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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1265390
審判番号 不服2011-11984  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-06 
確定日 2012-11-02 
事件の表示 特願2004-301107「紙容器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月27日出願公開、特開2006-111314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月15日の出願であって、平成23年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成24年6月4日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年7月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「板紙を基材として最内層にポリエチレン樹脂を積層した積層体を使用し、4枚の側パネルからなる4角柱状の胴部の上辺に折れ線を介して連設した対向する屋根部折り込み側パネルをそれぞれ斜め折れ線により内方に折り込み、残りの対向する屋根パネルを内側に折り曲げて切妻形の屋根部を形成し、前記屋根パネルの上辺に連設したリブにより前記屋根部折り込み側パネルの上辺に連設した折り込みリブを挟むように重ね合わせた重合部をヒートシールして成形した紙容器において、
該紙容器を作製する工程で、カートンブランクの状態において、前記紙容器の前記重合部の最内層の前記ポリエチレン樹脂からなる面の、開口側の前記折り込みリブの内面の一部又は該折り込みリブと対向する前記リブのそれぞれの内面の一部、あるいは、開口側の前記折り込みリブの内面の一部及び該折り込みリブと対向する前記リブのそれぞれの内面の一部に、部分的に電子線を照射して電子線照射パターンを形成し、前記折り込みリブと前記折り込みリブに対向する前記リブをヒートシール後に剥離が可能な部分とし、前記紙容器の屋根部の開口を容易にしたことを特徴とする紙容器。」

第3 引用文献
1.当審の拒絶の理由に引用された実願昭58-189745号(実開昭60-96212号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。)

「本考案は、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂で内外表面がラミネートされた板紙を折曲げて成り、かつ剥離により注出口を形成し得るような頂部フラップを熱接着して成る切妻型の頂部を有する密封容器に関し、特に注出口の形成部分に特徴のあるものである。
従来、この種の容器としては第1図に示すようなものが牛乳、ジュース等用として知られている。これは側部(1)、底部(2)、天部(3)及び封止部(4)から成り、第2図に示される構造のブランクス(B)をその折線(l)に沿って折曲げ、糊代(9)を側壁(8)内側端に接着して四角筒を形成し、底壁(10)(11)(12)(13)を同様に折線(l)を介して折曲げて底部(2)を形成した後、天壁(14)(15)(16)(17)を同様に折線(l)を介して折曲げて天部(3)を形成し、最後に封止片(18)(19)(20)(21)を接着して密封することにより得られる。この際、封止片(18)の右半分は封止片(19)の左半分と、封止片(19)の右半分は封止片(20)の左半分と、封止片(21)の右半分は封止片(18)の左半分と、それぞれ接着されるが、封止片(18)と(20)は、封止片(19)(21)よりも高く形成されており、その高い長さの部分において封止片(18)と(20)は直接接着される。この場合の接着はポリエチレン等の樹脂の熱融着性を利用して、直接熱圧着により行なわれる。
このようにして得られた容器は第3図に示すように内側に折込まれた天壁(15)及び封止片(19)が露出するように、天壁(15)を左右に押し拡げて封止片(18)(19)(20)の接着個所を剥がし、更に封止片(19)を手前に引いて封止片(18)及び(20)との接着個所を剥がして、第4図に示すように内容物流出するための注出口(S)を形成する。
叙上の点から明らかなように、この種の液体用の密封容器の封止片(18)(19)(20)で形成される注出口の接着部については、一見矛盾する二つの特性が要求される。その一つは接着強度であり、他は剥離性である。すなわち、内容物を充填した容器は、輸送時あるいは保管時の取扱い上、ある程度の衝撃を受ける可能性があるが、接着部分はこのような衝撃に耐えて密封性を保つものでなければならない。
一方、注出口を形成する封止片(18)(19)(20)の接着部分は、適当な剥離性を有していなければならず、ポリエチレンをラミネートした板紙を直接熱接着すると、ポリエチレン同士が熱融着するため、接着性が極めて強いので力の弱い婦人、子供、老人等は封止片(18)(19)(20)の接着部分を容易に剥離することができず、注出口を設けにくいという問題点がある。」(明細書1頁11行?3頁下から2行)

「このような接着部分の接着強度が大きすぎることによる問題点を解決するために、従来のこの種の容器においては注出口を形成する封止片(19)と、これに隣接する封止片(18)および(20)の互いに当接する部分の三個所に、(a)(b)(c)のように抗接着剤を塗布することが行なわれている。しかし、この場合には、抗接着剤が上記三個所に全体に殆ど隙間なく塗布されているため、開封性は良好となるが、逆に酒、醤油、酢等の保存期間が比較的長く、高い密封性を要求される内容物の場合には、その開封のし易さが却って欠点となり、輸送、保管等の取扱い中に不慮に封が開いてしまい、内容物の洩れ等の危険性がある。したがって、開封性を損なわない程度に、板紙にラミネートされた熱可塑性樹脂同士の融着面を封止片に残しておく必要がある。つまり、封止片上の熱可塑性樹脂の露出面積とその位置が問題となる。」(明細書4頁7行?5頁3行)

第1図に従来の容器の斜視図、第2図に従来の容器の内側から見た展開平面図、第3図及び第4図に従来の容器の使用状態を示す図が記載されている。そして、第1図及び第2図より、4枚の側壁(5)(6)(7)(8)から側部(1)が形成されることが見て取れる。

これらの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ポリエチレンで内外表面がラミネートされた板紙を使用し、4枚の側壁(5)(6)(7)(8)からなる四角筒状の側部(1)の上片に折線(l)を介して連設した天壁(14)(15)(16)(17)を折曲げて天部(3)を形成し、前記天壁(14)(15)(16)(17)の上辺に連設した封止片(18)(19)(20)(21)を熱圧着して成形した紙容器において、
注出口を形成する封止片(19)と、これに隣接する封止片(18)および(20)の互いに当接する部分の三個所に、(a)(b)(c)のように部分的に抗接着剤を塗布し、開封性を良好とした紙容器。」

2.当審の拒絶の理由に引用された特開昭58-203859号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「(2)熱可塑性合成樹脂層同士を熱接着することにより形成される封緘部を有する密封包装体を得る方法において、前記封緘部の形成に直接関わる熱可塑性合成樹脂層の少なくとも一方をポリエチレン鎖を有する熱可塑性合成樹脂で形成した後、該層に電離放射線の照射を施し、次いで熱可塑性合成樹脂層同士を熱接着することを特徴とする易開封性の密封包装体の製造方法。」(1頁左下欄13行?右下欄3行)

「ポリエチレン鎖を有する熱可塑性合成樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、リニア-低密度ポリエチレン等のポリエチレン・・・(中略)・・・等、電子線の照射により架橋構造が導入される性質を具備するポリエチレン鎖を有する熱可塑性合成樹脂が利用できる。」(3頁左上欄15行?右上欄7行)

「前記封緘部の接着強度を、該封緘部の形成に直接関係するポリエチレン鎖を有する熱可塑性合成樹脂による合成樹脂層に照射する電離放射線の照射量を変えるだけでコントロールすることが出来る」(5頁左上欄10行?14行)

3.当審の拒絶の理由に引用された特開平4-255340号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】基材フィルムとポリエチレンフィルムを電子線硬化型接着剤を介して積層し、電子線照射して貼り合わせた後、ポリエチレン面同士を重ねてヒートシールすることを特徴とする包装袋の製造方法。」(1欄2行?5行)

「電子線は、電子線硬化型接着剤を硬化すると共に、この照射量によって得られる包装袋の剥離強度を制御するために使用するものである。」(2欄20行?23行)

「ポリエチレンフィルム同士のヒートシール面の剥離強度は、10KGyの時1.8kg/15mm幅、40KGyの時0.2kg/15mm幅であった。比較のため、電子線を照射しないポリエチレンフィルム単体同志のヒートシール強度を測定したところ、2.3kg/15mm幅であった。」(4欄9行?14行)

第4 対比
引用発明の「ポリエチレンで内外表面がラミネートされた板紙」は、本願発明の「板紙を基材として最内層にポリエチレン樹脂を積層した積層体」に相当し、以下同様に、「4枚の側壁(5)(6)(7)(8)」は「4枚の側パネル」に、「四角筒状の側部(1)」は「4角柱状の胴部」に、「折線(l)」は「折れ線」に、「天壁(15)(17)」は「屋根部折り込み側パネル」に、「天壁(14)(16)」は「屋根パネル」に、「天部(3)」は「切妻形の屋根部」に、「封止片(18)(20)」は 「リブ」に、「封止片(19)(21)」は「折り込みリブ」に、「熱圧着」は「ヒートシール」に、それぞれ、相当する。
引用発明の「天壁(14)(15)(16)(17)を折曲げて天部(3)を形成」することは、本願発明の「対向する屋根部折り込み側パネルをそれぞれ斜め折れ線により内方に折り込み、残りの対向する屋根パネルを内側に折り曲げて切妻形の屋根部を形成」することに相当する。
引用発明の「前記天壁(14)(15)(16)(17)の上辺に連設した封止片(18)(19)(20)(21)を熱圧着」することは、本願発明の「前記屋根パネルの上辺に連設したリブにより前記屋根部折り込み側パネルの上辺に連設した折り込みリブを挟むように重ね合わせた重合部をヒートシール」することに相当する。
引用発明の、符号(a)(b)(c)で示される「注出口を形成する封止片(19)と、これに隣接する封止片(18)および(20)の互いに当接する部分の三個所」は、引用発明において板紙の内表面がポリエチレンでラミネートされていることも考慮すれば、本願発明の、「前記紙容器の前記重合部の最内層の前記ポリエチレン樹脂からなる面の」「開口側の前記折り込みリブの内面の一部及び該折り込みリブと対向する前記リブのそれぞれの内面の一部」に相当する。
引用発明の「(a)(b)(c)のように部分的に抗接着剤を塗布」することと、本願発明の「部分的に電子線を照射して電子線照射パターンを形成」することとは、ヒートシール前に部分的にヒートシール強度を弱める処理を行う限度で共通する。
引用発明の「開封性を良好とした」は、本願発明の「前記折り込みリブと前記折り込みリブに対向する前記リブをヒートシール後に剥離が可能な部分とし、前記紙容器の屋根部の開口を容易にした」に相当する。

よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「板紙を基材として最内層にポリエチレン樹脂を積層した積層体を使用し、4枚の側パネルからなる4角柱状の胴部の上辺に折れ線を介して連設した対向する屋根部折り込み側パネルをそれぞれ斜め折れ線により内方に折り込み、残りの対向する屋根パネルを内側に折り曲げて切妻形の屋根部を形成し、前記屋根パネルの上辺に連設したリブにより前記屋根部折り込み側パネルの上辺に連設した折り込みリブを挟むように重ね合わせた重合部をヒートシールして成形した紙容器において、
前記ヒートシール前の前記紙容器の前記重合部の最内層の前記ポリエチレン樹脂からなる面の、開口側の前記折り込みリブの内面の一部又は該折り込みリブと対向する前記リブのそれぞれの内面の一部、あるいは、開口側の前記折り込みリブの内面の一部及び該折り込みリブと対向する前記リブのそれぞれの内面の一部に、部分的にヒートシール強度を弱める処理を行い、前記折り込みリブと前記折り込みリブに対向する前記リブをヒートシール後に剥離が可能な部分とし、前記紙容器の屋根部の開口を容易にした紙容器。」

[相違点]
部分的にヒートシール強度を弱める処理が、本願発明では、「紙容器を作製する工程で、カートンブランクの状態において」「部分的に電子線を照射して電子線照射パターンを形成」する処理であるのに対し、引用発明では、「紙容器を作製する工程で、カートンブランクの状態において」行うことの特定がなく、「(a)(b)(c)のように部分的に抗接着剤を塗布」する処理である点。

第5 判断
上記引用文献2、引用文献3の記載より、ポリエチレン層同士をヒートシールするにあたり、電子線を照射してからヒートシールすることにより、接着強度を弱めることが周知技術であったと認められる。
上記周知技術は、易開封性の包装体に関するものであるから、引用発明と共通の技術分野に属するものであり、また、引用発明において「抗接着剤を塗布」するのは、ポリエチレン層同士のヒートシール強度を弱めるためであるから、上記周知技術の「電子線を照射」することとは、目的ないし技術的な意義が共通する。
そして、引用発明において、製造工程の簡略化やコスト削減は、当業者が通常考慮すべき課題であるところ、引用発明の「抗接着剤を塗布」することに比べて、周知技術の「電子線を照射」することは、抗接着剤が不要であり、塗布・乾燥の手間が省ける等の利点を有することが明らかである。
してみれば、引用発明において、「抗接着剤を塗布」することに代えて、上記周知技術を採用し、「電子線を照射」することは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、引用発明は「(a)(b)(c)のように部分的に抗接着剤を塗布」するものであるから、電子線を照射することとした場合にも「(a)(b)(c)のように部分的に」照射することとして、「部分的に電子線を照射して電子線照射パターンを形成」することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、電子線の照射はヒートシールの前に行わなければ意味がないし、引用文献1には、カートンブランクの状態で抗接着剤を塗布した様子が図示され(第2図)、「封止片(118)の左半分にも抗接着剤を設けようとすると、糊代(109)の部分にも抗接着剤が印刷ずれにより塗工されてしまう可能性があり」(明細書6頁4行?7行)と記載されていることを考慮すれば、「紙容器を作製する工程で、カートンブランクの状態において」電子線を照射することも、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明において、「(a)(b)(c)のように部分的に抗接着剤を塗布」することに代えて、上記周知技術を採用し、「紙容器を作製する工程で、カートンブランクの状態において」「部分的に電子線を照射して電子線照射パターンを形成」すること、すなわち、相違点に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

請求人は、引用文献2、引用文献3は、電子線照射を全面に行うことを前提としている旨主張する。しかし、引用発明は、部分的に抗接着剤を塗布するものであるから、「抗接着剤を塗布」することに代えて「電子線を照射」する場合には、部分的に電子線を照射することとなる。そして、部分的に電子線を照射するには、マスキング等の周知の手段を採用して足りるから、引用発明に上記周知技術を採用できないとする理由は無い。

そして、本願発明の「容易に、清潔に注出口を開口させることができ、従来の抗ヒートシール剤方式に較べて、均一な加工を行うことでき、安定した開封が可能であり、液漏れの不安要因も防ぐことができる。」(本願明細書【0009】参照。)との効果も、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-28 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2004-301107(P2004-301107)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 一ノ瀬 薫
紀本 孝
発明の名称 紙容器  
代理人 金山 聡  

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