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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01L
管理番号 1266257
審判番号 不服2011-2537  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-03 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2004-529204「増幅器フィードバック経路に容量性圧力センサを備えた圧力測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日国際公開、WO2004/017036、平成17年11月24日国内公表、特表2005-535900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年7月28日にした国際出願(優先権主張:2002年8月16日、米国)であって、特許請求の範囲について、平成21年6月4日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成22年9月29日付け(送達:同年10月6日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項6を、次のとおり補正するものである。

(本件補正前)
「励起クロックと制御出力を提供するデジタル式クロック回路と、
前記制御出力で制御される第1のスイッチと、第1増幅器と、産業プロセスに流体接続が可能であって、前記第1増幅器の出力端と入力端の間の増幅器フィードバック経路に接続された第1の圧力検出用キャパシタンスを有する容量性圧力変換器とで構成されており、前記第1のスイッチが第1の圧力検出用キャパシタンスの両端に接続され、前記第1増幅器が圧力を表す出力を提供する第1の積分器と、
前記圧力に対しては非感応であって、前記励起クロックと前記第1増幅器の入力との間に接続されている第1の基準キャパシタンスと、
第1の基準電位を提供する可変電位回路と、
第1増幅器の出力および前記第1の基準電位を入力して、圧力を表す加算器出力を提供する加算回路とを備えた圧力測定装置。」

(本件補正後)
「矩形波信号である励起クロックと制御出力を提供するデジタル式クロック回路と、
前記制御出力で制御される第1のスイッチと、第1増幅器と、産業プロセスに流体接続が可能であって、前記第1増幅器の出力端と入力端の間の増幅器フィードバック経路に接続された第1の圧力検出用キャパシタンスを有する容量性圧力変換器とで構成されており、前記第1のスイッチが第1の圧力検出用キャパシタンスの両端に接続され、前記第1増幅器が圧力を表す出力を提供する第1の積分器と、
前記圧力に対しては非感応であって、前記励起クロックと前記第1増幅器の入力との間に接続されている第1の基準キャパシタンスと、
第1の基準電位を提供する可変電位回路と、
第1増幅器の出力および前記第1の基準電位を入力して、圧力を表す加算器出力を提供する加算回路とを備えた圧力測定装置。」(下線は補正箇所。)

この補正は、請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項である「励起クロックと制御出力」について、「矩形波信号である」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項6に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平8-327677号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1-1)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、検出対象の物理量の変化を静電容量の変化で検出する容量型センサの検出回路および検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】圧力、加速度等の物理量の変化を静電容量値の変動としてとらえる容量型のセンサにおいては、一般に、その容量は入力される力学量に反比例して変化することが多い。一方、通常の制御系では、入力される力学量に比例する出力が得られると便利であることが多い。」

(1-2)
「【0021】
【実施例】図面を参照して、本発明の実施例を以下に説明する。
【0022】
【実施例1】図1は、本発明の一実施例の構成を説明する図である。図2は、図1の各信号の動作タイミングを示す図である。
【0023】図1において、11は加速度、圧力等の力学的なエネルギーによって容量Csが可変するセンサ容量を、12は基準容量Crを示している。
【0024】図1に示すように、本実施例に係る容量検出回路は、スイッチトキャパシタ回路15と、第1、第2のサンプル&ホールド回路(「サンプルホールド回路」という)16、17、差動増幅回路18から構成され、容量検出回路にはセンサを駆動するセンサ駆動回路(不図示)、及びタイミング制御のためのクロック発生回路等ロジック回路(不図示)に接続される。第1、第2のサンプルホールド回路16、17はサンプリングクロックφS1、φS2をそれぞれ入力とするスイッチングトランジスタと電荷を保持するための容量とから構成されている。
【0025】差動増幅回路18は、第1、第2のサンプルホールド回路16、17の保持電圧それぞれ非反転入力端に入力する第1、第2のオペアンプ(演算増幅器)18a、18bと、第1、第2のオペアンプ18a、18bの出力の差電圧を出力信号として出力するための引算回路を構成する第3のオペアンプ18cと、電源電圧を分圧した所定の電圧を第3のオペアンプ18cに供給するボルテージフォロワ構成の第4のオペアンプ18dとから構成されている。なお、第1、第2のオペアンプ18a、18bの帰還路上の節点p、qは抵抗値Rの所定倍aの抵抗値a×Rを有する抵抗を介して接続され、節点pと節点q間の電位差に等しい電圧が第3のオペアンプ18cを介して出力信号として出力される。なお、第4のオペアンプ18dは第3のオペアンプの入力オフセット電圧を補償・調整するためのものである。
【0026】図2を参照して、本実施例の容量検出回路の動作を以下に説明する。
【0027】時刻t=t0の時、リセット信号φGはハイレベルとなり、スイッチトキャパシタ回路15の帰還路に挿入されトランスファゲートとして作用するスイッチングトランジスタ13が導通状態となり、スイッチトキャパシタ回路15の出力SCOUTの電圧Vscoutは、基準電圧Vrにオペアンプ14のオフセット電圧(入力オフセット電圧)Voffを加算した電圧となる。すなわち、出力電圧Vscouは次式(1)で与えられる。
【0028】Vscout=Vr+Voff …(1)
【0029】次に、リセット信号φGがハイレベルからローレベルに切り替わり、スイッチトキャパシタ回路15の帰還路を構成するスイッチングトランジスタ13が非導通状態(開放)となる。この時、スイッチングトランジスタ13からオペアンプ14の入力端側へ蓄積電荷Qdが放出され、スイッチトキャパシタ回路15の出力電圧Vscoutは次式(2)で与えられる。
【0030】Vscout=Vr+Voff+Vd …(2)
【0031】但し、電圧Vdは蓄積電荷Qd、センサ容量Csについて次式(3)で与えられる。
【0032】Vd=Qd/Cs …(3)
【0033】次に、時刻t=t1の時、容量12の一端に入力される駆動パルス信号φR(振幅Vp)によってセンサを構成する容量12(容量値はCr)から次式(4)で与えられる電荷が放出される。
【0034】Qo=Cr×Vp …(4)
【0035】この電荷Qoによってスイッチトキャパシタ回路15からは次式(5)で与えられる出力電圧Vscoutが得られ、この出力電圧が第1のサンプルホールド回路16にて保持(ホールド)される。
【0036】
Vscout=-(Cr×Vp)/Cs+Vr+Voff+Vd=VSH1 …(5)
【0037】次に、時刻t=t2の時(駆動パルス信号φR時はこの後ハイレベルからローレベルに遷移する)、前述した時刻t=t0の時と同様にしてスイッチトキャパシタ回路15はリセットされる。
【0038】時刻t=t3ではセンサの駆動パルス信号φRが、時刻t=t1の時と逆相であるため、スイッチトキャパシタ回路15の出力電圧Vscoutは次式(6)で与えられる。
【0039】
Vscout=(Cr×Vp)/Cs+Vr+Voff+Vd=VSH2 …(6)
【0040】そして、この出力電圧は第2サンプルホールド回路17で保持される。
【0041】差動増幅回路(引算回路)18は第1及び第2サンプルホールド回路から出力された信号の差を増幅する構成とされ、差動増幅回路18の出力Voutは次のようになる。
【0042】
Vout=VSH2-VSH1=2Cr×Vp/Cs …(7)
【0043】上式(7)から分かるように、本実施例の回路構成を用いることによって、スイッチトキャパシタ回路15を構成するオペアンプのオフセット電圧やスイッチングトランジスタ13の電荷の影響を完全に除去することができる。そして、センサ容量Csと基準容量Crの容量比(Cr/Cs)に比例した信号が出力Voutとして出力される。
【0044】図3は、図2に示すタイミングを発生するクロック生成回路の構成の一例を示す図である。図3を参照して、発振器(OSC)21から供給されるクロックを第1のカウンタ22と第2のカウンタ23とにより所定の周波数に分周し、シフトレジスタ24からの出力に対し適宜論理演算を施すことによって、図2に示したように、所定のタイミングでリセット信号φG、駆動パルス信号φR、サンプルホールド制御信号φS1、φS2をそれぞれ発生することができる。」

(1-3)
「【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、容量検出回路を構成するアンプのオフセット電圧やスイッチングトランジスタの電荷の影響を除去することが可能な回路構成としたことにより、周囲温度の影響を受けることなく、極めて安定に容量比を検出することが可能とされるという効果を有する。」

上記記載事項(1-1)ないし(1-3)、及び図1、図2、図3より、引用例には、実施例1に係るものとして、次の発明が記載されているものと認められる。

【引用例に記載された発明】
「矩形波信号である駆動パルス信号φR(励起クロックに相当。)とリセット信号φG(制御出力に相当。)を発生(提供に相当。)するクロック生成回路(デジタル式クロック回路に相当。)と、
前記リセット信号φG(制御出力に相当。)で制御されるスイッチングトランジスタ13(第1のスイッチに相当。)と、オペアンプ14(第1増幅器に相当。)と、圧力の変化を静電容量の変動としてとらえることが可能(産業プロセスに流体接続が可能に相当。)であって、前記オペアンプ14(第1増幅器に相当。)の出力端と入力端の間の増幅器フィードバック経路に接続されたセンサ容量Cs11(第1の圧力検出用キャパシタンスに相当。)を有する容量性圧力変換器とで構成されており、前記スイッチングトランジスタ13(第1のスイッチに相当。)がセンサ容量Cs11(第1の圧力検出用キャパシタンスに相当。)の両端に接続され、前記オペアンプ14(第1増幅器に相当。)が圧力(圧力に相当。)を表す出力電圧Vscout(出力に相当。)を提供するスイッチトキャパシタ回路15(第1の積分器に相当。)と、
前記圧力(圧力に相当。)に対しては非感応であって、前記駆動パルス信号φR(励起クロックに相当。)と前記オペアンプ14(第1増幅器に相当。)の入力との間に接続されている基準容量Cr12(第1の基準キャパシタンスに相当。)と、
電源電圧を分圧した所定の電圧(第1の基準電位に相当。)を供給(提供に相当。)する第4のオペアンプ18d(可変電位回路に相当。)と、
オペアンプ14(第1増幅器に相当。)の出力電圧Vscout(出力に相当。)および前記電源電圧を分圧した所定の電圧(第1の基準電位に相当。)を入力して、圧力(圧力に相当。)を表す出力Vout(加算器出力に相当。)を提供する第3のオペアンプ18cにより構成される引算回路(加算回路に相当。)とを備えた圧力の変化を静電容量の変動としてとらえる容量型センサ(圧力測定装置に相当。)。」(以下、「引用例に記載された発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明とを対比する。

引用例に記載された発明における、「駆動パルス信号φR」、「リセット信号φG」、「発生」、「クロック生成回路」は、 それぞれ、
本願補正発明における、「励起クロック」、「制御出力」、「提供」、「デジタル式クロック回路」に相当する。

引用例に記載された発明における、「スイッチングトランジスタ13」、「オペアンプ14」、「圧力の変化を静電容量の変動としてとらえることが可能」、「センサ容量Cs11」、「圧力」、「出力電圧Vscout」、「スイッチトキャパシタ回路15」は、それぞれ、
本願補正発明における、「第1のスイッチ」、「第1増幅器」、「産業プロセスに流体接続が可能」、「第1の圧力検出用キャパシタンス」、「圧力」、「出力」、「第1の積分器」に相当する。

引用例に記載された発明における、「基準容量Cr12」、「電源電圧を分圧した所定の電圧」、「供給」、「第4のオペアンプ18d」、「出力Vout」、「第3のオペアンプ18cにより構成される引算回路」、「圧力の変化を静電容量の変動としてとらえる容量型センサ」は、それぞれ、
本願補正発明における、「第1の基準キャパシタンス」、「第1の基準電位」、「提供」、「可変電位回路」、「加算器出力」、「加算回路」、「圧力測定装置」に相当する。

(4)判断
してみると、本願補正発明は、引用例に記載された発明と実質的に異なるところはない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例に記載された発明から当業者が予測可能なものであって格別のものでもない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし26に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項6に係る発明は次のとおりである。

「励起クロックと制御出力を提供するデジタル式クロック回路と、
前記制御出力で制御される第1のスイッチと、第1増幅器と、産業プロセスに流体接続が可能であって、前記第1増幅器の出力端と入力端の間の増幅器フィードバック経路に接続された第1の圧力検出用キャパシタンスを有する容量性圧力変換器とで構成されており、前記第1のスイッチが第1の圧力検出用キャパシタンスの両端に接続され、前記第1増幅器が圧力を表す出力を提供する第1の積分器と、
前記圧力に対しては非感応であって、前記励起クロックと前記第1増幅器の入力との間に接続されている第1の基準キャパシタンスと、
第1の基準電位を提供する可変電位回路と、
第1増幅器の出力および前記第1の基準電位を入力して、圧力を表す加算器出力を提供する加算回路とを備えた圧力測定装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例記載の事項・引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された事項及び発明は、上記「2.(2)引用例記載の事項・引用例に記載された発明」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から「励起クロックと制御出力」についての限定事項である「矩形波信号である」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比、(4)判断」で説示したとおり引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成23年10月27日付け回答書において、特許請求の範囲の補正案を提示し、その請求項1及び6に、
「前記第1の圧力検出用キャパシタンスの電荷を間欠的に基準レベルにリセットするため」
なる発明特定事項を付加しているけれども、
かかる事項は、引用例に記載された発明においても、スイッチングトランジスタ13(第1のスイッチに相当。)がセンサ容量Cs11(第1の圧力検出用キャパシタンスに相当。)の両端に接続されることによって、当然に奏される効果にすぎず、格別のものではない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項6に係る発明)は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-18 
結審通知日 2012-06-20 
審決日 2012-07-03 
出願番号 特願2004-529204(P2004-529204)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01L)
P 1 8・ 575- Z (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平櫻井 健太  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
山川 雅也
発明の名称 増幅器フィードバック経路に容量性圧力センサを備えた圧力測定装置  
代理人 田邉 壽二  
代理人 田中 香樹  
代理人 平木 道人  

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