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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1265262 |
審判番号 | 不服2010-4526 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-01 |
確定日 | 2012-10-24 |
事件の表示 | 特願2001-143999「細胞特異的発現複製ベクター」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月26日出願公開、特開2002-335965〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本願は,平成13年5月14日を出願日とするものであって,その請求項2に係る発明は,平成21年3月13日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項2】 配列番号2に示される塩基配列又はその相補的配列からなることを特徴とするDNA。」(以下,「本願発明2」という。) 2. 引用例 原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願出願日前の2001年1月に頒布された刊行物である「血管, 2001年1月, Vol.24, No.1, p.15 B-2」(以下,「引用例2」という。)には,以下の記載がある。 (ア)「成体では平滑筋細胞特異的に発現しているヒトカルポニンおよびSM22α遺伝子をクローニングし,そのプロモーター領域を同定した。HSV-1の複製開始に必要な転写因子をコードするICP4遺伝子の上流にカルポニンまたはSM22α遺伝子プロモーターを連結し,さらにその上流に標識遺伝子としてLacZ遺伝子を連結したコンストラクトpTK△L-CN/SMI4を作製した。これを相同組換え法を用いてICP4欠損HSV-1変異体d120のチミジンキナーゼ(TK)locusに組み込んだ。」(本文第4?8行) 同じく原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された本願出願日前の1996年に頒布された刊行物であるJournal of Biochemistry, 1996, Vol.120, No.1, p.18-21(以下,「引用例3」という。)は,「ヒト平滑筋細胞カルポニン遺伝子の5’フランキング領域はメチル化DNA-結合転写リプレッサーと相互作用するシス作用ドメインを含む」という表題の学術論文であり,以下の記載がある。 (イ)「5’フランキング領域及びヒトSMCカルポニン遺伝子の全コード配列を含む13.7kbDNA断片が・・・配列決定された。」(第19頁左欄第7?14行) (ウ)「図1に示されたように,大動脈平滑筋組織由来RNAを用いたプライマー伸長アッセイにより,翻訳開始コドンであるATGの101塩基上流に位置する主要な転写開始部位が明らかにされ,この部位はこれ以降は,+1と命名される。」(第19頁右欄第2?6行) (エ)「シス作用配列のコンセンサスの探索により,+79,-67及び-804塩基に位置する3個のGCボックス/Sp1-結合サイト(略)が明らかとなり,・・・-842塩基に位置する一つのTPA-反応エレメント/AP1-結合サイト(略)が明らかとなった(図2a)。・・・5’フランキングの1221塩基の配列がDDBJ/GenBank^(TM)/EMBLデータベースのブラストサーチ(略)に使用された。サーチにより・・・以前に同定された,メチルCpG-結合タンパク質アフィニティカラム(略)に結合できるDNA配列が+154から-557塩基に存在することが明らかになった(図2のa及びb)。・・・しかしながら27個のCpGsのうち15個が遺伝子の5’領域のすぐの場所である+164から-152塩基に集中している。」(第19頁右欄第13?45行) (オ)「最近の研究でプロモーターメチル化による遺伝子の抑制は,転写因子の結合を直接阻害することで転写開始複合体の形成を阻害する,5’-メチルシトシンに結合するメチル化-CpG結合タンパク質により媒介されることを示唆した(略)。・・・ヒトSMCカルポニン遺伝子の5’フランキングプロモーター領域におけるメチルシトシン結合タンパク質と相互作用するシス作用ドメインの同定は,DNAのメチル化が,形態的に脱分化したSMCと同様,成人における余分な平滑筋組織のカルポニン遺伝子の発現抑制の可能性のあるメカニズムかもしれないことを示唆する。・・・ここで報告されたヒトSMCカルポニン遺伝子のクローン化された5’プロモーター領域は,それらの実験に有用な手段となるだろう。」(第19頁右欄第52行?第20頁左欄第21行) (カ)「図2 図2 ヒトSMCカルポニン遺伝子の5’-フランキング,5’-非翻訳,及びアミノ末端コード領域の配列解析 (a)公知の制御領域は囲んである。・・・メチル化CpG-結合タンパク質アフィニティカラムにより同定されたDNAセグメントは,波線で囲んである。 (b)(a)に記載されたゲノムDNAの領域をカバーするCpG及びGpCプロット。矢印は翻訳開始部位(ATG開始コドン)を示す。」(第20頁) 3. 対比 本願発明2は,選択肢として記載された,「配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とするDNA。」である態様のものを包含するものであり,以下,この選択肢の態様の本願発明2(以下,「本願発明2’」という。)と引用例2に記載された事項を比較する。 本願明細書の段落【0013】の「カルポニン遺伝子のプロモーターの-260から-219までの配列番号1に示される塩基配列を含む領域,好ましくは配列番号2に示される塩基配列からなるヒトカルポニン遺伝子プロモーター」との記載から,配列番号2はヒトカルポニン遺伝子プロモーターの領域であり,配列表の配列番号2には,41塩基配列からなる配列番号1を5’端に含む260塩基からなる配列が記載され,段落【0025】には「番号は,以後+1と表示されるATG翻訳開始コドンの上流に位置するDNA断片の5′末端を示している。」と記載されており,配列番号1は上記のとおり-260から-219までの配列であるから,配列番号2は,カルポニン遺伝子のプロモーターの-260から-1までの塩基配列である。 一方,引用例2記載事項(ア)より,引用例2には,ヒトカルポニンをクローニングし,そのプロモーター領域を同定したことが記載されており,そこで,本願発明2’と引用例2に記載された事項を比較すると,両者は,ヒトカルポニン遺伝子のプロモーターに関するものである点で共通し,両者は,該プロモーターについて,本願発明2’には,配列番号2に示される260塩基からなる塩基配列であることが記載されているのに対し,引用例2には,該プロモーターの具体的な塩基配列が記載されていない点で相違する。 4. 当審の判断 本願出願前,タンパク質の構造遺伝子の5’上流域に隣接する配列を解析し,プロモーター領域を単離,同定することは,既に周知の技術的課題であり,その際に,実際にプロモーターとして機能するのに必須の領域をデリーションを行い解析して同定することも既に周知の手法であった。 一方,引用例3には,その記載事項(カ)に記載されているように,ヒトカルポニンタンパク質の構造遺伝子の5’上流領域の-1057までの塩基配列が記載され,この5’フランキング領域の配列をもとにしてデリーション解析を行うことにより,ヒトカルポニンプロモーター領域を同定することは,当業者が容易になし得たことである。 しかも,引用例3の記載事項(オ)には,引用例3に記載された5’フランキング領域がプロモーター領域であることも記載されているから,該領域の中からプロモーター活性に必須の領域を同定することは容易であるといえ,本願配列番号2の配列は,引用例3の図2における-159から+101に相当し,配列も一致しているから,そのプロモーター領域を同定することに困難性は認められない。 そして,本願発明2’のDNAのプロモーターとしての効果について,配列番号2の260塩基長の部分としたことで,引用例2及び3の記載から,プロモーターとして当業者が予想できない優れた機能を有したものとはいえず,引用例3の記載事項(オ)から予想できる範囲の効果を奏するに過ぎない。 5. 審判請求人の主張について 請求人は平成21年3月13日付の意見書及び平成22年3月1日付の審判請求書において,引用文献3の20頁のFig.2には,ヒトSMCカルポニン遺伝子の5’- フランキング領域,5’- 非翻訳領域,及びアミノ末端タンパクコード領域の配列分析(-1057?+164)が示されているが,配列番号1(Fig.2;-159?-119),配列番号2(Fig.2;-159?+101),配列番号3(Fig.2;-159?+174)等に示される塩基配列からなるDNAは,引用文献3に示されておらず,また示唆する記載もなく,単離して用いるという示唆もないから,本願発明は文献1?3に記載された発明から容易に想到しうる発明ではないと主張している。 しかしながら,タンパク質のコード領域の5’上流域に隣接する配列を解析しプロモーター領域を同定することが周知技術であることは上記4の欄で述べたとおりであり,しかも,引用例3に記載されたヒトカルポニン遺伝子の5’フランキング配列はプロモーター活性をもつことも記載されているから,引用例2に記載されたプロモーターの塩基配列を同定する際に,引用例3に記載された配列からプロモーター活性に必須の領域をさらに限定し,260塩基配列からなる部分を同定することは,上記周知技術を適用して当業者が通常行い得たことに過ぎない。 さらに,引用例3の記載事項(エ)には,メチルCpG-結合タンパク質アフィニティカラムに結合できるDNA配列,つまりメチルCpG-結合タンパク質が結合するDNAが+154から-557塩基に存在すること,さらに27個のCpGsのうち15個が遺伝子の5’領域のすぐの場所である+164から-152塩基に集中していることが記載されているので,コード領域に隣接する5’領域付近がプロモーター活性を有する蓋然性が高いことはなおさら予想できることであるから,コード領域に隣接する5’領域付近をプロモーターとして単離する動機付けも存在する。 よって,請求人の主張は採用できない。 6. 結論 したがって,本願発明2’は,当業者が引用例2及び3の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであり,本願発明2は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7. むすび 以上のとおりであるから,本願請求項2に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-22 |
結審通知日 | 2012-08-27 |
審決日 | 2012-09-10 |
出願番号 | 特願2001-143999(P2001-143999) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福澤 洋光 |
特許庁審判長 |
鈴木 恵理子 |
特許庁審判官 |
六笠 紀子 中島 庸子 |
発明の名称 | 細胞特異的発現複製ベクター |
代理人 | 廣田 雅紀 |