• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1265813
審判番号 不服2012-2618  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-10 
確定日 2012-11-05 
事件の表示 特願2007- 11468「アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日出願公開、特開2008-176706〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成19年1月22日の特許出願であって、同23年4月20日付けで拒絶の理由が通知され、同23年6月21日に意見書ともに特許請求の範囲及び明細書についての手続補正書が提出されたが、同23年11月11日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。
これに対し、平成24年2月10日に本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲及び明細書についてさらに手続補正書が提出され、その後、当審の同24年5月25日付け審尋に対して同24年7月11日に回答書が提出されたものである。

第2.平成24年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
平成24年2月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成23年6月21日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前の請求項1>
「【請求項1】
プラントのアラームデータを取り込んで、所定の情報処理を実行する情報処理手段を備えるアラーム情報処理装置において、
ユーザの操作に従って、前記情報処理手段の動作をテストするためのテスト用アラームデータを生成するテストデータ生成手段を備え、
前記アラームデータは複数の形式のデータが混在したものであり、
前記情報処理手段は、前記複数の形式のデータを単一の形式のデータに統合する処理を実行するものであり、
前記テストデータ生成手段により生成される前記テスト用アラームデータは、前記複数の形式のデータが混在したものであることを特徴とするアラーム情報処理装置。」

(2)<補正後の請求項1>
「【請求項1】
プラントのアラームデータを取り込んで、所定の情報処理を実行する情報処理手段を備えるアラーム情報処理装置において、
ユーザの操作に従って、前記情報処理手段の動作をテストするためのテスト用アラームデータを生成するテストデータ生成手段と、
前記情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段と、
を備え、
前記アラームデータは複数の形式のデータが混在したものであり、
前記情報処理手段は、前記複数の形式のデータを単一の形式のデータに統合する処理を実行するものであり、
前記テストデータ生成手段により生成される前記テスト用アラームデータは、前記複数の形式のデータが混在したものであり、
前記動作再現手段は、前記テストデータ生成手段により生成された前記テスト用アラームデータに基づく情報処理を実行することを特徴とするアラーム情報処理装置。」

2.補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「アラーム情報処理装置」ついて、「テストデータ生成手段により生成された前記テスト用アラームデータに基づく情報処理を実行する」「前記情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段を備え」ることを限定的に減縮するものである。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「アラーム情報処理装置」であると認める。

(2)刊行物
これに対して、原査定の平成23年4月20日付け拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である以下の文献には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。
刊行物1:特開2003-186536号公報(原査定の引用文献1)
刊行物2:特開2005-285092号公報(原査定の引用文献2)

(2-1)刊行物1
ア.刊行物1記載の事項
刊行物1は、「アラーム監視装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】アラームウィンドウにより、プロセスで発生する各種アラームを監視するアラーム監視装置において、
オペレータ毎に作成登録され、かつ編集可能な拡張アラームフィルタを有する複数の拡張アラームフィルタ手段と、
これら拡張アラームフィルタを、オペレータ固有のフィルタIDで呼び出して拡張アラームフィルタウィンドウに適用するフィルタ適用手段と、
適用した前記拡張アラームフィルタを無効にしない限り有効に保持するフィルタ保持手段と、
新規拡張アラームフィルタを作成する際に、入力情報に対するシンタックスエラーチェックをかけるチェック手段と、
作成した前記拡張アラームフィルタを有効にする前に、模擬データに適用して動作確認するテスト手段と、を具備したアラーム監視装置。」

(イ)段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分散型制御システムの上位装置(HIS)のプロセスアラームウィンドウにより、制御対象プロセスで発生する各種アラームを監視するアラーム監視装置において、必要な情報を抽出するためのアラームフィルタに関する。」

(ウ)段落【0007】
「【0007】本発明の目的は、フィルタ定義をオペレータが自由に作成・登録でき、次回呼び出し時、PC再起動時にも適用させ、オペレータの操作量を軽減させると共に、HIS全体にフィルタを適用させることができるアラーム監視装置を提供することにある。」

(エ)段落【0019】
「【0019】フィルタを有効にすると、この条件はHIS上のアラーム全部に作用して、条件に合致しないアラームを抑制する。フィルタ無効操作は、図2の無効ボタン3eを押すと現在有効なフィルタを無効にすることができる。」

(オ)段落【0021】?【0023】
「【0021】本発明では、拡張アラームフィルタを有効にする前に、模擬データにフィルタ条件を適用したテストを行うことができる。図4の拡張アラームフィルタウィンドウ3のツールメニュー3f中の「条件式のテスト」をクリックすると、テストデータ選択ダイアログ9が表示される。
【0022】リスト中からテストデータを選択して開くと、条件式このテストデータに適用したテスト結果が図5示すテスト結果ウィンドウ(メモ帳などのテキストエディタ)10に表示される。テストデータは、ツールメニューの「テストデータ作成」で過去のアラームデータ(ヒストリカル)を用いてあらかじめ作成しておくか、ユーザがCSV形式で作成することも可能である。
【0023】ヒストリカルより作成されたテストデータは、実際のプラントデータであり、HISを起動することなく現実に近いデータで作成したフィルタのテストを行うことができる。テストは何度でも行えるため、テストデータを変え、結果を比較検討することが容易にできる。」

(カ)段落【0040】
「【0040】図12は本発明にかかるアラーム監視装置の構成例を示したブロック図である。図12のアラーム監視装置20で、表示手段21は、プロセスで発生する各種アラームを監視するためのアラームウィンドウを表示する。拡張アラームフィルタ手段22は複数設けられていて、オペレータ毎に作成登録され、かつ編集可能な拡張アラームフィルタを有する。フィルタ適用手段23は、拡張アラームフィルタをオペレータ固有のフィルタIDで呼び出して拡張アラームフィルタウィンドウに適用する。フィルタ保持手段24は、適用した前記拡張アラームフィルタを無効にしない限り有効に保持する。チェック手段25は、新規拡張アラームフィルタを作成する際に、入力情報に対するシンタックスエラーチェックをかける。テスト手段26は、作成した拡張アラームフィルタを有効にする前に、模擬データに適用して動作確認する。・・・(後略)」

イ.刊行物1に記載の発明
まず、上記摘記事項(イ)の「分散型制御システムの上位装置(HIS)のプロセスアラームウィンドウにより、制御対象プロセスで発生する各種アラームを監視するアラーム監視装置において、必要な情報を抽出するためのアラームフィルタ」なる記載、及び上記摘記事項(エ)に、「フィルタを有効にすると、この条件はHIS上のアラーム全部に作用して、条件に合致しないアラームを抑制する。」とあることなどから、「拡張アラームフィルタ手段」は、プロセスのアラームデータを取り込んで、所定の情報処理を実行するものといえ、また、条件に合致しないアラームを抑制するものである、といえる。
また、上記摘記事項(オ)に、「拡張アラームフィルタを有効にする前に、模擬データにフィルタ条件を適用したテストを行うことができる・・・テストデータは、ツールメニューの「テストデータ作成」で過去のアラームデータ(ヒストリカル)を用いてあらかじめ作成しておくか、ユーザがCSV形式で作成することも可能である」とあることから、これらの機能をまとめて、ユーザの操作に従って、拡張アラームフィルタ手段の動作をテストするためのテスト用アラームデータを生成するテストデータ生成手段、ということができる。

そこで、上記摘記事項(ア)ないし(カ)を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。
「プロセスのアラームデータを取り込んで、所定の情報処理を実行する拡張アラームフィルタ手段を備えるアラーム監視装置において、
ユーザの操作に従って、前記拡張アラームフィルタ手段の動作をテストするためのテスト用アラームデータを生成するテストデータ生成手段、
を備え、
前記拡張アラームフィルタ手段は、条件に合致しないアラームを抑制するものであり、
前記テストデータ生成手段により生成される前記テスト用アラームデータは、CSV形式で作成される場合を含むものであるアラーム監視装置。」 (以下、「刊行物1発明」という。)

(2-2)刊行物2
刊行物2は、「試験エミュレート装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)段落【0026】
「【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る試験装置10の構成を示す。試験装置10は、試験信号を生成してDUT100(Device Under Test:被試験デバイス)に供給し、DUT100が試験信号に基づいて動作した結果出力する結果信号が期待値と一致するか否かに基づいてDUT100の良否を判断する。本実施形態に係る試験装置10は、オープンアーキテクチャにより実現され、DUT100に試験信号を供給する試験モジュール170等として、オープンアーキテクチャに基づく各種のモジュールを用いることができる。そして、試験装置10は、DUT100の実試験をエミュレートする試験エミュレート装置190を有し、試験エミュレート装置190により、実試験に用いる試験モジュール170等の変更に対応して適切に構成を変更し、DUT100の実試験を適切にエミュレートするエミュレート環境を提供することができる。」

(イ)段落【0037】
「【0037】
ロードボード180は、複数のDUT100を載置し、複数の試験モジュール170を対応するDUT100の端子に接続する。
試験エミュレート装置190は、システム制御装置110に格納された試験制御プログラム、試験プログラム、及び試験データに基づいて試験装置10をエミュレートし、DUT100のシミュレーションモデルを用いてDUT100の試験を擬似的に行なう。本実施形態において、試験エミュレート装置190は、一のサイト制御装置130と、当該サイト制御装置130により制御される同期モジュール150、同期接続モジュール160、及び1又は複数の試験モジュール170と、当該サイト制御装置130による試験対象となるDUT100の動作を擬似的に行なう。試験エミュレート装置190を用いることにより、試験装置10の使用者は、DUT100、同期モジュール150、同期接続モジュール160、及び/又は試験モジュール170等の実物を準備していない段階で、試験制御プログラム、試験プログラム、及び/又は試験データの検証を開始することができる。また、試験エミュレート装置190を複数用意することにより、複数の使用者のそれぞれがより高価な実試験環境を占有することなく、試験制御プログラム、試験プログラム、及び/又は試験データを開発することができる。」

上記摘記事項(ア)及び(イ)を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて整理すると刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。
「試験装置10において、被試験デバイスDUT100の擬似的な試験を行う試験エミュレート装置190を備え、試験エミュレート装置190は、被試験デバイスDUT100のシミュレーションモデルに基づく検証を行うこと」(以下「刊行物2事項」という。)

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
まず、刊行物1発明の「プロセス」は、補正発明の「プラント」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に「アラーム監視装置」は「アラーム情報処理装置」に、相当することも明らかである。
また、本件明細書段落【0027】に「情報処理手段51におけるアラーム設計・・・や、表示設計(フィルタリング、・・・)などのアルゴリズムは」と記載されているように、一般にフィルタリングは情報処理の一態様であることから、刊行物1発明の「拡張アラームフィルタ手段」は、補正発明の「情報処理手段」に相当するということができる。
したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「プラントのアラームデータを取り込んで、所定の情報処理を実行する情報処理手段を備えるアラーム情報処理装置において、
ユーザの操作に従って、前記情報処理手段の動作をテストするためのテスト用アラームデータを生成するテストデータ生成手段、
を備えるアラーム情報処理装置。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の3点で相違している。
<相違点1>
補正発明は、情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段を備え、動作再現手段は、テストデータ生成手段により生成されたテスト用アラームデータに基づく情報処理を実行するのに対し、刊行物1発明は、そのような動作再現手段を備えていない点。
<相違点2>
補正発明は、アラームデータ及びテスト用アラームデータは複数の形式のデータが混在したものであるのに対して、刊行物1発明は、テスト用アラームデータは、CSV形式で作成される場合を含むものであるものの、それ以外の点が不明である点。
<相違点3>
補正発明は、情報処理手段は、複数の形式のデータを単一の形式のデータに統合する処理を実行するものであるのに対し、刊行物1発明の情報処理手段(拡張アラームフィルタ手段)は、条件に合致しないアラームを抑制するものである点。

(4)相違点の検討
ア.<相違点1>について
上記(2)の(2-2)にて指摘したように、刊行物2事項は、
「試験装置10において、被試験デバイスDUT100の擬似的な試験を行う試験エミュレート装置190を備え、試験エミュレート装置190は、被試験デバイスDUT100のシミュレーションモデルに基づく検証を行うこと」であるところ、
これを補正発明の用語に倣って表現すれば、刊行物2事項の「擬似的な試験を行う」は、補正発明の「同一動作を実行する」に相当し、以下同様に「試験エミュレート装置190」は「動作再現手段」に、「検証」は「テスト」に相当するといえる。
また、刊行物2事項の「試験装置10」と補正発明の「アラーム情報処理装置」とは「情報処理装置」である限りにおいて共通し、同様に、前者の「被試験デバイスDUT100」と後者の「情報処理手段」とは「テスト対象」である限りにおいて共通し、前者の「シミュレーションモデル」と後者の「テスト用アラームデータ」とは「テスト用データ」である限りにおいて共通する。

したがって、刊行物2事項は、
情報処理装置において、テスト対象と同一動作を実行する動作再現手段を備え、動作再現手段は、テスト対象のテスト用データに基づくテストを行うこと、と言い換えることができる。
そして、このような刊行物2事項を刊行物1発明に適用して、テスト対象たる情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段を備え、動作再現手段は、テストデータ生成手段により生成されたテスト用アラームデータに基づく情報処理を実行するように構成することは、刊行物1発明も刊行物2事項も、ともにテスト機能を有する情報処理装置であることからすれば、格別困難ではない。

また、一般に情報処理装置において、情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段を備え、動作再現手段はテストデータ生成手段により生成されたテストデータに基づく情報処理を行うことは、例えば、特開2004-13661号公報(段落【0023】?【0028】等参照。ここで「試験データ」が「テストデータ」であることは明らかである。)にも示されているように、従来周知の事項ともいえるものである。

これらを併せ考えると、刊行物1発明に刊行物2事項を適用して、情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段を備え、動作再現手段は、テストデータ生成手段により生成されたテスト用アラームデータに基づく情報処理を実行させるものとして、相違点1に係る発明特定事項を補正発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るところというのが相当である。

イ.<相違点2>及び<相違点3>について
まず、刊行物1発明のような、プロセスのアラームデータを取り込んで所定の情報処理を実行するアラーム監視装置において、アラームデータは複数の形式のデータが混在したものであり、そのような複数の形式のデータを単一の形式のデータに統合する処理を情報処理手段にて実行することは、
例えば、原査定の拒絶査定にて示された、小林靖典、「高度運転支援ソリューション」、横河技報、横河電機株式会社 技術開発本部、2006年9月15日、Vol.50 、No.3、第83?86ページ(特に、第85ページに記載された「システム間での情報の不一致やシステム固有の方言を取り除くための正規化」等の箇所を参照)に記載され、
また、新たに例示する特開2006-302074号公報に「図5は従来のプラント情報、特にアラーム等のメッセージ情報の収集システムの構成例を示す機能ブロック図である。1は上位装置であり、通信バス2を介して複数の制御システム31,32,…3nと通信し、各システムが発信するメッセージM1,M2,…Mnを収集する。・・・ 各制御システム31,32,…3nにおいて、312,322,…3n2は、メッセージ生成手段であり、アプリケーション311,321,…3n1が異常を検出したときに制御システム固有のフォーマットで異常内容を表すメッセージM1,M2,…Mnを生成して通信バス2に発信する。・・・11はメッセージ収集手段であり、通信バス2を介して各制御システムのメッセージM1,M2,…Mnを収集する。12は共通フォーマット変換手段であり、制御システム固有のフォーマットで生成されたメッセージM1,M2,…Mnを、・・・共通フォーマットに変換してデータベース13に保存する。」(段落【0002】?【0005】)と記載されているように、従来周知の事項である。
そして、かかる従来周知の事項を刊行物1発明に適用して、アラームデータを複数の形式のデータが混在したものとし、情報処理手段は、その複数の形式のデータを単一の形式のデータに統合する処理を実行するとして構成することは、格別創意を要するものではない。

さらに、テスト用データは、実際のデータと類似した性質のものとするのが通常であるから、(実際の)アラームデータが複数の形式のデータが混在したものである場合は、テスト用アラームデータも、同様に複数の形式のデータが混在したものであるのとするのが、当業者が自然に採用する方策である。また、刊行物1発明は、テスト用アラームデータは、CSV形式で作成される場合を含むものであるところ、CSV形式は異ソフトウェアの互換フォーマットとして用いられるのが通常であるから、刊行物1発明のテスト用アラームデータは、(補正発明と同様に)複数の形式のデータが混在したものを予定している蓋然性が高い。

そうしてみると、刊行物1発明に従来周知の事項を適用して、アラームデータ及びテスト用アラームデータは複数の形式のデータが混在したものとし、そして、情報処理手段を、複数の形式のデータを単一の形式のデータに統合する処理を実行するものとして、相違点2及び相違点3に係る発明特定事項を補正発明のものとすることは、当業者が通常の創作能力の発揮によりなし得るものというのが相当である。

ウ.<補正発明の効果>について
上記相違点1ないし相違点3を総合勘案しても、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の事項から予測できない格別な効果が生じるとは考えられない。

エ.したがって、補正発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ.回答書における補正案について
請求人は、平成24年7月11日提出の回答書において、補正発明1をさらに「ユーザの操作に従って、前記情報処理手段の動作アルゴリズムを定めるアルゴリズム設定手段」を備える事項、及び「情報処理手段は、プラントのアラームデータに代えて、前記テストデータ生成手段により生成された前記テスト用アラームデータに基づく情報処理を実行可能とされている」なる事項で限定する補正案を提示しているところ、補正案に法的根拠はないが、念のため検討する。
まず、「ユーザの操作に従って、前記情報処理手段の動作アルゴリズムを定めるアルゴリズム設定手段」なる事項については、一般に情報処理手段において、ユーザの操作により動作アルゴリズムを設定可能とすることは、例えば、特開2004-199656号公報(【請求項29】等参照)、特開2005-243008号公報(段落【0047】等参照)に示されるように従来周知の事項であり、かかる従来周知の事項を適用することに困難性はない。
また、「情報処理手段は、プラントのアラームデータに代えて、前記テストデータ生成手段により生成された前記テスト用アラームデータに基づく情報処理を実行可能とされている」なる点については、プラントの(実際の)アラームデータを併用してテストしていたことをやめ、テスト用アラームデータのみに基づいてテストすることを特定するものあるところ、設計的事項の域を出るものではない。
よって、補正案のように補正したとしても、特許性を認めることはできず、結論に変わりはない。

3.むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本件出願の発明について
1.本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成23年6月21日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「アラーム情報処理装置」である。

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2.2.(2)に示した刊行物1及び刊行物2であり、その記載事項は上記第2.2.(2-1)及び(2-2)のとおりである。

3.対比・検討
本件出願の発明は、上記第2.2.で検討した補正発明から、実質的に、「テストデータ生成手段により生成された前記テスト用アラームデータに基づく情報処理を実行する」「前記情報処理手段と同一動作を実行する動作再現手段を備え」る、という限定を削除したものである。
そうすると、補正発明と刊行物1発明とは、上記第2.2.(3)で示した一致点を有し、相違点2及び相違点3において相違する。そして、相違点2及び相違点3については、上記第2.2.(4)イ.で検討したとおりである。
したがって、本件出願の発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。

4.むすび
以上により、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願の請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-24 
出願番号 特願2007-11468(P2007-11468)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
P 1 8・ 575- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星名 真幸稲垣 浩司  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 菅澤 洋二
長屋 陽二郎
発明の名称 アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理方法  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ