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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B |
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管理番号 | 1265804 |
審判番号 | 不服2011-927 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-14 |
確定日 | 2012-11-05 |
事件の表示 | 特願2007-530293「吸収性物品用縁部バンド及び作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日国際公開、WO2006/028832、平成20年 4月17日国内公表、特表2008-511412〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2005年8月31日(パリ条約による優先権主張2004年9月1日、米国)の出願であって、平成22年9月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成23年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされた。 第2.平成23年1月14日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年1月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正は、補正前の請求項1に 「トップシート、バックシート、及び前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収性コアを含む使い捨ておむつであって、前記トップシート及び前記バックシートが、周辺部及び長手方向縁部を画定し、前記長手方向縁部の部分が、前記使い捨ておむつが着用される時に、脚部開口部を画定し、各長手方向縁部上で、別個の縁部バンドが、前記長手方向縁部の内側表面に、前記使い捨ておむつが着用される時に、少なくとも脚部開口部を画定する前記長手方向縁部の前記部分で接合され、かつ前記内側表面に平坦状に重なり合い、前記別個の縁部バンドが、前記使い捨ておむつの前記長手方向縁部の全長に延びないこと、および別個の縁部バンドが長手方向縁部の内側表面のみに貼り付けられていることを特徴とする、使い捨ておむつ。」 とあるのを、 「トップシート、バックシート、及び前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収性コアを含む使い捨ておむつであって、前記トップシート及び前記バックシートが、周辺部及び長手方向縁部を画定し、前記長手方向縁部の部分が、前記使い捨ておむつが着用される時に、脚部開口部を画定し、各長手方向縁部上で、別個の縁部バンドが、前記長手方向縁部の内側表面に、前記使い捨ておむつが着用される時に、少なくとも脚部開口部を画定する前記長手方向縁部の前記部分で接合され、かつ前記内側表面に平坦状に重なり合い、前記別個の縁部バンドが、前記使い捨ておむつの前記長手方向縁部の全長に延びないこと、および別個の縁部バンドが長手方向縁部の内側表面のみに貼り付けられ、前記別個の縁部バンドが、遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる、ことを特徴とする、使い捨ておむつ。」 とする補正を含むものである。 2.補正に係る事項が、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内のものであったか否かについて 上記補正は、補正前の請求項1の発明を特定するために必要な事項である「別個の縁部バンド」が「遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」と限定するものであるが、願書に最初に添付した明細書及び図面を参照しても、「折り目」の意味する領域及び「遠位端」の意味する位置を明らかにした記載は認められず、また「折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」点が記載されているとは認めることはできない。 請求人は、平成24年5月24日付け上申書において、『折り目69は、縁部バンド60が2重に折り込まれた部分を指す(【図3a】参照)。また折り目69の遠位端とは、折り目69の曲がり部を指し、【図3a】においては、折り目69の左側端部を指す。すなわち、明細書中に、「バリアカフ部分61は、近位部分65で縁部バンド60に接合されるが、遠位部分67でトップシート24に取り付けられない。好ましい実施形態では、遠位部分67は、弾性ストランド64のような弾性構成要素、又はバリアレッグカフスを含む弾性化されたレッグカフスの当該技術分野で既知の他の弾性構成要素を含む。従って、使用中、弾性化した遠位部分67は、「立ち上がって」、バリアカフスの技術分野で既知のようなバリアカフを形成することができる。」の記載があり(段落【0046】)、この記載からも折り目69の遠位端とは折り目69の曲がり部を指すことは明らかである。』(「(4) 折り目および遠位端」参照)として、「折り目」及びその「遠位端」についての釈明を行っている。 また、審判請求書においては、『また別個の縁部バンドが遠位端をもつ折り目を有し、この折り目および遠位端が内側表面に貼り付けられているため、長手方向縁部のいかなる見苦しい末端部も、前記折り畳みの増加された目に見える区域のために、より目立たなくなり、増加された厚さが、前記縁部バンドに更に大きい構造的一体性をもたらし得る。』(「(3)本願発明が特許されるべき理由」参照)と、本願発明の「別個の縁部バンド」が「遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」ことによる格別な効果を主張している。 しかしながら、出願当初の明細書の【図3a】に、「縁部バンド60が2重に折り込まれた部分」および「折り目69の曲がり部」が「内側表面」(トップシート24の表面)に貼り付けられる点が、明確に記載されているとは認めることができず、また、上記本願明細書の段落【0046】の記載から、「折り目69の遠位端とは、折り目69の曲がり部を指」すことが明らかであるとは認められない。 さらに、本願の出願当初の明細書の段落【0045】には、「折り目69の遠位端は、(図3aに示されるように)トップシート24の内側表面又は(図3bに示されるように)バックシート26の外側表面に接合されてもよい。あるいは、折り目69の遠位端は、長手方向縁部に接合されず、従って(図4aに示されるように)トップシート24又は(図4bに示されるように)バックシート26の外側に留まってもよい。」と記載されているが、【図4b】は、【図3b】の縁部バンド60を裏返して貼り付けたものと認められ、「折り目69の遠位端」を「折り目69の曲がり部」とした場合、これが、【図3b】においてバックシート26の外側表面に接合され、【図4b】においてバックシート26の外側に留まるとはいえず、請求人の上記釈明が妥当なものとは認められない。 したがって、上記補正に係る事項は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものということはできず、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件 仮に、上記2.で検討した補正事項が、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、上記本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 本願補正発明は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。 3-1.記載不備について 本願特許請求の範囲の請求項1の「別個の縁部バンドが、遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」の記載では、「別個の縁部バンド」の何処と何処が「内側表面に貼り付けられる」のか明確でなく、本願明細書の【発明の詳細な説明】の欄を参照しても、当該記載に対応する構成を特定できない。 したがって、当該記載は不明瞭であって、特許法第36条第6項第2号の規定に反するものであり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3-2.進歩性について 上記のように、本願特許請求の範囲の請求項1の「別個の縁部バンドが、遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」の記載は明確ではないが、請求人は平成24年5月24日付け上申書において、「折り目69は、縁部バンド60が2重に折り込まれた部分を指す」、「折り目69の遠位端とは、折り目69の曲がり部を指し、【図3a】においては、折り目69の左側端部を指す」の他に、「さらに特許請求の範囲の補正事項にある「前記折り目および遠位端が前記内側表面に貼り付けられる」とは、【図3a】に示すように、「折り目69の終端から遠位端までの部分のうち内側表面に当接する部分全域が内側表面に貼り付けられる」ことを意味する。」(「(4)折り目および遠位端」参照)とも主張しているので、仮に、請求人の上記主張に基づいて特許請求の範囲の「前記折り目および遠位端が前記内側表面に貼り付けられる」を「折り目69の終端から遠位端までの部分のうち内側表面に当接する部分全域が内側表面に貼り付けられる」と解して、以下進歩性について検討する。 なお、ここで、「折り目69の終端」とは、上記2.の上申書による請求人の主張に基づけば、折り目、即ち縁部バンドが2重に折り込まれた部分の曲がり部とは反対側の端と解される。 3-3.引用文献及び引用発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-37807号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 (a)「着用者の脚部の動作は、大腿部の周り方向で比較すると、前大腿部の動きが大きく、次に後大腿部、最も動きが小さいのは股下部である。特開昭62-231005号公報に開示のパンツでは、第1?3弾性部材の伸縮応力については何ら言及をしていないが、弾性部材それぞれの伸縮応力が同一であってその応力が強い場合、動きが大きい前大腿部に弾性部材による圧迫跡が付き易い。弾性部材の伸縮応力を小さくすると、圧迫跡は付き難くなるが、排泄物が集中する股下部においては、コアの剛性の影響で弾性部材の伸縮応力が殺されてしまうので、パンツと着用者の肌との間に隙間が生じ易く、排泄物が股下部から漏れてしまうことがある。」(段落【0003】参照) (b)「図1,2は、開放型の使い捨ておむつの部分破断斜視図と、図1のおむつの平面図である。おむつは、透液性トップシート2と、不透液性バックシート3と、トップシート2とバックシート3との間に介在し、それらシート2,3のうちの少なくとも一方の内面に接合された吸液性コア4とを有する積層パネル1で構成されている。パネル1は、互いに並行して縦方向へ延びる両側部1aと、互いに平行して縦方向と交差する横方向へ延びる前後端部1b,1cとを有する。パネル1は、砂時計型を呈し、前端部1bの側に位置する前胴周り域20と、後端部1cの側に位置する後胴周り域22と、それら前後胴周り域20,22の間に位置する股下域21とを有する。」(段落【0011】参照) (c)「パネル1の股下域21には、コア4の両側縁4aの外側近傍に位置して縦方向へ延びる脚周り用弾性部材5a,5b,5cが取り付けられている。弾性部材5a,5b,5cは、股下域21の縦方向中央部に位置する第1弾性部材5aと、股下域21においてパネル1の前端部1bの側に位置する第2弾性部材5bと、股下域21においてパネル1の後端部1cの側に位置する第3弾性部材5cとから形成されている。 それら弾性部材5a,5b,5cは、不織布6に伸長下に固着され、かつ、不織布6に被覆されもので、パネル1の縦方向へ伸長させた状態で、不織布6とともにパネル1に取り付けられている。」(段落【0013】?【0014】参照) (d)「図3は、図1のA-A線矢視断面図である。トップシート2とバックシート3との両側部がコア4の両側縁4aの外側からパネル1の横方向外方へ延びて互いに固着されている。弾性部材5a,5b,5cを被覆する不織布6が、トップシート2の外面に接着剤14を介して固着されている。」(段落【0021】参照) (e)「パネル1の股下域21には、脚周り用弾性部材5a,5b,5cがパネル1の両側部1aに沿って取り付けられている。弾性部材5a,5b,5cは、股下域21の略中央に位置する第1弾性部材5aと、股下域21においてパネル1の前端部1bの側に位置する第2弾性部材5bと、股下域21においてパネル1の後端部1cの側に位置する第3弾性部材5cとから形成されている。」(段落【0025】参照) (f)「弾性部材5a,5b,5cが不織布6に被覆されているので、弾性部材5a,5b,5cそれぞれをトップシート2の外面に取り付けたとしても、弾性部材5a,5b,5cが直接着用者の肌に接触することがなく、かぶれを防ぐことができるとともに、着用者に違和感を与えることがない。弾性部材5a,5b,5cは、バックシート3の外面に伸長状態で取り付けられてもよい。弾性部材5a,5b,5cを不織布6で被覆することなく、トップシート2とバックシート3との間に介在させ、それらシート2,3の少なくとも一方に伸長状態で固着してもよい。 弾性部材5a,5b,5cの縦方向端部5a_(1),5b_(1),5c_(1)は、互いに重なり合うことなく、それらの端部5a_(1),5b_(1),5c_(1)が互いに当接した状態であってもよい。端部5a_(1),5b_(1),5c_(1)が当接することでそれら弾性部材5a,5b,5cが縦方向に接続される。弾性部材5a,5b,5cの当接部では、弾性部材5a,5b,5cの端部5a_(1),5b_(1),5c_(1)が重なり合うことと異なり段差ができないので、弾性部材5a,5b,5cが着用者の肌に接触したときに違和感を与えることがない。弾性部材5b,5cは、股下域21のみならずパネル1の前後胴周り域20,22にまで延びていてもよい。」(段落【0033】?【0034】参照) (g)図1、図3、図4から、股下域21の両側部が脚部開口を画定することがみてとれる。 (h)図1、図2、図3から、第1弾性部材5a、第2弾性部材5b、第3弾性部材5cをそれぞれ被覆する不織布6が、積層パネル1の内側表面の股下域21の両側部1aに沿って、前記内側表面に取り付けられていることがみてとれる。 (i)図1、図2、図5から、縦方向に接続された、第1弾性部材5a、第2弾性部材5b、第3弾性部材5cをそれぞれ被覆する不織布6は、股下域21に設けられていて、使い捨ておむつの両側部1aの全長には延びておらず、内側表面のみに貼り付けられていることがみてとれる。 ここで、上記(f)、(h)より、トップシート2の外面は、積層パネルの、着用者の肌に接触する内側表面であり、上記(d)?(f)、(h)より、第1弾性部材5a、第2弾性部材5b、第3弾性部材5cをそれぞれ被覆する不織布が前記内側表面の股下域の両側部で接着剤により接合されていると認められる。 したがって、以上の記載及び図面によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「トップシート、バックシート、及び前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸液性コアを含む積層パネルから構成される使い捨ておむつであって、 前記積層パネルは、互いに並行して縦方向へ延びる両側部と、互いに平行して縦方向と交差する横方向へ延びる前後端部とを有し、 前記使い捨ておむつが着用される時に、脚部開口を画定する股下域の両側部を有し、 脚周り用の第1弾性部材、第2弾性部材及び第3弾性部材をそれぞれ被覆する不織布が、縦方向に接続されるように、前記積層パネルの内側表面の股下域の両側部で接合され、かつ前記内側表面に平坦状に重なり合い、前記接続された第1弾性部材、第2弾性部材及び第3弾性部材をそれぞれ被覆する不織布が、前記使い捨ておむつの両側部の全長には延びておらず、内側表面のみに貼り付けられている使い捨ておむつ。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-209938号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 (a)「本実施形態のおむつ1においては、短冊形の伸縮自在な帯状弾性片20が、その長さ方向がおむつ1の長さ方向と一致するように、レッグ開口部15に沿って配されている。帯状弾性片20は、レッグ開口部15における接合部位9(図1参照)の近傍を除く全域に配されている。これによって、接合部位9の剛性が過度に高くなっておむつ1の風合いが低下することが防止される。パンツ型の使い捨ておむつに、レッグギャザーを形成する弾性部材を別体で取り付けるという考え方は、当該技術分野において従来全く考えられていなかった。 帯状弾性片20は、弾性部材が不織布に接合固定されて構成されている。具体的には、縦長矩形状の不織布23と、該不織布と同形の液不透過性のシート材24とが積層一体化してなる積層シートが、その長さ方向に沿って且つ不織布23が外側を向くように二つ折りにされ、二つ折りにされた内部に、複数の弾性部材26a,26b,26cが、積層シートの長さ方向に沿って伸張状態で挟持固定されている。つまり弾性部材26a,26b,26cは、シート材24を介して不織布23に間接的に接合固定されている…。 帯状弾性片20は、その長さ方向に沿う一側部に自由縁部21を有すると共に該自由縁部21よりも内寄りの位置、具体的には他側部に沿って固定縁部22を有している。固定縁部22は、レッグ開口部15の開口縁15a(外層シート5の側縁5c)の位置で、おむつ1の肌対向面、即ち外層シート5における内層不織布5b上に接合固定されている。つまり、帯状弾性片20は、レッグ開口部15における内面の位置において、不織布23が肌に対向するように配される。これにより、外層シート5の側縁5cが肌に接触する従来の使い捨ておむつと比較して、本実施形態のおむつ1はレッグ開口部15において、着用者の肌に対する当たりがよく、また風合いにも優れたものとなる。また、本実施形態においては外層シート5の側縁5cが外部に露出していないので、おむつ1の装着状態での外観が美しいものとなる。」(段落【0013】?【0015】参照) (b)「図8に示す第4実施形態のおむつ及び図9に示す第5実施形態のおむつにおいては、帯状弾性片20は、直線が組み合わされた形状となっている。即ち、図8に示す第4実施形態のおむつ1においては、屈曲部40を有する略V字形状の帯状弾性片20が用いられている。帯状弾性片20は、その屈曲部40が、おむつ1の幅方向内方を向くように、レッグ開口部の全域に亘って配されている。これにより帯状弾性片20が、レッグ開口部15の凹欠形状に一層沿うようになる…。 図9に示す第5実施形態のおむつ1においては、台形の上底41及び2つの側辺42,43から構成される形状の帯状弾性片20が用いられている。帯状弾性片20は、その前記上底に対応する部分がおむつ1の幅方向内方を向くように、レッグ開口部の全域に亘って配されている。」(段落【0033】?【0034】) (c)「また、帯状弾性片が、レッグ開口部の開口縁よりも内方の位置において外層シートに接合固定されて、帯状弾性片における自由縁部が該開口縁よりも外方へ延出していなくてもよい。 また、第1、第3?第5実施形態においては、帯状弾性片における固定縁部に弾性部材が配されていてもよい。 また、前記実施形態においては、帯状弾性片は外層シートに接合されているが、おむつの両側部にトップシートや立体ガードを形成するシートが存在する場合には、帯状弾性片はそれらシートの上に接合されていてもよい。」(段落【0037】?【0039】参照) 3-4.対比 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「吸液性コア」、「両側部」、「股下域の両側部」は、本願補正発明の「吸収性コア」、「長手方向縁部」、「長手方向縁部の部分」に相当し、本願補正発明の「前記トップシート及び前記バックシートが、周辺部及び長手方向縁部を画定」するとは、本願明細書の「おむつ20の周辺は、おむつ20の外側縁部により画定され、その長手方向縁部50はおむつ20の長手方向中心線70に概ね平行に向き、末端縁部52は長手方向縁部50の間でおむつ20の横断方向中心線72に概ね平行に通っている。…おむつ20のシャーシ22は、おむつ20の本体を含む。シャーシ22は、少なくともトップシート24及びバックシート26を備える。」(段落【0027】参照)の記載からみて、おむつ20の周辺は、長手方向縁部50と末端縁部52を有する、おむつ20の外側縁部により画定され、トップシート24及びバックシート26を備えるおむつ20のシャーシ22がこれを画定するものと解されるので、引用発明の「積層パネルは、互いに並行して縦方向へ延びる両側部と、互いに平行して縦方向と交差する横方向へ延びる前後端部とを有」する構成は、本願補正発明「前記トップシート及び前記バックシートが、周辺部及び長手方向縁部を画定」する構成に相当するものと認められる。 また、本願明細書の段落【0042】の「縁部バンド60は、好ましくは、柔軟で、しなやかで、刺激のない不織布材料を含み」の記載からみて、「縁部バンド」は一般的に不織布が用いられるものと認められ、引用発明の「第1弾性部材、第2弾性部材及び第3弾性部材をそれぞれ被覆する不織布」と本願補正発明の「別個の縁部バンド」は、各長手方向縁部上で、長手方向縁部の内側表面に、使い捨ておむつが着用される時に、脚部開口部を画定する前記長手方向縁部の部分に取り付けられ、かつ前記内側表面に平坦状に重なり合い、前記使い捨ておむつの前記長手方向縁部の全長に延びておらず、長手方向縁部の内側表面のみに貼り付けられている不織布である限りにおいて一致する。 したがって、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、 「トップシート、バックシート、及び前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収性コアを含む使い捨ておむつであって、前記トップシート及び前記バックシートが、周辺部及び長手方向縁部を画定し、前記長手方向縁部の部分が、前記使い捨ておむつが着用される時に、脚部開口部を画定し、各長手方向縁部上で、不織布が、前記長手方向縁部の内側表面に、前記使い捨ておむつが着用される時に、脚部開口部を画定する前記長手方向縁部の前記部分で接合され、かつ前記内側表面に平坦状に重なり合い、前記不織布が、前記使い捨ておむつの前記長手方向縁部の全長に延びておらず、長手方向縁部の内側表面のみに貼り付けられている使い捨ておむつ。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明では、別個の縁部バンドが、各長手方向縁部上で、脚部開口部を画定する長手方向縁部の部分で接合されるのに対して、引用発明では、第1弾性部材、第2弾性部材及び第3弾性部材をそれぞれ被覆する不織布が、縦方向に接続されるように、前記積層パネルの内側表面の股下域の両側部で接合される点。 [相違点2] 本願補正発明では、別個の縁部バンドが、遠位端をもつ折り目を有し、前記折り目および遠位端が、長手方向縁部の内側表面に貼り付けられているのに対して、引用発明では、このような規定のない点。 3-5.当審の判断 上記相違点1について検討すると、連続した弾性体を被覆する不織布を、各長手方向縁部上で、脚部開口部を画定する全域に亘って接合固定することは引用文献2に記載された事項であり(上記3-3.(2)(a)、(b)参照)、引用発明において、第1弾性部材、第2弾性部材及び第3弾性部材をそれぞれ被覆する不織布に代えて、弾性体を連続したものとし、それを被覆する、脚部開口部を画定する全域に亘る不織布を、各長手方向縁部上で接合固定することは当業者が容易になし得たことである。 したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から、当業者が容易になし得たものと認める。 次に、上記相違点2について検討すると、上記3-2.で述べたように、本願特許請求の範囲の請求項1の「別個の縁部バンドが、遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」の記載は、「別個の縁部バンドが、曲がり部をもつ折り目を更に有し、折り目の終端から遠位端までの部分のうち内側表面に当接する部分全域が内側表面に貼り付けられる」ことを意味する。 しかしながら、脚部開口部に配置する帯状弾性片を被覆する不織布(本願の「別個の縁部バンド」に相当)を、(一側部の自由縁部に折り目を有するように)二つ折りにして帯状弾性片を内部に挟持固定し、(該自由縁部の)他側部に、おむつの内表面に固定される固定縁部を設けたものとすることは、引用文献2に記載された事項であり(上記3-3.(2)参照)、引用発明において、脚回り用弾性部材を被覆する不織布を、曲がり部をもつ折り目を有し、折り目の終端から遠位端までの部分のうち内側表面に当接する部分が内側表面に貼り付けられたものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 また、当該不織布の内側表面に当接する部分の全域を内側表面に貼り付けることは当業者が適宜なす程度の事項にすぎないと認める。 したがって、上記相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から、当業者が容易になし得たものと認める。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、上記3-2.で述べたように、本願特許請求の範囲の請求項1の「別個の縁部バンドが、遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」の記載を「別個の縁部バンドが、曲がり部をもつ折り目を更に有し、折り目の終端から遠位端までの部分のうち内側表面に当接する部分全域が内側表面に貼り付けられる」ことを意味すると解した場合に、上記のように進歩性を有しないのであり、前者の記載を後者のように補正するとした、平成24年5月24日付け上申書の補正案によっても、本願発明は進歩性を有するものとは認められない。 3-6.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 平成23年1月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年3月4日付け手続補正書で補正された請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」「1.」補正前の請求項1参照)。 第4.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、引用発明は、前記「第2.」の3-3.に記載したとおりである。 第5.対比・判断 本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明における「別個の縁部バンド」が「遠位端をもつ折り目を更に有し、前記折り目および遠位端が、前記内側表面に貼り付けられる」とした限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の3-5.に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、他の請求項について検討するまでもなく、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-13 |
結審通知日 | 2012-06-15 |
審決日 | 2012-06-26 |
出願番号 | 特願2007-530293(P2007-530293) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A41B)
P 1 8・ 575- Z (A41B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平田 信勝 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 亀田 貴志 |
発明の名称 | 吸収性物品用縁部バンド及び作製方法 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 名塚 聡 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 磯貝 克臣 |
代理人 | 森 秀行 |