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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1266217
審判番号 不服2011-8574  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2012-11-16 
事件の表示 特願2002-508173「ハプティックフィードバック機能性を備えたチャットインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月10日国際公開、WO02/03172、平成16年 1月29日国内公表、特表2004-503004〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2001年6月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年6月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年6月14日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月22日付けで手続補正がなされたが、同年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成23年4月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年4月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項43に係る発明
平成23年4月21日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項43は、
「ローカルコンピュータのディスプレイ装置上でチャットインターフェースの表示を生じさせ、前記ローカルコンピュータの前記ユーザにディスプレイ装置上で入信チャットメッセージの表示を生じさせるための手段と、
前記コンピュータネットワークを介して前記ローカルホストコンピュータに接続されるリモートコンピュータに送信される発信チャットメッセージを生じさせるための手段と、
前記リモートコンピュータから前記チャットインターフェースへの前記入信メッセージを受信するための手段と、
前記ローカルコンピュータの前記ユーザから入力データを受信するハプティックフィードバックインターフェースデバイスであって、前記リモートコンピュータから受信される前記入信チャットメッセージに少なくとも部分的に基づくハプティックセンセーションであって、振動ハプティックエフェクトを含むハプティックセンセーションを前記ローカルコンピュータの前記ユーザに出力するハプティックフィードバックインターフェースデバイスと、
を備える、前記ローカルコンピュータによって表示される、コンピュータネットワーク全体で他のクライアントコンピュータにハプティックメッセージを提供できるチャットインターフェースを提供するための装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項43における「ハプティックセンセーション」に関して「振動ハプティックエフェクトを含む」ものに限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項43に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-135384号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0107】図1は、本発明の情報処理装置の一実施形態の構成図である。
【0108】この図1に示す情報処理装置は、情報処理機器100と人形200とから構成されている。この情報処理装置の外観は、その一例が、例えば、図4、図5、図6あるいはそれ以降の複数の図に示されている。
【0109】情報処理機器100は、各種のソフトウェアが実行される中央演算処理装置(CPU)101、各種のソフトウェアを記憶しておくROM102、CPU101におけるソフトウェア実行の際の作業領域として使用されるRAM103、CPU101に対し各種のユーザイベントを発行するキーボード、ジョイスティック、マウス等の操作子104、CPU101で実行されているソフトウェアによる各種画面を表示するディスプレイあるいはテレビ等の表示装置105、CPU101で実行されているソフトウェアによる音声を出力するスピーカ106、人形200との間の通信を担うインターフェース107、およびネットワークを経由して外部の装置との通信を行なうインターフェース108から構成されている。
【0110】一方、人形200は、情報処理機器100との通信を担うインターフェース201、インターフェース201で受信した信号を解析する信号解析回路202、信号解析回路202における信号解析結果に従って駆動手段206を駆動する駆動回路203,204、信号解析回路202における信号解析結果に従ってLED207を点灯、消灯させる駆動回路205、駆動回路203,204によって駆動される、ここでは一例として、永久磁石206a,206bとコイル206c,206dとからなる駆動手段206、駆動手段206によって駆動されるLED207、およびスイッチ等のセンサ208から構成されている。
【0111】この駆動手段206は、ここでは1つのみ図示されているが、本実施形態では頭部を動かす駆動手段と、腕を動かす駆動手段との2系統備えられており、LED207は、顔の色を赤あるいは青に変化させるためのものがあり、赤色の色光を発光するLEDと緑色の色光を発光するLEDとの2つのLEDから構成されている。
【0112】またセンサ208は、後述する実施形態に応じて、ユーザが手でこの人形200の頭を押したことを検知するセンサ、あるいはこの人形200の前に人がいるかいないかを検知するセンサが備えられる。以下では、特に断らない限り、人形200の頭を押したことが検知されるセンサが備えられているものとして説明する。
【0113】また、情報処理機器100と人形200との間で通信を行なうインターフェース107,201は、以下の説明では主としてRS232Cのインターフェースケーブルで相互に接続されて通信を行なうものとして説明するが、これらのインターフェース107,201は、RC232C、あるいは有線での通信に限られるものではなく、USB等のインターフェース、パラレル通信方式のインターフェース、赤外線あるいは無線で通信を行なうインターフェース等であってもよく、本発明ではその通信方式を問うものではない。
【0114】また、インターフェース108は、電話回線網等のネットワークを経由して外部の装置との間で電子メールを送受信したり、インターネットのホームページをアクセスしたりする役割りを担っている。ここでは、この図1に示す情報処理装置と同一構成の情報処理装置が、ネットワークを介在させて、この図1に示す情報処理装置に接続されているものとし、特に断らない限り、単に「外部装置」と称したときは、そのネットワークを介在させて外部に接続された、この図1に示す情報処理装置と同一構成の情報処理装置を指すものとする。」

B.「【0115】図2は、外部装置でのメッセージ作成時の処理の流れを示したフローチャート、図3は、図1に示す情報処理装置でのメッセージ受信時の処理の流れを示したフローチャートである。尚、ここでは、外部装置でメッセージが作成されて送信され、図1に示す情報処理装置でその作成されたメッセージを受信するものとして説明するが、図1に示す情報処理装置でメッセージを作成して送信し、外部装置で受信してもよい。また、以下に説明する各実施形態における‘メッセージ'は、必ずしもネットワークを経由して通信されたものである必要はなく、その実施形態がネットワークを介在させた通信を必須要件とする実施形態でない限り、外部装置に向けて送信するか否かとは無関係に、図1に示す情報処理装置自体で作成したメッセージをも含むものである。
【0116】ここでは、メッセージに、人形200を動作させるための動作データを含ませることができる。
【0117】外部装置では、図2に示すように、メッセージ(文章)が新規に作成され(ステップ2_1)、その作成されたメッセージでの編集が行なわれ(ステップ2_2)、受信側の人形200を動作させるための動作の種類が選択され(ステップ2_3)、その動作を行なわせるための動作データを含むメッセージが送信される(ステップ2_4)。
【0118】図1に示す情報処理装置(受信側)では、ネットワークを経由してそのメッセージが送信されてくると、その送信されてきたメッセージが図1に示すインターフェース108で受信され(ステップ3_1)、CPU101で動作するメッセージ解析プログラムによりそのメッセージが解析されてそのメッセージ中から動作データが抽出され(ステップ3_2)、その抽出された動作データは、人形の動作を制御する人形動作制御プログラム10に渡されるとともに、その受信したメッセージ中から動作データを除いた表示データが図1に示す表示装置105に送られて、その表示画面上にメッセージが表示される(ステップ3_3)。
【0119】人形動作制御プログラム10は、動作パータン解析部11、入出力ポート管理部12、およびセンサ監視部13から構成されており、この人形動作制御プログラム10に動作データが伝えられると、その動作データは、動作パターン解析部11で解析されて人形200に伝えるためのデータ形式に変換され、そのデータ形式変換後の動作データが、入出力ポート管理部12により制御されるインターフェース107(図1参照)から送信される。その動作データの送信を受けた人形200側では、図1に示すインターフェース201でその送信された動作データが受信され、信号解析回路202でその送信されてきた動作データが解析され、各駆動回路203,204,205では、その解析結果に従って、駆動手段206を駆動して人形200の首や腕を動かしたり、LED207を駆動して人形200の顔の色を赤あるいは青ざめた色に変化させる。また、人形の頭が押されると、頭が押されたことが図1に示すセンサ208で検知され、その情報は人形側のインターフェース208から情報処理機器側のインターフェース107に伝えられて、人形動作制御プログラム10の入出力ポート管理部12を経由してセンサ監視部13に送られ、そのセンサ監視部13で人形の頭が押されたことが認識される。ただし、この図3に示す例では、この人形の頭が押されたことに対する情報処理機器側のアクションは示されていない。尚、人形200に、人が前にいるかいないかを検知するセンサを備えた場合も、上記と同様にして、センサ監視部13によりその検知結果が認識される。」

C.「【0120】図4は、図2、図3に示すフローチャートに沿った第1の処理例を示すイラスト図である。
【0121】外部装置(送信側)では、その送信側画面上にメッセージ作成ウィンドウが開かれて、メッセージ(文章)が作成される。そのメッセージ作成ウィンドウ中の「動作添付」のアイコンがクリックされると今度は動作選択ウィンドウが開かれる。そこでその動作選択ウィンドウから、受信側の人形の動作の態様が選択される。ここに示す例では、その人形の動作の態様として「びっくり」が選択されている。その動作の態様を選択して「決定」アイコンをクリックすると、送信側で実行中のソフトウェア内部では「びっくり」に対応する動作データが作成され、その動作データがメッセージ内に挿入される。その後、メッセージ作成ウィンドウ中の「送信」ボタンをクリックすると、あらかじめ指定しておいた受信先に向けて、動作データを含むメッセージが送信される。
【0122】受信側(情報処理機器100)では、そのメッセージが受信され、メッセージ受信ウィンドウが開かれると、そのメッセージ受信ウィンドウにメッセージ文章が表示されるとともに、人形200が、送信側でそのメッセージに挿入しておいた「びっくり」に相当する動作を行なう。前述したように、ここでは、人形200は、基本的に、頭(首)を動かす、腕(手)を動かす、赤ら顔になる、顔が青ざめるの4つの基本動作あるいはそれらの組合せが行なわれる(ここでは、顔色の変化も「動作」に含めている)。
【0123】ここでは、送信側における動作選択ウィンドウ中の単語、例えば「びっくり」等は、動作データを指示するためのものとして用いられており、メッセージ作成ウィンドウで作成した文書メッセージに、その動作データが挿入されて送信され、受信側では、受信したメッセージから動作データが抽出され、抽出された動作データは人形200の動作用として用いられ、メッセージ受信ウィンドウには、その動作データは反映されず、送信側のメッセージ作成ウィンドウで作成されたメッセージのみ表示される。すなわち、ここでは、動作データには、表示データとは区別された制御文が用いられている。」

D.「【0128】図6は、図2、図3に示すフローチャートに沿った第3の処理例を示すイラスト図である。
【0129】図6に示す処理例の場合、図5の処理例と同様、送信側ではメッセージ作成ウィンドウに入力した文章の一部がそのまま動作データとしても作用する。受信側の情報処理機器100には、特定の単語と動作データとの対応表が作成されており、メッセージを受信すると、その受信メッセージ中から、あらかじめ登録しておいた特定の単語(ここでは「びっくり」と「残念」)が抽出され、その抽出された単語が動作データに変換され、その変換により得られた動作データに従って人形200が動作する。こうすることにより、メッセージ作成側では人形の動きを特に意識することなくメッセージを作成することができる。この場合、メッセージ送受信に限らず、例えばインターネットのホームページをアクセスしたときでも同様に適用することが可能である。すなわち、ネットワーク上の文章をダウンロードして特定の単語を抽出し、その抽出した単語を動作データに置き換えて人形200を動作させることができる。」

E.「【0131】図7は、メッセージを受信した後の処理例を示すイラスト図である。
【0132】メッセージ受信側でメッセージ受信ウィンドウを開くとそこにメッセージ文章が表示され、これとともに人形が動作する。そこでその人形の頭を叩くと、その頭が叩かれたことを受けて、ここに示す例では「向うで頭叩かれた」という応答メッセージが作成され、その応答メッセージを、自分が受信したメッセージの発信元に向けて自動返信する。
【0133】応答メッセージを受信した、もともとのメッセージの発信元では、メッセージ受信ウィンドウ上にその応答メッセージが表示され、自分が発信したメッセージを相手が確認したことを知ることができる。
【0134】ここでは、応答メッセージは、もともとのメッセージの発信元のメッセージ受信ウィンドウ上に表示される旨説明したが、この応答メッセージとして人形の動作データを送受信し、もともとのメッセージの発信元の人形を動作させてもよく、あるいはメッセージ受信ウィンドウへの表示と人形の動作との双方を行なってもよい。
【0135】また、もともとのメッセージの受信側において、上記の説明では人形の頭を叩く旨説明したが、例えば人形の頭と胸との双方にそれぞれセンサを配置し、頭と胸のどちらを叩いたかに応じて、あるいはいずれを先にいずれを後から叩いたかに応じて異なる応答メッセージを作成して、もともとのメッセージの発信元に送信してもよい。あるいはセンサは頭のみであっても、頭を一回叩いたか、あるいは二回叩いたか、あるいはある特定のリズムで叩いたかに応じて異なる応答メッセージを作成してもよい。」

F.「【0136】図8は、本発明をオンラインコミュニケーションシステム(チャットシステム)に適用した場合の処理を示す図である。このチャットシステムは、間にチャットサーバを介在させて複数のチャットクライアントが相互にメッセージを送受信することにより、仲間どおしで‘おしゃべり'をするシステムである。ここでは複数のチャットクライアントそれぞれが、図1に示す構成の情報処理機器100および人形200を備えているものとする。このシステムにおいてもメッセージには、前述したいずれかの態様による動作データがふくまれているものとする。
【0137】あるチャットクライアントがメッセージを送信すると、その送信されたメッセージは、チャットサーバを経由して、その会話(チャット)に参加している他のチャットクライアント(複数の場合もある)により受信される。そのメッセージを受信したクライアントでは、受信したメッセージから人形を動作させるための動作データが抽出されて人形動作制御プログラム10に渡され、これによりその人形は、その動作データに応じて動作する。 図9は、チャットシステムにおける応答メッセージの返信の場合の処理を示す図である。
【0138】メッセージ受信側で人形が操作される(例えば人形の頭が叩かれる)と、人形動作制御プログラム10のセンサ監視部13でその操作(例えば頭が叩かれたと)が検知されて、応答メッセージが自動作成され、その応答メッセージが、チャートサーバ(当審注:「チャットサーバ」の誤記と認められる。)を経由して、もともとのメッセージの発信元のチャットクライアントに送信され、その、もともとのメッセージの発信元のチャットクライアントでは、その応答メッセージが動作データに変換されて、人形の動きにより、自分が発信したメッセージが受信されたことがそのチャットクライアントのユーザに通知される。あるいは応答メッセージは、文章で表示されて通知される。チャットシステムの場合、もともとのメッセージの受信側は1人には限られず、複数人数存在する場合もある。そこで、特にチャットシステムの場合、応答メッセージの発信元(もともとのメッセージの受信先)を特定することのできる応答メッセージを返信することが好ましい。この場合、応答メッセージの受信側では、人形が応答メッセージの発信元に応じて異なる動作を行ない、あるいは表示画面上にその応答メッセージの発信元がわかるような表示がなされる。
【0139】また、前述と同様に、人形に、その人形の前に人がいるかいないかを検知するセンサを備えておき、ユーザがチャットクライアントの前にいるかいないかを、他のチャット参加者に、その参加者の人形の動きにより、あるいは表示により、知らせるようにしてもよい。
【0140】図10は、本発明をチャットシステムに適用したときの他の処理例を示す図である。
【0141】ここでは、自分の名前やニックネームが登場し、あるいは自分が関心のある話題を示すキーワード等を登録しておく。
【0142】受信したメッセージ中に自分の名前やニックネーム、あるいは会話が自分に関心のある話題に移りその会話に自分が登録しておいたキーワードが登場すると、自分の人形が動作する。これにより、画面から目を離していても自分が加わるべき会話が始まったことを知ることができる。」

G.「【0247】図42は、人形内部の駆動機構の一例を示す図である。
【0248】ここにはモータにより腕を上下動する機構が示されている。モータ2031の軸が矢印A方向に回転するとギア2032が矢印B方向に回転する。すると、アーム2033が支軸2034を中心に上下に回動する。このアーム2033の前側はコイルバネ2035で構成されており、このコイルバネ2035は人形の腕を構成している。したがってこの機構ではモータ2031が回転することによって人形の腕(手)が上下動することになる。 ここで、この人形の腕はコイルバネ2035で構成されているため、この人形が例えばポケットの中等の狭い場所に入れられた場合のように腕の動作が制限を受けるような状況下にあっても、モータ2031が回転したときコイルバネ2035が弾性変形してそれが緩衝作用を成し、この腕あるいはこの腕を動かす駆動機構が破壊してしまうことが防止される。ただし、図40を参照して説明したような携帯型の人形の場合において、例えばポケットの中に入れておいたとき腕が動こうとすると、その動作圧力が身体に伝わるので、目に見えなくても人形が動いていることはわかる。
【0249】図43は、人形内部の駆動機構のもう1つの例を示す図である。
【0250】ここには、交流電流が流れるコイル2036を備えた電磁石2037と、支軸2039により回動自在に軸支された永久磁石2038を備えた、人形の腕を構成するアーム2040が示されており、電磁石2037のコイル2036に交流電流が流れるとアーム2040が支軸2039を中心に上下に往復回動する。この駆動機構の場合、腕は固いアームで構成されるが、電磁力により駆動されているため、それが緩衝作用を成し、図42の場合と同様に、腕の動きが制限されていてもこの駆動機構が破壊されることが防止される。またこの場合も、例えばポケットの中に入れておいたとき腕の動作圧力が身体に伝わり、人形が動いていることがわかる。」

上記A?Gの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「情報処理機器100は、各種のソフトウェアが実行される中央演算処理装置(CPU)101、各種のソフトウェアを記憶しておくROM102、CPU101におけるソフトウェア実行の際の作業領域として使用されるRAM103、CPU101に対し各種のユーザイベントを発行するキーボード、ジョイスティック、マウス等の操作子104、CPU101で実行されているソフトウェアによる各種画面を表示するディスプレイあるいはテレビ等の表示装置105、CPU101で実行されているソフトウェアによる音声を出力するスピーカ106、人形200との間の通信を担うインターフェース107、およびネットワークを経由して外部の装置との通信を行なうインターフェース108から構成され、
人形200は、情報処理機器100との通信を担うインターフェース201、インターフェース201で受信した信号を解析する信号解析回路202、信号解析回路202における信号解析結果に従って駆動手段206を駆動する駆動回路203,204、信号解析回路202における信号解析結果に従ってLED207を点灯、消灯させる駆動回路205、駆動回路203,204によって駆動される、ここでは一例として、永久磁石206a,206bとコイル206c,206dとからなる駆動手段206、駆動手段206によって駆動されるLED207、およびスイッチ等のセンサ208から構成され、
複数のチャットクライアントそれぞれが、情報処理機器100および人形200を備え、
あるチャットクライアントがメッセージを送信すると、その送信されたメッセージは、チャットサーバを経由して、その会話(チャット)に参加している他のチャットクライアント(複数の場合もある)により受信され、そのメッセージを受信したクライアントでは、受信したメッセージから人形を動作させるための動作データが抽出されて人形動作制御プログラム10に渡され、これによりその人形は、その動作データに応じて動作し、
例えば、受信したメッセージ中に自分の名前やニックネーム、あるいは会話が自分に関心のある話題に移りその会話に自分が登録しておいたキーワードが登場すると、自分の人形が動作することにより、画面から目を離していても自分が加わるべき会話が始まったことを知ることができ、
メッセージ受信側で人形が操作される(例えば人形の頭が叩かれる)と、人形動作制御プログラム10のセンサ監視部13でその操作(例えば頭が叩かれたと)が検知されて、応答メッセージが自動作成され、その応答メッセージが、チャットサーバを経由して、もともとのメッセージの発信元のチャットクライアントに送信され、その、もともとのメッセージの発信元のチャットクライアントでは、その応答メッセージが動作データに変換されて、人形の動きにより、自分が発信したメッセージが受信されたことがそのチャットクライアントのユーザに通知されるか、あるいは応答メッセージは、文章で表示されて通知され、
人形に、その人形の前に人がいるかいないかを検知するセンサを備えておき、ユーザがチャットクライアントの前にいるかいないかを、他のチャット参加者に、その参加者の人形の動きにより、あるいは表示により、知らせるようにしてもよく、
間にチャットサーバを介在させて複数のチャットクライアントが相互にメッセージを送受信することにより、仲間どおしで‘おしゃべり'をするチャットシステム。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「他のチャットクライアント」あるいは「メッセージを受信したクライアント」、「表示装置105」、「受信したメッセージ」、「ネットワーク」、「あるチャットクライアント」あるいは「もともとのメッセージの発信元のチャットクライアント」は、それぞれ、本願補正発明における「ローカルコンピュータ」あるいは「ローカルホストコンピュータ」、「ディスプレイ装置」、「入信チャットメッセージ」、「コンピュータネットワーク」、「リモートコンピュータ」あるいは「他のクライアントコンピュータ」に相当する。

(い)引用例の段落【0132】に「そこでその人形の頭を叩くと、その頭が叩かれたことを受けて、ここに示す例では「向うで頭叩かれた」という応答メッセージが作成され、その応答メッセージを、自分が受信したメッセージの発信元に向けて自動返信する。」と記載され、また、段落【0135】に「例えば人形の頭と胸との双方にそれぞれセンサを配置し、頭と胸のどちらを叩いたかに応じて、あるいはいずれを先にいずれを後から叩いたかに応じて異なる応答メッセージを作成して、もともとのメッセージの発信元に送信してもよい。あるいはセンサは頭のみであっても、頭を一回叩いたか、あるいは二回叩いたか、あるいはある特定のリズムで叩いたかに応じて異なる応答メッセージを作成してもよい。」と記載されていることより、引用例記載の発明における「応答メッセージ」は、本願補正発明における、「発信チャットメッセージ」に相当する。

(う)引用例の図4、図6、図7及び関連する記載によれば、図4、図6、図7に記載された「送信側画面」及び「受信側画面」は、図1に示す構成を用いて電子メールを送受信したときに表示されるものと認められるが、段落【0136】の「ここでは複数のチャットクライアントそれぞれが、図1に示す構成の情報処理機器100および人形200を備えているものとする。」という記載より、複数のチャットクライアントのそれぞれが、図4、図6、図7に記載された「送信側画面」及び「受信側画面」と同様の「送信側画面」及び「受信側画面」を表示すると解される。そして、引用例記載の発明における、複数のチャットクライアントのそれぞれが表示する「送信側画面」及び「受信側画面」は、「チャットインターフェース」といい得るものである。

(え)引用例記載の発明において、チャットシステムは仲間どおしで‘おしゃべり'をするシステムであり、「他のチャットクライアント」あるいは「メッセージを受信したクライアント」に対しては、引用例の段落【0137】?段落【0142】、図8?図10の記載より、「ユーザ」が存在すると解される。

(お)上記(あ)?(え)で検討した事項を踏まえると、引用例記載の発明における「他のチャットクライアント」あるいは「メッセージを受信したクライアント」に備えられる「情報処理機器100」は、本願補正発明における「ローカルコンピュータのディスプレイ装置上でチャットインターフェースの表示を生じさせ、前記ローカルコンピュータの前記ユーザにディスプレイ装置上で入信チャットメッセージの表示を生じさせるための手段と、
前記コンピュータネットワークを介して前記ローカルホストコンピュータに接続されるリモートコンピュータに送信される発信チャットメッセージを生じさせるための手段と、
前記リモートコンピュータから前記チャットインターフェースへの前記入信メッセージを受信するための手段」を含んでいると解される。

(か)引用例記載の発明における「人形」と、本願補正発明における「ハプティックフィードバックインターフェースデバイス」とは、ともに、「ユーザインターフェースデバイス」であるということができる。

(き)引用例記載の発明における「動作」とは、人形が動いていることをユーザに知覚させる情報となるものであり、本願補正発明における「ハプティックセンセーション」とは、ユーザに触覚によって与える知覚情報となるものであるから、引用例記載の発明における「動作」と、本願補正発明における「ハプティックセンセーション」とは、ともに「ユーザへの知覚情報」であるということができ、また、引用例記載の発明における「動作データ」と、本願補正発明における「ハプティックメッセージ」とは、ともに、「ユーザへの知覚情報を制御するメッセージ」であるということができる。
そして、引用例記載の発明における「メッセージを受信したクライアントでは、受信したメッセージから人形を動作させるための動作データが抽出されて人形動作制御プログラム10に渡され、これによりその人形は、その動作データに応じて動作」することと、本願補正発明における「入信チャットメッセージに少なくとも部分的に基づくハプティックセンセーションであって、振動ハプティックエフェクトを含むハプティックセンセーションを前記ローカルコンピュータの前記ユーザに出力する」ことは、ともに「入信チャットメッセージに少なくとも部分的に基づくユーザへの知覚情報を前記ローカルコンピュータの前記ユーザに出力する」ことであるということができる。

(く)引用例記載の発明は「複数のチャットクライアントそれぞれが、情報処理機器100および人形200を備え」ており、「複数のチャットクライアント」のうちのいずれもが、「他のチャットクライアント」あるいは「メッセージを受信したクライアント」と、「あるチャットクライアント」あるいは「もともとのメッセージの発信元のチャットクライアント」とになり得るものであるから、引用例記載の発明における「情報処理機器100および人形200を備え」た「複数のチャットクライアントそれぞれ」と、本願補正発明における「ローカルコンピュータによって表示される、コンピュータネットワーク全体で他のクライアントコンピュータにハプティックメッセージを提供できるチャットインターフェースを提供するための装置」とは、ともに「ローカルコンピュータによって表示される、コンピュータネットワーク全体で他のクライアントコンピュータにユーザへの知覚情報を制御するメッセージを提供できるチャットインターフェースを提供するための装置」であるということができる。

よって、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「ローカルコンピュータのディスプレイ装置上でチャットインターフェースの表示を生じさせ、前記ローカルコンピュータのユーザにディスプレイ装置上で入信チャットメッセージの表示を生じさせるための手段と、
前記コンピュータネットワークを介してローカルホストコンピュータに接続されるリモートコンピュータに送信される発信チャットメッセージを生じさせるための手段と、
前記リモートコンピュータから前記チャットインターフェースへの前記入信メッセージを受信するための手段と、
前記リモートコンピュータから受信される前記入信チャットメッセージに少なくとも部分的に基づくユーザへの知覚情報を前記ローカルコンピュータの前記ユーザに出力するユーザインターフェースデバイスと、
を備える、前記ローカルコンピュータによって表示される、コンピュータネットワーク全体で他のクライアントコンピュータにユーザへの知覚情報を制御するメッセージを提供できるチャットインターフェースを提供するための装置。」
である点。

(相違点)
相違点1:「ユーザインターフェースデバイス」が、本願補正発明においては、「ハプティックフィードバックインターフェースデバイス」であるとともに「ローカルコンピュータのユーザから入力データを受信する」ものであるのに対し、引用例記載の発明においては、「人形」であり、また、その「人形」が「ローカルコンピュータのユーザから入力データを受信する」ものに相当するものであるかどうかが明確でない点。

相違点2:「ローカルコンピュータのユーザに出力」される「ユーザへの知覚情報」が、本願補正発明においては、「振動ハプティックエフェクトを含むハプティックセンセーション」であるのに対し、引用例記載の発明においては、「人形」の「動作」である点。

相違点3:「ユーザへの知覚情報を制御するメッセージ」が、本願補正発明においては、「ハプティックメッセージ」であるのに対し、引用例記載の発明においては、「動作データ」である点。

(4)判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。

(相違点1について)
引用例には、段落【0248】に、「ただし、図40を参照して説明したような携帯型の人形の場合において、例えばポケットの中に入れておいたとき腕が動こうとすると、その動作圧力が身体に伝わるので、目に見えなくても人形が動いていることはわかる。」と記載されているように、引用例記載の発明は、たとえ副次的な効果とはいえ、ユーザが視覚によらず触覚による感覚を用いて、人形が動いていることを知ることができるものである。したがって、この「人形」は「ハプティックフィードバックインターフェースデバイス」として機能するといえるものである。
そして、引用例記載の発明における当該「人形」は、メッセージ受信側で人形が操作される(例えば人形の頭が叩かれる)と、人形動作制御プログラム10のセンサ監視部13でその操作(例えば頭が叩かれたと)が検知されて、応答メッセージが自動作成されるものであり(引用例の段落【0138】参照。)、複数のセンサが内蔵されたものである(引用例の段落【0135】参照。)から、本願補正発明における「ローカルコンピュータのユーザから入力データを受信するハプティックフィードバックインターフェースデバイス」に相当する。

(相違点2について)
引用例記載の発明においては、「人形」の「動作」として様々なものが考えられるが、引用例の段落【0247】?段落【0250】に記載された「人形」の内部の駆動機構、及び、図4,図6の「人形」の「動作」を説明する「手をバタバタ動かす、などの動き」という記載から、「人形」を振動させる構成として、当該「人形」を「振動ハプティックエフェクトを含むハプティックセンセーション」をユーザに出力するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3について)
上記(相違点1について)で検討した事項を踏まえて、引用例記載の発明において、「ハプティックフィードバックインターフェースデバイス」として機能する「人形」を備える「チャットクライアント」に提供する「動作データ」を単に「ハプティックメッセージ」と呼ぶことは、実質的な相違点ではない。

(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から当業者が容易に想到できた構成のものにおいて、当然に有すると当業者が予測することができた程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年4月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項43に係る発明は、平成22年11月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項43に記載されたとおりの次のもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「ローカルコンピュータのディスプレイ装置上でチャットインターフェースの表示を生じさせ、前記ローカルコンピュータの前記ユーザにディスプレイ装置上で入信チャットメッセージの表示を生じさせるための手段と、
前記コンピュータネットワークを介して前記ローカルホストコンピュータに接続されるリモートコンピュータに送信される発信チャットメッセージを生じさせるための手段と、
前記リモートコンピュータから前記チャットインターフェースへの前記入信メッセージを受信するための手段と、
前記ローカルコンピュータの前記ユーザから入力データを受信するハプティックフィードバックインターフェースデバイスであって、前記リモートコンピュータから受信される前記入信チャットメッセージに少なくとも部分的に基づくハプティックセンセーションを前記ローカルコンピュータの前記ユーザに出力するハプティックフィードバックインターフェースデバイスと、
を備える、前記ローカルコンピュータによって表示される、コンピュータネットワーク全体で他のクライアントコンピュータにハプティックメッセージを提供できるチャットインターフェースを提供するための装置。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.(1)で検討した本願補正発明における、「ハプティックセンセーション」に関する「振動ハプティックエフェクトを含む」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も、同様に、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-20 
結審通知日 2012-06-21 
審決日 2012-07-04 
出願番号 特願2002-508173(P2002-508173)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 義晴須藤 竜也  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 甲斐 哲雄
山田 正文
発明の名称 ハプティックフィードバック機能性を備えたチャットインターフェース  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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