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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1265659
審判番号 不服2011-11647  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2001-106381「省電力状態移行方法、及び移動通信機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月18日出願公開、特開2002-305475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年4月4日の出願であって、平成22年7月26日付けの手続補正に対して同年8月11日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し同年10月18日付けで手続補正がなされたところ、平成23年2月25日付けで補正の却下の決定と共に拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月1日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年6月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成22年7月26日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
省電力状態への移行契機に応じて、移動通信機の省電力の対象となる機能毎に予め記録された省電力設定内容に基づき前記機能の動作状態を段階的に変更する動作状態変更過程を含み、
前記動作状態変更過程では、前記移行契機の回数に応じて、予め付与された優先度に基づき変更対象の機能を選択し、選択された機能の動作状態を変更することで段階的な省電力状態への移行を行うことを特徴とする省電力状態移行方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項1】
省電力状態への移行契機に応じて、電池を電源とする移動通信機の省電力の対象となる電話機能を含む複数の機能毎に予め記録された省電力設定内容に基づき前記機能の動作状態を段階的に変更する動作状態変更過程を含み、
前記動作状態変更過程では、前記移行契機の回数に応じて、前記機能に予め付与された優先度に基づき変更対象の機能を選択し、選択された機能の動作状態を変更することで段階的な省電力状態への移行を行い、前記電話機能の優先度は他の機能に対して低く設定されていることを特徴とする省電力状態移行方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

なお、本件補正における「前記機能予め付与された優先度」との記載は、「前記機能に予め付与された優先度」の誤記と認め、また、「前記通話機能」との記載は、「通話機能」が、この記載以前に「前記」されていないこと、明細書中、発明の実施の形態に当該用語の記載がないこと、補正後の請求項3に「前記電話機能」の記載があること等に照らし、「前記電話機能」の誤記と認め、それぞれ、上記下線のとおりに認定した。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「移動通信機」に「電池を電源とする」との構成を付加して限定し、また、「省電力の対象となる機能」に「電話機能を含む複数の」との構成を付加して限定し、また、「動作状態変更過程」に関し、「前記電話機能の優先度は他の機能に対して低く設定されていること」との構成を付加して限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明]
原審の拒絶理由に引用された特開平11-275182号公報(以下、「引用例」という。)には、「携帯電話装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話装置に関し、特に、携帯電話装置の消費電力を削減する技術に関するものである。」(2頁1欄)

ロ.「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、携帯電話装置の消費電力をより一層効率的に削減することが可能な手段を提供することにあり、それにより、携帯電話を限られた電池容量で少しでも長く使用することができるようにすることにある。」(2頁2欄)

ハ.「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による携帯電話装置は、電池パックの電圧を監視する電圧検出回路を備えており、この電圧検出回路で検出した電圧がある一定値以下になったときには、サウンダ、ディスプレイのバックライト、バイブレータ、あるいはダイヤルボタンのバックライトへの電力供給を停止し、自動的に消費電力を削減することを特徴とするものである。」(2頁2欄)

ニ.「【0015】図2は、本発明携帯電話装置の第2の実施の形態を示すブロック図である。この実施の形態は、省電力動作モードを設定することができる表示操作部10を備えている点で第1の実施の形態とは異なっているがその他の機能は第1の実施の形態と同様である。
【0016】本発明の第2の実施の形態においては、表示操作部10を操作することにより、着信LED2、サウンダ3、バイブレータ6、及びバックライト4、7の機能の停止動作を行うか、行わないかを選択できるようになっている。
【0017】例えば、電池電圧が所定の値以下となったときに、バイブレータ6のみを動作させ、他の着信表示用LED2、サウンダ3及びバックライト4、7は機能停止するように設定したり、あるいは、電池電圧が第1の設定電圧以上のときには全て正常に機能させ、電池電圧が第1の設定電圧以下で、かつ第2の設定電圧以上のときには、着信LED2とサウンダ3は動作させるが、バイブレータ6及びバックライト4、7の機能は停止し、電池電圧が第2の設定電圧以下となった場合には、着信LEDのみを動作させ、サウンダ3、バイブレータ6及びバックライト4、7の機能を停止させるように設定することもできる。」(3頁3欄?4欄)

ホ.「【0018】
【発明の効果】本発明によれば、携帯電話の電池残量が残りわずかとなった時に、比較的電力消費の大きい呼出音の鳴動、バイブレータの振動、ディスプレイ及びダイヤルボタンのバックライトの点灯の機能を自動的に停止することができるので、電池の消耗を減らすことができ、電池の交換間隔を長くすることができ、携帯電話の使用時間をその分長くすることができる。
【0019】また、それらの機能停止を使用者が任意に設定することができるので、使用状況に応じて省電力動作モードの使い分けを行うことができる。」(3頁4欄)

上記イ.?ホ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
まず、上記ハ.には、電池パックの電圧を監視する電圧検出回路を備え、この電圧検出回路で検出した電圧がある一定値以下になったときには、サウンダ、ディスプレイのバックライト、バイブレータ、あるいはダイヤルボタンのバックライトへの電力供給を停止し、自動的に消費電力を削減する携帯電話装置が記載され、その動作は、携帯電話装置の消費電力を削減する方法といえるから、引用例には、「着信LED、サウンダ、バイブレータ、及びバックライトの機能を含む携帯電話装置の消費電力を削減する方法」が開示されている。
また、上記ニ.の段落【0016】?【0017】の記載によれば、引用例の「消費電力を削減する方法」は、電池電圧が第1の設定電圧以上のときには、着信LED2、サウンダ3、バイブレータ6、及びバックライト4、7の機能を全て正常に機能させるように設定するものであるから、「電池電圧が第1の設定電圧以上のときには前記機能の全てを正常に機能させる段階」を含んでいる。そして、電池電圧が第1の設定電圧以下で、かつ第2の設定電圧以上のときには、着信LED2とサウンダ3は動作させるが、バイブレータ6及びバックライト4、7の機能は停止するように設定するものであるから、「電池電圧が第1の設定電圧以下で、かつ第2の設定電圧以上のときには、着信LEDとサウンダは動作させるが、バイブレータ及びバックライトの機能は停止する段階」を含んでいる。さらに、電池電圧が第2の設定電圧以下となった場合には、着信LEDのみを動作させ、サウンダ3、バイブレータ6及びバックライト4、7の機能を停止させるように設定するものであるから、「電池電圧が第2の設定電圧以下となったときには、着信LEDのみを動作させ、サウンダ、バイブレータ及びバックライトの機能を停止させる段階」を含んでいる。

したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「電池電圧が第1の設定電圧以上のときには、電池を電源とする携帯電話機の着信LED、サウンダ、バイブレータ、及びバックライトの機能の全てを正常に機能させる段階と、
電池電圧が第1の設定電圧以下で、かつ第2の設定電圧以上のときには、着信LEDとサウンダは動作させるが、バイブレータ及びバックライトの機能は停止する段階と、
電池電圧が第2の設定電圧以下となったときには、着信LEDのみを動作させ、サウンダ、バイブレータ及びバックライトの機能を停止させる段階と、を含む携帯電話装置の消費電力を削減する方法。」

[対比]
補正後の発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「消費電力を削減する方法」は、「電池電圧が第1の設定電圧以下」となったときに、「バイブレータ及びバックライトの機能」を「停止」し、「電池電圧が第2の設定電圧以下」となったときに「サウンダ、バイブレータ及びバックライトの機能を停止」するものであり、省電力の段階(状態)を移行して消費電力を削減しているから、補正後の発明の「省電力状態移行方法」に相当する。

引用発明の「携帯電話装置」は、補正後の発明の「移動通信機」に含まれるものである。また、引用発明の「着信LED、サウンダ、バイブレータ、及びバックライトの機能」は補正後の発明の「省電力の対象となる複数の機能」に相当する。また、引用発明における各機能の「停止」は、予め設定されているから「省電力設定内容」であり、設定するにあたり何らかの記憶手段に記録するのは自明であるから、「機能毎に予め記録された省電力設定内容」であるといえる。また、引用発明の「電池電圧が第1の設定電圧以下」となったとき、及び、「電池電圧が第2の設定電圧以下」となったとき、すなわち、電池電圧が第1又は第2の設定電圧以下となったタイミングは、省電力の対象となる複数の機能を選択的に停止させる省電力移行のタイミングであるから、補正後の発明の「省電力状態への移行契機」に相当する。そして、上記二つのタイミングで前記複数の機能を選択的に停止する過程は、補正後の発明の「機能の動作状態を段階的に変更する動作状態変更過程」に相当する。
結局、引用発明は、「省電力状態への移行契機に応じて、電池を電源とする移動通信機の省電力の対象となる複数の機能毎に予め記録された省電力設定内容に基づき前記機能の動作状態を段階的に変更する動作状態変更過程」を含む点で補正後の発明と一致する。

引用発明において、「電池電圧が第1の設定電圧以下」となったときは、1回目の移行契機といえ、「電池電圧が第2の設定電圧以下」になったときは、2回目の移行契機といえる。そして、1回目の移行契機では、「バイブレータ及びバックライトの機能」を「停止」し、2回目の移行契機では、「バイブレータ及びバックライトの機能」に加え、「サウンダ」の「機能を停止」するものであるから、「バイブレータ及びバックライトの機能」は「サウンダ」よりも省電力の優先度が高くされているといえるから、「バイブレータ及びバックライトの機能」と、「サウンダ」の機能の停止は、「移行契機の回数に応じて、前記機能に予め付与された優先度に基づき変更対象の機能を選択」することであるといえる。
結局、引用発明は、「前記動作状態変更過程では、前記移行契機の回数に応じて、前記機能に予め付与された優先度に基づき変更対象の機能を選択し、選択された機能の動作状態を変更することで段階的な省電力状態への移行を行」う点で補正後の発明と一致する。

したがって、両者は以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「省電力状態への移行契機に応じて、電池を電源とする移動通信機の省電力の対象となる複数の機能毎に予め記録された省電力設定内容に基づき前記機能の動作状態を段階的に変更する動作状態変更過程を含み、
前記動作状態変更過程では、前記移行契機の回数に応じて、前記機能に予め付与された優先度に基づき変更対象の機能を選択し、選択された機能の動作状態を変更することで段階的な省電力状態への移行を行う省電力状態移行方法。」

(相違点1)
「省電力の対象となる複数の機能」に関し、補正後の発明は、「電話機能を含む」のに対して、引用発明は、電話機能を含んでいない、即ち、電話機能を省電力の対象としていない点。
(相違点2)
補正後の発明は、「前記電話機能の優先度は他の機能に対して低く設定されている」のに対して、引用発明は、電話機能を省電力の対象としていないことから、優先度の設定もされていない点。

[判断]
まず、相違点1について検討する。
例えば、特開2000-69556号公報(段落【0011】、【0042】等参照)、特開2000-244384号公報(段落【0020】?【0021】等参照)、特開平8-181652号公報(段落【0008】等参照)に記載されているように、移動通信機において、通話品質(電話機能)を変更することにより省電力化を図ることは周知であるから、引用発明において、電話機能を省電力の対象とすること、即ち、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

次に、相違点2について検討する。
携帯無線端末装置おいて、各種機能に関する省電力化の優先順位は使用者の好みにより、或いは機能の重要性等に基づいて設定し得ることが周知である(必要であれば、特開2000-253142号公報の段落【0167】等参照)から、引用発明において電話機能を省電力の対象とした場合に、省電力状態へ移行する順番として電話機能の移行を最後とすること、即ち、電話機能の優先度を他の機能に比べて低く設定することは、当業者が容易になし得ることである。

(予備的判断)
なお、上記[対比]において、引用発明は、「移行契機の回数に応じて、前記機能に予め付与された優先度に基づき変更対象の機能を選択」する点で補正後の発明と一致すると認定したが、仮に、前記「移行契機の回数」を本願の特許請求の範囲の【請求項5】に記載された「移行指示入力手段の入力の回数」と限定的に解釈し、その点で相違するものであったとしても、そのように構成することは、以下に示すように当業者が容易になし得ることである。
すなわち、特開2001-45403号公報(段落【0008】等参照)、特開平11-94339号公報(段落【0018】等参照)に記載されているように、所定の節電モード状態を複数段階設定して省電力化を行う各種電気機器、装置において、移行指示入力手段の入力回数に応じて各節電モード状態に段階的に移行することは周知技術であるから、この周知技術を引用発明に適用して、その操作回数に応じて機能の停止を行うこと、即ち、上記相違点のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明及び各周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成23年6月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び各周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び各周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び各周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-05 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-25 
出願番号 特願2001-106381(P2001-106381)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 神谷 健一
矢島 伸一
発明の名称 省電力状態移行方法、及び移動通信機  
代理人 志賀 正武  

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