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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1265291
審判番号 不服2011-16485  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-30 
確定日 2012-10-24 
事件の表示 特願2001-184164「超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 7日出願公開、特開2003- 589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年6月19日を出願日とする出願であって、平成23年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けにて手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、同年10月18日付けで審尋がなされ、回答書が同年12月20日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 被検者に超音波を送信し、該被検者からの反射エコー信号を受信する探触子と、
前記受信反射エコー信号を画像化処理して超音波画像を形成する画像化処理部と、
前記超音波画像を用いて各種計測処理し、その各種の計測結果、被検者情報及び超音波画像を表示する表示部と、を備えた超音波診断装置であって、
前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部と、
前記表示項目とその表示項目の位置、内容及び変換倍率に基づき診療科毎又は病名毎の個々の使用目的に応じた被検者レポート画面を生成し、該生成された被検者レポート画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。」
から
「【請求項1】 被検者に超音波を送信し、該被検者からの反射エコー信号を受信する探触子と、
前記反射エコー信号を画像化処理して超音波画像を形成する画像化処理部と、
前記超音波画像を用いて各種計測処理し、その各種の計測結果、被検者情報及び超音波画像を表示する表示部と、
複数の表示項目とその位置、内容及び変換倍率の予め設定した診療科又は病名別テンプレートとして記憶する記憶部と、 複数の診療科又は病名別テンプレートのうちから任意の診療科又は病名別テンプレートを選択するテンプレート選択部と、 任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部と、
前記画像化処理部と前記表示部と前記記憶部とテンプレート選択部と表示項目設定部とを制御するものであって、前記表示項目とその表示項目の位置、内容及び変換倍率に基づき診療科毎又は病名毎の個々の使用目的に応じた被検者レポート画面を生成し、該生成された被検者レポート画面に検索キーワードとして表示される前記コメントを前記表示部に表示させる制御部と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正は、補正前の請求項1に係る発明に補正前の請求項2に係る発明を組み込むにあたって、「複数の病名別テンプレートのうちから任意に選択するテンプレート選択部」を「複数の診療科又は病名別テンプレートのうちから任意の診療科又は病名別テンプレートを選択するテンプレート選択部」と、「病名別テンプレート」を付加して組み込んで、テンプレートを限定すると共に、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部」を「 任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部」と表示項目設定部が設定する項目に「任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、」を付加して、テンプレートを限定し、
「前記画像化処理部と前記表示部と前記記憶部とテンプレート選択部と表示項目設定部とを制御するものであって、」と制御手段の制御内容を限定し、「被検者レポート画面を前記表示部に表示させる制御部」を「被検者レポート画面に検索キーワードとして表示される前記コメントを前記表示部に表示させる制御部と」と被検者レポート画面を限定した補正を含むものである。
したがって、本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-173332号公報(以下「刊行物1」という。)には、「超音波診断装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 超音波の送受波により計測データを取得する送受波手段と、前記計測データに基づいて、各検査項目に対応する検査値を求める検査値演算手段と、
全検査項目から選択された複数の検査項目を含む検査リポートの書式を設定する書式編集手段と、
前記設定された検査リポートの書式が登録された書式登録手段と、
前記書式登録手段に登録された書式で、各検査項目とその検査値とが記述された検査リポートを作成するリポート作成手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 請求項1記載の装置において、
前記書式登録手段には複数の書式を登録でき、
前記複数の書式の中からいずれかの書式を選択できることを特徴とする超音波診断装置。
・・・」

(1-イ) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、超音波の送受波により、超音波画像の形成や各種の計測値・演算値の算出を行う超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、超音波診断装置はより高機能化されており、Bモード画像やドプラ画像などの表示機能の他に、各種の演算機能を備えている。すなわち、超音波診断装置においては、超音波画像情報のような定性的情報に加えて、ユーザーの希望により、客観的な数値としての定量的情報も得ることができる。かかる定量的な情報としては、血流速度などの計測値(1次情報)やその計測値を利用して演算される血流量などの演算値(2次情報)などが挙げられる。超音波診断装置にもよるが、これらの計測値や演算値(以下、検査値)の項目(以下、検査項目)は、循環器科、消化器科、産科などといった各科目ごとに数十から百数十も具備されており、操作者は必要な検査項目を選択して画像表示や印字出力などを行わせている。【0003】超音波診断は医師や超音波検査技師により行われる。集団検診(ルーチン検査を含む)などにおいて、超音波検査技師が行った超音波診断結果は、検査リスト(検査レポート)にまとめられ、医師に提出される。なお、医師が直接的に超音波診断を行った場合にも、そのような検査リポートが必要に応じて作成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、そのような検査リポートは、各科目ごとに当然異なり、しかも各施設によってその書式は異なっている。すなわち、検査リポートを構成する検査項目の内容や個数は定型化されておらず、メーカーで指定したリポート書式に合致していない場合が多い。
【0005】このため、超音波検査技師などは超音波診断により得られた多数の検査値の中から所定の検査値を自らピックアップして、それを書き写しや切り張りなどによって1枚の書面にまとめ医師に提出するしかなかった。それゆえ、その書面化作業(リポート作成作業)はきわめて効率が悪く、特に集団検診では患者一人に要する検査時間が長くなり、超音波検査技師などの負担が大きかった。
【0006】本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、超音波診断に係わる検査リポートの書式を自在に構成できるようにし、検査リポートの作成の際の労力を軽減することにある。」(第16頁16行?第18頁下から3行)

(1-ウ) 「【0007】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、超音波の送受波により計測データを取得する送受波手段と、前記計測データに基づいて、各検査項目に対応する検査値を求める検査値演算手段と、全検査項目から選択された複数の検査項目を含む検査リポートの書式を設定する書式編集手段と、前記設定された検査リポートの書式が登録された書式登録手段と、前記書式登録手段に登録された書式で、各検査項目とその検査値とが記述された検査リポートを作成するリポート作成手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】上記構成によれば、書式編集手段によってあらかじめリポートの書式が書式登録手段に登録され、超音波診断を行うと、リポート作成手段は、登録された書式で検査リポートを作成する。すなわち、リポート作成手段は、超音波診断結果の中から、その書式中に含まれる検査項目に対応する検査値をピックアップして、リポート内の各検査項目にその検査値を対応付けて記入することにより、検査リポートを作成する。よって、あらかじめ書式を登録しておけば超音波診断後に自動的にリポートを作成でき、人的な労力を削減できる。
【0009】本発明の好適な態様では、前記書式登録手段には複数の書式を登録でき、前記複数の書式の中からいずれかの書式を選択できる。すなわち、各科目ごとに書式を登録しておき、あるいは疾病内容ごとに書式を登録しておき、レポート作成時にいずれかの書式を選択して検査リポートを自動作成させるものである。この場合、計測に当たって超音波診断装置に何らかの形式で科目が入力されるような場合には、その科目入力に書式選択を連動させてもよい。 」

(1-エ) 「 【0011】【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその要部構成が示されている。
【0013】図1において、超音波探触子(図示せず)により超音波の送受波が行われ、これにより得られた受信信号が超音波画像形成部10に入力される。この超音波画像形成部10は、超音波画像を形成するものであり、具体的にはいわゆるBモード断層像やMモード画像あるいは二次元のドプラ画像などを形成するものである。この超音波画像形成部10から出力された超音波画像データは表示出力部12を介してモニタ14に送られ、このモニタ14に超音波画像が表示される。【0014】一方、受信データは検査値演算部16にも入力されている。この検査値演算部16は、血流速度などの計測値やその計測値を利用して算出される血流量などの演算値、すなわち各種の検査値を演算するものであり、例えば科目にもよるが、数十から数百の種類の検査値を演算する機能を有している。もちろん、その検査値の中には、ユーザーによるカーソルの指定によって算出された距離や面積などの演算値も含まれる。この検査値演算部16から出力された各検査値データは表示出力部12を介してモニタ14に送られ、超音波画像と共にそれらの検査値が画像表示される。もちろん、画像表示される検査値の項目はユーザーにより指定可能であり、この実施形態では、後述するリポート作成部により、表示すべき検査項目が指定されている。計測制御部18は、超音波の送受波制御や超音波画像形成部10及び検査値演算部16の制御などを行うものである。
【0015】リポート作成部20は、操作者が設定した所定のリポート書式で超音波診断結果である検査リポートを作成するものであり、作成された検査リポートはリポート出力部22を介してプリンタ24に送られ、そのプリンタ24にて検査リポートが書面として出力される。」

(1-オ) 「【0016】リポート作成部20はその検査リポートの作成にあたって、メモリなどで構成された書式登録部26に登録されたリポート様式にしたがってその検査リポートの作成を行っている。書式編集部28は、その書式登録部26に登録するリポート書式を編集・設定するものである。その書式の編集は入力装置30を利用して行われる。なおこの入力装置30は、例えばキーボードやトラックボールなどで構成されるものである。」

(1-カ) 「 【0019】図2には、検査リポートのデフォルト書式が示されている。この図2に例示する書式は、書誌的情報表示エリア100、検査値表示エリア102、コメント表示エリア104で構成される。ここで、検査値表示エリア102はこの図2に示される段階ではセットアップエリアとして空白となっており、以下に説明するように任意の配列で各検査項目などを記入することができる。なお106は、操作メニューである。
・・・
【0023】なお、図2に示した書誌的情報表示エリア100には、例えば超音波診断が行われた日、患者のID番号などのほか、超音波診断装置の設定条件などが記入される。コメント表示エリア104には、例えば入力装置30を利用して入力されたコメント文が記入される。図5及び図6に示した“@@.@”は計測後の結果(数値)が示されるパターンを示している。このパターンを考慮してレイアウトを決定することにより、検査項目表示と計測結果表示とが重なる不具合を防止できるこのように編集されたリポート書式は、上述したように、書式編集部28の作用により書式登録部26に登録され、超音波診断にあたって、その書式登録部26に登録されたリポート書式がリポート作成部20により参照され、当該書式で検査リポートが作成されることになる。もちろん、この場合にはリポート作成部20は登録された書式内の検査項目を自動認識して、各検査項目に対応する検査値を検査値演算部16の出力から抽出し、検査リポートの作成を行う。必要であれば、入力装置30を介して操作者のコメント文が入力され、リポート作成部20はそのコメントをリポート内に記入する。」

(1-キ) 「【0025】図6に示した検査リポートでは定量的な検査値のみが記入されていたが、もちろんこれらの検査値に合わせて超音波画像データを挿入することも可能である。このような構成によれば、プリンタ24において検査リポートを出力する際に、その検査リポート内に超音波画像を含めることができ、従来において行われていたモニタ14に対する写真撮影などの操作が不要となる。」

上記(1-ア)?(1-キ)の記載と図1?6を参照すると、上記刊行物1には、 次の発明が記載されていると認められる。
「超音波探触子により超音波の送受波が行われ、これにより得られた受信信号が入力され超音波画像を形成する超音波画像形成部10に入力されている受信データを用いて血流速度などの計測値やその計測値を利用して算出される血流量などの演算値、すなわち各種の検査値を演算する検査値演算部16と、
各検査値データは表示出力部12を介して送られ、超音波画像と共にそれらの検査値が画像表示されるモニタ14と、
各科目ごとに書式を登録しておき、あるいは疾病内容ごとに書式を登録しておき、レポート作成時にいずれかの書式を選択して検査リポートを自動作成させるものであり
書誌的情報表示エリア100、検査値表示エリア102、コメント文が記入されるコメント表示エリア104、超音波画像データで構成される書式 を編集・設定する書式登録部26と、
前記書式登録手段に登録された書式で、各検査項目とその検査値とが記述された検査リポートを作成するリポート作成手段と、
を含む超音波診断装置。」(以下、「引用発明」という。)

3 対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「超音波探触子」、「超音波画像形成部10」、「モニタ14」、および「超音波診断装置」が、補正発明の「探触子」、「画像化処理部」、「表示部」、および「超音波診断装置」に相当することは、その構造・機能からみて明らかである。

イ 補正発明の「各種計測処理」は、コンピュータ内での処理であるから演算である。そして、引用発明の「検査値演算部16」は、「各種の検査値を演算する」のであるから、補正発明の「各種計測処理」に相当することになる。

ウ 引用発明の「書式」は「各科目ごとに」、「あるいは疾病内容ごとに書式を登録しておき、レポート作成時にいずれかの書式を選択」して用いるのであるから、引用発明の「書式」が補正発明の「テンプレート」に対応することは明らかである。そして、引用発明は「書式を登録しておき、」「書式を選択」するのであるから、その書式を登録するための「記憶部」と選択するための「テンプレート選択部」を有することは明らかである。また、引用発明の「書式登録部26」は「書式 を編集・設定する」のであるから補正発明の「表示項目設定部」を有することは明らかである。
そうすると、引用発明の「各科目ごとに書式を登録しておき、あるいは疾病内容ごとに書式を登録しておき、レポート作成時にいずれかの書式を選択して検査リポートを自動作成させるものであり、
書誌的情報表示エリア100、検査値表示エリア102、コメント表示エリア104超音波画像データで構成される書式 を編集・設定する書式登録部26」「を含む超音波診断装置」と補正発明の「複数の表示項目とその位置、内容及び変換倍率の予め設定した診療科又は病名別テンプレートとして記憶する記憶部と、
複数の診療科又は病名別テンプレートのうちから任意の診療科又は病名別テンプレートを選択するテンプレート選択部と、
任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部」「を備えた」「超音波診断装置」とは
「複数の表示項目とその位置、内容及び変換倍率の予め設定した診療科又は病名別テンプレートとして記憶する記憶部と、
複数の診療科又は病名別テンプレートのうちから任意の診療科又は病名別テンプレートを選択するテンプレート選択部と、
任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部」「を備えた」「超音波診断装置」の点で共通する。

エ 引用発明は「超音波診断装置」であるから「制御手段」を有することは明らかであり、引用発明は「前記書式登録手段に登録された書式で、各検査項目とその検査値とが記述された検査リポートを作成するリポート作成手段」を備えるものであり、「レポート作成時にいずれかの書式を選択して検査リポートを自動作成させるものであ」るから、引用発明の制御手段がこれらの機能も制御することは明らかである。

オ 引用発明の「書式 」の「コメント文」と補正発明の「被検者レポート画面に検索キーワードとして表示される前記コメント」とは「被検者レポート画面に表示される前記コメント」の点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「被検者に超音波を送信し、該被検者からの反射エコー信号を受信する探触子と、
前記反射エコー信号を画像化処理して超音波画像を形成する画像化処理部と、
前記超音波画像を用いて各種計測処理し、その各種の計測結果、被検者情報及び超音波画像を表示する表示部と、
複数の表示項目とその位置、内容及び変換倍率の予め設定した診療科又は病名別テンプレートとして記憶する記憶部と、
複数の診療科又は病名別テンプレートのうちから任意の診療科又は病名別テンプレートを選択するテンプレート選択部と、
任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部と、
前記画像化処理部と前記表示部と前記記憶部とテンプレート選択部と表示項目設定部とを制御するものであって、前記表示項目とその表示項目の位置、内容及び変換倍率に基づき診療科毎又は病名毎の個々の使用目的に応じた被検者レポート画面を生成し、該生成された被検者レポート画面に表示される前記コメントを前記表示部に表示させる制御部と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。」である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
テンプレートの設定項目について、補正発明では、「表示項目の変換倍率」を有するのに対して、引用発明では、変換倍率について特に特定していない点。

(相違点2)
「被検者レポート画面に表示される」「コメント」について、補正発明では、「検索キーワードとして表示される」のに対して、引用発明では、特に特定していない点。

(1)相違点1についての検討
書誌的情報表示エリア100、検査値表示エリア102、コメント文が記入されるコメント表示エリア104、超音波画像データで構成される書式 の編集・設定において見栄え等を考慮して大きさを変えることは慣用技術であるから、引用発明の書式に「表示項目の変換倍率」を明示することは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。

(2)相違点2についての検討
「検索キーワードとして表示される」「コメント」とは、コメントを検索キーワードとして用いるということである。
本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-353327号公報には「【特許請求の範囲】【請求項1】 医用画像と前記医用画像にアノテーション機能で記述されたコメントとを関連付けて格納するメモリと、前記メモリから、前記コメントをキーとして医用画像を検索する検索手段と、検索された医用画像を前記コメントとともに表示する表示手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。」と記載されており、本願出願前に頒布された刊行物である特許第2769005号公報には「【特許請求の範囲】(1)・・・該X線撮影条件の中から所望するものを選択する際の指標となるコメントを記憶するメモリ装置と、前記各メモリ装置に格納された前記各X線撮影条件および上記コメントを表示する表示装置と、を具備するX線制御装置において、・・・前記X線撮影条件を表示する画面の一領域に、前記各コメントにおいて予め設定したキーワードを表示する挿入表示手段と、を具備することを特徴とするX線制御装置。」と記載されているように「検索キーワードとして表示される」「コメント」は周知である。
してみると、引用発明において、周知の技術的事項を適用して、相違点2に記載の補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

(3)そして、補正発明の作用効果は、引用発明、および周知の技術的事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(4)したがって、補正発明は、引用発明、および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成23年4月1日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】 被検者に超音波を送信し、該被検者からの反射エコー信号を受信する探触子と、
前記受信反射エコー信号を画像化処理して超音波画像を形成する画像化処理部と、
前記超音波画像を用いて各種計測処理し、その各種の計測結果、被検者情報及び超音波画像を表示する表示部と、を備えた超音波診断装置であって、
前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部と、
前記表示項目とその表示項目の位置、内容及び変換倍率に基づき診療科毎又は病名毎の個々の使用目的に応じた被検者レポート画面を生成し、該生成された被検者レポート画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1およびその記載事項は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の「被検者レポート画面に検索キーワードとして表示される前記コメントを前記表示部に表示させる制御部」を「被検者レポート画面を前記表示部に表示させる制御部」として被検者レポート画面の限定を省き、
補正発明の「任意の診療科又は病名別テンプレートに含まれるコメント欄のコメント、前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部」を「前記被検者情報、計測結果及び超音波画像の識別IDの中のうちから被検者レポート画面に表示する表示項目を選択し、前記表示項目の位置、内容及び変換倍率を設定する表示項目設定部」としてテンプレートの限定を省き、
本願発明は、補正発明の「複数の診療科又は病名別テンプレートのうちから任意の診療科又は病名別テンプレートを選択するテンプレート選択部」を「複数の病名別テンプレートのうちから任意に選択するテンプレート選択部」としてテンプレートの限定を省く共に、請求項1?2に分解して再構成したものの請求項1に相当する
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明が、上記「第2 3」において検討したとおり、引用発明、および周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-09 
結審通知日 2012-08-20 
審決日 2012-09-11 
出願番号 特願2001-184164(P2001-184164)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
後藤 時男
発明の名称 超音波診断装置  

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