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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1265792
審判番号 不服2011-15350  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-15 
確定日 2012-11-07 
事件の表示 特願2006-323120「エンジン・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日出願公開、特開2007-154882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件出願は、平成18年11月30日(パリ条約による優先権主張2005年11月30日、米国)の出願であって、平成22年10月22日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成23年1月25日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成23年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年7月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成24年1月23日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成24年4月20日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年7月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年7月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]

[1]補正の内容

平成23年7月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年1月25日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし22を下記の(b)に示す請求項1ないし22と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲

「【請求項1】
エンジン・システムにおいて、
上記エンジン内に配設されたシリンダ、
該シリンダ内に第一燃料を供給するための第一のポート噴射弁及び、
上記シリンダ内に第二燃料を供給するための、上記シリンダ外の第二噴射弁、
上記エンジンの吸気系においてスロットルバルブの下流に配置されることにより、上記エンジンに結合される充填動作制御バルブ、
を有するシステム。
【請求項2】
上記第二噴射弁が、第二のポート噴射弁である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記第二のポート噴射弁が、アルコールを貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
上記第二のポート噴射弁が、アルコールとガソリンの混合物を貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
上記第一のポート噴射弁を、少なくとも吸気弁が閉じられている間に噴射を実行させるべく制御し、上記第二噴射弁を、少なくとも吸気弁が開かれている間に噴射を実行させるべく制御するよう構成された制御器を更に有する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項6】
上記制御器が、第一エンジン状態において上記第一のポート噴射弁を作動させ、そして第二エンジン状態において上記第二噴射弁を作動させる、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
上記制御器が、上記第二状態において、上記第一のポート噴射弁と上記第二噴射弁との両方を作動させるように更に構成されている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
上記第二噴射弁が利用可能な状態のときに上記充填動作制御バルブの位置を第一の位置とし、そして上記第二噴射弁が利用可能な状態でないときに上記充填動作制御バルブの位置を第二の位置とするよう構成された制御器を更に備えた、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
上記第一のポート噴射弁及び上記第二噴射弁の作動に応じて、上記充填動作制御バルブの位置を変えるように構成された、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
エンジン温度又はエンジン負荷に係る作動状態が変化するとき、吸気弁が開かれている間の少なくとも一部の期間と、吸気弁が閉じられている間の少なくとも一部の期間との間で、上記第一のポート噴射弁と上記第二噴射弁との一方の噴射タイミングが変わる、
請求項1乃至9のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項11】
上記第二のポート噴射弁が、エタノールを貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
上記第二のポート噴射弁が、水を貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
上記第二のポート噴射弁が、水とエタノールの混合物を貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項14】
上記エンジンに連結されるブースト装置を更に備え、上記第一のポート噴射弁及び第二噴射弁が異なる噴霧パターンを持つ、
請求項1乃至14のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項15】
エンジン・システムにおいて、
上記エンジン内に配設されるシリンダ、
該シリンダ内に第一の燃料を供給するための第一のポート噴射弁、
上記シリンダ内に第二の燃料を供給するための第二のポート噴射弁及び、
上記シリンダの吸気バルブが開いている間の少なくとも一部において、少なくとも上記第二のポート噴射弁を、上記第二の燃料を噴射すべく作動させるための制御器、
スロットルバルブの下流に配置されることにより、上記エンジンの吸気系に結合されたバルブを有し、
上記バルブの位置が、上記第二のポート噴射弁が上記シリンダに燃料を供給するかどうかに依存している、システム。
【請求項16】
上記第二のポート噴射弁が利用可能な状態のときに上記バルブを第一の位置とし、そして、上記第二のポート噴射弁が利用可能な状態でないときに上記バルブを第二の位置とするように構成された制御器を更に有する、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
上記第二のポート噴射弁が、アルコールを貯蔵する容器に連結されている、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
上記バルブが、ポートの作動が可能な状態と不能な状態とを調整可能な、ポート停止調整バルブである、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
エンジン温度又はエンジン負荷に係る作動状態が変化するとき、吸気弁が開かれている間の少なくとも一部の期間と、吸気弁が閉じられている間の少なくとも一部の期間との間で、上記第一のポート噴射弁と上記第二のポート噴射弁との一方の噴射タイミングが変わる、
請求項15乃至18のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項20】
上記アルコールがエタノールである、
請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
エンジン・システムにおいて、
上記エンジン内に配設されるシリンダ、
該シリンダ内に第一の燃料を供給するための第一のポート噴射弁、
上記シリンダ内に第二の燃料を供給するための第二のポート噴射弁、
スロットルバルブの下流に配置されることにより、上記エンジンの吸気系に結合されたバルブを更に備え、
上記噴射弁の一つが燃料を噴射していないとき、該一つの噴射弁の周りの空気量を低減すべく上記バルブを調整するよう構成された制御器、
を有する、システム。
【請求項22】
上記エンジンに連結されるブースト装置を更に備え、上記第二のポート噴射弁からの噴射量が、そのブースト量に基づいて調整される、
請求項21に記載のシステム。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲

「【請求項1】
エンジン・システムにおいて、
上記エンジン内に配設されたシリンダ、
該シリンダ内に第一燃料を供給するための第一のポート噴射弁及び、
上記シリンダ内に第二燃料を供給するための、上記シリンダ外の第二噴射弁、
上記エンジンの吸気系においてスロットルバルブの下流に配置されることにより、上記エンジンに結合される充填動作制御バルブ、
を有し、
上記エンジンの低負荷状態において、上記第一のポート噴射弁は、上記第一燃料を噴射しかつ、上記充填動作制御バルブは、上記第二噴射弁周りの流量を制限するように動作するシステム。
【請求項2】
上記第二噴射弁が、第二のポート噴射弁である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記第二のポート噴射弁が、アルコールを貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
上記第二のポート噴射弁が、アルコールとガソリンの混合物を貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
上記第一のポート噴射弁を、吸気弁が閉じられている間の少なくとも一部において噴射を実行させる、又は、上記吸気弁が開かれている間の少なくとも一部において噴射を実行させるべく制御するよう構成された制御器を更に有する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項6】
上記制御器が、第一エンジン状態において上記第一のポート噴射弁を作動させ、そして第二エンジン状態において上記第二噴射弁を作動させる、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
上記制御器が、上記第二エンジン状態において、上記第一のポート噴射弁と上記第二噴射弁との両方を作動させるように更に構成されている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
上記第二噴射弁が利用可能な状態のときに上記充填動作制御バルブの位置を第一の位置とし、そして上記第二噴射弁が利用可能な状態でないときに上記充填動作制御バルブの位置を第二の位置とするよう構成された制御器を更に備えた、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
上記第一のポート噴射弁及び上記第二噴射弁の作動に応じて、上記充填動作制御バルブの位置を変えるように構成された、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
エンジン負荷に関して、第一領域と、当該第一領域よりも負荷の高い第二領域と、当該第二領域よりも負荷の高い第三領域とが、設定されており、
上記第一領域では、上記第一のポート噴射弁が、吸気弁が閉じられている間の少なくとも一部の期間において上記第一燃料を噴射し、
上記第二領域では、上記第一のポート噴射弁が、上記吸気弁が閉じられている間の期間、又は、上記吸気弁が開かれている間の期間において上記第一燃料を噴射すると共に、上記第二噴射弁が、上記吸気弁が閉じられている間の期間、又は、上記吸気弁が開かれている間の期間において上記第二燃料を噴射する、
請求項1乃至9のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項11】
上記第二のポート噴射弁が、エタノールを貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
上記第二のポート噴射弁が、水を貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
上記第二のポート噴射弁が、水とエタノールの混合物を貯蔵する容器に連結されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項14】
上記エンジンに連結されるブースト装置を更に備え、上記第一のポート噴射弁及び第二噴射弁が異なる噴霧パターンを持つ、
請求項1乃至13のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項15】
エンジン・システムにおいて、
上記エンジン内に配設されるシリンダ、
該シリンダ内に第一の燃料を供給するための第一のポート噴射弁、
上記シリンダ内に第二の燃料を供給するための第二のポート噴射弁及び、
上記シリンダの吸気バルブが開いている間の少なくとも一部において、少なくとも上記第二のポート噴射弁を、上記第二の燃料を噴射すべく作動させるための制御器、
スロットルバルブの下流に配置されることにより、上記エンジンの吸気系に結合されたバルブを有し、
上記バルブの位置が、上記第二のポート噴射弁が上記シリンダに燃料を供給するかどうかに依存し、
上記エンジンの低負荷状態において、上記第一のポート噴射弁は、上記第一の燃料を噴射しかつ、上記バルブは、上記第二のポート噴射弁周りの流量を制限するように動作するシステム。
【請求項16】
上記第二のポート噴射弁が利用可能な状態のときに上記バルブを第一の位置とし、そして、上記第二のポート噴射弁が利用可能な状態でないときに上記バルブを第二の位置とするように構成された制御器を更に有する、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
上記第二のポート噴射弁が、アルコールを貯蔵する容器に連結されている、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
上記バルブが、ポートの作動が可能な状態と不能な状態とを調整可能な、ポート停止調整バルブである、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
エンジン負荷に関して、第一領域と、当該第一領域よりも負荷の高い第二領域と、当該第二領域よりも負荷の高い第三領域とが、設定されており、
上記第一領域では、上記第一のポート噴射弁が、吸気弁が閉じられている間の少なくとも一部の期間において上記第一の燃料を噴射し、
上記第二領域では、上記第一のポート噴射弁が、上記吸気弁が閉じられている間の期間、又は、上記吸気弁が開かれている間の期間において上記第一の燃料を噴射すると共に、上記第二のポート噴射弁が、上記吸気弁が閉じられている間の期間、又は、上記吸気弁が開かれている間の期間において上記第二の燃料を噴射する、
請求項15乃至18のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項20】
上記アルコールがエタノールである、
請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
エンジン・システムにおいて、
上記エンジン内に配設されるシリンダ、
該シリンダ内に第一の燃料を供給するための第一のポート噴射弁、
上記シリンダ内に第二の燃料を供給するための第二のポート噴射弁、
スロットルバルブの下流に配置されることにより、上記エンジンの吸気系に結合されたバルブを更に備え、
上記噴射弁の一つが燃料を噴射していないとき、該一つの噴射弁の周りの空気量を低減すべく上記バルブを調整するよう構成された制御器、
を有し、
上記エンジンの低負荷状態において、上記第一のポート噴射弁は、上記第一の燃料を噴射しかつ、上記制御器は、上記バルブを、上記第二のポート噴射弁周りの流量を制限するように調整する、システム。
【請求項22】
上記エンジンに連結されるブースト装置を更に備え、上記第二のポート噴射弁からの噴射量が、そのブースト量に基づいて調整される、
請求項21に記載のシステム。」
(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

[2]本件補正の目的

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「・・・・・充填動作制御バルブ、 を有するシステム。」の記載を、「・・・・・充填動作制御バルブ、 を有し、 上記エンジンの低負荷状態において、上記第一のポート噴射弁は、上記第一燃料を噴射しかつ、上記充填動作制御バルブは、上記第二噴射弁周りの流量を制限するように動作するシステム。」とするものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「第一のポート噴射弁」及び「充填動作制御バルブ」の動作について、「エンジンの低負荷状態において、」「第一のポート噴射弁は、」「第一燃料を噴射しかつ、」「充填動作制御バルブは、」「第二噴射弁周りの流量を制限するように動作」するものであることを限定するものであるといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項に限定を付加したものといえるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

[3]独立特許要件の判断

1.刊行物

(1)刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭58-107864号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「本発明は内燃機関のノッキングを抑圧制御しようとする方法に関する。」(第1ページ右下欄第4ないし5行)

b)「第1図には本発明の一実施例として、ノック抑制剤供給によりノッキング発生の抑圧を計りかつ点火時期を進角させて機関の運転特性を向上せしめようとする内燃機関の一例が概略的に示されている。同図において、10は機関の吸気通路12の途中に設けられたスロットル弁である。スロットル弁10の下流のサージタンク14にはノック抑制剤用の電磁式噴射弁16が取付けられている。この噴射弁16には、タンク18内に満たされたノック抑制剤、例えば、水,アルコール、あるいは水とアルコールとの混合体,がポンプ20によって加圧され導管22を介して印加される。・・・中略・・・
機関のシリンダブロックには冷却水温度に応じた電圧を発生する水温センサ32が取り付けられており、その出力電圧は線34を介して制御回路24に送り込まれる。」(第2ページ右上欄第13行ないし右下欄第3行)

c)「次に上述のマイクロコンピュータの処理内容について説明する。
・・・中略・・・噴射指示フラグがオフであれば出力ポート60に噴射指示信号が出力されず、従ってノック抑制剤は噴射されない。・・・中略・・・第4図の実線aより上側、即ち高負荷側にある場合は、ノッキング発生領域内従って噴射領域内であると判別してステップ85へ進み、噴射指示フラグをオン(’1’)とする。・・・中略・・・噴射指示フラグがオンとなると、出力ポート60に噴射指示信号が出力され、従ってノック抑制剤が前述した一定周期かつ一定デューティ比で噴射される。」(第3ページ右下欄第5行ないし第4ページ右上欄第1行)

(2)上記(1)a)ないしc)及び図面の記載より分かること

イ)上記(1)b)及び第1図の記載を技術常識に照らしてみると、機関のシリンダブロック内にシリンダが配設されていること、及び、第1図において、吸気通路12の指示線が引き出されている位置の上方に吸気通路に向けて描かれている部材がガソリンを供給するためのポート噴射弁であることが分かる。

ロ)上記(1)b)及び第1図の記載によれば、シリンダ内にアルコールを供給する電磁式噴射弁16は、シリンダ外に取付けられていることが分かる。

ハ)上記(1)c)及び第1ないし4図の記載によれば、噴射指示フラグがオフであれば出力ポート60に噴射指示信号が出力されず、ノック抑制剤は噴射されない一方、機関が高負荷側にある場合は、噴射指示フラグをオンにして、出力ポート60に噴射指示信号が出力され、ノック抑制剤が噴射されるのであるから、上記イ)とあわせてみると、機関の高負荷状態において、電磁式噴射弁16は、アルコールを噴射し、かつ、ポート噴射弁は、ガソリンを噴射するものである一方、機関が高負荷状態にない、すなわち、機関の低負荷状態において、電磁式噴射弁16は、アルコールを噴射せず、ポート噴射弁は、ガソリンを噴射するものであることが分かる。

(3)刊行物に記載された発明

したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物に記載された発明>

「内燃機関において、
機関内に配設されたシリンダ、
シリンダ内にガソリンを供給するためのポート噴射弁及び、
シリンダ内にアルコールを供給するための、上記シリンダ外の電磁式噴射弁16、
スロットル弁10、
を有し、
機関の低負荷状態において、ポート噴射弁は、ガソリンを噴射する内燃機関。」

2.対比・判断

本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、その機能及び構造又は技術的意義からみて、刊行物に記載された発明における「機関」、「ガソリン」、「ポート噴射弁」、「アルコール」、「電磁式噴射弁16」及び「スロットル弁10」は、それぞれ、本件補正発明における「エンジン」、「第一燃料」、「第一のポート噴射弁」、「第二燃料」、「第二噴射弁」及び「スロットルバルブ」に相当する。
また、刊行物に記載された発明における「内燃機関」は、本件補正発明における「エンジン・システム」及び「システム」に相当する。

してみると、本件補正発明と刊行物に記載された発明とは、
「エンジン・システムにおいて、
エンジン内に配設されたシリンダ、
シリンダ内に第一燃料を供給するための第一のポート噴射弁及び、
シリンダ内に第二燃料を供給するための、シリンダ外の第二噴射弁、
を有し、
エンジンの低負荷状態において、第一のポート噴射弁は、第一燃料を噴射するシステム。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>

本件補正発明においては、「エンジンの吸気系においてスロットルバルブの下流に配置されることにより、エンジンに結合される充填動作制御バルブ」を有し、「エンジンの低負荷状態において、第一のポート噴射弁は、第一燃料を噴射しかつ、充填動作制御バルブは、第二噴射弁周りの流量を制限するように動作する」のに対し、刊行物に記載された発明においては、そのような「充填動作制御バルブ」を有しているか否か不明であり、機関(本件補正発明における「エンジン」に相当する。)の低負荷状態において、ポート噴射弁(本件補正発明における「第一のポート噴射弁」に相当する。)は、ガソリン(本件補正発明における「第一燃料」に相当する。)を噴射するものの、「エンジンの低負荷状態において、第一のポート噴射弁は、第一燃料を噴射しかつ、充填動作制御バルブは、第二噴射弁周りの流量を制限するように動作する」ものであるか否か不明である点(以下、「相違点という」)。

上記相違点について検討する。

エンジン・システムにおいて、第一燃料(ガソリン)をシリンダ内に供給する噴射弁ないし燃料供給手段と、第二燃料(アルコール)をシリンダ内に供給する噴射弁ないし燃料供給手段とを、それぞれ独立した吸気通路内に配置することは、本件出願の優先日前周知の技術(例えば、特開昭61-164037号公報[特に、第1ページ左下欄第5ないし16行、及び、第4ページ左上欄第1ないし6行、並びに、第1図]、実願昭56-16号(実開昭57-114135号)のマイクロフィルム[特に、明細書第1ページ第5ないし13行、第3ページ第1ないし18行、及び、第7ページ第7行ないし第8ページ末行、並びに、第1及び4図]、及び、実願昭60-118844号(実開昭62-28033号)のマイクロフィルム[特に、明細書第1ページ第5行ないし第2ページ第3行、及び、第7ページ第1ないし末行、並びに、第1図]等参照。以下、「周知技術1」という。)である。
また、エンジン・システムにおいて、エンジンの吸気系においてスロットルバルブの下流に配置されることにより、エンジンに結合される充填動作制御バルブを有し、低負荷時に充填動作制御バルブは、第二噴射弁周りの流量を制限するように動作するものは、本件出願の優先日前周知の技術(例えば、特開昭60-32957号公報[特に、第1ページ左下欄第17行ないし右下欄第13行、及び、第2ページ左下欄第16行ないし右下欄第18行、並びに、第2図]、及び、特開平4-350323号公報[特に、段落【0008】ないし【0011】並びに図1及び2]等参照。以下、「周知技術2」という。)である。
一方、刊行物に記載された発明は、上記1.(2)ハ)で述べたとおり、機関の高負荷状態において、電磁式噴射弁16は、アルコールを噴射し、かつ、ポート噴射弁は、ガソリンを噴射するものである一方、機関が高負荷状態にない、すなわち、機関の低負荷状態において、電磁式噴射弁16は、アルコールを噴射せず、ポート噴射弁は、ガソリンを噴射するものであるから、刊行物に記載された発明は、機関の低負荷状態においては、本件補正発明における「第二燃料」に相当する「アルコール」をシリンダに供給しないようにしているということができる。
してみると、刊行物に記載された発明において、機関の低負荷状態において「アルコール」をシリンダに供給しないようにするためのシステムの具体化にあたり、周知技術1を考慮して、ガソリン(本件補正発明における「第一燃料」に相当する。)を噴射するポート噴射弁と、アルコール(本件補正発明における「第二燃料」に相当する。)を噴射する電磁式噴射弁とを、それぞれ独立した吸気通路内に配置するとともに、上記周知技術2を適用して、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本件補正発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3 本件発明について

1.本件発明

平成23年7月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし22に係る発明は、平成23年1月25日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。

2.刊行物

原査定の拒絶の理由に引用された、、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭58-107864号公報(以下、「刊行物」という。)には、上記第2[理由][3]1.(1)ないし(3)のとおりのものが記載されている。

3.対比・判断

本件発明は、上記第2[理由][2]で検討した本件補正発明から、「上記エンジンの低負荷状態において、上記第一のポート噴射弁は、上記第一燃料を噴射しかつ、上記充填動作制御バルブは、上記第二噴射弁周りの流量を制限するように動作する」という発明特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記第2[理由][3]に記載したとおり、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本件発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

4.むすび

以上のとおり、本件発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-07 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-06-28 
出願番号 特願2006-323120(P2006-323120)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02D)
P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 柳田 利夫
中川 隆司
発明の名称 エンジン・システム  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 今江 克実  
代理人 竹内 祐二  
代理人 関 啓  
代理人 前田 弘  
代理人 原田 智雄  
代理人 嶋田 高久  
代理人 竹内 宏  
代理人 二宮 克也  
代理人 杉浦 靖也  

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