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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01D
管理番号 1265215
審判番号 不服2011-27353  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-19 
確定日 2012-10-22 
事件の表示 特願2001-213627「多孔質性無機酸化物を含む浄水器用濾材及びこれを用いた浄水器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月28日出願公開、特開2003- 24723〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成13年7月13日の出願であって、平成23年9月16日付けで拒絶査定がなされ、同年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成24年3月2日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月1日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年5月9日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年7月6日付けで意見書が提出され、同年7月9日付けで手続補足書が提出されたものである。

[2]本願発明
本願の請求項1-4に係る発明は、平成24年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりである。

「粒状又はパウダー状であって、かつ、その比表面積が100m^(2)/g以上であり、Na_(2)O、SiO_(2)、TiO_(2)を合計で50wt%を超える量含む多孔質性無機酸化物と活性炭とを含み、前記多孔質性無機酸化物が、前記活性炭に添着されている浄水器用濾材。」(以下、「本願発明」という。)

[3]引用刊行物の記載事項
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された、特開2000-256999号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、特開昭58-24338号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

(1)引用刊行物1(特開2000-256999号公報)
(1a)「【0005】これまで、水中の鉛除去に関し、エンゲルハルド社からATSの商品名で二酸化チタン及び二酸化ケイ素を主成分とする粒状体が市販されており、これを活性炭に担持した商品名ATCが水処理に使用され、鉛の除去性能に優れていることが報告されている(Report on UltraPure Systems,Inc.WP-500LR Countertop Drinking Water Treatment System、1992年)。……
……
【0006】水道水基準によると、水道水中の鉛の許容含有量は50ppb以下と規定され、浄水器協議会の基準でも同様であるが、上述したように、最近では飲料水の味については勿論、鉛などの重金属に対する要求は極めて厳しいものがあり、……」(第2頁第2欄第44行-第3頁第3欄第12行)

(1b)「【0032】比較例1
エンゲルハルド社製の浄水用の粒状活性炭(商品名ATC:活性炭に二酸化ケイ素及び二酸化チタンを担持)を使用して通水試験を行った。」(第5頁第11行-第14行)

(2)引用刊行物2(特開昭58-24338号公報)
(2a)「2 特許請求の範囲
1.シリカとチタニアを重量比で75:25乃至0:100の割合で含有し、さらにシリカ及びチタニア以外の金属酸化物を含有し、且つ少なくとも50m^(2)/gの比表面積を有する微細多孔質の酸化物複合体より成る吸着剤。
……
3.該酸化物複合体が少なくとも120m^(2)/gの比表面積を有する、特許請求の範囲第1項記載の吸着剤。」(第1頁左下欄第4-15行)

(2b)「かくして得られる複合体は粉末のまま吸着剤として使用することができ、或いは、(顆)粒状、……等任意の形状に成形した後吸着剤として使用してもよい。」(第5頁左上欄第1行-第5行)

(2c)「上記の如くして調製された複合体は前述した如き物性を有し、非常に優れた吸着能を有し、後述する種々の用途に利用することができる。
しかしながら、本発明によれば、上記の如くして調製された複合体をアルカリ水溶液で処理すると、金属イオン及び反応性染料に対する吸着能が約10?60%程度もアップすることが見い出された。かかるアルカリ処理に用いうるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、…の如きアルカリ金属の水酸化物、…などが好ましく、中でもナトリウム、カリウム及びバリウムの化合物が好適である。」(第5頁左上欄第10行-右上欄第9行)

(2d)「上記アルカリ処理により複合体の吸着能が何故向上するか、その理由は不明であるが、微細多孔質の複合体の微細孔表面がアルカリ処理により活性化され、或いは微細孔表面にアルカリ金属やアルカリ土類金属が酸化物の形で残存保持され、それが該複合体の吸着に対して非常に有利に作用しているのではないかと考えられる。事実、例えば水酸化ナトリウム水溶液で処理したシリカ-チタニア(重量比50/50)複合体には、約600℃で焼成した後、炎光分析法で測定して約0.3重量%の酸化ナトリウムが保持されていることが確認されている。」(第5頁左下欄第3行-第14行)

(2e)第8頁第3表には、シリカ-チタニア複合体の粒状吸着剤を1N水酸化ナトリウム溶液中でアルカリ処理した吸着剤の比表面積が268m^(2)/gであること、また、同頁第4表には、該吸着剤を用いた吸着試験結果として、鉛の除去率が、初期pH3?11において、88?100%であることが示されている。

[3]引用刊行物記載の発明
上記記載事項(1a)、(1b)によれば、引用刊行物1には、
「粒状であって、かつ、二酸化チタン及び二酸化ケイ素を主成分とする粒状体と活性炭を含み、前記粒状体が前記活性炭に担持されている浄水用濾材。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[4]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明における「その比表面積が100m^(2)/g以上であり、Na_(2)O、SiO_(2)、TiO_(2)を合計で50wt%を超える量含む多孔質性無機酸化物」は、粒状のものを含んでいるから(本願明細書【0015】)、引用発明における「二酸化チタン及び二酸化ケイ素を主成分とする粒状体」と、本願発明における「その比表面積が100m^(2)/g以上であり、Na_(2)O、SiO_(2)、TiO_(2)を合計で50wt%を超える量含む多孔質性無機酸化物」とは、「TiO_(2)及びSiO_(2)を含む粒状体」である点で共通する。
また、引用発明における「担持され」と、本願発明における「添着され」とは、共に「表面に保持され」る状態を意味する点において共通する。
よって、両者は、「粒状であって、かつ、TiO_(2)及びSiO_(2)を含む粒状体と活性炭を含み、前記粒状体が前記活性炭表面に保持される浄水用濾材。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
上記粒状体が、本願発明では、「その比表面積が100m^(2)/g以上であり、Na_(2)O、SiO_(2)、TiO_(2)を合計で50wt%を超える量含む多孔質性無機酸化物」であるのに対し、引用発明では、「二酸化チタン及び二酸化ケイ素を主成分と」し、比表面積は不明である点。

(相違点2)
上記粒状体の活性炭表面における保持が、本願発明では、「添着」であるのに対し、引用発明では、「担持」である点。

(相違点3)
上記濾材が、本願発明では「浄水器用」であるのに対し、引用発明では、該限定がない点。

上記各相違点について検討する。
・(相違点1)について
上記記載事項(2a)-(2e)によれば、引用刊行物2には、吸着剤として、シリカとチタニアと酸化ナトリウムを合計で50%以上含有し、少なくとも120m^(2)/gの比表面積を有する多孔質性無機酸化物からなる粒状体が、鉛の吸着に対して非常に有利であることが示されている。
とすれば、鉛除去を目的とする引用発明において、粒状体として、「二酸化チタン及び二酸化ケイ素を主成分と」するものを、「その比表面積が100m^(2)/g以上であり、Na_(2)O、SiO_(2)、TiO_(2)を合計で50wt%を超える量含む多孔質性無機酸化物」とし、該相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になしえたことである。

・(相違点2)について
「添着」と「担持」とは、技術的に明らかに相違するものとも認められないから、該相違点は、実質的なものではないといえる。
また、そうでないとしても、吸着剤において、活性炭表面にシリカ等無機酸化物を保持させる手法として、「添着」は周知であり(例えば、下記周知例参照)、引用発明において、該周知の手法を採用し、該相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なしえた事項にすぎない。

(周知例)特開平2-80313号公報
・「2.特許請求の範囲
(1)活性炭にその吸着性をそこなわぬように着色剤を添着せしめてなる着色活性炭。
(2)活性炭のその吸着性をそこなわぬように着色物質をエマルジョンにより添着させることを特徴とする着色活性炭の製法。」(第1頁左下欄第4行-第9行)
・「活性炭は脱臭剤、浄水剤等の一般消費材として広く使用されている。
」(第1頁左下欄末行-右下欄第1行)
・「また形状は破砕炭、造粒炭、顆粒炭……等の何れの形態の活性炭でも使用することができる。」(第2頁右上欄第7行-第10行)
・「着色したシリカゲル微粉末等も着色物質として使用できる。……着色物質でそのまま活性炭表面に堅牢に付着できるような性質を有するものであれば、そのまま着色剤として使用できる。顔料は2酸化チタン等と混合して添着させることにより一層鮮明な着色効果がえられる。」(第2頁左下欄第6行-第14行)

(相違点3)
浄水用濾材の使用形態として、浄水器は極めて一般的なものであり、引用発明の浄水用濾材を浄水器用とすることは当業者が適宜なしえたことである。

そして、本願発明が、引用刊行物1、2に記載された発明および周知技術からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。
よって、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明および周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-21 
結審通知日 2012-08-23 
審決日 2012-09-05 
出願番号 特願2001-213627(P2001-213627)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板谷 一弘齊藤 光子  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 川端 修
井上 茂夫
発明の名称 多孔質性無機酸化物を含む浄水器用濾材及びこれを用いた浄水器  

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