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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2010800088 | 審決 | 特許 |
無効2013800106 | 審決 | 特許 |
無効2012800042 | 審決 | 特許 |
無効2011800051 | 審決 | 特許 |
無効2013800042 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1266434 |
審判番号 | 無効2012-800032 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-03-16 |
確定日 | 2012-11-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4589432号発明「二酸化炭素外用剤調製用組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許第4589432号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1?4に係る発明についての出願は、平成14年4月5日を国際出願日とする特願2002-578980号(優先権主張 平成13年4月6日及び平成13年11月12日 日本国)の出願の一部を平成20年11月21日に新たな特許出願としたものであって、平成22年9月17日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、請求人は平成24年3月16日に本件特許に対して無効審判を請求し、被請求人は同年6月4日付けで審判事件答弁書を提出した。 そして、同年8月14日付けで、請求人及び被請求人からそれぞれ口頭審理陳述要領書が提出され、同年8月28日に第1回口頭審理が行われた。 2 本件発明 本件特許の請求項1?4に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項1?4に係る発明をそれぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。) 「【請求項1】 水溶性酸、増粘剤として加工澱粉、デキストリン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種又は2種以上、この増粘剤とは別の物質である水溶性分散剤として乳糖、白糖、D-マンニトール、及び尿素から選択される1種又は2種以上を必須成分とし、前記増粘剤が前記水溶性酸及び前記水溶性分散剤と混合されている粒状物と、 炭酸塩、水、増粘剤を必須成分とし、使用時に前記粒状物と混合する粘性組成物とを含み、 前記粒状物全体に対して前記水溶性酸が2?50重量%、前記増粘剤が10?40重量%、前記水溶性分散剤が30?85重量%であり、 前記粘性組成物全体に対して炭酸塩が0.1?10重量%、水が70?97.5重量%、前記粘性組成物の増粘剤が0.5?20重量%であり、 前記粒状物と粘性組成物との重量比が1:10?40であることを特徴とする二酸化炭素外用剤調製用組成物。 【請求項2】 粘性組成物の増粘剤がアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム及びキサンタンガムから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の二酸化炭素外用剤調製用組成物。 【請求項3】 水溶性酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、イタ酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、スルファミン酸から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の二酸化炭素外用剤調製用組成物。 【請求項4】 粒状物が、多孔性顆粒である請求項1?3のいずれかに記載の二酸化炭素外用剤調製用組成物。」 3 請求人の主張 これに対して、請求人は、「本件特許第4589432号の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として以下の無効理由を主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。 (無効理由) 本件発明1?4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証及び甲2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (証拠方法) 甲第1号証 国際公開第99/24043号 甲第2号証 特開平11-322624号公報 甲第3号証 本件特許に係る出願の拒絶査定不服審判請求書に添付された2009年12月11日付けの試験成績証明書の写し 甲第4号証 特許第4659980号公報 甲第5号証 無効2011-800244号の審決書 4 被請求人の主張 これに対し、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由はない旨主張している。 5 当審の判断 (1)甲第1号証の記載事項 請求人が甲第1号証として提出した、本件特許について優先権主張の日前に頒布された刊行物である、国際公開第99/24043号には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審による。) (ア)「6. 炭酸塩と酸と増粘剤と水が実質的に二酸化炭素を発生しない状態でなるキットであって、炭酸塩と酸と増粘剤と水を混合することにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 《中略》 9. 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤を含む請求項6記載のキット。」(特許請求の範囲請求項6-9) (イ)「増粘剤としては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、無機物などがあげられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 《中略》 本発明の増粘剤に用いる天然高分子の中の植物系高分子としてはアラビアゴム、《中略》、小麦澱粉、米澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉などがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる天然高分子の中の微生物系高分子としてはカードラン、キサンタンガム、《中略》、プルランなどがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる天然高分子の中の蛋白系高分子としてはアルブミン、《中略》、フィブロインなどがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中のセルロース系高分子としてはエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩類、カルボキシメチルエチルセルロース及びその塩類、カルボキシメチルスターチ及びその塩類、クロスカルメロース及びその塩類、結晶セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、粉末セルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中の澱粉系高分子としてはアルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉、カルボキシメチル澱粉、デキストリン、メチル澱粉などがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中のアルギン酸系高分子としてはアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中のその他の多糖類系高分子としてはコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、《中略》、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマーなどがあげられる。 本発明の増粘剤に用いる無機物としては含水二酸化ケイ素、《中略》、ラポナイトなどがあげられる。」(第8頁第16行-第9頁第25行) (ウ)「具体的には以下のような組み合わせにより二酸化炭素含有粘性組成物を得ることが可能であるが、本発明は二酸化炭素が気泡状で保持される二酸化炭素含有粘性組成物が形成される組み合わせであれば、これらの組み合わせに限定されるものではない。 1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ; 2)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の組み合わせ; 3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ; 4)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ; 5)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有含水粘性組成物の組み合わせ; 6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物の組み合わせ; 7)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有シートの組み合わせ; 8)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩含有シートの組み合わせ; 9)炭酸塩と酸と含水粘性組成物の組み合わせ; 10)含水粘性組成物と、炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤含有シートの組み合わせ;及び 11)炭酸塩と酸と水と増粘剤の組み合わせ。」(第10頁第2-17行) (エ)「なお、炭酸塩含有含水粘性組成物、酸含有含水粘性組成物及び含水粘性組成物は、各々炭酸塩の増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤等、酸の増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤等及び増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤等の製剤を製造し、これらから調製してもよい。」(第10頁第18-21行) (オ)「本発明の二酸化炭素含有粘性組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的、又は美容目的で使用する場合は、該組成物を直接使用部位に塗布するか、《中略》してもよい。」(第14頁第19-22行) (カ)「実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、《中略》、表中の数字は特にことわらない限り重量部を表す。」(第17頁第19-20行) (キ)「実施例109?144 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表10?表12に示す。 〔製造方法〕 増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、マトリックス基剤を表10?表12のように組み合わせ、炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤をあらかじめ調製する。この顆粒剤は徐放性であってもよい。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤を混合し、二酸化炭素含有粘性組成物を得る。(第30頁第1-8行) (ク)「本発明でいうマトリックス基剤とは、溶媒による溶解や膨潤、加熱による溶融などにより流動化し、他の化合物を包含した後、溶媒除去又は冷却等により固化し、粉砕等により顆粒を形成する化合物、もしくは他の化合物と混合、圧縮して固化し、粉砕等により顆粒を形成する化合物で水により溶解もしくは崩壊するものすべてをいう。マトリックス基剤としては、エチルセルロース、エリスリトール、カルボキシメチルスターチ及びその塩、カルボキシメチルセルロース及びその塩、含水二酸化ケイ素、キシリトール、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、ステアリルアルコール、セタノール、ソルビトール、デキストリン、澱粉、乳糖、白糖、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、プルラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マンノース、メチルセルロースなどがあげられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。」(第30頁第9-22行) (ケ)「<炭酸塩含有含水粘性組成物の製造> 実施例1?84に記載の炭酸塩含有含水粘性組成物の製造方法に従い製造する。 <酸の顆粒剤の製造> マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は、ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に酸を加えて十分攪拌、混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し、固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合は、ビーカー等の容器中でマトリックス基剤を水又はエタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ、これに酸を溶解又は分散させて十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し、乾燥させる。完全に固まったら粉砕し顆粒とする。このとき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。 なお、本発明において上記の酸の顆粒剤の製造方法は本実施例に限定されることはなく、乾式破砕造粒法や湿式破砕造粒法、流動層造粒法、高速攪拌造粒法、押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。」(第30頁第23行-第31頁第8行) (コ)表10(第32頁)によれば、実施例109の組成物の組成は次のとおりである。 ・炭酸塩含有含水粘性組成物 炭酸水素ナトリウム 2.4 《増粘剤》 アルギン酸ナトリウム 4.0 エチルセルロース 2.0 カルボシキメチルセルロースナトリウム 2.0 精製水 89.6 ・酸の顆粒剤 クエン酸 2.0 《マトリックス基剤》 エチルセルロース 2.0 クロスカルメロースナトリウム 4.0 (2)甲第1号証に記載された発明 前記(カ)によれば、(コ)の表10における組成は重量部で表されているから、前記(ア)、(オ)、(キ)、(ケ)?(コ)(特に下線部)によれば、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤を含み、前記炭酸塩含有含水粘性組成物と前記酸の顆粒剤を混合することにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキットであって、前記二酸化炭素含有粘性組成物は直接使用部位に塗布し、前記炭酸塩含有粘性組成物は炭酸水素ナトリウム2.4重量部、増粘剤8.0重量部、精製水89.6重量部からなり、前記酸の顆粒剤はクエン酸2.0重量部、エチルセルロース2.0重量部およびクロスカルメロースナトリウム4.0重量部からなるマトリックス基剤からなるキット。」 (3)対比 本件発明1と引用発明とを比較する。 引用発明の「酸の顆粒剤」は、クエン酸を含み、クエン酸が水溶性酸であることは明らかであるから、引用発明の「クエン酸」及び「酸の顆粒剤」は、それぞれ本件発明1の「水溶性酸」及び「粒状物」に相当する。 引用発明の「炭酸塩含有含水粘性組成物」は、炭酸水素ナトリウム、水、増粘剤を含み、酸の顆粒剤と混合して気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を生成し、それを使用部位に塗布するものであるから、引用発明の「炭酸塩含有含水粘性組成物」は、本件発明1の「炭酸塩、水、増粘剤を必須成分とし、使用時に前記粒状物と混合する粘性組成物」に相当する。 引用発明の「酸の顆粒剤」は、2.0重量部のクエン酸(水溶性酸)と2.0重量部のエチルセルロース及び4.0重量部のクロスカルメロースナトリウムからなるマトリックス基剤からなるのであるから、水溶性酸(2.0重量部)は粒状物全体(2.0+2.0+4.0=8.0重量部)に対して25重量%(2÷8×100=25)である。なお、引用発明の酸の顆粒剤の残部(75重量%)は、エチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムからなるマトリックス基剤である。 そうすると、引用発明における水溶性酸は、本件発明1の2?50重量%の範囲に包含される。 引用発明の「炭酸塩含有含水粘性組成物」は、2.4重量部の炭酸水素ナトリウム(炭酸塩)、89.6重量部の精製水、8重量部の増粘剤からなるのであるから、本件発明1における、粘性組成物全体に対して炭酸塩が0.1?10重量%、水が70?97.5重量%、増粘剤が0.5?20重量%という範囲に包含されている。 また、引用発明において、酸の顆粒剤(粒状物)8.0重量部と炭酸塩含有粘性組成物(粘性組成物)100重量部とが混合されるのであるから、粒状物と粘性組成物との重量比は8:100=1:12.5であって、本件発明1の1:10?40の範囲に包含される。 そして、引用発明の「キット」は、炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤を含み、両者を混合することによって二酸化炭素含有粘性組成物を得て、該組成物は直接使用部位に塗布するのであるから、引用発明の「キット」は、本件発明1の「二酸化炭素外用剤調製用組成物」に相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。 [一致点]「水溶性酸を必須成分とする粒状物と、炭酸塩、水、増粘剤を必須成分とし、使用時に前記粒状物と混合する粘性組成物とを含み、前記粒状物全体に対して前記水溶性酸が25重量%であり、前記粘性組成物全体に対して炭酸塩が2.4重量%、水が89.6重量%、前記粘性組成物の増粘剤が8重量%であり、前記粒状物と粘性組成物との重量比が1:12.5であることを特徴とする二酸化炭素外用剤調製用組成物。」 [相違点]本件発明1の粒状物は、「増粘剤として加工澱粉、デキストリン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種又は2種以上、この増粘剤とは別の物質である水溶性分散剤として乳糖、白糖、D-マンニトール、及び尿素から選択される1種又は2種以上を必須成分とし、前記増粘剤が前記水溶性酸及び前記水溶性分散剤と混合されてい」て、かつ「前記粒状物全体に対して前記増粘剤が10?40重量%、前記水溶性分散剤が30?85重量%であ」るのに対して、引用発明の粒状物は、エチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムからなるマトリックス基剤を前記粒状物全体に対して75重量%含有する点。 (4)判断 以下、上記相違点について検討する。 ア.甲第1号証に基づく無効理由について 請求人は、本件請求項1に係る特許発明(本件発明1)と、甲第1号証に記載された発明との相違点について、乳糖又は白糖は本件発明1では粒状物に「水溶性分散剤」として混合されるのに対し、甲第1号証に記載された発明では「マトリックス基剤」として混合される点であると認定し、甲第1号証に記載された発明において、増粘剤としてデキストリン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、キサンタンガム又はヒドロキシプロピルセルロースを採用し、水溶性酸及び乳糖又は白糖(水溶性分散剤又はマトリックス基剤)を採用すれば、自ずと本件発明1の粒状物となる旨主張している。(審判請求書第12-14頁) 被請求人は、甲第1号証に記載された発明は、酸の顆粒剤に増粘剤を含まない点においても本件発明1と相違する旨(答弁書第4頁第1-9行)主張している。 これに対し、請求人は、甲第1号証に係る特許第4659980号(甲第4号証)に対する特許無効審判事件の審決書(甲第5号証)を提示し、甲第5号証の第10頁第18-24行において「本件特許発明において《中略》「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」を用いた場合にも同様の部分肥満改善効果がサポートされているものといえるから、本件特許発明の詳細な説明に記載したものといえる。」と審判官合議体が判断しており、他の成分の例示として甲第1号証第8頁第22行-第9頁第12行に各種の増粘剤が記載されていると主張し、また、甲第1号証の明細書全体の記載によれば、酸の顆粒剤には増粘剤が含まれる態様が記載されていると言える旨主張し、(口頭陳述要領書第3頁第11-23行)、口頭審理において、「酸の顆粒剤には増粘剤が含まれる態様が記載されている」とは、甲第1号証の第10頁第18-21行に記載されている事項である旨主張している。(第1回口頭審理調書) そこで、まず、本件発明1の粒状物の「増粘剤」について検討する。 甲第1号証の第8頁第16行-第9頁第25行には、増粘剤として用いられる物質が列記されているが(上記(イ))、増粘剤を顆粒剤に配合する点については記載されていない。 また、甲第5号証の記載事項には、甲第5号証における「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」の「他の成分」が増粘剤を意味することを示す記載はみあたらない。 しかも、甲第1号証の第10頁第18-21行には、「炭酸塩含有含水粘性組成物、酸含有含水粘性組成物及び含水粘性組成物は、各々炭酸塩の増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤等、酸の増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤等及び増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤等の製剤を製造し、これらから調製してもよい。」と記載されている(上記(エ))がその文脈からみて、上記「酸の増粘剤含有顆粒(細粒、粉末)剤」は、酸含有含水粘性組成物を製造するためのものであって、炭酸塩含有含水粘性組成物と混合することによって二酸化炭素含有粘性組成物を生成するために用いる「酸の顆粒(細粒、粉末)剤」に増粘剤を配合するものではない。 そうすると、甲第1号証に「酸の顆粒剤には増粘剤が含まれる態様が記載されている」との請求人の主張を採用することはできない。 一方、請求人は、「甲第1号証・・・の実施例109には、構成F、G、Hに相当する記載、すなわち、クエン酸(本件明細書段落0018記載の水溶性酸)を2.0(25%)、エチルセルロース(本件明細書段落0019記載の増粘剤)を2.0(25%)、クロスカルメロースNa(本件明細書段落0021記載の水溶性分散剤)を4.0(50%)含有する酸の顆粒剤」が記載されていると主張している。(審判請求書第10頁第9-16行) しかしながら、本件特許明細書の段落0018、0019、0021には、請求人が指摘する事項は記載されていない。 一方、本件特許明細書の段落0016に「粒状物の増粘剤」について「粒状物の増粘剤は加工澱粉、デキストリン、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい」と、段落0018に「粒状物の水溶性分散剤」について「粒状物の水溶性分散剤はキシリトール、D-ソルビトール、ブドウ糖、D-マンニトール、果糖、蔗糖、乳糖、白糖、尿素からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。」と記載されている。 そうすると、甲第1号証の実施例109の酸の顆粒剤における、エチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムは、それぞれ、本件特許明細書に記載された粒状物の増粘剤及び水溶性分散剤には該当しない。 ところで、引用発明(甲第1号証の実施例109)において、「酸の顆粒剤」には「マトリックス基剤」としてエチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムが配合されるとともに、「炭酸塩含有含水粘性組成物」には、「増粘剤」として、アルギン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムとともに、エチルセルロースが配合されている。(上記(コ)) そして、エチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムは、甲第1号証において「マトリックス基剤」として例示されている(上記(ク))と同時に、「増粘剤」としても例示されている。(上記(イ)) しかしながら、上記のとおり、甲第1号証には、「炭酸塩含有含水粘性組成物」と「酸の顆粒(細粒、粉末)剤」との組み合わせ、「酸含有含水粘性組成物」と「炭酸塩の顆粒(細粒、粉末)剤」との組合せ、「炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤」と「含水粘性組成物」の組合せなどの態様が記載されているが(上記(ウ))、顆粒(細粒、粉末)剤に増粘剤を配合することについて記載されていない。 また、引用発明における「マトリックス基剤」は「溶媒による溶解や膨潤、加熱による溶融などにより流動化し、他の化合物を包含した後、溶媒除去又は冷却等により固化し、粉砕等により顆粒を形成する化合物、もしくは他の化合物と混合、圧縮して固化し、粉砕等により顆粒を形成する化合物で水により溶解もしくは崩壊するもの」であって(上記(ク))、増粘剤としての作用を必要とするものではない。 しかも、引用発明において「二酸化炭素含有含水粘性組成物」を製造するために用いられる「炭酸塩含有含水粘性組成物」に増粘剤が含まれているのであるから、それと組み合わせて用いられる「酸の顆粒(細粒、粉末)剤」に更に増粘剤を配合する動機付けがあるとする理由はみあたらない。 そうすると、本件発明1の粒状物の「増粘剤」である「加工澱粉、デキストリン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルセルロース」が、甲第1号証において「増粘剤」として例示されている物質に含まれる(上記(イ))ものであり、エチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムが甲第1号証における「増粘剤」であるとしても(上記(イ))、引用発明において「マトリックス基剤」として用いられているエチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムに代えて、「増粘剤」として加工澱粉、デキストリン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルセルロースを必須成分として用いることが、甲第1号証の記載事項から示唆されるということはできない。 次に、本件発明1の粒状物の「水溶性分散剤」について検討する。 甲第1号証には、「マトリックス基剤」として「乳糖、白糖」が記載されており(上記(ク))、また、甲第1号証における「マトリックス基剤」は、「水により溶解もしくは崩壊する」ものである点において(上記(ク))、本件発明1における「水溶性分散剤」と共通する性質を有するものである。 しかしながら、引用発明(甲第1号証の実施例109)についてみると、「酸の顆粒剤」に「マトリックス基剤」として配合されているエチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムは、いずれも、甲第1号証において「増粘剤」としても例示されている物質であるから、「増粘剤」と「増粘剤とは別の物質」を配合した例には該当しない。 また、エチルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムが増粘剤としての性質を備えたものであるとしても、引用発明における「マトリックス基剤」は、「水により溶解もしくは崩壊するもの」であるから、更に、「水溶性分散剤」を配合する必要はない。 そうすると、甲第1号証には、「酸の顆粒剤」に「増粘剤」及び「増粘剤と別の物質である水溶性分散剤として乳糖、白糖、D-マンニトール、及び尿素から選択される1種又は2種以上を必須成分」とすることについて示唆する事項は何ら記載されていない。 そして、本件発明1は、上記の相違点である発明特定事項を採用することにより、混合時には粘度が低く、使用時には十分高い粘度の二酸化炭素外用剤を調製することができるという効果を奏するものと認められるところ、かかる効果が甲第1号証の記載事項から予測しうるものということはできない。 したがって、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 イ.甲第1号証及び第2号証に基づく無効理由について 請求人は、甲第2号証には、増粘剤やゲル化剤に加えて、分散剤として乳糖やマンニトール等の糖や糖アルコールを添加することが記載されているから、甲第1号証において、増粘剤やゲル化剤に加えて、分散剤として乳糖やマンニトール等の糖や糖アルコールを添加することは、当業者に容易である旨主張している。(審判請求書第15頁第4-13行) しかし、上記のとおり、甲第1号証には、引用発明の「酸の顆粒剤」に「増粘剤として加工澱粉、デキストリン、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種又は2種以上」を配合する点について記載されているということはできないから、引用発明の「酸の顆粒剤」に甲第2号証に記載の「分散剤」を添加する動機付けはない。 また、引用発明の「酸の顆粒剤」に配合されている「マトリックス基剤」に増粘剤としての性質を有する物質が含まれているとしても、「マトリックス基剤」として配合される以上、「水により溶解もしくは崩壊するもの」であるから、更に、甲第2号証に記載の「分散剤」を配合する必要はない。 そうすると、本件発明1が、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (5)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 (6)本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する。 上記のとおり、本件発明1が甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、同様に、本件発明2?4についても、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1?4に係る発明の特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2012-09-26 |
出願番号 | 特願2008-298412(P2008-298412) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 樹理 |
特許庁審判長 |
横尾 俊一 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 天野 貴子 |
登録日 | 2010-09-17 |
登録番号 | 特許第4589432号(P4589432) |
発明の名称 | 二酸化炭素外用剤調製用組成物 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 宮崎 伊章 |
代理人 | 的場 照久 |
代理人 | 伊藤 晃 |
代理人 | 新田 昌宏 |
代理人 | 田村 恭生 |