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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1265796
審判番号 不服2011-21189  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-30 
確定日 2012-11-07 
事件の表示 特願2006-232329「ハイブリッド車の動力伝達系」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 62726〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年8月29日(優先権主張2005年8月29日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成22年11月9日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年4月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年7月12日付けで拒絶査定がなされ、平成23年9月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成24年1月20日付けで書面による審尋がなされ、平成24年4月23日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成23年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年9月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成23年9月30日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年4月12日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)を、下記(イ)と補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
ステータ(8)とロータ(9)とを備えた少なくとも1台の電気機械(7)が、内燃機関と変速機(3)との間に配置され、
前記ロータ(9)は、少なくとも1つの摩擦クラッチを介して、内燃機関のクランク軸(4)に、および/又は、前記変速機(3)の入力軸(16)に結合可能であり、
前記ロータ(9)はロータ保持体(24)に固く結合されており、
前記ロータ保持体(24)はその内周側でクラッチの構造部品を支持している
という内燃機関と変速機(3)とを備えたハイブリッド車の動力伝達系(1)において、
前記ロータ保持体(24)は、その内周側で少なくとも1つの構造部品に結合されているか、あるいは、当該構造部品と一体に形成されており、
当該構造部品によって、前記ロータ保持体(24)が動力伝達系(1)の少なくとも一つの構成要素上で直に回転可能に支持されており、
前記ロータ保持体(24)は、その内周側でその軸方向両端の部位でそれぞれ軸受保持体(25、27)に結合されており、
当該両軸受保持体(25、27)は、半径方向内側に延び、それぞれ少なくとも一つのラジアル軸受(30、56)に支持されており、
内燃機関の側の軸受保持体(25)は、内燃機関の側のラジアル軸受(30)を介して、ステータ保持体(20)に支持されており、
前記ステータ保持体(20)は、前記電気機械(7)のステータ(8)をロータ(9)の半径方向外側に支持しており、
前記ステータ保持体(20)は、前記両軸受保持体(25、27)を支持する前記ラジアル軸受(30、56)とは別のラジアル軸受(21)を介して、内側ディスクホルダが結合された内側ディスクホルダ軸(13)を支持しており、
前記内側ディスクホルダ軸(13)は、ねじり振動ダンパ(6)の出力素子(12)に動力伝達可能に結合され、
前記ねじり振動止め(6)の入力素子(5)は、前記内燃機関のクランク軸(4)に回転しないように結合されている
ことを特徴とする動力伝達系。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
ステータ(8)とロータ(9)とを備えた少なくとも1台の電気機械(7)が、内燃機関と変速機(3)との間に配置され、
前記ロータ(9)は、少なくとも1つの摩擦クラッチを介して、内燃機関のクランク軸(4)に、および/又は、前記変速機(3)の入力軸(16)に結合可能であり、
前記ロータ(9)はロータ保持体(24)に固く結合されており、
前記ロータ保持体(24)はその内周側でクラッチの構造部品を支持している
という内燃機関と変速機(3)とを備えたハイブリッド車の動力伝達系(1)において、
前記ロータ保持体(24)は、その内周側で少なくとも1つの構造部品に結合されているか、あるいは、当該構造部品と一体に形成されており、
当該構造部品によって、前記ロータ保持体(24)が動力伝達系(1)の少なくとも一つの構成要素上で直に回転可能に支持されており、
前記ロータ保持体(24)は、その内周側でその軸方向両端の部位でそれぞれ軸受保持体(25、27)に結合されており、
当該両軸受保持体(25、27)は、半径方向内側に延び、それぞれ少なくとも一つのラジアル軸受(30、56)に支持されており、
内燃機関の側の軸受保持体(25)は、内燃機関の側のラジアル軸受(30)を介して、ステータ保持体(20)に支持されており、
前記ステータ保持体(20)は、前記電気機械(7)のステータ(8)をロータ(9)の半径方向外側に支持しており、
前記ステータ保持体(20)は、前記両軸受保持体(25、27)を支持する前記ラジアル軸受(30、56)とは別のラジアル軸受(21)を介して、内側ディスクホルダが結合された内側ディスクホルダ軸(13)を支持しており、
前記内側ディスクホルダ軸(13)は、ねじり振動ダンパ(6)の出力素子(12)に動力伝達可能に結合され、
前記ねじり振動止め(6)の入力素子(5)は、前記内燃機関のクランク軸(4)に回転しないように結合されており、
前記内側ディスクホルダ軸(13)は、前記自動変速機(3)の方向に向いた中央盲孔(14)を有しており、当該中央盲孔(14)内において、前記変速機入力軸(16)の内燃機関側端が、滑り軸受ブッシュ(15)で受けられている
ことを特徴とする動力伝達系。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「内側ディスクホルダ軸(13)」について、「前記自動変速機(3)の方向に向いた中央盲孔(14)を有しており、当該中央盲孔(14)内において、前記変速機入力軸(16)の内燃機関側端が、滑り軸受ブッシュ(15)で受けられている」ことを、限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-87080号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンとモータジェネレータとの二つの駆動源を搭載したハイブリッドカー等に適用されるハイブリッド駆動装置に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0016】上記第二クラッチの出力軸がトランスミッションの入力軸と共用とされるのが好ましい。上記第二クラッチが、上記第二クラッチプレートのインナプレートを保持するインナプレートハブを有し、このインナプレートハブがトランスミッションの入力軸をスプライン嵌合させるための嵌合穴を有するのが好ましい。」(段落【0016】)

(ウ)「【0020】図1に本実施形態におけるハイブリッド駆動装置を示す。このハイブリッド駆動装置はハイブリッドカーに具備され、2クラッチ・モータジェネレータユニットとして構成される。ハイブリッド駆動装置1は、図2にも示すように、第一の駆動源であるエンジンEと変速機T/Mとの間に直列に配置される。そしてハウジング2を備え、ハウジング2内に二つのクラッチ即ち第一クラッチC_(1) 及び第二クラッチC_(2) と、第二の駆動源であるモータジェネレータMとを収め、全体をユニット化してなる。エンジンEは燃料を燃焼させて駆動力を発生する内燃機関で、ここではディーゼルエンジンである。変速機T/Mは通常のマニュアルトランスミッションで、その出力軸(図示せず)はプロペラシャフトPS、ディファレンシャルDFを介して駆動輪DWに連結される。モータジェネレータMは図示しない蓄電装置に接続され、蓄電装置から電力の供給を受けて駆動力を発生するモータとして機能すると共に、制動時には変速機T/Mないし駆動輪側から駆動されて発電する、いわばジェネレータとして機能する。図4に示すように蓄電装置はバッテリBATとインバータ回路INVとを含んでいる。
【0021】図1に示すように、ハウジング2は、その前端部(図の左側を前、右側を後とする)がエンジンのシリンダブロック(図示せず)にボルト(図示せず)で締結されると共に、その後端部が変速機T/Mのケーシング3にボルト(図示せず)で締結される。ハウジング2は前部2a、中間部2b及び後部2cの三分割式とされ、各部がボルト40で連結される。装置1の中心部に第一クラッチC_(1) の入力部をなす入力軸4と、第二クラッチC_(2) の出力部をなす出力軸5とが設けられる。装置1自体で単独の出力軸を設けてもよいが、本実施形態では変速機T/Mの入力軸5aを第二クラッチC_(2) の出力軸5とし、共用化による部品数削減を図っている。また、変速機T/Mから突出された入力軸5aを装置1内に挿入し、装置1の軸長(前後長)Lの短縮を図っている。41は入力軸5aを支持する変速機T/M側の軸受(ボールベアリング)、42は入力軸5aに取り付けられたトップギヤである。
【0022】エンジンのクランク軸6と、入力軸4と、出力軸5とが1本の基準軸Cに沿って同軸に直列配置される。入力軸4はフライホイール7及びダンパ装置8を介してクランク軸6に連結される。入力軸4の前端部が、フライホイール7の中心部に取り付けられたベアリング7aにより回転自在に支持される。フライホイール7はクランク軸6にボルト7bにより取り付けられ、フライホイール7とダンパ装置8とはボルト7cにより結合され、ダンパ装置8は入力軸4にスプライン8aを介して取り付けられる。
【0023】入力軸4と出力軸5とはそれら後端と前端とが互いに突き合わされるようにして配置される。この突合せ接続部において入力軸4と出力軸5とは同径とされ、それぞれ外周部にスプライン10が刻設される。
【0024】第一クラッチC_(1) 及び第二クラッチC_(2) は互いに軸方向に隣接して配置され、共通のクラッチケーシング11を有してコンパクト化が図られると共に、入力軸4と出力軸5との突合せ位置Pを境に軸方向に対称になるよう構成され、部品の共通化が図られている。即ち、第一クラッチC_(1) 及び第二クラッチC_(2) は油圧制御式湿式多板クラッチとして構成され、それぞれ構成部品としてインナプレートハブ12_(1) ,12_(2) 、インナープレート13_(1) ,13_(2) 、アウタプレート14_(1),14_(2) 、クラッチピストン15_(1) ,15_(2) 、クラッチスプリング16_(1) ,16_(2) 及びスプリング受け17_(1) ,17_(2) を有すると共に、これら構成部品を第一クラッチC_(1) 側と第二クラッチC_(2) 側とで同一とし、且つ一方側の部品を他方側の部品に対し反転させて対称配置し、共通のクラッチケーシング11内に収めるようになっている。なお、インナープレート13_(1) とアウタプレート14_(1) との組み合わせが第一クラッチプレート、インナープレート13_(2) とアウタプレート14_(2) との組み合わせが第二クラッチプレートである。
【0025】例えば、第一クラッチC_(1) のインナプレートハブ12_(1) と第二クラッチC_(2) のインナプレートハブ12_(2) とは全く同じ部品であり、一方12_(2) を他方12_(2) に対し反転させて用い、これらを突合せ位置Pを境に対称になるよう配置している。他の構成部品についても同様である。
【0026】インナプレートハブ12_(1) ,12_(2) は、内周部にスプラインを有してそれぞれ入力軸4及び出力軸5のスプライン10に嵌合され、回転方向に固定されると共に、複数のローラベアリング43により軸方向に位置決めされている。インナプレートハブ12_(1) ,12_(2) は突合せ位置Pの両隣に隣接配置されると共に、径方向外側に延出して外周部にインナープレート13_(1) ,13_(2) をスプライン嵌合により保持している。」(段落【0020】ないし【0026】)

(エ)「【0029】入力側円筒部45と出力側円筒部48との外周側にクラッチケーシング11が回転自在に取り付けられる。クラッチケーシング11は全体として円筒状に形成され、前端壁11a及び後端壁11bを有すると共に、中心部に入力外筒軸18及び出力外筒軸19を有する。クラッチケーシング11は第一クラッチC_(1) の出力部及び第二クラッチC_(2) の入力部をなし、且つこれらクラッチに共通のクラッチ室22を区画形成する。クラッチ室22には共通のオイルが充満される。入力外筒軸18及び出力外筒軸19はそれぞれ入力側円筒部45及び出力側円筒部48の外周側に回転自在に嵌合される。クラッチケーシング11の前端部及び後端部がボールベアリング23c,23bにより軸支される。
【0030】クラッチピストン15_(1 ),15_(2 )はリング状とされ、クラッチ室22内の前端及び後端に寄せられて軸方向摺動自在に配置される。スプリング受け17_(1 ),17_(2) は断面クランク状のリング状に形成され、入力外筒軸18及び出力外筒軸19にそれぞれ固定される。クラッチスプリング16_(1) ,16_(2) はこれらクラッチピストン15_(1) ,15_(2 )とスプリング受け17_(1) ,17_(2) との間に圧縮状態で配置され、第一クラッチピストン15_(1) を前方に、第二クラッチピストン15_(2) を後方にそれぞれ付勢している。
【0031】アウタプレート14_(1) ,14_(2) はクラッチケーシング11の内周部にスプライン嵌合されて軸方向移動自在に保持される。インナープレート13_(1) ,13_(2) とアウタプレート14_(1) ,14_(2) とは交互に重ね合わされる。突合せ位置P付近にプレートストッパ21_(1) ,21_(2) が設けられる。両クラッチピストン15_(1) ,15_(2) はクラッチプレート全体を軸方向両外側から挟み込むようにして対向配置される。第一クラッチC_(1) では、クラッチピストン15_(1) が後方に移動してインナープレート13_(1) 及びアウタプレート14_(1 )を摩擦接触させ、クラッチ締結力を発生する。逆に第二クラッチC_(2) では、クラッチピストン15_(2) が前方に移動してインナープレート13_(2) 及びアウタプレート14_(2) を摩擦接触させ、クラッチ締結力を発生する。」(段落【0029】ないし【0031】)

(オ)「【0034】モータジェネレータMはクラッチケーシング11の外周側に位置される。モータジェネレータMは固定部m_(1) と回転部m_(2) とからなり、固定部m_(1) がハウジング2の内周部に取り付けられ、回転部m_(2) はクラッチケーシング11の外周部に取り付けられる。これにより回転部m_(2) とクラッチケーシング11とが一体回転するようになる。」(段落【0034】)

(カ)「【0053】また、第一クラッチC_(1) 及び第二クラッチC_(2) は湿式多板クラッチであり、断接ストロークが短いため、軸長短縮に有利である。モータジェネレータMはクラッチケーシング11の外周側に配置しているので、軸長の長大化をもたらさない。湿式多板クラッチは乾式クラッチに比べ小径であり、よって装置全体の外径も小さく抑えられる。」(段落【0053】)

(2)引用文献の記載事項
上記(1)(ア)ないし(カ)及び図1により、以下の事項が分かる。

(キ)上記(1)(ア)、(ウ)及び(オ)並びに図1より、引用文献には、固定部m_(1)と回転部m_(2)とを備えたモータジェネレータMが、エンジンEと変速機T/Mとの間に配置され、
前記回転部m_(2)は第一クラッチC_(1)及び第二クラッチC_(2)を介して、エンジンEのクランク軸6及び前記変速機T/Mの入力軸5aに結合可能であり、
前記回転部m_(2)がクラッチケーシング11に取り付けられ、
前記クラッチケーシング11は、その内周側でアウタプレート14_(1)、14_(2)を支持している
エンジンEと変速機T/Mとを備えたハイブリッド駆動装置1が記載されていることが分かる。

(ク)上記(1)(ウ)、(エ)及び図1より、引用文献に記載されたハイブリッド駆動装置1において、前記クラッチケーシング11は、その内周側でその軸方向両端に、前端壁11a及び後端壁11bを有し、
当該前端壁11a及び後端壁11bは、半径方向内側に延び、それぞれラジアル軸受けに支持されており、
前記前端壁11aは、内燃機関の側のラジアル軸受を介して、ハウジング2に支持されており、
前記ハウジング2は、前記モータジェネレータMの固定部m_(1)を回転部m_(2)の半径方向外側に支持されていることが分かる。

(ケ)上記(1)(ウ)及び図1より、引用文献に記載されたハイブリッド駆動装置1において、前記ハウジング2は、前記前端壁11a及び後端壁11bを支持する前記ラジアル軸受とは別のラジアル軸受を介して、インナプレートハブ12_(1)と回転方向に固定された入力軸4を支持していることが分かる。

(コ)上記(1)(ウ)及び図1より、引用文献に記載されたハイブリッド駆動装置1において、前記入力軸4は、ダンパ装置8の出力部材にスプラインを介して取り付けられ、
前記ダンパ装置8の入力部材は、フライホイール7を介してエンジンEのクランク軸6に回転しないように固定されていることが分かる。

(サ)上記(1)(ウ)及び図1より、引用文献に記載されたハイブリッド駆動装置1において、前記入力軸4の後端と、変速機T/Mの入力軸5aの前端とが、互いに突き合わされるようにして配置されていることが分かる。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)(ア)ないし(カ)、(2)(キ)ないし(サ)並びに図1から、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているといえる。

「固定部m_(1)と回転部m_(2)とを備えたモータジェネレータMが、エンジンEと変速機T/Mとの間に配置され、
前記回転部m_(2)は、第一クラッチC_(1)及び第二クラッチC_(2)を介して、エンジンEのクランク軸6及び前記変速機T/Mの入力軸5aに結合可能であり、
前記回転部m_(2)はクラッチケーシング11に取り付けられ、
前記クラッチケーシング11は、その内周側でアウタプレート14_(1)、14_(2)を支持している
エンジンEと変速機T/Mとを備えたハイブリッド駆動装置1において、
前記クラッチケーシング11は、その内周側でその軸方向両端に、前端壁11a及び後端壁11bを有し、
当該前端壁11a及び後端壁11bは、半径方向内側に延び、それぞれラジアル軸受けに支持されており、
前記前端壁11aは、内燃機関の側のラジアル軸受を介して、ハウジング2に支持されており、
前記ハウジング2は、前記モータジェネレータMの固定部m_(1)を回転部m_(2)の半径方向外側に支持されており、
前記ハウジング2は、前記前端壁11a及び後端壁11bを支持する前記ラジアル軸受とは別のラジアル軸受を介して、インナプレートハブ12_(1)と回転方向に固定された入力軸4を支持しており、
前記入力軸4は、ダンパ装置8の出力部材にスプラインを介して取り付けられ、
前記ダンパ装置8の入力部材は、フライホイール7を介してエンジンEのクランク軸6に回転しないように固定され、
前記入力軸4の後端と、前記変速機T/Mの入力軸5aの前端とが、互いに突き合わされるようにして配置されたハイブリッド駆動装置1。」

2.-2 対比
本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「モータジェネレータM」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「少なくとも1台の電気機械」に相当し、以下、同様に、「固定部m_(1)」は「ステータ」に、「回転部m_(2)」は「ロータ」に、「エンジンE」は「内燃機関」に、「変速機T/M」は「変速機」にそれぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「第一クラッチC_(1)及び第二クラッチC_(2)」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「少なくとも1つの摩擦クラッチ」に相当し、以下、同様に、「クランク軸6」は「クランク軸」に、「変速機T/Mの入力軸5a」は「変速機の入力軸」に、「ハイブリッド駆動装置1」は「動力伝達系」に、それぞれ相当する。
そして、引用文献記載の発明において、回転部m_(2)はクラッチケーシング11の外周部に取り付けられ、それによって回転部m_(2)とクラッチケーシング11とが一体回転する(上記2.-1(1)(オ))ものであるから、引用文献記載の発明における「クラッチケーシング11」は、本願補正発明における「ロータ保持体」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献記載の発明において、「前記クラッチケーシング11は、その内周側でその軸方向両端に、前端壁11a及び後端壁11bを有し、当該前端壁11a及び後端壁11bは、半径方向内側に延び、それぞれラジアル軸受けに支持されており、前記前端壁11aは、内燃機関の側のラジアル軸受を介して、ハウジング2に支持されて」いることは、本願補正発明において、「前記ロータ保持体は、その内周側でその軸方向両端の部位でそれぞれ軸受保持体に結合されており、当該両軸受保持体は、半径方向内側に延び、それぞれ少なくとも一つのラジアル軸受に支持されており、内燃機関の側の軸受保持体は、内燃機関の側のラジアル軸受を介して、ステータ保持体に支持されて」いることに相当し、引用文献記載の発明における「ハウジング2」は、本願補正発明における「ステータ保持体」に相当する。
また、引用文献記載の発明において、「前記ハウジング2は、前記前端壁11a及び後端壁11bを支持する前記ラジアル軸受とは別のラジアル軸受を介して、インナプレートハブ12_(1)と回転方向に固定された入力軸4を支持して」いることは、本願補正発明において、「前記ステータ保持体は、前記両軸受保持体を支持する前記ラジアル軸受とは別のラジアル軸受を介して、内側ディスクホルダが結合された内側ディスクホルダ軸を支持して」いることに相当し、引用文献記載の発明における「入力軸4」は、本願補正発明における「内側ディスクホルダ軸」に相当する。
そして、引用文献1記載の発明における「ダンパ装置8」及び「入力部材」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「ねじり振動ダンパ」及び「入力素子」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「ステータとロータとを備えた少なくとも1台の電気機械が、内燃機関と変速機との間に配置され、
前記ロータは、少なくとも1つの摩擦クラッチを介して、内燃機関のクランク軸に、および/又は、前記変速機の入力軸に結合可能であり、
前記ロータはロータ保持体に固く結合されており、
前記ロータ保持体はその内周側でクラッチの構造部品を支持している
という内燃機関と変速機とを備えたハイブリッド車の動力伝達系において、
前記ロータ保持体は、その内周側でその軸方向両端の部位でそれぞれ軸受保持体に結合されており、
当該両軸受保持体は、半径方向内側に延び、それぞれ少なくとも一つのラジアル軸受に支持されており、
内燃機関の側の軸受保持体は、内燃機関の側のラジアル軸受を介して、ステータ保持体に支持されており、
前記ステータ保持体は、前記電気機械のステータをロータの半径方向外側に支持しており、
前記ステータ保持体は、前記両軸受保持体を支持する前記ラジアル軸受とは別のラジアル軸受を介して、内側ディスクホルダが結合された内側ディスクホルダ軸を支持しており、
前記内側ディスクホルダ軸は、ねじり振動ダンパの出力素子に動力伝達可能に結合され、
前記ねじり振動止めの入力素子は、前記内燃機関のクランク軸に回転しないように結合されている動力伝達系。」である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
(a)本願補正発明においては、「前記ロータ保持体は、その内周側で少なくとも1つの構造部品に結合されているか、あるいは、当該構造部品と一体に形成されており、当該構造部品によって、前記ロータ保持体が動力伝達系の少なくとも一つの構成要素上で直に回転可能に支持されて」いるのに対し、引用文献記載の発明においては、構造部品に相当する部材がない点(以下、「相違点1」という。)。

(b)本願補正発明においては、内側ディスクホルダ軸が、自動変速機の方向に向いた中央盲孔を有しており、当該中央盲孔内において、変速機入力軸の内燃機関側端が、滑り軸受ブッシュで受けられているのに対し、引用文献記載の発明においては、前記入力軸4の後端と、変速機T/Mの入力軸5aの前端とが、互いに突き合わされるようにして配置される点(以下、「相違点2」という。)。

2.-3 判断
上記相違点について検討する。

まず、相違点1に関し、本願補正発明において、ロータ保持体は、構造部品と軸受保持体によって支持されているのに対して、引用文献記載の発明において、クラッチケーシング11は、その内周側でその軸方向両端に設けられた前端壁11a及び後端壁11bによって支持されているものではあるが、どちらも、「クラッチの構造部品がロータ保持体の半径方向内側に配置されている、電気機械のロータ保持体の半径方向内側に配置されたクラッチの有利な構造的原理を、圧力媒体作動式の2つの湿式クラッチを収容するために、これが全体として非常にコンパクトとなり、クラッチディスク並びにロータ保持体の能動的冷却を許す、というように改良する」(本願の明細書の段落【0004】)との発明が解決しようとする課題を解決するものであって、本願補正発明においてロータ保持体の支持のために構造部品を設けた点は、技術の具体化の際の設計上の事項にすぎないから、引用文献記載の発明において、相違点1に係る本願補正発明の特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点2に関し、クラッチ入力軸に、自動変速機の方向に向いた中央盲孔を設け、当該中央盲孔内において、変速機のメインシャフトのエンジン側端を軸受メタルで受けるようにすることは周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2003-63261号公報の段落【0018】及び図2等参照。)であるから、動力伝達系のコンパクト化を目的とする引用文献記載の発明において、上記周知技術を採用し、相違点2に係る本願補正発明の特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、審判請求人は、平成24年4月23日付けの回答書において、引用文献記載の発明において、本願補正発明の内側ディスクホルダ軸に相当するものは、入力軸4及び出力軸5の双方である合成軸であり、引用文献記載の発明に上記周知技術の例として示した特開2003-63261号公報記載の技術を組み合わせた場合に、変速機のメインシャフトを受け入れる中央盲孔は出力軸5に設ける必要がある旨を主張している。
しかし、引用文献記載の発明において上記周知技術を採用したときに、入力軸4に中央盲孔を設け、当該中央盲孔において出力軸5と供用される変速機T/Mの入力軸5aのエンジン側を滑り軸受ブッシュで受けるようにすることに、何ら困難性は見いだせない。

そして、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

以上により、本願補正発明は、引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.-4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成23年9月30日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、平成23年4月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された上記(第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】)のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

2.引用文献
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献記載の発明は、前記第2.の[理由]2.-1に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の[理由]1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-1ないし2.-4に記載したとおり、引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-07 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-06-28 
出願番号 特願2006-232329(P2006-232329)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 一郎山田 裕介  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 岡崎 克彦
中川 隆司
発明の名称 ハイブリッド車の動力伝達系  
代理人 山崎 孝博  
代理人 吉澤 雄郎  
代理人 澤田 達也  
代理人 大倉 昭人  
代理人 田中 達也  
代理人 坪内 伸  
代理人 上村 欣浩  
代理人 杉村 憲司  
代理人 荒木 淳  
代理人 岡野 大和  
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