項2を削除し,補正前の請求項3?10の請求項の項番を繰り上げて,補正後の請求項2?9とするとともに,引用する請求項の項番も補正すること。

イ 補正事項3-b
補正前の請求項12を削除し,補正前の請求項13?15の請求項の項番を繰り上げて,補正後の請求項11?13とするとともに,引用する請求項の項番も補正すること。

ウ 補正事項3-c
補正前の請求項16を削除し,補正前の請求項17?19の請求項の項番を繰り上げて,補正後の請求項14?16とするとともに,引用する請求項の項番も補正すること。

エ 補正事項3-d
補正前の請求項21を削除し,補正前の請求項22?28の請求項の項番を繰り上げて,補正後の請求項18?24とするとともに,引用する請求項の項番も補正すること。

オ 補正事項3-e
補正前の請求項30を削除し,補正前の請求項31?44の請求項の項番を繰り上げて,補正後の請求項26?39とするとともに,引用する請求項の項番も補正すること。

(4) 補正事項4
ア 補正事項4-a
補正前の請求項3の「磁化自由層は,鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)からなり,2.0nm以上5.0nm以下の厚みを有し」を,補正後の請求項2の「磁化自由層は,2.0nm以上5.0nm以下の厚みを有し」と補正すること。

イ 補正事項4-b
補正前の請求項38「17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下の鉄含有率であるニッケル鉄合金(NiFe)を用いて,2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなす」を,補正後の請求項33の「2.0nm以上5.0nm以下の厚みをなす」と補正すること。

(5) 補正事項5
ア 補正事項5-a
補正前の請求項7,17,26の「内部拡散バリア層は,ルテニウム(Ru)からなり,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなす」を,補正後の請求項6,14,22の「内部拡散バリア層は,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなす」と補正すること。

イ 補正事項5-b
補正前の請求項40「ルテニウム(Ru)を用いて,1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなす」を,補正後の請求項35の「1.0nm以上3.0nm以下の厚みをなす」と補正すること。

3 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について

(1)新規事項の追加の有無について
ア 補正事項1
補正後の請求項1,10,17,25の「磁化自由層」の組成として,「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)」とすることは,本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲(以下「当初の特許請求の範囲」という。)の請求項3,16,25,38及び本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0025】,【0031】,【0037】,【0043】,【0044】,【0064】,【0086】,【0093】に記載されている。
したがって,補正事項1は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。

イ 補正事項2
補正後の請求項1,10,17,25の「キャップ層」として,「ルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層」を加えた「3層構造」とすることは,当初の特許請求の範囲の請求項2,6,12,17,21,26,30,40及び当初明細書の段落【0024】,【0026】,【0029】,【0034】,【0038】,【0041】,【0045】,【0049】等に記載されている。
したがって,補正事項2は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 補正事項3
補正事項3は請求項の削除及びそれに伴い引用関係を整理したものであるから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。

エ 補正事項4,5は,それぞれ補正事項1,2に伴って,重複する記載を削除するものであるから,補正は実質的なものではなく,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。

オ 以上から,本件補正は特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たすものである。

(2)補正の目的の適否について

ア 補正事項1,2,4,5
(ア) 補正事項1は,「磁化自由層」の材料の組成を「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)」と技術的に限定するものである。

(イ) 補正事項2は,「キャップ層」の構造を「ルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造」と技術的に限定するものである。

(ウ) 補正事項4,5は,それぞれ補正事項1,2に伴って,重複する記載を削除するものであるから,補正は実質的なものではない。

(エ) 以上から,補正事項1,2,4,5は,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項3
(ア) 補正事項3は,補正前の請求項2,12,16,21,30の削除と,補正前の請求項3?10,13?15,17?19,22?28,31?44が引用する請求項が,補正前の請求項1,11,20,29より技術的に限定された補正後の請求項1,10,17,25及びこれを引用する請求項とするものである。
よって,補正事項3は,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除及び特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(イ) 以上から,本件補正は特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。

(3)小括
したがって,本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。

そして,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,以下において更に検討する。

4 独立特許要件について
(1)補正発明
本件補正による補正後の請求項1?39に係る発明は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?39に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるものであり,再掲すると以下のとおりのものである。

「【請求項1】
鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層と,
前記磁化自由層の側から順に積層されたルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層とα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層との3層構造のキャップ層と
を備えたことを特徴とする磁気トンネル接合素子。」

(2)引用例1に記載された発明及び引用例2,3の記載
ア 本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2003-183838号公報(以下「引用例1」という。)には,「酸化膜形成装置及び磁気記録再生装置」(発明の名称)に関して,以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。以下同様)。

(ア) 「【0026】(磁気記録再生装置の実施例)最後に,本発明の酸化膜形成装置により酸化膜を成膜,管理した磁気抵抗型センサを搭載した磁気記録再生装置について説明する。磁気抵抗型センサは本発明の酸化膜形成装置で基板上にTa(5nm)/NiFe(5nm)/MnPt(25nm)/CoFe(3nm)成膜した後,アルミニウムを0.5nm成膜,プラズマ酸化し,所望の酸化膜の膜厚に対応する赤外ピークの強度と位置になるように酸化膜を成膜,管理した後,CoFe(1nm)/NiFe(5nm)/Ta(5nm)/Ru(10nm)を成膜した。得られたウエハをヘッド加工にまわした。本センサを組み込んだ各磁気記録再生装置は磁気抵抗センサのnm酸化膜の膜厚,結合状態が制御されているために,各センサの感度が安定しており,記録装置として良好な歩留まりを示した。本発明によれば,磁気抵抗センサの主要素であるnm酸化膜を成膜し,膜厚,結合状態をインプロセスで管理できるので,各センサの性能を許容範囲内に押さえることができ,性能が安定した磁気記録再生装置を生産できるという効果がある。」

以上から,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「Ta(5nm)/NiFe(5nm)/MnPt(25nm)/CoFe(3nm)成膜した後,アルミニウムを0.5nm成膜,プラズマ酸化し,CoFe(1nm)/NiFe(5nm)/Ta(5nm)/Ru(10nm)を成膜して形成した磁気抵抗型センサ。」

イ 本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2004-79936号公報(以下「引用例2」という。)には,「強磁性トンネル接合を有する積層膜,その製造方法,磁気センサ,磁気記録装置,及び,磁気メモリ装置」(発明の名称)に関して,図2(a),(b),図7(b),(c)とともに以下の記載がある。

(ア)「【0021】
この場合の強磁性トンネル接合(MTJ)部90は,「磁性層(フリー層)/ 絶縁層/ 磁性層(ピンド層)/ 反強磁性層(ピン層)」という構造からなり,CoFeピンド層87がIrMnピン層88と交換結合し,CoFeピンド層87の磁化方向が固定される。
【0022】
したがって,外部から磁場を印加すると,CoFeフリー層85及びNiFeフリー層84のみが磁化回転するので,フリー層とピンド層の磁化の相対角度が変化するために,定電流源94からセンス電流を流すと,上記の式(1)で示したように,磁場に依存してトンネル抵抗が変化し,その変化が電圧計95によって検知されることになる。」

(イ)「【0040】
【発明の実施の形態】
ここで,図2及び図3を参照して,本発明の第1の実施の形態のMTJ磁気センサを説明する。
図2(a)及び(b)参照
図2(a)は,本発明の第1の実施の形態のMTJ磁気センサの平面図であり,また,図2(b)は,MTJ部20の近傍を拡散した概念的拡大図である。
まず,SiO_(2) 膜12を形成したシリコン基板11上に,25nmのTa,30nmのAu,及び,5nmのTaを順次堆積させた下部電極13,厚さが6nmのNiFeフリー層14,厚さが1nmのCoFeフリー層15,及び,厚さが0.5?1.5nm,例えば,0.8nmのAl膜(図示は省略)を順次堆積させる。
なお,この時,図2(a)における上下方向に磁場を印加した状態で堆積を行うものであり,NiFeの組成は,例えば,Ni_(80)Fe_(20)であり,CoFeの組成は,例えば,Co_(74)Fe_(26)である。」

(ウ)「【0064】
図7(b)及び(c)参照
図7(b)及び(c)はMTJ部71の模式図であり,ビット線61上にTa膜72を介して,PtMnピン層73/CoFeピンド層74/酸窒化Al膜75/CoFeフリー層76/NiFeフリー層77を順次積層し,Ta膜78を介してワード線62と接続したものである。」

ウ 本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2004-6589号公報(以下「引用例3」という。)には,「磁気抵抗効果素子,磁気ヘッド及び磁気再生装置」(発明の名称)に関して,以下の記載がある。

(ア)「【0195】
ニッケル鉄(NiFe)の組成としては,Ni_(70)Fe_(30)?Ni_(90)Fe_(10)が好ましく,Ni_(78)Fe_(22)?Ni_(83)Fe_(17)の範囲がさらに好ましい。フリー層Fの中でのスピン依存したバルク散乱効果を向上させて膜構成としては,ニッケル鉄コバルト(NiFeCo)膜,コバルト鉄(CoFe)/ニッケル鉄コバルト(NiFeCo)積層構成や,(NiFeCo/Cu0.1nm)×n積層膜,などを挙げることができる。」

(イ)「【0203】
本実施例において,フリー層Fの上に積層されている銅(Cu)層は,その上のタンタル(Ta)との界面ミキシングの防止層としても機能する。銅(Cu)の代わりに,金(Au),銀(Ag),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd)等を用いてもよいし,また,キャップ層との界面ミキシングが抑制されうる場合には,この層はなくすことも可能である。この層の膜厚は0ナノメートル?3ナノメートル程度であることが好ましい。
【0204】
フリー層Fの上の銅(Cu)層と,その上に積層されているタンタル(Ta)層を,ここでは「キャップ層」と呼ぶことにする。これは,スピンバルブ膜成膜後の微細加工プロセスを行った場合にも,積層膜がエッチングされたりしないように保護するためのものである。タンタル(Ta)層の代わりに,チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ルテニウム(Ru),ニオブ(Nb),タングステン(W),ハフニウム(Hf),レニウム(Re),イリジウム(Ir),金(Au),銀(Ag)などの層で保護しても構わない。」

(3)対比
以下に,補正発明と引用発明とを対比する。
ア また,引用発明の「磁気抵抗型センサ」は,補正発明の「磁気トンネル接合素子」に相当する。

イ 「MnPt」が反強磁性を示することは当業者に広く知られており,引用発明の「MnPt」層がピンニング層であることは当業者にとって明らかである。そうすると「磁気トンネル接合素子」の構造と,各材料の磁気特性を考慮すると,引用発明の「CoFe」層が強磁性層(いわゆるピンド層)であり,引用発明の「アルミニウムを0.5nm成膜,プラズマ酸化し」て形成された酸化アルミニウムがトンネル絶縁層に,続く「CoFe」「NiFe」層が磁化自由層であることは当業者にとって自明である。そして,「磁気トンネル接合素子」の磁化自由層がスピン偏極していることも当業者にとって明らかである。
そうすると,引用発明の「NiFe」層は,補正発明の「ニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層」に相当する。

ウ 引用発明の前記「NiFe」層に続く「Ta」層,「Ru」層は,補正発明の「タンタル(Ta)からなる」層,「ルテニウム(Ru)からなる金属層」にそれぞれ相当する。

(一致点)
したがって,補正発明と引用発明とは,
「ニッケル鉄合金(NiFe)を含んでスピン偏極した磁化自由層と,
前記磁化自由層の側から順にタンタル(Ta)からなる層とルテニウム(Ru)からなる金属層との層構造のキャップ層と
を備えたことを特徴とする磁気トンネル接合素子。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
補正発明は,「磁化自由化層」の組成が「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)を含ん」だものであるのに対して,引用発明は,組成が特定されていない点。

(相違点2)
補正発明は,「ルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層」を設けているのに対して,引用発明はこの層が設けられていない点。

(相違点3)
補正発明は,「α相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層」であるのに対して,引用発明は「Ta」の相が特定されておらず,また「酸素」を「吸着」するという機能を有することも特定されていない点。

(4)判断
(4-1)相違点1について
ア 4(2)イ(イ)によれば,引用例2には,強磁性トンネル接合(MTJ)において,フリー層(補正発明の「磁化自由層」に相当する。)にNiFeの組成として,「Ni_(80)Fe_(20)」のものが記載されており,4(2)ウ(ア)によれば,引用例3には,フリー層の「ニッケル鉄(NiFe)の組成としては,Ni_(70)Fe_(30)?Ni_(90)Fe_(10)が好ましく,Ni_(78)Fe_(22)?Ni_(83)Fe_(17)の範囲がさらに好ましい」と記載され,どちらも補正発明の「ニッケル鉄合金(NiFe)」における「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下」の範囲に含まれるものである。
そうすると,「ニッケル鉄合金(NiFe)」における「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下」の範囲のものを磁化自由層に用いることは当該技術分野においてごく普通のことといえる。

イ また,本願明細書の記載を見ても,「磁化自由層は,鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下であるニッケル鉄合金(NiFe)からなることが望ましい。」(段落【0031】)等と記載されているのみで,その組成範囲に限定したことによる効果も認められず,磁化自由層のニッケル鉄合金の「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下」としたことによる技術的な臨界的意義は認められない。

ウ したがって,引用発明において,引用例2,3に記載の事項を勘案し,磁化自由層における「ニッケル鉄合金(NiFe)」の組成として,「鉄含有率が17.5原子パーセント(at%)以上20.0原子パーセント(at%)以下」とすることは,当業者が容易になし得た範囲に含まれる事項である。

(4-2)相違点2について
ア 4(2)ウ(イ)によれば,引用例3には,フリー層(補正発明の「磁化自由層」に相当する。)の上に界面ミキシングの防止層としてルテニウム(Ru)を用いることが記載されており,またこの「界面ミキシング」が金属の内部拡散であることは当業者にとって明らかである。そして,界面ミキシングの防止層の上にキャップ層としてTaが形成されることが記載されている。
そうすると,磁化自由層とTaからなるキャップ層とが内部拡散することを防ぐためにルテニウム(Ru)を間に形成していることが分かる。

イ また,引用発明のものは,磁化自由層上にTaからなるキャップ層を設けるものであるから,そこにおいて当然起こる金属の内部拡散という技術課題は当業者にとって自明のものである。

ウ したがって,引用発明において,磁化自由層とTaからなる層との間に,引用例3に記載の磁化自由層とキャップ層の界面ミキシングの防止のためにルテニウムを設け,防止層すなわちバリア層とする技術を適用して,ルテニウム(Ru)からなる内部拡散バリア層を設けることは当業者ならば容易になし得た範囲に含まれる事項である。

(4-3)相違点3について
ア 磁気トンネル接合素子の分野において,α相のタンタル(Ta)を使用することは,以下の周知例1,2に記載されているように周知の技術であり,低抵抗・低コスト等の点から有利な材料であることも知られているから,引用発明のTaをα相のタンタル(Ta)とすることは,当業者が直ちに想到しうることにすぎない。

イ また「α相のタンタル(Ta)」が「酸素吸着」の機能を有する点については,タンタル(Ta)が酸化されやすい金属であることが,当該技術分野において周知の事項であり,材料自体が有する特性といえる。そうするとα相のタンタルからなる層は,当然酸素吸着する機能を有していると認められ,この点は実質的な相違点ではない。

ウ したがって,引用発明において,上記周知の技術を勘案し,タンタルからなる層を「α相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層」とすることは,当業者ならば適宜なし得たことといえる。

(ア) 周知例1:特開2002-280641号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された特開2002-280641号公報には,「交換結合膜及び前記交換結合膜を用いた磁気検出素子」(発明の名称)に関して,図1とともに以下の記載がある。
a「【0087】前記ハードバイアス層5,5は,例えばCo-Pt(コバルト-白金)合金やCo-Cr-Pt(コバルト-クロム-白金)合金などで形成されており,電極層8,8は,α-Ta,Au,Cr,Cu(銅),Rh,Ir,RuやW(タングステン)などで形成されている。なお上記したトンネル型磁気抵抗効果素子やCPP型磁気検出素子の場合,前記電極層8,8は,フリー磁性層1の上側と,反強磁性層4の下側にそれぞれ形成されることになる。」

(イ) 周知例2:特開平5-258247号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された特開平5-258247号公報には,「磁気抵抗読取り変換器」(発明の名称)に関して,図3?5とともに以下の記載がある。
a「【0014】本発明によれば,導電性リード構造38および41の主な電流運搬素子は低抵抗タンタル(Ta)である。Taの低抵抗相は,α相Taとして知られているTaの体心立方(BCC)形状であり,300°Kで約13μΩ・cmの体積抵抗率を有する。α相Taの抵抗は,MRセンサ用の導電性リード構造として使用するのに適した範囲内にある。さらに,TaはMRセンサの導電性リード構造に適する他の特性を有する。これらの特性とは電子移動,腐食,動的な掻き傷に対する高い抵抗である。また,タンタルは低コストであり,MRリードの実用において既に有用なものであり,かつ容易に製造できる。
【0015】しかし,薄膜形状ではTaの特性は多くの要因により広範囲に変化し得る。これら特性の一つは,低抵抗α相では約20μΩ・cmという値から高抵抗正方晶系またはβ相では約200μΩ・cmという値の範囲を変化し得る抵抗である。一方,混合相Ta薄膜は中間値の抵抗率を有する。α相の薄膜層で約20μΩ・cmの抵抗率は,MRセンサ用の導電性リード構造としての利用に適した範囲内にある。しかし,β相Taの薄膜層で約200μΩ・cmの抵抗はこの範囲を充分逸脱しており,MRセンサ用の導電性リード構造としての利用には不適切である。」

(4-4)判断についてのまとめ
以上検討したとおり,補正発明は,周知の技術を勘案し,引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項をいう。以下同じ。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。

5 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?44に係る発明は,平成21年8月7日に補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?44に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は再掲すると,請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
スピン偏極した磁化自由層と,
前記磁化自由層の側から順に積層されたα相のタンタル(Ta)からなる酸素吸着層とルテニウム(Ru)からなる金属層とを含むキャップ層と
を備えたことを特徴とする磁気トンネル接合素子。」

第4 引用例に記載された発明
引用例1?3には,上記第2,4(2)に記載したとおり,引用発明が記載されている。

第5 判断
本願発明は,補正発明から,上記第2,2(1)?(2)に記載した補正事項1,2についての補正によりなされた技術的限定を省いたものである。
そうすると第2,4(4)において検討したとおり,補正発明は,引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正発明から技術的限定を省いた本願発明についても,当然に,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-01 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-18 
出願番号 特願2005-175640(P2005-175640)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 56- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 早川 朋一
西脇 博志
発明の名称 磁気トンネル接合素子およびその形成方法、磁気メモリ構造ならびにトンネル磁気抵抗効果型再生ヘッド  
代理人 三反崎 泰司  
代理人 三反崎 泰司  
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