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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08B
管理番号 1266246
審判番号 不服2010-23164  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-13 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2007- 54108「緊急地震速報対応型集合住宅管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-217435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年3月5日の特許出願であって、平成22年7月8日付けで拒絶査定がなされ、同年10月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成23年9月2日付けで当審の拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年11月2日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「集合住宅の管理室などに設置される警報監視盤と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報端末と、を備えて構成された、緊急地震速報対応型集合住宅管理システムであって、
前記警報監視盤と、前記住宅情報端末とは、通話線および信号線によって相互に接続されており、
前記警報監視盤は、地震が発生したときには初期微動の段階で通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づいた地震検知信号を受信したときには、地震警報指令信号を前記各住戸の住宅情報端末に前記信号線を通じて送信する地震警報指令信号送信手段を備えており、
前記各住戸の住宅情報端末は、所定の地震メッセージを種類の異なる複数の言語で記憶した記憶手段と、前記報知手段から出力すべき地震メッセージの言語の種類を選択する選択手段と、前記警報監視盤から前記地震警報指令信号を受信したときには、前記選択手段により選択された種類の言語の地震メッセージを読み出して報知する報知手段と、を備えていることを特徴とする、緊急地震速報対応型集合住宅管理システム。」

3.引用例
当審の拒絶理由に引用した特開2003-67866号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、集合住宅の管理人室などに設置される警報監視盤と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報盤とを少なくとも組み合わせて構成した集合住宅管理システムの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、集合住宅では、集合住宅管理システムが広く使用されている。このものは、管理人室などに設置した警報監視盤と、各住戸に設置した住宅情報盤とを少なくとも組み合わせて構成しており、警報監視盤-住宅情報盤間の呼出、通話、警報監視盤において、各住戸の住宅情報盤の状態、すなわち、各住戸の火災、ガス漏れ、防犯などの状態を管理できるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の集合住宅管理システムでは、地震報知機能はなく、地震報知をするためには、集合住宅管理システムとは別個に、地震報知システムを構築する必要があり、その構築に手間とコストがかかっていた。
【0004】本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、地震発生時に、住人に対して適切な指示をすることのできる地震報知機能付き集合住宅管理システムを提供することを目的としている。」

・「【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態について、図面とともに説明する。図1は、本発明の地震報知機能付き集合住宅管理システムの要部構成の一例を示す図である。
【0012】このものでは、管理人室や警備室などに警報監視盤1を設置する一方、各住戸には住宅情報盤2を設置しており、警報監視盤1と住宅情報盤2とは、伝送線L1と通話線L2とを介して接続されており、警報監視盤1では、各住戸の監視をするとともに、各住戸とのインターホン通話が可能となっている。
【0013】各住戸の住宅情報盤2には、ドアホン子器Dを介して火災感知器などの感知器Sを接続した感知器回線Lsを接続しており、感知器Sの作動を検知し、火災などの異常が発生すれば、異常信号を警報監視盤1に対して送信する。
【0014】すると、警報監視盤1では、警報を表示や音によって出力するとともに、作動した感知器Sに対応した地区音響装置(不図示)などを作動させて、住戸人の迅速かつ安全な避難を誘導する。
【0015】また、ここでは、住宅情報盤2は、試験端子付のドアホン子器Dを介して感知器回線Lsを接続しているため、ドアホン子器Dに遠隔試験器Tを接続すれば、戸外の遠隔試験器Tから、感知器Sや住宅情報盤2を対象とした試験ができるようになっている。
【0016】警報監視盤1は、以下の各部を制御するホストCPU10と、伝送線L1を介して信号を送受信する信号送受信部11と、信号送受信部11による伝送の制御をする伝送CPU12と、各住戸の住宅情報盤2の機能設定データなどを予め記憶したフラッシュメモリ13と、キャッシュメモリ等として使用されるS-RAM14と、各住戸に対応した表示窓などで構成された表示回路部15と、各種操作キーなどで構成されたキー入力部16と、通話線L2を通じたハンドセットH1によるインターホン通話を可能とするとともに、スピーカSP1から呼出音などを出力させるインターホン回路部17と、地震を検知する地震センサ18とを備える。
【0017】各住戸の住宅情報盤2は、以下の各部を制御するCPU20と、伝送線L1を介して信号を送受信する信号送受信部21と、この住宅情報盤2にアドレスを設定するディップスイッチ22と、機能設定データなどを記憶するEEPROM23と、火災灯などで構成された表示回路部24と、各種操作キーなどで構成されたキー入力部25と、通話線L2を通じたハンドセットH2によるインターホン通話を可能とするとともに、スピーカSP2から呼出音などを出力させるインターホン回路部26と、地震を検知する地震センサ27とを備える。
【0018】このような構成によれば、図3に示すような動作をすることができる。すなわち、各住戸の住宅情報盤2では、地震センサ27が地震発生を検知すると、CPU20は、所定の対処ガイダンスを報知する。なお、対処ガイダンスの内容としては、ガス器具のスイッチを切るような指示、たばこの始末を促す指示、ストーブの火の始末を促す指示、避難場所の指示、避難経路の指示、避難経路の確保指示などがある。
【0019】そして、CPU20は、対処ガイダンスの報知が終了すると、移報出力部28によって、地震発生した旨を外部機器に移報出力する。すなわち、CPU20は、ガスの元栓を閉めたり、電気錠を開錠したり、テレビやラジオをつけるなどといった処理をする。
【0020】また、図4に示すような動作をすることもできる。すなわち、警報監視盤1では、地震センサ18が地震発生を検知すると、ホストCPU10は、各住戸の住宅情報盤2に対して地震発生を通知する。
【0021】すると、各住戸の住宅情報盤2のCPU20は、先述した対処ガイダンスを、映像と音声とで報知させ、地震発生した旨を外部機器に移報出力する。」

・「【0033】
【発明の効果】以上の説明からも理解できるように、本発明の請求項1または請求項2に記載の地震報知機能付き集合住宅管理システムでは、住宅情報盤または警報監視盤に設けた地震検知手段が地震を検知すると、住宅情報盤から対処ガイダンスを報知するので、地震報知機能を備える集合住宅管理システムを簡易に構成でき、地震発生時、住人に対して適切な指示をすることができ、そのため、住人が冷静な対応をすることができる。」

・上記の【0018】ないし【0019】の記載を踏まえると、図2及び図3には、住宅情報盤2では、地震センサ27で地震発生を検知すると、地震センサ27よりCPU20に地震発生の検知信号が伝達され、CPU20が所定の対処ガイダンスを表示及び鳴動により報知する手段が示されており、ここで、住宅情報盤2において処理が行われていることから、地震ガイダンスの生成もCPU20により行われていると解される。一方、図4に「図2のシステムの動作の他例」として示される実施例においては、上記の【0020】及び【0021】の記載を踏まえると、図3の実施例のものから、「地震発生を検知」、及び、「地震発生を全住戸に通知」を警報監視盤で行い、住宅情報盤において「地震発生を受信」する点を変更しているものと解されることから、図3のものでも、地震ガイダンスの生成もCPU20により行われていると解される。また、その際、地震発生の検知信号を地震センサ18が接続されたホストCPU10から、CPU20に地震発生を通知する信号を送信することが自明であるが、図2の住宅情報盤2の内部構造において、CPU20に信号を伝達できるのは伝送線L1のみであり(図2の対応する矢印の方向にも示されるように、地震センサ18→ホストCPU10→伝送CPU12→信号送受信部11→伝送線L1→信号送受信部21→CPU20の経路で伝送できる。なお、図2ではホストCPU10から地震センサ18に矢印が向いているが、信号の流れの方向は、地震センサ18→ホストCPU10の方向であることは明らかである。)、インターホン回路部からCPU20に信号を伝達する→が記載されていない通話線L2ではないことが明らかであると解するのが自然である。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「集合住宅の管理人室などに設置される警報監視盤1と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報盤2と、を備えて構成された、地震報知機能付き集合住宅管理システムであって、
前記警報監視盤1と、前記住宅情報盤2とは、インターホン通話を可能とするための通話線L2および信号を伝送するための伝送線L1によって相互に接続されており、
前記警報監視盤1は、地震が発生したときには地震センサ18が地震発生を検知した信号を受信したときには、地震発生を通知する信号を前記各住戸の住宅情報盤2に前記信号を伝送するための伝送線L1を通じて送信するホストCPU10、伝送CPU12、信号送受信部11を備えており、
前記各住戸の住宅情報盤2は、機能設定データなどを記憶するEEPROM23と、前記警報監視盤1から前記地震発生を通知する信号を受信したときには、たばこの始末を促す指示、ストーブの火の始末を促す指示、避難経路の確保指示等の対処ガイダンスを報知する手段と、を備えている、地震報知機能付き集合住宅管理システム。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「管理人室」が前者の「管理室」に相当し、以下同様に、
「警報監視盤1」が「警報監視盤」に、
「住宅情報盤2」が「住宅情報端末」に、それぞれ相当することから、
後者の「集合住宅の管理人室などに設置される警報監視盤1と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報盤2と、を備えて構成された、地震報知機能付き集合住宅管理システム」と
前者の「集合住宅の管理室などに設置される警報監視盤と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報端末と、を備えて構成された、緊急地震速報対応型集合住宅管理システム」とは、
「集合住宅の管理室などに設置される警報監視盤と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報端末と、を備えて構成された、地震対応型集合住宅管理システム」なる概念で共通する。

(イ)本願の出願当初の明細書の【0046】の「信号線L1によって警報監視盤1と信号(例えばデジタル信号)の送受を行う信号送受信部21」及び「通話線L2を通じて音声信号を送受信するインターホン回路部24」なる記載を踏まえると、後者の「インターホン通話を可能とするための通話線L2」、及び、「信号を伝送するための伝送線L1」が、前者の「通話線」、及び、「信号線」に相当することが明らかであるといえる。

(ウ)後者の「警報監視盤1は、地震が発生したときには地震センサ18が地震発生を検知した信号を受信したとき」と
前者の「警報監視盤は、地震が発生したときには初期微動の段階で通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づいた地震検知信号を受信したとき」とは、
「警報監視盤は、地震が発生したときには地震検知信号を検知したとき」なる概念で共通する。

(エ)後者の「地震発生を通知する信号」が前者の「地震警報指令信号」に相当し、同様に、
「ホストCPU10、伝送CPU12、信号送受信部11」が「地震警報指令信号送信手段」に相当する。

(オ)本願の出願当初の明細書の【0002】の「全住戸の住宅情報端末に地震メッセージを送信して報知させて、火元の確認、避難経路の確認などをさせるべく、続けて発生する主要動の発生に備えさせるように構成されている」なる記載を踏まえると、後者の「たばこの始末を促す指示、ストーブの火の始末を促す指示、避難経路の確保指示等の対処ガイダンス」が、前者の「地震メッセージ」に相当するといえる。
してみると、
後者の「各住戸の住宅情報盤2は、機能設定データなどを記憶するEEPROM23と、警報監視盤1から地震発生を通知する信号を受信したときには、たばこの始末を促す指示、ストーブの火の始末を促す指示、避難経路の確保指示等の対処ガイダンスを報知する手段と、を備えている、地震報知機能付き集合住宅管理システム」と
前者の「各住戸の住宅情報端末は、所定の地震メッセージを種類の異なる複数の言語で記憶した記憶手段と、報知手段から出力すべき地震メッセージの言語の種類を選択する選択手段と、警報監視盤から地震警報指令信号を受信したときには、前記選択手段により選択された種類の言語の地震メッセージを読み出して報知する報知手段と、を備えている、緊急地震速報対応型集合住宅管理システム」とは、
「各住戸の住宅情報端末は、所定の機能を設定するデータを記憶した記憶手段と、警報監視盤から地震警報指令信号を受信したときには、地震メッセージを報知する報知手段と、を備えている、地震対応型集合住宅管理システム」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「集合住宅の管理室などに設置される警報監視盤と、集合住宅の各住戸に設置される住宅情報端末と、を備えて構成された、地震対応型集合住宅管理システムであって、
前記警報監視盤と、前記住宅情報端末とは、通話線および信号線によって相互に接続されており、
前記警報監視盤は、地震が発生したときには地震検知信号を検知したときには、地震警報指令信号を前記各住戸の住宅情報端末に前記信号線を通じて送信する地震警報指令信号送信手段を備えており、
前記各住戸の住宅情報端末は、所定の機能を世定するデータを記憶した記憶手段と、前記警報監視盤から前記地震警報指令信号を受信したときには、地震メッセージを報知する報知手段と、を備えている、地震対応型集合住宅管理システム。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
地震が発生したときの地震検知信号を検知する手段に関し、本願発明では、「初期微動の段階で通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づいた」地震検知信号を「受信」する地震報知機能付き集合住宅管理システムであるのに対し、引用発明は、地震センサ18が地震発生を検知した信号を受信するものであり、「初期微動の段階で通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づいた」地震検知信号を「受信」するものではない点。

[相違点2]
地震メッセージを生成する手段に関し、本願発明では、所定の「地震メッセージを種類の異なる複数の言語で」記憶した記憶手段と、「報知手段から出力すべき地震メッセージの言語の種類を選択する選択手段と」、警報監視盤から地震警報指令信号を受信したときには、「前記選択手段により選択された種類の言語の」地震メッセージを「読み出して」報知する報知手段とを有することを特定しているに対し、引用発明では、対処ガイダンスを報知する所定の対処ガイダンスを報知するものであるが、どのようにして対処ガイダンスを生成するのかは特定されていない点。

5.判断
[相違点1]について
本願発明において、緊急地震速報対応型集合住宅管理システムであって、地震が発生したときには、初期微動の段階で通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づいた地震検知信号を受信したことによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0007】の「本発明は、上記事情を考慮して提案されるものであり、第1の目的は、地震メッセージの選択度を向上させ、初期微動を検知して地震メッセージを報知中に主要動が生じ、通話線が断線しても、地震メッセージを報知させ続けることができるようにすることにある。」とあるように、初期微動の段階で、通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づき、地震メッセージの報知を開始することにあり、それにより、通話線が断線しても、地震メッセージを報知させ続けることができるようにするものと解することができる。
一方、当審の拒絶の理由に引用した特開2001-307265号公報の【0004】に「そこで本発明の目的は、地震のP波初動を検出する(「初期微動の段階」に相当)ことで地震到来を警告する警報情報を生成する(「地震メッセージの報知を開始する」に相当)とともに、この警報情報をインターネットや公衆回線網などのあらゆるネットワークを介して事業者や個人に伝達する(「通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報」に相当)ことによって、人的および物的被害を最小限度に食い止める(「主振動により通話線が断線しても地震メッセージの報知を継続する」に相当)ことができる地震警報システムを提供することにある。」と記載されているように、初期微動の段階で、通信ネットワークを通じて送信されてくる緊急地震速報に基づき、地震メッセージの報知を開始することは、周知の技術であるといえる。同様な技術は、同じく引用した特開2005-107955号公報の【0003】及び【0004】等にも記載されているので参照されたい。
引用例の【0033】には、「地震報知機能を備える集合住宅管理システムを簡易に構成でき、地震発生時、住人に対して適切な指示をすることができ、そのため、住人が冷静な対応をすることができる。」と記載されているように、地震メッセージの報知は早ければ早いほど住人が冷静な対応をすることができることが明らかであることから、引用例にも、初期微動の段階で警報を行うという一般的な課題が示唆されているといえる。そして、「警報監視盤1は、地震が発生したときには地震センサ18が地震発生を検知した信号を受信したときには、地震発生を通知する信号を前記各住戸の住宅情報盤2に前記信号を伝送するための伝送線L1を通じて送信するホストCPU10を備えて」いる引用発明に、初期微動の段階で地震メッセージの報知を開始するという周知の技術を採用すれば、「初期微動を検知して地震メッセージを報知中に主要動が生じ、通話線が断線しても、地震メッセージを報知させ続けることができる」点は自明の効果にすぎないといえる。
そうすると、初期微動の段階で地震メッセージの報知を開始するという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知の技術を採用することにより相違点1に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点2]について
本願発明において、種類の異なる複数の言語で記憶した記憶手段と、報知手段から出力すべきメッセージの言語の種類を選択する選択手段と、選択手段により選択された種類の言語のメッセージを読み出して報知する報知手段としたことによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0003】の「上記した従来の集合住宅管理システムでは、警報監視盤と、全住戸の住宅情報端末との間で通話線を通じた通話回路を形成し、地震メッセージを送信して報知させているため、各住戸毎に異なる地震メッセージを送信することができないため、日本語の地震メッセージを報知する態様では、外国人に対応させて外国語の地震メッセージを報知できず、日本語の理解できない外国人にとっては不都合があった。各住戸毎に順次通話回線を形成して、住戸別に異なる地震メッセージを送信する方法も考えられるが、初期微動の検知をしてから主要動が生じるまでの短時間の間に行うことは、住人の安全確保上行うことが困難であった。」と記載されているように、種類の異なる複数の言語で記憶した記憶手段と、報知手段から出力すべきメッセージの言語の種類を選択する選択手段と、選択手段により選択された種類の言語のメッセージのみを読み出して報知する報知手段を設けることにより、短時間の間に住戸別に異なる言語の警報のメッセージを報知するものと解することができる。そして、短時間で報知できるので、報知を初期微動の検知をしてから主要動が生じるまでの短時間の間に行うことができるものである。
一方、当審の拒絶理由に引用した実願平4-74711号(実開平6-37992号)のCD-ROMの【0004】には、「一方、近年では、日本経済の拡大、国際化などに伴い、国内における外国人居住者が年々増加しており、このため音声出力するガス警報器においては、ガス漏れ情報を英語やポルトガル語,韓国語などの外国語により知らせるものも提案されている。」と記載され、【0009】には、「第3に、ガス漏れを検出するガス検出手段と、複数の言語による音声データが記憶され(「種類の異なる複数の言語で記憶した記憶手段」に相当)そのいずれかの言語の音声を出力する音声出力手段と、この音声出力手段における複数の言語を切り替える切替手段(「報知手段から出力すべきメッセージの言語の種類を選択する選択手段」に相当)と、前記ガス検出手段がガス漏れを検出したとき、前記切替手段により切替えられた言語の音声データを出力させるべく前記音声出力手段を動作させる制御手段(「選択手段により選択された種類の言語のメッセージのみを読み出して報知する報知手段」に相当し、分かり易い言語のみで報知することにより、報知に要する時間を短時間とできることは自明であるといえる。)とを有する構成としてある。」と記載されているように種類の異なる複数の言語で記憶した記憶手段と、報知手段から出力すべきメッセージの言語の種類を選択する選択手段と、選択手段により選択された種類の言語のメッセージのみを読み出して報知する報知手段を設けることにより短時間の間に住戸別に異なる言語の警報のメッセージを報知する点は周知慣用技術であると認められる。同様な技術は、同じく引用された特開2004-146872号公報の【0003】、【0004】、【0006】、【0017】、【0018】、及び【0026】等に開示されているので、参照されたい。
そうすると、異なる言語の警報のメッセージを報知するという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知慣用技術を採用することにより相違点2に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。そして、地震警報を行うものである引用発明に上記の周知慣用技術を適用すれば、警報のメッセージが地震メッセージとなることは自明のことにすぎない。

なお、請求人は、平成23年11月22日付けのファックスの第2頁第2行から第3行において、引用例には、「警報監視盤が、地震警報指令信号を、伝送線L1を通じて住宅情報盤に伝送することについては教示も示唆もありません」と主張している。しかしながら、上記の「3.引用例」に「地震発生の検知信号を自身センサ18が接続されたホストCPU10から、CPU20に地震発生を通知する信号を送信することが自明であるが、図2の住宅情報盤2の内部構造において、CPU20に信号を伝達できるのは伝送線L1のみであり(地震線18→ホストCOU10→伝送CPU12→信号送受信部11→伝送線L1→信号送受信部21→CPU20の経路で伝送でき、図2の矢印の表示も整合している。なお、図2ではホストCPU10から地震センサ18に矢印が向いているが、信号の流れの方向は、地震センサ18→ホストCPU10の方向であることは明らかである。)、インターホン回路部からCPU20に信号を伝達する→が記載されていない通話線L2ではないことが明らかであると解するのが自然である。」と記載しているように、引用発明も、「警報監視盤1は、地震が発生したときには地震センサ18が地震発生を検知した信号を受信したときには、地震発生を通知する信号を前記各住戸の住宅情報盤2に前記信号を伝送するための伝送線L1を通じて送信するホストCPU10、伝送CPU12、信号送受信部11を備えて」いるものであることから、地震警報指令信号を伝送線L1を通じて住宅情報盤に伝送するものと解される。してみると、請求人の上記の主張を採用することができない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-14 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-01 
出願番号 特願2007-54108(P2007-54108)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 茂美  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 田村 嘉章
大河原 裕
発明の名称 緊急地震速報対応型集合住宅管理システム  
代理人 中井 宏行  

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