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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1266250
審判番号 不服2010-25978  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-17 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2005-321240「施設情報提供装置およびカーナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月24日出願公開、特開2007-128344〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、
平成17年11月4日付けの出願であって、
平成20年1月11日付けで審査請求がなされ、
平成22年5月17日付けで拒絶理由通知(同年同月25日発送)がなされ、
同年7月23日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年8月10日付けで拒絶査定(同年同月17日発送)がなされ、
同年11月17日付けで審判請求がされると共に、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

なお、
平成23年1月20日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成24年4月6日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月10日発送)がなされ、これに対して
同年6月8日付けで回答書が提出されている。

2.本願発明
上記平成22年11月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により特許請求の範囲についてする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであるから、本件補正は適法になされたものである。
したがって、本願の請求項1?10に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「施設を表す施設情報を取得する施設情報取得手段と、
表示制御の対象とする施設あるいは施設の種別を選択し該当する施設を表示させる表示期間を設定する施設表示期間設定手段と、
年月日、時刻および曜日を計時する計時手段と、
前記施設情報取得手段で取得された施設情報が、前記施設表示期間設定手段で設定された施設に対応し、且つ前記計時手段から取得した年月日、時刻および曜日が前記施設表示期間設定手段で設定された施設の表示期間内である場合に、該施設情報に基づく施設を表示するための表示情報を生成するシステム制御手段と、
前記システム制御手段で生成された表示情報に基づき施設を地図上に重ねて表示する施設情報表示手段とを備え、
前記システム制御手段は、前記施設情報取得手段で取得された施設情報が、前記施設表示期間設定手段で設定された施設に対応しない場合、または前記計時手段から取得した年月日、時刻および曜日が前記施設表示期間設定手段で設定された施設の表示期間内でない場合に、該施設情報に基づく施設を表示しないための表示情報を生成する
ことを特徴とする施設情報提供装置。」


3.先行技術文献及びその記載内容
(1)引用文献
ア.原審の拒絶査定の理由である上記平成22年5月17日付けの拒絶理由通知において引用された以下の引用文献には、以下の(1A)乃至(1K)の内容が記載されている。(下線は当審付与。)

引用文献:特開2005-31988号公報(平成17年2月3日公開)
記載内容:
(1A)「【0001】
【技術分野】
本発明は、施設の位置等を案内する施設情報をユーザに提供する情報提供装置に関し、特に、変化するユーザ側の環境および/または施設側の環境に応じて選択された施設情報を提供する情報提供装置に関する。」

(1B)「【0005】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に情報提供装置100を含む情報提供システムの概要を示した。
本実施形態の情報提供装置100は、ユーザ側端末200を含む外部と相互に送受信可能であって、適宜選択した施設情報をユーザ側端末200に配信するサーバである。」

(1C)「【0011】
図2は、本実施形態に係る情報提供装置100の機能ブロック図である。情報提供装置100が施設情報を配信するユーザ端末200の主な構成も併せて示した。
【0012】
情報提供装置100は、環境情報取得手段1と、第1データベース2と、選択手段3と、第2データベース4と、送受信手段5とを有する。具体的には、少なくとも、取得したユーザの環境情報に基づいて、予め設定された選択条件を参照して施設情報を選択するプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行することで、環境情報取得手段1、選択情報3として機能するCPUと、施設情報、選択条件その他の情報を記憶し、第1データベース2、第2データベース4として機能するRAMとを備える。」

(1D)「【0020】
本実施形態の環境情報取得手段1は、交通情報からユーザの環境状態を推測する環境推測機能111を有している。環境推測機能111は、ユーザが現在位置から施設へ到着するまでの所要時間を推測する。具体的には、まず、環境推測機能111が第1データベース2からユーザの現在位置を取得し、地図情報2aを参照して、ユーザの現在位置から特定の施設の位置までの経路を算出する。参照される地図情報2aは、一般のナビゲーション装置等に用いられる電子地図情報である。さらに、環境推測機能111は、地図情報2aに含まれる道路属性情報(道路ごとの平均走行速度を含む)を参照し、ユーザが現在位置から施設へ到着するまでの所要時間を算出する。なお、到着までの所要時間が算出される施設は、ユーザの現在位置に近い順に順次特定される。」

(1E)『【0022】
「日時情報取得部12」は、ユーザが施設情報の配信を要求した時間、日付、曜日の日時情報を、第1データベース2のユーザ情報2eから取得する。この日時情報は、ユーザIDごとに蓄積された配信要求命令の入力履歴である。』

(1F)『【0026】
「選択手段3」は、環境情報取得手段1により取得された環境情報に応じた施設情報を第2データベース4から選択する。たとえば、環境情報が交通情報である場合、選択手段3は予め定めた時間以内に到着できる施設情報や、予め定めた長さより短い渋滞長で到着できる施設情報を選択する。環境情報が、ユーザが施設情報の配信を要求した日時である場合、選択手段3はその日時に営業している施設情報を選択する。環境情報がユーザ情報である場合、選択手段3はそのユーザの属性に適した施設の施設情報を選択する。具体的には、子供の年齢に応じて子供が楽しめる施設の施設情報を選択し、ユーザの性別に応じて、女性または男性向きの施設の施設情報を選択する。環境情報が天気情報である場合、選択手段3は天気に適した施設の施設情報を選択する。具体的には、施設周辺が雨の場合には屋外施設は選択せずに、屋内施設を優先的に選択する。環境情報が駐車場情報である場合、選択手段3は施設から駐車場までの距離が、予め定めた距離よりも短い施設を選択する。たとえば、家具のショッピングセンターでは、施設の近くに駐車場があることが好ましいことから、所定距離内に駐車場があることが選択の条件とする。また、選択手段3は、駐車場の待ち時間が予め定めた時間以内である施設を選択する。
【0027】
選択手段3が、施設を選択する場合の「選択条件」は、環境情報を基準とし、施設ごとに設定されることが好ましい。本実施形態の選択条件とその内容を表1に示した。選択条件は環境情報を基準として設定されているため、取得した環境情報と選択条件とを直接対比することができる。
【0028】
【表1】

本実施形態の第2データベース4は、環境情報を基準とし、施設に応じて設定された「選択条件」と「施設情報」とを対応づけた選択条件テーブル42を記憶する。図3に選択条件テーブル42の一例を示した。図3に示した選択条件テーブル42は、レジャーに関係する施設の選択条件テーブル42である。図3に示すように、レジャー施設の種類が、「スキー場」「屋外遊園地」「ショッピングモール」「映画館」とに区分され、各カテゴリに区分された複数の施設情報には識別可能なように施設IDが付されている。各施設情報には、選択条件として、環境情報と同様の「交通情報」「日時情報」「天気情報」「駐車場情報」「ユーザ情報」とが対応づけられている。この選択条件テーブルに設定されている数値は、任意に設定できる。』

(1G)『【0029】
スキー場Cを例にして選択条件を説明する。
スキー場Cに関し、交通情報の所要時間は20分である。これは、ユーザの現在位置からスキー場Cに至る所要時間が20分以下である場合、スキー場Cの案内情報を施設情報として選択するという条件である。交通情報の渋滞長は10kmである。これは、ユーザの現在位置からスキー場Cに至る経路における渋滞の長さが10km以下である場合、スキー場Cの案内情報を施設情報として選択するという条件である。
【0030】
日時情報の時間は、10:00?19:00である。これは、ユーザからの施設情報の配信要求がこの時間帯である場合、スキー場Cの案内情報を施設情報として選択するという条件である。日時情報の日付、曜日も同様である。ちなみに、スキー場Cの日付情報はスキー場Cのリフト運行日時と対応している。天気情報の天気は「雨でないこと」である。これは施設周辺の天気が雨でない場合、これは、スキー場Cの案内情報を施設情報として選択するという条件である。天気情報の気温も同様である。』

(1H)「【0041】
選択手段3は、第2データベース4の選択条件テーブル42を読み込む(114)。選択手段3は、環境情報取得手段1が取得した環境情報と、各施設情報に対応づけられた選択条件を対比する(115)。
【0042】
選択手段3は、取得された環境情報に応じた施設情報を第2データベース4から選択する。具体的には、取得された環境情報を満たす選択情報が対応づけられた施設情報を選択する(116)。
【0043】
送受信手段5は、選択された施設情報をユーザ側端末200へ向けて送信し(117)、終了(118)へ向かう。」

(1I)

(【図1】)

(1J)

(【図2】)

(1K)

(【図3】)


イ.また、上記記載より、以下の事項が把握される。

[情報提供システム]
上記(1A)に記載されるように、引用文献は「情報提供装置」を説明する文献であるところ、(1B)等には該「情報提供装置」を含む「情報提供システム」が説明されている。
また、上記(1B)(1I)(1J)の記載等から、該「情報提供システム」は、「情報提供装置」に加え「ユーザ側端末」を有することが把握される。
したがって、引用文献には
「情報提供装置と、」
「ユーザ側端末と」
「を有する情報提供システム」
が記載されていると言える。

[選択手段]
上記(1C)(1I)(1J)の記載等から上記「情報提供装置」は、「選択手段3」とを有することが把握され、上記(1H)の「選択手段3は、取得された環境情報に応じた施設情報を第2データベース4から選択する。」との記載から、該「第2データベース」は「施設情報を記憶するデータベース」であることは明らかであり、また、同記載から該「選択手段」は該データベースから「施設情報」を「選択する」ものであると言える。また、上記(1A)の「施設の位置等を案内する施設情報」との記載等から、施設情報が「施設を表す」ものであることは明らかである。
したがって、上記「情報提供装置」は
「施設を表す施設情報を当該施設情報を記憶するデータベースから選択する選択手段」を有すると言える。

[選択条件設定手段]
上記(1F)の『本実施形態の第2データベース4は、環境情報を基準とし、施設に応じて設定された「選択条件」と「施設情報」とを対応づけた選択条件テーブル42を記憶する。』との記載、及び、「この選択条件テーブルに設定されている数値は、任意に設定できる。」との記載から、上記選択条件は、施設に応じて任意に設定することができるものであり、上記「情報提供装置」は、これを設定する手段を備えていると言える。
したがって、上記「情報提供装置」は「施設に応じて」「選択条件を設定する選択条件設定手段」を備えていると言える。

また、上記(1K)の記載から、選択条件には「日時」が含まれることが把握され、さらに、上記(1G)の「日時情報の時間は、10:00?19:00である。これは、ユーザからの施設情報の配信要求がこの時間帯である場合、スキー場Cの案内情報を施設情報として選択するという条件である。日時情報の日付、曜日も同様である。」との記載から、上記「日時」は、ユーザからの施設情報の配信要求が当該日時に対応する「時間帯」であるような施設情報を選択するためのものである。そして、当該選択された施設情報に係る施設がユーザに提供すなわち表示されることになることは明らかであるから、上記「選択条件」は、「該当する施設を表示させる時間帯である日時を含む」ものであると言える。

よって、上記「情報提供装置」は、「施設に応じて、該当する施設を表示させる時間帯である日時を含む選択条件を設定する選択条件設定手段」を備えていると言える。

[日時測定手段]
上記(1E)の『「日時情報取得部12」は、ユーザが施設情報の配信を要求した時間、日付、曜日の日時情報を、第1データベース2のユーザ情報2eから取得する。この日時情報は、ユーザIDごとに蓄積された配信要求命令の入力履歴である。』との記載から、当該「日時情報」は、ユーザからの配信要求が入力された時点の日時であると解されるから、上記「情報提供装置」は、
「日付、時間および曜日を測定する日時測定手段」
を備えていると言える。

[送受信手段]
上記(1C)の「情報提供装置100は」「送受信手段5とを有する。」との記載から上記「情報提供装置」は、
「送受信手段」
を備えていると言える。

[ディスプレイ]
上記(1I)(1J)の記載等から、上記「ユーザ側端末」は
「提示手段としてディスプレイ」
を備えていることが把握される。

[選択及動作]
上記(1H)の「選択手段3は、環境情報取得手段1が取得した環境情報と、各施設情報に対応づけられた選択条件を対比する(115)。」及び「取得された環境情報を満たす選択情報(当審注:「選択条件」の誤記。)が対応づけられた施設情報を選択する(116)。」との記載から、上記「選択手段」が、「取得」された「環境情報を満たす選択情報が対応づけられた施設情報を選択」することが把握される。

また、上記(1E)の『「日時情報取得部12」は、ユーザが施設情報の配信を要求した時間、日付、曜日の日時情報を、第1データベース2のユーザ情報2eから取得する』との記載、及び、上記(1G)の「日時情報の時間は、10:00?19:00である。これは、ユーザからの施設情報の配信要求がこの時間帯である場合、スキー場Cの案内情報を施設情報として選択するという条件である。日時情報の日付、曜日も同様である。」との記載を併せ読むに、上記「選択手段」が上記環境情報として、日時情報取得部から取得され、ユーザからの施設情報の配信要求の「日時」である「日付」、「時間」および「曜日」を取得しており、この「日時」が、上記選択条件の「日時」の時間帯である場合に、対応する施設情報を選択することが把握される。

したがって、上記「情報提供システム」は
「施設情報が、前記選択条件設定手段で日時を含む選択条件が設定された施設に対応し、且つ前記日時測定手段で測定した日付、時間および曜日を含む日時が前記選択条件設定手段で設定された当該施設の選択条件としての日時の時間帯である場合に、前記選択手段により当該施設情報を選択」するものであると言える。

[送信動作]
上記(1G)の「送受信手段5は、選択された施設情報をユーザ側端末200へ向けて送信し(117)」との記載から、
上記「情報提供システム」は
「前記送受信手段により当該選択された施設情報をユーザ側端末へ送信する」ものであると言える。


ウ.よって、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「施設を表す施設情報を当該施設情報を記憶するデータベースから選択する選択手段と、
施設に応じて、該当する施設を表示させる時間帯である日時を含む選択条件を設定する選択条件設定手段と、
日付、時間および曜日を測定する日時測定手段と、
送受信手段と
を備えた情報提供装置と、
提示手段としてディスプレイを備えたユーザ側端末と
を有する情報提供システムであって、
施設情報が、前記選択条件設定手段で日時を含む選択条件が設定された施設に対応し、且つ前記日時測定手段で測定した日付、時間および曜日を含む日時が前記選択条件設定手段で設定された当該施設の選択条件としての日時の時間帯である場合に、前記選択手段により当該施設情報を選択し、前記送受信手段により当該選択された施設情報をユーザ側端末へ送信する
情報提供システム。」(以下、「引用発明」という。)

(2)参考文献
ア.原審の拒絶査定で周知文献として参照された以下の参考文献1には、以下の内容が記載されている。(下線は当審付与。)

参考文献1: 特開2005-283521号公報(平成17年10月13日公開)
記載内容:
(2A)「【0001】
本発明は、目的地までの走行経路に沿った走行案内を行うナビゲーション装置に関する。」
(2B)「【0033】
次に、経路探索処理によって抽出された走行経路に沿った経路誘導(走行案内)動作が、経路誘導処理部24によって行われる(ステップ105)。なお、走行経路に沿って車両が移動すると、経路誘導処理部24によって行われる経路誘導動作と並行して、地図描画部14による地図画像の描画処理とこの描画処理に伴う表示処理部60による地図表示動作が行われるが、この描画処理はメモリ54に格納されている地図データを用いて行われる。また、この地図描画処理では、表示条件設定部16によって設定される表示条件において、特定施設(例えばコンビニエンスストア)のランドマークを表示する旨の設定がなされている場合には、この特定施設のランドマークの画像が地図画像に重ねて描画される。地図描画に必要な図葉の地図データが地図バッファ10に転送され、地図描画部14による地図描画処理に用いられる。」

イ.以上の記載から、ナビゲーション装置等の施設情報の提供を行う技術分野における本願出願時の周知技術として、以下の技術が把握される。

「施設を地図に重ねて表示する周知技術。」


4.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを比較すると、次のとおりである。

ア.引用発明の「選択手段」について、「施設情報を当該施設情報を記憶するデータベースから選択する」際に、当該施設情報を当該データベースから当然に取得しているものと認められるから、引用発明の「選択手段」は、本願発明の「施設情報取得手段」に相当する。

イ.引用発明の「選択条件設定手段」は「施設に応じて、該当する施設を表示させる時間帯である日時を含む選択条件を設定する」ものであり、この「日時」は本願発明の「表示期間」に相当する。
また、本願発明の「施設表示期間設定手段」の「表示制御の対象とする施設を選択し該当する施設を表示させる表示期間を設定する」との構成要件は、当然に「表示制御の対象とする施設」「を選択し該当する施設を表示させる表示期間を設定する」ことも包含している。
したがって、引用発明の「選択条件設定手段」も該「施設表示期間設定手段」の構成要件を満たすものであり、本願発明の「施設表示期間設定手段」に相当すると言える。

ウ.引用発明の「日時測定手段」が取得する「日付」、「時間」および「曜日」は、本願発明の「計時手段」が計時する「年月日」、「時刻」および「曜日」に相当するから、引用発明の「日時測定手段」は本願発明の「計時手段」に相当する。

エ.引用発明において、選択手段により選択された施設情報は、ユーザ側端末のディスプレイに表示されることは明らかであり、その際表示器に供給するためのデータ(例えば、VRAMに蓄積されるビットマップ形式のデータ。以下、「表示用データ」という。)が生成されていることは明らかであり、該「表示用データ」により当該選択された施設情報に基づく施設が表示されるのであるから、該「表示用データ」は本願発明の「表示情報」と同様に「該施設情報に基づく施設を表示するための表示情報」と言えるものである。
一方で、上記選択手段によって選択されなかった施設情報については、当該施設情報に基づく施設は上記表示用データにより上記ディスプレイに表示されないのであるから、上記「表示用データ」は「該施設情報に基づく施設を表示しないための表示情報」とも言えるものである。
そして、該表示がされる施設情報は「前記選択条件設定手段で日時を含む選択条件が設定された施設に対応し、且つ前記日時測定手段で測定した日付、時間および曜日を含む日時が前記選択条件設定手段で設定された当該施設の選択条件としての日時の時間帯である場合に」選択されるものにほかならず、上記表示されない施設情報はその否定、すなわち、「前記選択条件設定手段で日時を含む選択条件が設定された施設に対応」しない、または「前記日時測定手段で測定した日付、時間および曜日を含む日時が前記選択条件設定手段で設定された当該施設の選択条件としての日時の時間帯で」ない施設情報であることは明らかである。
してみると、引用発明も本願発明と同様に、
「前記施設情報取得手段で取得された施設情報が、前記施設表示期間設定手段で設定された施設に対応し、且つ前記計時手段から取得した年月日、時刻および曜日が前記施設表示期間設定手段で設定された施設の表示期間内である場合に、該施設情報に基づく施設を表示するための表示情報を生成するシステム制御手段」を備え、しかも、「前記システム制御手段は、前記施設情報取得手段で取得された施設情報が、前記施設表示期間設定手段で設定された施設に対応しない場合、または前記計時手段から取得した年月日、時刻および曜日が前記施設表示期間設定手段で設定された施設の表示期間内でない場合に、該施設情報に基づく施設を表示しないための表示情報を生成する」
ものであると言える。

オ.また、引用発明の「ディスプレイ」は、本願発明の「施設情報表示手段」に対応付けることができるものであるところ、前者は上記「表示用データ」に基づいて施設情報を表示するものであり、これを「地図上に重ねて」表示するとまでは言えないまでも、「前記システム制御手段で生成された表示情報に基づき施設を」「表示する施設情報表示手段」である点で後者と共通すると言える。

よって、本願発明と引用発明は、次の一致点で一致し、次の各相違点で相違する。

[一致点]
「施設を表す施設情報を取得する施設情報取得手段と、
表示制御の対象とする施設を選択し該当する施設を表示させる表示期間を設定する施設表示期間設定手段と、
年月日、時刻および曜日を計時する計時手段と、
前記施設情報取得手段で取得された施設情報が、前記施設表示期間設定手段で設定された施設に対応し、且つ前記計時手段から取得した年月日、時刻および曜日が前記施設表示期間設定手段で設定された施設の表示期間内である場合に、該施設情報に基づく施設を表示するための表示情報を生成するシステム制御手段と、
前記システム制御手段で生成された表示情報に基づき施設を表示する施設情報表示手段とを備え、
前記システム制御手段は、前記施設情報取得手段で取得された施設情報が、前記施設表示期間設定手段で設定された施設に対応しない場合、または前記計時手段から取得した年月日、時刻および曜日が前記施設表示期間設定手段で設定された施設の表示期間内でない場合に、該施設情報に基づく施設を表示しないための表示情報を生成する
ことを特徴とする施設情報提供装置。」である点。

[相違点]
本願発明の「施設情報表示手段」は、表示対象となる施設を「地図上に重ねて」表示するものであるのに対し、引用発明の「ユーザ側端末のディスプレイ」については、引用文献1にはそのような記載がない点。

(2)判断
上記相違点について検討すると、上記3.(2)で認定したとおり、施設を地図に重ねて表示することは、施設情報の提供を行う技術の分野において周知の技術であるところ、引用発明も施設情報の提供を行う技術に関するものであり、また、引用文献においても、地図情報を備える旨の記載があり(上記3.(1)(1D))、環境情報及び選択条件として経路情報等の交通情報を使用することも想定している(上記3.(1)(1D)(1F)等)ことから、施設情報に併せて地図の表示も行うことの動機も示唆されているといえる。
したがって、当該周知技術を引用発明において採用することにより、ユーザ側端末(施設情報表示手段)において施設情報を「地図上に重ねて」表示するように構成することは、当業者が容易に想到しえたものである。
そして、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から普通に予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明できたものである。


5.審尋に対する回答書における補正案について
(1)請求人は、平成24年4月6日付けでなされた審尋に対する平成24年6月8日付け回答書において、本願発明の「該施設情報に基づく施設を表示するための表示情報を生成」及び「該施設情報に基づく施設を表示しないための表示情報を生成」を、それぞれ「施設情報表示フラグをONに設定」及び「施設情報表示フラグをOFFに設定」と補正する主旨の補正案を提示している。
仮に、当該補正案が意図するように、本願発明の「該施設情報に基づく施設を表示するための表示情報を生成」すること及び「該施設情報に基づく施設を表示しないための表示情報を生成」することが、それぞれ「施設情報表示フラグをONに設定」すること及び「施設情報表示フラグをOFFに設定」することを意味するものであるとした場合、本願発明の進歩性について検討すると、次のとおりである。

(2)本願の出願前に既に公知である以下の参考文献には、関連する図面と共に、以下に引用する事項が記載されている。(下線は当審付与。)

参考文献2:特開2004-21548号公報(平成16年1月22日公開)
内容:
(3A)「【請求項1】
登録された施設、店舗あるいは移動体に対応するアイコンを地図上に表示し、前記アイコンを選択することにより前記施設、前記店舗あるいは前記移動体のホームページが表示される表示装置を備えた情報提供システムであって、前記アイコンは、前記施設、前記店舗あるいは前記移動体のリアルタイム情報を含んで表示されることを特徴とするリアルタイム情報を用いた情報提供システム。」

(3B)「【0032】
リアルタイム情報提供サイト計算機システム100の施設データベース18は、全国の施設の情報に関するデータベースである。図3は、施設データベース18のデータ構成図を示す。施設データは、施設データ毎に名称、施設ID、住所、都道府県コード、市区町村コード、緯度、経度、アイコン画像コード、アイコンパラメータ、最終更新時刻、URL、画像ファイル、音声ファイル、非表示コード、からなるデータと、アイコン画像コードと各アイコンの説明(営業中か休業中か、混雑か空きありかなど)とアイコンファイルからなるデータを記憶している。ここで、名称は、施設の名称を意味し、施設IDは施設のIDを意味し、住所は施設の所在地を意味しており、緯度経度のデータと対応している。都道府県コードは都道府県のコードを意味し、市区町村コードは市区町村のコードを意味し、緯度は施設の座標を意味し、アイコンの表示座標と対応している。経度は、施設の座標を意味し、アイコンの表示座標と対応している。アイコン画像コードはアイコン画像テーブルの対応コードを意味している。アイコンパラメータはアイコンの表示状態に対応するコード、すなわちサイズや表現方法に対応するコードを意味している。最終更新時刻はリアルタイムデータの最終更新時刻を意味する。URLはアイコンをクリックしたときにジャンプするリンク先を意味する。画像ファイルはアイコンをクリックしたときに呼び出されるファイル名を意味する。音声ファイルはアイコンをクリックしたときに呼び出されるファイル名を意味する。非表示コードは施設アイコンを表示するか否かを決定するコードを意味する。」

(3C)「【0073】
図22(b)は施設表示判定処理のフローチャートである。パラメータ値取得し(ステップST97)、rnがraより大きいかどうか判断する(ステップST98)。大きい場合は、次のステップに移る。小さい場合、施設情報非表示警告を送信する(ステップST99)。次に、非表示フラグがあるかどうかを判断する(ステップST100)。非表示フラグがない場合、非表示フラグを立て(ステップST101)、次のステップに移る。もし、非表示フラグがある場合、パラメータ値を非表示に設定し(ステップST102)、次のステップに移る。」

(3D)

(【図3】)

参考文献3: 特開2004-102928号公報(平成16年4月2日公開)
内容:
(4A)「【請求項1】
通知ゾーンとこれに関連づけられた1以上の検索対象地域とを記憶した検索設定記憶手段と、
利用者の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段で検出した現在位置が前記通知ゾーン内にあると判定された場合に、その通知ゾーンに関連づけられた前記各検索対象地域内の施設群から、前記利用者が登録した用件を実行できる施設を検索する関連地域検索手段と、
前記関連地域検索手段により、前記通知ゾーンに関連づけられた前記各検索対象地域内の施設群から、前記利用者が登録した用件を実行できる施設が検索された場合に、その検索結果に応じた提示情報を提示する提示手段と、
を備える記憶補助装置。」

(4B)『【0030】
図6は、データ管理部20に登録された店舗/施設データ206の内容の一例を示したものである。この店舗/施設データ206は、各店舗(又は施設)ごとに、「店舗/施設タイプ」、「名称」、「場所」、「位置」、「登録日」、「行為」、「目的/対象」、「定休日」、「営業時間」、「電話」、「メモ」、「表示」の各項目を含んでいる。「店舗/施設タイプ」は、当該店舗又は施設の種類である。「名称」は当該店舗又は施設の名称である。「場所」は、当該店舗又は施設の位置する地区の名称である。店舗又は施設が位置する地区は、該地区の行政区画名や最寄り駅などで表すことができる。「位置」は当該店舗又は施設の経緯情報である。「登録日」は当該店舗又は施設に関する情報が登録された日付である。「行為」は、当該店舗又は施設で実行可能な行為のタイプである。1つの店舗又は施設で複数の行為が実行できる場合は、それら複数の行為タイプが列挙される。「目的/対象」は、当該店舗又は施設で実行される行為の目的又は対象となる物や事柄である。これら「行為」及び「目的/対象」は、用件データにおける「行為タイプ」及び「目的/対象」に対応するものである。すなわち、用件に適合する店舗/施設を検索する場合には、用件の行為タイプ及び目的/対象に合致する「行為」及び「目的/対象」が登録された店舗/施設を検索することになる。「定休日」、「営業時間」、及び「電話」、当該店舗又は施設の定休日や営業時間、電話番号をそれぞれ示す。「メモ」は、当該店舗又は施設に対して当該利用者が付したメモであり、ここではそのメモ内容が記憶されたメモリアドレスが登録されている。「表示」は、検索結果等のマップにおいて、その店舗又は施設を表示するか否かを示すフラグである。』

(4C)

(【図6】)

(3)上記参考文献2及び3の記載から、施設情報の提供を行う技術分野における本願出願時の周知技術として、以下の技術が把握される。

「施設毎に設定したフラグに基づいて、表示または非表示の制御を行う技術。」

(4)してみると、上記補正案の如く「施設情報表示フラグをONに設定」すること及び「施設情報表示フラグをOFFに設定」する構成が本願の請求項1において限定されたと仮定しても、当該構成を採用したことをもって格別のものとすることはできない。
また、この場合の本願発明の奏する作用効果についても、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から普通に予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということもできない。


6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-11 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-01 
出願番号 特願2005-321240(P2005-321240)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 誠  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
石井 茂和
発明の名称 施設情報提供装置およびカーナビゲーション装置  
代理人 田澤 英昭  
代理人 濱田 初音  

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