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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01S 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S |
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管理番号 | 1266347 |
審判番号 | 不服2011-21885 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-11 |
確定日 | 2012-11-12 |
事件の表示 | 特願2006-263937「波長制御方法及び波長可変レーザ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月10日出願公開、特開2008- 85103〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 平成18年 9月28日 特許出願 平成22年10月26日 拒絶理由通知(同年10月29日発送) 平成22年12月24日 意見書・手続補正書 平成23年 7月 1日 拒絶査定(同年7月8日送達) 平成23年10月11日 本件審判請求・手続補正書(以下「本件補正」という。) 平成24年 4月18日 審尋(同年4月23日発送) 平成24年 6月18日 回答書 第2 平成23年10月11日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年10月11日付け手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の概略 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?6に、 「【請求項1】 1つの半導体レーザで波長制御電流を変更することにより2以上の異なる波長のいずれかに切り替えてレーザ光を出力させる波長可変レーザの波長制御方法であって、 前記波長制御電流を、 波長切替開始時には、前記波長切替開始前まで出力されていたレーザ光の波長(以下では元の波長という)と前記波長切替開始後の目標波長とに基づいて決定される初期値に変更し、 前記初期値に変更した後は、前記レーザ光の波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御により算出される電流値に変更する ことを特徴とする波長制御方法。 【請求項2】 前記初期値は、前記元の波長のレーザ光が安定的に出力されているときの熱的平衡状態 において前記目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の値である ことを特徴とする請求項1に記載の波長制御方法。 【請求項3】?【請求項6】略」 とあるものを、 「【請求項1】 1つの半導体レーザで波長制御電流を変更することにより2以上の異なる波長のいずれかに切り替えてレーザ光を出力させる波長可変レーザの波長制御方法であって、 波長切替前の波長(以下では元の波長という)でレーザ光が安定的に出力されて熱的平衡状態にあるときに波長を切り替えて目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の初期値を前記元の波長及び前記目標波長をパラメータとして事前に決定しておき、 前記波長制御電流を、 波長切替開始時には、前記波長切替開始前に出力されていた前記元の波長と前記目標波長とから前記事前に決定された初期値を選択してこれに変更し、 前記初期値に変更した後は、前記レーザ光の波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御により算出される電流値に変更する ことを特徴とする波長制御方法。 【請求項2】?【請求項5】略」 にする補正を含むものである。 本件補正のうち、請求項1についてする補正は、 (ア)補正前の請求項1を削除する補正事項、 (イ)補正前の請求項2を独立請求項として新たな請求項1にすると共に、波長切替開始時に変更する波長制御電流の初期値に関し、「初期値を前記元の波長及び前記目標波長をパラメータとして事前に決定しておき、」波長切替開始時に「前記波長切替開始前に出力されていた前記元の波長と前記目標波長とから前記事前に決定された初期値を選択」したものに限定する補正事項、 からなる。 上記補正事項(ア)は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とする補正に該当し、また、上記補正事項(イ)は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そうすると、請求項1についてする補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて検討する。 2 引用する刊行物と引用発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開2005-64300号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 分布帰還型半導体レーザと、分布帰還型半導体レーザからの出力光の発振波長を検出する波長検出手段と、波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御することにより発振波長を切替可能な負帰還制御手段とを備えた波長可変レーザ光源において、 光出力開始時又は波長切替時において分布帰還型半導体レーザに電流注入を開始してから所定時間経過した後に負帰還制御を開始するよう負帰還制御手段を制御する波長切替制御手段を備えた ことを特徴とする波長可変レーザ光源。 【請求項2】 … 【請求項3】 … 【請求項4】 前記波長切替制御手段は、光出力開始時又は波長切替時において前記負帰還制御の開始前には所望波長が発振する所定の注入電流値より大きな電流を分布帰還型半導体レーザに印加する ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の波長可変レーザ光源。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体レーザを用いた高速波長切替が可能な広帯域波長可変レーザ光源に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、光通信システムにおいて伝送容量の大容量化を行うため、波長の異なる複数の光信号を1本の光ファイバに多重して伝送する波長分割多重化技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)が採用されている。そして、更なる伝送容量の増大を目的として、多くの波長チャンネルを狭い波長間隔で高密度に多重する高密度波長分割多重技術(DWDM:Dense Wavelength Division Multiplexing)が採用されている。このDWDM伝送においては、多くの波長チャンネルを発振できる波長可変光源が必要となる。」 ウ 「【0003】 DWDM伝送に必要な波長可変光源としては、分布帰還型半導体レーザ(DFB-LD:Distributed FeedBack Laser Diode)、分布反射型半導体レーザ(DBR-LD:Distributed Bragg Reflector Laser Diode)、外部共振型半導体レーザ、面発光レーザ等を用いたものが挙げられる。この中で高速に波長切替を行える光源としては、DBR-LD又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)機構による外部共振型半導体レーザ、面発光レーザを用いたものが挙げられるが、高信頼性の点においてはまだ不十分である。高信頼に波長切替が実現できる多波長の波長可変レーザ光源としては、DFB-LDの温度を調整することにより波長切替を行うものが知られている(非特許文献1参照)。 【0004】 しかしながら、DFB-LDの温度調整による波長切替を行う波長可変レーザ光源では波長切替までに数十秒を要しており、さらに高速に波長切替ができる波長可変レーザ光源が望まれていた。」 エ 「【0005】 そこで、出願人は、高信頼性且つ波長切替が高速に実現できる多波長の波長可変レーザ光源として、DFB-LDの注入電流を調整することで波長調整を行うDFB-LD及びDFB-LDアレイを特願2003-6118で提案した。この波長可変レーザ光源の一例について図8を参照して説明する。 【0006】 図8に示すように、この波長可変レーザ光源は、N個のDFBレーザ(DFB-LD)11と、光合波器12と、光分波器13と、波長モニタ14と、LD温度モニタ15と、LD温度調節器16と、LD温度制御回路17と、LD電流源18と、LD電流制御回路19とを備えている。 【0007】 DFB-LD11は、単一縦モードのレーザ光を発振できるレーザ素子である。光合波器12は複数の経路から入力される光を一つの経路にまとめる素子である。光分波器13は、一つの経路から入力される光を複数の経路に分岐する素子であり、例えば光カプラなどからなる。波長モニタ14は、入力光の波長を測定する装置あるいは素子である。DFB-LD11、光合波器12、光分波器13、波長モニタ14間の光の伝達経路は、光導波路、光ファイバ、空間系等からなる。LD温度調節器16はLD11の温度を調節する素子あるいは装置であり、例えばペルチェ素子等が用いられる。LD温度モニタ15はLD温度調節器16で調節を行ったLD11の温度を測定する素子あるいは装置であり、例えばサーミスタ等が用いられる。なお、図8ではLD温度調節器はDFB-LD11の部分のみ温度調整を行っているが、光合波器12、光分波器13、波長モニタ14を含める場合もある。また、光合波器12、波長モニタ14の部分に前記LD温度調節器16とは別の温度調節器を用いる場合もある。 【0008】 DFB-LD11、光合波器12、LD温度調節器16、LD温度モニタ15は、一つのケースに実装する場合が多い。また、同じケースに光分波器13、波長モニタ14も含める場合もある。LD電流源18はDFB-LD11に電流を供給する装置であり、選択した1つのDFB-LD11に電流を注入する。LD電流制御回路17は、DFB-LD11に注入する電流量を制御する装置であり、波長モニタ14で検出した発振光の波長に基づき算出した量の電流を注入する。LD温度制御回路17はLD温度調節器16から制御する装置である。 【0009】 以下、この波長可変レーザ光源の動作について述べる。Nチャンネルの波長可変光源を実現する場合には、最大N個のDFB-LD11を用いる。各LD11の発振波長が各チャンネルの波長に対応する。このとき、複数のDFB-LD11の中で発振するDFB-LD11は1つのみであり、LD電流源18より発振させるDFB-LD11を選択して注入電流を流す。DFB-LD11の発振光が光合波器12により1つの経路にまとめられた後、光分波器13によって発振光の一部が分岐される。分岐された光は波長モニタ14によって波長の測定に用いられる。ここで実際に発振している光の波長と、発振させたい目標波長とのずれを検出して、そのずれを負帰還制御により注入電流量をかえることで制御を行う。 【0010】 ここで、注入電流の制御による波長の調整方法の動作原理について詳細を述べる。DFB-LD11により、注入電流をΔIだけ変えたときの発振周波数(波長)の変化Δfの測定結果は以下の通りである。 【0011】 Δf=(-0.85GHz/mA)ΔI+(-0.40GHz/mA)ΔI …(1) この式(1)において、右辺第1項は活性層の屈折率が注入電流により変化した分であり、ミリ秒オーダ以下の高速で発振波長が変化する。右辺第2項は注入電流を変化することでLD11の温度が変化し、その温度変化に相当する発振波長の変化を示している。この項は温度変化を介しているため、秒オーダで変化する。 【0012】 以上の原理により、DFB-LDをベースにした高信頼で且つ高速波長切替可能な波長可変光源を実現している。」 オ 「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0013】 しかしながら、前述の波長可変レーザ光源には次のような問題点があった。以下に、その問題点について詳述する。 【0014】 DFB-LD11の注入電流量を制御して発振波長の調整を行う方法によれば、高速に波長可変を行うことができる。ところで、注入電流量の変化による発振波長の変化を示す前記式(1)において、右辺第2項の温度による波長変化は、秒オーダであればLD温度調節器16により制御することが可能であるが、LD11の活性層内での温度変化は比較的高速なミリ秒オーダで変化し、なおかつLD温度調節器16により制御することができない。このため、以下のような問題点が生じる。 【0015】 波長モニタ14で検出した発振波長を目標波長に近付けるように注入電流の負帰還制御を行っている場合、注入電流の調整量はミリアンペア程度のオーダになるため、前記式(1)の右辺第2項の温度変化による波長シフト量は1GHz以下と小さく、なおかつ、右辺第1項の屈折率変化の項はミリ秒以下で応答するため、負帰還制御を安定に動作させることができる。 【0016】 しかし、DFB-LD11の光出力をOFF状態からON状態にする際や、DFB-アレイにおける波長切替時においてDFB-LD11を切り替える際には、はじめにLD電流を0から数100mAまで増加させるため、前記式(1)の右辺第2項による温度変化による波長シフトが50GHz以上となる。 【0017】 これにより生じる問題点は以下の通りである。 【0018】 1.50GHz以上の温度変化による波長変化を前記式(1)の右辺第1項の屈折率変化で抑える場合、注入電流の調整範囲を50mA以上余分に調整する必要があり、注入電流量の変化範囲が非常に大きくなる。 【0019】 2.DWDM用の通信システムでは波長間隔として50GHz,100GHz間隔が用いられる。通常、DWDM用の波長モニタ14としてエタロンフィルタが用いられるが、FSR(Free Spectral Range)が50GHz,100GHzとなり、負帰還制御により波長を収束できる範囲がFSR以下に限定される。このため、発振波長において50GHz以上の波長ずれが生じると、負帰還制御を行うことができない。 【0020】 3.DWDM用の通信システムで波長間隔が50GHz,100GHzで運用されている場合、50GHz以上の波長シフトが生じると、他チャンネルの波長で発振することになり、他チャンネルに影響を及ぼす。 【0021】 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、注入電流変化による波長変化の温度寄与分によって生じる上記問題点1?3を解決した波長可変レーザ光源を提供することにある。」 カ 「【課題を解決するための手段】 【0022】 上記目的を達成するために、本願では、光出力開始時又は波長切替時において、発振させる分布帰還型半導体レーザに電流の注入を行い(電流制御初期フェーズ)、温度が安定した後に、波長検出手段からの負帰還制御を開始する(負帰還制御フェーズ)ことを特徴とする波長可変レーザ光源を提案する。本発明によれば、負帰還制御中の注入電流量の動作範囲を狭め、また、負帰還制御による波長収束可能範囲外の発振波長で負帰還制御を開始することを防ぐことができる。 【0023】 また、本願では、前記電流制御初期フェーズにおいて、所望波長が発振する電流値よりも一時的に大きい電流を注入することを特徴とする波長可変レーザ光源を提案する。本発明によれば、レーザ温度の安定化を高速に行えるので電流制御初期フェーズを短くするこ とができ、これにより光出力開始又は波長切替を高速に行うことができる。」 キ 「【発明の効果】 【0028】 以上説明したように本発明に係る波長可変レーザ光源によれば、波長切替時や光出力開始時においても分布帰還型半導体レーザに対して適切な負帰還制御を行うことができ、また、波長切替や光出力開始の高速化や他チャンネルへの干渉防止を図ることができる。さらに、分布帰還型半導体レーザに限らず一般的な半導体レーザを複数用いたアレイ型の波長可変レーザ光源においても、波長切替や光出力開始の高速化や他チャンネルへの干渉防止を図ることができる。したがって、本発明に係る波長可変レーザ光源は、WDM,DWDMシステムなどにおいて適したものとなる。」 ク 「【発明を実施するための最良の形態】 【0029】 以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。 【0030】 (第1の実施形態) 本発明の第1の実施形態に係る波長可変レーザ光源について図1を参照して説明する。図中、図8を参照して前述した従来の波長可変レーザ光源と同様の構成については同様の符号を付した。 【0031】 図1に示すように、この波長可変レーザ光源は、N個のDFBレーザ(DFB-LD)11(ここでNは1以上とする)と、光合波器12と、光分波器13と、波長モニタ14と、LD温度モニタ15と、LD温度調節器16と、LD温度制御回路17と、LD電流源18と、LD電流制御回路19、波長切替制御器20とを備えている。すなわち、図8 を参照して前述した従来の波長可変レーザ光源と異なる点は、波長切替制御器20が追加されている点である。 【0032】 波長切替制御器20は、DFB-LD11の光出力のON及びOFF、及び波長切替の制御を行う。この波長切替制御器20は、LD電流源18に対して注入するDFB-LD11の選択を指示する。また、LD電流源18及びLD電流制御回路19に対して、波長モニタ14で検出した波長に基づき注入電流の負帰還制御を行うか、注入電流量に固定値電流を流すか、あるいは出力パワーをモニタして一定の光パワーが出力されるように注入電流を制御するか等の指示を行う。 【0033】 本実施の形態に係る波長可変レーザ光源の出力をONにする場合の、波長切替制御器20の動作について説明する。まず、LD電流源18に対して、どのDFB-LD11に対してLD電流を注入するかの選択を行う。LD電流源18の中に電流セレクタ(図示省略)が搭載されている場合は、このセレクタに対する指示になる。次いで、LD電流源18に対して所定の電流量を注入する(電流制御初期フェーズ)。この固定値はあらかじめ設定されており、最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値に設定されていることが望ましい。次いで、固定値の電流を流した後、しばらく時間を経てから波長モニタ14に基づく注入電流量の負帰還制御を開始する(負帰還制御フェーズ)。波長切替時の波長切替制御器20の動作も、光出力開始時の方法と同一の方法で実現可能である。以上の動作について、図2のタイミングチャートにLD11への注入電流量とLD11の発振波長の時間変化を示した。 【0034】 上述した電流制御初期フェーズから負帰還制御フェーズまでの時間であるが、以下のように設定を行う。すなわち、LD11への注入電流をステップ状に入力した後、温度変化による発振波長が安定化するまでの時間を行うことが望ましい。また、完全に安定化する前でも、負帰還制御で波長が収束できる範囲であれば、負帰還制御を開始することができる。この電流制御初期フェーズから負帰還制御フェーズまでの時間は、ミリ秒オーダの時間になる。 【0035】 以上のように、本実施の形態に係る波長可変レーザ光源では、電流制御初期フェーズから負帰還制御フェーズに所定の時間を持たせることにより、LD温度の安定化を行うことができる。その結果、負帰還制御フェーズにおける温度変化による波長シフトが小さくなり、負帰還制御で必要な注入電流の制御範囲が小さくなる。また、負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化が行われているため、負帰還制御の波長調整範囲が小さい場合でも、調整可能範囲から波長制御を行うことが可能となる。」 ケ 「【0036】 (第2の実施の形態) 本発明の第1の実施形態に係る波長可変レーザ光源について図3を参照して説明する。本実施の形態に係る波長可変レーザ光源の物理的構成は、前記第1の実施の形態と同様であるのでここでは説明を省略する。 【0037】 本実施の形態に係る波長可変レーザ光源が第1の実施の形態と異なる点は、電流制御初期フェーズにおける電流注入方法が異なる。すなわち、第1の実施形態では電流制御初期フェーズにおいて、一定あるいは所定の電流値を流すが、本実施形態では、最終的に収束する電流値をオーバーシュートするように電流を印加する点が異なる。 【0038】 以下より詳細に説明する。図2に示すように、第1の実施の形態に係る波長可変レーザ光源では、始めに電流を注入するLDをセレクタにより選択した後、所定量の電流の注入を行う(電流制御初期フェーズ)。この電流制御初期フェーズの後、しばらく時間を経過した後、負帰還制御フェーズに入り、波長の安定化を図っている。 【0039】 一方、本実施の形態に係る波長可変レーザ光源では、図3に示すように、第1の実施形態とは電流制御初期フェーズでの電流注入方法が異なる。すなわち、図2では固定値を注入するが、図3では図2の固定値よりも大きい電流の注入を行い、その後電流値を図2の固定値に戻す。これにより、LDの活性層内での温度上昇を急激に行うことができ、活性層内での温度の安定化を早くすることができる。 【0040】 なお、図3では電流制御初期フェーズにおける注入電流を2段階の変化にさせているが、図2における固定値をオーバーシュートして、その後、所定の固定値に収束するような電流変化であれば他の関数に基づく電流制御方法であってもよい。また、LDへの注入電流量を小さく変化させる場合も同様である。すなわち、目標値をオーバーシュートして図2の固定値よりも小さい値から該固定値に収束させるようにしてもよい。このように行うことで、活性層内での温度の安定化を早くすることができる。」 (2)引用発明 ア 上記「(1)ア」において、請求項4は請求項1を引用する従属形式で記載されているところ、請求項4を独立形式に書き改めると以下のとおりである。 「 分布帰還型半導体レーザと、分布帰還型半導体レーザからの出力光の発振波長を検出する波長検出手段と、波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御することにより発振波長を切替可能な負帰還制御手段とを備えた波長可変レーザ光源において、 光出力開始時又は波長切替時において分布帰還型半導体レーザに電流注入を開始してから所定時間経過した後に負帰還制御を開始するよう負帰還制御手段を制御する波長切替制御手段を備え、 前記波長切替制御手段は、光出力開始時又は波長切替時において前記負帰還制御の開始前には所望波長が発振する所定の注入電流値より大きな電流を分布帰還型半導体レーザに印加する ことを特徴とする波長可変レーザ光源。」 イ 上記「(1)ク」によると、第1の実施形態の波長可変レーザ光源について、 (ア)波長切替制御器20が、DFB-LD11の光出力のON及びOFF、及び波長切替の制御を行うこと、 (イ)光出力をONにする場合、電流源18に対し、最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値(固定値)を注入し(電流制御初期フェーズ)、しばらく時間を経てから波長モニタ14に基づく注入電流量の負帰還制御を開始する(負帰還制御フェーズ)こと、 (ウ)波長切替時の波長切替制御器20の動作も、光出力開始時の方法と同一の方法で実現可能であること、 (エ)負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化が行われていること、 が記載されている。 ウ 上記「(1)ケ」によると、第2の実施形態の波長可変レーザ光源について、 (ア)波長可変レーザ光源の物理的構成は、第1の実施形態と同様であること、 (イ)第1の実施の形態とは電流制御初期フェーズでの電流注入方法が相違し、第2の実施形態では、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流の注入を行い、その後、固定値に収束させること、 (ウ)LDへの注入電流量を小さく変化させる場合、目標値をオーバーシュートして固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも小さい値から固定値に収束させること、 (エ)LDの活性層内での温度上昇を急激に行うことができ、活性層内での温度の安定化を早くすることができること、 が記載されている。 ここで、上記「ウ(イ)」に摘記したとおり、第1と第2の実施形態は電流制御初期フェーズでの電流注入方法が相違するから、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化は行われているものと認められる。 また、波長可変レーザ光源は、注入電流量に応じて発振波長が変わるレーザ光源であるから、上記「ウ(ウ)」の「LDへの注入電流量を小さく変化させる場合」とは、発振波長を切替える場合である。そうすると、上記「ウ(ウ)」の「LDへの注入電流量を小さく変化させる場合」とは、「波長切替時にLDへの注入電流量を小さく変化させる場合」である。 そして、上記「ウ(ウ)」に摘記したとおり、第2の実施形態では、「LDへの注入電流量を小さく変化させる」波長切替を開示しているところ、各波長相互間で切替えが行われるから、「LDへの注入電流量を大きく変化させる」波長切替も行っているものと解される。ここで、上記「イ(ウ)」より、波長切替時の波長切替制御器20の動作は、光出力開始時の方法と同一の方法で実現可能であることを併せると、波長切替時に「LDへの注入電流量を大きく変化させる場合」の制御は、上記「ウ(イ)」の制御と同様に、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流の注入を行い、その後、固定値に収束させる制御である。 さらに、第2の実施形態の波長可変レーザ光源は、上記「ウ(イ)」、「ウ(ウ)」の方法により光出力開始及び波長切替を制御しているから、刊行物には、波長可変レーザ光源の光出力開始及び波長切替制御方法が開示されている。 エ 上記「ア」?「ウ」を総合すると、刊行物には、第2の実施形態に関し、以下の発明が記載されている。 「分布帰還型半導体レーザと、分布帰還型半導体レーザからの出力光の発振波長を検出する波長検出手段と、波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御することにより発振波長を切替可能な負帰還制御手段とを備えた波長可変レーザ光源の光出力開始及び波長切替制御方法において、 光出力開始時又は波長切替時において分布帰還型半導体レーザに電流注入を開始してから所定時間経過した後に負帰還制御を開始するよう負帰還制御手段を制御する波長切替制御手段を備え、 前記波長切替制御手段は、光出力開始時又は波長切替時において前記負帰還制御の開始前に、 (a)光出力開始時及び波長切替時に注入電流量を大きく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流の注入を行い、その後固定値に収束させ、 (b)波長切替時に注入電流量を小さく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも小さい電流の注入を行い、その後固定値に収束させ、 分布帰還型半導体レーザの活性層内での温度の安定化を早くし、 負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化が行われている 波長可変レーザ光源の光出力開始及び波長切替制御方法。」(以下「引用発明」という。) 3 対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 (1)本願補正発明の「1つの半導体レーザで波長制御電流を変更することにより2以上の異なる波長のいずれかに切り替えてレーザ光を出力させる波長可変レーザの波長制御方法」と引用発明の「分布帰還型半導体レーザと、分布帰還型半導体レーザからの出力光の発振波長を検出する波長検出手段と、波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御することにより発振波長を切替可能な負帰還制御手段とを備えた波長可変レーザ光源の…波長切替制御方法」を対比する。 ア 引用発明の「分布帰還型半導体レーザ」は、本願補正発明の「半導体レーザ」に相当し、以下同様に、「注入電流量」は「波長制御電流」に、「波長可変レーザ光源」は「波長可変レーザ」に、「波長可変レーザ光源の…波長切替制御方法」は「波長可変レーザの波長制御方法」に、それぞれ相当する。また、引用発明は、波長検出手段で検出した発振波長に基づいて分布帰還型半導体レーザの注入電流量を負帰還制御する波長可変レーザ光源であるから、1つの分布帰還型半導体レーザの注入電流を変更して出力光の波長を切り替えている。 イ してみると、引用発明の「分布帰還型半導体レーザと、分布帰還型半導体レーザからの出力光の発振波長を検出する波長検出手段と、波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御することにより発振波長を切替可能な負帰還制御手段とを備えた波長可変レーザ光源の…波長切替制御方法」は、本願補正発明の「1つの半導体レーザで波長制御電流を変更することにより2以上の異なる波長のいずれかに切り替えてレーザ光を出力させる波長可変レーザの波長制御方法」に相当する。 (2)本願補正発明の「波長切替前の波長(以下では元の波長という)でレーザ光が安定的に出力されて熱的平衡状態にあるときに波長を切り替えて目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の初期値を前記元の波長及び前記目標波長をパラメータとして事前に決定しておき、前記波長制御電流を、波長切替開始時には、前記波長切替開始前に出力されていた前記元の波長と前記目標波長とから前記事前に決定された初期値を選択してこれに変更」することと、引用発明の「…波長切替時において前記負帰還制御の開始前に、 (a)光出力開始時及び波長切替時に注入電流量を大きく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流の注入を行い、… (b)波長切替時に注入電流量を小さく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも小さい電流の注入を行い、その後固定値に収束させ、 分布帰還型半導体レーザの活性層内での温度の安定化を早くし、 負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化が行われている」ことを対比する。 ア 引用発明の「注入電流量」が本願補正発明の「波長制御電流」に相当し、引用発明の「所望波長」が本願補正発明の「目標波長」に相当する。 イ また、引用発明は、「負帰還制御の開始前に」、「(a)光出力開始時及び波長切替時に注入電流量を大きく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流」あるいは、「(b)波長切替時に注入電流量を小さく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも小さい電流」を分布帰還型半導体レーザに注入し、所定時間経過した後に負帰還制御を開始するところ、「分布帰還型半導体レーザの活性層内での温度の安定化を早くし、負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化が行われている」。そうすると、引用発明における波長切替時には、前回の波長切替に伴う分布型半導体レーザの活性層内での温度変動は安定化しており、前回の波長切替時の所望波長のレーザ光が安定的に出力されているもの認められる。そうすると、引用発明の「負帰還制御の開始前に」、分布帰還型半導体レーザに注入する「(a)光出力開始時及び波長切替時に注入電流量を大きく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流」あるいは、「(b)波長切替時に注入電流量を小さく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも小さい電流」は、本願補正発明の「波長切替前の波長(以下では元の波長という)でレーザ光が安定的に出力されて熱的平衡状態にあるときに波長を切り替えて目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の初期値」に相当する。 ウ してみると、本願補正発明の「波長切替前の波長(以下では元の波長という)でレーザ光が安定的に出力されて熱的平衡状態にあるときに波長を切り替えて目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の初期値を前記元の波長及び前記目標波長をパラメータとして事前に決定しておき、前記波長制御電流を、波長切替開始時には、前記波長切替開始前に出力されていた前記元の波長と前記目標波長とから前記事前に決定された初期値を選択してこれに変更」することと、引用発明の「…波長切替時において前記負帰還制御の開始前に、 (a)光出力開始時及び波長切替時に注入電流量を大きく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも大きい電流の注入を行い、… (b)波長切替時に注入電流量を小さく変化させる場合には、固定値(最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値)よりも小さい電流の注入を行い、その後固定値に収束させ、 分布帰還型半導体レーザの活性層内での温度の安定化を早くし、 負帰還制御を開始する時において既に温度の安定化が行われている」ことは、「前記波長制御電流を、波長切替開始時には、波長切替前の波長(以下では元の波長という)でレーザ光が安定的に出力されて熱的平衡状態にあるときに波長を切り替えて目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の初期値に変更」する点で一致する。 (3)本願補正発明の「前記レーザ光の波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御により算出される電流値に変更する」ことと、引用発明の「波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御」することを対比する。 ア 引用発明の「波長検出手段で検出した発振波長に基づき…負帰還制御」することは、本願補正発明の「波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御」することに相当し、引用発明の「負帰還制御」する「注入電流量」は、本願補正発明「フィードバック制御により算出される電流値」に相当する。 イ してみると、引用発明の「波長検出手段で検出した発振波長に基づき分布帰還型半導体レーザへの注入電流量を負帰還制御」することは、本願補正発明の「前記レーザ光の波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御により算出される電流値に変更する」ことに相当する。 (4)したがって、本願補正発明と引用発明は、 「1つの半導体レーザで波長制御電流を変更することにより2以上の異なる波長のいずれかに切り替えてレーザ光を出力させる波長可変レーザの波長制御方法であって、 前記波長制御電流を、 波長切替開始時には、波長切替前の波長(以下では元の波長という)でレーザ光が安定的に出力されて熱的平衡状態にあるときに波長を切り替えて目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の初期値に変更し、 前記初期値に変更した後は、前記レーザ光の波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御により算出される電流値に変更する波長制御方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点:波長切替開始時に変更する波長制御電流の初期値に関し、本願補正発明は、「初期値を前記元の波長及び前記目標波長をパラメータとして事前に決定しておき」、波長切替開始時に「前記波長切替開始前に出力されていた前記元の波長と前記目標波長とから前記事前に決定された初期値を選択」したものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるのか否か明らかでない点 4 判断 以下、上記相違点について検討する。 刊行物には、第1の実施形態について、「【0033】…。次いで、LD電流源18に対して所定の電流量を注入する(電流制御初期フェーズ)。この固定値はあらかじめ設定されており、最終的に所望波長が発振する際の注入電流量に近い値に設定されていることが望ましい。」との記載があるように、波長切換時に注入する電流量をあらかじめ設定しておき、波長切換時に前記あらかじめ設定しておいた電流量を注入する技術事項が記載されているから、引用発明において上記技術事項を適用し、波長切換時に注入する電流量をあらかじめ設定しておき、波長切換時にあらかじめ設定しておいた電流量を注入するよう為すことは、当業者が容易に想到し得た事項である。そして、その際、引用発明の波長切換時に注入する電流量は、切替前の所望波長と切替後の所望波長に応じて決まる(例えば、引用発明において、切替後の所望波長が同じであっても、注入電流量を大きく変化させた場合と小さく変化させた場合とで注入電流量が異なるように、注入電流量が切替前と切替後の所望波長応じて変わることは明らかである。)のであるから、切替前の所望波長と、切替後の所望波長をパラメータとして注入電流量をあらかじめ設定しておき、波長切替時に切替前の所望波長と、切替後の所望波長をパラメータとしてあらかじめ設定された電流注入量を選択するように為し、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項と為すことに困難性は無い。 そして、本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明と刊行物に記載された技術事項に基いて、当業者が予測しうる程度のものと認められる。 5 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明と刊行物に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成23年10月11日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至6に係る発明は、平成22年12月24日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、2には以下のとおり記載されている。 「【請求項1】 1つの半導体レーザで波長制御電流を変更することにより2以上の異なる波長のいずれかに切り替えてレーザ光を出力させる波長可変レーザの波長制御方法であって、 前記波長制御電流を、 波長切替開始時には、前記波長切替開始前まで出力されていたレーザ光の波長(以下では元の波長という)と前記波長切替開始後の目標波長とに基づいて決定される初期値に変更し、 前記初期値に変更した後は、前記レーザ光の波長を測定して前記目標波長に一致させるようにフィードバック制御により算出される電流値に変更する ことを特徴とする波長制御方法。 【請求項2】 前記初期値は、前記元の波長のレーザ光が安定的に出力されているときの熱的平衡状態 において前記目標波長のレーザ光を出力させるのに必要な前記波長制御電流の値である ことを特徴とする請求項1に記載の波長制御方法。」(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。) 2 引用する刊行物と引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2.(2)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、波長切替開始時に変更する波長制御電流の初期値に関し、「前記元の波長及び前記目標波長をパラメータとして事前に決定しておき、」「前記波長切替開始前に出力されていた前記元の波長と前記目標波長とから前記事前に決定された初期値を選択」したものとの限定を省いたものである。 そして、上記限定は、上記第2で検討した本願補正発明と引用発明の唯一の相違点である。よって、本願発明と引用発明を対比すると、格別の相違点は無く、本願発明は、引用発明と実質的に同一である。 4 むすび したがって、本願発明は刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-07 |
結審通知日 | 2012-09-14 |
審決日 | 2012-09-26 |
出願番号 | 特願2006-263937(P2006-263937) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01S)
P 1 8・ 575- Z (H01S) P 1 8・ 121- Z (H01S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 俊彦 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
吉野 公夫 星野 浩一 |
発明の名称 | 波長制御方法及び波長可変レーザ |
代理人 | 松下 亮 |