• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1265656
審判番号 不服2011-3537  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-16 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2005- 1832「電子決済システム、個人用端末、加盟店用端末、認証・決済装置、電子決済方法、および電子決済プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月20日出願公開、特開2006-190112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成17年1月6日の出願であって,平成22年5月26日付けの拒絶理由通知に対して同年7月26日付けで手続補正がなされ,同年8月16日付けの最後の拒絶理由通知に対して同年10月22日付けで手続補正がなされたが,同年11月10日付けで補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ,平成23年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年6月26日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年8月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年8月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
ネットワークを介して接続された,個人用端末と,加盟店用端末と,認証・決済装置と,により構成される電子決済システムであって,
前記個人用端末は,
顧客の一つまたは複数の種類の生体情報を,当該生体情報を用いて照合する際の照合順序の情報とともに取得する生体情報取得手段と,
前記生体情報取得手段が取得した前記生体情報からその特徴部位を抽出し,当該特徴部位および前記照合順序から一つの生体情報データを生成する生体情報データ生成手段と,
顧客が所持するクレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号,利用可能期間,利用可能限度額,利用可能店舗,利用可能品目などを含む顧客設定情報を取得する顧客設定情報取得手段と,
前記生体情報データ生成手段が生成した一つの生体情報データと,前記顧客設定情報取得手段が取得した一つの顧客設定情報との関連付けをおこない,前記認証・決済装置に登録するための登録データを生成する登録データ生成手段と,
各種データの前記ネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,
を備え,
前記加盟店用端末は,
照合する際の顧客の各生体情報および照合順序の情報を取得する生体情報取得手段と,
前記生体情報取得手段が取得した前記各生体情報からその特徴部位を抽出し,一つの生体情報データを生成する生体情報データ生成手段と,
顧客が購入した商品情報などを取得する商品情報取得手段と,
各種データの前記ネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,
を備え,
前記認証・決済装置は,
各種データの前記ネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,
前記登録データを格納するデータベースと,
前記登録データを管理し,当該登録データの前記データベースに対する書込/読出処理をおこなうデータ管理手段と,
前記加盟店用端末から送られてきた顧客の一つの生体情報データと同一データが前記データベースに格納されている登録データ中に存在するか否かを検索するデータ検索手段と,
前記データ検索手段による検索の結果,同一の生体情報データの存在が判明した場合に,前記加盟店用端末から送られてきた商品情報の内容が,前記データベースに格納されている登録データに含まれる,前記個人用端末から送られてきた顧客設定情報に含まれる条件を満足するか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段により,前記顧客設定情報に含まれる条件を満足すると判定された場合に,決済処理をおこなうためのデータを生成する決済処理手段と,
を備えており,
取引に先立ち,前記個人用端末の生体情報取得手段により顧客の一つまたは複数の種類の生体情報を,当該生体情報を用いて照合する際の照合順序の情報とともに取得し,また前記個人用端末の顧客設定情報取得手段から一つの前記顧客設定情報を取得することで,前記登録データ生成手段が前記認証・決済装置のデータベースに格納される一つの前記登録データを生成し,
取引の際に,前記加盟店用端末の生体情報取得手段により照合する際の顧客の各生体情報および照合順序の情報を取得することで生成された生体情報データと生体情報の種類,および照合順序の情報が同一なデータが前記データベースに格納されている登録データ中に存在するか否かを前記データ検索手段が検索し,同一の生体情報データの存在が判明した場合に,前記取得した一つまたは複数の生体情報の種類,および照合順序の情報に対応する,前記顧客設定情報に含まれる前記クレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号のうち一つを用いて決済処理がおこなわれることを特徴とする電子決済システム。」

3.当審における拒絶理由について
当審において平成24年6月26日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。

『1.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(途中省略)


[理由1について]
引用例1:特開2003-85624号公報
引用例2:特開2002-251584号公報
引用例3:特開2004-310778号公報

・請求項1
・引用例1?2
・備考
(以下略)』

4.引用例
(1)引用例1の記載事項及び引用例1発明
当審で通知した拒絶理由において引用した「特開2003-85624号公報」(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(あ)?(う)の事項が記載されている。(下線は関連する箇所を示すために当審において付加したものである。)

(あ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり,顧客の指紋,声紋や眼底写真を認識情報として登録し,この登録した指紋,音声や眼底写真により顧客を認識することによりキャッシュレスで商品を販売することができる自動販売機による商品販売システム,自動販売機,プログラムおよび記録媒体を提供することを目的としてなされたものである。」

(い)「【0014】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して本発明の商品販売システムを詳細に説明する。図1は,本発明の商品販売システムの全体構成を示すブロック図である。図1において,商品販売システムは,複数台の自動販売機100と自販機管理サーバ200とをネットワーク500を介して接続している。
【0015】自動販売機100は,各種の清涼飲料水,雑誌・書籍,金券,チケット等を販売するための自動販売機である。例えば,図2に示したような自動販売機は,商品の表示部A,商品選択のためのボタンB,顧客認証データの入力部C,各種のメッセージを音声で出力するスピーカD,各種のメッセージを文字で表示するLCD(液晶ディスプレイ)E,購入した商品の搬出口Fとを備えている。
【0016】自販機管理サーバ200は,自動販売機100からの問い合わせに応じて,情報管理DB400を参照して,認証処理および販売可能性の決定処理を行って,販売された場合には,その販売履歴を情報管理DB400へ登録する。予め定められた期間が過ぎると,情報管理DB400に登録されている顧客ごとの販売履歴から課金情報を作成し,ネットワーク500に接続された顧客の端末装置300へ課金情報を通知するとともに,指定された方法で課金金額を引き落とす。この情報管理DB400には,顧客ごとの個人および家族に関する情報,顧客ごとの販売履歴情報,および自動販売機100で販売対象となっている商品に関する情報を保持している(詳細は後述する)。また,この販売履歴は顧客の要求により,任意の時点で現在の利用状況を問い合わせることも可能である。
【0017】また,端末装置300は,パーソナルコンピュータ,PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末または携帯電話機等のいずれであってもよく,要は自販機管理サーバ200へネットワーク500を介してアクセスし,情報管理DB(データベース)の登録事項の修正や自分の課金情報の取り出し,または,自販機管理サーバ200からの課金情報の通知を取得できるものであればよい。」

(う)「【0019】次に,本商品販売システムによって商品を購入するときの概略説明を上記構成を使って説明する。予め顧客は,購入対象となる商品を販売する販売会社と契約し,商品を購入する顧客およびその家族の情報(氏名,住所,課金の引き落とし先,年齢,家族関係,電子メールのアドレス,認証のための指紋・声紋・眼底写真等)および必要に応じて,年齢等の制限に応じて販売禁止対象商品,一回および累積の購入金額上限値等を顧客情報として自販機管理サーバ200の情報管理DB400へ登録しておく。このときに顧客は,課金情報や顧客情報へのアクセスのために顧客IDおよびパスワードを割り当てられる。ここで電子メールのアドレスは,顧客が初めから所有するものであってもよいが,この契約したときに販売会社から与えるようにしてもよい。また,情報管理DB400には,この自販機管理サーバ200にネットワーク500を介して接続されたすべての自動販売機100が取り扱っている商品に関する商品情報(商品名,商品番号,販売価格,年齢制限のある商品かどうかを示す情報)を登録しておく。
【0020】次に,顧客は自動販売機100(図2参照)の商品表示Aを見て所望の商品があった場合には,例えば,指紋照合器のような認証データ入力部Cに指紋を押し当てる。自動販売機100は,ネットワーク500を介して接続された自販機管理サーバ200へこの指紋データを送信する。この指紋データを受信した自販機管理サーバ200は,情報管理DB400の顧客情報に登録された認証情報(指紋データ)と照合し,契約された顧客かどうかを調べ,その結果をもとの自動販売機100へ通知する。
【0021】認証結果を受信した自動販売機100は,その結果を音声でスピーカDへ出力するとともに,文字として液晶ディスプレイEへ表示する。顧客は認証された場合,商品表示Aの下にある商品選択ボタンBを押す。自動販売機100はこの選択された商品情報(商品名および商品番号)を自販機管理サーバ200へ送信する。自販機管理サーバ200ではこの商品情報と先に認証された顧客情報とから,情報管理DB400を参照して,商品の販売価格,販売禁止対象商品であるかどうかを識別する情報,購入金額の上限値,年齢制限対象商品の区別等とから販売してもよいかどうかを決定して,それを自動販売機100へ通知する。販売可能であると決定した場合は,自販機管理サーバ200は,顧客ごとに販売履歴(販売商品名,販売価格(単価),数量,販売日,販売した自動販売機の設置場所等)を情報管理DB400へ登録する。
【0022】この販売可能性の結果を受信した自動販売機100は,販売できないときにはそのメッセージを上記同様に,音声または文字として出力する。販売が可能であれば,指定された商品を商品格納場所から商品の搬出口Fへ搬出することによって,販売が完了する。
【0023】予め決めておいた期間が終了すると,顧客ごとに情報管理DB400に登録された販売履歴を参照して,課金情報を計算し,顧客の電子メールアドレスへそれを送付して,顧客に通知する。または,課金情報を郵便で通知してもよいし,先に割り当てられた顧客IDとパスワードを使って端末装置300から任意の時期に課金情報を閲覧請求するようにしてもよい。
【0024】図3は,本発明の商品販売システムの機能構成を示すブロック図である。図3を使って自動販売機100および自販機管理サーバ200の各機能について詳細に説明する。図3において,自動販売機100は,認証情報入力手段110,商品指定手段120と商品搬出手段130とから構成されている。認証情報入力手段110は,利用者に自動販売機100の認証データ入力部(例えば,図2のC)から自分の認証情報を入力させる。この認証入力には,利用者の指紋データ,声紋データまたは眼底写真データを入力させる機器を用いる。これらのいずれかまたは組み合わせで入力された認証データを自販機管理サーバ200へネットワーク500を介して送信し,この利用者が本システムの登録者(顧客)であるかどうかを確かめる。
【0025】商品指定手段120は,自販機管理サーバ200から認証結果を得て,その結果を音声または文字にて利用者へ通知する。例えば,利用者が顧客ではなかった場合には,「お客様は,ご契約者として登録されておりませんので,ご契約の上ご利用ください。」と,音声または文字列で通知する(図2のDまたはE参照)。利用者が顧客であった場合には,「商品をお選びください。」と音声または文字にて通知し,顧客は商品表示(図2のA参照)を参考にして商品を選び,その商品に対応するボタン(図2のB参照)を押すと,この商品指定手段120は顧客の選んだ商品に対する商品番号を自販機管理サーバ200へ送信する。上記では,単品を選定しているが,複数個の商品を選択したり,同じ商品を複数個指定するように構成してもよい。
【0026】商品搬出手段130は,自販機管理サーバ200から先に顧客の指定した商品の販売可否の決定通知を受け取り,その結果を音声または文字にて顧客へ通知する。例えば,顧客の指定した商品(例えば,タバコ)が年齢制限されており,顧客が20歳未満の場合には,「ご指定の商品は年齢制限がされております。」と通知し,その商品の販売を行わない。また,顧客の指定した商品が親等により販売禁止品として指定されている場合には,「ご指定の商品は販売制限がされております。」と通知し,その商品の販売を行わない。また,指定された商品の一回の購入金額が予め設定された上限値を越えるような場合には,「ご利用金額が上限値を超えてしまいます」と通知し,その商品の販売を行わない。また,指定された商品を購入することによって,これまでの累計金額が予め設定された上限値(個人として,あるいは,家族全体として)を越えるような場合には,「ご利用金額の累計が上限値を超えてしまいます」と通知し,その商品の販売を行わない。販売許可がなされた場合には,音声または文字にて「ご利用ありがとうございました。」と通知するとともに,商品搬出口(図2のF参照)から購入した商品を排出する。
【0027】また,図3において,自販機管理サーバ200は,認証手段210,商品販売手段220,販売履歴管理手段230と情報管理DB400とから構成される。さらに,販売履歴管理手段230は販売履歴登録手段231,販売履歴通知手段232と販売履歴表示手段233とから,また,情報管理DB(データベース)400は顧客情報DB410,販売履歴DB420と商品情報DB430とから構成される。
【0028】顧客情報DB410には,本システムを使う前に,予め顧客ごとに少なくとも次の情報を登録しておく。
・氏名
・住所
・年齢
・指紋,声紋または眼底写真データ
(これらのデータを1つまたは組み合わせて認証する。)
・クレジットカードまたは銀行口座に関する情報
・契約したときに与えられる顧客の識別子(顧客ID)およびパスワード
・申告した,または,契約時に与えられる電子メールアドレス
・販売禁止品目
・顧客個人の一回の購入金額の上限
・顧客個人の累積購入金額の上限(日ごとまたは月ごと)
・顧客の家族ごとに累積購入金額の上限(日ごとまたは月ごと)
・顧客の家族関係
上記の顧客ごとの販売禁止品目,顧客ごとの一回の購入金額の上限,顧客個人の累積購入金額の上限,顧客の家族ごとの累積購入金額の上限は,ネットワーク500を介して接続された顧客が使用する端末装置300から設定または変更できる。
【0029】販売履歴DB420は,顧客ごとに予め設定した期間における販売履歴を格納する。販売履歴としては,購入商品名およびその商品番号,購入価格(単価),購入数量,購入日時,購入した自動販売機の設置場所を商品ごとに記録しておく。
【0030】商品情報DB430は,少なくとも商品ごとに商品品目,商品番号,販売価格(単価),年齢制限商品であるかを示す情報とを格納する。
【0031】認証手段210は,自動販売機100から送信された利用者の認証情報を顧客情報DB410に登録された認証情報と照合した結果として,認証されたか,または,認証されなかったかの区別を自動販売機100へ通知する。
【0032】商品販売手段220は,自動販売機100から送信された顧客が所望する商品情報(商品番号)を受信して,次のことを調べることによって販売できるかどうかを決定し,その結果として,販売可または販売不可の区別とその理由とをこの自動販売機100へ返信する。
(1)販売禁止品目であるか
顧客が所望する商品情報が顧客情報DB410に登録された顧客の販売禁止品目中にあるかどうかを調べ,販売禁止品目にあれば販売不可とする。
(2)年齢制限商品であるか
顧客が所望する商品情報が商品情報DB430に年齢制限商品として登録されており,顧客情報DB410に登録された顧客の年齢が未成年であれば販売不可とする。
(3)一回の購入金額の上限値であるか
商品情報DB430を参照して,顧客が所望する商品情報に対する販売価格を取り出す。また,顧客情報DB410に登録された顧客の一回の購入金額の上限値とを取り出す。これらから,顧客の所望する商品の単価とその購入個数とから購入金額を計算し,この金額が一回の購入金額の上限値を超えていれば,販売不可とする。
(4)購入金額の累積値が上限値であるか
商品情報DB430を参照して,顧客が所望する商品情報に対する販売価格を取り出す。また,販売履歴DB420に記録されたその顧客の購入した商品の累積金額と今回購入予定の商品の単価とその購入個数とから計算した購入金額との合計が顧客情報DB410に登録された顧客の累積購入金額の上限値を超えている場合には販売不可とする。
(5)家族全体の購入金額の累積値が上限値であるか
商品情報DB430を参照して,顧客が所望する商品情報に対する販売価格を取り出す。また,販売履歴DB420に記録されたその顧客の家族全員の購入した商品の累積金額と今回購入予定の商品の単価とその購入個数とから計算した購入金額との合計が顧客情報DB410に登録された顧客の家族全体の累積購入金額の上限値を超えている場合には販売不可とする。
【0033】上記のいずれの条件にも当てはまらないときには,販売可として自動販売機100へ通知する。
【0034】販売履歴登録手段231は,商品販売手段220で販売可となったときには,顧客ごとに,購入商品名およびその商品番号,購入価格(単価),購入数量,購入日時,購入した自動販売機の設置場所を販売履歴DB420へ記録する。
【0035】販売履歴通知手段232は,予め決めておいた期間が過ぎると,課金を引き落とす前に,各顧客に,販売履歴DB420に記憶された商品の販売履歴の細目とその合計を顧客情報DB410に登録された顧客の電子メールアドレスへ通知メールを出すとともに,顧客情報DB410に登録された方法(クレジットカードまたは銀行口座)によって上記計算された課金金額を引き落とす。」

引用例1の上記(あ)?(う)の記載及び図面の記載を総合すれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「顧客の指紋,声紋や眼底写真を認識情報として登録し,この登録した指紋,音声や眼底写真により顧客を認識することによりキャッシュレスで商品を販売することができる自動販売機による商品販売システムであって,
当該,商品販売システムは,複数台の自動販売機100と自販機管理サーバ200とをネットワーク500を介して接続しており,
また,ネットワーク500に接続されたパーソナルコンピュータ等の顧客の端末装置300を備え,
自動販売機100は,認証情報入力手段110,商品指定手段120から構成されており,
認証情報入力手段110は,利用者に自動販売機100の認証データ入力部から自分の認証情報を入力させ,この認証入力には,利用者の指紋データ,声紋データまたは眼底写真データを入力させる機器を用い,これらのいずれかまたは組み合わせで入力された認証データを自販機管理サーバ200へネットワーク500を介して送信し,この利用者が本システムの登録者(顧客)であるかどうかを確かめるものであり,
商品指定手段120は顧客の選んだ商品に対する商品番号を自販機管理サーバ200へ送信するものであり,
自販機管理サーバ200は,認証手段210,商品販売手段220,販売履歴管理手段230と情報管理DB400とから構成されて,
販売履歴管理手段230は,販売履歴登録手段231,販売履歴通知手段232と販売履歴表示手段233とから構成され,
情報管理DB(データベース)400は顧客情報DB410,販売履歴DB420と商品情報DB430とから構成され,
顧客情報DB410には,本システムを使う前に,予め顧客ごとに少なくとも,氏名,住所,年齢,指紋,声紋または眼底写真データ(これらのデータを1つまたは組み合わせて認証する。),クレジットカードまたは銀行口座に関する情報,販売禁止品目,顧客個人の一回の購入金額の上限等の情報を登録しておき,
上記の顧客ごとの販売禁止品目,顧客ごとの一回の購入金額の上限は,ネットワーク500を介して接続された顧客が使用する端末装置300から設定または変更でき,
販売履歴DB420は,顧客ごとに予め設定した期間における販売履歴を格納するものであり,
販売履歴としては,購入商品名およびその商品番号,購入価格(単価),購入数量,購入日時,購入した自動販売機の設置場所を商品ごとに記録しており,
商品情報DB430は,少なくとも商品ごとに商品品目,商品番号,販売価格(単価),年齢制限商品であるかを示す情報とを格納しており,
認証手段210は,自動販売機100から送信された利用者の認証情報を顧客情報DB410に登録された認証情報と照合した結果として,認証されたか,または,認証されなかったかの区別を自動販売機100へ通知するものであり,
商品販売手段220は,自動販売機100から送信された顧客が所望する商品情報(商品番号)を受信して,(1)販売禁止品目であるか,(2)一回の購入金額の上限値であるか,を調べることによって販売できるかどうかを決定し,その結果として,販売可または販売不可の区別とその理由とをこの自動販売機100へ返信するものであり,
上記(1),(2)のいずれの条件にも当てはまらないときには,販売可として自動販売機100へ通知し,
販売履歴登録手段231は,商品販売手段220で販売可となったときには,顧客ごとに,購入商品名およびその商品番号,購入価格(単価),購入数量,購入日時,購入した自動販売機の設置場所を販売履歴DB420へ記録するものであり,
販売履歴通知手段232は,予め決めておいた期間が過ぎると,顧客情報DB410に登録された方法(クレジットカードまたは銀行口座)によって上記計算された課金金額を引き落とすものであり,
予め顧客は,購入対象となる商品を販売する販売会社と契約し,商品を購入する顧客の情報(氏名,住所,課金の引き落とし先,年齢,認証のための指紋・声紋・眼底写真等)および必要に応じて,年齢等の制限に応じて販売禁止対象商品,一回の購入金額上限値等を顧客情報として自販機管理サーバ200の情報管理DB400へ登録しておき,
次に,顧客は自動販売機100の商品表示Aを見て所望の商品があった場合には,例えば,指紋照合器のような認証データ入力部Cに指紋を押し当て,
自動販売機100は,ネットワーク500を介して接続された自販機管理サーバ200へこの指紋データを送信し,この指紋データを受信した自販機管理サーバ200は,情報管理DB400の顧客情報に登録された認証情報(指紋データ)と照合し,契約された顧客かどうかを調べ,その結果をもとの自動販売機100へ通知し,
顧客は認証された場合,商品表示Aの下にある商品選択ボタンBを押すと,自動販売機100はこの選択された商品情報(商品名および商品番号)を自販機管理サーバ200へ送信し,
自販機管理サーバ200ではこの商品情報と先に認証された顧客情報とから,情報管理DB400を参照して,商品の販売価格,販売禁止対象商品であるかどうかを識別する情報,購入金額の上限値,年齢制限対象商品の区別等とから販売してもよいかどうかを決定して,それを自動販売機100へ通知し,
販売可能であると決定した場合は,自販機管理サーバ200は,顧客ごとに販売履歴(販売商品名,販売価格(単価),数量,販売日,販売した自動販売機の設置場所等)を情報管理DB400へ登録し,
予め決めておいた期間が終了すると,顧客ごとに情報管理DB400に登録された販売履歴を参照して,課金情報を計算して課金する,
商品販売システム。」

(2)引用例2の記載事項
当審で通知した拒絶理由において引用した「特開2002-251584号公報」(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の(え),(お)の事項が記載されている。

(え)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,顧客がインターネット等のネットワークを通じて商品を購入するに際し,特に顧客の指紋によって顧客の認証を行い取引限度額によって商品購入の可否を検査する手段を設け,現金やクレジットカードの携帯を不要とした指紋認証によるキャッシュレス取引システムに関する。」

(お)「【0013】本発明の実施の形態の構成は,商品を販売する店舗等に設置された顧客の指紋入力機能付き商品取引装置10と,受信した顧客の指紋情報を元に顧客の認証を行う指紋認証サーバ20と,顧客の購入を希望する商品価格と当該顧客の取引限度額とのチェックを行う契約サーバ30と,指紋入力機能付き商品取引装置10と指紋認証サーバ20と契約サーバ30を接続するインターネットを含むネットワーク40と,から構成されている。」

5.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明の「自動販売機100」と本願発明の「加盟店用端末」は,ともに「商品を販売するために使用する装置」である点で共通する。
引用例1発明の「自販機管理サーバ200」は,その動作からみて,本願発明の「認証・決済装置」に相当する。
引用例1発明の自動販売機100と自販機管理サーバ200とは,「ネットワーク500を介して接続」されており,当該「ネットワーク500」が本願発明の「ネットワーク」に相当する。
また,引用例1発明の「商品販売システム」が,本願発明の「電子決済システム」に対応する。
してみれば,本願発明と引用例1発明とは,後記する点で相違するものの,ともに,「ネットワークを介して接続された,『商品を販売するために使用する装置』と,認証・決済装置と,により構成される電子決済システム」である点で共通する。

(b)引用例1発明では,利用者の指紋データ,声紋データまたは眼底写真データを入力させ,これらのいずれかまたは組み合わせで入力された認証データを自販機管理サーバ200へ送信して,利用者が本システムの登録者(顧客)であるかどうかを確かめるものであり,引用例1発明の「利用者が本システムの登録者(顧客)であるかどうかを確かめる」ことが,本願発明の「照合する」ことに相当し,引用例1発明の「指紋データ」「声紋データ」及び「眼底写真データ」はいずれも「生体情報」であるから,引用例1発明の「指紋データ」「声紋データ」及び「眼底写真データ」が,本願発明の「顧客の各生体情報」に相当する。
また,引用例1発明の「認証情報入力手段110」は,「利用者に自動販売機100の認証データ入力部から自分の認証情報を入力させ,この認証入力には,利用者の指紋データ,声紋データまたは眼底写真データを入力させる機器を用い」るものであるから,引用例1発明の認証データを「入力する」ことが,本願発明の生体情報を「取得する」ことに相当し,引用例1発明の「認証情報入力手段110」が本願発明の「生体情報取得手段」に相当する。
してみれば,本願発明の「生体情報取得手段」と引用例1発明の「認証情報入力手段110」とは,後記する点で相違するものの,ともに,「照合する際の顧客の各生体情報を取得する生体情報取得手段」である点で共通する。

(c)引用例1発明の「商品指定手段120」は,顧客の選んだ商品に対する商品番号を自販機管理サーバ200へ送信するものであり,そのために商品情報を取得していることは明らかであるから,引用例1発明の「商品指定手段120」が本願発明の「顧客が購入した商品情報などを取得する商品情報取得手段」に相当する。

(d)引用例1発明の「自動販売機100」は,「認証データ」や「商品番号」をネットワーク500を介して自販機管理サーバ200へ送信しているから,「各種データのネットワークに対する送受信をおこなう通信手段」を備えているということができる。

(e)引用例1発明の「自販機管理サーバ200」は,「認証されたか,または,認証されなかったかの区別」や「販売可または販売不可の区別とその理由」の情報を自動販売機100へ送信しているから,「各種データのネットワークに対する送受信をおこなう通信手段」を備えているということができる。

(f)引用例1発明の「顧客情報DB410」には,「予め顧客ごとに少なくとも,氏名,住所,年齢,指紋,声紋または眼底写真データ(これらのデータを1つまたは組み合わせて認証する。),クレジットカードまたは銀行口座に関する情報,販売禁止品目,顧客個人の一回の購入金額の上限等の情報が登録されて」おり,登録されたこのデータは,顧客の生体情報とクレジットカード等の決済情報とを関連付けて登録しておくことによって,「顧客を認証して決済するためのデータ」である点で,本願発明の「登録データ」と共通するものであるから,本願発明の「登録データを格納するデータベース」と引用例1発明の「顧客情報DB410」とは,後記する点で相違するものの,ともに,「『顧客を認証して決済するためのデータ』を格納するデータベース」である点で共通する。

(g)引用例1発明の「自販機管理サーバ200」が,「データベース」に関連して,「『顧客を認証して決済するためのデータ』を管理し,当該データのデータベースに対する書込/読出処理をおこなうデータ管理手段」を備えていることは,自明のことである。

(h)引用例1発明の「認証手段210」は,「自動販売機100から送信された利用者の認証情報を顧客情報DB410に登録された認証情報と照合」するものであり,ここで,引用例1発明の「認証情報」が本願発明の「生体情報」に相当するから,本願発明の「検索手段」と引用例1発明の「認証手段210」とは,後記する点で相違するものの,ともに「『商品を販売するために使用する装置』から送られてきた顧客の生体情報と同一の生体情報が,データベースに格納されている『顧客を認証して決済するためのデータ』中に存在するか否かを検索するデータ検索手段」である点で共通する。

(i)引用例1発明の「利用者の認証情報を顧客情報DB410に登録された認証情報と照合した結果として,認証された」場合が,本願発明の「データ検索手段による検索の結果,同一の生体情報の存在が判明した場合」に相当する。
引用例1発明の「顧客情報DB410」に登録されているデータのうち,「クレジットカードまたは銀行口座に関する情報,販売禁止品目,顧客個人の一回の購入金額の上限等の情報」は,具体的な情報の点で差異はあるものの,顧客が設定している情報である点で,本願発明の「顧客設定情報」に対応するものであり,このうち,「販売禁止品目,顧客個人の一回の購入金額の上限」の情報が本願発明における「顧客設定情報に含まれる条件」に相当する。
そして,引用例1発明の「商品販売手段220」は,「自動販売機100から送信された顧客が所望する商品情報(商品番号)を受信して,(1)販売禁止品目であるか,(2)一回の購入金額の上限値であるか,を調べることによって販売できるかどうかを決定し」ており,これが,本願発明の「顧客設定情報に含まれる条件を満足するか否かを判定する」ことに相当するから,本願発明の「判定手段」と引用例1発明の「商品販売手段220」とは,後記する点で相違するものの,ともに「データ検索手段による検索の結果,同一の生体情報の存在が判明した場合に,『商品を販売するために使用する装置』から送られてきた商品情報の内容が,データベースに格納されている『顧客を認証して決済するためのデータ』に含まれる顧客設定情報に含まれる条件を満足するか否かを判定する判定手段」である点で共通する。

(j)引用例1発明の「販売履歴登録手段231」は,「商品販売手段220で販売可となったときには,顧客ごとに,購入商品名およびその商品番号,購入価格(単価),購入数量,購入日時,購入した自動販売機の設置場所を販売履歴DB420へ記録するものであり」,また,「販売履歴通知手段232」は,「予め決めておいた期間が過ぎると,顧客情報DB410に登録された方法(クレジットカードまたは銀行口座)によって上記計算された課金金額を引き落とすものであ」る。
そして,引用例1発明の「商品販売手段220で販売可となったとき」は,本願発明の「判定手段により,顧客設定情報に含まれる条件を満足すると判定された場合」に対応するから,引用例1発明の「販売履歴登録手段231」及び「販売履歴通知手段232」が本願発明の「判定手段により,顧客設定情報に含まれる条件を満足すると判定された場合に,決済処理をおこなうためのデータを生成する決済処理手段」に相当する。

(k)引用例1発明では,顧客情報DB410に,「予め顧客ごとに少なくとも,氏名,住所,年齢,指紋,声紋または眼底写真データ(これらのデータを1つまたは組み合わせて認証する。),クレジットカードまたは銀行口座に関する情報,販売禁止品目,顧客個人の一回の購入金額の上限等の情報を登録」しているから,「取引に先立ち,顧客の一つまたは複数の生体情報を取得し,また一つの前記顧客設定情報を取得することで,認証・決済装置のデータベースに格納される一つの,『顧客を認証して決済するためのデータ』を生成し」ているということができる。

(l)引用例1発明では,「顧客は自動販売機100の商品表示Aを見て所望の商品があった場合には,例えば,指紋照合器のような認証データ入力部Cに指紋を押し当て,自動販売機100は,ネットワーク500を介して接続された自販機管理サーバ200へこの指紋データを送信し,この指紋データを受信した自販機管理サーバ200は,情報管理DB400の顧客情報に登録された認証情報(指紋データ)と照合し,契約された顧客かどうかを調べ」ている。
そして,引用例1発明の「認証データ入力部C」が本願発明の「生体情報取得手段」に相当するから,「取引の際に,『商品を販売するために使用する装置』の生体情報取得手段により,照合する際の顧客の各生体情報を取得することで,生体情報が同一なデータがデータベースに格納されている『顧客を認証して決済するためのデータ』中に存在するか否かをデータ検索手段が検索し」ているということができる。

(m)引用例1発明では,自販機管理サーバ200が,受信した指紋データと情報管理DB400の顧客情報に登録された認証情報(指紋データ)とを照合して,契約された顧客かどうかを調べているから,引用例1発明の「顧客が認証された場合」とは,自販機管理サーバ200が,受信した指紋データと情報管理DB400の顧客情報に登録された認証情報(指紋データ)とを照合して,「同一の指紋データ(生体情報)の存在が判明した場合」のことである。
そして,同一の指紋データ(生体情報)の存在が判明して販売可となったときには,「顧客ごとに,購入商品名およびその商品番号,購入価格(単価),購入数量,購入日時,購入した自動販売機の設置場所を販売履歴DB420へ記録」し,「予め決めておいた期間が過ぎると,顧客情報DB410に登録された方法(クレジットカードまたは銀行口座)によって上記計算された課金金額を引き落とす」,すなわち,「クレジットカードまたは銀行口座に関する情報を用いて決済処理がおこなわれる」ものである。
また,引用例1発明の「クレジットカードまたは銀行口座に関する情報」が本願発明の「クレジットカードの会員番号や銀行の口座番号」に相当し,前記「クレジットカードまたは銀行口座に関する情報」が,自販機管理サーバ200が「受信(取得)した一つまたは複数の生体情報に対応する顧客設定情報に含まれる」ものであることは自明のことである。
してみれば,本願発明と引用例1発明とは,後記する点で相違するものの,ともに「同一の生体情報の存在が判明した場合に,取得した一つまたは複数の生体情報に対応する,顧客設定情報に含まれるクレジットカードの会員番号や銀行の口座番号を用いて決済処理がおこなわれる」点で共通する。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは,

「ネットワークを介して接続された,『商品を販売するために使用する装置』と,認証・決済装置と,により構成される電子決済システムであって,
前記『商品を販売するために使用する装置』は,
照合する際の顧客の各生体情報を取得する生体情報取得手段と,
顧客が購入した商品情報などを取得する商品情報取得手段と,
各種データのネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,
を備え,
前記認証・決済装置は,
各種データの前記ネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,
『顧客を認証して決済するためのデータ』を格納するデータベースと,
前記『顧客を認証して決済するためのデータ』を管理し,当該データのデータベースに対する書込/読出処理をおこなうデータ管理手段と,
前記『商品を販売するために使用する装置』から送られてきた顧客の生体情報と同一の生体情報が,前記データベースに格納されている『顧客を認証して決済するためのデータ』中に存在するか否かを検索するデータ検索手段と,
前記データ検索手段による検索の結果,同一の生体情報の存在が判明した場合に,前記『商品を販売するために使用する装置』から送られてきた商品情報の内容が,前記データベースに格納されている前記『顧客を認証して決済するためのデータ』に含まれる顧客設定情報に含まれる条件を満足するか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段により,前記顧客設定情報に含まれる条件を満足すると判定された場合に,決済処理をおこなうためのデータを生成する決済処理手段と,
を備えており,
取引に先立ち,顧客の一つまたは複数の生体情報を取得し,また一つの前記顧客設定情報を取得することで,前記認証・決済装置のデータベースに格納される一つの,前記『顧客を認証して決済するためのデータ』を生成し,
取引の際に,前記『商品を販売するために使用する装置』の生体情報取得手段により照合する際の顧客の各生体情報を取得することで,生体情報が同一なデータが前記データベースに格納されている『顧客を認証して決済するためのデータ』中に存在するか否かを前記データ検索手段が検索し,
同一の生体情報の存在が判明した場合に,前記取得した一つまたは複数の生体情報に対応する,前記顧客設定情報に含まれるクレジットカードの会員番号や銀行の口座番号を用いて決済処理がおこなわれることを特徴とする電子決済システム。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では,電子決済システムが,「個人用端末」を備え,当該「個人用端末」は,「顧客の一つまたは複数の種類の生体情報を,当該生体情報を用いて照合する際の照合順序の情報とともに取得する生体情報取得手段と,
前記生体情報取得手段が取得した前記生体情報からその特徴部位を抽出し,当該特徴部位および前記照合順序から一つの生体情報データを生成する生体情報データ生成手段と,
顧客が所持するクレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号,利用可能期間,利用可能限度額,利用可能店舗,利用可能品目などを含む顧客設定情報を取得する顧客設定情報取得手段と,
前記生体情報データ生成手段が生成した一つの生体情報データと,前記顧客設定情報取得手段が取得した一つの顧客設定情報との関連付けをおこない,前記認証・決済装置に登録するための登録データを生成する登録データ生成手段と,
各種データの前記ネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,を備え」
ているのに対して,引用例1発明の商品販売システムは,そのような「個人用端末」を備えていない点。

[相違点2]
『商品を販売するために使用する装置』が,本願発明では,「加盟店用端末」であるのに対して,引用例1発明では,「自動販売機100」である点。

[相違点3]
顧客から生体情報を取得する際に,本願発明では,当該生体情報を用いて照合する際の「照合順序の情報」も取得し,「生体情報データと生体情報の種類,および照合順序の情報が同一なデータがデータベースに格納されている登録データ中に存在するか否かをデータ検索手段が検索し」ているのに対して,引用例1発明では,そのような構成となていない点。

[相違点4]
本願発明では,加盟店用端末が,「生体情報取得手段が取得した各生体情報からその特徴部位を抽出し,一つの生体情報データを生成する生体情報データ生成手段」を備えるとともに,認証・決済装置のデータ検索手段が,「加盟店用端末から送られてきた顧客の一つの生体情報データと同一データがデータベースに格納されている登録データ中に存在するか否かを検索する」ように構成されているのに対して,引用例1発明は,そのような構成となっていない点。

[相違点5]
本願発明では,「顧客設定情報に含まれるクレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号のうち一つを用いて決済処理がおこなわれる」のに対して,引用例1発明では,「顧客情報DB410に登録された方法(クレジットカードまたは銀行口座)によって,計算された課金金額を引き落と」しているものの,「顧客設定情報に含まれるクレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号のうち一つを用いて決済処理がおこなわれる」ものではない点。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。

[相違点2]について
店舗等においてキャッシュレスで取引を行いたいという課題はありふれた課題であり,上記摘記事項(え),(お)によれば,引用例2には,商品を販売する店舗等に設置された顧客の指紋入力機能付き商品取引装置10を用いて,キャッシュレス取引を行うことが記載されている。
してみれば,引用例1発明において,自動販売機100に代えて,店舗等に設置された「加盟店用端末」を用いるように構成することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点3]について
引用例1発明は,指紋,声紋または眼底写真データを組み合わせて認証するところ,例えば,特開昭61-175865号公報(特に特許請求の範囲,第3頁左下欄第5?12行の記載参照),特開平10-154231号公報(特に要約の記載参照)には,複数の指の指紋の入力順序を用いて認証を行うことにより,セキュリティを高めることが記載されており,認証のセキュリティを高めるために,複数の生体情報の「照合順序の情報」を用いて認証を行うことは周知技術(以下,「周知技術1」という。)であるものと認められる。
してみれば,引用例1発明において,指紋,声紋,眼底写真データを組み合わせて認証する際に,上記周知技術1を採用して,指紋,声紋,眼底写真データ等の生体情報の「照合順序の情報」を用いて認証を行うために,顧客から生体情報を取得する際に,当該生体情報を用いて照合する際の「照合順序の情報」も併せて取得するようにし,「生体情報データと生体情報の種類,および照合順序の情報が同一なデータがデータベースに格納されている登録データ中に存在するか否かをデータ検索手段が検索」するように構成することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点4]について
例えば特開2004-94690号公報(特に【0024】?【0025】段落の記載参照)又は特開2003-36247号公報(特に【0033】段落の記載参照)に記載されているように,指紋や網膜のような生体情報を比較,照合する際に,その「特徴部分を抽出する」ことは周知技術(以下,「周知技術2」という。)であるものと認められる。
してみれば,引用例1発明に当該周知技術2を適用して,加盟店用端末が,「生体情報取得手段が取得した各生体情報からその特徴部位を抽出し,一つの生体情報データを生成する生体情報データ生成手段」を備えるように構成するとともに,認証・決済装置のデータ検索手段が,「加盟店用端末から送られてきた顧客の一つの生体情報データと同一データがデータベースに格納されている登録データ中に存在するか否かを検索する」ように構成することには,何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点5]について
引用例1発明において,顧客情報DB410には,「予め顧客ごとに少なくとも,氏名,住所,年齢,指紋,声紋または眼底写真データ,クレジットカードまたは銀行口座に関する情報」が登録されているものの,同一の顧客が「複数」のクレジットカードまたは「複数」の銀行口座を所持し,当該複数のクレジットカード「毎」の会員番号や銀行「毎」の口座番号が登録されているとの明示的な記載はない。
しかしながら,同一の顧客が「複数」のクレジットカードまたは「複数」の銀行口座を所持することは,普通に想定されることであり,そのような場合に,引用例1発明において,同一の顧客が,各クレジットカード「毎」の会員番号や銀行「毎」の口座番号を登録するように構成することには何ら困難性がない。
してみれば,引用例1発明において,「顧客設定情報に含まれる前記クレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号のうち一つを用いて決済処理がおこなわれる」ように構成することにも何ら困難性はなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点1]について
引用例1発明において,顧客情報DB410に,「予め顧客ごとに少なくとも,氏名,住所,年齢,指紋,声紋または眼底写真データ,クレジットカードまたは銀行口座に関する情報,販売禁止品目,顧客個人の一回の購入金額の上限等の情報」すなわち,「顧客を認証して決済するためのデータ」を登録する際に,ネットワーク500に接続されている「顧客の端末装置300」(本願発明における「個人用端末」に相当する)を用いるように構成することには何ら困難性がない。
また,引用例1発明の「顧客個人の一回の購入金額の上限」が本願発明の「利用可能限度額」に相当し,引用例1発明の「販売禁止品目」が本願発明の「利用可能品目」の逆の品目に相当するものと認められるところ,さらに条件を追加すればセキュリティがさらに高まることは自明のことであり,セキュリティを高めるためにどのような条件を採用するかは,当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないものである。
また,個人用端末から認証・決済装置のデータベースに,「顧客を認証して決済するためのデータ」を登録する際に,個人用端末において,「取得した生体情報からその特徴部位を抽出し,当該特徴部位および照合順序から一つの生体情報データを生成し,当該一つの生体情報データと,一つの顧客設定情報との関連付けをおこない,認証・決済装置に登録するための登録データを生成する」ように構成することも,当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないものである。
してみれば,引用例1発明に,上記周知技術1,2を適用することにより,電子決済システムが,「個人用端末」を備えるように構成するとともに,当該「個人用端末」が,「顧客の一つまたは複数の種類の生体情報を,当該生体情報を用いて照合する際の照合順序の情報とともに取得する生体情報取得手段と,前記生体情報取得手段が取得した前記生体情報からその特徴部位を抽出し,当該特徴部位および前記照合順序から一つの生体情報データを生成する生体情報データ生成手段と,顧客が所持するクレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号,利用可能期間,利用可能限度額,利用可能店舗,利用可能品目などを含む顧客設定情報を取得する顧客設定情報取得手段と,前記生体情報データ生成手段が生成した一つの生体情報データと,前記顧客設定情報取得手段が取得した一つの顧客設定情報との関連付けをおこない,前記認証・決済装置に登録するための登録データを生成する登録データ生成手段と,各種データの前記ネットワークに対する送受信をおこなう通信手段と,を備え」るように構成することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明及び周知技術1,2から当業者が十分に予測できる範囲のものである。

よって,本願発明は,引用例1発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.審判請求人の主張について
審判請求人は平成24年8月20日付けの意見書において,次のとおり主張している。

「(2-3-2)理由2について
上記の理由1において説明したように,本願発明の請求項1,3によれば,「生体情報の種類と照合順序」で複数の「クレジットカードや銀行」の一つを選択できる構成です。 このような本願発明は,引用例1のような指紋,声紋,眼底写真データを組み合わせて認証する際に,周知技術1による指紋,声紋,眼底写真データ等の生体情報の照合順序の情報を用いて認証を行うだけの構成ではありません。
すなわち,本願発明では,顧客から取得した生体情報を,「一つまたは複数の生体情報の種類,および照合順序の情報」により,「クレジットカードや銀行毎」の一つを選択できるようになり,顧客は取引に用いるクレジットカード毎に対応した「生体情報の種類と照合順序」に従って認証することにより,安全かつ簡単な取引を実現できるようになるものです。
このような本願発明に対し,審判長殿がご指摘された引用文献1?3には,補正部分の特徴を含む上記本願発明の構成がなく,引用文献1?3および周知技術により上記本願発明に特有の作用効果を奏することはできません。
したがって,本願発明は,引用文献1?3により当業者が容易に想到することはできず,十分に進歩性を備えているものと思量します。」

しかしながら,本願発明には,顧客設定情報取得手段が,「顧客が所持するクレジットカード毎の会員番号や銀行毎の口座番号,利用可能期間,利用可能限度額,利用可能店舗,利用可能品目などを含む顧客設定情報を取得」し,また,登録データ生成手段が,「生体情報データ生成手段が生成した一つの生体情報データと,前記顧客設定情報取得手段が取得した一つの顧客設定情報との関連付けをおこない,前記認証・決済装置に登録するための登録データを生成する」ことは記載されているものの,これは,顧客が「複数」のクレジットカードを所持し,当該「複数」のクレジットカード「毎」の会員番号を含んだ一つの「顧客設定情報」が取得されて,「一つの生体情報データ」と関連付けられることを特定するに留まり,クレジットカード「毎」に「異なる」顧客設定情報に対して,それぞれ「異なる」生体情報データを関連付け,当該「異なる」生体情報データを用いて,クレジットカードの一つを「選択する」ことまでを特定するものではない。
また,本願発明には,「『一つまたは複数の生体情報の種類,および照合順序の情報』により,『クレジットカードや銀行毎』の一つを選択できる」との事項を特定する記載もない。
してみれば,審判請求人の上記主張は請求項の記載に基づくものではないから,これを採用することはできない。

なお,仮に,本願発明が,クレジットカード毎の異なる顧客設定情報に対して,「異なる」生体情報データを関連付けることを特定しているものであるとしても,顧客が所持する複数のクレジットカードに対して,例えばパスワードのような認証情報を「異なる」ものとすることは,セキュリティ等の観点から普通に行われることであるから,引用例1発明において,顧客が複数のクレジットカードを所持している場合に,それぞれのクレジットカードに対して,異なる生体情報を関連付けるように構成することにも何ら困難性はなく,当業者が容易に想到し得たことである。

8.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明及び周知技術1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-05 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-24 
出願番号 特願2005-1832(P2005-1832)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 博文  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
松尾 俊介
発明の名称 電子決済システム、個人用端末、加盟店用端末、認証・決済装置、電子決済方法、および電子決済プログラム  
代理人 酒井 昭徳  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ