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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09G
管理番号 1265366
審判番号 不服2009-10161  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-22 
確定日 2012-10-29 
事件の表示 特願2000-567641「研摩および/または掻き取りされ得る表面のための組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月9日国際公開、WO00/12641、平成15年10月7日国内公表、特表2003-529619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1999年9月1日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 1998年9月1日 イギリス(GB)〕を国際出願日とする出願であって、平成21年2月19日付けの拒絶査定に対し、平成21年5月22日付けで審判請求がなされ、平成23年11月15日付けの審尋に対し、指定期間内に回答書の提出がなされなかったものである。

そして、本願の請求項1?17に係る発明は、平成18年8月29日付け及び平成19年12月27日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「基材上に存在する研磨可能な又は引掻可能な材料の層に適用する仕上げ用組成物であって、該層と実質上同じ屈折率を有しかつ該層上に堆積される非揮発性成分、及び当該層には無害である揮発性キャリヤー、を含む、組成物。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「この出願については、平成19年6月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-2によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、
平成19年6月27日付けの拒絶理由通知においては、その「理由1」として「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が示されるとともに、その「下記の刊行物」として「特開平08-311410号公報」が「引用文献1」として引用されている。

3.理由1について
(1)引用文献1の記載事項
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「引用文献1」には、次の記載がある。

摘記1a:請求項1?2及び7
「【請求項1】 透明被膜形成基剤と屈折率調整剤とを含有することを特徴とする塗装面処理剤。
【請求項2】 前記透明被膜形成基剤が、ワックス、シリコーンオイル、石油系溶剤、および界面活性剤を含有してなる前記請求項1に記載の塗装面処理剤。…
【請求項7】 前記請求項1?6のいずれかに記載の塗装面処理剤を塗装面に塗布することを特徴とする塗装面傷隠蔽方法。」

摘記1b:段落0007?0008
「この発明の目的は、艶出し性、撥水性、作業性、汚れ付着防止性および傷隠蔽性に優れた塗装面処理剤および塗装面傷隠蔽方法を提供することにある。…従来のエマルジョンタイプワックスまたはオイルベースタイプワックスに、屈折率調整剤を含有させて得られる塗装面処理剤は、塗装面に透明な被膜を形成し、しかも塗装面に生じたヘヤーライン傷を効果的に見えにくくすることができ、しかも撥水性等も向上させることのできることを見出し、この発明を完成した。」

摘記1c:段落0012及び0014
「屈折率調整剤と透明被膜形成基剤とが相俟って、この塗装面処理剤を塗布することにより形成された被膜により、塗装面に形成されている細かな線状痕が隠蔽される。…被膜の屈折率は、屈折率調整剤の種類にもよるので一概に規定することができないのであるが、概ね、少なくとも1.4である。」

摘記1d:段落0050?0051
「〈艶出し性〉濃色系の塗装面(黒色および赤色塗装)を有する自動車を用いて艶出し性を評価した。通常の方法により洗車した後、ワックス用スポンジで前記塗装面に試料組成物を塗布した。布でふき取った後の光沢の濃淡を以下の基準で目視により評価した。…◎:深みのある濃い光沢である.」

摘記1e:段落0059?0060
「〈傷隠蔽性〉白色塗装の自動車の表面を従来より公知のコンパウンド型の自動車ワックスで艶出し処理した。その処理の後には、塗装表面にヘヤライン状の傷が形成された。この傷有り塗装面に、表1?4に示した組成および配合量を有する試料組成物を塗布し、乾燥後に布で拭き取った。そして目視により以下の基準に従って傷隠蔽性を評価した。…◎:ヘヤライン状の傷が殆ど目立たない.」

摘記1f:段落0060
「 実施例4 …
カルナバワックス … 5.0 …
カルボキシ変性シリコーン … 5.0 …
ジプロピレングリコール … 10.0 …
ポリオキシエチレンアルキルエーテル … 1.0 …
シリカ微粉体 … 5.0 …
イソパラフィン系溶剤 … 12.0 …
灯油 … 13.0 …
水 … 残 」

摘記1g:段落0065
「 艶出し性 撥水性 作業性 汚れ付着防止性 傷隠蔽性 …
実施例4 ◎ ○ ○ ◎ ◎ 」

摘記1h:段落0070?0071
「この発明によると、塗装面に色むら等を発生させずに擦り傷やみがき傷等の傷を目立たなくすることができ、さらに優れた艶出し効果をも有する塗装面処理剤および塗装面傷隠蔽方法を提供することができる。…この発明によると、艶出し性、撥水性、作業性、汚れ付着防止性および傷隠蔽性に優れた塗装面処理剤および塗装面傷隠蔽方法を提供することができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
摘記1eの「白色塗装の自動車の表面を従来より公知のコンパウンド型の自動車ワックスで艶出し処理した。その処理の後には、塗装表面にヘヤライン状の傷が形成された。この傷有り塗装面に、表1?4に示した組成および配合量を有する試料組成物を塗布し、乾燥後に布で拭き取った。そして目視により以下の基準に従って傷隠蔽性を評価した。…◎:ヘヤライン状の傷が殆ど目立たない.」との記載、摘記1f及び1gの「実施例4」についての記載、並びに摘記1hの「この発明によると、艶出し性、撥水性、作業性、汚れ付着防止性および傷隠蔽性に優れた塗装面処理剤および塗装面傷隠蔽方法を提供することができる。」との記載からみて、引用文献1には、
『白色塗装の自動車の表面を従来より公知のコンパウンド型の自動車ワックスで艶出し処理した傷有り塗装面に適用する艶出し性や傷隠蔽性に優れた塗装面処理剤であって、カルナバワックス5.0重量%、カルボキシ変性シリコーン5.0重量%、ジプロピレングリコール10.0重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.0重量%、シリカ微粉体5.0重量%、イソパラフィン系溶剤12.0重量%及び灯油13.0重量%、並びに水49.0重量%(残部)からなる塗装面処理剤。』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「白色塗装の自動車の表面」、「従来より公知のコンパウンド型の自動車ワックスで艶出し処理した傷有り塗装面」及び「艶出し性や傷隠蔽性に優れた塗装面処理剤」は、本願発明の「基材」、「研磨可能な又は引掻可能な材料の層」及び「仕上げ用組成」に相当し、
引用発明の「カルナバワックス5.0重量%、カルボキシ変性シリコーン5.0重量%、ジプロピレングリコール10.0重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.0重量%、シリカ微粉体5.0重量%」は、本願発明の「該層上に堆積される非揮発性成分」に相当し、
引用発明の「イソパラフィン系溶剤12.0重量%及び灯油13.0重量%、並びに水49.0重量%(残部)」は、本願発明の「当該層には無害である揮発性キャリヤー」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明は、『基材上に存在する研磨可能な又は引掻可能な材料の層に適用する仕上げ用組成物であって、該層上に堆積される非揮発性成分、及び当該層には無害である揮発性キャリヤー、を含む、組成物。』に関するものである点において一致し、
その「基材上に存在する研磨可能な又は引掻可能な材料の層」と「該層上に堆積される非揮発性成分」が、本願発明においては「実質上同じ屈折率を有」するものとされているのに対して、引用発明においては該「層」と「非揮発性成分」の屈折率の関係が特定されていない点においてのみ一応相違している。

(4)判断
上記相違点について検討するに、本願発明の「実質上同じ」という発明特定事項については、平成23年11月15日付けの審尋の(う)に対する回答が無く、その意味するところが必ずしも明確ではないが、
摘記1gの「実施例4」についての結果は、傷隠蔽性の評価が「◎ヘヤライン上の傷が殆ど目立たない」であり(摘記1e)、艶出し性の評価が「◎:深みのある濃い光沢である」であるから(摘記1d)、
引用発明は、本願明細書の段落0003の「研摩や掻き取りの痕跡を不明瞭にして光沢度の高い仕上がり…の利点を提供するための研摩組成物を配合することができる」との記載にある利点と同一又は類似の効果を有しているものと認められる。
してみると、原査定の備考欄の『(2)本願における「該層と実質上同じ屈折率を有し」という限定要件は、機能的・作用的な記載にすぎないから、引用文献1記載の非揮発性成分と本願発明の非揮発性成分は、物としての区別がつかない。』との指摘のとおり、両者に実質的な差異は認められない。
また、引用発明の「自動車ワックスで艶出し処理した傷有り塗装面」と、当該塗装面に適用する「艶出し性や傷隠蔽性に優れた塗装面処理剤」については、各々ともに「ワックス」という共通の材質から主としてなっていることから、各々の「屈折率」は「実質上同じ」であると解するのが合理的であり、両者に実質的な差異は認められない。
したがって、本願発明は、原査定の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.むすび
以上総括するに、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-05 
結審通知日 2012-06-06 
審決日 2012-06-19 
出願番号 特願2000-567641(P2000-567641)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
小石 真弓
発明の名称 研摩および/または掻き取りされ得る表面のための組成物  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 松田 豊治  
代理人 社本 一夫  

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