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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1265452
審判番号 不服2011-24228  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2012-11-01 
事件の表示 特願2001-245569「銀行券鑑査データ処理方法及び銀行券鑑査システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年2月28日出願公開、特開2003-58928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [理由]
1 手続の経緯
本願は平成13年8月13日の出願であって、平成23年7月19日付けで手続補正がなされた後、同年8月5日付けで拒絶査定がなされた。本件は、前記査定を不服として平成23年11月9日に請求された審判事件であって、請求と同時に手続補正がなされている。

2 本願発明
上記平成23年11月9日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、実質的に、上記平成23年7月19日付け手続補正により補正された請求項4、6に相当する発明を、それぞれ、請求項1、2に係る発明とし、請求項1ないし3及び5を削除するものと認められるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第1号に規定する、請求項の削除を目的とする適法な補正である。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「銀行券の鑑査結果を処理する銀行券鑑査データ処理方法において、
銀行券監査機は、
銀行券鑑査結果データ及びユニークデータを第1の暗号鍵で暗号化し、暗号化データとしてMACを生成する第1のステップと、
前記銀行券鑑査結果データ、ユニークデータ、及び暗号化データを出力する第2のステップと、
を備え、
客先サーバーは、
前記第2のステップにより出力された前記銀行券鑑査結果データ、ユニークデータ、及び暗号化データを受信する第3のステップと、
前記第3のステップにより受信された前記銀行券鑑査結果データ及びユニークデータを前記第1の暗号鍵と同一の第2の暗号鍵で暗号化し、新たに暗号化データを生成し、この新たに生成された暗号化データと前記第3のステップにより受信された暗号化データとを比較して、前記第2のステップにより出力された前記銀行券鑑査結果データが改ざんされることなく前記第3のステップにより正しく受信されたことを確認する第4のステップと、
を備え、
前記銀行券監査機は、外部に読み出せない前記第1の暗号鍵を記憶し、前記第1の暗号鍵で前記銀行券鑑査結果データ及び前記ユニークデータを暗号化し、
前記客先サーバーは、前記銀行券監査機が記憶する前記第1の暗号鍵とは別に記憶された外部に読み出せない前記第2の暗号鍵で前記銀行券鑑査結果データ及び前記ユニークデータを暗号化する銀行券鑑査データ処理方法。」

3 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-133854号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 送信側及び受信側の双方に共通する秘密情報を、送信側及び受信側の双方が予め共有する場合に、送信側に配置されるデータ送信装置に、
上記秘密情報及び送信データの値を変数として一方向性関数に代入し、送信データに固有の確認情報を算出する確認情報計算手段と、
上記送信データに、上記確認情報計算手段で算出された確認情報を付加し、伝送路へ送出するデータ送信手段とを備えたことを特徴とするデータ送信装置。
…(中略)…
【請求項10】 送信側及び受信側の双方に共通する秘密情報を、送信側及び受信側の双方が予め共有する場合に、受信側に配置されるデータ受信装置に、
上記秘密情報及び受信データの値を変数として一方向性関数に代入し、受信データに固有の確認情報を算出する確認情報計算手段と、
上記確認情報計算手段で算出された確認情報と、受信データに付加されている確認情報とを比較し、両者が一致する場合には受信データの正確性を確認し、両者が一致しない場合には受信データの正確性を否認する受信データ正確性確認手段と、
上記受信データ正確性確認手段が、受信データの正確性を否認した場合、再送要求を送信側に送信する再送要求手段とを備えたことを特徴とするデータ受信装置。
…(以下略)」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、データ送信装置、データ受信装置及びデータ伝送システムに関し、特に、伝送路に対する信頼性が低い場合、例えば、伝送路において伝送データに誤りが発生し得る場合や伝送路において第三者からの攻撃を受け得る場合に適用して好適なものである。
…(中略)…
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記方式の場合には、第三者による伝送路上での攻撃が考慮されていないため、データの正確性と再送要求の正当性が確認できず、次のような問題が生じるのを避け得なかった。
【0004】例えば、攻撃者がデータを改竄して受信側に送信する場合、受信側は、異なるデータ(意味不明なデータとなるかもしれない)を受信するが、それが真のデータであるか否かを確認できずデータの正確性に問題があった。また、攻撃者が絶えず送信側に再送要求を送信する場合、再送要求の正当性を確認できないままにデータの再送が繰り返される結果、伝送路の負担が大幅に大きくなるという問題があった。
【0005】本発明は以上の点を考慮してなされたもので、データの正確性と再送要求の正当性を確認できるARQ方式のデータ送信装置、データ受信装置及びデータ伝送システムを提案しようとするものである。」
ウ 「【0010】
【発明の実施の形態】
(A)各実施形態に共通する前提条件
以下説明する各実施形態においては、データ伝送の当事者である一対の通信者(データ送信側とデータ受信側)の双方が、何らかの手法により(手交、郵便、暗号伝送等により)、同一の秘密情報Kを事前に入手し保持しているものとする。また、同じく一対の通信者の双方が、やはり何らかの手法により(手交、郵便、暗号伝送等により)、同一の認証用の関数Fを事前に入手し保持しているものとする。
…(中略)…
【0012】(B)第1の実施形態
以下、本発明に係るデータ伝送システムの第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】(B-1)データ伝送システムの構成
図1に、第1の実施形態に係るデータ伝送システムの概略構成を示す。この第1の実施形態に係るデータ伝送システムの特徴は、データ送信装置(送信側)が、秘密情報Kに基づいて計算した確認情報を送信データに付加して送信するように構成されている点と、データ受信装置(受信側)が、秘密情報Kに基づいて受信データの正確性を確認し、不正確であると判断した場合には、伝送路エラー又は第三者による攻撃があったものと想定して、送信側にデータの再送を要求するように構成されている点である。
【0014】以下、データ送信装置及びデータ受信装置のそれぞれについて、その内部構成を説明する。
…(中略)…
【0025】(B-2)伝送動作
続いて、以上の構成を有するデータ送信装置及びデータ受信装置を備えるデータ伝送システムにおいて実行されるデータ伝送動作を、図2を用いて説明する。
(i)ステップ1
まず、データ送信装置(送信側)が、送信データM1と秘密情報Kを一方向性関数Fに代入し、確認情報F(M1,K)を計算する。そして、計算された確認情報F(M1,K)を送信データM1に付加し、伝送路を介してデータ受信装置(受信側)に送信する。
【0026】ここで、一方向性関数F(M1,K)としては、F(M1|K)、F(M1 AND K) 、F(M1 XOR K) などの形が考えられる。ただし、“|”は連結を意味する。
【0027】(ii)ステップ2
一方のデータ受信装置(受信側)は、伝送誤りの存在し得る伝送路を介してデータの受信を検知すると、送信データM1に対応する受信データM2と、確認情報F(M1,K)に対応する受信確認情報F2との部分に分離し、受信データM2については一方向性関数演算部12に、受信確認情報F2についてはデータ正確性確認部13に与える。
【0028】この後、データ受信装置(受信側)は、一方向性関数演算部12において受信データM2と秘密情報Kから受信データM2に固有の確認情報F(M2,K)を計算すると、これをデータ正確性確認部13に与え、受信された受信確認情報F2と比較する。そして、両者が一致すれば、正しいデータが受信されたものと判断し、一致しなければ、正しくないデータが受信されたと判断する。
【0029】ここでこの判断が可能なのは、第1に、受信データM2に伝送誤りが含まれるとしても、受信確認情報F2の値(ここで、確認情報F1に誤りがなければ、送信データM1(≠M2)に固有の確認情報F1そのもの、誤りがあればそれ以外の任意の値となる。)が、受信データM2に固有の確認情報F(M2,K)と偶然一致する可能性は極めて少ないためである。また、第2に、第三者による伝送路上でのデータの改竄があったとしても、第三者は秘密情報Kを知り得ないので、改竄後のデータ、すなわち受信データM2に固有の確認情報F(M2,K)を第三者が計算して求め、これを本来の確認情報F(M1,K)に置き替えることは不可能だからである。」
エ 「【0107】
【発明の効果】上述のように、送信側及び受信側の双方に共通する秘密情報を、送信側及び受信側の双方が予め共有する場合に、送信側に配置されるデータ送信装置についての発明によれば、当事者のみが知り得る秘密情報を用いて算出される、しかも、その算出には、算出結果から元の変数を逆算することが極めて困難な一方向性関数を用いて算出される確認情報を求め、これを送信データに付加して送出するようにしたことにより、伝送路上でデータ誤りや第三者によるデータの改竄があったとしても、これを受信側で確実に認識可能とするデータ送信装置を実現することができる。
【0108】また、送信側及び受信側の双方に共通する秘密情報を、送信側及び受信側の双方が予め共有する場合に、受信側に配置されるデータ受信装置についての発明によれば、当事者のみが知り得る秘密情報を用いて算出される、しかも、その算出には、算出結果から元の変数を逆算することが極めて困難な一方向性関数を用いて算出される確認情報を受信データについて求め、これと受信された確認情報とを比較するようにしたことにより、伝送路上でデータ誤りや第三者によるデータの改竄をがあったとしても、。これを受信側で確実に認識可能とするデータ受信装置を実現することができる。」

上記記載事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「伝送路上でデータ誤りや第三者によるデータの改竄があったとしても、これを受信側で確実に認識可能とするデータ伝送システムにおいて実行される伝送動作として、次の(a)から(d)のステップを備えたデータ伝送システム。
(a)データ伝送の当事者である一対の通信者であるデータ送信側とデータ受信側の双方が、何らかの手法により、第三者が知り得ない同一の秘密情報Kと認証用の一方向関数Fを事前に入手し保持するステップ
(b)前記データ送信側が、送信データM1と前記秘密情報Kを前記一方向性関数Fに代入し、確認情報F(M1,K)を計算し、計算された確認情報F(M1,K)を送信データM1に付加して、伝送路を介してデータ受信側に送信するステップ
(c)前記データ受信側は、データの受信を検知すると、送信データM1に対応する受信データM2と、確認情報F(M1,K)に対応する受信確認情報F2の部分に分離し、受信データM2については一方向性関数演算部12に、受信確認情報F2についてはデータ正確性確認部13に与えるステップ
(d)この後、前記データ受信側は、一方向性関数演算部12において受信データM2と前記秘密情報Kから、受信データM2に固有の確認情報F(M2,K)を計算し、当該確認情報F(M2,K)をデータ正確性確認部13に与えて、受信された確認情報F(M1,K)に対応する受信確認情報F2と比較し、両者が一致すれば正しいデータが受信されたものと判断し、一致しなければ、正しくないデータが受信されたと判断するステップ」
(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-52388号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】従来、自動、若しくは手動で供給された紙幣を間引きし、前記紙幣を順次センサ・システム側に安定すると共に手元のタスクおよびセンサ結果に応じた所定の基準に従って前記紙幣を種々のカテゴリーに区別する紙幣仕分機が使用されている。
【0003】このような装置は、例えばドイツ特許第2760269号で知られている。既知のこれら仕分機の重要なタスクは、循環より戻る紙幣を分類してさらに循環に適したもの、および適さないものにすることにある。紙幣が偽物であると思われる場合、あるいは識別不能か若しくは他の理由により分類不能であると考えられる場合、紙幣を第3のカテゴリーに分ける。さらに循環させるのに不適当と識別された紙幣は確実に無効にしなければならず、これは、例えば、紙幣を復元し得ないような細かい断片にカットする仕分機に一体化されたシュレッダ・モジュールに紙幣を通すことによって行うことが可能である。
【0004】仕分機のレベルでの金銭処理を三つの大まかなステップに分けることが可能である。仕分機を使用するオペレータに対し受け取りを確認すべき所定の金額が自分のシフトの開始時に課せられる。受け取った金額は仕分機に供給され、例えば前記のようなカテゴリーに分類される。自分のシフトの終了時に、オペレータは、全ての関連した作業を記入したプリント・アウトとともにこの分類された量の金銭を引き続き金銭処理を行う者に引き継ぐことになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ドイツ特許第2760269号に詳細に記載されているように、仕分機には、取り分け、所謂、シフト・ログをプリント・アウトするためのプリント手段が備えられている。このログは、他のデータとともに目的のカテゴリーに入れた紙幣の合計を記録する。目的のカテゴリーに入れた全ての部分(半端な)の金額の合計は、仕分機に供給され且つオペレータによって確認される金額に対応する必要がある。基本的にログ・データは、例えば数え直すことによって個々の金額のチェックを可能にするので、紙幣が未検出となることはない。
【0006】しかしながら、この簡単なチェック方法は、無効にした紙幣の場合にはもはや適用できない。つまり、予想し得る改ざんに確実に対抗するためにこのような紙幣には特に異なったセキュリティ・チェック方法が必要となる。
【0007】従って、本発明は上記の課題に基づいてなされたもので、集積式スイッチ手段を備えた自動紙幣仕分機を使用する際に改ざんを確実に最小限に抑えることができる紙幣が正しく仕分処理されるか否かをチェックする方法を提供することを目的とする。」
イ 「【0008】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、本発明は、一部の量の金額を必要に応じ無効にし且つ所定量の金額が仕分処理された後あるいは所定の時間単位が経過した後ログを準備して取り分け仕分処理された貨幣に関する情報を記録するように一定基準に従って所定量の金額を種々のカテゴリーに分類する自動紙幣仕分機で前記紙幣が正しく仕分処理されるか否かをチェックする方法において、前記ログは、さらに所定のログ・データから判定され且つ明らかに前記判定に含まれる前記データに関する少なくとも一つの識別マークを含んでいることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明に係る紙幣が正しく仕分処理されるか否かをチェックする方法では、一回若しくはそれ以上ログ・エキストラクト上にプリント・アウトする値を保護すべきログ・データから求めるための暗号法を使用する。この算出は、暗号法若しくはこの暗号法に含まれる秘密の知識を有する関係機関によってのみ行われる。ログ・データのあらゆる偽造、付加若しくは除去を行っても異なった識別値となり、これはチェック期間中簡単に確認することが可能である。」
ウ 「【0011】図1は、本発明に係る仕分機の構成を簡単に示した概略図である。
【0012】紙幣は入力コンテナ6から選択され、センサ路5に沿って案内され且つセンサ結果に従って別々の出力コンテナ8、9若しくは10に供給される。出力コンテナ8はシュレッダ手段7によって無効にされた紙幣を集める。出力コンテナ9はさらに循環に適した紙幣を収集することが可能である。出力コンテナ10は、所謂、再度手作業で処理すべき紙幣を収集する。紙幣が、例えば、偽造の疑いがあると考えられ、または識別できない時、後者は仕分機を操作するオペレータによって入念に再チェックされる必要がある。分類機との対話はコンソール4を介して可能である。金銭処理に関するログ2をプリント・アウトするために、仕分機にはプリンタ3が設けてある。
【0013】このようなログの一例を図2に示す。有機的な必要条件に応じて各種のログをプリント・アウトすることが可能であるが、ここではその詳細な説明については省略する。
【0014】図2には所定量の金額が処理された後オペレータがプリント・アウトした、所謂、シフト・ログが示されている。このログ2は、説明したカテゴリーに分類された処理済紙幣とともにさらに金銭を処理する者に引き継がれる。
【0015】ログ2は仕分機ナンバ若しくはオペレータIDナンバの外に日付と時間を記録可能である。また、このログ2は{循環(“U”)-再手作業(“HN”)-および無効-紙幣(“Shr”)に合った]各カテゴリーに入れた紙幣の合計も表している。上記情報は実行可能なログ・データからのみ選択される。この情報に加えて、本発明によれば、このログ2には識別マーク15が備えられており、これは暗号法による全ログ・データ若しくは選択された一部のログ・データから判定される。偽造から保護されるべきそれらログ・データがその暗号に含まれるのが好ましい。いずれの場合においても、この識別マーク15は前記包含されたデータに関することは明らかである。データの如何なる変更、付加若しくは削除も結果的に異なった識別マーク15となる。それ故、ログ・データのどんな改ざんも速やかに検出できる。
【0016】識別マーク15は、仕分機の制御・処理装置11のセキュリティ・モジュール12において判定することが可能である。このセキュリティ・モジュール12には識別マーク15を判定するためのアルゴリズム若しくは秘密コードが含まれる。それ故、このセキュリティ・モジュール12は的確に偽アクセスから保護する必要がある。ログ2がいずれもシングルなものとなるように、この識別マーク15の判定結果には日付、時間若しくはこのような目的に応じた他の数値制御装置等の時変量を含む必要がある。図2に示すように、実ログ・データ前後に、識別マーク15を、例えば数回ログ2上にプリントすることが可能となる。
【0017】仕分機に組み入れたセキュリティ・モジュール12を有し且つ該当するアルゴリズム若しくはコードが設定された装置を利用してログ2の信頼度をテストすることが可能である。“U”、“HN”および“Shr”紙幣の合計等の識別マーク15の判定結果に含まれたデータは、装置のキーボードを介して手動で入力される。セキュリティ・モジュール12はこの入力から識別マーク15を判定しその判定結果をディスプレイ上に表示するので、オペレータは表示された識別マーク15をログ2上にプリントされた識別マーク15と比較可能である。この両者を識別することによってチェックを受けたログ・データが確実に偽造から回避される。識別マーク15の準備とそのチェックの両方が簡素化されるにもかかわらず、本発明方法によれば、自動紙幣仕分機における紙幣の正確な仕分処理に関して高度のセキュリティを達成し得る。特定の操作モードが制御用のコンソール4を介して選択された後、そのチェックはシュレッダ・マシン自体で行うことも可能である。その結果はコンソール4のスクリーン上に表示される。セキュリティ・モジュール12および制御用のコンソール4を備えた個別検査装置は、自明であるため図から省略されている。
【0018】インタフェース13を介して仕分機に接続された端末によってログ・データの識別マーク15をチェックすることも可能である。必要なデータは端末に伝送されそこから識別コード15が、上記したように端末の該当するセキュリティ・モジュール12で判定される。」

上記記載からして、引用例2には、
「紙幣を循環、再手作業、および無効の各カテゴリーに区別する紙幣仕分機において、紙幣が正しく仕分処理されるか否かをチェックするため、各カテゴリーに入れた紙幣の合計を表わすデータ、及び、仕分機ナンバ若しくはオペレータIDナンバの外に日付と時間を含むものをログ・データとし、当該ログ・データに加え、暗号法を使用することにより、セキュリティ・モジュール12においてアルゴリズム若しくは秘密コードによって判定可能な識別マーク15を備えるログ2とすることにより、ログ・データを偽造から回避する方法。」が記載されているといえる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明は、データの伝送動作に際するデータの改竄等の認識をするため、データに計算処理を施すものであるから、引用発明と本願発明は、「データ処理方法」である点で一致する。また、引用発明の「データ」は、「データ送信側」から「データ受信側」に伝送されるものであり、一方、本願発明の「銀行券鑑査結果データ、ユニークデータ、及び暗号化データ」は、「銀行券監査機」から「客先サーバー」に向けて出力され、その出力されたデータは当該「客先サーバー」が受信するものであるから、引用発明と本願発明は、「データ」が、「データ送信側」から「データ受信側」に伝送される点で共通している。
(2)引用発明の「送信データM1」は、本願発明の「銀行券鑑査結果データ及びユニークデータ」と「データ」である点で一致し、「秘密情報K」ならびに「確認情報F(M1,K)」は、その機能からみて、それぞれ、本願発明の「第1の暗号鍵」ならびに「暗号化データ」に相当する。そして、引用発明の前記「秘密情報K」は、「データ伝送の当事者である一対の通信者であるデータ送信側とデータ受信側の双方」が、「事前に入手し保持する」「第三者が知り得ない」「同一」のものであるから、引用発明の「秘密情報K」は、本願発明の「第2の暗号鍵」にも相当するものであって、暗号化に関する技術常識からして、引用発明の「秘密情報K」と本願発明の「第1の暗号鍵」及び「第2の暗号鍵」は、いずれも「外部に読み出せない」ものであって、「データ送信側」及び「データ受信側」それぞれにおいて個別に「記憶」しているものといえる。
(3)そうすると、引用発明の「(b)前記データ送信側が、送信データM1と前記秘密情報Kを前記一方向性関数Fに代入して確認情報F(M1,K)を計算し、計算された確認情報F(M1,K)を送信データM1に付加して、伝送路を介してデータ受信側に送信するステップ」と、本願発明の「銀行券鑑査結果データ及びユニークデータを第1の暗号鍵で暗号化し、暗号化データとしてMACを生成する第1のステップと、前記銀行券鑑査結果データ、ユニークデータ、及び暗号化データを出力する第2のステップ」は、「データを第1の暗号鍵で暗号化し、暗号化データを生成する第1のステップと、データ、及び暗号化データを出力する第2のステップ」である点で一致し、引用発明の「(c)前記データ受信側は、データの受信を検知すると、送信データM1に対応する受信データM2と、確認情報F(M1,K)に対応する受信確認情報F2の部分に分離し、受信データM2については一方向性関数演算部12に、受信確認情報F2についてはデータ正確性確認部13に与えるステップ」及び「(d)この後、前記データ受信側は、一方向性関数演算部12において受信データM2と前記秘密情報Kから、受信データM2に固有の確認情報F(M2,K)を計算」することと、本願発明の「第2のステップにより出力された前記銀行券鑑査結果データ、ユニークデータ、及び暗号化データを受信する第3のステップと、前記第3のステップにより受信された前記銀行券鑑査結果データ及びユニークデータを前記第1の暗号鍵と同一の第2の暗号鍵で暗号化し、新たに暗号化データを生成」することは、「第2のステップにより出力されたデータ、及び暗号化データを受信する第3のステップと、前記第3のステップにより受信された前記データを前記第1の暗号鍵と同一の第2の暗号鍵で暗号化し、新たに暗号化データを生成」する点で一致するといえる。
(4)そして、引用発明の「当該確認情報F(M2,K)をデータ正確性確認部13に与えて、受信された確認情報F(M1,K)に対応する受信確認情報F2と比較し、両者が一致すれば正しいデータが受信されたものと判断し、一致しなければ、正しくないデータが受信されたと判断するステップ」と、本願発明の「この新たに生成された暗号化データと前記第3のステップにより受信された暗号化データとを比較して、前記第2のステップにより出力された前記銀行券鑑査結果データが改ざんされることなく前記第3のステップにより正しく受信されたことを確認する第4のステップ」は、技術常識からして、「この新たに生成された暗号化データと前記第3のステップにより受信された暗号化データとを比較して、前記第2のステップにより出力された前記データが改ざんされることなく前記第3のステップにより正しく受信されたことを確認する第4のステップ」である点で一致することは明らかである。
(5)以上の関係からして、本願発明と引用発明は次の点で一致する。
「データ処理方法において、
データ送信側は、
データを第1の暗号鍵で暗号化し、暗号化データ生成する第1のステップと、
前記データ、及び暗号化データを出力する第2のステップと、
を備え、
データ受信側は、
前記第2のステップにより出力されたデータ、及び暗号化データを受信する第3のステップと、
前記第3のステップにより受信されたデータを前記第1の暗号鍵と同一の第2の暗号鍵で暗号化し、新たに暗号化データを生成し、この新たに生成された暗号化データと前記第3のステップにより受信された暗号化データとを比較して、前記第2のステップにより出力されたデータが改ざんされることなく前記第3のステップにより正しく受信されたことを確認する第4のステップと、
を備え、
前記データ送信側は、外部に読み出せない前記第1の暗号鍵を記憶し、前記第1の暗号鍵で前記送信データを暗号化し、
前記データ受信側は、前記データ送信側が記憶する前記第1の暗号鍵とは別に記憶された外部に読み出せない前記第2の暗号鍵で前記データを暗号化するデータ処理方法」である点。
(6)一方、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
本願発明は、データ処理の対象が「銀行券の鑑査結果」であって、データ送信側及びデータ受信側が、「銀行券監査機」及び「客先サーバー」として構成され、取り扱われるデータが「銀行券鑑査結果データ及びユニークデータ」であるのに対し、引用発明には、そのようなデータ処理の対象や送受信の構成、ならびに、データに関する特定ないし示唆がない点。
〈相違点2〉
第1のステップにおいて生成される暗号化データが、本願発明では「MAC」であるのに対し、引用発明は、そのようなコードとすることについて特定ないし示唆がない点。

5 検討・判断
上記相違点1,2について検討する。
(1)相違点1について
暗号化するデータ処理の対象として如何なるデータを対象とするかは必要に応じて適宜定めるものにすぎず、引用例2にあるように、紙幣に関するデータを偽造から回避することは従来から行われていることにすぎないから、データ処理の対象を「銀行券の鑑査結果」とすることは、格別の創造力を要するものではない。そして、銀行券の鑑査結果に関するデータを対象とするならば、データ送信側を銀行券監査機とし、データ受信側を各銀行に設置されたコンピュータ、すなわち客先サーバーとすることは、ごく自然な事項にすぎない。
そして、銀行券鑑査を含む銀行券仕分け機において、紙幣に関するデータの偽造、すなわち改竄の検出を行えるように、「銀行券鑑査結果データ」である銀行券仕分けデータに加えて、仕分機ナンバ若しくはオペレータIDナンバの外に日付と時間を含むログ・データ、すなわち、本願発明の「ユニークデータ」(本願発明の「ユニークデータ」が前記のようなデータの総称であることは、本願の発明の詳細な説明の【0014】の記載から明らかである。)を出力することは、引用例2により本願出願前に公知であって、銀行券鑑査結果データを送信する場合に、引用発明に当該公知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。加えて、第2ステップにおいて「銀行券鑑査結果データ」に「ユニークデータ」を加えて出力すれば、第3ステップにおいて、「銀行券鑑査結果データ」に「ユニークデータ」を加えたものを受信し、第4ステップにおいて、送信データである「銀行券鑑査結果データ」に「ユニークデータ」を加えたものを処理するようになるのは必然である。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の特定事項を得ることは、引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易になし得ることである。
(2)相違点2について
本願の発明の詳細な説明の記載(段落【0014】)によると、本願発明のMACは「Message Authentication Code」であって、当業者に、認証や通信途中の改ざんをチェックするためなどの短い情報として良く知られているコードにすぎない。一方、引用発明の確認情報F(M1,K)もしくはF(M2,K)は、いずれもデータの改竄を識別するために計算されるものであるから、それらの確認情報F(M1,K)もしくはF(M2,K)が、MACに相当する機能を有することは明らかであるといえる。
したがって、相違点2は、実質的な相違点とはいえない、もしくは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-28 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-19 
出願番号 特願2001-245569(P2001-245569)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 高田 元樹
松下 聡
発明の名称 銀行券鑑査データ処理方法及び銀行券鑑査システム  
代理人 中村 誠  
代理人 村松 貞男  

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