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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1265542
審判番号 不服2011-9894  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-11 
確定日 2012-10-31 
事件の表示 特願2000-523812「モジュール式表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月10日国際公開、WO99/29117、平成13年12月11日国内公表、特表2001-525564〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成10年12月 2日 国際出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1997年12月2日、1998年11月25日、米国)
平成21年 1月26日 拒絶理由通知(同年1月30日発送)
平成21年 4月20日 意見書・手続補正書
平成21年11月18日 拒絶理由通知(最後)(同年11月20日発送)
平成22年 3月18日 意見書
平成22年 3月26日 拒絶理由通知(最後)(同年4月2日発送)
平成22年 7月 1日 意見書・手続補正書
平成23年 1月11日 拒絶査定(同年1月14日送達)
平成23年 5月11日 本件審判請求
平成23年10月28日 拒絶理由通知(同年11月1日発送。以下「当審拒絶理由通知」という。)
平成24年 3月 1日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1-13に係る発明は、平成24年3月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1には以下のとおり記載されている。
「 スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)と、
前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)と、
前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)によって前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整するものであり、ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与えるように構成されている、画像プロセッサ(IP1、IP2、IP3、IP4、720)と
を具備する、表示システム(100、200、300、700)。」(以下「本願発明」という。)

3 当審拒絶理由通知で通知した拒絶の理由の概要
当審拒絶理由通知に記載した拒絶理由2、拒絶理由3の概要は、以下のとおりである。

3-1 拒絶理由2(29条の2)
本願発明は、その最先の優先日前の特許出願であって、その最先の優先日後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその最先の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。



特願平8-144248号(特開平9-326981号公報参照。)

3-2 拒絶理由3(29条2項)
本願発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



(1)特開平8-294075号公報(以下「刊行物1」という。)
(2)特開平6-308635号公報(以下「刊行物2」という。)
(3)特開平6-141246号公報(以下「刊行物3」という。)
(4)特開平7-239504号公報(以下「刊行物4」という。)

4 特許法第29条の2

4-1 先願明細書等の記載事項
当審拒絶理由通知で引用され、本願の最先の優先日(1997年12月2日)前の特許出願であって、その最先の優先日後に出願公開がされた
特願平8-144248号(特開平9-326981号公報参照。以下「先願」という。)
の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 発明の属する技術分野についての記載
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、複数のプロジェクタの画像をスクリーン上で合成して高精細な画像の投影を実現する画像投影システムに関する。」

イ 第1の実施の形態についての記載
「【0018】同図に示されるように、本実施の形態に係る画像投影システムは、大きく別けて、画像・原稿を作成して高精細画像データ2を出力するパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記する)1と、パソコン1からの高精細画像データ2を処理・分割して出力する高精細プロジェクタ・コントローラ部3と、複数のプロジェクタ7a乃至7dとで構成されている。
【0019】上記高精細プロジェクタ・コントローラ部3は、更に画像処理・分割部4と、プロジェクタ配置記憶部5、D/A変換部6からなる。更に、ここでは図示していないが各機能をコントロールする制御部も含まれている。
【0020】このような構成において、パソコン1で作成・出力された高精細画像データ2はコントローラ部3の画像処理・分割部4へと出力される。該画像処理・分割部4では、予めプロジェクタ配置記憶部5に記憶されたパラメータに基づいて各プロジェクタに高精細画像データ2のどの部分を出力するかが決定され、所定の処理が行われる。このプロジェクタ配置記憶部5に記憶されたパラメータ及び画像処理・分割部4等の各構成要素の機能又は作用についての詳細は後述する。
【0021】上記画像処理・分割部4の信号は複数のD/A変換部6へと出力され、該D/A変換部6にてアナログ信号に変換された後、各プロジェクタ7a乃至7dにより画像がスクリーン8上に投影される。こうしてスクリーン8上に投影された投影像は、各画像が正確に位置合わせされた高精細な画像となる。
【0022】ここで、図2を参照して上記液晶プロジェクタ7とスクリーン8が正対していない場合に、投影画像全体をあおりがなく正確なものとする手法を説明する。上記プロジェクタ7とスクリーン8が正対していない場合には、投影像の各部分で倍率が異なり、図2(a)に示されるような「あおり」のある画像になってしまう。スクリーン8上でどの様に投影されるかは、プロジェクタ7の光軸に沿ったプロジェクタ7とスクリーン8との距離d、光軸を回転軸としたときのプロジェクタ7の回転角ω、プロジェクタ7の基準点Cからスクリーン8に降ろした垂線C-Sとプロジェクタの光軸で決定される平面がZX平面となす角度(あおりの生じる方向)θ、垂線C-Sとプロジェクタ7の光軸のなす角度(あおり角)φで決定される。
【0023】いま、プロジェクタ7に入力する画像上で画像中心を原点oとした座標を(x,y)、図2のようにスクリーンとプロジェクタの光軸が交差する点を原点Oとし、スクリーン上水平方向にX軸・垂直方向にY軸、スクリーンの法線方向にZ軸を取った座標を(X,Y,0)としたとき、(x,y)と(X,Y)の関係は以下の(2),(3),(4)式に表される。
【0024】
【数1】


【0025】上記式において、行列右肩のTは転置を示し、mはスクリーンとの距離dできまるスケーリングファクタである。Rはθ,φ,ωによる回転を表す行列で、座標Cはプロジェクタの基準点の上記XYZ座標系における位置である。
【0026】このd,θ,φ,ωから逆算し、予め図2(b)に示されるようにあおりを補正した画像を生成・出力することで、投影された画像は全体が等倍率で正確なものとなる。この様子は後述する。また、ここではd,θ,φ,ωから投影状態を決定するとして説明したが、投影状態が正確に記述・補正できれば他のパラメータの組でもよいことは勿論である。
【0027】図3は原画像と各プロジェクタへの出力画像の関係を示す図である。図3(a)はプロジェクタの解像度に比べて高精細な原画像であり、この画像をスクリーン上に図3(b)に示されるような位置関係で投影する2台のプロジェクタに出力する。この場合、図3(c)に示されるように右側のプロジェクタには、左側のプロジェクタの画像から下にずれた部分の画像を出力すると、スクリーン上では図3(d)のように全体として原画像と略同じ画像が投影される。
【0028】また、オーバーラップする部分は、例えば特願平6-141246号公報に開示された画像の貼合わせ技術を採用して整合を取る。複数の画像の重複部分の処理技術を応用して、原画像の値に図3(e)に示されるような係数を乗じてプロジェクタに出力することで、接合部分をスムーズに接続することができる。
【0029】こうして接合された例を図3(f)に示す。この図3(f)では、2枚の画像の1ライン(例えば図3中のA-Bを結ぶ線)がそれぞれ破線で示されている。実線は、それぞれのデータ値に図3(e)に示した係数を掛けて出力したときの投影された画像の値である。図3(b)では、プロジェクタの倍率は同じとして説明したが、倍率が異なる場合は図3(c)で選択する部分の大きさを変えることで対応可能である。
【0030】以上の方法は、2台以上のプロジェクタを用いる場合にも同様に適用可能である。更に、液晶パネルの画素が比較的粗いため、投影画像に液晶の画素がはっきり投影されて見にくい画像となる場合や、それぞれのプロジェクタの倍率の違いからオーバーラップ部分でモアレ現象が起こる場合もあるが、これら現象は、投影像のピントを少し甘くして画素をボケさせる等により防止することができる。また、図3ではオーバーラップ部分で乗じる係数を線形に変化させたが、スムーズに接合できるのであれば、例えばsin関数のように非線形に変化させてもよい。
【0031】図4には、あおり補正画像生成の手法を示し説明する。図4(a)は投影画像を示し、図4(b)はプロジェクタに入力する画像データを示している。図4(b)のq0,q1,q2,q3で囲まれる領域Sqはプロジェクタに入力できる最大の画像を示し、その投影像が図4(a)のQ0,Q1,Q2,Q3で囲まれる領域SQに相当する。
【0032】図4(a)で網掛けしたP0,P1,P2,P3で囲まれた領域SPは実際の投影に利用される領域で、プロジェクタ入力画像ではP0,P1,P2,P3で囲まれた領域SPに対応する。SPの基準点は2辺のなす角度が最大となる点P0とし、P1,P3はそれぞれ水平、垂直に引いた直線がSQの各辺と交差する点で、P2は他の3点と長方形をなす点である。また、図4(b)のP0,P1,P2,P3で囲まれる領域Spはプロジェクタに入力する画像のうちSpに対応する部分である。
【0033】プロジェクタ入力画像の画像中心から数えた画素位置(i,j)は、上記(2)式によって(Xi,Yj)に変換される。そこで、画素位置(i,j)の値は図3(c)のように各プロジェクタ用に選択された原画像中(Xi,Yj)に対応するピクセルの値を用いる。このとき(Xi,Yj)が整数でない場合には線形補間、双三次補間等の公知の補間手法によって値を求める。また、変換後、(Xi,Yj)がSP外に出てしまう場合は画素値をゼロとする。ここでは、Spを上記のように決定したが、SQ内であればSpを任意の位置、大きさで設定することができる。
【0034】図5には上記変換を実現する画像処理・分割部4の詳細な構成を示して説明する。同図において、画像処理・分割部4は、更に表示画像選択部9、補間部10、係数設定部11からなる。この表示画像選択部9は、図3で説明したように、原画像中で本システムで投影できる部分を決定するパラメータをパラメータ記憶部12から参照して各プロジェクタで投影する部分を決定し、複数のプロジェクタ用の画像を出力する。
【0035】補間部10では、パラメータ記憶部12から各プロジェクタの回転、シフト、あおりのパラメータを読み出し、表示画像選択部9の各出力画像がスクリーン上で正確な投影像が結ぶように変形・補間して出力する。さらに、係数設定部11は、パラメータ記憶部12から各プロジェクタの投影画像のオーバーラップ・パラメータを読み出し、スムーズに接合されるように先に図3(f)に示した係数を設定する。この係数は、補間部10の出力画像に乗じられ、最終画像としてD/A変換部6を通って各プロジェクタに出力される。
【0036】図6は図3に加えて左右のプロジェクタにあおりがある場合、画像分割・処理部4で投影画像を決定する過程を示したものである。この例では、右の画像には横方向にあおりが生じ、左の画像には右上方斜めにあおりが生じている。この状態で図3(c)と同じ画像を投影すると、図6(a)のように原画像とは異なり、歪んだために両方の投影がずれた画像が観察されるてしまう。そこで、かかる問題を解決すべく、パラメータ記憶部12に記憶したあおりパラメータによって変換し、図6(b)のような画像を投影する。これにより、図6(c)のようにスクリーン上で原画像に忠実な高精細画像が得られる。
【0037】尚、本実施の形態では、アナログ信号でプロジェクタにデータを送るとして説明しているが、プロジェクタにデジタル信号の入力端子がある場合はデジタルデータで出力することが可能で、D/A変換部が不要であることは勿論である。」(当審注:【0028】に記載されている「特願平6-141246号公報」は、「特開平6-141246号公報」の誤記である。以後、「特願平6-141246号公報」は、「特開平6-141246号公報」として引用する。なお、特開平6-141246号公報は、平成22年3月26日付け拒絶理由通知において、刊行物3として引用されている文献である。また、【0035】に記載されている「先に図3(f)に示した係数を設定する」とあるのは、「先に図3(e)に示した係数を設定する」の誤記である。以後、「先に図3(f)に示した係数を設定する」は、「先に図3(e)に示した係数を設定する」として引用する。)

ウ 第4の実施の形態についての記載
「【0067】次に第4の実施の形態に係る画像投影システムを説明する。第4の実施例は、複数のプロジェクタを用いた高輝度・多階調プロジェクタである。以下、図15を参照して本実施例を説明する。
【0068】同図に於いて、複数のプロジェクタ51の画像を正確に重ねて投影画像52を投影する。このとき、両方のプロジェクタから全く同じ画像を出力すれば、スクリーン上では1台で投影する場合の2倍の輝度で観測されるので、本発明のシステムは高輝度なプロジェクタとして機能する。
【0069】また、一般に画像データは各色0から255までの256階調で表現されるが、本発明のシステムではN台のプロジェクタを用いて255×N+1階調の画像を表現できる。例えば二台のプロジェクタを使用した場合、114の値のデータはそれぞれのプロジェクタに57,57を入力し、データ値317は159,158を入力するといったようにすれば、最大510階調(両プロジェクタに255を入力)のデータを考慮できる。
【0070】本発明は第2の実施の形態にある通り、見る人の視点で投影画像を撮影した画像データから自動的に位置合わせしてプロジェクタに補正画像が出力されるので、本実施例のシステムが非常に簡単に実現される。
【0071】また、各プロジェクタの出力画像に視差を付けることで立体画像の表示も可能である。本発明のシステムではプロジェクタの解像度が全て生かせるので、従来に比べ高解像度な立体画像を表示できる。」

エ 図3(a)?(f)より、2台のプロジェクタがそれぞれスクリーン上に投影する画像は、隣接したオーバーラップ部分を有することが看取できる。

4-2 記載事項の検討
(1) 「【0018】…、本実施の形態に係る画像投影システムは、大きく別けて、画像・原稿を作成して高精細画像データ2を出力するパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記する)1と、パソコン1からの高精細画像データ2を処理・分割して出力する高精細プロジェクタ・コントローラ部3と、複数のプロジェクタ7a乃至7dとで構成されている。」との記載と、「【0021】…、各プロジェクタ7a乃至7dにより画像がスクリーン8上に投影される。」との記載から、先願明細書等には、スクリーンと、パソコンと、複数のプロジェクタと、高精細プロジェクタ・コントローラとを有するスクリーンに画像を投影するシステムが開示されている。

(2) 「【0018】…、本実施の形態に係る画像投影システムは、大きく別けて、画像・原稿を作成して高精細画像データ2を出力するパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記する)1と、…」との記載から、先願明細書等には、高精細画像データを出力するパソコンが記載されている。ここで、一般に、コンピュータが出力する画像データが、複数の画素のデータで構成されることは技術常識であるから、先願明細書等には、複数の画素のデータで構成される高精細画像データを出力するパソコンが開示されている。

(3) 「【0027】図3は原画像と各プロジェクタへの出力画像の関係を示す図である。図3(a)はプロジェクタの解像度に比べて高精細な原画像であり、この画像をスクリーン上に図3(b)に示されるような位置関係で投影する2台のプロジェクタに出力する。この場合、図3(c)に示されるように右側のプロジェクタには、左側のプロジェクタの画像から下にずれた部分の画像を出力すると、スクリーン上では図3(d)のように全体として原画像と略同じ画像が投影される。…【0030】以上の方法は、2台以上のプロジェクタを用いる場合にも同様に適用可能である。」との記載があり、また、上記「4-1 エ」に摘記したとおり、図3(a)?(f)より、複数のプロジェクタがスクリーン上に投影するそれぞれの画像は、隣接したオーバーラップ部分を有することが看取できる。そして、パソコンが複数の画素のデータで構成される高精細画像を出力しているところ、「【0030】…、液晶パネルの画素が比較的粗いため、投影画像に液晶の画素がはっきり投影されて見にくい画像となる場合…」との記載から、プロジェクタは、画像を構成する画素を投影していると言える。してみると、先願明細書等には、スクリーン上に原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する複数のプロジェクタが開示されている。

(4)
(4-1) 上記(3)より、複数のプロジェクタが、「スクリーン上に原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影」していることから、複数のプロジェクタによってオーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせていると言える。
(4-2) 「【0021】…こうしてスクリーン8上に投影された投影像は、各画像が正確に位置合わせされた高精細な画像となる。」との記載より、スクリーン上に投影された投影像は、各画像が正確に位置合わせされた高精細画像である。また、「【0036】…。これにより、図6(c)のようにスクリーン上で原画像に忠実な高精細画像が得られる。」との記載から、スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影することが開示されている。
(4-3) 「【0019】上記高精細プロジェクタ・コントローラ部3は、更に画像処理・分割部4と、プロジェクタ配置記憶部5、D/A変換部6からなる。」との記載、「【0034…画像処理・分割部4は、更に表示画像選択部9、補間部10、係数設定部11からなる。」との記載、「【0035】補間部10では、パラメータ記憶部12から各プロジェクタの回転、シフト、あおりのパラメータを読み出し、表示画像選択部9の各出力画像がスクリーン上で正確な投影像が結ぶように変形・補間して出力する。」との記載、「【0031】図4には、あおり補正画像生成の手法を示し説明する。…【0033】プロジェクタ入力画像の画像中心から数えた画素位置(i,j)は、上記(2)式によって(Xi,Yj)に変換される。そこで、画素位置(i,j)の値は図3(c)のように各プロジェクタ用に選択された原画像中(Xi,Yj)に対応するピクセルの値を用いる。このとき(Xi,Yj)が整数でない場合には線形補間、双三次補間等の公知の補間手法によって値を求める。また、変換後、(Xi,Yj)がSp外に出てしまう場合は画素値をゼロとする。ここでは、Spを上記のように決定したが、SQ内であればSpを任意の位置、大きさで設定することができる。」との記載から、各プロジェクタの回転、シフト、あおりを補正しスクリーン上で正確な投影像を結ぶよう変形・補間して出力しており、画素位置を調整すること、すなわち、プロジェクタ・コントローラは、画素のデータの位置を調整することが開示されている。
(4-4) 「【0035】…係数設定部11は、パラメータ記憶部12から各プロジェクタの投影画像のオーバーラップ・パラメータを読み出し、スムーズに接合されるように先に図3(e)に示した係数を設定する。この係数は、補間部10の出力画像に乗じられ、最終画像としてD/A変換部6を通って各プロジェクタに出力される。」との記載、「【0028】また、オーバーラップする部分は、例えば特開平6-141246号公報に開示された画像の貼合わせ技術を採用して整合を取る。複数の画像の重複部分の処理技術を応用して、原画像の値に図3(e)に示されるような係数を乗じてプロジェクタに出力することで、接合部分をスムーズに接続することができる。【0029】こうして接合された例を図3(f)に示す。この図3(f)では、2枚の画像の1ライン(例えば図3中のA-Bを結ぶ線)がそれぞれ破線で示されている。実線は、それぞれのデータ値に図3(e)に示した係数を掛けて出力したときの投影された画像の値である。」との記載がある。該記載から、オーバーラップする部分では、補間部の出力画像(原画像の値、あるいは、データ値も同じ意味である。)に係数を乗じて、各画像の接合部分をスムーズに接合していることが読み取れる。ここで、先願明細書等で使用されている「データ値」の意味について検討する。先願明細書等には、「【0068】同図に於いて、複数のプロジェクタ51の画像を正確に重ねて投影画像52を投影する。このとき、両方のプロジェクタから全く同じ画像を出力すれば、スクリーン上では1台で投影する場合の2倍の輝度で観測されるので、本発明のシステムは高輝度なプロジェクタとして機能する。【0069】また、一般に画像データは各色0から255までの256階調で表現されるが、本発明のシステムではN台のプロジェクタを用いて255×N+1階調の画像を表現できる。例えば二台のプロジェクタを使用した場合、114の値のデータはそれぞれのプロジェクタに57,57を入力し、データ値317は159,158を入力するといったようにすれば、最大510階調(両プロジェクタに255を入力)のデータを考慮できる。」との記載がある。前記記載より、一般に画像データは0から255までの256階調で表現できること、データ値510(二台のプロジェクタのそれぞれにデータ値255)を入力して投影した画像の輝度は、一台のプロジェクタにデータ値255を入力して投影した画像の輝度の2倍であることが読み取れる。そうすると、画像データは複数の階調で表現されるところ、先願明細書等で使用される「データ値」は画像データの階調の値であり、投影した画像の輝度に対応するものと解される。そうすると、補間部の出力画像(原画像の値、あるいは、データ値も同じ。)に係数を乗じることは、補間部の出力画像の階調値に係数を乗じることを意味するから、先願明細書等には、オーバーラップする部分において、画像の階調値に係数を乗じ、各画像の接合部分をスムーズに接合すること、すなわち、プロジェクタ・コントローラは、画素のデータの階調値を調整することが開示されている。
(4-5) 「【0019】上記高精細プロジェクタ・コントローラ部3は、更に画像処理・分割部4と、プロジェクタ配置記憶部5、D/A変換部6からなる。…【0020】このような構成において、パソコン1で作成・出力された高精細画像データ2はコントローラ部3の画像処理・分割部4へと出力される。該画像処理・分割部4では、予めプロジェクタ配置記憶部5に記憶されたパラメータに基づいて各プロジェクタに高精細画像データ2のどの部分を出力するかが決定され、所定の処理が行われる。…【0021】上記画像処理・分割部4の信号は複数のD/A変換部6へと出力され、該D/A変換部6にてアナログ信号に変換された後、各プロジェクタ7a乃至7dにより画像がスクリーン8上に投影される。こうしてスクリーン8上に投影された投影像は、各画像が正確に位置合わせされた高精細な画像となる。」との記載から、プロジェクタ・コントローラ部は、パソコンで生成された高精細画像を入力し、処理・分割した高精細画像データを複数のプロジェクタに出力することが記載されている。そして、上記(3)で検討したとおり、複数のプロジェクタは、「スクリーン上に原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する」から、プロジェクタ・コントローラ部が出力する「処理・分割した高精細画像データ」は、原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含んでいる。
してみると、先願明細書等には、原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含めた処理・分割した高精細画像データを複数のプロジェクタに出力する高精細プロジェクタ・コントローラが開示されている。

4-3 先願発明
以上のことから、先願明細書には、以下の発明が開示されている。
「スクリーンと、
複数の画素のデータで構成される高精細画像データを出力するパソコンと、
前記スクリーン上に原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する複数のプロジェクタと、
前記複数のプロジェクタによって前記オーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影するように、画素のデータの位置及び階調値を調整するものであり、前記原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含めた処理・分割した高精細画像データを前記複数のプロジェクタに出力する高精細プロジェクタ・コントローラと、
を有するスクリーンに画像を投影するシステム。」(以下「先願発明」という。)

4-4 対比・判断
本願発明と先願発明を比較する。
(1) 先願発明の「スクリーン」は本願発明の「スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)」に相当する。

(2) 本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」と先願発明の「前記スクリーン上に原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する複数のプロジェクタ」を比較する。
(2-1) 本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上」と、先願発明の「前記スクリーン上」を比較する。
上記(1)で検討したとおり、先願発明の「スクリーン」は、本願発明の「スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)」に相当するから、先願発明の「前記スクリーン上」は、本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上」に相当する。
(2-2) 本願発明の「原始画像の隣接した重なり合う部分を生成する」ことと、先願発明の「原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する」ことを比較する。
先願発明の「原画像」は、本願発明の「原始画像」に相当し、先願発明の「隣接したオーバーラップ部分」は、本願発明の「隣接した重なり合う部分」に相当する。そして、先願発明において、スクリーン上に「画像を構成する画素を投影する」ことは、画像を生成することであるから、本願発明における、画像を「生成する」ことに相当する。さらに、先願発明において、「原画像が隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する」ことは、オーバーラップする部分と、オーバーラップしない部分の両者を含めた原画像を投影するものである。
してみると、先願発明の「原画像が隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する」ことは、本願発明の「原始画像の隣接した重なり合う部分を生成する」ことに相当する。
(2-3) 本願発明の「少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」と、先願発明の「複数のプロジェクタ」を比較する。
先願発明の「複数」は二つ以上の数を意味するから、本願発明の「少なくとも2つ」に相当する。また、先願発明の「プロジェクタ」は、本願発明の「画像生成装置」に相当する。してみると、先願発明の「複数のプロジェクタ」は、本願発明の「少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」に相当する。
(2-4) 上記(2-1)?(2-3)より、先願発明の「前記スクリーン上に原画像の隣接したオーバーラップ部分を有するように前記原画像を構成する画素を投影する複数のプロジェクタ」は、本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」に相当する。

(3) 本願発明の「前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)によって前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整するものであり、ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与えるように構成されている、画像プロセッサ(IP1、IP2、IP3、IP4、720)」と、先願発明の「前記複数のプロジェクタによって前記オーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影するように、画素のデータの位置及び階調値を調整するものであり、前記原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含めた処理・分割した高精細画像データを前記複数のプロジェクタに出力する高精細プロジェクタ・コントローラ」を比較する。
(3-1) 本願発明の「前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」と先願発明の「前記複数のプロジェクタ」を比較する。
本願発明の「前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」は、上記(2-3)で検討した本願発明の「少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」を指すところ、上記(2-3)で検討したとおり、先願発明の「複数のプロジェクタ」が、本願発明の「少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」に相当する。してみると、先願発明の「前記複数のプロジェクタ」は、本願発明の「前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」に相当する。
(3-2) 本願発明の「前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整する」ことと、先願発明の「前記オーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影するように、画素のデータの位置及び階調値を調整する」ことを比較する。
(3-2-1) 本願発明の「強度」の技術上の意味について検討する。当審拒絶理由通知の「3 拒絶理由1(36条6項2号) (1)」において、「請求項1に記載の『強度』は、画素データの何の強さの程度なのか不明瞭であると共に、請求項7、8、11に記載の『輝度』とは、技術的意味がどのように相違するのか、発明の詳細な説明の記載を見ても、不明瞭である。(両者を異なる意味で使用しているならば、『強度』と『輝度』のそれぞれの意味を、意見書において、詳細に説明されたい。両者を同じ意味で使用しているならば、用語は、明細書および特許請求の範囲全体を通じて統一して使用されたい(特許法施行規則様式29の2〔備考〕9参照)。」と請求人に通知した。
これに対し、請求人は、平成24年3月1日付け手続補正において、旧請求項7、8および11の「輝度」を「強度」に補正し、同日付けの意見書において、「ご指摘頂いた上記の旧請求項7、8および11の『輝度』の記載不備を、対応する新請求項7、8および11において(新請求項1と同じ用語である)『強度』の語に統一する、誤記の補正をしております」と意見を述べている。また、前記意見書には、理由2に対する意見の中で、「『強度』(または『輝度』)」と記載している。
そうすると、請求人は、「強度」と「輝度」のそれぞれの意味を説明することなく「輝度」を「強度」に統一していること、意見書において「『強度』(または『輝度』)」と記載していることからみて、本願発明の「強度」と「輝度」は、実質的に同様の技術上の意義を有するものと解される。
(3-2-2) 先願発明の「前記オーバーラップ部分内」は、本願発明の「前記重なり合う部分内」に相当し、以下同様に、「投影するそれぞれの画素」は、「生成されるそれぞれの画素」に、「前記スクリーン上」は「前記スクリーン上」に、「原画像」は「原始画像」に、「画素のデータの位置…を調整する」ことが「位置…について前記画素データを調整する」ことに、それぞれ相当する。
一般に、階調は色や明るさの濃淡の段階数を意味し、先願発明の「階調値」は明るさの段階を示す値を意味するところ、先願発明における「画素のデータの…階調値を調整する」ことは、スクリーン上に投影する画素の明るさ(輝度)を調整することであるから、本願発明の「強度について前記画素データを調整する」ことに相当する。
また、先願発明における「原画像」が複数の画素で構成される画像であることを考慮すると、「前記オーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影する」ことは、本願発明における「前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成する」ことに相当する。
してみると、先願発明の「前記オーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影するように、画素のデータの位置及び階調値を調整する」ことは、本願発明の「前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整する」ことに相当する。
(3-3) 本願発明の「ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与える」ことと、先願発明の「前記原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含めた処理・分割した高精細画像データを前記複数のプロジェクタに出力する」ことを比較する。
先願発明の「オーバーラップ部分内」は、本願発明の「重なり合う部分内」に相当し、以下同様に、「処理・分割した高精細画像データ」は「原始画像データ」に、「プロジェクタ」は「画像生成装置」に、「出力する」ことは「与える」ことに、それぞれ相当する。してみると、先願発明の「前記原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含めた処理・分割した高精細画像データを前記複数のプロジェクタに出力する」ことは、本願発明の「ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与える」ことに相当する。
(3-4) 上記(3-1)?(3-3)より、先願発明の「前記複数のプロジェクタによって前記オーバーラップ部分内に投影するそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に正確に位置合わせされた原画像に忠実な高精細画像を投影するように、画素のデータの位置及び階調値を調整するものであり、前記原画像のオーバーラップ部分内に投影する画像のデータを含めた処理・分割した高精細画像データを前記複数のプロジェクタに出力する高精細プロジェクタ・コントローラ」は、本願発明の「前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)によって前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記画素データを調整するものであり、ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与えるように構成されている、画像プロセッサ(IP1、IP2、IP3、IP4、720)」に相当する。

(4) 先願発明の「スクリーンに画像を投影するシステム」は、本願発明の「表示システム(100、200、300、700)」に相当する。

(5) 上記(1)から(4)より、本願発明と先願発明は、
「スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)と、
前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)と、
前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)によって前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整するものであり、ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与えるように構成されている、画像プロセッサ(IP1、IP2、IP3、IP4、720)と
を具備する、表示システム(100、200、300、700)。」
の点で一致し、格別相違する点はない。

4-5 審判請求人の主張に対して
審判請求人は、平成24年3月1日付け意見書において、「先願1の段落[0023]?[0033]には、画像の位置を変更することや、選択した画像のある部分のサイズを変えて倍率を処理すること等の記載はあります。しかし、これらの位置の変更やサイズの変更等は、先願1の段落[0028]に記載された「係数」の語が画素の強度とは無関係です。そのため、先願1には、プロジェクタ間における位置および倍率の違いに関連した発明についての記載はあるものの、本願の新請求項1に記載した重なり合う領域における画素の強度を調整することについては教示も示唆もされていない」旨主張し、また、先願明細書に記載された「階調」に関し、「かかる技術分野におけるこのような「色」の「階調」とは、ある色から別の色へとスムーズにシームレスに移り変わることを表しているものと思料します。そのため、出願人は、審判官殿の上記ご認定とは異なり、先願1の「階調値」は、上記の「強度」(または「輝度」)のレベルを表す値を意味するものではない」旨主張するので、以下検討する。

(1) 強度を調整することについて
上記「4-2(4-4)」で検討したとおり、先願明細書等において、「データ値」は画像データの階調の値であり、投影した画像の輝度に対応するものと解される。そうすると、【0029】の「この図3(f)では、2枚の画像の1ライン(例えば図3中のA-Bを結ぶ線)がそれぞれ破線で示されている。実線は、それぞれのデータ値に図3(e)に示した係数を掛けて出力したときの投影された画像の値である。」との記載は、投影した画像の輝度に対応する「データ値」に係数を掛けて出力することにより、投影した画像の輝度が図3(f)の実線であることを意味している。してみると、「係数」は、投影した画像の輝度を変更するから、投影した画像の輝度と関係する値である。
また、先願明細書等には、「【0028】また、オーバーラップする部分は、例えば特開平6-141246号公報に開示された画像の貼合わせ技術を採用して整合を取る。複数の画像の重複部分の処理技術を応用して、原画像の値に図3(e)に示されるような係数を乗じてプロジェクタに出力することで、接合部分をスムーズに接続することができる。」との記載があり、「係数」は、特開平6-141246号公報に開示された画像の貼合わせ技術と関連する。そこで、念のため、特開平6-141246号公報に開示された技術事項について検討しておく。前記公報の図36には先願明細書等の図3(e)と同様の図が記載されており、また、「【0116】そして前記係数設定部124による係数の設定は、図36に示すように、重なる領域以外ならば、“1”又は“0”で重なる領域以内ならば、線形的に変化させる。X_(1)は画像の合成方向の座標である。また、P_(2)-P_(1)は重なる領域の長さである。【0117】図35に示す合成回路は、重なる領域以外の場合、入力画像f又はgの値をそのまま出力させて、重なる領域以内であれば、画像fに対する係数aの値が、“1”から“0”まで、画像gに対応する係数bの値が“0”から“1”まで、それぞれ線形変換させ、この2つの係数効果の足算を出力画像とすることにより、繋ぎ目近傍の輝度を滑らかに変換でき、撮像センサ間での感度のばらつきが主たる原因になる輝度の不連続性が解消される。さらに、相関検出、補間処理により、繋ぎ目において幾何的な不連続性が起こされた場合でも、有効である。」と記載されている。前記記載より、「係数」は画像の繋ぎ目近傍の輝度を滑らかにするのに使用され、「係数」は画像の輝度と関係する値である。よって、先願明細書等で引用する特開平6-141246号公報を参酌しても、「係数」は、投影した画像の輝度と関係する値である。
以上のことから、「係数」の語が画素の強度(又は輝度)と無関係である旨の請求人の主張は失当である。

(2) 先願明細書に記載された「階調」について
プロジェクタ等の表示装置では、赤色光、青色光、緑色光を混合して色を表示し、各光の階調数に応じて表示できる色の数が決まり、階調数が多いほど、表示できる色の数が多いことは技術常識である。ところで、上記「4-2(4-4)」で検討したとおり、先願明細書等に開示された技術は、画像データは複数の階調で表現されるところ、先願明細書等で使用される「データ値」は画像データの階調の値であり、投影した画像の輝度に対応するものと解される。そうすると、係数を乗じること等によって画像データの階調の値(データ値)が変われば、投影した画像の輝度が変化すると共に、表示する色も変わる。してみると、先願明細書等において、「階調の値」は、表示する色に関係するばかりでなく、「強度」(または「輝度」)にも関係するので、請求人の主張は失当である。

4-6 特許法第29条の2のむすび
したがって、本願発明は、先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願明細書等に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。

5 特許法第29条第2項
5-1 刊行物1の記載事項
当審拒絶理由通知で引用され、本願の最先の優先日(1997年12月2日)前の平成8年11月5日に日本国内で頒布された刊行物1(特開平8-294075号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

オ 請求項4の記載
「【請求項4】 入力された映像信号の同期情報を抽出する同期分離手段と、
所定の周期の信号を発生する基準クロック信号源と上記基準信号源から出力されたクロック信号を入力し、上記同期情報が出力されるタイミングで位相ロックされたクロック信号を出力する位相同期制御手段と少なくとも1ライン分の映像信号を補正する補正データが格納されるメモリ手段と、
上記位相同期制御手段より出力されたクロック信号に基づいて上記メモリ手段から補正データを読みだし、上記入力された映像信号の投影画面のエッジ領域の信号処理を行う制御手段とによって映像信号処理装置を形成し、
合成投影画面を形成する2以上の映像信号を、それぞれ上記信号処理装置に入力してその合成画面の重畳領域の信号処理を行うと共に、上記映像信号処理装置から出力された映像信号をスクリーンに投影する2以上の投影装置を備えていることを特徴とする合成画面投影装置。」

カ 産業上の利用分野についての記載
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映像信号の処理装置に関わり、2以上の映像信号を合成して大型の画面を形成する際に有用な映像信号処理装置と、合成画面投影装置に関するものである。」

キ 従来の技術についての記載
「【0002】
【従来の技術】視覚によって各種の情報を表示する表示装置として、通常、CRT管面、液晶表示板等に画像を表示するテレビジョン、またはコンピュータのモニター装置等が慣用されている。しかし、このような表示装置は表示画面の大きさが制限されるため、例えば、視聴者が現実的に見たいと思う画像とかけ離れたものになる。また、投影管や液晶板を使用したプロジエクタは、大型のスクリーンに画像を投影することによって、視角の大部分に画像を再現させることができるが、このような大型の投影装置は一般的に表示画面が大きくなるほど、明るい画面を再現することが困難になる
【0003】そこで、小型の投影装置から投影される画面を合成して大型のスクリーンに投影するいわゆるマルチビジョン型の画像投影装置が、バーチャルリアルティを再現する手法として、例えばシュミーレーション装置やアミューズメントな劇場等で使用されている。図8は小型の投影装置(液晶プロジエクタ)を複数個配置して大型の合成画面を形成する投影装置の概要を示したもので、5は全体として合成映像表示装置を示す。透過型のスクリーン6を4分割してなるスクリーン部分6a?6dに対応して液晶板1?4が設けられ、この液晶板1?4に光を照射して映像LA1?LA4をスクリーン6上に合成画面として投影するように構成されている。
【0004】各光学系7?10は同一の構成とされ、例えば光学系1に付いては、光源11から出射された光がコンデンサレンズ12、フレネルレンズ13、を介して液晶板に集光され、この液晶板1を映像信号によって駆動することによって透過光を変調し、その透過光がフイールドレンズ14を介してスクリーンに投影されるようになされている。
【0005】他の各光学系8、9、10に付いても同様に液晶板2、3、4を透過した映像光がスクリーン6の4分割された各領域に投影されるから、スクリーン6上で合成画面が形成され、大型の表示装置とすることができる。ところでこのような投影型の合成画像投影装置の場合は、投影された各画像の隣接部分に画像の不連続な線が生じることになるが、この不連続な線を解消するように各光学系1?4の位置合わせを行うことは極めて困難である。
【0006】そこで上記従来の投影型のプロジエクタでは図9(a)のスクリーン投影像に見られるように、スクリーン上で合成される各映像部分(LA1?LA4)の境界を重ね合わせ、合成されたスクリーン投影像に隙間が生じないようにすると共に、この重ね合わせされた領域Qに投影される一方の映像信号V_(A)の輝度レベルを図9の(b)に示すようになだらかに低下し、他方の映像信号V_(B)のレベルをなだらかに上昇するような信号処理を行わせるようにしている。」

ク 作用についての記載
「【0012】
【作用】本発明の映像信号処理装置は、所定の周期で固定されている基準クロック信号源から出力されるクロック信号を、被信号処理とされる映像信号の同期情報によって位相を制御し、この位相制御されたロックされたクロック信号によって補正用のデータが読み出されるようにしているため、入力された映像信号の水平周波数が異なる場合でも、簡単な回路構成で正確な補正データを出力することができ、マルチスキャン対応の信号処理を行わせることができる。
【0013】又、上記した映像信号処理装置によって合成画像を投影する各プロジエクタ装置に入力される映像信号のエッジ部分の信号処理を行うことによって、投影された合成画像をのつなぎ目領域を目だたないように調整することができる。」

ケ 実施例についての記載
「【0014】
【実施例】まず、本発明の映像信号処理装置を使用した合成映像投影装置の概要に付いて図1により説明する。この図において、20の部分は合成画像を表示するための映像信号源を示し、例えば、コンピュータ20Aから出力される画像情報、レーザディスク装置20Bから出力されるマルチ画像データ、VTR20Cによる再生映像信号、及びテレビカメラ20Dから直接出力される被写体の映像信号等が映像ソースとして入力されることを示している。なお、VTRやレーザディスク装置等から出力される単一の映像信号は一旦コンピータ20Aに画像データとして取り込み、マルチ画面用のnチャンネルの映像信号に加工して、R、G、Bコンポーネント信号として出力されるが、この場合は同期情報は、例えばG信号に重乗する場合と、同期情報を別の信号として別のケーブルラインにより導出する場合が考えられる。
【0015】この映像信号源20より出力されたマルチ映像信号は好ましくは、R,G,Bコンポーネントとして本発明の信号処理装置を形成するソフトエッジマッチング装置30にそれぞれ供給される。そしてこのソフトエッジマッチング装置(以下、SEM装置という)30において、前記したようにように合成画面を投影する際に、そのつなぎ目の部分が連続的になるような信号処理が行われ、それそれ3台の投影装置40A、40B,40Cからなる合成画像投影装置40に供給されることになる。
【0016】3台の投影装置はプロジエクタとしては、慣用されている高輝度のブラウン管(CRT)によって、映像信号を投影像に変換し、横長のスクリーン40に合成画像として投影するものであるが、この投影装置は液晶プロジエクタによって構成されているものでもかまわない。またこの実施例の場合は3台の投影装置が横方向に並べられたものになっているが、この数は2以上であれば本発明の信号処理装置の対象となり、以下の実施例では、合成画像のつなぎ部分を2枚の映像画面で処理する場合に付いて述べる。
【0017】図2は2枚の画像A,Bを合成して表示する際の説明図であって、横長のスクリーン50は投影された画像AおよびBが合成される場合を示している。画像A及び画像Bの隣接部分は互いに画像が重なる重畳領域Qとされ、この重畳領域Qでは画像Aと画像Bが同一の映像となるように映像ソース側で信号の加工が行われている。すなわち、図2の1水平期間の映像信号VA に示されているように、一方の映像信号VA の右下がりの斜線部分の映像信号と、他方の映像信号VB の開始点の斜線部分は同一内容の映像情報とし、この部分の輝度レベルが曲線で示されているように徐々に低下するフエードアウト特性と、徐々に上昇するフエードイン特性となるように信号処理が行われる。
【0018】従ってこのような信号処理を行って2台の投影装置でスクリーン上に映像を投影すると、スクリーン50の領域Qの輝度は画像A、及び画像Bの部分の輝度と同一になり、そのつなぎ目がほとんど分からないように合成することができる。なお、一方の映像信号VA の開始点の部分は少しオーバスキャンとなる領域OSとなるように加工し、他方の映像信号VB の終了点付近もオーバスキャン領域OSとなるようにすると、スクリーン50の両端で画像のエッジが現れることを防止することができる。
【0019】また、3台の投影装置で合成画像を表示する場合は、図3に示すように左右の部分の各映像信号(1水平期間のみを示す)a、cは図2の場合と同様になるが、中央画面に位置する映像信号bの開始点領域bS と、終了点領域bE では映像信号のaの領域aE と、映像信号のbの領域bS と同一の内容映像信号となるように加工することが好ましく、この領域でフエードアウト、およびフエードイン処理され、合成したときに生じる2つの境界部分で画像のエッジ部分の補正を行うことになる。」(当審注:【0016】に「スクリーン40」とあるのは、「スクリーン50」の誤記である。)

5-2 記載事項の検討
(1) 刊行物1には、「【0006】…従来の投影型のプロジエクタでは図9(a)のスクリーン投影像に見られるように、スクリーン上で合成される各映像部分(LA1?LA4)の境界を重ね合わせ、合成されたスクリーン投影像に隙間が生じないようにする…。」との記載、「【0016】…、この投影装置は液晶プロジエクタによって構成されているものでもかまわない。またこの実施例の場合は3台の投影装置が横方向に並べられたものになっているが、この数は2以上であれば本発明の信号処理装置の対象となり、…」との記載、「【0018】従ってこのような信号処理を行って2台の投影装置でスクリーン上に映像を投影すると、スクリーン50の領域Qの輝度は画像A、及び画像Bの部分の輝度と同一になり、そのつなぎ目がほとんど分からないように合成することができる。」との記載がある。該記載から、「スクリーンと、前記スクリーン上で合成される各映像部分の境界が重ね合わされるよう投影する2台の液晶プロジェクタ」が開示されている。

(2) 刊行物1には、「【0015】この映像信号源20より出力されたマルチ映像信号は好ましくは、R,G,Bコンポーネントとして本発明の信号処理装置を形成するソフトエッジマッチング装置30にそれぞれ供給される。そしてこのソフトエッジマッチング装置(以下、SEM装置という)30において、前記したようにように合成画面を投影する際に、そのつなぎ目の部分が連続的になるような信号処理が行われ、それそれ3台の投影装置40A、40B,40Cからなる合成画像投影装置40に供給されることになる。【0016】…、この投影装置は液晶プロジエクタによって構成されているものでもかまわない。またこの実施例の場合は3台の投影装置が横方向に並べられたものになっているが、この数は2以上であれば本発明の信号処理装置の対象となり…」との記載がある。また、上記(1)より、液晶プロジェクタはスクリーン上に投影する。してみると、刊行物1には、「2台の液晶プロジェクタによって、スクリーン上に合成画像を投影するよう映像信号を信号処理して前記2台の液晶プロジェクタに供給するSEM装置」が開示されている。
ここで、技術常識を参酌すると、液晶プロジェクタは、複数の画素で構成される画像をスクリーン上に投影する投射装置であるから、2台の液晶プロジェクタによって投影される合成画像はそれぞれの画素を組み合わせた画像であり、また、液晶プロジェクタに供給される画像信号は画素のデータからなる。さらに、「【0013】又、上記した映像信号処理装置によって合成画像を投影する各プロジエクタ装置に入力される映像信号のエッジ部分の信号処理を行うことによって、投影された合成画像をのつなぎ目領域を目だたないように調整することができる。」との記載から、「信号処理」することは、「調整」することである。そうすると、刊行物1には、「2台の液晶プロジェクタによって重ね合わされる部分に生成されるそれぞれの画素を組み合わせて前記スクリーン上に合成画像を投影するよう画素データを調整して前記2台の液晶プロジェクタに供給するSEM装置」が開示されている。

(3) 刊行物1には、「【0006】…、この重ね合わせされた領域Qに投影される一方の映像信号V_(A)の輝度レベルを図9の(b)に示すようになだらかに低下し、他方の映像信号V_(B)のレベルをなだらかに上昇するような信号処理を行わせるようにしている。」との記載、「【0015】この映像信号源20より出力されたマルチ映像信号は好ましくは、R,G,Bコンポーネントとして本発明の信号処理装置を形成するソフトエッジマッチング装置30にそれぞれ供給される。そしてこのソフトエッジマッチング装置(以下、SEM装置という)30において、前記したようにように合成画面を投影する際に、そのつなぎ目の部分が連続的になるような信号処理が行われ、それそれ3台の投影装置40A、40B,40Cからなる合成画像投影装置40に供給されることになる。」との記載がある。該記載から、刊行物1には、「前記重ね合わされた領域に投影される一方の映像信号の輝度レベルがなだらかに低下し、他方の映像信号のレベルがなだらかに上昇するよう信号を処理し、2台の液晶プロジェクタに供給するSEM装置」が開示されている。

(4) 刊行物1には、「【0015】…。そしてこのソフトエッジマッチング装置(以下、SEM装置という)30において、前記したようにように合成画面を投影する際に、そのつなぎ目の部分が連続的になるような信号処理が行われ、それそれ3台の投影装置40A、40B,40Cからなる合成画像投影装置40に供給されることになる。」との記載がある。ここで、上記(1)より液晶プロジェクタはスクリーン上に映像を投影し、上記(2)より、液晶プロジェクタの台数として2台のものが開示されている。してみると、刊行物1には、スクリーンと、2台の液晶プロジェクタと、SEM装置を具備する合成画面を投影する装置が開示されている。

5-3 引用発明
上記「5-2(1)?(4)」より、刊行物1には、
「スクリーンと、
前記スクリーン上で合成される各映像部分の境界が重ね合わされるよう投影する2台の液晶プロジェクタと、
前記2台の液晶プロジェクタによって重ね合わされる部分に生成されるそれぞれの画素を組み合わせて前記スクリーン上に合成画像を投影するよう画素データを調整するものであって、前記重ね合わされた領域に投影される一方の映像信号の輝度レベルがなだらかに低下し、他方の映像信号のレベルがなだらかに上昇するよう信号を処理し、前記2台の液晶プロジェクタに供給するSEM装置と、
を具備する合成画面を投影する装置。」(以下「引用発明」という。)
の発明が記載されている。

5-4 対比・判断
(1) 本願発明の「スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)」と引用発明の「スクリーン」を比較すると、両者は相当関係にある。

(2) 本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」と引用発明の「前記スクリーン上で合成される各映像部分の境界が重ね合わされるよう投影する2台の液晶プロジェクタ」を比較する。
引用発明の「前記スクリーン上で合成される各映像部分の境界が重ね合わされるよう投影する」ことは、本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成する」ことに相当する。また、本願発明の「少なくとも2つの画像生成装置」と引用発明の「2台の液晶プロジェクタ」は、「2つの画像生成装置」の点で一致する。
してみると、本願発明の「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」と引用発明の「前記スクリーン上で合成される各映像部分の境界が重ね合わされるよう投影する2台の液晶プロジェクタ」は、「前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)」の点で一致する。

(3)本願発明の「前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)によって前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整するものであり、ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与えるように構成されている、画像プロセッサ(IP1、IP2、IP3、IP4、720)」と引用発明の「前記2台の液晶プロジェクタによって重ね合わされる部分に生成されるそれぞれの画素を組み合わせて前記スクリーン上に合成画像を投影するよう画素データを調整するものであって、前記重ね合わされた領域に投影される一方の映像信号の輝度レベルがなだらかに低下し、他方の映像信号のレベルがなだらかに上昇するよう信号を処理し、前記2台の液晶プロジェクタに供給するSEM装置」を比較する。
本願発明の「前記2つの画像生成装置」と引用発明の「前記2台の液晶プロジェクタ」は上記(2)で検討したとおり、「2つの画像生成装置」の点で一致し、本願発明の「ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与える」と引用発明の「…前記2台の液晶プロジェクタに供給する」ことは、「ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与える」点で一致する。また、本願発明の「前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置および強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整する」ことと引用発明の「前記重ね合わされた領域に投影される一方の映像信号の輝度レベルがなだらかに低下し、他方の映像信号のレベルがなだらかに上昇するよう信号を処理」することは、「前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整する」点で一致する。

そうすると、本願発明と引用発明は、
「スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)と、
前記スクリーン(102、202、302、710、712、830、920、1202)上に原始画像の隣接した重なり合う部分を生成するように構成されている、少なくとも2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)と、
前記2つの画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)によって前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を組み合わせ、前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように強度について前記重なり合う部分内に生成されるそれぞれの画素を表す画素データを調整するものであり、ある重なり合う部分(248、312、322、718)内の前記原始画像の特定の画素を表す画素データを含めた原始画像データを、前記少なくとも2つの前記画像生成装置(110、120、130、140、210、230、280、290、310、330、340、712、714)に与えるように構成されている、画像プロセッサ(IP1、IP2、IP3、IP4、720)と
を具備する、表示システム(100、200、300、700)。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:重なり合う部分内で画像プロセッサが行う画素データの調整として、本願発明では、「前記スクリーン上に前記原始画像の特定の画素を形成するように位置」「について前記画素データを調整する」のに対し、引用発明では、位置について画素データを調整するのか否か不明である点。

以下、上記相違点について検討する。
重なり合う部分において、画像の位置を調整することは、刊行物2(特開平6-308635号公報:例えば、【0049】には、水平方向の画像の位置ずれ、垂直方向の画像の位置ずれをなくすことが開示されている。)、刊行物3(特開平6-141246号公報:例えば、【0025】には補間により画素の値を求めて画素を形成することが開示され、また、【0113】?【0118】には、オーバーラップ部分では、各画像の画素値を変換して輝度をなめらかに変換させることが開示されている。そうすると、オーバーラップ部分では、画素を形成するよう位置を調整し、輝度を変換している。)、刊行物4(特開平7-239504号公報:【0058】には、画像の表示位置を補正することが開示されている。)に記載されるよう周知の技術手段である。してみると、引用発明において、2つの画像の境界部分を重ね合わせる際、重なり合う部分における画素データの調整として、輝度レベルのみならず、画素の位置を調整するよう為すことに困難性はない。

そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明と刊行物2?4に記載される上記周知の技術手段から当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。

5-5 特許法第29条第2項のむすび
したがって、本願発明は、引用発明と上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおり、当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由(特許法第29条の2、特許法第29条第2項)は依然として解消しておらず、本願発明は、特許法第29条の2の規定、及び特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、上記拒絶の理由によって拒絶すべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-18 
結審通知日 2012-05-22 
審決日 2012-06-20 
出願番号 特願2000-523812(P2000-523812)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (G09G)
P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福永 健司後藤 亮治  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 中塚 直樹
▲高▼木 真顕
発明の名称 モジュール式表示システム  
代理人 中村 綾子  
代理人 有原 幸一  
代理人 深川 英里  
代理人 河村 英文  
代理人 森本 聡二  
代理人 吉田 尚美  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
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