• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1266216
審判番号 不服2010-15875  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-14 
確定日 2012-02-08 
事件の表示 特願2006-178011「半導体基板への液浸リソグラフィ方法および液浸リソグラフィプロセスで用いる処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月18日出願公開、特開2007- 13163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成18年6月28日(パリ条約による優先権主張 平成17年6月30日 米国)の出願であって、平成21年6月15日付けで拒絶理由が通知され、平成22年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人に意見を求めるために平成23年5月11日付けで審尋がなされ、同年8月9日付けで当該審尋に対する回答書が提出された。



2.本願発明

平成22年7月14日付け手続補正は特許請求の範囲の補正を含むものであるが、その請求項1については何ら補正がなされていないから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成22年7月14日付け手続補正書に記載された以下のとおりのものと認める。

「 半導体基板の表面上にレジスト層を供給するステップと、
露光中に流体を利用する液浸リソグラフィ露光装置を用いて、前記レジスト層を露光するステップと、
前記流体のいかなる残留部をも除去するために、露光後と露光後ベークの前に、超臨界二酸化炭素液,界面活性剤液,脱イオン洗浄水または酸性洗浄溶液の中の一乃至複数を利用して、前記レジスト層を処理するステップと、
前記レジスト層に露光後ベークを行なうステップと、
露光したレジスト層を現像するステップと、からなることを特徴とする半導体基板への液浸リソグラフィ方法。」



3.引用発明

3-1.刊行物の記載事項

本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2005/024325号(以下「引用例」という)には、以下の技術事項が記載されている(当審注:関連する日本語公開公報(特表2007-504646号)を基に当審で行った邦訳を付した)(後述の「3-2.引用発明の認定」において引用した邦訳文の記載に下線を付した)。

記載事項a.請求項1
「 フォトリソグラフィを使用して基板上の放射線感光性材料の薄膜にパターンを転写する方法であって、
前記薄膜を液浸リソグラフィシステムの放射線源で露光することと、
前記基板から浸漬液を取り除くように、前記液浸リソグラフィシステムの前記露光した後に前記基板を乾燥させることとを具備する方法。」

記載事項b.[0025]
「 本発明の実施形態は、添付の図面を参照し、以下で詳細に記載される。本出願に係る実施形態として、電子デバイス製造のための半導体基板のような基板の上の薄膜にパターンを形成するパターニングシステムは、以下に記載される。」

記載事項c.[0032]
「 トラックシステム10(110,210)は、放射線感光性材料の薄膜にパターンを形成するために利用される複数のユニットを含むことができる。トラックシステム10(110,210)は、100mm、200mm、300mm、およびそれを越える基板サイズを処理するために構成されることができる。さらに、トラックシステム10は、248nmレジスト、193nmレジスト、157nmレジスト、EUVレジスト、(上部(Top)/底部(bottom))反射防止コーティング(anti-reflective coatings)(TARC/BARC)、およびトップコートを処理するために構成されることができる。トラックシステム10(110,210)内の複数のユニットは、膜コーティングユニットと、アプリケーション後ベーキング(post application bake:PAB)ユニットと、露光後ベーキング(post- exposure bake:PEB)ユニットと、密着コーティングユニットと、クーリングユニットと、クリーニングユニットと、リンスユニットと、現像ユニットと、ユニットおよび基板カセットへおよびこれらから基板を移送するための移送システムとのうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、トラックシステム10は、東京エレクトロン株式会社(Tokyo Electron Limited:TEL)から市販されているクリーントラックACT8(登録商標)またはACT12(登録商標)レジストコーティングおよび現像システムであり得る。フォトレジスト膜を基板上に形成する他のシステムおよび方法は、スピンオンレジスト技術の当業者にとって周知である。」

記載事項d.[0038]-[0042]
「 ここで図5を参照すると、基板上の薄膜をパターニングする方法は、記載されている。図5の方法は、図1?4に関して記載されたどのシステムによっても実行されることがあり得る。方法は、放射線感光性材料の薄膜を基板上に形成する510で開始しているフローチャート500を含む。薄膜は、図1?3で記載されたようなトラックシステムによって使用されたスピンコート技術を用いて形成され得る。コーティングプロセス後、薄膜は、例えば、PABユニット内での膜のベーキングよってキュアされることができる。
520において、放射線感光性材料の薄膜は、上記システムのどれかのような液浸リソグラフィシステム内でパターンに露光される。
530において、放射線露光後、基板上の薄膜は、図4で記載されたような乾燥システム内で乾燥される。乾燥プロセスは、基板ホルダ上に基板を位置決めすることと、基板を回転することとを含む。基板は、第1の回転速度に加速されることができ、そして浸漬液が遠心力によって薄膜の表面から取り除かれるまで、第1の期間の間、回転されることができる。別の形態として、基板は、第1の回転速度に加速されることができ、そして第1の期間の間、回転されることができ、続いて、第2の回転速度に加速または減速されることができ、そして第2の期間の間、回転されることができる。例えば、第1の回転速度は、均等に薄膜の表面全体に浸漬液を広げるために、低速の回転速度を有することができ、そして、第2の回転速度は、浸漬液を振り落とすために、高速の回転速度であり得る。別の形態として、乾燥流体は、基板が回転しているか回転していないかのどちらで、浸漬液を置換するために、薄膜の表面上に注入されることができる。乾燥流体は、ガス状の状態または液体状態であり得る。乾燥流体は、例えば、イソプロピルアルコールのようなアルコールを含むことができる。しかしながら、浸漬液の蒸気圧より高い蒸気圧を有する何らかの乾燥流体は、薄膜の表面から浸漬液を取り除く際の補助に利用されることができる。例えば、浸漬液は、193nmプロセスに対しては水を、157nmプロセスに対してはペルフルオロポリエーテル(perfluoropolyether:PFPE)を含むことができる。
540において、薄膜は、例えば、パターン分解能を制御するように酸の拡散を促進し、パターン側壁の垂直形状の定在波を除去するために、PEBユニット内で熱的に処理されることができる。
550において、薄膜は、放射線感光性材料の照射を受けた領域(ポジ型フォトレジストの場合)または非照射領域(ネガ型フォトレジストの場合)を取り除くために、ベース現像液または溶媒において現像されることができる。その後、薄膜内の現像されたパターンは、何らかのレジスト欠陥、コンタミネーションなどを取り除くために、すすがれ、またはクリーニングされることができる。」


3-2.引用発明の認定

記載事項dの記載内容から、薄膜の形成、薄膜の露光、薄膜への乾燥流体の注入、薄膜の露光後ベーキングユニット内での処理、及び、薄膜の現像は、時系列的にこの順序で行われていることが理解できる。
上記事項並びに記載事項a乃至記載事項dの記載内容から、引用例には、

「 放射線感光性材料の薄膜を半導体基板上に形成した後、
放射線感光性材料の薄膜は、液浸リソグラフィシステム内でパターンに露光され、
放射線露光後、乾燥流体は、浸漬液を置換するために、薄膜の表面上に注入され、乾燥流体は液体状態であり、例えば、イソプロピルアルコールのようなアルコールであり、薄膜の表面から浸漬液を取り除く際の補助に利用され、
その後、露光後ベーキングユニット内で熱的に処理され、
続いて、薄膜は現像される、
液浸フォトリソグラフィを使用して半導体基板上の放射線感光性材料の薄膜にパターンを転写する方法。」

(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。



4.対比

本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「放射線感光性材料の薄膜を半導体基板上に形成」する工程は、本願発明の「半導体基板の表面上にレジスト層を供給するステップ」に相当する。
引用発明の「放射線感光性材料の薄膜は、液浸リソグラフィシステム内でパターンに露光され」る工程は、本願発明の「露光中に流体を利用する液浸リソグラフィ露光装置を用いて、前記レジスト層を露光するステップ」に相当する。
引用発明において、「放射線露光後」かつ「露光後ベーキング」の前に行われる、「乾燥流体は、浸漬液を置換するために、薄膜の表面上に注入され、乾燥流体は液体状態であり、例えば、イソプロピルアルコールのようなアルコールであり、薄膜の表面から浸漬液を取り除く際の補助に利用され」る工程と、本願発明の「前記流体のいかなる残留部をも除去するために、露光後と露光後ベークの前に、超臨界二酸化炭素液,界面活性剤液,脱イオン洗浄水または酸性洗浄溶液の中の一乃至複数を利用して、前記レジスト層を処理するステップ」とは、「前記流体を除去するために、露光後と露光後ベークの前に、液体を利用して、前記レジスト層を処理するステップ」である点で一致する。
引用発明の「露光後ベーキングユニット内で熱的に処理され」る工程は、本願発明の「前記レジスト層に露光後ベークを行うステップ」に相当する。
引用発明の「薄膜は現像される」工程は、本願発明の「露光したレジスト層を現像するステップ」に相当する。
引用発明の「液浸フォトリソグラフィを使用して半導体基板上の放射線感光性材料の薄膜にパターンを転写する方法」は、本願発明の「半導体基板への液浸リソグラフィ方法」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「 半導体基板の表面上にレジスト層を供給するステップと、
露光中に流体を利用する液浸リソグラフィ露光装置を用いて、前記レジスト層を露光するステップと、
前記流体を除去するために、露光後と露光後ベークの前に、液体を利用して、前記レジスト層を処理するステップと、
前記レジスト層に露光後ベークを行なうステップと、
露光したレジスト層を現像するステップと、からなることを特徴とする半導体基板への液浸リソグラフィ方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、(レジスト層を処理する)“液体”が「超臨界二酸化炭素液,界面活性剤液,脱イオン洗浄水または酸性洗浄溶液の中の一乃至複数」であるのに対し、引用発明では、(薄膜の表面上に注入される)“液体”が「イソプロピルアルコールのようなアルコールであ」る点。

(相違点2)
本願発明では、「(液体を利用して)前記レジスト層を処理するステップ」が「前記流体のいかなる残留部をも除去するために」行われるのに対し、引用発明では、「乾燥流体」が「薄膜の表面上に注入され」る工程が「浸漬液を置換」し「薄膜の表面から浸漬液を取り除く際の補助に利用され」るために行われている点。


5.当審の判断

5-1.相違点1について

引用発明の「乾燥流体」は、液体であり、かつ、「浸漬液を置換」して「薄膜の表面から浸漬液を取り除く」ものであるから、引用発明の「乾燥流体」は、「薄膜の表面」を“洗浄しつつ乾燥している”ものであると認められる。
一般に、半導体基板を洗浄する液体として、超臨界二酸化炭素を用いることは、本願の優先日前に周知である(例えば、原査定の拒絶の理由においても示された、特開2005-081302号公報(【0003】乃至【0013】参照))。
してみれば、引用発明において、薄膜の表面を洗浄する液体として、「イソプロピルアルコール」に替えて、「超臨界二酸化炭素」を採用することにより、上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

5-2.相違点2について

本願明細書(特に、解決しようとする課題(【0005】乃至【0006】)の記載内容を参酌するに、本願発明において、“(液体を利用して、レジスト層を処理するステップが)「前記流体のいかなる残留部をも除去するために」行われる”とは、レジスト層の表面から、液浸リソグラフィに利用される流体、及び、該流体に溶解したレジストからの溶解性物質を共に除去することを表しているといえる。
一方、引用発明では、乾燥流体(イソプロピルアルコール)は、「浸漬液を置換」し「浸漬液を取り除く」ために「薄膜の表面上に注入され」るものであるので、薄膜から浸漬液に溶解性物質が溶解している場合には、浸漬液だけでなく、該浸漬液に溶解した溶解性物質をも除去することになるものといえる。
してみれば、上記相違点2は実質的な相違点ではない。


6.本願発明の効果について

本願発明による効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものに過ぎない。



6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-05 
結審通知日 2011-09-12 
審決日 2011-09-26 
出願番号 特願2006-178011(P2006-178011)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡戸 正義  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 村田 尚英
吉川 陽吾
発明の名称 半導体基板への液浸リソグラフィ方法および液浸リソグラフィプロセスで用いる処理装置  
代理人 牛木 護  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ