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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1265664
審判番号 不服2011-14244  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-04 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2005-187258「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日出願公開、特開2007- 5258〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年6月27日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
光源となる固体発光素子と、固体発光素子に一定の直流電圧を供給する直流電源と、直流電源と固体発光素子との間を繋ぐ経路を開閉するスイッチング素子とを有し、外部からの調光信号に基づいて当該スイッチング素子を制御することで固体発光素子に対する直流電圧の印加を入切して光源の調光を行う調光手段とを備え、該調光信号としてオンデューティ比と光源の明るさとが逆比例の関係にあるパルス幅変調信号を用いた照明装置であって、前記調光手段は、入力される調光信号のオンデューティー比が大きくなるにつれて単位時間当たりの電圧印加時間が短くなるように固体発光素子に直流電圧を供給し、入力される調光信号のオンデューティー比が小さくなるにつれて単位時間当たりの電圧印加時間が長くなるように固体発光素子に直流電圧を供給することを特徴とする照明装置。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、当審における、平成24年5月18日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2005-142137号公報(平成17年6月2日公開、以下「引用例1」という。)には、「LED点灯装置」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
交流電源を受けて直流電圧を出力する直流電源装置と、前記直流電圧を受けて点灯されるLED素子を実装したLEDモジュール部とで構成されたLED点灯装置であって、前記LED素子は1個もしくは複数個で構成され、前記直流電源装置に定電流機能を持たせたことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
請求項1において、前記直流電源装置の出力端または前記LEDモジュール部に直列にスイッチ素子を設け、該スイッチ素子をちらつきを感じない程度に高い周波数でON・OFFする間欠駆動手段と、前記スイッチ素子のON・OFFの比率を変えることでLED素子に流れる実効電流を変化させて出力光を可変させる調光手段を設けたことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項3】
請求項2において、前記スイッチ素子の制御端子に接続されて前記スイッチ素子のON・OFFの比率を可変とするタイマー回路を有することを特徴とすることを特徴とするLED点灯装置。
【請求項4】
請求項2において、外部より入力される調光信号を前記スイッチ素子のON・OFF制御信号に変換する信号変換手段を備えることを特徴とするLED点灯装置。
【請求項5】
請求項4において、外部より入力される調光信号は、デューティ可変の矩形波信号、または、レベル可変のDC電圧、または、DMX変換信号のいずれかであることを特徴とするLED点灯装置。」

・「【0009】
近年、LED素子メーカー、セットメーカーからLEDを複数個構成したLEDモジュール(LED実装基板部のこと)が光源用途として商品化されている。それらの商品を購入して照明装置、照明器具を構成した場合、直流電源電圧を数V?数十Vまで自由に設定できる前記した直流電源装置を点灯回路部に採用する手段が一般的であるが、直流電源装置は12V、24Vなど標準的な電圧設定された定電圧出力が一般的であり、LED素子、もしくはLED実装基板部に定電流を流すように制御するLED点灯回路部が必要になってくる。」

・「【0019】
図1に本発明の基本回路構成を示す。交流電源1を整流ブリッジDBにて整流してその直流電圧を受けて、直流電圧変換回路21と電流検出手段22を用いた定電流電源回路20を構成したことが特徴である。前記整流ブリッジDBと定電流電源回路20が定電流直流電源装置2を構成している。この定電流直流電源装置2が照明装置、照明器具本体であり、LEDモジュール部3(LED実装基板部)を搭載したLED点灯部を組み込むことで照明装置、LED照明器具を構成することが出来る。」

・「【0038】
図11に調光制御の基本回路構成を示す。本実施例では図1の基本構成において、LEDモジュール部3の複数のLED素子に直列にスイッチ素子Qを接続し、そのスイッチ素子QのON・OFFでLEDモジュール部3に流れる実効電流を制御するものである。スイッチ素子Qは、例えば、MOSFETよりなり、そのON・OFF制御を光のちらつきが目立たない程度に高い周波数で行い、ON・OFFの比率を変えることで、LEDに流れる実効電流を可変させて、LEDモジュール部3の調光制御を行うことが出来るものである。」

・「【0042】
図13に実施例7の構成を示す。本実施例では調光制御するためのスイッチ素子Qを電源側に構成している点が図11の実施例とは異なり、LEDモジュール部3にはLED素子が直列接続されているのみである。電源側にスイッチ素子Qを設けることによりLEDモジュール部の部品点数が少なくて済み、LEDモジュール部の灯具を小さくすることが出来るので、小型・薄型の照明器具が実現出来る特徴を有している。また、電源部に調光制御回路部(図12参照)を設けることにより更にLEDモジュール部の灯具が小さく、器具配線なども少なくて済み、照明器具の小型化、低コスト化が図れる特徴も有している。」

・「【0045】
図16に実施例9の構成を示す。本実施例では、上述の実施例7において、外部から調光信号を受けてスイッチ素子QのON・OFF制御信号に変換する信号変換回路25を設けたものである。外部から入力される調光信号としては、例えば、図17に示すように周波数が一定でデューティ可変の矩形波信号(周波数:1KHz、DC電圧振幅:10V)が用いられる。この調光信号を誤接続防止用の整流器DB2を介して入力し、入力電圧をフォトカプラPCにて絶縁し、2段のトランジスタTr1,Tr2にて波形改善を行い、入力された矩形波信号とデューティ比が同じ信号にてスイッチ素子QをON・OFF制御する。
【0046】
本実施例によれば、LED照明器具の外部に設けた調光器、例えば、外部壁スイッチや制御装置などから調光信号を送ることで、遠隔操作により調光制御が出来る特徴を有している。」

・実施例9を示す図16には、信号変換回路25が、入力信号を反転させて出力する反転回路であることが記載されている。

これらの記載事項によると、引用例1には、

「交流電源を受けて直流電圧を出力する直流電源装置と、前記直流電圧を受けて点灯されるLED素子を実装したLEDモジュール部と、LEDモジュール部に直列に設けたスイッチ素子と、外部より入力される調光信号を前記スイッチ素子のON・OFF制御信号に変換する信号変換手段とを備え、調光信号は、デューティ可変の矩形波信号を用いたLED点灯装置であって、信号変換手段は反転回路であるLED点灯装置。」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「LED素子を実装したLEDモジュール部」、「LEDモジュール部に直列に設けたスイッチ素子」は、それぞれ、前者における「光源となる固体発光素子」、「直流電源と固体発光素子との間を繋ぐ経路を開閉するスイッチング素子」に相当する。
また、後者における「直流電圧を出力する直流電源装置」と前者における「一定の直流電圧を供給する直流電源」とは、「直流電圧を供給する直流電源」である点で共通する。
また、後者における「外部より入力される調光信号をスイッチ素子のON・OFF制御信号に変換する信号変換手段」は、前者における「外部からの調光信号に基づいてスイッチング素子を制御することで固体発光素子に対する直流電圧の印加を入切して光源の調光を行う調光手段」に相当する。
また、後者において「調光信号は、デューティ可変の矩形波信号を用いた」ことと、前者において「調光信号としてオンデューティ比と光源の明るさとが逆比例の関係にあるパルス幅変調信号を用いた」こととは、「調光信号としてオンデューティ可変のパルス幅変調信号を用いた」点で共通する。
また、後者において「信号変換手段は反転回路である」ことは、調光信号のオン、オフを反転させることになるから、前者において「調光手段は、入力される調光信号のオンデューティー比が大きくなるにつれて単位時間当たりの電圧印加時間が短くなるように固体発光素子に直流電圧を供給し、入力される調光信号のオンデューティー比が小さくなるにつれて単位時間当たりの電圧印加時間が長くなるように固体発光素子に直流電圧を供給すること」に相当する。
また、後者における「LED点灯装置」は、前者における「照明装置」に相当する。

したがって、両者は、
「光源となる固体発光素子と、固体発光素子に直流電圧を供給する直流電源と、直流電源と固体発光素子との間を繋ぐ経路を開閉するスイッチング素子とを有し、外部からの調光信号に基づいて当該スイッチング素子を制御することで固体発光素子に対する直流電圧の印加を入切して光源の調光を行う調光手段とを備え、該調光信号としてオンデューティ可変のパルス幅変調信号を用いた照明装置であって、前記調光手段は、入力される調光信号のオンデューティー比が大きくなるにつれて単位時間当たりの電圧印加時間が短くなるように固体発光素子に直流電圧を供給し、入力される調光信号のオンデューティー比が小さくなるにつれて単位時間当たりの電圧印加時間が長くなるように固体発光素子に直流電圧を供給する照明装置。」である点で一致し、次の各点において相違する。

[相違点1]
「直流電圧を供給する直流電源」について、本願発明においては、「一定の直流電圧を供給する直流電源」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「直流電圧を出力する直流電源装置」である点。

[相違点2]
「調光信号としてオンデューティ可変のパルス幅変調信号を用いた」ことについて、本願発明においては、「調光信号としてオンデューティ比と光源の明るさとが逆比例の関係にあるパルス幅変調信号を用いた」のに対し、引用例1記載の発明においては、「調光信号は、デューティ可変の矩形波信号を用いた」とされている点。

4.判断
相違点1について検討すると、「直流電源」が、「一定の直流電圧を供給する直流電源」であるとの事項は、平成22年8月16日付手続補正書により、出願当初の明細書および図面に記載はないものの、当業者にとって自明な事項であるとして新たに追加された事項であり、当業者にとって、格別なものであるとは到底認めることはできないし、また、引用例1段落【0009】には、直流電源装置は定電圧出力が一般的である旨の記載もあり、該相違点1に係る事項は、当業者にとって適宜採用し得る事項にすぎないものである。

相違点2について検討すると、引用例1記載の発明において「信号変換手段」は「反転回路」であるから、調光信号のオン、オフに対応してスイッチ素子はオフ、オンし、デューティー比が大きくなるにつれて光源の明るさは暗くなり、オンデューティー比が小さくなるにつれて明るくなるものと認められるが、該動作は本願図2に記載されているものと同様であり、引用例1記載の発明においても「調光信号としてオンデューティ比と光源の明るさとが逆比例の関係にあるパルス幅変調信号」が用いられていることは、当業者にとって、容易に推定されることにすぎない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明から当業者が予測し得る程度のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-06 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-24 
出願番号 特願2005-187258(P2005-187258)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲桑▼原 恭雄  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
発明の名称 照明装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 水尻 勝久  
代理人 坂口 武  

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