• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1265683
審判番号 不服2011-24158  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2005-177439「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-350064〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年6月17日の出願であって、平成23年1月20日及び同年5月2日付けで手続補正書が提出されたが、同年8月10日付けで、平成23年5月2日付けの手続補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年11月9日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされるとともに同日に手続補正がなされたものである。その後、平成24年4月27日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年7月6日に回答書が提出された。

第2 平成23年11月9日付けの手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年11月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の請求項に記載された発明
平成22年11月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「端子部に複数本の配線が第1配線として設けられた表示パネルと、
複数本の配線が第2配線として設けられたフィルム状基板とを備える表示装置であって、
前記表示パネルは、前記端子部に隣接して前記第1配線の配線幅より幅広でかつ一部が除去された判定端子を有し、
前記フィルム状基板は、前記第2配線に隣接して形成された第3の配線と第4の配線を有し、
前記第3の配線が前記判定端子と対向し、
前記第4の配線が前記判定端子の前記除去部に対向し、
前記第4の配線は、その先端部に配線幅が広い領域を有し、
前記判定端子は前記第4の配線の前記配線幅が広い領域を囲む不連続な環状形状であり、
前記環状形状の開いた部分の距離は前記第4の配線の前記配線幅が広い領域の配線幅より短く、
前記第4の配線の前記先端部以外の領域の一部は、前記環状形状の開いた部分に配置され、
前記判定端子の除去形状は、複数本の第1配線が並設された方向における左右両方向のずれ、および該方向と直交する方向における上下両方向のずれが判定できることを特徴とする表示装置。」

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物

引用文献1:特開2001-56477号公報
引用文献2:特開昭62-297034号公報

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は液晶表示装置及びその検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図3は従来の液晶表示装置の一例の一部の平面図を示したものである。この液晶表示装置はアクティブマトリクス型の液晶表示パネル1を備えている。液晶表示パネル1は、ガラスや樹脂等からなる下側と上側の2枚の基板が2、3が互いに貼り合わされ、その間に液晶(図示せず)が封入された構造となっている。この場合、下側基板2の右辺部及び下辺部は上側基板3から突出され、突出部2a、2bとなっている。
【0003】右辺側の突出部2aの上面の所定の3箇所及び下辺側の突出部2bの上面の所定の6箇所にはTCP(tape carrier package)4の出力側が異方性導電接着剤(図示せず)を介して接合されている。TCP4は、フィルム基板5上に液晶駆動用の半導体チップ6が搭載された構造となっている。TCP4の各入力側(スリット部に架け渡されたリード)はほぼL字状の第1のフレキシブル配線基板7の上面の各所定の箇所に半田(図示せず)を介して接合されている。第1のフレキシブル配線基板7の角部上面の所定の箇所には第2のフレキシブル配線基板8の一端部が異方性導電接着剤(図示せず)を介して接合されている。第2のフレキシブル配線基板8の他端部は回路基板(図示せず)に接続されている。
【0004】ところで、従来のこのような液晶表示装置において、9個のTCP4の各出力側を液晶表示パネル1の突出部2a、2b上に接合する場合、まず、9個のTCP4の各入力側を第1のフレキシブル配線基板7の上面の各所定の箇所にそれぞれ位置合わせしてから半田を介して接合し、次いで9個のTCP4の各出力側を液晶表示パネル1の突出部2a、2bの上面の各所定の箇所に全体的に位置合わせしてから異方性導電接着剤を介して接合している。」
(1b)「【0008】
【発明の実施の形態】図1(A)はこの発明の一実施形態における液晶表示装置の要部の透過平面図を示し、図1(B)はその分解した状態における透過平面図を示したものである。この液晶表示装置では、液晶表示パネル11の突出部12(図3において符号2aまたは2bで示すものに相当する。)の端部近傍は複数のTCP接合領域とされており、各TCP接合領域内には、図示しない表示領域内まで延出される多数の信号用端子13と、これら信号用端子13の両側に配置された検査用パターン14が形成されている。各検査用パターン14は、信号用端子13とは異なり表示領域まで延出されず、最大でも、突出部12の領域内で終端している。また、各検査用パターン14は、突出部12の端部に接する開口15を有しており、この開口15の信号用端子13側に形成された比較的幅の広い電源用端子(隣接端子)14aと、開口15の信号用端子13と反対側に形成されたやや幅の狭い検査用端子14bを有している。この場合、各信号用端子13間及び信号用端子13と電源用端子14a間の間隔は信号用端子13の線幅と同じとなっている。また、開口15の幅、換言すれば、検査用パターン14の電源用端子14aと検査用端子14bとの間隔は信号用端子13間の間隔、すなわち、信号用端子13の線幅、の2倍とされており、検査用パターン14の電源用端子14aは後述する如く、TCP21のフィルム基板22に形成された電源用配線を介して共通電位に接続される。ここで、電源用端子14aが他の端子に比較して幅広に形成されているのは、この電源用端子には、他の端子よりも大きな電流が流れるからである。
【0009】一方、TCP21を構成するフィルム基板22の下面には、一側端部に沿って、多数の信号用配線23が配列されており、これら信号用配線23の両側にはそれぞれ電源用配線(隣接配線)24、25及び検査用配線26が設けられている。この場合、信号用配線23、電源用配線24、25及び検査用配線26は、それぞれ、信号用配線23の線幅と同じ間隔をおいて配置されている。すなわち、検査用配線26と電源用配線25間、電源用配線25と電源用配線24間、電源用配線24と信号用配線23間及び信号用配線23相互間の間隔はすべての信号用配線23の線幅と同一となっている。信号用配線23の線幅は液晶表示パネル11の信号用端子13の線幅と同じとなっている。検査用配線26の線幅は信号用配線23の線幅と同じであり、電源用配線24、25の線幅は信号用配線23の線幅よりも太くなっている。検査用配線26及び電源用配線24、25は、フィルム基板22の出力側から入力側まで設けられている。」
(1c)「【0010】さて、図1(A)に示すように、TCP21の出力側を液晶表示パネル11の突出部12の上面に異方性導電接着剤(図示せず)を介して接合したとき、TCP21の液晶表示パネル11に対する左右方向の位置ずれが全くない場合、TCP21の検査用配線26は液晶表示パネル11の開口15内の中央部に配置され、検査用端子14b及び電源用端子14aのいずれとも接続されない。そして、この状態では、TCP21の信号用配線23及び電源用配線24、25は液晶表示パネル11の信号用端子13及び電源用端子14aに左右方向に全く位置ずれすることなく異方性導電接着剤を介して接続されることになる。
【0011】一方、例えば図2に示すように、TCP21が液晶表示パネル11に対して右方向に信号用端子13間の間隔の1/2(開口15の幅の1/4)だけずれた場合、TCP21の左側の検査用配線26は液晶表示パネル11の左側の電源用端子14aに接続され、右側の検査用配線26は液晶表示パネル11の右側の検査用端子14bに接続される。そして、この状態では、TCP21の信号用配線23及び電源用配線24、25は液晶表示パネル11の信号用端子13及び電源用端子14aに右方向に信号用端子13間の間隔の1/2だけ位置ずれして異方性導電接着剤を介して接続されることになる。
【0012】ここで、図1(A)に示す状態を基準にして、TCP21の液晶表示パネル11に対する接合状態の位置ずれが左右方向に信号用端子13間の間隔の1/2未満である場合を許容範囲内とし、それ以上つまり信号用端子13間の間隔の1/2以上である場合を許容範囲外とする。
【0013】そして、検査用配線26が検査用端子14bと電源用端子14aとの間に配置されてそのいずれとも接続されず、且つ、電源用配線24、25が電源用端子14aと接続された場合には、検査用配線26と電源用配線25(または24)との間は非導通状態となる。一方、検査用配線26が検査用端子14bと電源用端子14aとのうちいずれか一方と接続され、且つ、電源用配線24、25が電源用端子14aと接続された場合には、検査用配線26と電源用配線25(または24)との間は電源用端子14aのみを介してあるいは検査用端子14b及び電源用端子14aを介して導通状態となる。
【0014】そこで、検査用配線26と電源用配線25(または24)との間が非導通状態となっているか導通状態となっているかを電気的に検査すると、TCP21の液晶表示パネル11に対する接合状態の位置ずれが許容範囲内であるか否かを判定することができる。この場合、電気的検査であるので、TCP21の液晶表示パネル11に対する接合状態が許容範囲内であるか否かの判定を熟練を要することなく常に正確に行うことができる。」
(1d)「【図1】



これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「液晶表示パネル(11)の突出部(12)の端部近傍には、表示領域内まで延出される多数の信号用端子(13)と、これら信号用端子の両側に配置された検査用パターン(14)が形成されており、
各検査用パターンは、突出部の端部に接する開口(15)を有しており、この開口の信号用端子側に他の端子に比較して幅広に形成された電源用端子(14a)と、開口の信号用端子と反対側に形成されたやや幅の狭い検査用端子(14b)を有しており、
フィルム基板(22)の下面には、一側端部に沿って、多数の信号用配線(23)が配列されており、
これら信号用配線の両側にはそれぞれ電源用配線(24、25)及び検査用配線(26)が設けられており、
検査用パターンの電源用端子はフィルム基板に形成された電源用配線を介して共通電位に接続され、
検査用配線は液晶表示パネルの開口内の中央部に配置され、電源用配線は液晶表示パネルの電源用端子に接続される液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)

(2)本願の出願前に頒布された刊行物である、上記引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)第2頁左上欄下から3行?右上欄4行
「本発明の位置合わせ方法は、第1の物体と第2の物体とを重ねて位置合わせする方法において、第1および第2の物体の対向面にそれぞれ第1および第2の導電性合マークを形成し、該第1および第2の導電性合マーク間の電気的導通の有無を検出することにより位置合わせすることを特徴とする。」
(2b)第2頁右上欄7行?15行
「第1図は、本発明方法を説明するための図であり、プリント回路基板21と液晶表示セル11を位置合わせする場合について示している。合マークは2つ以上状設ければ互いの位置が決まるので、離れた場所に2カ所の合マーク13,15および23,25が設けられている。
液晶表示セル11の合マーク13,15は、そのまま液晶表示セルの端部に向かって延びて合マーク電極14,16を形成している。」
(2c)第2頁左下欄6行?8行
「プリント回路基板21の合マーク23,25も同様にプリント回路基板21の端部にそのまま延びて合マーク電極24,26を形成している。」
(2d)第2頁左下欄下から3行?右下欄11行
「合マーク電極14,16,24,26はそれぞれ導通チェッカー31に接続されており、合マーク13,23間および15,25間の電気的導通の有無を検出することにより位置合わせを行う。
第2図A?C図はこの詳細を示す説明図である。まず、目視に合マーク15,25が重なるようにラフなアライメントをする(第2A図)。次いでY方向(縦方向)に一方を動かし,非導通状態となったところで止める(第2B図)。次にX方向に動かして非導通状態となったところで止める。このX方向およびY方向への移動操作を繰り返すことにより位置合わせが終了する。合マーク15,25の幅l_(1),l_(2)は要求されるアライメント精度により適宜決定する。」
(2e)第2頁右下欄12行?下から4行
「第3A図および第3B図は他の合マークを用いた場合を示す図である。まず、目視等によりラフなアライメントを取り(第3A図)、次いで非電通状態としてアライメントを終了する。φ_(1),φ_(2),l_(3),l_(4)の大きさはアライメントの精度で異なる。」
(2f)「第3A図 第3B図


(2f)第3A図及び第3B図からは、合マーク15はその先端部に配線幅が広い領域を有し、合マーク25は合マーク15の配線幅が広い領域を囲む不連続な環状形状であり、環状形状の開いた部分の距離は合マーク15の配線幅が広い領域の配線幅より短く、合マーク15の先端部以外の領域の一部である合マーク電極16は、環状形状の開いた部分に配置されていることが見て取れる。

3.対比
補正発明と引用発明を比較する。
(1)引用発明の「液晶表示パネル」、「突出部の端部近傍」、「多数の信号用端子」及び「液晶表示装置」は、それぞれ、補正発明の「表示パネル」、「端子部」、「第1配線として設けられた複数本の配線」及び「表示装置」に相当する。
(2)引用発明の「信号用端子の両側に配置された」「突出部の端部に接する開口を有しており、この開口の信号用端子側に他の端子に比較して幅広に形成された電源用端子と、開口の信号用端子と反対側に形成されたやや幅の狭い検査用端子を有して」いる「各検査用パターン」は、補正発明の「前記端子部に隣接して前記第1配線の配線幅より幅広でかつ一部が除去された判定端子」に相当する。
(3)引用発明の「フィルム基板」及び該フィルム基板の下面に配列された「多数の信号用配線」は、それぞれ、補正発明の「フィルム状基板」及び「第2配線として設けられた複数本の配線」に相当する。
(4)引用発明の「電源用配線」は、液晶パネルの検査用パターン(補正発明の「判定端子」に相当)の電源用端子に接続されているから、補正発明の判定端子と対向する「第3の配線」に相当する。同様に、引用発明の「開口」は補正発明の「判定端子の除去部」に相当し、引用発明の「検査用配線」は開口内の中央部に配置されているから、補正発明の判定端子の除去部に対向する「第4の配線」に相当する。
(5)引用発明の開口の形状により、多数の信号用端子(補正発明の「複数本の第1配線」に相当)が並設された方向における左右両方向のずれが判別できることは、上記摘記事項(1c)から明らかである。

してみると両者は、
「端子部に複数本の配線が第1配線として設けられた表示パネルと、
複数本の配線が第2配線として設けられたフィルム状基板とを備える表示装置であって、
前記表示パネルは、前記端子部に隣接して前記第1配線の配線幅より幅広でかつ一部が除去された判定端子を有し、
前記フィルム状基板は、前記第2配線に隣接して形成された第3の配線と第4の配線を有し、
前記第3の配線が前記判定端子と対向し、
前記第4の配線が前記判定端子の前記除去部に対向し、
前記判定端子の除去形状は、複数本の第1配線が並設された方向における左右両方向のずれ判定できる表示装置。」
の点で一致し、次の各点で相違している。

(相違点1)
補正発明が「第4の配線は、その先端部に配線幅が広い領域を有し、判定端子は前記第4の配線の前記配線幅が広い領域を囲む不連続な環状形状であり、前記環状形状の開いた部分の距離は前記第4の配線の前記配線幅が広い領域の配線幅より短く、前記第4の配線の前記先端部以外の領域の一部は、前記環状形状の開いた部分に配置され」ているのに対して、引用発明はそのような構成を有していない点。
(相違点2)
補正発明が「複数本の第1配線が並設された方向における左右両方向と直交する方向における上下両方向のずれが判定できる」のに対して、引用発明が当該方向のずれが判定できるかどうか不明な点。

4.判断
上記各相違点について検討する。

(相違点1)について
引用文献2には、「プリント回路基板(21)と液晶表示セル(11)を位置合わせするための導電性合マークであって、第1の合マーク(15)はその先端部に配線幅が広い領域を有し、第2の合マーク(25)は第1の合マークの配線幅が広い領域を囲む不連続な環状形状であり、環状形状の開いた部分の距離は第1の合マークの配線幅が広い領域の配線幅より短く、第1の合マークの先端部以外の領域の一部である合マーク電極(16)は、環状形状の開いた部分に配置されている合マーク」(以下「引用第2発明」という。)が記載されている。
引用第2発明の「第1の合マーク」、「第2の合マーク」及び「第1の合マークの先端部以外の領域の一部である合マーク電極」は、それぞれ、上記相違点1に係る構成の「第4の配線」、「判定端子」及び「第4の配線の前記先端部以外の領域の一部」に相当する。
してみると、引用第2発明は上記相違点に係る構成を有している。また、引用第2発明の導電性合マークは、液晶表示セル(補正発明の「表示パネル」に相当)とプリント回路基板(補正発明の「フィルム状基板」に相当)のずれを判定するためのマークであるから、引用発明の検査用パターン及び検査用配線に相当する。そして、引用第2発明の上記導電性合マークを引用発明の検査用パターン及び検査用配線として用いることに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。
そうすると、引用発明に引用第2発明を適用し、上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点2について)
表示パネルと基板を位置決めする際に、左右方向とともに上下方向についての位置決めも必要であることは、当該技術分野における技術常識である(上記摘記事項(2d)参照)。
そして、引用発明に引用第2発明を適用し、上記相違点1に係る構成を採用した場合に、複数本の第1配線が並設された方向における左右両方向と直交する方向における上下両方向のずれが判定できることは自明な事項である。
してみると、上記相違点2に係る事項は、当業者がその必要に応じて考慮すべき事項である。

そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び引用第2発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用発明及び引用第2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は回答書(前記「第1 手続の経緯」参照)に補正案を添付しているが、当該補正案を参酌しても上記判断に変わりはない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成23年11月9日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成23年5月2日付けの手続補正は、同年8月10日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年1月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「端子部に複数本の配線が第1配線として設けられた表示パネルと、
複数本の配線が第2配線として設けられたフィルム状基板とを備える表示装置であって、
前記表示パネルは、前記端子部に隣接して前記第1配線の配線幅より幅広でかつ一部が除去された判定端子を有し、
前記フィルム状基板は、前記第2配線に隣接して形成された第3の配線と第4の配線を有し、
前記第3の配線が前記判定端子と対向し、
前記第4の配線が前記判定端子の前記除去部に対向し、
前記判定端子の除去形状は、前記複数本の第1配線が並設された方向における左右両方向のずれ、および該方向と直交する方向における上下両方向のずれが判定できることを特徴とする表示装置。」

1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」の「(1)」に記載したとおりである。

2.対比
本願発明と引用発明を対比する。
本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、「前記第4の配線は、その先端部に配線幅が広い領域を有し、前記判定端子は前記第4の配線の前記配線幅が広い領域を囲む不連続な環状形状であり、前記環状形状の開いた部分の距離は前記第4の配線の前記配線幅が広い領域の配線幅より短く、前記第4の配線の前記先端部以外の領域の一部は、前記環状形状の開いた部分に配置され、」という事項を削除したものである。
当該事項は、前記「第2」の「3.対比」で検討した(相違点1)に係る構成に他ならない。
したがって、本願発明と引用発明は、上記(相違点2)で相違し、それ以外の点で一致している。

3.判断
表示パネルと基板を位置決めする際に、左右方向とともに上下方向についての位置決めも必要であることは、当該技術分野における技術常識である(上記摘記事項(2d)参照)。
そして、本願発明と引用発明は上記(相違点2)以外の点で一致していることから、引用発明においても、複数本の第1配線が並設された方向における左右両方向と直交する方向における上下両方向のずれが判定できることは明らかである。
してみると、引用発明において、左右両方向のずれとともに上下両方向のずれも判定しようとすることは、その必要に応じて当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-05 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-25 
出願番号 特願2005-177439(P2005-177439)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 吉川 陽吾
伊藤 昌哉
発明の名称 表示装置  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ