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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1265774
審判番号 不服2010-20404  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-10 
確定日 2012-11-07 
事件の表示 特願2008- 69546「既に呼出した情報ページを再度見出すための表示の発生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-192168〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年3月29日(パリ条約による優先権主張2001年3月30日、独国)に出願した特願2002-94143号(以下、「原出願」という。)の一部を平成20年3月18日に新たな特許出願としたものであって、平成21年12月16日付け拒絶理由通知に応答して平成22年3月18日付けで手続補正がなされたが、平成22年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年9月10日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年9月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、
(1)本件補正前の請求項1に「c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの順序を認識可能にする表示(80、81)が発生される過程」とあったところを「c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの時間的に連続する順序を認識可能にする一時的な表示(80、81)が発生される過程」と限定し、
(2)新たに「d)前記一時的な表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される」との発明特定事項を付加し、
(3)本件補正前の請求項5を削除するとともに、該削除に伴い、本件補正前の請求項1ないし5を引用する請求項6、及び本件補正前の請求項1ないし6を引用する請求項7を、それぞれ本件補正後の請求項1ないし4を引用する請求項5、及び本件補正後の請求項1ないし5を引用する請求項6へと繰り上げるものである。

よって、本件補正は、請求項1についてみれば、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
インターネット、イントラネット又はエキストラネットを介して呼出し可能な情報ページであって、情報提供者のサーバ(20)上の開始ページ(50)から既に呼出されかつその後閉じられた情報ページを再度見出すための表示の発生方法において、
a)開始ページ(50)の呼出しの際に利用者(5)がサーバ(20)上で登録される過程と、
b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページがサーバ(20)上で登録される過程と、
c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの時間的に連続する順序を認識可能にする一時的な表示(80、81)が発生される過程と
を含み、
d)前記一時的な表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される
ことを特徴とする方法。」

2.引用例
(引用例)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、柏原昭博,佐竹義智,豊田順一,ハイパーメディア教材における履歴の可視化と知識整理支援、電子情報通信学会技術研究報告,第98巻,第35号,1998年4月24日発行、p.25?32(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
(イ)「1.序論
ハイパーメディアが提供するハイパー空間は,個々の情報(ノード)と情報間を有機的につなぐリンクから構成され,学習者が構成的な(Constructive)方法で学べるようにうまく構造化されている場合が多い[Kashihara et al. 1997].学習者は,ある学習目的のもとに,この空間を自主的に探求しながら,学習を進めることができる.しかしながら,探求が進むにつれて,それまでに何を・なぜ辿ってきたのかが不明瞭になり,ついには当初の学習目的を満たす上で次に何をたどるべきかを見い出せなくなってしまうことがある.特に,辿ってきた履歴が長くなるほど,この問題は現れやすくなる.これは,ハイパーメディアでよく知られた「迷子の問題」である[Nielsen 1990;Conklin 1988].」(第26頁左欄第1?15行)

(ロ)「そこで,本論文では,ハイパーメディア教材からの学習(Learning-by-Exploration)を支援するために,学習者の履歴情報を可視化する手法を提案する.」(第26頁左欄第29?31行)

(ハ)「本研究では,これらを可視化のための必要条件とみなし,WWW上に公開されているハイパーメディア教材を対象として,履歴情報を可視化するシステムHiVis(History Visualization)を開発している.HiVisでは,(a)履歴文脈を含めた時系列表現,(b)履歴の構造表現,(c)ハイパー空間の全体構造と履歴の重ね合わせ表現,の三つを可視化表現としている.(a)は,ハイパー空間においてどのノード(WWWドキュメント)をたどってきたかを時間順に並べたものである.また,ノードをたどるたびに,なぜノードを移ったかをユーザに尋ね,その理由を時系列表現のノード間のリンクにタグとして張り付けている.この表現は,ハイパー空間における思考の想起を促すために用いられる.」(第26頁左欄第43行?同頁右欄第13行)

(ニ)「2.4履歴の可視化
ハイパー空間における自主的・構成的な学習を効果的に支援するためには,学習者の探求を制約せず,学習者の要求に応じてそれまでの探求履歴に目を向けさせることが必要である.ここでは,たどってきた内容の整理および次にたどるべき内容を見つけることを支援するためには,どのように履歴を可視化すべきかを検討する.
まず,辿ってきた内容を整理させるためには,学習者がハイパー空間を探索していたときの思考を想起させるように,履歴を可視化することが必要となる.特に,構成的な学習を支援するためには,何を辿ってきたかだけでなく,なぜ辿ってきたかを想起させることが,探求した内容を整理させる上で重要である.このためには,探求時の文脈をできるだけ再現することができるように,辿ってきたノードにラベルを付け,辿ってきた順にノードを並べ,さらにノードを移動した理由などが分かるような「履歴の時系列表現」が必要となる.」(第28頁左欄第11行?同頁右欄第10行)

(ホ)「3.1枠組み
HiVisによる履歴の可視化について述べる前に,まずHiVisが提供する支援の枠組みについて触れておく.まず,HiVisは図lに示すようなユーザインタフェイスを学習者に提供する.学習者は,ある学習目的を持って左側のウインドウでWWWのぺージを読みながら探求を進めることができる.必要な時には,それまでの履歴を見ることができる.学習者は,可視化された履歴情報から,それまでに辿ってきた内容を整理し,次に辿るべき内容を決めることが期待される.履歴は,右側に表示される.ユーザインタフェイスは,学習者が訪ねたノードやリンクをモニターして,履歴情報を取得する.その他,学習者がなぜノードをたどったのかという理由や,ノードを読んでいた時間も履歴情報として記録する.
図1では,左側のウインドウにおいて学習者はあるハイパーメディアのホームページ[Homepage]を閲覧しており,右側のウィンドウにはそのハイパーメディアが提供するハイパー空間全体の構造が表示されている.(通常,HiVisは,ハイパー空間の全体構造のみを表示することはない.)」(第29頁左欄第14行?第30頁左欄第2行)

(ヘ)「3.2履歴情報の可視化
3.2.1時系列表現
HiVisでは,できるだけ多くの文脈情報を可視化することによって,探求内容の整理を支援している.まず,図2(a)に示すように,学習者が辿った時間順にノードを並べる.また,図2(b)に示すように,各ノードに対して,学習者がその前のノードの中で選んだアンカー(リンク)の記述をノード名としてラベル付けしている.このようなラベルにより,学習者はハイパー空間を辿ってきたときの文脈をより想起しやすくなると考えられる.
また,アンカーを選択して次のノードを訪れるたびに,訪れた理由を記述するように求められる.訪れた理由には,例えば,(1)前のノードにもどるため,(2)詳細な説明をみるため,(3)質問に対する答えを得るため,(4)関連する項目を見るため,などが考えられる.
また,HiVisは,たどったノードのうちどのノードが重要であったかを確認させる一つの情報として,ノードを閲覧していた時間も表示する.また,表示されたノードの詳細を想起できない場合には,学習者は時系列表現中のノードをマウスでクリックすることによって,対応するWWWのぺージを左側のウィンドウ内で見ることができる.」(第30頁左欄第3行?同頁右欄第6行)

(ト)「3.2.3重ね合わせ表現
HiVisでは,ネットワーク構造を用いてハイパーメディアが提供するハイパー空間の全体図をそのまま表現せず,フイルタリングを施して木構造として表現している.そのルートノードは,通常ハイパーメディアのホームページに相当するが,ハイパーメディア内であればどのWWWぺージをルートノードとして選択しても構わない.HiVisは,このルートノードから木構造を生成する.まず,ルートに含まれるアンカーが指し示すノードをルートの子ノードと見なし,そのアンカーの記述を子ノードの名前としてラベル付けする.ただし,他のWWWサーバーや親ノードへもどるようなアンカーについては,子ノードの探索を行わない.HiVisは,ノード内にアンカーがなくなるまで子ノードの探索を続ける.HiVisは,このように生成されたハイパー空間の全体構造を表す木構造に,すでに探求した範囲を重ねて表示する.」(第30頁右欄第20行?第31頁右欄第4行)

(チ)「3.3予備実験
筆者らは,HiVisの有効性を確認するための予備的な実験を行った.被験者は,理工系大学院生4名である.まず,被験者に対して,学習目的を与え,WWW上のハイパーメディア教材を探求するように求めた.一定時間探求させた後,HiVisが提供する履歴の可視化支援を用いるように求めた.その後,被験者に対して,履歴の可視化が効果的であったかどうか,どんな情報が可視化された表現から得られたかを尋ねた.」(第32頁左欄第1?9行)

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「WWW上に公開されているハイパーメディア教材を対象とし、WWW上のハイパーメディア教材からの学習を支援するため、学習者の履歴情報を可視化するシステムHiVis(History Visualization)により、学習者の履歴情報を可視化する手法であって、
ハイパーメディアが提供するハイパー空間は、ルートノード(WWWぺージ)と、ルートに含まれるアンカーが指し示すノードを含み、そのルートノードは、通常ハイパーメディアのホームページに相当するものであり、
HiVisは、履歴文脈を含めた時系列表現を可視化表現として含み、履歴文脈を含めた時系列表現は、学習者がハイパー空間においてどのノード(WWWドキュメント)をたどってきたかを時間順に並べたものであり、
HiVisは、ユーザインタフェイスを学習者に提供し、学習者は、ある学習目的を持って左側のウインドウでWWWのぺージを読みながら探求を進めることができ、必要な時には、それまでの履歴を見ることができ、履歴は、右側に表示され、ユーザインタフェイスは、学習者が訪ねたノードやリンクをモニターして、履歴情報を取得し、
履歴の時系列表現では、辿ってきたノードにラベルを付け,学習者が辿った時間順にノードを並べ、学習者は時系列表現中のノードをマウスでクリックすることによって、対応するWWWのぺージを左側のウィンドウ内で見ることができる、
手法。」

(周知文献)
本願の優先日前に頒布された刊行物である、「特集2 PHPによるWeb-DB連携システム構築技法」、WEB+DB PRESS、Vol.1、(株)技術評論社、平成13年3月9日、初版第3刷発行、p.33?62(以下、「周知文献」という。)には、PHPについて次の解説記事が記載されている。
(リ)「これは,PHPはサーバ側で実行されるもので,ブラウザ(クライアント)側で実行されているわけではないからです(ブラウザ側で実行したい場合には,通常のHTMLと同様にJavaScriptを使用すればよい).たまにJava Scriptと同じようなものと勘違いをなさるかたもいらっしゃるのですが,PHPはブラウザ側では一切実行しないので注意してください.」(第35頁右欄第11?17行)

(ヌ)「PHP4のセッション管理機構では,セッション情報がセッションIDにより管理されます.セッションIDはクライアント側に保存され,具体的なセッション情報はこのIDをキーとしてサーバ内に保持されます.セッションIDは,以下の形式でブラウザ側に渡されます.」(第50頁左欄下から5行目?同欄最下行)

(ル)「デフォルトではセッションを保持するCookieの有効期限は,ブラウザ終了までとなっています.このため,ブラウザを一旦終了するとセッション変数はクリアされ,カウンタはリセットされます.」(第51頁左欄第10?13行)

3.対比
本願補正発明を引用発明と比較する。
引用発明における「学習者」は、「WWW上に公開されているハイパーメディア教材」のユーザであるから、本願補正発明の「利用者」に相当する。
次に、引用発明における「ハイパーメディア教材」の提供者が、本願補正発明の「情報提供者」に相当する。
次に、引用発明における「WWW上」とは、摘記事項(ト)に「他のWWWサーバー」と記載されていることの反対解釈により、WWWサーバ上を意味していることは明らかであるから、引用発明の「WWW上」が、本願補正発明の「サーバ(20)上」に相当する。
次に、引用発明における「通常ハイパーメディアのホームページに相当する」「ルートノード(WWWぺージ)」が、本願補正発明の「サーバ(20)上の開始ページ(50)」に相当する。
次に、「ハイパーメディア教材」のハイパーメディアとして特性を踏まえると、引用発明の上記「ルートノード(WWWぺージ)」から、「アンカー」等により学習者が訪ねた「ノード(WWWドキュメント)」が、本願補正発明の「サーバ(20)上の開始ページ(50)から既に呼出されかつその後閉じられた情報ページ」及び「利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページ」に相当する。
次に、引用発明の「学習者」が、「WWW上に公開されているハイパーメディア教材」から「通常ハイパーメディアのホームページに相当する」「ルートノード(WWWぺージ)」を「左側のウインドウ」に表示させることと、本願補正発明の「a)開始ページ(50)の呼出しの際に利用者(5)がサーバ(20)上で登録される過程」とは「a)開始ページ(50)の呼出し過程」である点で共通する。
次に、引用発明において「HiVisは、ユーザインタフェイスを学習者に提供し、学習者は、ある学習目的を持って左側のウインドウでWWWのぺージを読みながら探求を進めることができ」、「ユーザインタフェイスは、学習者が訪ねたノードやリンクをモニターして、履歴情報を取得」することと、本願補正発明の「b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページがサーバ(20)上で登録される過程」とは、「b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページが登録される過程」の点で共通する。
次に、引用発明において「学習者がハイパー空間においてどのノード(WWWドキュメント)を辿ってきたかを時間順に並べた」「履歴の時系列表現」が、「必要な時には」「右側に表示され」ることが、本願補正発明の「c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの時間的に連続する順序を認識可能にする一時的な表示(80、81)が発生される過程」に相当する。
次に、引用発明の「履歴の時系列表現」の「表示」は、「学習者」が、「必要な時には、それまでの履歴を見ることができ」、「時系列表現中のノードをマウスでクリックすることによって、対応するWWWのぺージを左側のウィンドウ内で見ることができ」るようにするための表示であるから、本願補正発明の「サーバ(20)上の開始ページ(50)から既に呼出されかつその後閉じられた情報ページを再度見出すための表示」に相当する。
次に、引用発明において「WWW上のハイパーメディア教材」を用いた学習は、摘記事項(チ)の記載より、一定時間の探求と、履歴の可視化支援の利用後に、「学習者」によって終了されることは明らかであるから、引用発明と、本願補正発明の「d)前記一時的な表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される」こととは、「d)利用者によって利用が終了される」点で共通するといえる。
次に、引用発明の「WWW上」すなわち、WWWサーバ上に「公開されているハイパーメディア教材」の「ノード(WWWドキュメント)」が、「学習者」に提供される「ユーザインタフェイス」から、インターネット、イントラネット又はエキストラネットを介して呼出し可能であることは明らかである。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
インターネット、イントラネット又はエキストラネットを介して呼出し可能な情報ページであって、サーバ(20)上の開始ページ(50)から既に呼出されかつその後閉じられた情報ページを再度見出すための表示の発生方法において、
a)開始ページ(50)の呼出し過程と、
b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページが登録される過程と、
c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの時間的に連続する順序を認識可能にする一時的な表示(80、81)が発生される過程とを含み、
d)利用者によって利用が終了される
ことを特徴とする方法。

一方で、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、「サーバ(20)」が「情報提供者」のものであるのに対し、引用発明では、ハイパーメディア教材をWWWサーバ上で公開していることは明らかであるものの、そのWWWサーバが「ハイパーメディア教材」の提供者(本願補正発明の「情報提供者」に相当する。以下同様。)のものであるか不明である点。

<相違点2>
本願補正発明では、「a)開始ページ(50)の呼出しの際に利用者(5)がサーバ(20)上で登録される過程」を含んでいるのに対し、引用発明では、「学習者」が、「WWW上に公開されているハイパーメディア教材」から「通常ハイパーメディアのホームページに相当する」「ルートノード(WWWぺージ)」を「左側のウインドウ」に表示させ(開始ページ(50)の呼出し)ているものの、その際に「学習者」(利用者(5))がWWW上、すなわちWWWサーバ上(サーバ(20)上)で登録されているか、明らかでない点。

<相違点3>
本願補正発明では、「b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページがサーバ(20)上で登録される過程」を含んでいるのに対し、引用発明において「HiVisは、ユーザインタフェイスを学習者に提供し、学習者は,ある学習目的を持って左側のウインドウでWWWのぺージを読みながら探求を進めることができ」、「ユーザインタフェイスは、学習者が訪ねたノードやリンクをモニターして、履歴情報を取得し(「b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページが登録され」)ているものの、該取得(登録)は「学習者に提供」される「ユーザインタフェイス」にて行われており、本願補正発明のように「サーバ(20)上で登録され」るものではない点。

<相違点4>
本願補正発明では、「d)前記一時的な表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される」のに対し、引用発明では、「必要な時には」「右側に表示され」る、「学習者がハイパー空間においてどのノード(WWWドキュメント)を辿ってきたかを時間順に並べた」「履歴の時系列表現」及び「ユーザインタフェイス」が「取得した」「学習者が訪ねたノード」の「履歴情報」(前記一時的な表示およびその内容)が、「WWW上のハイパーメディア教材」を用いた学習の終了の際、どのように扱われるのか、明らかでない点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討すると、
<相違点1>について:
サーバを誰のものとするかは、当事者間で取り決めるべき事項であるから、引用発明において、ハイパーメディア教材を公開していることの明らかなWWWサーバ(サーバ(20))を「ハイパーメディア教材」の提供者(情報提供者)のものとすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>?<相違点4>について:
本願の優先日前の2000年10月13日に、<?PHPB_(UILDER)?>(インターネット,<URL: http://www.phpbuilder.com/forum/>)の「S_(UPPORT) F_(ORUM)」「Coding Help」には、「PHP "breadcrumb trail"?」(当審訳:PHP「パン屑の道しるべ」?)との主題について、以下の5つの投稿がなされていたことが認められる。
・第1の投稿については、
http://web.archive.org/web/20010424062313/http://www.phpbuilder.com/forum/archives/2/2000/10/2/110296
・第2の投稿については、
http://web.archive.org/web/20010424185909/http://www.phpbuilder.com/forum/archives/2/2000/10/2/110299
・第3の投稿については、
http://web.archive.org/web/20010424185747/http://www.phpbuilder.com/forum/archives/2/2000/10/2/110309
・第4の投稿については、
http://web.archive.org/web/20010424190115/http://www.phpbuilder.com/forum/archives/2/2000/10/2/110329
・第5の投稿については、
http://web.archive.org/web/20010307060516/http://www.phpbuilder.com/forum/archives/2/2000/10/2/110331
参照。
(なお、第1?第4の投稿を踏まえて投稿された第5の投稿が、インターネット・アーカイブ<URL:http://web.archive.org/>によって2001年3月7日に記録されているから、第1?第5の投稿は、本願の優先日前においてインターネット上で利用可能であったことは明らかである。)

このうち、第1の投稿及び第2の投稿の内容は、以下のとおりである。
<第1の投稿>
「Author: Aaron Waite
Date: 2000-10-13 12:27:01
Subject: PHP "breadcrumb trail"?
Hi!
I need to implement something like Jakob Neilson talks about in his web usability book. I'd like to make it dynamically generated, but I'm new to programming and PHP, so I'm not sure where to start. Basically if the navigation through the site goes page1.php, page2.php, page3.php, etc, on the each individual page I'd like to see a trail for where I've been. Such as:
Page 1 > Page 2 > Page 3 > Etc.
If anyone has any suggestions on how to start implementing this, or if anyone has code to do this, please let me know!
Thanks!」
(当審訳:著者:アーロン・ウェート
日付:2000-10-13 12:27:01
主題:PHP「パン屑の道しるべ」?
やあ!
ジェイコブ・ニールソンがウェブの利用性についての彼の本の中で語っているようなことを、私はインプリメントする必要があります。私はそれを動的に生成させたい。しかし、私はプログラミングとPHPに不慣れですので、どこから手を付けてよいのか分かりません。基本的に、そのサイトを渉るナビゲーションが、page1.php、page2.php、page3.php、その他、へと進んだ場合、それぞれのページ上で、私が訪れてきた足跡を確かめたい。
次の如くに:
Page 1 > Page 2 > Page 3 > Etc.
誰かこれのインプリメントの仕方の案を持っている人がいたら、あるいは、誰かそのためのコードを持っている人がいたら、お知らせください!
ありがとう!)

<第2の投稿>
「Author: Chris Lee
Date: 2000-10-13 12:42:51
Subject: RE: PHP "breadcrumb trail"?
just pass a variable, easily done with sessions and keep adding to it.
session_start();
if (!isset($site))
{
$site[] = $PHP_SELF;
session_register("site");
}
foreach($site as $pos => $val)
echo " $val \n";
That should work. untested though. If you dont have alot of expereice with sessions, take a look on
www.php.net/manual/ref.session.php
or
www.phpbuilder.com/columns/mattias20000312.php3
Although neither are by any means definitive.
if you have compiled php yourself be sure to enable
--enable-trans-sid
It will make sessions avalibe to users without cookies.
Chris Lee 」(当審注:インターネット・アーカイブ<URL:http://web.archive.org/>による記録の際、HTMLソースにプレフックスが付加されて「echo " $val \n";」となり、ブラウザ上で「echo " $val \n"; 」と誤ってリンク付き文字で表示される箇所を、http://board.phpbuilder.com/board/showthread.php?t=10110296に基づき、元の投稿どおり「echo " $val \n";」と復元して記載した。なお、バックスラッシュを「\」と記載した。また、ドルマークを全角文字$で記載した。)
(当審訳:著者:クリス・リー
日時:2000-10-13 12:42:51
主題:Re:PHP「バン屑の道しるべ」?
ただ、1つの変数を複数のセッションでたやすく渡し、そして、それに加え続けなさい。

(PHPスクリプトの記載省略)

きっと動作します。
しかし、テストはしていません。
もし、あなたがセッションについて経験豊富でないのなら、
www.php.net/manual/ref.session.php
あるいは
www.phpbuilder.com/columns/mattias20000312.php3
をご覧なさい。
どちらも、決して、完全で正確であるとはいえませんが。
あなた自身でphpをコンパイルした場合、必ず
--enable-trans-sid
をイネーブルにしてください。そうすると、クッキーを利用しないユーザに対しても、セッションが利用可能となります。
クリス・リー)

そして、上記<第2の投稿>で引用されたマニュアル<www.php.net/manual/ref.session.php>の和訳である<http://web.archive.org/web/20000817000128/http://www.php.net/manual/ja/ref.session.php>には、「PHPのセッションサポート機能は、複数回のアクセスを通じて特定のデータを保持する手段を実現するものです。これにより、よりカスタマイズされたアプリケーションを構築し、自分のWebサイトのアピール度を増加させることが可能となります。
PHPLIB のセッション管理に精通している場合には、そのコンセプトがPHPのセッションサポートに似ていることに気づくことでしょう。
Webサイトの訪問者にはセッションIDというユニークなIDが割りつけられます。このIDは、ユーザー側にクッキーとして保存するか、または、URLに埋め込みます。
セッションサポート機能により、任意の数の変数をリクエスト間で受けわたせるようになります。来訪者がサイトにアクセスした際、PHP は特定のセッションIDがリクエストとともに送信されているかどうかを (session.auto_start が 1 の場合は)自動的に、または (session_start() により明示的な、あるいは session_register() により暗黙の) 要求を受けて確認します。このIDが送信されている場合には、以前保存された変数が再現されます。」と記載されている。
また、上記マニュアルには、「PHP により定義される変数」として、
「PHP_SELF
現在実行しているスクリプトのドキュメントルートに相対パスで表したファイル名。」(http://web.archive.org/web/20000824144508/http://www.php.net/manual/ja/language.variables.predefined.php)と記載されている。

前記「2.引用例」の周知文献に記載されたPHPについての解説記事(リ)?(ル)を踏まえると、上記投稿内容及びその投稿に引用されたマニュアルの記載より、本願の優先日前において、Webサイト(サーバ(20))の訪問者が、該Webサイトの内を、page1.php、page2.php、page3.php、その他、へと進んだ場合、それぞれのページ上で、Page 1 > Page 2 > Page 3 > Etc. のような、訪問者が訪れてきた足跡を確かめることのできる表示を、PHPスクリプトにより、サーバ側で提供すること、そのため、PHPのセッションサポート機能により、サイトの訪問者にはセッションIDというユニークなIDを割りつける(利用者(5)がサーバ(20)上で登録される)こと、1つの変数($site)を、訪問者がサイトにアクセスする際のリクエスト間で受けわたし、訪問者が訪れたWebサイトの内のページのファイル名(PHP_SELF)をその1つの変数($site)に加え続ける(情報ページがサーバ(20)上で登録される)こと、ブラウザの終了(インターネット利用の終了)により、ブラウザの表示が消去されるだけでなく、上記1つの変数($site)もクリアされる(表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される)ことは、当業者にとって周知の事項であったものと認められる。

よって、引用発明において、上記周知の事項に倣い、ユーザ側での処理をサーバ側での処理とすること、つまり、
(1)引用発明において、「学習者」(利用者(5))が、「WWW上に公開されているハイパーメディア教材」から「通常ハイパーメディアのホームページに相当する」「ルートノード(WWWぺージ)」を「左側のウインドウ」に表示する(開始ページ(50)の呼出し)の際、「学習者」(利用者(5))がWWW上、すなわちWWWサーバ上(サーバ(20)上)で登録されるようにすること(相違点2)、
(2)「学習者」(利用者(5))が「ある学習目的を持って左側のウインドウでWWWのぺージを読みながら探求を進める」際、「ユーザインタフェイス」の代わりに、WWW上、すなわちWWWサーバ上(サーバ(20)上)で、「学習者が訪ねたノードやリンクをモニターして、履歴情報を取得する(「b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページが登録される」)ようにすること(相違点3)、及び、
(3)「ユーザインタフェイス」(ブラウザ)が閉じられたとき、表示を消去するとともに、「学習者が訪ねたノード」の「履歴情報」をクリアする(「d)前記一時的な表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される)ようにすること(相違点4)
は、いずれも当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知事項から、当業者が予測しうるものである。

従って、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年9月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成22年3月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の1?7に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
インターネット、イントラネット又はエキストラネットを介して呼出し可能な情報ページであって、情報提供者のサーバ(20)上の開始ページ(50)から既に呼出されかつその後閉じられた情報ページを再度見出すための表示の発生方法において、
a)開始ページ(50)の呼出しの際に利用者(5)がサーバ(20)上で登録される過程と、
b)利用者(5)により直接的又は間接的に開始ページ(50)から呼出された情報提供者の情報ページがサーバ(20)上で登録される過程と、
c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの順序を認識可能にする表示(80、81)が発生される過程と
を含むことを特徴とする方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 [理由]2.」「(引用例)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本願補正発明から、
(1)「c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの時間的に連続する順序を認識可能にする一時的な表示(80、81)が発生される過程」とあったところを「c)利用者(5)により呼出された情報提供者の情報ページの順序を認識可能にする表示(80、81)が発生される過程」と、限定を省き、
(2)「d)前記一時的な表示およびその内容は、利用者によるその情報提供者におけるインターネット利用の終了の際消去される」との発明特定事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願補正発明の発明特定事項の全てを含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 [理由]4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
従って、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-30 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-27 
出願番号 特願2008-69546(P2008-69546)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻本 泰隆  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 衣川 裕史
山田 正文
発明の名称 既に呼出した情報ページを再度見出すための表示の発生方法  
代理人 山本 浩  
代理人 山口 巖  

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