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審決分類 審判 査定不服 延長登録 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1265227
審判番号 不服2008-24211  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-22 
確定日 2012-11-13 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2005-700052「2?ヒドロキシメチル?5?(5?フルオロシトシン?1?イル)?1,3?オキサチオランの抗ウィルス活性および分割」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願については、特許権の存続期間の延長登録をすべきものとする。 特許番号 特許第2901160号 延長の期間 4年10月2日 特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容 平成18年12月27日付け手続補正書及び平成24年5月9日 付け手続補正書により補正された願書に記載のとおり 
理由 1.本件特許及び本件特許発明
特許第2901160号(以下、「本件特許」という。)は、平成4年2月20日を国際出願日とし(特願平4-507549号)、平成11年3月19日に特許権の設定登録がされたものであって、その特許発明は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたとおりのものである。

2.本件特許権存続期間の延長登録出願
本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、「本件出願」という。)は、平成17年6月23日に出願され、平成20年6月17日付けで拒絶査定がされ、同年9月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
本件出願は、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったとして、上記の期間の特許権存続期間の延長登録を求めるものである。

3.原査定の理由の概要
原査定の理由は、「延長を求める期間が本願に係る特許発明の実施をすることができなかった期間を超えているため、本願は特許法第67条の3第1項第3号に該当する。」というものである。
より具体的には、本件医薬品は、薬事法第23条において準用する同法第14条第1項の適用と医薬審第1015号の適用を受けてHIV感染治療薬の輸入承認申請をし、承認を受けたもの、すなわち、米国での臨床試験データに基づく品質、有効性及び安全性の事前評価を受け、その事前評価に基づき輸入承認申請をし、承認を受けたものであるところ、日本での事前評価の申請は米国での承認を待つことなく可能であるため、米国での承認申請から承認までの手続は、日本での事前評価の申請から承認までの審査等の手続とは一体不可分であるとはいえないから、米国の承認申請日から米国での承認日までの期間については、処分を受けるために必要不可欠であったと認めることができない、というものである。

4.当審の判断
審判請求人が提出した資料には以下の内容が記載されている。

(a)「『エムトリバ』『トリバダ』の照会事項・指示事項」(平成17年1月5日に医薬品医療機器総合機構から送信されたFAX;審判請求書に添付された参考資料5)の2枚目の「1.照会事項「エムトリバカプセル200mg」について」の「3)照会事項28回答(平成16年10月22日提出)に対して」の項には、「FDAのreview reportにおいて、本剤併用時にはAZTのC_(max)が66%上昇する(単回投与)と記載されているにもかかわらず、米国添付文書上に本件が記載されなかった理由について調査を行い、回答すること。また、米国添付文書のDrug Interactionsに記載することになっているが、記載するに至った経緯ならびにどのような記載が追記される予定であるかについて説明すること。」と記載されている。

(b)「『エムトリバ』の事前評価レポート(その1)」(平成17年1月11日、医薬品医療機器総合機構作成;審判請求書に添付された参考資料3)の13頁29行-14頁28行には、「1.医薬品医療機器総合機構における事前評価準備会での事前評価依頼者に対する指摘事項及びその評価結果」の「ヘ.吸収、分布、代謝、排泄に関する資料」の項の一部として、以下のとおり記載されている。
「・機構は、AZTの薬物動態パラメータは本剤併用により上昇することが示されているが、この点について注意喚起の必要がないか、事前評価依頼者に説明を求めたところ、事前評価依頼者は以下のとおり回答した。
AZTと本剤の併用時には、AZTのC_(max)及びAUC_(0-inf)はそれぞれ66%(…)、26%(…)上昇した(FTC-103試験)。しかしながら、本試験は例数が6例であるため、本剤がAZT薬物動態パラメータに及ぼす影響を十分に評価できていないと考える。
また、健康成人男女(27例)を用いたクロスオーバー試験(FTC-115試験)においては、本剤とAZTの薬物相互作用を検討した。・・・
以上の結果より、本剤とAZT併用時には、AZTのC_(max,ss) が17%上昇するが、この変化は個体間変動と同程度であり、臨床的な意義は大きくないと考えられた。また、AZTのグルクロン酸抱合体への代謝、AZT及びAZTのグルクロン酸抱合体の尿中排泄は本剤を併用しても影響を受けなかった。
従って、本剤とAZTを併用する場合にAZTの薬物動態パラメータの変動に対して注意喚起する必要はないと考える。
機構は、上記の回答に対し、以下の通り考える。
FTC-115試験結果においては、AZTのC_(max,ss)の変動幅は17%と小さかったものの、FTC-103試験においては、66%となっている。事前評価依頼者は、FTC-103試験の成績は症例数が少なかったことから、本剤がAZT薬物動態パラメータに及ぼす影響を十分に評価できていないと考えているが、本試験結果は、個体によっては、C_(max)及びAUC_(0-inf)高値に伴う高度暴露を受ける可能性を示唆している。AZTには骨髄抑制などの重大な副作用があることから、高度暴露を受けた症例の共通因子を検討するなど、更なる検討が必要である。」

(c)「『エムトリバ』の審査報告(1)」(平成17年2月8日、医薬品医療機器総合機構作成;審判請求書に添付された参考資料4)の29-30頁には、「本剤とAZTとの薬物相互作用の添付文書への記載について」の項として以下のように記載されている。
「FDAのreview reportにおいて、本剤併用時にはAZTのC_(max)が66%上昇する(単回投与)と記載されているにもかかわらず、米国添付文書上に本件が記載されなかった理由、及び、その後、記載するに至った経緯について、機構は申請者に尋ねた。
申請者は機構の照会を受け、本剤の米国開発元であるギリアド・サイエンシズ社に事実確認を行い以下のように回答した。
FDA Review Report では、FTC-103試験の成績からFTC200mgとAZT300mgを併用した場合にAZTのC_(max)が66%上昇したと記載されている。ところが、AZTのC_(max)の上昇は症例数(6例)が少ないなかで増強された可能性があるとFDAにより指摘されている。そこで、ギリアド・サイエンシズ社は、より症例数を増やしたFTC-115試験によりFTCとAZTの薬物相互作用について検討を行い、FTCとAZT併用時のAZTの血中濃度はFTC単剤を投与したFTC-103試験よりもかなり低かったことを確認している。しかし、FTC-115試験の試験成績は本剤承認後に得られたため、初版の添付文書にはFTC-103試験の成績を掲載しないことを提案してFDAより了承された。なお、上記の経緯についてはFDA Review Report中にも記載されている。
FTC-115試験では、健康成人27例を対象としてFTC200mg1日1回投与を7日間、AZT300mg1日2回投与を7日間単独投与あるいはFTCとAZTの併用投与した際のAZTのAUC_(tau)及びC_(max)を比較しているが、それぞれ13%及び17%上昇したものの臨床的な意義は大きくなかった。
ギリアド・サイエンシズ社はFTC-115試験のFTCとAZTの薬物相互作用データについて、次回の添付文書改訂時に「FTCとAZTの薬物相互作用について検討を行ったが、薬物相互作用は認められなかった」と追加記載することをFDAに提案し、現在審査が行われている段階であると回答した。
機構は、FTC-115試験でFTCとAZTの薬物相互作用が認められなかったものの症例数が27例であり決して多くはないが、FTCとAZTの薬物相互作用については十分な注意が必要であり、この旨を添付文書に記載するよう申請者に指示した。
申請者はこれを了承した。」

以上の記載から、米国のエムトリバの添付文書における薬物相互作用の記載をめぐって、米国での承認時において、FTC-103試験成績から、FTCとAZTの併用により、AZTの血中濃度が高くなるという薬物相互作用の問題が指摘されたが、症例数が少なかったことによる可能性が指摘されたため、より症例数を増やしたFTC-115試験を行ったところ、FTC-103試験よりもかなり低かったことが確認された(試験結果は、米国承認後に得られた)ので、ギリアド・サイエンシズ社は、米国のエムトリバの添付文書改訂時に「FTCとAZTの薬物相互作用についての検討を行ったが、薬物相互作用は認められなかった」と追加記載することをFDAに提案した、との経緯があったことが認められる。
そして、医薬品医療機器総合機構は、「『エムトリバ』の審査報告(1)」に、上記の経緯を記載すると共に、FTC-115試験でFTCとAZTの薬物相互作用については十分な注意が必要であり、この旨を添付文書に記載するよう申請者に指示し、事前評価申請者はこれを了承したことを記載している。

上記「『エムトリバ』の審査報告(1)」は、医薬品医療機器総合機構が作成した「事前評価レポート(1)」(上記参考資料3)をもとに、専門委員に意見を求め、その協議の概要を記したものであり、「『エムトリバ』の審査報告(1)」に記載されている事項は、本件医薬品の承認における審査の手続において実質的に検討がなされた事項であると認められる。
そうすると、本件医薬品の日本での承認審査は、上記薬物相互作用に関する上記の経緯を踏まえてなされたものと認められるところ、上記の薬物相互作用に関する試験は、少なくとも米国で承認された時点においても継続して行われていたことがうかがえるから、米国の承認申請日から米国での承認日までの期間については、処分を受けるために必要不可欠であったものと認める。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-11-01 
出願番号 特願2005-700052(P2005-700052)
審決分類 P 1 8・ 7- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清野 千秋佐久 敬  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 荒木 英則
星野 紹英
発明の名称 2?ヒドロキシメチル?5?(5?フルオロシトシン?1?イル)?1,3?オキサチオランの抗ウィルス活性および分割  
代理人 高島 一  

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