• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1266281
審判番号 不服2011-23750  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-04 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2007-188982「エレベータの群管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開、特開2007-261819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件出願は、平成17年3月23日(以下、「原出願日」という。)に出願した特願2005-82906号の一部を平成19年7月20日に新たな出願としたものであって、平成20年11月26日付けで明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成22年11月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成23年1月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年11月4日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされ、その後、当審において平成24年5月29日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成24年8月6日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年11月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年11月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]

[1]本件補正の内容

平成23年11月4日付けの明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年1月21日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし4を下記の(b)に示す請求項1ないし4と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲

「【請求項1】
ビルの複数階床を運行する複数のエレベータかごを制御するエレベータの群管理システムにおいて、
発生したホール呼びに対して前記複数のエレベータかごのいずれかを割当てる際に、前記エレベータかご毎に前記ホール呼びが割当てられた場合、その時点の前記ビルの交通流に依存する前記エレベータの平均停止数と停止時間とを用いて現時点から前記エレベータかごが前記ビル内を1周運転する周期以上の将来方向時点へ至るまでの横軸が時間、縦軸が前記階床を表す運行軌跡を演算し、
この演算結果により、各前記エレベータかごの予想待ち時間、あるいは各前記かごに対して既に割当てられている全ホール呼び中の予想待ち時間の最大値、で評価して前記ホール呼びに割当てられる前記エレベータかごを決定することを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記運行軌跡は、各前記エレベータかごに対して階床毎の到着予測時間を計算し、前記到着予測時間を将来の時間に対する前記エレベータかごの予想位置とし、時間と予想位置で決まる点を結ぶことで作成されることを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記評価は、各前記エレベータかごの運行軌跡の間隔状態を示す指標として階床位置を位相と見なした位相時間値を求め、該位相時間値を前記運行軌跡が等間隔になるための基準値と比較して行うことを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記運行軌跡は、ホール呼び情報,かご呼び情報,エレベータ各号機の仕様情報,有効台数とその号機名情報,有効なサービス階床情報,仮割当て情報を用いて演算されることを特徴とするエレベータの群管理システム。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲

「【請求項1】
ビルの複数階床を運行する複数のエレベータかごを制御するエレベータの群管理システムにおいて、
発生したホール呼びに対して前記複数のエレベータかごのいずれかを割当てる際に、前記エレベータかご毎に前記ホール呼びが仮割当てられたとして、前記エレベータが前記ビル内を1周運転する場合の各階に対する平均停止数と停止時間とを用いて現時点から前記エレベータかごが前記ビル内を1周運転する周期以上の将来方向時点へ至るまでの横軸が時間、縦軸が前記階床を表す運行軌跡を作成し、
各前記エレベータかごの予想待ち時間、あるいは各前記かごに対して既に割当てられている全ホール呼び中の予想待ち時間の最大値、の中から最適な評価値となる仮割当かごを前記ホール呼びに割当てられる前記エレベータかごとして選択することを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの群管理システムにおいて、さらに、各前記運行軌跡に対する間隔の状態を前記評価値に加えることを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータの群管理システムにおいて、前記将来方向時点で各エレベータかごが時間的等間隔状態の軌跡となる目標ルートを作成し、各前記運行軌跡に対する間隔の状態は、前記目標ルートと前記運行軌跡との近さを示す指標を評価値とすることを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のいずれかのエレベータの群管理システムにおいて、前記運行軌跡は、ホール呼び情報,かご呼び情報,エレベータ各号機の仕様情報,有効台数とその号機名情報,有効なサービス階床情報,仮割当て情報を用いて演算されることを特徴とするエレベータの群管理システム。」
(なお、下線は審判請求人が補正箇所を示すために付したものである。)

[2]本件補正の適否についての判断

(1)請求項1に関する本件補正について(目的外)

本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項の「その時点の前記ビルの交通流に依存する前記エレベータの平均停止数と停止時間」を「前記エレベータが前記ビル内を1周運転する場合の各階に対する平均停止数と停止時間」と変更することを含むものである。
そうすると、請求項1に関する本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項の「その時点の前記ビルの交通流に依存する」を削除するものであるから、直列的に記載された発明特定事項の一部の削除に該当する。
また、仮に、請求項1に関する本件補正が、直列的に記載された発明特定事項の一部の削除に該当しないとしても、択一的要素の削除、発明特定事項の直列的付加、上位概念から下位概念への変更等に該当しないことは明らかである。
よって、請求項1に関する本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
なお、審判請求人は、平成23年11月4日付けの審判請求書の請求の理由の[本願発明が特許されるべき理由]の(b)補正の根拠において、
「新請求項1に係る補正は明細書の段落0048(第16頁第8?10行目:ここでの平均停止数は、かごがビル内を1周運転する場合の各階に対する平均停止数を表している。)、0029(第8頁第25?26行目:その中から最適な評価値( 最小の評価値) となる仮割当てかごを実際に割当てるかごとして選択する。)、の記載に基づき、
なお、「かごがビル内を1周運転する場合の各階に対する平均停止数」は、「その時点の前記ビルの交通流に依存する前記エレベータの平均停止数」をより具体的にして限縮したものであります。」と主張しているが、
「ビルの交通流」に関して、明細書の段落【0048】において、「その時点の交通流状態によって決まる平均停止数データと停止時間データ」との記載があり、この記載によれば、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項の「その時点の前記ビルの交通流に依存する」は「エレベータの平均停止数と停止時間」を限定する発明特定事項であると解することがごく自然であるので、審判請求人のそのような主張は受け入れられない。
さらに、請求項1に関する本件補正が、同項第1号の請求項の削除、同項第3号の誤記の訂正又は同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正の何れにも該当しないことは明らかである。
したがって、請求項1に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

(2)請求項2に関する本件補正について(目的外)

本件補正は、補正前の請求項2に係る発明の発明特定事項の「前記運行軌跡は、各前記エレベータかごに対して階床毎の到着予測時間を計算し、前記到着予測時間を将来の時間に対する前記エレベータかごの予想位置とし、時間と予想位置で決まる点を結ぶことで作成されること」を「さらに、各前記運行軌跡に対する間隔の状態を前記評価値に加えること」と補正することを含むものである。
そうすると、請求項2に関する本件補正は、補正前の請求項2に係る発明の発明特定事項の「前記運行軌跡は、各前記エレベータかごに対して階床毎の到着予測時間を計算し、前記到着予測時間を将来の時間に対する前記エレベータかごの予想位置とし、時間と予想位置で決まる点を結ぶことで作成されること」を削除するものであるから、直列的に記載された発明特定事項の一部の削除に該当する。
また、仮に、請求項2に関する本件補正が、直列的に記載された発明特定事項の一部の削除に該当しないとしても、択一的要素の削除、発明特定事項の直列的付加、上位概念から下位概念への変更等に該当しないことは明らかである。
よって、請求項2に関する本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
さらに、請求項2に関する本件補正が、同項第1号の請求項の削除、同項第3号の誤記の訂正又は同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正の何れにも該当しないことは明らかである。
したがって、請求項2に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

(3)請求項3に関する本件補正について(目的外)

本件補正は、補正前の請求項3に係る発明の発明特定事項の「前記評価は、各前記エレベータかごの運行軌跡の間隔状態を示す指標として階床位置を位相と見なした位相時間値を求め、該位相時間値を前記運行軌跡が等間隔になるための基準値と比較して行うこと」を「前記将来方向時点で各エレベータかごが時間的等間隔状態の軌跡となる目標ルートを作成し、各前記運行軌跡に対する間隔の状態は、前記目標ルートと前記運行軌跡との近さを示す指標を評価値とすること」と補正することを含むものである。
そうすると、請求項3に関する本件補正は、補正前の請求項3に係る発明の発明特定事項の「前記評価は、各前記エレベータかごの運行軌跡の間隔状態を示す指標として階床位置を位相と見なした位相時間値を求め、該位相時間値を前記運行軌跡が等間隔になるための基準値と比較して行うこと」を削除するものであるから、直列的に記載された発明特定事項の一部の削除に該当する。
また、仮に、請求項3に関する本件補正が、直列的に記載された発明特定事項の一部の削除に該当しないとしても、択一的要素の削除、発明特定事項の直列的付加、上位概念から下位概念への変更等に該当しないことは明らかである。
よって、請求項3に関する本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
さらに、請求項3に関する本件補正が、同項第1号の請求項の削除、同項第3号の誤記の訂正又は同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正の何れにも該当しないことは明らかである。
したがって、請求項3に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

(4)請求項4に関する本件補正について(目的外)

本件補正は、補正前の請求項4における「請求項1に記載のものにおいて、」の記載を、「請求項1ないし3に記載のいずれかのエレベータの群管理システムにおいて、」と補正するものである。
請求項の記載に関して、複数(例えば、3つ)の請求項を引用する形式(多数項引用形式)で記載された請求項は、実質的に複数(例えば、3つ)の請求項を便宜上1つの請求項にまとめて記載されているところであり、本件補正における本件補正後の請求項4においては、対応すると認められる本件補正前の請求項4では「請求項1」のみを引用するものであったのに対し、「請求項1ないし3に記載のいずれか」を引用するものとなっており、引用請求項の数を増加させている。
よって、本件補正における請求項4に関する補正事項は、実質的に請求項の数を増加させるものであって、請求項の削除や特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められず、さらに、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項にも該当するものではない。
したがって、請求項4に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

[3]むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3 本件発明について

1.本件発明

平成23年11月4日付けの特許請求の範囲についての手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成20年11月26日付け及び平成23年1月21日付けの手続補正により補正された明細書及び平成23年1月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された発明

(1)刊行物1の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の原出願日前に頒布された刊行物である特開平2-110088号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「(2)乗場釦が操作されると乗場呼びを登録する乗場呼び登録手段,乗場呼びに対して複数のかごの中からサービスすべきかごを選択して割り当てる割当手段,及びかごの運行方向決定,出発,停止及び戸開閉等の運転制御を行い,かごをかご呼びと上記割当乗場呼びに応答させるかご制御手段を備えた群管理エレベータにおいて,
現時点からかご呼びと割当乗場呼びに順次応答して所定時間経過した後のかご位置とかご方向とをそれぞれ予測演算するかご位置予測手段,及び上記予測かご位置と予測かご方向に基づいて,所定時間経過後の各かごの時間的間隔又は空間的間隔をそれぞれを予測演算するかご間隔予測手段を備え,割当手段は,乗場呼びを各かごに仮に割り当て,この仮割当かごが上記乗場呼びに応答するものと仮定して,かご位置予測手段を用いて所定時間経過後のかご位置とかご方向とを各かごについてそれぞれ予測演算するとともに,上記かご間隔予測手段を用いて所定時間経過後のかご間隔をそれぞれ予測演算する仮割当手段と,この仮割当手段の出力に基づいて正規の割当かごを選択する割当かご選択手段と,上記予測かご間隔によって対応する上記仮割当かごを上記乗場呼びに正規に割り当てられるのを制限する若しくは割当対象から除外する指令を出力する割当制限手段を備えたことを特徴とするエレベータの群管理装置。」(第1ページ右下欄第4行ないし第2ページ左上欄第9行)

b)「〔産業上の利用分野〕
この発明は,複数台のエレベータのかごの中から乗場呼びに対するサービスかごを選択し割り当てたり,呼びに応答させたり,待機させたりするエレベータの群管理装置に関するものである。」(第2ページ左上欄第11ないし15行)

c)「このように長待ちを防止するには,近い将来のかご配置がどうなるのかを考慮し,一時的に待時間が長くなる割当を行ってでも,かごが1か所に集まらないように乗場呼びを割り当てる必要がある。」(第2ページ右下欄第13ないし17行)

d)「この発明は,上記問題点を解決するためになされたもので,時間経過に伴ったかご配置の変化を適確に把握できるようにするとともに,現時点から近い将来にわたって乗場呼びの待時間を短縮することのできるエレベータの群管理装置を提供することを目的とする。」(第3ページ左下欄第20行ないし同ページ右下欄第5行)

e)「〔発明の実施例〕
第1図?第10図は,この発明の一実施例を示す図である。なお,この実施例では12階建ての建物に4台のかごが設置されているものとする。
第1図は全体構成図で,群管理装置(10)とこれによって制御される1号機?4号機用かご制御装置(11)?(14)から構成されている。(10A)は各階の乗場呼び(上り呼び,及び下り呼び)の登録・解消を行うとともに,乗場呼びが登録されてからの経過時間,すなわち継続時間を演算する乗場呼び登録手段,(10B)は各かごが各階の乗場(方向別)に到着するまでに要する時間の予測値,すなわち到着予想時間を演算する到着予想時間演算手段,(10C)は乗場呼びにサービスするのに最良のかごを1台選択して割り当てる割当手段で,乗場呼びの予測待時間と後述する予測かご台数とに基づいて割当演算を行う。(10D)はかごが現時点から所定時間T経過後のかご位置とかご方向とを予測演算するかご位置予測手段,(10E)は上記予測かご位置と予測かご方向に基づいて所定時間T経過後の各かごの時間的間隔又は空間的間隔を予測演算するかご間隔予測手段,(10F)はかごが全ての呼びに答え終わると答え終えた階床もしくは特定階でかごを待機させる待機手段である。」(第4ページ左上欄第12行ないし同ページ右上欄第15行)

f)「次に,この実施例の動作を第3図?第7図を参照しながら説明する。・・・・・中略・・・・・
ステップ(33)?(36)の仮割当評価プログラムでは,新たに乗場呼びCが登録されると,この乗場呼びCを1号機?4号機にそれぞれ仮に割り当ててみて,そのときの割当制限評価値P1?P4と待時間評価値W1?W4とをそれぞれ演算するものである
1号機の仮割当評価プログラム(33)における到着予想時間演算プログラム(33A)では,新たに登録された乗場呼びCを1号機に仮に割り当てたときの各乗場i(i=1,2,3,・・・,11は,それぞれB2,Bl,1,・・・9階の上り方向乗場,i=12,13,・・・21,22,は,それぞれ10,9,・・・,1,B1階の下り方向乗場を表す)への到着予想時間Aj(i)をかごj(j=1,2,3,4)毎に演算する。到着予想時間は,例えばかごが1階床進むのに2秒,1停止するのに10秒を要するものとし,かごが全乗場を順に一周運転するものとして演算される。又,無方向のかごは,かご位置階から各乗場に直行するものとして到着予想時間を演算する。なお,到着予想時間の演算は周知のものである。
ステップ(33B)のかご位置予測プログラムでは上記新規乗場呼びCを1号機に仮に割り当てたときの,1号機?4号機の所定時間T経過後の予測かご位置F1(T)?F4(T)と予測かご方向D1(T)?D4(T)を各かごについてそれぞれ予測演算する。」(第4ページ左下欄第20行ないし第5ページ右上欄第3行)

g)「このようにして,ステップ(51)で1号機に対する予測かご位置F1(T)と予測かご方向D1(T)を演算するが,2号機?4号機に対する予測かご位置F2(T)?F4(T),及び予測かご方向D2(T)?D4(T)もステップ(51)と同じ手順からなるステップ(52)?(54)でそれぞれ演算される。
再び第3図において,ステップ(33C)のかご間隔予測プログラムでは,上記新規乗場呼びCを1号機に仮割当したときの,所定時間T経過後の各かごの間隔をそれぞれ予測演算する。これを第5図によって詳細に説明する。
・・・・・中略・・・・・
ステップ(65)では,到着予想時間Bm(1)?Bm(22)に基づいて後方かごmが前方かごKのいる乗場(予測かご位置FK(T),及び予測かご方向DK(T)に相当する乗場)に達するまでの到着予想時間を求め,これを予測かご間隔Lm,K(T)として設定する。・・・・・中略・・・・・
なお,上記ステップ(33A)?(33C)で仮割当手段(33X)を構成している。」(第5ページ右下欄第18行ないし第6ページ左下欄第19行)

h)「第3図の群管理プログラム(10)におけるステップ(33D)の割当制限プログラムでは,上記最小かご間隔L0,K(T)に基づいて1号機が上記新規乗場呼びCに割り当てにくくなるようにするための割当制限評価値P1を演算する。・・・・・中略・・・・・ステップ(73)では,かご間隔の分散Lvに係数Q(=2)による重み付けをして割当制限評価値P1=Q×Lvとして設定する。
このようにして1号機に乗場呼びCを仮割当したときの割当制限評価値P1を設定する。」(第6ページ左下欄第20行ないし同ページ右下欄第20行)

i)「また,第3図の群管理プログラム(10)におけるステップ(33E)の待時間評価プグラム(当審注:「プグラム」は、「プログラム」の誤記と認める。)では,新規乗場呼びCを1号機に仮割当したときの各乗場呼びの待時間に関する評価値W1を演算する。この待時間評価値W1の演算については周知であるので詳細な説明は省略するが,たとえば各乗場呼びiの予測待時間U(i)(i=1,2,・・・,22:乗場呼びが登録されていなければ「0」秒とする)を求め,これらの2乗値の総和,すなわち待時間評価値・・・・・中略・・・・・でもって演算する。
このようにして1号機の仮割当評価プログラム(33)で新規乗場呼びCを1号機に仮割当したときの割当制限評価値P1と待時間評価値W1を演算する他の号機の割当制限評価値P2?P4と待時間評価値W2?W4も同様にして仮割当評価プログラム(34)?(36)でそれぞれ演算される。
次に,ステップ(37)の割当かご選択プログラムでは,上記割当制限評価値P1?P4と待時間評価値W1?W4に基づいて割当かごを1台選択する。この実施例では,j号機に新規乗場呼びCを仮割当したときの総合評価値Ejを,Ej=Wj+K,Pj(K:定数)で求め,この総合評価値Ejが最小となるかごを正規の割当かごとして選択するものである。」(第7ページ左上欄第1行ないし同ページ右上欄第3行)

j)「上記実施例では,一種類の所定時間Tについて所定時間経過後のかご位置とかご方向を各かごについてそれぞれ予測し,これに基づいて割当制限評価値を演算するようにしたが,複数種類の所定時間T1,T2,・・・,Tr(T1<T2<・・・<Tr)について所定時間経過後のかご位置とかご方向を各かごについてそれぞれ予測し,さらに複数種類の所定時間T1,T2,・・・,Trについて所定時間経過後の予測かご間隔L0,K(T1)?L0,K(Tr)(K=1,2,・・・)をそれぞれ演算する。そして,各組合わせ・・・・・中略・・・・・によってそれぞれ設定された割当制限評価値P(T1),P(T2),・・・,P(Tr),を重み付け加算する。すなわちP=K1・P(T1)+K2・P(T2)+・・・+Kr・P(Tr),(但しK1,K2,・・・,Krは重み係数)なる算式にしたがって演算することにより,最終的な割当制限評価値Pを設定することも容易である。この場合,ある一時点Tだけのかご配置に注目するのではなく,T1,T2,・・・,Trという複数の時点におけるかご配置を大局的に評価することになるので,現時点から近い将来にわたって乗場呼びの待時間を一層短縮することが可能となる。なお,上記重み係数Kl,K2,・・・Krは,例えば第11図に示すように,どの時点のかご配置を重視するかによって何通りかの設定方法が考えられるが,交通状態や建物の特性などに応じて適宜選択すればよい。」(第9ページ左上欄第17行ないし同ページ左下欄第2行)

(2)ここで、上記(1)a)ないしj)及び図面の記載より、次のことが分かる。

イ)上記(1)a)及びe)の記載によれば、12階建ての建物に4台のかごが設置されており、それらのかごの運転はエレベータの群管理装置(10)により制御されていることから、エレベータの群管理装置(10)は、建物の複数階床を運転する複数のかごを制御するものであることが分かる。

ロ)上記(1)a)及びe)の記載によれば、エレベータの群管理装置(10)は、「現時点からかご呼びと割当乗場呼びに順次応答して所定時間経過した後のかご位置とかご方向とをそれぞれ予測演算するかご位置予測手段,及び上記予測かご位置と予測かご方向に基づいて,所定時間経過後の各かごの時間的間隔又は空間的間隔をそれぞれを予測演算するかご間隔予測手段を備え」ており、「割当手段は,乗場呼びを各かごに仮に割り当て,この仮割当かごが上記乗場呼びに応答するものと仮定して,かご位置予測手段を用いて所定時間経過後のかご位置とかご方向とを各かごについてそれぞれ予測演算するとともに,上記かご間隔予測手段を用いて所定時間経過後のかご間隔をそれぞれ予測演算する仮割当手段と,この仮割当手段の出力に基づいて正規の割当かごを選択する割当かご選択手段と,上記予測かご間隔によって対応する上記仮割当かごを上記乗場呼びに正規に割り当てられるのを制限する若しくは割当対象から除外する指令を出力する割当制限手段を備え」ること、及び、
上記(1)f)の記載によれば、「仮割当評価プログラムでは,新たに乗場呼びCが登録されると,この乗場呼びCを1号機?4号機にそれぞれ仮に割り当ててみて,そのときの割当制限評価値P1?P4と待時間評価値W1?W4とをそれぞれ演算するものである」こと、及び、上記(1)i)の記載によれば、「第3図の群管理プログラム(10)におけるステップ(33E)の待時間評価プグラム(当審注:「プグラム」は、「プログラム」の誤記と認める。)では,新規乗場呼びCを1号機に仮割当したときの各乗場呼びの待時間に関する評価値W1を演算する」ことから、
これらを総合してみると、エレベータの群管理装置(10)は、新規乗場呼びCに対して複数のかごのいずれかを割当てる際に、かご毎に新規乗場呼びCに応答するものと仮定して、現時点から将来方向時点へ至るまでの所定時間経過後のかご位置とかご方向とを予測演算するものであることが分かる。

ハ)上記(1)j)の記載を上記ロ)とあわせてみると、エレベータの群管理装置(10)は、新規乗場呼びCに対して複数のかごのいずれかを割当てる際に、かご毎に新規乗場呼びCに応答するものと仮定して、現時点から将来方向時点へ至るまでの複数種類の所定時間経過後のかご位置とかご方向とを予測演算するものであることが分かる。

ニ)上記(1)g)の記載によれば、エレベータの群管理装置(10)は、「ステップ(33C)のかご間隔予測プログラムでは,上記新規乗場呼びCを1号機に仮割当したときの,所定時間T経過後の各かごの間隔をそれぞれ予測演算」しており、「ステップ(65)では,到着予想時間Bm(1)?Bm(22)に基づいて後方かごmが前方かごKのいる乗場(予測かご位置FK(T),及び予測かご方向DK(T)に相当する乗場)に達するまでの到着予想時間を求め,これを予測かご間隔Lm,K(T)として設定」すること、
上記(1)g)の記載によれば、エレベータの群管理装置(10)は、「ステップ(33D)の割当制限プログラムで」「最小かご間隔L0,K(T)に基づいて」「割当制限評価値P1」を演算すること、
上記(1)i)の記載によれば、「ステップ(33E)の待時間評価プグラム(当審注:「プグラム」は、「プログラム」の誤記と認める。)では,新規乗場呼びCを1号機に仮割当したときの各乗場呼びの待時間に関する」「待時間評価値W1」を「予測待時間U(i)」に基づいて「演算する」こと、
上記(1)i)の記載によれば、「割当かご選択プログラムでは,上記割当制限評価値P1?P4と待時間評価値W1?W4に基づいて割当かごを1台選択する」こと、及び、
上記(1)i)の記載によれば、「j号機に新規乗場呼びCを仮割当したときの総合評価値Ejを,Ej=Wj+K,Pj(K:定数)で求め,この総合評価値Ejが最小となるかごを正規の割当かごとして選択する」ことから、
これらを総合してみると、エレベータの群管理装置(10)は、所定時間経過後のかご位置とかご方向との予測演算結果により、各かごの予測かご間隔に関する割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値を演算し、この各かごの予測かご間隔に関する割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値に基づいて総合評価値を求め、この総合評価値が最小となるかごを乗場呼びに割り当てられる正規の割当てかごとして選択するものであることが分かる。

ホ)上記(1)ニ)を上記(1)ハ)とあわせてみると、エレベータの群管理装置(10)は、複数種類の所定時間経過後のかご位置とかご方向との予測演算結果により、各かごの予測かご間隔に関する割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値を演算し、この各かごの予測かご間隔に関する割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値に基づいて総合評価値を求め、この総合評価値が最小となるかごを乗場呼びに割り当てられる正規の割当てかごとして選択するものであることが分かる。

(3)刊行物に記載された発明

したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物に記載された発明>

「建物の複数階床を運転する複数のかごを制御するエレベータの群管理装置(10)において、
新規乗場呼びCに対して複数のかごのいずれかを割当てる際に、かご毎に新規乗場呼びCに応答するものと仮定して、現時点から将来方向時点へ至るまでの複数種類の所定時間経過後のかご位置とかご方向とを予測演算し、
この予測演算結果により、各かごの予測かご間隔に関する割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値を演算し、この各かごの割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値に基づいて総合評価値を求め、この総合評価値が最小となるかごを乗場呼びに割り当てられる正規の割当てかごとして選択するエレベータの群管理装置(10)。」

3.対比・判断

本件発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された発明における「建物」、「運転」、「かご」、「群管理装置(10)」、「新規乗場呼びC」、「応答するものと仮定して」及び「予測演算」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明における「ビル」、「運行」、「エレベータかご」、「群管理システム」、「発生したホール呼び」、「割当てられた場合」及び「演算」に相当する。
また、刊行物に記載された発明における「複数種類の所定時間経過後のかご位置とかご方向とを予測演算し」に関して、上記(1)j)の記載によれば、「複数種類の所定時間T1,T2,・・・,Tr(T1<T2<・・・<Tr)について所定時間経過後のかご位置とかご方向を各かごについてそれぞれ予測」するとの説明がなされており、この所定時間T1,T2,・・・,Tr(T1<T2<・・・<Tr)の間隔は適宜に定めるものであって、例えば、予測の精度を高めるために間隔を短くすると、運行軌跡となることがごく自然に理解されることであるから、刊行物に記載された発明における「複数種類の所定時間経過後のかご位置とかご方向」は、その技術的意味からみて、本件発明における「運行軌跡」に相当するといえる。
また、刊行物に記載された発明における「総合評価値」は、乗場呼びに割り当てられる正規の割当てかごを選択するための評価値であるから、換言すれば、乗場呼びに割り当てられる正規の割当てかごを決定する際に評価されるものであること、また、「総合評価値」を求める演算については、各かごの予測待時間に関する待時間評価値を含むものであること、並びに、刊行物に記載された発明における「乗場呼び」及び「予測待時間」は、その技術的意義からみて、それぞれ、本件発明における「ホール呼び」及び「予想待ち時間」に相当することから、刊行物に記載された発明における「各かごの予測かご間隔に関する割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値を演算し、この各かごの割当制限評価値と各かごの予測待時間に関する待時間評価値に基づいて総合評価値を求め、この総合評価値が最小となるかごを乗場呼びに割り当てられる正規の割当てかごとして選択する」は、本件発明における「各エレベータかごの予想待ち時間、で評価してホール呼びに割当てられるエレベータかごを決定する」に相当するといえる。

してみると、本件発明と刊行物に記載された発明とは、
「ビルの複数階床を運行する複数のエレベータかごを制御するエレベータの群管理システムにおいて、
発生したホール呼びに対して複数のエレベータかごのいずれかを割当てる際に、エレベータかご毎にホール呼びが割当てられた場合、現時点から将来方向時点へ至るまでの運行軌跡を演算し、
この演算結果により、各エレベータかごの予想待ち時間、で評価してホール呼びに割当てられるエレベータかごを決定するエレベータの群管理システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>

「現時点から将来方向時点へ至るまでの運行軌跡を演算」することに関し、
本件発明においては、「その時点のビルの交通流に依存するエレベータの平均停止数と停止時間とを用いて現時点からエレベータかごがビル内を1周運転する周期以上の将来方向時点へ至るまでの横軸が時間、縦軸が階床を表す運行軌跡を演算」するのに対して、
刊行物に記載された発明においては、そのような演算をしているのか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。

刊行物に記載された発明は、上記2.(1)b)ないしd)及びh)の記載によれば、かごが1か所に集まらないように乗場呼びを割り当てる必要性から、かご間隔の分散をも考慮して、長待ちを防止することを目的としているのであるから、その目的において、本件発明と軌を一にしているものといえる。
一方、刊行物の上記2.(1)f)の記載によれば、「到着予想時間は,例えばかごが1階床進むのに2秒,1停止するのに10秒を要するものとし,かごが全乗場を順に一周運転するものとして演算される」こと、及び、刊行物の上記2.(1)g)の記載によれば、「到着予想時間Bm(1)?Bm(22)に基づいて後方かごmが前方かごKのいる乗場(予測かご位置FK(T),及び予測かご方向DK(T)に相当する乗場)に達するまでの到着予想時間を求め,これを予測かご間隔Lm,K(T)として設定する」ことから、刊行物に記載された発明における「エレベータの群管理装置(10)」は、「総合評価値」を演算するために寄与する要素である「到着予想時間」に関して、かごが建物内を1周運転する周期にわたり演算されるものであることが分かる。
そうすると、このことから、「エレベータの群管理システムにおいて、エレベータかごがビル内を1周運転する周期にわたり、制御に寄与する要素の演算をすること」を導き出すことができる(以下、「刊行物に記載された技術」という。)。
また、刊行物の上記2.(1)j)の記載によれば、「各組合わせ・・・・・中略・・・・・によってそれぞれ設定された割当制限評価値P(T1),P(T2),・・・,P(Tr),を重み付け加算する」際に、「重み係数Kl,K2,・・・Krは」「交通状態や建物の特性などに応じて適宜選択すればよい」ことから、刊行物に記載された発明における「エレベータの群管理装置(10)」は、「総合評価値」を演算するために寄与する要素である「割当て制限評価値」に関して、交通状態に応じて適宜選択することを示唆していること(以下、「刊行物の示唆」という。)が分かる。
ここで、エレベータの群管理装置において、エレベータの平均停止数や停止時間といった要素が、ビルの「交通状態」に依存するものであることは、ごく普通に知られていること(例えば、特開平1-231780号公報[特に、第5ページ右下欄第14ないし16行]、平成23年8月31日付けの拒絶査定の備考欄に示した特開2000-318938号公報[特に、段落【0027】及び【0051】ないし【0059】]、及び、特開2001-310878号公報[特に、段落【0028】及び【0033】ないし【0035】]等参照。)であり、また、エレベータの群管理装置において、エレベータの平均停止数と停止時間とを用いて、エレベータの運行状態を推定(予測)することは、本件出願の原出願日前周知の技術(例えば、平成23年8月31日付けの拒絶査定の備考欄に示した特開2000-318938号公報[特に、段落【0027】及び【0051】ないし【0059】]、及び、特開2001-310878号公報[特に、段落【0028】及び【0033】ないし【0035】]等参照。以下、「周知技術」という。)である。
また、エレベータの群管理装置において、「運行軌跡」として「横軸が時間、縦軸が階床を表す運行軌跡」は、ごく普通に用いられているものである(例えば、特開平5-238653号公報[特に、段落【0025】及び図2]、特開平3-288776号公報[特に、第6図]及び特開平7-187526号公報[特に、段落【0017】及び図5]等参照。)。
してみると、刊行物に記載された発明において、「現時点から将来方向時点へ至るまでの運行軌跡を演算」することに関し、刊行物に記載された技術を考慮して、将来方向時点としてエレベータかごがビル内を1周運転する周期を選択し、刊行物の示唆に基づき周知技術を適用して、エレベータの運行状態としての運行軌跡を演算する際に、ビルの交通流に依存するエレベータの平均停止数と停止時間とを用いることとし、運行軌跡について、横軸が時間、縦軸が階床を表すものとして、相違点に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本件発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明及び技術並びに周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

4.むすび

以上のとおり、本件発明は、刊行物に記載された発明及び技術並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-14 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-02 
出願番号 特願2007-188982(P2007-188982)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (B66B)
P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 出野 智之  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 中川 隆司
岡崎 克彦
発明の名称 エレベータの群管理システム  
代理人 井上 学  
代理人 井上 学  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ