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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1266260
審判番号 不服2011-11117  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-26 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2005- 86181「データ伝送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-278192〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本件出願は、平成17年3月24日(パリ条約による優先権主張2004年3月24日、ドイツ国)の出願であって、平成22年6月14日付け拒絶理由通知に対して平成22年9月15日付けで意見書と手続補正書が提出されたが、平成23年1月24日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として同年5月26日付けで審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年9月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「データバスを用いて通信する加入者間のデータ伝送方法であって、
加入者間のデータテレグラムの交換に対して、伝送サイクル(13)に対して予め定められたサイクル時間(13a)内で、少なくとも1つの第1の時間窓および少なくとも1つの第2の時間窓(11,12)を使用し、
当該第1の時間窓(11)を処理データの伝達に用い、当該第2の時間窓(12)を付加データの伝達に用い、
当該付加データのデータテレグラムに対する送信開始(14)を、前記第2の時間窓(12)の長さの範囲内で変え、
前記付加データのデータテレグラムが伝送のために、前記第2の時間窓(12)内で定められている持続時間より長い持続時間を必要とする場合には、当該付加データのデータテレグラムの長さを、前記第2の時間窓(12)の長さ内に設定し、かつ前記付加データのデータテレグラムを少なくとも2つの伝送サイクル(13)に分ける、
ことを特徴とするデータ伝送方法。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-261605号公報(以下、「引用例」という。)には、「通信システムおよび通信システムにおけるデータ伝送方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0002】
【従来の技術】従来、図5に示すようなマスタ局(ST#0)510および複数のスレーブ局(ST#1?ST#N)511?51Nを伝送路550を介して接続した通信システムにおいて行われるデータ伝送方法として、例えば以下に説明するようなものがある。マスタ局510側では、固有に定められた伝送サイクルの周期にしたがって、同期フレームを伝送路550を介して複数のスレーブ局511?51Nに同報送信し、一方、スレーブ局511?51N側では、マスタ局510の同期フレームの受信タイミングを基準として予め設定されている時間経過の時点でデータを送出する。すなわち、各スレーブ局511?51Nが異なるタイミングでデータを送出して、マスタ局510および複数のスレーブ局511?51N間のデータ送受信を行うので、伝送路550上でのデータ競合を起こすことなく、また、送出動作が平均化されて行われるためにデータ送受信の処理負荷に偏りが少ない等の特徴を有している。
【0003】このような通信システムを、例えばFAシステム等の分野に適用する場合には、複数のスレーブ局511?51Nの各局はそれぞれ制御対象を含むか或いは接続して、該制御対象に対して定期的に発生する入出力処理データ(制御データ)を、マスタ局510および複数のスレーブ局511?51N間で送受信している。このように、スレーブ局511?51Nがマスタ局510からの同期フレームを受信して入出力処理を行う制御データ伝送では、伝送サイクルにおいて伝送を行う期間と入出力処理を行う期間とは分離され、入出力処理を行う期間に伝送は行われていなかった。」(2頁2欄?3頁3欄)

イ.「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の通信システムおよび該通信システムにおけるデータ伝送方法にあっては、伝送サイクルにおいてデータ伝送期間と入出力処理期間とが分離されて入出力処理期間にデータ伝送を行っていないためデータ伝送効率が低下し、またスレーブ局の接続可能数或いは伝送サイクルの周期が制限されるという問題があった。また、制御データと多重化したイベントデータとを併せて1つの電文として伝送していたため、イベントデータの多重化処理を伝送サイクル毎に行う必要があり処理負荷がかかるという問題点もあった。本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、不定期的に発生する低優先度データ(イベントデータ等)の伝送を効率良く行い、また、定期的に発生する高優先度データ(制御データ等)に低優先度データを多重化させる多重化処理の頻度を軽減した通信システムおよび通信システムにおけるデータ伝送方法を提供することを目的としている。」(3頁4欄)

ウ.「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の通信システムおよび通信システムにおけるデータ伝送方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る通信システムの構成図である。なお、本実施形態では、FAシステム等の分野に適用する事例を示し、マスタ局には計算機が、複数のスレーブ局の各局にはそれぞれ制御対象が接続された構成を示しているが、本発明の適用はこの構成に限定されるものではない。また、同図は1階層のネットワーク構成となっているが、複数段の階層を備えた階層構造のネットワークシステムにおいて、各階層ネットワークのマスタ局およびスレーブ局の関係を持つ各局に適用することも可能である。図1において、本実施形態の通信システムは、計算機100に接続されているマスタ局(ST#0)110、並びに、それぞれ制御対象101?10Nに接続されている複数のスレーブ局(ST#1?ST#N)111?11Nを備え、これらが伝送路150を介して接続され、マスタ局110およびスレーブ局111?11N間でポーリングセレクティング方式で制御伝送が行われる通信システムである。ここで、ST#0,ST#1?ST#Nはマスタ局およびスレーブ局の番号を表す。
【0013】マスタ局(ST#0)110は、通信制御部121、入出力制御部122、高優先度データ送受信バッファ123および低優先度データ送受信バッファ124を備えて構成されている。なお、図中、CD01?CD04は定期的に発生する高優先度データ(制御データ)であり、ED01?ED04は不定期的に発生する低優先度データ(イベントデータ)である。また、マスタ局110の通信制御部121は、制御部131、同期フレーム送信部132、高優先度データ送受信部133、低優先度データ送受信部134、周期タイマ135、監視タイマ136および送信権管理部137を備えた構成となっている。また、スレーブ局(ST#1?ST#N)111?11Nは、それぞれ通信制御部125、入出力制御部126、高優先度データ送受信バッファ127および低優先度データ送受信バッファ128を備えて構成されている。なお、図中、CD11?CD14は高優先度データ(制御データ)であり、ED11?ED14は低優先度データ(イベントデータ)である。また、各スレーブ局111?11Nの通信制御部125は、制御部141、同期フレーム受信部142、高優先度データ送受信部143および低優先度データ送受信部144を備えた構成となっている。
【0014】次に、本実施形態の特徴的な構成要素の機能について説明する。なお、以下の説明では、定期的に発生する高優先度データを制御データとし、不定期的に発生する低優先度データをイベントデータとして表記する。したがって、高優先度データを伝送するフェーズは制御データ伝送フェーズであり、低優先度データを伝送するフェーズはイベントデータ伝送フェーズとなる。まずマスタ局110において、制御部131は、同期フレーム送信部132、高優先度データ送受信部133、低優先度データ送受信部134、周期タイマ135、監視タイマ136および送信権管理部137の各構成要素の制御を司る。また、周期タイマ135は、当該通信システムにおける伝送サイクルの周期を規定する周期規定手段として機能し、同期フレーム送信時に起動され、固定周期の伝送サイクルを刻む。また、監視タイマ136は、起動およびタイムアップにより伝送サイクルの周期内の所定期間を、イベントデータを伝送するイベントデータ伝送フェーズとして規定する。なお、本実施形態では、同期フレーム送信時に起動されイベントデータ送信終了後にタイムアップするが、このイベントデータ伝送フェーズの間に、スレーブ局111?11Nの入出力制御部126による同期制御処理がなされるようになっている。また、送信権管理部137は、同時にマスタ局110およびスレーブ局111?11Nの内の一つの局のみに与えられるイベントデータの送信権を管理する低優先度データ送信権管理手段として機能する。」(5頁7?8欄)

エ.「【0017】次に、本実施形態の通信システムにおけるデータ伝送方法について図2を参照して説明する。図2は本実施形態の通信システムにおけるデータ伝送を例示するタイムチャートである。なお、図2では、上側にマスタ局(ST#0)110から伝送路150上に送出されるフレームデータが表記され、下側にはスレーブ局(ST#1?ST#N)111?11Nから伝送路550上に送出されるフレームデータが表記されている。また、上述のように、伝送サイクルはマスタ局110の周期タイマ135によって固定周期に規定され、その伝送サイクルの前半の一定期間が監視タイマ136によりイベントデータ伝送フェーズとして規定され、残り後半の期間が制御データ伝送フェーズとなっている。また、図2では、イベントデータの送信局は伝送サイクル当たり1局に限定されている。また、図中、フレームデータ中の「ST#1,ST#j,ST#N」はスレーブ局の番号を表し、図2はスレーブ局ST#jにイベントデータ送信権が与えられている伝送サイクルを例示している。さらに図2中において、「同期」は同期フレームを、「T」はイベントデータ送信権を、「C」はマスタ局110からのスレーブ用伝送コマンドを、「R」はスレーブ局111?11Nからのスレーブ用伝送データ(レスポンス)を、「H」は制御データを、「L」はイベントデータをそれぞれ表す。
【0018】まず、イベントデータ伝送フェーズでは、同期フレーム送信ステップにおいては、イベントデータ送信権Tを含む同期フレームを、マスタ局110から複数のスレーブ局111?11Nに同報送信すると共に、監視タイマ136を起動する。そして、同期フレーム受信ステップでは、各スレーブ局111?11Nが該同期フレームを受信する。次に、低優先度データ送受信ステップでは、マスタ局110は、イベントデータ送信権が自局にある場合は送信先を指定してイベントデータLを送信し、イベントデータ送信権が他局にある場合は該他局からの自局宛イベントデータLを待って受信し、他方、スレーブ局111?11Nは、イベントデータ送信権が自局にある場合(スレーブ局ST#j)は送信先を直接指定してイベントデータLを送信し、イベントデータ送信権が他局にある場合(ST#j以外のスレーブ局)またはイベントデータLの送信完了後は当該スレーブ局宛のデータを待って受信する。また、この期間中に、各スレーブ局111?11Nの制御部141は、入出力制御部126に対して同期割り込みSI1をかけ、入出力制御部126に同期制御を実行させる。さらに、監視タイマ136がタイムアウトすると、イベントデータ伝送フェーズから制御データ伝送フェーズに移行して、高優先度データ送受信ステップにおいて、マスタ局110と複数のスレーブ局111?11N間で、定期的に発生する制御データHを、従来通りのポーリングセレクティング方式により、各スレーブ(ST#1?ST#N)用チャネルを用いてサイクリックに送受信する。」(6頁9?10欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記引用例記載のデータ伝送方法は、伝送路150を介して接続されたマスタ局および複数のスレーブ局間で行われ(摘記事項ウの段落【0012】)、上記マスタ局および複数のスレーブ局間のフレームデータの送受信に対して、伝送サイクルの固定周期内で、制御データ伝送フェーズおよびイベントデータ伝送フェーズを使用し、当該制御データ伝送フェーズを制御データの伝送に用い、当該イベントデータ伝送フェーズをイベントデータの伝送に用いるから(摘記事項エの段落【0017】-【0018】および【図2】)、

上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「伝送路150を介して通信するマスタ局および複数のスレーブ局間のデータ伝送方法であって、
マスタ局および複数のスレーブ局間のフレームデータの送受信に対して、伝送サイクルの固定周期内で、制御データ伝送フェーズおよびイベントデータ伝送フェーズを使用し、
当該制御データ伝送フェーズを制御データの伝送に用い、当該イベントデータ伝送フェーズをイベントデータの伝送に用いるデータ伝送方法。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
a.引用発明の「伝送路150」は、マスタ局および複数のスレーブ局間で共有して使用されるデータ伝送路であるから、本願発明の「データバス」に相当する。
b.引用発明の「マスタ局および複数のスレーブ局」は、明らかに本願発明の「加入者」に含まれる。
c.引用発明の「フレームデータ」は、データの送信単位であって、明らかに本願発明の「データテレグラム」に相当し、また、引用発明の「送受信」は本願発明の「交換」に相当する。
d.引用発明の「固定周期」について、「伝送サイクルはマスタ局110の周期タイマ135によって固定周期に規定され」(摘記事項エの段落【0017】)と記載されているから、「予め定められた」時間であることは明白であって、本願発明の「予め定められたサイクル時間(13a)」に相当する。
e.引用発明の「制御データ」と本願発明の「処理データ」について対比するに、
引用発明の「制御データ」は「定期的に発生する高優先度データ」(摘記事項イの段落【0007】)であり、一方、本願発明の「処理データ」について「処理データは通常は時間臨界的なデータであり」(明細書の段落【0008】)と記載されており、該「時間臨界的なデータ」が高優先度のデータであることは明らかであるから、両者は「高優先度データ」である点で共通する。
f.引用発明の「イベントデータ」と本願発明の「付加データ」について対比するに、
引用発明の「イベントデータ」は「不定期的に発生する低優先度データ」(摘記事項イの段落【0007】)であり、一方、本願発明の「付加データ」について「付加データは例えばコンフィギュレーションデータ等の、より時間臨界的でないデータを含んでいる。」(明細書の段落【0008】)と記載されており、該「より時間臨界的でないデータ」が低優先度のデータであることは明らかであるから、両者は「低優先度データ」である点で共通する。
g.引用発明の「制御データ伝送フェーズ」、「イベントデータ伝送フェーズ」は、「その伝送サイクルの前半の一定期間が監視タイマ136によりイベントデータ伝送フェーズとして規定され、残り後半の期間が制御データ伝送フェーズとなっている。」(摘記事項エの段落【0017】)の記載から、一定の長さの時間枠を意味することは明白であって、それぞれ本願発明の「第1の時間窓(11)」、「第2の時間窓(12)」に相当する。
h.引用発明の「伝送」と本願発明の「伝達」が同義であることは明らかである。

以上を総合すると、両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「データバスを用いて通信する加入者間のデータ伝送方法であって、
加入者間のデータテレグラムの交換に対して、伝送サイクルに対して予め定められたサイクル時間内で、少なくとも1つの第1の時間窓および少なくとも1つの第2の時間窓を使用し、
当該第1の時間窓を高優先度データの伝達に用い、当該第2の時間窓を低優先度データの伝達に用いるデータ伝送方法。」

(相違点1)
「高優先度データ」が、本願発明では「処理データ」であるのに対し、引用発明では「制御データ」である点。
(相違点2)
「低優先度データ」が、本願発明では「付加データ」であるのに対し、引用発明では「イベントデータ」である点。
(相違点3)
本願発明が、
「当該付加データのデータテレグラムに対する送信開始(14)を、前記第2の時間窓(12)の長さの範囲内で変え」る処理を行うのに対し、
引用発明では、イベントデータの送信に関してこのような処理を行うか否かは不明である点。
(相違点4)
本願発明が、
「前記付加データのデータテレグラムが伝送のために、前記第2の時間窓(12)内で定められている持続時間より長い持続時間を必要とする場合には、当該付加データのデータテレグラムの長さを、前記第2の時間窓(12)の長さ内に設定し、かつ前記付加データのデータテレグラムを少なくとも2つの伝送サイクル(13)に分ける」処理を行うのに対し、
引用発明では、イベントデータの送信に関してこのような処理を行うか否かは不明である点。

4.検討
上記相違点につき検討する。

(相違点1)について
引用例には、通信システムをFAシステム等の分野に適用する場合の「制御データ」について、「複数のスレーブ局511?51Nの各局はそれぞれ制御対象を含むか或いは接続して、該制御対象に対して定期的に発生する入出力処理データ(制御データ)を、マスタ局510および複数のスレーブ局511?51N間で送受信している。」(摘記事項アの段落【0003】)と記載されているが、該記載中の「定期的に発生する入出力処理データ」が本願発明の「処理データ」に相当することは明らかであって、また、上記「制御データ」が、制御対象を制御するために処理されることも当然であるから、引用発明の「制御データ」を本願発明のように「処理データ」とすることは、上記引用例の記載に基づいて当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2)について
本願発明の「付加データ」に関し、本願明細書には、「非巡回的な付加データに対する1500バイトのテレグラム持続時間が設けられることを想定すると」(段落【0005】)、「処理データは通常は時間臨界的なデータであり、付加データは例えばコンフィギュレーションデータ等の、より時間臨界的でないデータを含んでいる。」(段落【0008】)と記載されているから、巡回的で時間臨界的な「処理データ」以外の「付加的な」データを意味するものと解すことができる。
一方、引用発明の「イベントデータ」は「不定期的に発生する低優先度データ」(摘記事項イの段落【0007】)であるが、引用発明の「制御データ」が「定期的に発生する高優先度データ」(摘記事項イの段落【0007】)であること、さらには、マスタ局及び複数のスレーブ局の各々の送受信バッファが高優先度データ送受信バッファと低優先度送受信バッファとから構成されていること、を勘案すると、引用発明における「イベントデータ」は、「制御データ」以外の「付加的な」データと言いうるものである。
とすると、引用発明の「イベントデータ」と本願発明の「付加データ」との間に格別の差異は無い。

(相違点3)について
まず、上記「(相違点2)について」に記したように、引用発明の「イベントデータ」と本願発明の「付加データ」との間に格別の差異は無く、引用発明の「イベントデータ」は本願発明の「付加データ」に相当するものである。
そして、引用例に「送信権管理部137は、同時にマスタ局110およびスレーブ局111?11Nの内の一つの局のみに与えられるイベントデータの送信権を管理する低優先度データ送信権管理手段として機能する。」(摘記事項ウの段落【0014】)、「また、図2では、イベントデータの送信局は伝送サイクル当たり1局に限定されている。・・・(中略)・・・図2はスレーブ局ST#jにイベントデータ送信権が与えられている伝送サイクルを例示している。」(摘記事項エの段落【0017】)の記載によれば、引用発明の「イベントデータ」の送信権は、伝送サイクル当たり1局に限定されている。さらに、引用発明の「イベントデータ」は「不定期的に発生する低優先度データ」(摘記事項イの段落【0007】)であることも勘案すれば、該「イベントデータ」の送信権を付与された局が、伝送サイクルのイベントデータ伝送フェーズ内のどの時点で送信を開始するかは、イベントの発生状況やその優先度に応じて当業者が適宜決定すべきものである。
とすると、本願発明のように、「当該付加データのデータテレグラムに対する送信開始(14)を、前記第2の時間窓(12)の長さの範囲内で変え」ることも、当業者が適宜なし得たものである。

(相違点4)について
まず、上記「(相違点2)について」に記したように、引用発明の「イベントデータ」は本願発明の「付加データ」に相当するものである。
そして、原査定において周知例として引用された特開2003-8579号公報に、「送信されるデータのサイズはIEEE1394の仕様により、1パケット当たり最大512バイトとすることができる。送信要求されたパケットが512バイトよりも大きかったとき、このIEEE1394の仕様に合わせて、分割/組立が行われる。分割されたパケットは複数の通信サイクルに跨って送信しても良いし、1つの通信サイクルの中で連続したパケットとして送信することもできる。」(段落【0106】)と記載されているように、通信サイクルにしたがってパケットを伝送するデータ伝送方法において、大きなサイズのパケットを分割して複数の通信サイクルで伝送することは周知の伝送方法に過ぎない。
ここで、引用発明の「イベントデータ」の伝送方法について検討するに、「イベントデータ」のサイズがイベントデータ伝送フェーズ内で送信できるサイズを超えた場合、「イベントデータ」を分割して複数の伝送サイクルで送信することは、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
すなわち、引用発明の「付加データ」であるイベントデータの伝送について、本願発明のように、「前記付加データのデータテレグラムが伝送のために、前記第2の時間窓(12)内で定められている持続時間より長い持続時間を必要とする場合には、当該付加データのデータテレグラムの長さを、前記第2の時間窓(12)の長さ内に設定し、かつ前記付加データのデータテレグラムを少なくとも2つの伝送サイクル(13)に分ける」処理を行うことは、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明および周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-15 
結審通知日 2012-06-21 
審決日 2012-07-03 
出願番号 特願2005-86181(P2005-86181)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 努  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 神谷 健一
新川 圭二
発明の名称 データ伝送方法  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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